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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180770
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】モータ制御装置及びモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 7/29 20160101AFI20231214BHJP
【FI】
H02P7/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094338
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 敏
(72)【発明者】
【氏名】須藤 健二
【テーマコード(参考)】
5H571
【Fターム(参考)】
5H571BB07
5H571CC01
5H571HA09
5H571HD02
5H571JJ03
5H571JJ04
5H571JJ17
5H571LL22
5H571MM09
(57)【要約】
【課題】ブラシモータにおける火花発生の抑制にかかるコストを低減することが可能なモータ制御装置及びモータ制御方法を提供する。
【解決手段】ブラシモータに流れる電流の電流値を検出する電流検出部と、検出された前記電流値に基づき、前記電流に含まれる電流リップルを抽出する電流リップル抽出部と、抽出された前記電流リップルに対する周波数解析により、前記電流リップルの周波数スペクトルを取得する周波数解析部と、取得された前記周波数スペクトルのうち0次成分を除く前記周波数スペクトルから、前記周波数スペクトルの信号強度が最大となる次数を最大次数として検出する最大次数検出部と、検出された前記最大次数に基づき、前記ブラシモータの回転数を制御する駆動制御部と、を備えるモータ制御装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシモータに流れる電流の電流値を検出する電流検出部と、
検出された前記電流値に基づき、前記電流に含まれる電流リップルを抽出する電流リップル抽出部と、
抽出された前記電流リップルに対する周波数解析により、前記電流リップルの周波数スペクトルを取得する周波数解析部と、
取得された前記周波数スペクトルのうち0次成分を除く前記周波数スペクトルから、前記周波数スペクトルの信号強度が最大となる次数を最大次数として検出する最大次数検出部と、
検出された前記最大次数に基づき、前記ブラシモータの回転数を制御する駆動制御部と、
を備えるモータ制御装置。
【請求項2】
前記最大次数に基づき、前記ブラシモータの回転数を推定する回転数推定部、
をさらに備え、
前記駆動制御部は、推定された前記回転数に基づき、前記ブラシモータの回転数が目標の回転数となるよう制御する、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記周波数解析部は、前記最大次数における周波数スペクトルを、周波数領域のデータから時間領域のデータへ変換し、
前記回転数推定部は、変換された前記時間領域のデータに基づき、前記ブラシモータの回転数を推定する、
請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記最大次数に基づき、前記ブラシモータの回転状態を推定する回転状態推定部、
をさらに備え、
前記駆動制御部は、推定された前記回転状態に基づき、前記ブラシモータの回転数が目標回転数となるよう、前記ブラシモータの回転数を制御する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記回転状態推定部は、前記最大次数における前記ブラシモータの回転状態が、前記目標回転数の範囲内の状態であるか否かを推定し、
前記駆動制御部は、前記回転状態推定部による推定結果に応じて、前記最大次数における前記ブラシモータの回転状態が前記目標回転数の範囲内の状態となるよう、前記ブラシモータの回転数を制御する、
請求項4に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記次数と前記回転状態との対応関係を示すマップ情報を記憶する記憶部、
をさらに備え、
前記回転状態推定部は、前記マップ情報に基づき、前記最大次数と同一の前記次数に対応付けられた前記回転状態が、前記最大次数における前記回転状態であると推定する、
請求項5に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
電流検出部が、ブラシモータに流れる電流の電流値を検出する電流検出過程と、
電流リップル抽出部が、検出された前記電流値に基づき、前記電流に含まれる電流リップルを抽出する電流リップル抽出過程と、
周波数解析部が、抽出された前記電流リップルに対する周波数解析により、前記電流リップルの周波数スペクトルを取得する周波数解析過程と、
最大次数検出部が、取得された前記周波数スペクトルのうち0次成分を除く前記周波数スペクトルから、前記周波数スペクトルの信号強度が最大となる次数を最大次数として検出する最大次数検出過程と、
駆動制御部が、検出された前記最大次数に基づき、前記ブラシモータの回転数を制御する駆動制御過程と、
