(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180766
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ケーキ用起泡剤
(51)【国際特許分類】
A21D 2/16 20060101AFI20231214BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20231214BHJP
【FI】
A21D2/16
A21D13/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094328
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一哉
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB05
4B032DK09
4B032DK10
4B032DL02
(57)【要約】
【課題】本発明は、ケーキ生地に配合する、ケーキ生地の起泡性に優れたケーキ用起泡剤を提供することを目的とする。
【解決手段】モノグリセリン脂肪酸エステルと、モノエステル含有量が70質量%以上、かつHLB値が9以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有するケーキ用起泡剤。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノグリセリン脂肪酸エステルと、モノエステル含有量が70質量%以上、かつHLB値が9以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有するケーキ用起泡剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーキ用起泡剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポンジケーキ等のケーキの製造にあたっては、原料に使用する卵の起泡力を利用した方法として、全卵を泡立てた後に小麦粉と合わせる共立て法、卵黄と卵白を別々に泡立てた後に小麦粉と合わせる別立て法等の製造方法を用いることが主流であった。しかし、これらの製造方法は、工業的な大量生産には向いておらず、近年では、ケーキ原料全てを混合した後に起泡させてケーキ生地を製造するオールインミックス法が主流となっている。しかし、オールインミックス法では、卵の起泡力が十分に発揮されない、油脂等の原料が起泡性に影響する、といった課題を有している。このため、オールインミックス法でも良好な起泡性を得るために、グリセリン脂肪酸エステル等の食品用乳化剤を応用した技術が提案されている。
【0003】
食品用乳化剤を用いたケーキ生地の起泡性の改良に関する技術としては、例えば、飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするモノアシルグリセロール、ショ糖脂肪酸エステル等を一定の条件で含有するケーキ用乳化組成物(特許文献1、特許文献2)、食品用乳化剤として、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル等を一定の条件で含有するケーキ用乳化油脂組成物(特許文献3)、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、HLBが5~15であるショ糖脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを一定の条件で含有するケーキ用起泡性乳化剤組成物(特許文献4)等が開示されている。
【0004】
しかし、これらの技術では、ケーキ生地の起泡性の改良効果は必ずしも十分とはいえず、より実用性があり、効果に富んだ食品用乳化剤を用いたケーキ用起泡剤に関する技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-58348号公報
【特許文献2】特開2015-97544号公報
【特許文献3】特開2006-75137号公報
【特許文献4】特開2009-95247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ケーキ生地に配合する、ケーキ生地の起泡性に優れたケーキ用起泡剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題に対して鋭意検討を行った結果、モノグリセリン脂肪酸エステルと、モノエステル含有量が70質量%以上、かつHLB値が9以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを併用することで、前記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
モノグリセリン脂肪酸エステルと、モノエステル含有量が70質量%以上、かつHLB値が9以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有するケーキ用起泡剤、
