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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180775
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】常時待機装置及び電力緊急融通装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20231214BHJP
   G05B 9/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H02J9/06 110
G05B9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094345
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】馬場 雄介
【テーマコード(参考)】
5G015
5H209
【Fターム(参考)】
5G015FA18
5G015GB01
5G015JA05
5G015JA33
5H209AA02
5H209BB13
5H209DD20
5H209EE01
5H209EE15
5H209JJ09
(57)【要約】
【課題】より簡単な構成で、待機中に故障を発見することができる常時待機装置及び電力緊急融通装置を提供する。
【解決手段】通常時に動作の実行を待機し、非常時に所定の動作を行う常時待機装置であって、前記非常時に前記所定の動作を行う動作部と、前記動作部の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記動作部の動作の制御を前記待機中に模擬的に実行することにより、前記動作部の動作時にしか発見できない前記動作部及び前記制御装置の少なくとも一方の故障を、前記待機中に自動的に発見できるようにするセルフメンテナンス機能を有する常時待機装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常時に動作の実行を待機し、非常時に所定の動作を行う常時待機装置であって、
前記非常時に前記所定の動作を行う動作部と、
前記動作部の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記動作部の動作の制御を前記待機中に模擬的に実行することにより、前記動作部の動作時にしか発見できない前記動作部及び前記制御装置の少なくとも一方の故障を、前記待機中に自動的に発見できるようにするセルフメンテナンス機能を有する常時待機装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記セルフメンテナンス機能において、前記動作部の動作を制御する基本動作を模擬的に確認し、前記基本動作に異常があることを確認した場合には、前記動作部及び前記制御装置の前記少なくとも一方を複数の単位に分け、前記複数の単位毎に動作の確認を行うことにより、故障箇所の特定を行う請求項1記載の常時待機装置。
【請求項3】
一対の電力系統に電力不足が発生していない通常時に、電力の融通の動作を待機し、前記一対の電力系統の一方に電力不足が発生した非常時に、電力の融通の動作を行う電力緊急融通装置であって、
前記非常時に、電力の変換を行うことにより、前記一対の電力系統の一方の電力を前記一対の電力系統の他方に融通する動作を行う電力変換器と、
前記電力変換器による電力の融通の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記電力変換器の動作の制御を前記待機中に模擬的に実行することにより、前記電力変換器の動作時にしか発見できない前記電力変換器及び前記制御装置の少なくとも一方の故障を、前記待機中に自動的に発見できるようにするセルフメンテナンス機能を有する電力緊急融通装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記セルフメンテナンス機能において、前記電力変換器の動作を制御する基本動作を模擬的に確認し、前記基本動作に異常があることを確認した場合には、前記電力変換器及び前記制御装置の前記少なくとも一方を複数の単位に分け、前記複数の単位毎に動作の確認を行うことにより、故障箇所の特定を行う請求項3記載の電力緊急融通装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記セルフメンテナンス機能において、前記電力変換器の動作の制御を前記待機中に模擬的に実行するとともに、前記電力変換器を模擬的に動作させることにより、前記電力変換器及び前記制御装置の故障を、前記待機中に自動的に発見できるようにする請求項3又は4に記載の電力緊急融通装置。