を含むモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置及びモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシモータは、一般的にブラシとコンミテータを有し、ブラシとコンミテータとが接触することで通電する。コンミテータは複数のセグメントで構成されており、セグメント間には隙間が設けられているため、この隙間部分でブラシとコンミテータは離接する。通電した状態でブラシとコンミテータが離接すると、火花が生じてしまう。この火花は、ブラシを摩耗する要因となっている。
【0003】
そこで、火花の発生を抑制することでブラシの摩耗を低減するための技術が各種提案されている。例えば、下記特許文献1には、ブラシとコンミテータが離接するタイミングでPWM(Pulse Width Modulation)制御によって通電を遮断する技術が開示されている。当該技術では、光センサによって検出されたロータの回転数に基づきブラシとコンミテータが離接するタイミングを算出し、当該タイミングで通電を遮断することで火花の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-61924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術では、ロータの回転数を検出するために光センサが設けられている。このように、ブラシモータに対して回転数を検出するための部品を追加することで、ブラシモータの部品数が増加し、コストが増大してしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ブラシモータにおける火花発生の抑制にかかるコストを低減することが可能なモータ制御装置及びモータ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るモータ制御装置は、ブラシモータに流れる電流の電流値を検出する電流検出部と、検出された前記電流値に基づき、前記電流に含まれる電流リップルを抽出する電流リップル抽出部と、抽出された前記電流リップルに対する周波数解析により、前記電流リップルの周波数スペクトルを取得する周波数解析部と、取得された前記周波数スペクトルのうち0次成分を除く前記周波数スペクトルから、前記周波数スペクトルの信号強度が最大となる次数を最大次数として検出する最大次数検出部と、検出された前記最大次数に基づき、前記ブラシモータの回転数を制御する駆動制御部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係るモータ制御方法は、電流検出部が、ブラシモータに流れる電流の電流値を検出する電流検出過程と、電流リップル抽出部が、検出された前記電流値に基づき、前記電流に含まれる電流リップルを抽出する電流リップル抽出過程と、周波数解析部が、抽出された前記電流リップルに対する周波数解析により、前記電流リップルの周波数スペクトルを取得する周波数解析過程と、最大次数検出部が、取得された前記周波数スペクトルのうち0次成分を除く前記周波数スペクトルから、前記周波数スペクトルの信号強度が最大となる次数を最大次数として検出する最大次数検出過程と、駆動制御部が、検出された前記最大次数に基づき、前記ブラシモータの回転数を制御する駆動制御過程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明によれば、ブラシモータにおける火花発生の抑制にかかるコストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係るモータ制御装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係るブラシモータをPWM制御した場合に検出される電流の時間変化を示す波形の一例を示す図である。
図3】第1の実施形態に係るブラシモータをPWM制御した場合に取得される周波数スペクトルの一例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る最大次数の周波数スペクトルを逆フーリエ変換して得られる時間領域のデータの一例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る回転数の算出結果の一例を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】第2の実施形態に係るモータ制御装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図8】第2の実施形態に係るマップ情報のデータ構成の一例を示す図である。
図9】第2の実施形態に係るブラシモータの駆動実績とマップ情報との関係を示す図である。
図10】第2の実施形態に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
<<1.第1の実施形態>>
図1から図6を参照して、第1の実施形態について説明する。
【0013】
<1-1.モータ制御装置の概略構成>
図1及び図2を参照して、第1の実施形態に係るモータ制御装置の概略構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るモータ制御装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、モータ制御装置1は、ブラシモータ11と、ダイオード12と、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)13と、ダイオード14と、電源15と、電流検出部20と、制御部30とを備える。
