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  • 特開-高効率ダイダイシング及びリリース 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018076
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】高効率ダイダイシング及びリリース
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
H01L21/78 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187011
(22)【出願日】2022-11-24
(62)【分割の表示】P 2021562086の分割
【原出願日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】62/835,743
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516218823
【氏名又は名称】スリーディー グラス ソリューションズ,インク
【氏名又は名称原語表記】3D GLASS SOLUTIONS,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ポポビッチ マーク
(72)【発明者】
【氏名】フレミング ジェブ エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】クック ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ジャレット シエラ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】シュミット カリー エフ.
(72)【発明者】
【氏名】チェノウェス ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ブリングトン ジェフ エー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ウエハからダイをダイシング及び/又はリリースするための方法を提供する。
【解決手段】基板からダイを大規模にパラレルダイリリースするバッチ方法であって、ガラス基板からの受動、システムインパッケージ(SiP)又はシステムインアパッケージ、又はシステムオンチップ(SoC)、フィルタ及び/又は他のデバイスの低コスト大量生産が可能になる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハからダイをダイシング及び/又はリリースするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲を限定することなく、その背景をウエハからダイをダイシング及び/又はリリースする方法に関連して説明する。
【0003】
VLSI技術でのダイサイズにより、複雑さが増した大きなダイサイズが可能になり、処理力が増したCPU及び高密度なメモリデバイスが生まれてきた。大きなダイ及び大きな市場の需要は、ダイあたりのコストを削減しながら、性能を向上させる大面積ウエハをもたらした。ウエハからダイを除去又はダイシングすることは、最終製品の全体的なコストに対する増分コストと見なされる。しかしながら、アディティブ及びサブトラクティブプロセスの組み合わせによる薄膜及び厚膜プロセスを用いた受動デバイスの集積が進歩してきた。これには、単一の基板上に数千から数万の受動デバイス及びフィルタ並びにデバイスの組み合わせを作製する能力がある。レーザスクライビング、ソーイング又はウォータージェットツールのような順次処理を用いる古典的なダイシングは時間がかかりすぎ(最大数十時間)、受動又は他の微細フィーチャデバイスを製造するコストに劇的な影響を及ぼす。
【0004】
必要とされるものは、ウエハからダイを除去又はダイシングするためのより良好、かつより高速な方法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、コストを劇的に削減して歩留まりを改善しながら、基板あたりのダイ数を増加させる、基板からダイを除去するパラレル及びバッチプロセスを実証した。
【0006】