【請求項6】
前記電力系統を模擬した電力を前記電力変換器に供給可能とする模擬電圧発生装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記セルフメンテナンス機能において、前記電力変換器を模擬的に動作させる際に、前記電力変換器が前記電力系統から切り離された状態において、前記模擬電圧発生装から前記電力変換器に電力を供給することにより、前記電力変換器を模擬的に動作させる請求項5記載の電力緊急融通装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、常時待機装置及び電力緊急融通装置に関する。
【背景技術】
【0002】
常時待機させておき、必要なタイミングにおいてだけ運転させる常時待機装置が存在する。例えば、電力分野では、電力緊急融通装置が挙げられる。電力緊急融通装置は、A地点で災害などが発生し電力不足が生じた場合に、B地点からA地点へ緊急で電力の融通を行う装置である。
【0003】
常時待機装置は、必要なピンポイントのタイミングだけ、重要な責務を果たすことになるが、そのタイミング以外では、待機し続けているだけである。常時待機装置が待機している間に、部品の経年劣化、部品の経年変化、あるいは小動物や現地環境などの影響で、常時待機装置が人知れず故障に至っている場合も考えられる。特に、運転時にしか発見できない異常は、監視対象から外れているため、発見することが難しい。待機中の常時待機装置が故障した状態のまま運転が必要なタイミングを迎えてしまうと、常時待機装置の重要な責務を果たすことができなくなってしまう。
【0004】
例えば、常時待機装置が、異常の検出を行う監視機能を備えている場合がある。しかしながら、監視機能は、運転中に発生した異常を検出するものであり、待機中には監視機能も停止している場合がある。このため、万全な対策とは言えない。
【0005】
また、点検員が、定期的に模擬運転を行い、装置点検を行う方法もある。しかしながら、この方法では、常時待機装置を数日から数週間程度停止させる必要があり、常時待機装置の運用に与える影響が大きい。また、点検員にかかる手間も大きく、なるべく人的作業を削減することが求められている。
【0006】
常時待機装置を2重系にしておき、片系が故障しても、もう片系で責務を果たす方法もある。しかしながら、2重系にすることで装置全体が大型になるため、装置の製造コストの増加や現地の据え付け場所の確保が困難となることが懸念される。
【0007】
このため、常時待機装置では、より簡単な構成で、待機中に故障を発見できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6-261457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態は、より簡単な構成で、待機中に故障を発見することができる常時待機装置及び電力緊急融通装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態によれば、通常時に動作の実行を待機し、非常時に所定の動作を行う常時待機装置であって、前記非常時に前記所定の動作を行う動作部と、前記動作部の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記動作部の動作の制御を前記待機中に模擬的に実行することにより、前記動作部の動作時にしか発見できない前記動作部及び前記制御装置の少なくとも一方の故障を、前記待機中に自動的に発見できるようにするセルフメンテナンス機能を有する常時待機装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
より簡単な構成で、待機中に故障を発見することができる常時待機装置及び電力緊急融通装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る電力緊急融通装置を模式的に表すブロック図である。
図2】実施形態に係る電力緊急融通装置の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
図3】実施形態に係る電力緊急融通装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