【0014】
ブラシモータ11は、ブラシとコンミテータ(整流子)を備えたモータである。ブラシモータ11では、ブラシとコンミテータとが接触することで、ロータに巻回されたコイルに通電し、ロータが回転する。ブラシモータ11のコンミテータは、複数のセグメントで構成されている。コンミテータは、各セグメント間に隙間が生じるように設けられる。このため、ブラシモータ11が電源15から供給される電力によって回転すると、隙間部分にてブラシとコンミテータとが離接するタイミングが生じる。これにより、ブラシモータ11に流れる電流には、ブラシモータ11の回転に伴う電流リップルが生じる。
【0015】
なお、通電した状態でブラシとコンミテータが離接すると、火花が発生してしまう。この火花はブラシが摩耗する原因となるため、ブラシの摩耗を抑制するためには火花の発生を抑制する必要がある。火花の発生を抑制するためには、ブラシとコンミテータが離接するタイミングで通電していなければよい。即ち、ブラシとコンミテータが離接するタイミングで電圧をオフにし、ブラシとコンミテータが再度接触するタイミングで電圧をオンにする制御ができればよい。当該制御は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって実現可能である。よって、本実施形態では、ブラシモータ11は、PWM制御によって駆動が制御される。
【0016】
ダイオード12は、還流ダイオードである。MOSFET13は、ブラシモータ11の駆動回路を構成する。ダイオード14は、逆流防止ダイオードである。
電源15は、ブラシモータ11を駆動するための電源である。ブラシモータ11を回転させる場合には、MOSFET13のゲートに駆動信号が供給される。これにより、MOSFET13がオンされ、電源15からブラシモータ11に電力が供給される。
【0017】
電流検出部20は、ブラシモータ11に流れる電流の電流値を検出する機能を有する。電流検出部20は、検出した電流値を制御部30へ出力する。
ここで、図2を参照して、電流検出部20によって検出される電流値について説明する。図2は、第1の実施形態に係るブラシモータ11をPWM制御した場合に検出される電流の時間変化を示す波形の一例を示す図である。図2に示す波形の縦軸は電流値を示し、横軸は時間を示している。電流検出部20がPWM制御されたブラシモータ11に流れる電流値を検出し、その電流値の時間変化を波形に示すと、例えば図2に示す波形のようになる。
【0018】
制御部30は、モータ制御装置1の動作全般を制御する機能を有する。制御部30は、例えば、モータ制御装置1がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
制御部30は、ブラシモータ11を駆動させるための駆動信号を生成してMOSFET13へ出力する。具体的に、制御部30は、ブラシモータ11のブラシとコンミテータが接触又は離接するタイミングに合わせてブラシモータ11をPWM制御によって駆動するための信号(以下、「PWM信号」とも称される)を駆動信号として生成し、MOSFET13のゲートへ出力する。即ち、PWM信号は、ブラシモータ11のブラシとコンミテータが接触又は離接するタイミングに合わせて、MOSFET13をオン又はオフに制御するための信号である。
【0019】
なお、ブラシモータ11が所定の回転数で回転している場合、コンミテータは所定の周期で回転していることになる。このためブラシモータ11のブラシとコンミテータが接触又は離接するタイミングは、ブラシモータ11の回転数に基づき予測可能である。このため、ブラシモータ11の回転数を検出できれば、ブラシとコンミテータが接触又は離接するタイミングを予測でき、火花の発生を低減することができる。しかしながら、ブラシモータ11の回転数を検出するためにセンサ装置(例えばセンサマグネットやホールセンサなど)を設けると、ブラシモータ11の製造コストが増加してしまう。
そこで、制御部30は、電流検出部20によって検出される電流値に基づきブラシモータ11の回転数を推定することで、センサ装置を設けることなく回転数を検出することを可能とする。
【0020】
<1-2.制御部の機能構成>
以上、第1の実施形態に係るモータ制御装置1の概略構成について説明した。続いて、図1から図5を参照して、第1の実施形態に係る制御部30の機能構成について説明する。図1に示すように、制御部30は、電流リップル抽出部31と、周波数解析部32と、最大次数検出部33と、回転数推定部34と、駆動制御部35とを備える。
【0021】
(1)電流リップル抽出部31
電流リップル抽出部31は、ブラシモータ11に流れる電流から電流リップルを抽出する機能を有する。例えば、電流リップル抽出部31は、電流検出部20によって検出された電流値に基づき、電流に含まれる電流リップルを抽出する。一例として、電流リップル抽出部31は、検出された電流値をバンドパスフィルタに通すことで、電流値から電流リップルを抽出する。
【0022】
(2)周波数解析部32