から成っている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のケーキ用起泡剤は、ケーキ生地の起泡性に優れている。また、ケーキ生地を焼成したケーキのボリューム、食感が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いられるモノグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸のエステル化生成物であり、グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応、グリセリンと油脂(トリアシルグリセリン)とのエステル交換反応等、自体公知の方法で製造できる。モノグリセリン脂肪酸エステルは、モノエステル(モノグリセリンモノ脂肪酸エステル)、ジエステル(モノグリセリンジ脂肪酸エステル)、これらの混合物等を挙げることができるが、モノエステル或いはモノエステルを一定量含有する混合物が好ましい。モノグリセリン脂肪酸エステル中のモノエステル含有量は、45質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が最も好ましい。モノエステル含有量を高める方法としては、例えば、流下薄膜式分子蒸留装置、遠心式分子蒸留装置等により分子蒸留する方法を用いることができる。
【0011】
本発明で用いられるモノグリセリン脂肪酸エステルの親水基と親油基とのバランスを表す値であるHLB値に特に制限はないが、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。HLB値の上限に特に制限はないが、5以下が好ましく、4.5以下がより好ましい。なお、モノエステル含有量及びHLB値は後述する方法によって求めることができる。
【0012】
本発明で用いられるモノグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば、炭素数6~24の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸を挙げることができる。炭素数6~24の飽和脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等を挙げることができる。炭素数6~24の不飽和脂肪酸としては、例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等を挙げることができる。これらの中でも、炭素数12~22の飽和脂肪酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸がより好ましい。モノグリセリン脂肪酸エステルは、これら脂肪酸の1種類のみを構成脂肪酸とするものであっても、任意の2種類以上を構成脂肪酸とするものであってもよい。
【0013】
本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、モノエステル含有量が70質量%以上、かつHLB値が9以上である。本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応等、自体公知の方法で製造できる。ポリグリセリンは、通常グリセリン又はグリシドールあるいはエピクロルヒドリン等を加熱し、重縮合反応させて得られる重合度の異なるポリグリセリンの混合物であり、例えば、ジグリセリン(平均重合度が約1.5~2.4のジグリセリン組成物等)、トリグリセリン(平均重合度が約2.5~3.4のトリグリセリン組成物等)、テトラグリセリン(平均重合度が約3.5~4.4のテトラグリセリン組成物等)、ヘキサグリセリン(平均重合度が約6のヘキサグリセリン組成物等)、オクタグリセリン(平均重合度が約8のオクタグリセリン組成物等)、デカグリセリン(平均重合度が約10のデカグリセリン組成物等)等を挙げることができる。ポリグリセリンの含有量を高めるための精製法としては、例えば、蒸留あるいはカラムクロマトグラフィー等、自体公知の方法を用いることができる。
【0014】
本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法として、例えば、攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板等を備えた反応容器に、ポリグリセリンと脂肪酸を等モルで仕込み、必要により触媒を加えて攪拌混合し、窒素ガス雰囲気下で、所定の温度、圧力条件にてエステル化反応を行う方法を挙げることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、モノエステル(ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル)の他、ジエステル(ポリグリセリンジ脂肪酸エステル)、トリエステル(ポリグリセリントリ脂肪酸エステル)等を含む混合物であってもよい。
【0015】
本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステル中のモノエステル含有量は、70質量%以上であり、80質量%以上が好ましい。モノエステル含有量を高める方法としては、例えば、低真空度での蒸留等で未反応のポリグリセリン等を除き、さらに、例えば、流下薄膜式分子蒸留装置、遠心式分子蒸留装置等により分子蒸留する方法を用いることができる。
【0016】