一実施形態において、本発明は、基板からパラレルバッチプロセスで1又は2以上のダイのためのダイリリース又はスクライブパターンを作製する方法であって、活性化UVエネルギー源を用いて感光性ガラス基板の少なくとも一部をダイリリース又はスクライブパターンで露光するステップと、感光性ガラス基板をそのガラス転移温度を超えて少なくとも10分間加熱相まで加熱するステップと、感光性ガラス基板を冷却して、露光された感光性ガラス基板の少なくとも一部を結晶性材料に変換させ、ガラスセラミック結晶性基板を形成するステップと、露光領域をUV光遮断層でコーティングするステップと、基板の前面上に受動部品、フィルタ、又は他のデバイスを作製して完成させるステップと、感光性ガラス基板におけるダイリリース又はスクライブパターンのセラミック相をエッチャント溶液でエッチング除去して基板からダイをリリースするステップと、を含む、これらからなる、又は本質的にこれらからなる、方法を含む。一態様において、ダイリリーススクライブパターンは、矩形、円形、楕円形、フラクタル、又は受動部品、フィルタ、若しくは他のデバイスの形状の輪郭を描く他の形状である。他の一態様において、ダイリリーススクライブパターンは接着性バッキングまでエッチングされる。他の一態様において、ダイリリーススクライブパターンは5μmと250μm幅の構造より大きい。他の一態様において、ダイリリーススクライブパターンは、機械的に切断された同等の基板のダイの数より大きな数の基板あたりのダイを有する。他の一態様において、リリースされたダイのエッジは5μm未満の表面粗さを有する。他の一態様において、リリースされたダイのエッジは1μm未満の表面粗さを有する。他の一態様において、リリースされたダイのエッジはダイの表面から非垂直の角度を有する。他の一態様において、リリースされたダイの
エッジは、ダイの表面に対する法線から少なくとも1°であり、かつ30°未満であるダイの表面からの非垂直角度(non-normalangle)を有する。他の一態様において、リリースされたダイの頂部又は底部の角は、ダイの表面から少なくとも1°から30°未満であるダイの表面からの非垂直曲度を有する。他の一態様において、1又は2以上のスクライブラインの幅は、10、20、30、40、50、60、70、75、80、又は90μm幅、又はその間の範囲である。
【0007】
一実施形態において、本発明は、基板からパラレルバッチプロセスで1又は2以上のダイのためのダイリリース又はスクライブパターンを作製する方法であって、ダイリリース又はスクライブパターンで感光性ガラス基板をマスキングするステップと、感光性ガラス基板の少なくとも一部をダイリリースとして活性化UVエネルギー源を用いて露光するステップと、感光性ガラス基板をそのガラス転移温度を超えて少なくとも10分間加熱相まで加熱するステップと、感光性ガラス基板を冷却して、露光された感光性ガラス基板の少なくとも一部を変換させ、感光性ガラス基板のガラスセラミック結晶性部分を形成するステップと、露光領域をUV光遮断層でコーティングするステップと、受動部品、フィルタ、又は他のデバイスを作製して完成させるステップと、基板の裏側へ弱接着性バッキングを配置するステップと、ダイをリリースするエッチャント溶液で感光性ガラス基板におけるダイリリース又はスクライブパターンのガラスセラミック部分をエッチング除去するステップと、弱接着性バッキングから1又は2以上のダイを除去するステップと、を含む、これらからなる、又は本質的にこれらからなる、方法を含む。一態様において、ダイリリース又はスクライブパターンは、矩形、円形、楕円形、フラクタル、又は受動部品、フィルタ、若しくは他のデバイスの形状の輪郭を描く他の形状である。他の一態様において、ダイリリーススクライブパターンは接着性バッキングへのcanエッチング(can etch)である。他の一態様において、ダイリリーススクライブパターンは、5μmと250μm幅の構造より大きくすることができる。他の一態様において、ダイリリーススクライブパターンは、基板あたりのダイの数を大きくすることが可能である。他の一態様において、リリースされたダイのエッジは5μm未満の表面粗さを有する。他の一態様において、リリースされたダイのエッジは1μm未満の表面粗さを有する。他の一態様において、リリースされたダイのエッジはダイの表面から非垂直の角度を有する。他の一態様において、リリースされたダイのエッジは、ダイの表面に対する法線から少なくとも1°であり、かつ30°未満の表面からの非垂直角度を有する。他の一態様において、リリースされたダイの頂部又は底部の角は、ダイの表面から少なくとも1°であり、かつ30°未満の表面からの非垂直曲度を有する。他の一態様において、1又は2以上のスクライブラインの幅は、10、20、30、40、50、60、70、75、80、又は90μm幅、又はその間の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の特徴及び利点のより完全な理解のため、ここで本発明の詳細な説明を添付の図とともに参照する。
図1】ソー加工(sawed)されたトレンチの側壁の側面図である。
図2】エッチングされたトレンチの側壁の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用を以下で詳細に議論するが、本発明は、多種多様な具体的な文脈において具現化することができる多くの適用可能な発明の概念を提供するということが理解されるべきである。本明細書で議論する具体的な実施形態は、本発明を作製及び使用する具体的な方法の単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0010】