周波数解析部32は、周波数解析によって周波数スペクトルを取得する機能を有する。例えば、周波数解析部32は、電流リップル抽出部31によって抽出された電流リップルに対する周波数解析により、電流リップルの周波数スペクトルを取得する。周波数解析部32は、例えば、フーリエ変換(FT:Fourier Transform)によって周波数解析を行う。フーリエ変換は、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)又は離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)のいずれであってもよい。
【0023】
ここで、図3を参照して、周波数解析部32によって取得される周波数スペクトルについて説明する。図3は、第1の実施形態に係るブラシモータ11をPWM制御した場合に取得される周波数スペクトルの一例を示す図である。図3に示す周波数スペクトルの縦軸は強度を示し、横軸は次数を示している。なお、図3では、グラフの見やすさを考慮し、取得された周波数スペクトルのうち0次成分を除く周波数スペクトルを示している。
図3に示す周波数スペクトルでは、0次成分を除く周波数スペクトルのうち強度が最大となるのは次数が10次の成分である。この10次の成分は、ブラシモータ11の回転に伴う周波数成分のスペクトルであると考えられる。また、図3に示す周波数スペクトルでは、11次以降から徐々に強度が弱まっていくが、19次にて再び強度が強くなっている。この19次の成分は、ブラシモータ11をPWM制御することによって生じるノイズが含まれていると考えられる。
【0024】
また、周波数解析部32は、周波数スペクトルの信号強度が最大となる次数(以下、「最大次数」とも称される)における周波数スペクトルを、周波数領域のデータから時間領域のデータへ変換する。これにより、周波数解析部32は、ノイズ成分(例えば19次の成分)を含まない時間領域のデータを取得することができる。周波数解析部32は、例えば、逆フーリエ変換(IFT:Inverse Fourier Transform)によって時間領域のデータへの変換を行う。逆フーリエ変換は、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)又は逆離散フーリエ変換(IDFT:Inverse Discrete Fourier Transform)のいずれであってもよい。
【0025】
ここで、図4を参照して、周波数解析部32によって変換された周波数領域のデータについて説明する。図4は、第1の実施形態に係る最大次数の周波数スペクトルを逆フーリエ変換して得られる時間領域のデータの一例を示す図である。図4に示す周波数領域のデータの縦軸は電流値を示し、横軸は時間を示している。
図4に示す時間領域のデータは、周波数解析部32が最大次数(10次)の周波数スペクトルのみを逆フーリエ変換することによって得られたデータであり、ノイズ成分を含まないデータである。このため、波形の振幅や周期が安定している。
【0026】
(3)最大次数検出部33
最大次数検出部33は、周波数スペクトルから最大次数を検出する機能を有する。例えば、最大次数検出部33は、周波数解析部32によって取得された周波数スペクトルのうち0次成分を除く周波数スペクトルから、周波数スペクトルの信号強度が最大となる次数を最大次数として検出する。
【0027】
(4)回転数推定部34
回転数推定部34は、ブラシモータ11の回転数を推定する機能を有する。回転数推定部34は、最大次数検出部33によって検出された最大次数に基づき、ブラシモータ11の回転数を推定する。例えば、回転数推定部34は、周波数解析部32によって最大次数における周波数スペクトルが変換された時間領域のデータに基づき、ブラシモータ11の実回転数を推定する。具体的に、回転数推定部34は、時間領域のデータの1周期ごとに回転数を算出し、その平均値を回転数(実回転数)と推定する。
なお、回転数推定部34が回転数の推定に用いる時間領域のデータは、周波数解析部32によってノイズ成分が除去されている。このため、回転数推定部34は、当該時間領域のデータを用いることで、ブラシモータ11の回転数を精度よく推定するこができる。
【0028】
ここで、図5を参照して、回転数推定部34による回転数の推定について説明する。図5は、第1の実施形態に係る回転数の算出結果の一例を示す図である。図5に示す縦軸は回転数又は時間を示し、横軸は周期数を示している。
図5に示す回転数の算出結果は、回転数推定部34が時間領域のデータから9個の周期を抽出し、各々の周期について回転数を算出した結果が示されている。この場合、回転数推定部34は、算出した9個の回転数の平均値を実回転数として推定する。
【0029】
(5)駆動制御部35
駆動制御部35は、ブラシモータ11の駆動を制御する機能を有する。駆動制御部35は、最大次数検出部33によって検出された最大次数に基づき、ブラシモータ11の回転数を制御する。具体的に、駆動制御部35は、回転数推定部34によって最大次数の時間領域のデータから推定された実回転数に基づき、ブラシモータ11の回転数が目標の回転数となるよう制御する。即ち、駆動制御部35は、ブラシモータ11の現在の回転数が目標の回転数となるように、ブラシモータ11の駆動を制御する。この制御において、駆動制御部35は、回転数推定部34によって推定された回転数に応じたデューティ比のPWM信号を生成し、MOSFET13へ出力する。MOSFET13は、このPWM信号によりオン又はオフに制御される。これにより、ブラシモータ11は、所望の回転数で回転される。
【0030】
<1-3.処理の流れ>