本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは、例えば、ジグリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステル、テトラグリセリン脂肪酸エステル、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル、オクタグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができ、これらの中でも、ジグリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、トリグリセリン脂肪酸エステルがより好ましい。本発明では、ポリグリセリン脂肪酸エステルを1種のみ、又は任意の2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば、炭素数6~24の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸を挙げることができる。炭素数6~24の飽和脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等を挙げることができる。炭素数6~24の不飽和脂肪酸としては、例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等を挙げることができる。これらの中でも、炭素数12~22の飽和脂肪酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸がより好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、これら脂肪酸の1種類のみを構成脂肪酸とするものであっても、任意の2種類以上を構成脂肪酸とするものであってもよい。
【0018】
本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは、親水基と親油基とのバランスを表す値であるHLB値が9以上であり、9.5以上が好ましい。HLB値の上限に特に制限はないが、12以下が好ましく、11以下がより好ましく、10.5以下がさらに好ましい。前記範囲であると、発明の効果、即ち起泡性を発揮する点で好ましい。なお、HLB値は、乳化剤における親水基と親油基のバランスに応じて0から20までの値をとり、これが0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高いことを表す。本発明においてHLB値は、アトラス法により、下記計算式により求めることができる。下記計算式中のけん化価及び中和価は、例えば、「基準油脂分析試験法(1)」(社団法人日本油化学会、1996年)に記載の方法等に基づき測定できる。
【0019】
HLB値=20×(1-S/A)
S:モノグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルのけん化価
A:原料脂肪酸の中和価
【0020】
本発明で用いられるモノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル中のモノエステル含有量は、エステル化反応をさせるグリセリン又はポリグリセリンと脂肪酸とのモル比から、無差別分布の法則に従って算出することができる。例えば、トリグリセリン1モルと脂肪酸(例えば、ステアリン酸)1モルを反応させた場合、モノエステル含有量は約41質量%と算出される。また、モノエステル含有量は、下記分析条件でモノグリセリン脂肪酸エステル、又はポリグリセリン脂肪酸エステルをHPLC分析後、データ処理装置によりクロマトグラム上に記録された被検試料の各成分に対応するピークについて、積分計を用いてピーク面積を測定し、測定されたピーク面積に基づいて、面積百分率として求めることができる。
【0021】
<HPLC分析条件>
装置 高速液体クロマトグラフ(型式:LC-10AS;島津製作所社製)
検出器 RI検出器(型式:RID-6A;島津製作所社製)
カラム(2本連結) GPCカラム(型式:SHODEX KF-802;昭和電工社製)
温度 40℃
移動相 THF
流量 1.0mL/min
検液注入量 15μL
【0022】
本発明のケーキ用起泡剤は、その形態に特に制限はないが、ケーキ生地への分散性の点で、液状、ペースト状、ゲル状、半固形状等であることが好ましい。
【0023】
本発明のケーキ用起泡剤に含有するモノグリセリン脂肪酸エステルは、3~25質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましく、10~20質量%がさらに好ましく、15~20質量%が最も好ましい。本発明のケーキ用起泡剤に含有するポリグリセリン脂肪酸エステルは、3~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましく、7~12質量%がさらに好ましい。
なお、本発明のケーキ用起泡剤には、本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステル、即ちモノエステル含有量が70質量%以上、かつHLB値が9以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有しさえすればよく、後述する任意の成分としてのポリグリセリン脂肪酸エステルをさらに含有させることもできる。