本発明の理解を容易にするため、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書で定義す
る用語は、本発明に関連する領域における当業者によって通常理解されるような意味を有する。「a」、「an」及び「the」のような用語は、単数のエンティティのみを指すように意図されるものではなく、具体的な例を例示に用いることができる一般的な部類を含む。本明細書の用語は、本発明の具体的な実施形態を説明するために用いられるが、それらの使用法は、請求項に概説されたときを除いて、本発明を限定するものではない。
【0011】
薄膜及び厚膜アディティブ及びサブトラクティブプロセスを用いてほとんどの半導体及びMEMS基板を処理することができる。サブトラクティブプロセスは、エッチング、ミリング、イオンビームミリング、リフトオフ又は他のプロセスを用いて、基板に又は基板自体から追加された材料を除去する。基板に応じてサブトラクティブプロセスは高速又は低速のいずれかとすることができる。サファイア基板は、その硬度及びサファイアの不活性な性質のため、エッチング、イオンビームミリング又はミリングが非常に困難である(遅い)。シリコン基板は、化学若しくはプラズマエッチング又はイオンビームミリングを用いてエッチングすることができる。より容易に処理される基板の1つは、感光性(photodefinable)ガラス基板である。
【0012】
感光性ガラス材料は、第1世代の半導体装置を用いて単純な3ステッププロセスで処理され、最終材料は、ガラス、セラミックのいずれかへと形成され、又はガラス及びセラミックの両方の領域を含むことができる。感光性ガラスには、多種多様なマイクロシステムコンポーネント、システムオンチップ及びシステムインパッケージの製造についていくつかの利点がある。微細構造及び電子部品が、従来の半導体及びプリント回路基板(PCB,printed circuit board)処理装置を用いてこれらのタイプのガラスで比較的安価に製
造されてきた。一般に、ガラスは高温安定性、良好な機械的及び電気的特性を有し、プラスチック並びに多くのタイプの金属より良好な耐化学性を有する。酸化セリウムの吸収帯内のUV光に曝露されると、酸化セリウムは、光子を吸収して電子を失うことによって増感剤として作用する。この反応により、隣接する酸化銀が還元されて銀原子が形成される。例えば、
Ce3++Ag=Ce4++Ag
【0013】
銀イオンは、熱処理プロセス中に銀ナノクラスターに合体し、周囲のガラスにおける結晶セラミック相の形成のための核形成部位を誘導する。この熱処理は、ガラス転移温度に近い温度で実行しなければならない。セラミック結晶相は、非露光のガラス質の、アモルファスガラス状領域より、フッ化水素酸(HF,hydrofluoric acid)のようなエッチャ
ントにより溶けやすい。特に、FOTURAN(登録商標)の結晶(セラミック)領域は、10%のHFにおいてアモルファス領域より約20倍速くエッチングされ、露光領域が除去されたときに壁の傾斜比が約20:1の微細構造が可能になる。T. R. Dietrich et al., "Fabrication technologies formicrosystems utilizing photoetchable glass," Microelectronic Engineering30, 497 (1996)参照、これを参照により本明細書に組み込む。感光性ガラスの他の組成物は、異なる速度でエッチングされることになる。
【0014】
フィルタ又は他の電子又はRF要素を形成するための受動デバイス又は受動デバイスの組み合わせを製造する1つの方法は、シリカ、酸化リチウム、酸化アルミニウム及び酸化セリウムからなる感光性ガラス基板を用いることができ、マスク及びUV光を用いて、感光性ガラス基板内に少なくとも1つの、2次元又は3次元の、セラミック相領域を備えたパターンを作製することを伴う。
【0015】
好ましくは、成形ガラス構造は、少なくとも1又は2以上の、2次元又は3次元の誘導デバイスを含む。容量性デバイスは、一連の接続された構造を作製して電力条件用の高表面積コンデンサを形成することによって形成される。これらの構造は、矩形、円形、楕円形、フラクタル、又は静電容量を生じさせるパターンを作成する他の形状のいずれかとす