【0013】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0014】
図1は、実施形態に係る電力緊急融通装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力緊急融通装置10(常時待機装置)は、電力変換器12(動作部)と、ゲートパルス発生装置14(制御装置)と、を備える。
【0015】
電力変換器12は、例えば、開閉器3を介して交流の電力系統2に接続されるとともに、直流回路4に接続される。また、電力変換器12は、直流回路4を介して別の電力系統の電力緊急融通装置の電力変換器と接続される。
【0016】
電力変換器12は、電力系統2から供給された交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を直流回路4に供給することにより、電力系統2の電力を別の電力系統に融通する動作を行うとともに、直流回路4から供給された直流電力を交流電力に変換し、変換後の交流電力を電力系統2に供給することにより、別の電力系統の電力を電力系統2に融通する動作を行う。
【0017】
このように、電力変換器12は、電力の変換を行うことにより、電力系統2の電力を別の電力系統に融通する動作を行う。電力変換器12は、例えば、主回路などと呼ばれる場合もある。
【0018】
このように、電力緊急融通装置10(電力変換器12)は、電力系統間における電力の融通を行う。電力の融通は、例えば、災害の発生などにより、一対の電力系統の一方で電力不足が生じた場合に行われる。電力緊急融通装置10は、電力不足が発生していない通常時に、電力の融通の動作を待機し、電力不足が発生した非常時に、電力の融通の動作を行う。電力緊急融通装置10は、換言すれば、電力不足が発生していない通常時に、電力の融通の動作を停止した待機モードとなり、電力不足が発生した非常時に、電力の融通の動作を行う運転モードとなる。電力変換器12は、非常時に、電力の変換を行うことにより、一対の電力系統の一方の電力を一対の電力系統の他方に融通する動作を行う。
【0019】
電力緊急融通装置10は、例えば、上位装置6と通信を行い、上位装置6から入力される制御信号に応じて待機モードと運転モードとを切り替える。電力緊急融通装置10は、常時待機し、電力不足の発生の際にのみ運転を行う常時待機装置である。電力変換器12は、換言すれば、非常時に所定の動作を行う動作部である。
【0020】
電力変換器12は、例えば、サイリスタなどの他励式のスイッチング素子を用いた他励式の変換器である。電力変換器12は、例えば、複数の他励式のスイッチング素子を有し、複数の他励式のスイッチング素子のスイッチングにより、電力の変換を行う。
【0021】
開閉器3は、例えば、電力不足の発生してない通常時においては、開放されている。これにより、例えば、通常時において、電力変換器12の複数のスイッチング素子に電圧が印加されてしまうことを抑制することができる。開閉器3は、一対の電力系統の一方で電力不足が発生し、電力緊急融通装置10を運転させる際に投入される。開閉器3の投入及び開放の切り替えは、例えば、上位装置6によって制御される。なお、開閉器3は、遮断器などでもよい。開閉器3は、電力変換器12を電力系統2に接続した状態と、電力変換器12を電力系統2から切り離した状態と、を切り替え可能な任意の構成でよい。
【0022】
ゲートパルス発生装置14は、電力変換器12による電力の融通の動作を制御する。ゲートパルス発生装置14は、例えば、電力変換器12の複数の他励式のスイッチング素子のそれぞれに対してゲートパルス信号を送信し、各スイッチング素子のそれぞれのスイッチング(オンタイミング)を制御することにより、電力変換器12による電力の変換の動作を制御する。
【0023】
ゲートパルス発生装置14は、例えば、ロジック部21と、パルスアンプ部22と、制御電源ユニット23と、故障表示器24と、停電補償ユニット25と、リレーユニット26と、を有する。
【0024】
ロジック部21は、上位装置6と通信を行い、上位装置6から制御信号の入力を受ける。ロジック部21は、上位装置6から入力された制御信号を基に、電力変換器12の各スイッチング素子のそれぞれのスイッチングを制御するためのゲートパルス信号の生成を行う。ロジック部21は、電気信号のゲートパルス信号を生成し、生成したゲートパルス信号をパルスアンプ部22に入力する。
【0025】