【0024】
本発明のケーキ用起泡剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意の成分を含有させてもよい。このような成分としては、多価アルコール、油脂、澱粉、タンパク質、安定剤、pH調整剤、本発明で用いられるモノグリセリン脂肪酸エステル及び本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステル以外の食品用乳化剤、酸化防止剤、着色料、香料、水等を挙げることができる。
【0025】
多価アルコールとしては、1分子中に2つ以上のヒドロキシ基をもつ化合物であれば特に制限はなく、例えば、キシロース、ブドウ糖、果糖等の単糖類、ショ糖、乳糖、麦芽糖等のオリゴ糖類、デキストリン、水飴等の澱粉分解物、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース等のマルトオリゴ糖類、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等の異性化糖類、蜂蜜等の転化糖類、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元水飴等の糖アルコール類、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール等を挙げることができ、これらのなかでも、澱粉分解物、糖アルコール類、グリセリンが好ましく、水飴、ソルビトール、還元水飴、グリセリンがより好ましい。本発明のケーキ用起泡剤に多価アルコールが含まれる場合、多価アルコールは、10~50質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましい。
【0026】
油脂としては、植物油脂、動物油脂、加工油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド等を挙げることができる。植物油脂としては、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、コメ油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油、ハイオレイックヒマワリ油等を挙げることができる。動物油脂としては、豚脂、牛脂、魚油、乳脂、バター等を挙げることができる。加工油脂としては、植物油脂、動物油脂に分別、水素添加、エステル交換等の処理をしたものをいい、例えば、パーム硬化油脂、ヤシ硬化油脂、大豆硬化油脂、菜種硬化油脂等の硬化油脂、パーム分別油脂、ヤシ分別油脂、大豆分別油脂、菜種分別油脂等の分別油脂等を挙げることができる。中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、カプロン酸トリグリセリド、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、ラウリン酸トリグリセリド等を挙げることができる。本発明のケーキ用起泡剤に油脂が含まれる場合、油脂は、1~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましい。
【0027】
澱粉としては、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉等の他、これらの澱粉に酸処理、アルカリ処理、酸化処理、エステル化処理、エーテル化処理、リン酸化処理、架橋処理、加熱処理、α化処理、粉砕処理、酵素処理等を施した加工澱粉等を挙げることができる。タンパク質としては、カゼインナトリウム等の乳タンパク質、大豆タンパク質、えんどうタンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質等を挙げることができる。
【0028】
安定剤としては、寒天、ゼラチン、ペクチン、カラギナン、カードラン、マンナン、アルギン酸、アルギン酸塩、多糖類、大豆多糖類、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、タラガム、トラガントガム、ジェランガム、アラビアガム等を挙げることができる。pH調整剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を挙げることができる。
【0029】
本発明で用いられるモノグリセリン脂肪酸エステル及び本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステル以外の食品用乳化剤としては、モノエステル含有量が70質量%未満又はHLB値が9未満のポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0030】
酸化防止剤としては、トコフェロール、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸塩、L-アスコルビン酸脂肪酸エステル、茶抽出物、ヤマモモ抽出物、ローズマリー抽出物、リン酸塩等を挙げることができる。着色料としては、β-カロテン、クチナシ色素、ベニバナ色素等を挙げることができる。