ることができる。APEX(商標)ガラスのパターニングされた領域は、めっき又は気相蒸着を含むいくつかの方法によって、金属、合金、複合体、ガラス又は他の磁気媒体で充填することができる。受動デバイスが生じさせられたら、支持するAPEX(商標)ガラスをそのままにするか、又は除去して、直列又は並列に取り外すことができる受動デバイスのアレイを作製することができる。従来のシリーズプロセスは、レーザ、ソーイングウォータージェット及び他のプロセスを用いて基板を切断し、受動デバイスを含むダイをリリースする。新規なアプローチは、感光性ガラス基板の基本的な特性を用いて、各ダイを分離するハッチパターンを露光し、感光性ガラス基板をベークして露光領域をセラミック相に変換し、軽度接着剤を有するバッキングに感光性ガラス基板を取り付けてウエハ及び又はダイを支持し、次いで露光されたハッチパターンを完成させるトラフ又はトレンチを接着性バッキングまでエッチングする。このプロセスにより、軽接着性バッキング上で個々のダイが分離される。分離されたダイは、従来のピックアンドプレース技術を用いて除去し、リールツーリール又は他の配送システムに適用することができる。
【0016】
説明したリリースパターン、材料及び方法を用いて、矩形、円形、楕円形、フラクタル、又は受動デバイス若しくは受動デバイスの組み合わせの形状を模倣する他の形状を作製することができる。これにより、受動デバイスを含むダイをリリースするために基板を切断するレーザ、ソーイングウォータージェット及び他のプロセスのような従来のシリーズプロセスを用いていれば可能ではなかったダイ形状のリリースがさらに可能になる。
【0017】
これらのニーズに対処するため、本発明者らは、半導体、RFエレクトロニクス、マイクロ波エレクトロニクス、及び光学イメージングのための新規なパッケージング及び基板材料として、ガラスセラミック(APEX(登録商標)ガラスセラミック)を開発した。APEX(登録商標)ガラスセラミックは、第1世代の半導体装置を用いて単純な3ステッププロセスで処理され、最終材料は、ガラス、セラミックのいずれかへと形成され、又はガラス及びセラミックの両方の領域を含むことができる。APEX(登録商標)ガラスセラミックには、容易に製造される高密度ビア、実証済みのマイクロ流体能力、マイクロレンズ又はマイクロレンズアレイ、より剛性なパッケージのための高ヤング率、ハロゲンフリー製造、及び経済的製造を含む、現在の材料を超えるいくつかの利点がある。感光性ガラスには、多種多様なマイクロシステムコンポーネントの製造についていくつかの利点がある。微細構造が、従来の半導体処理装置を用いてこれらのガラスで比較的安価に製造されてきた。一般に、ガラスは高温安定性、良好な機械的及び電気的特性を有し、プラスチック及び多くの金属より良好な耐化学性を有する。我々の知る限り、唯一の市販の感光性ガラスは、Schott社によって作製されてInvenios社によってのみ米国へ輸入されたFOTURAN(登録商標)である。FOTURAN(登録商標)は、微量の銀イオンプラス他の微量元素、具体的には75~85重量%の酸化ケイ素(SiO)、7~11重量%の酸化リチウム(LiO)、3~6重量%の酸化アルミニウム(Al)、1~2重量%の酸化ナトリウム(NaO)、0.2~0.5重量%の三酸化アンチモニウム(Sb2O3)又は酸化ヒ素(As)、0.05~0.15重量%の酸化銀(AgO)、及び0.01~0.04重量%の酸化セリウム(CeO)を含むリチウムアルミニウムシリケートガラスを含む。本明細書で用いられるとき「APEX(登録商標)ガラスセラミック」、「APEX(登録商標)ガラス」又は単に「APEX(登録商標)」という用語は、本発明のガラスセラミック組成物の一実施形態を示すために用いられる。
【0018】
酸化セリウムの吸収帯内のUV光に曝露されると、酸化セリウムは増感剤として作用し、光子を吸収し、隣接する酸化銀を還元する電子を失って銀原子を形成する。例えば、
Ce3++Ag+=Ce4++Ag0
【0019】
銀原子は、ベーキングプロセス中に銀ナノクラスターに合体し、周囲のガラスの結晶化のための核形成部位を誘導する。マスクを通してUV光に曝露されれば、ガラスの露光領
域のみが後続の熱処理中に結晶化することになる。
【0020】
この熱処理は、ガラス転移温度に近い温度(例えば、FOTURAN(登録商標)では空気中で465℃より大きい)で実行しなければならない。結晶相は、非露光のガラス質のアモルファス領域より、フッ化水素酸(HF)のようなエッチャントにより溶けやすい。特に、FOTURAN(登録商標)の結晶領域は、10%のHFにおいてアモルファス領域より約20倍速くエッチングされ、露光領域が除去されたときに壁の傾斜比が約20:1の微細構造が可能になる。T. R. Dietrich et al., "Fabrication technologies for
microsystems utilizing photodefinable glass," Microelectronic Engineering30, 497 (1996)参照、これを参照により本明細書に組み込む。
【0021】