以上、第1の実施形態に係る制御部30の機能構成について説明した。続いて、図6を参照して、第1の実施形態に係る処理の流れについて説明する。図6は、第1の実施形態に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0031】
図6に示すように、まず、電流検出部20は、ブラシモータ11を流れる電流の電流値を検出する(ステップS101)。
次いで、電流リップル抽出部31は、電流検出部20によって検出された電流値に基づき、ブラシモータ11を流れる電流に含まれる電流リップルを抽出する(ステップS102)。
次いで、周波数解析部32は、電流リップル抽出部31によって抽出された電流リップルに対するフーリエ変換によって、電流リップルの周波数スペクトルを取得する(ステップS103)。
次いで、最大次数検出部33は、周波数解析部32によって取得された周波数スペクトルのうち0次成分を除く周波数スペクトルから、強度が最大となる次数を最大次数として検出する(ステップS104)。
次いで、周波数解析部32は、周波数解析部32によって取得された周波数スペクトルのうち最大次数検出部33によって検出された最大次数の周波数スペクトルに対する逆フーリエ変換によって、時間領域のデータを取得する(ステップS105)。
次いで、回転数推定部34は、周波数解析部32によって取得された最大次数における周波数スペクトルの時間領域のデータに基づき、ブラシモータ11の実回転数を推定する(ステップS106)。
次いで、駆動制御部35は、回転数推定部34によって推定された実回転数に基づき、ブラシモータ11の回転数を制御する(ステップS107)。
【0032】
以上説明したように、第1の実施形態に係るモータ制御装置1は、ブラシモータ11に流れる電流の電流値を検出し、検出された電流値に基づき電流に含まれる電流リップルを抽出し、抽出された電流リップルに対する周波数解析により電流リップルの周波数スペクトルを取得し、取得された周波数スペクトルのうち0次成分を除く周波数スペクトルから周波数スペクトルの信号強度が最大となる次数を最大次数として検出し、検出された最大次数に基づきブラシモータ11の回転数を制御する。
【0033】
かかる構成により、第1の実施形態に係るモータ制御装置1は、回転数を検出するためのセンサ装置を設けることなく、ブラシモータ11の実回転数を検出することができる。これにより、ブラシモータ11に対して回転数を検出するためのセンサ装置(例えばセンサマグネットやホールセンサなど)を追加する必要がなくなるため、部品数の増加によるコスト増加を防ぐことができる。
よって、第1の実施形態に係るモータ制御装置1は、ブラシモータ11における火花発生の抑制にかかるコストを低減することを可能とする。
【0034】
また、第1の実施形態に係るモータ制御装置1aは、ブラシモータ11の回転数を検出するためのセンサ装置(例えばセンサマグネットやホールセンサなど)を用いる必要がないため、センサ精度の影響を受けることなく回転数及び回転数変動を検出することができる。
【0035】
なお、ブラシモータ11の回転数の検出は、ブラシモータ11に流れる電流の電流値と閾値との比較によって抽出した電流リップルを用いる方法も考えられる。しかしながら、閾値が適切に設定されていない場合、1つの電流値のピークから電流リップルが複数回抽出される場合や、そもそも電流リップルが抽出されない場合がある。また、ブラシモータ11の回転数の検出は、電流値のピークから抽出したリップル電流を用いる方法も考えられる。しかしながら、電流検出部20に用いるセンサの種類や条件に応じてノイズをピークとして検出してしまう場合がある。このように、いずれの方法においても、抽出した電流リップルをそのまま用いて回転数を検出した場合、ノイズ成分が含まれるため回転数の検出精度が低下してしまう。
そこで、第1の実施形態では、ブラシモータ11を流れる電流の電流値から抽出したリップル電流をフーリエ変換して得られる周波数スペクトルのうち、最大次数の周波数スペクトルのみを用いることで電流リップルからノイズ成分を除外し、回転数の検出精度を向上することできる。そして、検出された回転数に追従させることで、安定した火花抑制制御を行うことができる。また、検出された回転数は、火花抑制制御の他、各種の制御に用いることができる。
【0036】
また、ブラシモータ11では、外乱などの影響によって回転数が変動し、最大次数も変動することがある。例えば、外乱の影響によって回転数が低下した場合、回転数の低下に応じて最大次数も下がる場合がある。例えば、最大次数検出部33によって検出される最大次数が10次から9次に下がる場合がある。
このように回転数が変動した場合であっても、第1の実施形態に係るモータ制御装置1は、回転数の変動に応じて変動した最大次数に基づき回転数を検出するため、回転数の変動に追従した回転数を検出することができる。これにより、第1の実施形態に係るモータ制御装置1は、安定した火花抑制制御を行うことができる。
【0037】
また、第1の実施形態によれば、モータ制御装置1では、回転数を検出するためのセンサ装置を用いることなくブラシモータ11における火花発生抑制を可能とし、部品数とコストを低減することができる。これにより、当該モータ制御装置1を備えた装置における資源使用量のミニマム化に寄与することができるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの促進を図る」に貢献することが可能となる。