また、ロジック部21は、ゲートパルス発生装置14の運転モードの時にゲートパルス発生装置14の各部の異常の監視を行う。ロジック部21は、例えば、異常を検出した際に、検出した異常を表す異常信号を上位装置6、あるいはその他の外部装置8などに出力する。外部装置8は、例えば、異常の発生時に各種の電気量や信号などを異常発生前から復帰後まで自動的に記録する故障波形記録装置などである。
【0026】
パルスアンプ部22は、ロジック部21から入力された電気信号のゲートパルス信号を光信号に変換し、光パルスのゲートパルス信号を電力変換器12に入力することにより、電力変換器12の各スイッチング素子のそれぞれのスイッチングを制御する。
【0027】
制御電源ユニット23は、電力系統2又は別の商用電源などから電力(交流電力)の供給を受け、供給された電力をロジック部21、パルスアンプ部22、故障表示器24、及びリレーユニット26などのゲートパルス発生装置14の各部に対応した電力に変換し、変換後の電力を各部に供給することにより、ゲートパルス発生装置14の各部を動作させる。
【0028】
故障表示器24は、ロジック部21で検出された各種の異常の表示を行う。故障表示器24は、例えば、液晶ディスプレイなどの表示装置である。故障表示器24は、文字や図柄などの表示により、各種の異常の表示を行う。故障表示器24は、例えば、光の点灯や点滅などにより、各種の異常の表示を行ってもよい。故障表示器24の構成は、ロジック部21で検出された各種の異常を適切に表示可能な任意の構成でよい。
【0029】
停電補償ユニット25は、制御電源ユニット23に供給される電力の喪失時に、制御電源ユニット23に対して電力の供給を行う。停電補償ユニット25は、例えば、電源喪失時(停電時)に電力緊急融通装置10を保護停止するまでの一定期間において、制御電源ユニット23の制御電源を補償する。停電補償ユニット25は、例えば、蓄電池やコンデンサなどの蓄電素子によって構成される。
【0030】
リレーユニット26は、例えば、ロジック部21による異常の検出結果に基づいて、異常信号の出力を行う。リレーユニット26は、例えば、上位装置6又はその他の外部装置8に異常信号を出力する。また、リレーユニット26は、例えば、起動時や停止時のリレーシーケンスの構築を行う。
【0031】
但し、ゲートパルス発生装置14の構成は、上記に限ることなく、電力変換器12による電力の融通の動作を制御可能な任意の構成でよい。
【0032】
ゲートパルス発生装置14は、セルフメンテナンス機能を有する。セルフメンテナンス機能は、例えば、ロジック部21に設けられる。換言すれば、ロジック部21は、セルフメンテナンス機能を有する。
【0033】
セルフメンテナンス機能は、電力変換器12の動作の制御を待機中に模擬的に実行することにより、電力変換器12の動作時にしか発見できないゲートパルス発生装置14の故障を、待機中に自動的に発見できるようにするための機能である。セルフメンテナンス機能は、換言すれば、電力緊急融通装置10の待機モードの時に、電力緊急融通装置10の運転モードと同様の動作を電力緊急融通装置10の各部に模擬的に実行させることにより、電力緊急融通装置10の運転モードの時にしか発見できない故障を、電力緊急融通装置10の待機モードの時に自動的に発見できるようにするための機能である。
【0034】
セルフメンテナンス機能は、例えば、ソフトウェアによって実現される。セルフメンテナンス機能は、例えば、ソフトウェアをロジック部21に組み込むことによって、ロジック部21に実装される。セルフメンテナンス機能は、例えば、ソフトウェアを組み込んだプログラマブルロジックコントローラなどのハードウェアによって実現してもよい。
【0035】
図2は、実施形態に係る電力緊急融通装置の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
図2は、ゲートパルス発生装置14(ロジック部21)によるセルフメンテナンス機能の動作の一例を模式的に表す。また、図2では、セルフメンテナンス機能において、ゲートパルス発生装置14を模擬的に動作させ、ゲートパルス発生装置14の故障の発見を行う場合の動作の一例を模式的に表す。
【0036】
図2に表したように、ロジック部21は、ゲートパルス発生装置14(電力緊急融通装置10)が待機モードか否かを確認し、待機モードの際に、セルフメンテナンス機能を実行する(図2のステップS101、S102)。ロジック部21は、例えば、ゲートパルス発生装置14の待機モード中に、セルフメンテナンス機能を定期的に実行する。
【0037】