一般に、ガラスセラミック材料は、性能、均一性、他者による使いやすさ及び可用性の問題によって悩まされている微細構造形成において限られた成功しか収めていない。過去のガラスセラミック材料は約15:1のイールドエッチングアスペクト比を有するのに対し、APEX(登録商標)ガラスは50:1より大きな平均エッチングアスペクト比を有する。これにより、ユーザはより小さく、かつより深いフィーチャを作製することが可能になる。加えて、我々の製造プロセスにより、90%より大きな製品歩留まりが可能になる(従来のガラスの歩留まりは50%により近い)。最後に、従来のガラスセラミックにおいて、ガラスの約30%のみがセラミック状態に変換されるが、APEX(商標)ガラスセラミックではこの変換は70%により近くなる。
【0022】
APEX(登録商標)組成物は、その性能を向上させるための3つの主なメカニズムを提供する。(1)銀の量が多くなると、粒界でより速くエッチングされるより小さなセラミック結晶の形成につながる、(2)シリカ含有量(HF酸によってエッチングされる主成分)が減少すると、非露光材料の望ましくないエッチングが減少する、(3)アルカリ金属及び酸化ホウ素の総重量パーセントが高いほど、製造中にはるかに均質なガラスが生成される。
【0023】
ガラスのセラミック化は、ガラス基板全体を310nmの光の約20J/cmに曝露することによって達成される。セラミック内にガラススペースを作製しようとするとき、ユーザは、ガラスがガラスのままであるべき場所を除いて、材料のすべてを露光する。一実施形態において、本発明は、異なる直径を備えた様々な同心円を含む石英/クロムマスクを提供する。
【0024】
本発明は、電気マイクロ波及び無線周波数用途のためのガラスセラミック構造内又は上に誘導デバイスを製造するための方法を含む。ガラスセラミック基板は、60~76重量%のシリカ、少なくとも3重量%のKOと6重量%~16重量%のKOとNaOの組み合わせ、AgO及びAuOからなる群から選択される少なくとも1つの酸化物の0.003~1重量%、0.003~2重量%のCuO、0.75重量%~7重量%のB、及び6~7重量%のAlと、B2O3の組み合わせ、及び13重量%を超えないAl2O3、8~15重量%のLiO、及び0.001~0.1重量%のCeOを含むがこれらに限定されない、多数の組成変化を有する感光性ガラス基板とすることができる。この及び他の様々な組成物は一般にAPEX(登録商標)ガラスと呼ばれる。
【0025】
露光部分は、ガラス転移温度に近い温度までガラス基板を加熱することによって結晶性材料へ変換させることができる。フッ化水素酸のようなエッチャントでガラス基板をエッチングするとき、ガラスが広いスペクトルの中紫外線(約308~312nm)のフラッドランプに曝露されて少なくとも30:1のアスペクト比を有する成形ガラス構造を提供し、誘導構造を作製すると、露光部分の非露光部分に対する異方性エッチング比は少なく
とも30:1になる。露光用のマスクは、誘導構造/デバイスを作製するための湾曲した構造を形成するために露光に連続的なグレースケールを提供するハーフトーンマスクのものとすることができる。デジタルマスクをフラッド露光で用いることもでき、誘導構造/デバイスを作製するために用いることができる。露光ガラスは次いで、通常2ステッププロセスでベークされる。420℃~520℃の温度範囲で10分~2時間加熱して銀イオンを銀ナノ粒子に合体させ、及び520℃~620℃の温度範囲で10分から2時間加熱して、酸化リチウムを銀ナノ粒子の周りに形成させることが可能になる。ガラスプレートは次いでエッチングされる。ガラス基板は、HF溶液の、通常5体積%~10体積%のエッチャントでエッチングされ、露光部分の非露光部分に対するエッチング比は、広いスペクトルの中間紫外線フラッドライトで露光されたとき、少なくとも30:1であり、レーザで露光されたとき、30:1より大きく、少なくとも30:1の異方性エッチング比の成形ガラス構造を提供する。受動デバイスが生じさせられたら、支持するAPEX(商標)ガラスをそのままにするか、又は除去して、直列又は並列に取り外すことができる受動デバイスのアレイを作製することができる。従来のシリーズプロセスは、レーザ、ソーイングウォータージェット及び他のプロセスを用いて基板を切断し、受動デバイスを含むダイをリリースする。本発明は、各ダイを分離するトレンチパターンを感光性ガラス基板へ露光し、感光性ガラス基板をベークして露光領域をセラミック相に変換し、軽度接着剤を有するバッキングに感光性ガラス基板を取り付けてウエハ及び又はダイを支持し、次いで露光されたハッチパターンを完成させるトラフ又はトレンチを接着性バッキングまでエッチングする。このプロセスにより、軽接着性バッキング上で個々のダイが分離される。分離されたダイは、従来のピックアンドプレース技術を用いて除去し、リールツーリール又は他の配送システムに適用することができる。
【0026】
説明したパターンは、矩形、円形、楕円形、フラクタル、又は受動デバイス若しくは受動デバイスの組み合わせの形状を模倣する他の形状のいずれかとすることができる。これにより、受動デバイスを含むダイをリリースするために基板を切断するレーザ、ソーイングウォータージェット及び他のプロセスのような従来のシリーズプロセスを用いていれば可能ではなかったダイ形状のリリースがさらに可能になる。