【0038】
<<2.第2の実施形態>>
以上、第1の実施形態について説明した。続いて、図7から図10を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
上述の第1の実施形態では、電流リップルの周波数スペクトルのうち0次成分を除く周波数スペクトルにおける最大次数の成分に基づきブラシモータ11の回転数を推定して制御する例について説明したが、かかる例に限定されない。第2の実施形態では、電流リップルの周波数スペクトルにおける次数とブラシモータ11の回転状態との対応関係を示すマップ情報を用いて、ブラシモータ11の回転状態を推定して、回転数を制御する例について説明する。マップ情報は、ブラシモータ11の駆動実績に基づき予め用意される情報である。
なお、以下では、第1の実施形態と重複する説明については適宜省略する。
【0039】
<2-1.モータ制御装置の概略構成>
図7から図9を参照して、第2の実施形態に係るモータ制御装置の概略構成について説明する。図7は、第2の実施形態に係るモータ制御装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図7に示すように、モータ制御装置1aは、ブラシモータ11と、ダイオード12と、MOSFET13と、ダイオード14と、電源15と、電流検出部20と、制御部30aと、記憶部40とを備える。
【0040】
第2の実施形態に係るブラシモータ11と、ダイオード12と、MOSFET13と、ダイオード14と、電源15と、電流検出部20は、第1の実施形態と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0041】
制御部30aは、予め用意されたマップ情報を用いて、ブラシモータ11の回転状態を推定して回転数を制御する。具体的に、制御部30aは、第1の実施形態と同様にして電流リップルの周波数スペクトルのうち0次成分を除く周波数スペクトルにおける最大次数を検出し、当該最大次数におけるブラシモータ11の回転状態をマップ情報から推定し、目標の回転数に対応する回転状態となるようブラシモータ11の回転数を制御する。
【0042】
記憶部40は、各種情報を記憶する機能を有する。記憶部40は、例えば図7に示すように、マップ情報41を記憶する。
ここで、図8及び図9を参照して、マップ情報41について説明する。図8は、第2の実施形態に係るマップ情報41のデータ構成の一例を示す図である。図9は、第2の実施形態に係るブラシモータ11の駆動実績とマップ情報41との関係を示す図である。
【0043】
マップ情報41は、次数と回転状態との対応関係を示す情報である。このため、図8に示すように、マップ情報41のデータ項目は、次数と回転状態の項目を有する。次数には、ブラシモータ11の駆動実績に基づき、最大次数とその前後の次数が設定される。回転状態には、例えば、回転状態が低速の状態であることを示す「低速」、回転状態が通常の状態であることを示す「通常」、又は回転状態が高速の状態であることを示す「高速」のいずれかの状態が設定される。なお、次数と回転状態は、最大次数が「通常」となるように対応付けられる。即ち、ブラシモータ11の回転数の制御では、マップ情報41において回転状態が「通常」である次数が目標次数として設定され、当該次数と対応する回転数が目標回転数として設定される。
【0044】
一例として、1レコード目には、次数が「9次」、回転状態が「低速」であるデータが示されている。これは、検出された最大次数が「9次」であった場合、ブラシモータ11の回転状態が「低速」であることを示している。この場合、制御部30aは、ブラシモータ11の回転数を上げて、回転状態が「通常」となるよう制御する。
また、2レコード目には、次数が「10次」、回転状態が「通常」であるデータが示されている。これは、検出された最大次数が「10次」であった場合、ブラシモータ11の回転状態が「通常」であることを示している。この場合、制御部30aは、ブラシモータ11の回転数を維持して、回転状態が「通常」を維持するよう制御する。
また、3レコード目には、次数が「11次」、回転状態が「高速」であるデータが示されている。これは、検出された最大次数が「11次」であった場合、ブラシモータ11の回転状態が「高速」であることを示している。この場合、制御部30aは、ブラシモータ11の回転数を下げて、回転状態が「通常」となるよう制御する。
【0045】
ブラシモータ11の駆動実績より、ブラシモータ11の回転数を変化させると、ブラシモータ11のトルクや電流値が変化するとともに、ブラシモータ11を流れるリップル電流の周波数スペクトルにおける最大次数も変化することが分かっている。
例えば、図9には、ブラシモータ11の回転数を変化させたときの各特性の変化を実測した例が示されている。図9において、特性A1はトルクの特性を示し、特性A2は電流の特性を示している。図9に示すように、ブラシモータ11のトルクの特性A1は、回転数が上昇するほど、トルクが低下することを示している。また、ブラシモータ11を流れる電流の特性A2も同様に、回転数が上昇するほど、電流値が低下することを示している。このような実測結果から、マップ情報41が作成される。例えば、「9次」の「低速」な状態は、回転数が2700±150r/minの範囲に対して設定される。また、「10次」の「通常」な状態は、回転数が3000±150r/minの範囲に対して設定される。また、「11次」の「高速」な状態は、回転数が3300±150r/minの範囲に対して設定される。即ち、図9に示す例では、「10次」が目標次数であり、「3000±150r/min」が目標回転数の範囲である。