ロジック部21は、セルフメンテナンス機能を実行すると、まず、電力変換器12の動作を制御するゲートパルス発生装置14の基本動作を模擬的に確認する。ゲートパルス発生装置14の基本動作は、例えば、パルスアンプ部22から電力変換器12に光パルスのゲートパルス信号を出力する動作である。
【0038】
なお、電力緊急融通装置10が待機モードの時には、開閉器3が開放され、電力変換器12への電力の供給が停止されている。このため、電力変換器12へのゲートパルス信号の出力を行ったとしても、電力変換器12が動作し、電力系統2などに対して影響を与えてしまうことを抑制することができる。ゲートパルス発生装置14の基本動作は、換言すれば、運転モードと同様の動作である。
【0039】
ロジック部21は、例えば、電気信号のゲートパルス信号をパルスアンプ部22に入力し、入力した電気信号のゲートパルス信号に応じた光パルスのゲートパルス信号をパルスアンプ部22に出力させる。そして、ロジック部21は、パルスアンプ部22から出力された光パルスのゲートパルス信号を受光素子などによって検出し、検出結果を取得する。換言すれば、パルスアンプ部22は、ゲートパルス信号の出力を検出するための検出回路を有し、検出結果をロジック部21に入力する。
【0040】
ロジック部21は、取得した検出結果を基に、パルスアンプ部22から出力されたゲートパルス信号に異常があるか否かを確認する(図2のステップS103)。これにより、ロジック部21は、ゲートパルス発生装置14の基本動作を模擬的に確認する。但し、ゲートパルス発生装置14の基本動作の確認方法は、上記に限ることなく、ゲートパルス発生装置14の基本動作を適切に確認することが可能な任意の方法でよい。
【0041】
ロジック部21は、ゲートパルス信号に異常がないことを確認した場合には、セルフメンテナンス機能を終了する。換言すれば、ロジック部21は、ゲートパルス発生装置14の基本動作に異常がないことを確認した場合には、セルフメンテナンス機能を終了する。
【0042】
一方、ロジック部21は、ゲートパルス信号に異常があることを確認した場合には、上位装置6に異常信号を送信することにより、上位装置6に異常状態を報知するとともに、故障表示器24に異常状態を表示することにより、現地の点検員などに対して異常状態を報知する(図2のステップS104、S105)。これにより、電力変換器12の動作時(電力緊急融通装置10の運転モードの時)にしか発見できないゲートパルス発生装置14の故障を、待機中(電力緊急融通装置10の待機モードの時)に自動的に発見することができる。
【0043】
また、ロジック部21は、ゲートパルス発生装置14に何らかの異常が発生していることを検出した場合、続いて、装置内の故障箇所を細かく特定するため、セルフメンテナンス機能の細分化を行う。ロジック部21は、ゲートパルス発生装置14をユニット単位や基板単位などの複数の単位に分け、複数の単位毎に動作の確認を行うことにより、故障箇所の特定を行う。
【0044】
ロジック部21は、例えば、ゲートパルス信号に異常があることを確認した場合には、続いて、パルスアンプ部22の動作を模擬的に確認する(図2のステップS107)。
【0045】
ロジック部21は、パルスアンプ部22に異常があることを確認した場合には、パルスアンプ部22に関する異常信号を上位装置6に送信することにより、パルスアンプ部22の異常状態を上位装置6に報知するとともに、パルスアンプ部22に関する異常状態を故障表示器24に表示することにより、現地の点検員などに対してパルスアンプ部22の異常状態を報知する(図2のステップS108、S109)。
【0046】
ロジック部21は、パルスアンプ部22に異常があることを確認した場合には、セルフメンテナンス機能を終了する。
【0047】
一方、ロジック部21は、パルスアンプ部22に異常がないことを確認した場合には、続いて、リレーユニット26の動作を模擬的に確認する(図2のステップS110)。以下、パルスアンプ部22の場合と同様に、異常が確認された場合には、異常状態の報知を行い、異常が確認されなかった場合には、次の単位の部分の動作の確認を行う。
【0048】
このように、ロジック部21は、ゲートパルス発生装置14に何らかの異常が発生していることを検出した場合には、複数の単位毎に動作の確認を順次行うことにより、故障箇所の特定を行う。ロジック部21は、例えば、ロジック部21の出力を確認することにより、ロジック部21自身の動作の確認も行う。このように、故障箇所の特定まで済ませておけば、電力緊急融通装置10の待機モードの時に、定期点検で人が現地に行くタイミングなどにおいて、電力緊急融通装置10の修理を容易に行うことが可能となる。
【0049】