【0027】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用を以下で詳細に議論するが、本発明は、多種多様な具体的な文脈において具現化することができる多くの適用可能な発明の概念を提供するということが理解されるべきである。本明細書で議論する具体的な実施形態は、本発明を作製及び使用する具体的な方法の単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0028】
本発明は、感光性ガラスセラミック基板内又は上に作製されたコンデンサ、インダクタ、フィルタ又は他の受動デバイスを含む。感光性ガラスセラミック基板は、エッチングされると感光性ガラス基板内/上に作製されたデバイスをリリースするトレンチのハッチパターンを有する。感光性ガラスウエハは、50μmから1,000μmまでの厚さの範囲とすることができる。1つの非限定的な場合において400μmである。感光性ガラスは次いで、ハッチパターンにおけるトレンチ構造でパターニングされる。
【0029】
第1:310nmの光の20J/cmを用いて最小2分間、かつ最大10分間、感光性ガラスにおけるハッチパターントレンチ構造を露光する。
【0030】
第2:トレンチのハッチパターンを生成するために用いられた同じマスクを用いて、感光性ガラス基板上にネガティブフォトレジストパターンを作製する。
【0031】
第3:基板を次いでスパッタリングシステム内へ配置して1.0μmのクロム金属を堆積させる。
【0032】
第4:フォトレジストを除去し、トレンチのハッチパターンの上に保護用硬質クロムマスクを残す。
【0033】
第5:感光性ガラス基板を処理して、受動デバイス又は受動デバイスに基づくシステムをベークサイクルまで作製し、露光領域をナノフェーズセラミックに変換する。米国特許第10,201,091号明細書、"Photo-definable glass with integrated electronics and groundplane"、米国特許第10,070,533号明細書、"Photo-definableglass with integrated electronics and ground plane"、又は米国特許第8,709,702号明細書、"Methods to fabricate a photoactive substrate suitable formicrofabrication"において教示された3DGS参照、関連する材料及び/又は方法及びその一部を参照により本明細書に組み込む。
【0034】
第6:受動デバイスを備えた感光性ガラス基板は次いで、2ステッププロセスでベークされる。420℃~520℃の温度範囲で10分~2時間加熱して銀イオンを銀ナノ粒子に合体させ、及び520℃~620℃の温度範囲で10分から2時間加熱して、酸化リチウムを銀ナノ粒子の周りに形成させることが可能になる。
【0035】
第7:メタライゼーション及びパッシベーションを通して受動デバイス又は受動デバイスに基づくシステムの作製を終了する。
【0036】
第8:過塩素酸(HClO)とセリウムアンモニウムの混合物を用いてクロム金属を除去する。
【0037】
第9:ウエハの感光性ガラス基板の裏側に軽度接着剤でポリイミド層を取り付ける。
【0038】
第10:HF溶液、通常5体積%~10体積%のエッチャントにおいて感光性ガラス基板のナノセラミックハッチパターントレンチをエッチングし、露出部分の非露出部分のものに対するエッチング比は少なくとも30:1であり、ハッチパターンにおける露光トレンチ構造はガラスの体積を通してエッチングされる。
【0039】
ハッチパターンのトレンチ構造は、直径が5μmから250μmまでの範囲とすることができるが、好ましくは直径が30μmである。トレンチの長さは、感光性ガラス基板の幅の全部又は一部を横切ることができる。セラミック壁のエッチング表面テクスチャリングに対するわずかなテクスチャ、及び垂直から1°と20°との間であるわずかな傾斜がある。傾斜は、感光性ガラスの優先的なエッチング率(露光領域から非露光領域へ30:1)によるものである。HFがトレンチパターンに隣接する非露光領域に当たると、このエッチャントは垂直に30μm除去されるごとに横に1μm除去することになり、傾斜及びテクスチャ表面を作製する。これは、荒い/粗い表面のほぼ垂直な壁で基板を研磨する切削工具を用いることとは対照的である。切削/研磨ブレード/ホイールの幅のため、スクライブ又はカットラインは100μmより大きくする必要がある。スクライブ又はカットラインの幅によって基板上のダイの総数が決まる。スクライブ又はカットラインが細いほど、ダイを基板上でより近く(基板あたり、より多くの製品を)パックすることができる。本発明のいくつかの実施形態において、スクライブラインは、わずか10、20、30、40、50、60、70、75、80、又は90μm幅であるか、又はこれらの具体的な幅のそれぞれの間の範囲である。