【0046】
<2-2.制御部の機能構成>
以上、第2の実施形態に係るモータ制御装置1aの概略構成について説明した。続いて、図7を参照して、第2の実施形態に係る制御部30aの機能構成について説明する。図7に示すように、制御部30aは、電流リップル抽出部31aと、周波数解析部32aと、最大次数検出部33aと、回転状態推定部36と、駆動制御部35aとを備える。
【0047】
(1)電流リップル抽出部31a
第2の実施形態に係る電流リップル抽出部31aの機能は、第1の実施形態に係る電流リップル抽出部31の機能と同一であるため、重複する説明を省略する。
【0048】
(2)周波数解析部32a
第2の実施形態に係る周波数解析部32aの機能は、第1の実施形態に係る周波数解析部32の機能と同一であるため、重複する説明を省略する。
【0049】
(3)最大次数検出部33a
第2の実施形態に係る最大次数検出部33aの機能は、第1の実施形態に係る最大次数検出部33の機能と同一であるため、重複する説明を省略する。
【0050】
(4)回転状態推定部36
回転状態推定部36は、ブラシモータ11の回転状態を推定する機能を有する。回転状態推定部36は、最大次数検出部33aによって検出された最大次数に基づき、ブラシモータ11の回転状態を推定する。具体的に、回転状態推定部36は、最大次数におけるブラシモータ11の回転状態が、目標回転数の範囲内の状態であるか否かを推定する。
【0051】
例えば、回転状態推定部36は、マップ情報に基づき、検出された最大次数と同一の次数に対応付けられた回転状態が、最大次数における回転状態であると推定する。検出された最大次数と同一の次数に対して「通常」の回転状態が対応付けられている場合、回転状態推定部36は、最大次数におけるブラシモータ11の回転状態が目標回転数の範囲内の状態であると推定する。一方、検出された最大次数と同一の次数に対して「低速」又は「高速」の回転状態が対応付けられている場合、回転状態推定部36は、最大次数におけるブラシモータ11の回転状態が目標回転数の範囲内の状態ではないと推定する。
【0052】
(5)駆動制御部35a
第2の実施形態に係る駆動制御部35aの機能は、第1の実施形態に係る駆動制御部35の機能と同様であるため重複する説明を省略するが、一部異なる。
駆動制御部35aは、回転状態推定部36によって推定された回転状態に基づき、ブラシモータ11の回転数が目標回転数となるよう、ブラシモータ11の回転数を制御する。具体的に、駆動制御部35aは、回転状態推定部36による推定結果に応じて、最大次数におけるブラシモータ11の回転状態が目標回転数の範囲内の状態となるよう、ブラシモータ11の回転数を制御する。
【0053】
例えば、回転状態推定部36によってブラシモータ11の回転状態が「通常」であると推定された場合、駆動制御部35aは、回転数を維持して回転状態が「通常」のまま維持されるよう、PWM信号のデューティ比を制御する。また、回転状態推定部36によってブラシモータ11の回転状態が「低速」であると推定された場合、駆動制御部35aは、回転数を上げて回転状態が「通常」となるよう、PWM信号のデューティ比を制御する。また、回転状態推定部36によってブラシモータ11の回転状態が「高速」であると推定された場合、駆動制御部35aは、回転数を下げて回転状態が「通常」となるよう、PWM信号のデューティ比を制御する。
【0054】
<2-3.処理の流れ>
以上、第2の実施形態に係る制御部30aの機能構成について説明した。続いて、図10を参照して、第2の実施形態に係る処理の流れについて説明する。図10は、第2の実施形態に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0055】
図10に示すように、まず、回転状態推定部36は、記憶部40に記憶されたマップ情報41を参照して、ブラシモータ11の回転数の制御における目標次数を設定する(ステップS201)。
次いで、電流検出部20は、ブラシモータ11を流れる電流の電流値を検出する(ステップS202)。
次いで、電流リップル抽出部31aは、電流検出部20によって検出された電流値に基づき、ブラシモータ11を流れる電流に含まれる電流リップルを抽出する(ステップS203)。
次いで、周波数解析部32aは、電流リップル抽出部31aによって抽出された電流リップルに対するフーリエ変換によって、電流リップルの周波数スペクトルを取得する(ステップS204)。
次いで、最大次数検出部33aは、周波数解析部32aによって取得された周波数スペクトルのうち0次成分を除く周波数スペクトルから、強度が最大となる次数を最大次数として検出する(ステップS205)。
【0056】
次いで、回転状態推定部36は、最大次数検出部33aによって検出された最大次数が目標次数と一致するか否かを判定する(ステップS206)。最大次数と目標次数が一致する場合(ステップS206/YES)、処理をステップS207へ進める。一方、最大次数と目標次数が一致しない場合(ステップS207/NO)、処理をステップS208へ進める。
【0057】