以上、説明したように、本実施形態に係る電力緊急融通装置10では、運転モードの時にしか発見できない故障を、待機モードの時に自動的に発見することができる。換言すれば、電力変換器12の動作時にしか発見できない故障を、待機中に自動的に発見することができる。これにより、例えば、故障した状態のまま運転が必要なタイミングを迎えてしまい、電力緊急融通装置10の重要な責務を果たすことができなくなってしまうことを抑制することができる。
【0050】
また、電力緊急融通装置10では、例えば、装置の故障状態を現地へ行く前に把握することができるため、現地での故障調査を抑制することができる。例えば、現地作業を修理作業のみとすることができる。このように、定期的なメンテナンスにおいて、人が現地へ行く必要を抑制し、人的作業を大幅に削減することができる。
【0051】
また、メンテナンス機能の実行に要する時間は、数ミリ秒から数秒程度であるため、電力緊急融通装置10の運用に与える影響を小さくすることができる。例えば、点検員が模擬運転を行い、装置点検を行う場合には、電力緊急融通装置10を数日から数週間程度停止させる必要がある。このように、故障点検のために長時間にわたって電力緊急融通装置10を停止させる必要性を無くすことができる。
【0052】
また、例えば、セルフメンテナンス機能をソフトウェアによって実現した場合には、既存の電力緊急融通装置に対してもセルフメンテナンス機能を比較的容易に適用することができる。さらには、ゲートパルス発生装置14(制御装置)を丸ごと更新する場合などにおいても、制御盤の盤面数などが増えることを抑制し、現地の据え付け面積が増大することも抑制することができる。例えば、現地の据え付け場所を確保するための追加工事なども不要とすることができる。
【0053】
例えば、電力緊急融通装置を2重系にしておき、片系が故障しても、もう片系で責務を果たす場合がある。しかしながら、この場合には、2重系にすることで装置全体が大型になるため、装置の製造コストの増加や現地の据え付け場所の確保が困難となってしまうことが懸念される。
【0054】
本実施形態に係る電力緊急融通装置10では、装置の大型化を抑制できるとともに、装置の製造コストの増加や現地の据え付け場所の確保が困難となってしまうことも抑制することができる。
【0055】
このように、本実施形態に係る電力緊急融通装置10では、より簡単な構成で、待機中に故障を発見できるようにすることができる。
【0056】
図3は、実施形態に係る電力緊急融通装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
図3に表したように、電力緊急融通装置10aは、模擬電圧発生装置30と、開閉器32と、をさらに備える。
【0057】
模擬電圧発生装置30は、電力系統2を模擬した電力を電力変換器12に供給可能とする。模擬電圧発生装置30は、例えば、電力系統2に対応した交流電力の電力変換器12への供給を行う。
【0058】
開閉器32は、模擬電圧発生装置30の電力を電力変換器12に供給する状態と、模擬電圧発生装置30の電力の電力変換器12への供給を停止した状態と、を切り替える。開閉器32は、例えば、電路を開いた開放状態において、模擬電圧発生装置30の電力の電力変換器12への供給を停止した状態となり、電路を閉じた投入状態において、模擬電圧発生装置30の電力を電力変換器12に供給する状態となる。開閉器32の開放状態及び投入状態は、例えば、ロジック部21によって切り替えられる。
【0059】
電力緊急融通装置10aにおいて、ロジック部21は、セルフメンテナンス機能を実行する際に、模擬電圧発生装置30の電力を電力変換器12に供給する状態とし、その他の状態の際に、模擬電圧発生装置30の電力の電力変換器12への供給を停止した状態とするように、開閉器32の開放状態及び投入状態を切り替える。
【0060】
これにより、ロジック部21は、セルフメンテナンス機能において、ゲートパルス発生装置14の基本動作を模擬的に確認するとともに、ゲートパルス発生装置14からのゲートパルス信号、及び模擬電圧発生装置30からの電力に基づいて電力変換器12を動作させることにより、電力変換器12の基本動作を模擬的に確認する。ロジック部21は、セルフメンテナンス機能において、電力変換器12の動作の制御を待機中に模擬的に実行するとともに、電力変換器12を模擬的に動作させることにより、電力変換器12及びゲートパルス発生装置14の故障を、待機中に自動的に発見できるようにする。
【0061】