【0031】
本発明のケーキ用起泡剤に水が含まれる場合は、水は、20~70質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。
【0032】
本発明のケーキ用起泡剤の製造方法は、特に制限はなく、自体公知の方法を用いることができるが、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルをそれぞれ65~90℃で加熱溶融させ、これらを均一に分散した混合液としてもよく、これに、水、多価アルコール等を65~90℃で加熱した水相を添加した混合液としてもよい。また、油脂を配合する場合は、例えば、油脂にモノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルを投入し、65~90℃で加熱溶解して得られた油相に、水、多価アルコール等を65~90℃で加熱した水相を添加した混合液としてもよく、さらにこの混合液を乳化し、乳化液としてもよい。また、前記のように得られた混合液、乳化液を粉末化してもよい。
【0033】
本発明のケーキ用起泡剤は、焼成前のケーキ生地に添加し、攪拌することでケーキ生地の起泡性を向上させることができる。特に、ケーキ原料全てを混合した後に起泡させてケーキ生地を製造するオールインミックス法において、優れた起泡性を得ることができる。また、ケーキ生地の焼成後は、食感が良好でボリュームのあるケーキを得ることができる。本発明のケーキ用起泡剤の使用方法は、焼成前のケーキ生地に添加し得る方法であれば、特に制限はないが、ケーキ生地の製造工程で直接添加する方法、他の原料にあらかじめ添加する方法等を挙げることができる。
【0034】
本発明のケーキ用起泡剤の使用量は、ケーキ生地に含まれる小麦粉等の穀粉100質量部に対して3~20質量部が好ましく、3~10質量部がより好ましく、5~10質量部がさらに好ましい。
【0035】
本発明のケーキ用起泡剤を使用できるケーキは、例えば、スポンジケーキ、ロールケーキ、バタースポンジケーキ、パウンドケーキ、マドレーヌ、バウムクーヘン、カステラ、蒸しケーキ等を挙げることができる。
【0036】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【実施例0037】
[トリグリセリン混合物(試作品)の作製]
攪拌機、温度計、ガス吹き込み管及び水分離器を取り付けた反応釜にグリセリン20kgを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム20W/V%水溶液100mlを加え、窒素ガスの気流中250℃で4時間グリセリン縮合反応を行った。得られた反応生成物を90℃まで冷却し、リン酸(含量:85質量%)約20gを添加して触媒を中和した後ろ過し、ろ液を160℃、400Paの条件下で減圧蒸留し、グリセリンを除き、続いて200℃、20Paの高真空条件下で分子蒸留し、ジグリセリンを主成分とする留分約3.7kgを除き、さらに、240℃、20Paの高真空条件下で分子蒸留し、約1.5kgの留分を得た。次に、該留分に活性炭を1質量%加え、減圧下にて脱色処理した後ろ過した。得られたトリグリセリン混合物(試作品)は、グリセリン1質量%、ジグリセリン4質量%、トリグリセリン88質量%、テトラグリセリン3質量%、環状ポリグリセリン4質量%を含み、水酸基価は約1164で、その平均重合度は約3.0であった。
【0038】
[ポリグリセリン脂肪酸エステルAの作製]
トリグリセリン混合物(試作品)480g、及びパルミチン酸(商品名:パルミチン酸98;ミヨシ油脂社製)512gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム10W/V%溶液20mlを加え、窒素ガス気流中240℃で酸価12以下となるまで、約2時間エステル化反応を行なわせた。得られた反応混合物を約130℃まで冷却し、リン酸(含量:85質量%)4gを添加して触媒を中和し、その温度で約一時間放置し、分離した未反応のトリグリセリン約80gを除去し、トリグリセリンパルミチン酸エステル約950gを得た。次に、該トリグリセリンパルミチン酸エステルを遠心式分子蒸留装置(実験機:CEH-300II;ULVAC社製)を用いて蒸留し、温度約240℃、20Paの真空条件下で未反応のトリグリセリン等の低沸点化合物を除去し、続いて温度約250℃、1Paの高真空条件下で分子蒸留し、留分として、ポリグリセリン脂肪酸エステルA(トリグリセリンパルミチン酸エステル)約200gを得た。これを分析したところ、モノエステル含有量が約80質量%、HLB値が10.0であった。
【0039】
[ポリグリセリン脂肪酸エステルBの作製]
トリグリセリン混合物(試作品)406.4g、パルミチン酸(商品名:パルミチン酸98;ミヨシ油脂社製)92.8g、及びステアリン酸(商品名:ステアリン酸65;ミヨシ油脂社製)296gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム10W/V%溶液20mlを加え、窒素ガス気流中240℃で酸価12以下となるまで、約2時間エステル化反応を行なわせた。得られた反応混合物を約130℃まで冷却し、リン酸(含量:85質量%)3.2gを添加して触媒を中和し、その温度で約一時間放置し、分離した未反応のトリグリセリン約80gを除去し、ポリグリセリン脂肪酸エステルB(トリグリセリンパルミチン酸及びステアリン酸エステル)約950gを得た。これを分析したところ、モノエステル含有量が約38質量%、HLB値が9.8であった。