【0040】
したがって、本発明は、基板からダイを大規模にパラレルダイリリースするバッチ方法を含み、ガラス基板からの受動、システムインパッケージ(SiP,system in package
)又はシステムインアパッケージ(system-in-a-package)、又はシステムオンチップ(
SoC,systems-on-chip)、フィルタ及び/又は他のデバイスの低コスト大量生産が可
能になる。
【0041】
一実施形態において、本発明は、基板からパラレルバッチプロセスで1又は2以上のダイのためのダイリリース又はスクライブパターンを作製する方法であって活性化UVエネルギー源を用いて感光性ガラス基板の少なくとも一部を、ダイリリース又はスクライブパターンで露光するステップと、感光性ガラス基板をそのガラス転移温度を超えて少なくとも10分間加熱相まで加熱するステップと、感光性ガラス基板を冷却して、露光された感光性ガラス基板の少なくとも一部を結晶性材料に変換させ、ガラスセラミック結晶性基板を形成するステップと、露光領域をUV光遮断層でコーティングするステップと、基板の前面上に受動部品、フィルタ、又は他のデバイスを作製して完成させるステップと、感光性ガラス基板におけるダイリリース又はスクライブパターンのセラミック相をエッチャント溶液でエッチング除去して基板からダイをリリースするステップと、を含む、これらからなる、又は本質的にこれらからなる、方法を含む。
【0042】
一実施形態において、本発明は、基板からパラレルバッチプロセスで1又は2以上のダイのためのダイリリース又はスクライブパターンを作製する方法であって、ダイリリース又はスクライブパターンで感光性ガラス基板をマスキングするステップと、感光性ガラス基板の少なくとも一部をダイリリースとして活性化UVエネルギー源を用いて露光するステップと、感光性ガラス基板をそのガラス転移温度を超えて少なくとも10分間加熱相まで加熱するステップと、感光性ガラス基板を冷却して、露光された感光性ガラス基板の少なくとも一部を変換させ、感光性ガラス基板のガラスセラミック結晶性部分を形成するステップと、露光領域をUV光遮断層でコーティングするステップと、受動部品、フィルタ、又は他のデバイスを作製して完成させるステップと、基板の裏側へ弱接着性バッキングを配置するステップと、ダイをリリースするエッチャント溶液で感光性ガラス基板におけるダイリリース又はスクライブパターンのガラスセラミック部分をエッチング除去するステップと、弱接着性バッキングから1又は2以上のダイを除去するステップと、を含む、これらからなる、又は本質的にこれらからなる、方法を含む。
【0043】
本発明及びその利点を詳細に説明してきたが、添付の請求項によって定義されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換及び交代を本明細書で行うことができるということが理解されるべきである。また、本願の範囲は、本明細書に記載のプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法及びステップの特定の実施形態に限定されるように意図されていない。当業者が本発明の開示から容易に理解するであろうように、本明細書に記載の対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行する、又は実質的に同じ結果を達成する、現在存在する、又は後に開発される、プロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、又はステップは、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の請求項は、その範囲内に、このようなプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、又はステップを含むように意図されている。
【0044】
請求項及び/又は明細書において「含む(comprising)」という用語と併せて用いられるときの「a」又は「an」という単語の使用は、「1」を意味することができるが、これは「1又は2以上」、「少なくとも1つ」、及び「1又は1より多い」の意味とも一致する。請求項における「又は」という用語の使用は、本開示は代替物及び「及び/又は」のみに言及する定義を支持しているが、代替物のみを指すように明示的に示され、又はこれらの代替物が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するように用いられる。本願を通して、「約」という用語は、ある値が、この方法がその値を決定するために使用され、デバイスについての固有の誤差の変動、又は研究対象間に存在する変動を含むということを示すために用いられる。
【0045】