処理がステップS207へ進んだ場合、ブラシモータ11の回転状態は、回転状態推定部36によって「通常」であると推定されたことになる。この場合、駆動制御部35aは、回転数を維持して回転状態が「通常」のまま維持されるよう、PWM信号のデューティ比を制御する(ステップS207)。
【0058】
処理がステップS208へ進んだ場合、回転状態推定部36は、最大次数検出部33aによって検出された最大次数が目標次数+1又は目標次数-1のいずれであるかを判定する(ステップS208)。最大次数が目標次数+1である場合(ステップS208/+1)、処理をステップS209へ進める。一方、最大次数が目標次数-1である場合(ステップS208/-1)、処理をステップS210へ進める。
【0059】
処理がステップS209へ進んだ場合、ブラシモータ11の回転状態は、回転状態推定部36によって「高速」であると推定されたことになる。この場合、駆動制御部35aは、回転数を下げて回転状態が「通常」となるよう、PWM信号のデューティ比を制御する(ステップS209)。
【0060】
処理がステップS210へ進んだ場合、ブラシモータ11の回転状態は、回転状態推定部36によって「低速」であると推定されたことになる。この場合、駆動制御部35aは、回転数を上げて回転状態が「通常」となるよう、PWM信号のデューティ比を制御する(ステップS210)。
なお、ステップS207、ステップS209、及びステップS210の後、処理はステップS206から繰り返される。
【0061】
以上説明したように、第2の実施形態に係るモータ制御装置1aは、ブラシモータ11に流れる電流の電流値を検出し、検出された電流値に基づき電流に含まれる電流リップルを抽出し、抽出された電流リップルに対する周波数解析により電流リップルの周波数スペクトルを取得し、取得された周波数スペクトルのうち0次成分を除く周波数スペクトルから周波数スペクトルの信号強度が最大となる次数を最大次数として検出し、検出された最大次数に基づきブラシモータ11の回転状態を推定し、推定された回転状態に基づきブラシモータ11の回転数が目標回転数となるようブラシモータ11の回転数を制御する。
【0062】
かかる構成により、第2の実施形態に係るモータ制御装置1aは、回転数を検出するためのセンサ装置を設けることなく、ブラシモータ11の実回転数を検出することができる。これにより、ブラシモータ11に対して回転数を検出するためのセンサ装置(例えばセンサマグネットやホールセンサなど)を追加する必要がなくなるため、部品数の増加によるコスト増加を防ぐことができる。
よって、第2の実施形態に係るモータ制御装置1aは、ブラシモータ11における火花発生の抑制にかかるコストを低減することを可能とする。
【0063】
また、第2の実施形態に係るモータ制御装置1aは、ブラシモータ11の回転数を検出するためのセンサ装置(例えばセンサマグネットやホールセンサなど)を用いる必要がないため、センサ精度の影響を受けることなく回転数及び回転数変動を検出することができる。
【0064】
また、第1の実施形態でも説明したように外乱などの影響によって回転数と最大次数が変動した場合であっても、第2の実施形態に係るモータ制御装置1aは、回転数の変動に応じて変動した最大次数に基づき回転数を検出するため、回転数の変動に追従した回転数を検出することができる。これにより、第2の実施形態に係るモータ制御装置1aは、安定した火花抑制制御を行うことができる。
【0065】
また、第2の実施形態に係るモータ制御装置1aでは、最大次数とマップ情報に基づきブラシモータ11の回転状態を推定することで、第1の実施形態のように実回転数の算出まで行うことなくブラシモータ11の回転数を適切に制御することができる。
【0066】
また、第2の実施形態に係るモータ制御装置1aでは、外乱の影響を受けて回転数が変動した場合であっても、最大次数とマップ情報に基づきブラシモータ11の回転状態を推定し回転状態が通常となるよう回転数を制御することができる。これにより、第2の実施形態に係るモータ制御装置1aは、外部負荷に関わらず回転数を一定に保つ制御を行うことができる。
【0067】
また、第2の実施形態によれば、モータ制御装置1aでは、回転数を検出するためのセンサ装置を用いることなくブラシモータ11における火花発生抑制を可能とし、部品数とコストを低減することができる。これにより、当該モータ制御装置1aを備えた装置における資源使用量のミニマム化に寄与することができるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの促進を図る」に貢献することが可能となる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、上述した実施形態におけるモータ制御装置1及び1aの全部又は一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0069】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1,1a…モータ制御装置、11…ブラシモータ、12…ダイオード、13…MOSFET、14…ダイオード、15…電源、20…電流検出部、30,30a…制御部、31,31a…電流リップル抽出部、32,32a…周波数解析部、33,33a…最大次数検出部、34…回転数推定部、35,35a…駆動制御部、36…回転状態推定部、40…記憶部、41…マップ情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10