【0040】
[ケーキ用起泡剤の作製]
(1)原料
1)モノグリセリン脂肪酸エステルA(商品名:エマルジーP-100;主な構成脂肪酸 パルミチン酸及びステアリン酸;モノエステル含有量約95質量%;HLB値4.3;理研ビタミン社製)
2)モノグリセリン脂肪酸エステルB(商品名:ポエムP-200;主な構成脂肪酸 パルミチン酸及びステアリン酸;モノエステル含有量約45質量%;HLB値3.2;理研ビタミン社製)
3)ポリグリセリン脂肪酸エステルA(トリグリセリンパルミチン酸エステル;モノエステル含有量約80質量%;HLB値10.0)
4)ポリグリセリン脂肪酸エステルB(トリグリセリンパルミチン酸及びステアリン酸エステル;モノエステル含有量約38質量%;HLB値9.8)
5)ポリグリセリン脂肪酸エステルC(商品名:ポエムDP-95RF;ジグリセリン脂肪酸エステル;主な構成脂肪酸 パルミチン酸;モノエステル含有量約80質量%;HLB値8.0;理研ビタミン社製)
6)ポリグリセリン脂肪酸エステルD(商品名:ポエムJ-2081V;ジグリセリン脂肪酸エステル;主な構成脂肪酸 パルミチン酸及びステアリン酸;モノエステル含有量約35質量%;HLB値6.0;理研ビタミン社製)
7)ポリグリセリン脂肪酸エステルE(デカグリセリン脂肪酸エステル;主な構成脂肪酸 パルミチン酸及びステアリン酸;モノエステル含有量約40質量%;HLB値16.0)
8)グリセリン(商品名:食品添加物グリセリン;ミヨシ油脂社製)
9)ソルビトール(商品名:ソルビトールF;物産フードサイエンス社製)
10)炭酸ナトリウム(商品名:食品添加物炭酸ナトリウム(粉末);高杉製薬社製)
11)水
【0041】
(2)作製方法
各試験区において、得られるケーキ用起泡剤が500gとなるよう、表1に記載の原料のうち、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び炭酸ナトリウムについて、それぞれの含有量(質量%)を1Lステンレスビーカーに投入し、80℃で加熱混合し、溶液1を得た。次に表1の原料のうち、グリセリン、ソルビトール、及び水について、それぞれの含有量(質量%)を1Lステンレスビーカーに投入し、80℃で加熱混合し、溶液2を得た。得られた溶液1をスリーワンモータ(型式:FBL-600;新東科学社製)で250rpmの条件で攪拌しながら、溶液2を全て投入後、10分間攪拌した。その後、静置放冷し、ケーキ用起泡剤1~5を得た。ケーキ用起泡剤1~5に含まれる各原料の含有量(質量%)を表1に示す。
【0042】
【0043】
[ケーキの作製及び評価]
(1)原料
1)液卵(商品名:エクセルエッグHV;キユーピータマゴ社製)
2)小麦粉(商品名:バイオレット;日清製粉社製)
3)上白糖(商品名:上白糖ST;フジ日本精糖社製)
4)ベーキングパウダー(商品名:ベーキングパウダーO#1;オリエンタル酵母工業社製)
5)水
6)ケーキ用起泡剤1~5
【0044】
(2)ケーキ生地の作製及び起泡性の評価
各試験区において、表2に記載の原料について、液卵200g、小麦粉200g、上白糖200g、ベーキングパウダー2g、水80g、ケーキ用起泡剤1~5のいずれか10gを5クォートミキサー(型式:万能混合攪拌機5DMr;品川工業所社製)に投入し、ワイヤーホイッパーで低速で1分攪拌後、高速で攪拌しケーキ生地1~5の比重(g/ml)が0.45に到達するまでの時間を測定し、起泡性を評価した。
【0045】
【0046】
ケーキ用起泡剤1を用いたケーキ生地1は、比重(g/ml)が0.45に到達するまでの時間が4分間であった。しかし、ケーキ用起泡剤2~5のいずれかを用いたケーキ生地2~5は、さらに高速で1分攪拌をしても比重(g/ml)が0.45に到達することはなかった。そのため、ケーキ生地2~5について、低速で1分攪拌し、高速で4分攪拌後、さらに高速で1分攪拌した後(高速攪拌合計5分後)の比重(g/ml)を測定した。結果を表4に示す。
【0047】
(3)ケーキの評価
高速攪拌4分後のケーキ生地1、及び高速攪拌5分後のケーキ生地2~5を、それぞれ8号型に600g充填し、180℃の電気オーブン(型式:南蛮バッケンBKS-622TFSOND;七洋製作所社製)で35分間焼成したものを1時間放冷し、ケーキを得た。放冷後のケーキ中央部の高さ(mm)を測定し、ケーキのボリュームを評価した。また、ケーキの食感について、専門のパネラー10名によって、表3の評価基準により官能評価し、評点の平均値を求め、次の基準により記号化した。「○」を本発明の効果を満足するものとした。結果を表4に示す。
<基準(評点の平均値)>
○:2.5以上
△:1.5以上2.5未満
×:1.5未満
【0048】
【0049】
【0050】
表4のとおり、モノグリセリン脂肪酸エステルと、モノエステル含有量が70質量%以上、かつHLB値が9以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有するケーキ用起泡剤1は、優れた起泡性を有していることがわかった。また、ケーキ生地1を焼成したケーキは、ボリューム、食感ともに良好であった。