本明細書及び請求項において用いられるとき、「comprising(含む)」(並びに「comprise」及び「comprises」のような、comprisingのあらゆる形態)、「having(有する)」(並びに「have」及び「has」のような、havingのあらゆる形態)、「including(含む)」(並びに「includes」及び「include」のような、includingのあらゆる形態)又は「containing(含む)」(並びに「contains」及び「contain」のような、containingのあらゆる形態)は、包括的すなわちオープンエンドであり、追加の、記載されていない要素又は方法ステップを除外しない。本明細書に提供される構成物及び方法のいずれかの実施形態において、「comprising(含む)」は、「consisting essentially of(本質的に~からなる)」又は「consisting of(~からなる)」に置き換えることができる。本明細書で用いられるとき、「consisting essentially of(本質的に~からなる)」という句には、指定された完全体(integer)又はステップ、
並びに特許請求された発明の特徴又は機能に実質的に影響を及ぼさないものが要求される。本明細書で用いられるとき、「consisting(構成する)」という用語は、記載された完全体(integer)(例えば、特徴、要素、特色、特性、方法/プロセスステッ
プ又は限定)又は完全体(integer)(例えば、特徴、要素、特色、特性、方法/プロセ
スステップ、又は限定)の群のみの存在を示すために用いられる。
【0046】
本明細書で用いられるような「又はこれらの組み合わせ」という用語は、その用語に先行する列挙された項目のすべての順列及び組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、又はこれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABCの少なくとも1つを、そして特定の文脈において順序が重要であれば、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABも含むように意図されている。この例で続けると、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB、などのような、1又は2以上の項目又は用語の繰り返しを含む組み合わせが明示的に含まれる。当業者は、他が文脈から明らかでない限り、通常、任意の組み合わせにおける項目又は用語の数に制限がないということを理解するであろう。
【0047】
本明細書で用いられるとき、限定はしないが、「約」、「実質的な」又は「実質的に」のような近似の言葉は、そのように修正されたとき、必ずしも絶対的又は完全ではないと理解される状態であるが、その状態を存在するものとして指定することを保証するのに十分に近いと当業者に見なされるであろう状態を指す。説明が変動し得る程度は、どれくらい大きく変化が起こり、それでも当業者に、修正された特徴を、修正されていない特徴の要求される特色及び能力を依然として有するものとして認識させることができるかに依存することになる。一般に、しかし先行する議論を条件として、「約」のような近似の語によって修正される本明細書の数値は、記載された値から少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12又は15%だけ変動し得る。
【0048】
本明細書に開示及び特許請求された構成物及び/又は方法のすべては、本開示に照らして過度の実験なしに作製及び実行することができる。本発明の構成物及び方法を好ましい実施形態の観点において説明してきたが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の構成物及び/又は方法に、そして方法のステップ又はステップのシーケンスにおいて変形を適用することができるということは当業者には明らかであろう。当業者に明らかなすべてのこのような同様の代替例及び修正例は、添付の請求項によって定義されたような本発明の精神、範囲及び概念の範囲内であると見なされる。
【0049】
特許庁、及び本願に関して発行されるいかなる特許のいかなる読者も本明細書に添付の請求項を解釈するのを支援するため、出願人は、米国特許法第112条の段落(f)の段落6、又は同等物が本願の出願の日に存在しているため、「~のための手段」又は「~の
ためのステップ」という言葉が特定の請求項において明示的に用いられていない限り、添付の請求項のいずれもこれを適用するように意図していないということを特記したい。
【0050】
請求項のそれぞれについて、各従属請求項は、前の請求項が請求項の用語又は要素のための適切な先行詞を提供する限り、独立請求項及びそれぞれすべての請求項のための前の従属請求項のそれぞれの両方から従属することができる。
図1
図2