この際、模擬電圧発生装置30から電力変換器12に電力を供給し、開閉器3を開放したままとすることにより、電力変換器12を動作させたとしても、電力系統2などに対して影響を与えてしまうことを抑制することができる。ロジック部21は、セルフメンテナンス機能において、電力変換器12を模擬的に動作させる際に、電力変換器12が電力系統2から切り離された状態において、模擬電圧発生装置30から電力変換器12に電力を供給することにより、電力変換器12を模擬的に動作させる。
【0062】
ロジック部21は、例えば、電力変換器12の出力を検出し、電力変換器12から適切な電力が出力された際に、電力変換器12及びゲートパルス発生装置14に異常がないと判定し、電力変換器12から適切な電力が出力されなかった際に、電力変換器12及びゲートパルス発生装置14のいずれかに異常があると判定する。これにより、ロジック部21は、電力変換器12及びゲートパルス発生装置14の基本動作を確認する。
【0063】
但し、電力変換器12及びゲートパルス発生装置14の基本動作の確認方法は、上記に限定されるものではない。例えば、電力変換器12の複数のスイッチング素子のそれぞれのスイッチングの状態(オン状態及びオフ状態)を確認し、複数のスイッチング素子のそれぞれのスイッチングの状態が適切である場合に、電力変換器12及びゲートパルス発生装置14に異常がないと判定し、複数のスイッチング素子のそれぞれのスイッチングの状態が不適切である場合に、電力変換器12及びゲートパルス発生装置14のいずれかに異常があると判定してもよい。電力変換器12及びゲートパルス発生装置14の基本動作の確認方法は、電力変換器12及びゲートパルス発生装置14の基本動作を適切に確認することができる任意の方法でよい。
【0064】
ロジック部21は、電力変換器12及びゲートパルス発生装置14に何らかの異常が発生していることを検出した場合、続いて、セルフメンテナンス機能の細分化を行う。ロジック部21は、電力変換器12及びゲートパルス発生装置14をユニット単位や基板単位などの複数の単位に分け、複数の単位毎に動作の確認を行うことにより、故障箇所の特定を行う。
【0065】
このように、電力緊急融通装置10aにおいて、セルフメンテナンス機能によって故障の検出を行う対象は、ゲートパルス発生装置14に限ることなく、電力変換器12及びゲートパルス発生装置14を対象とし、電力変換器12及びゲートパルス発生装置14のそれぞれの故障の検出を行ってもよい。あるいは、電力変換器12の故障の検出のみを行ってもよい。セルフメンテナンス機能は、電力変換器12の動作の制御を待機中に模擬的に実行することにより、電力変換器12の動作時にしか発見できない電力変換器12及びゲートパルス発生装置14(制御装置)の少なくとも一方の故障を、待機中に自動的に発見できるようにする機能でよい。
【0066】
なお、上記実施形態では、電力変換器12をサイリスタなどの他励式のスイッチング素子を用いた他励式の変換器としている。電力変換器12は、他励式の変換器に限ることなく、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの自励式のスイッチング素子を用いた自励式の変換器でもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、電力変換器12の動作を制御する制御装置の一例として、ゲートパルス発生装置14を示している。例えば、電力変換器12が自励式の変換器である場合には、制御装置は、PWM信号を制御信号として電力変換器12に入力することにより、電力変換器12の各スイッチング素子のそれぞれのスイッチングを制御する構成でもよい。制御装置の構成は、制御信号を電力変換器12に入力することにより、電力変換器12の動作を適切に制御可能な任意の構成でよい。制御装置から電力変換器12に入力する制御信号は、光信号に限ることなく、電気信号でもよい。
【0068】
上記実施形態では、常時待機装置の一例として、電力緊急融通装置10を示している。常時待機装置は、これに限ることなく、例えば、無停電電源装置やサーキットブレーカなどでもよい。
【0069】
無停電電源装置は、停電が発生していない通常時に、電力供給の動作の実行を待機し、停電が発生した非常時に、電力供給の動作を行う。無停電電源装置において、動作部は、例えば、蓄電部に蓄積された電力を負荷に応じた電力に変換して供給する電力変換器である。
【0070】
サーキットブレーカは、過電流が発生していない通常時に、電路を遮断する動作の実行を待機し、過電流が発生した非常時に、電路を遮断する動作を行う。サーキットブレーカにおいて、動作部は、例えば、電路を開閉するスイッチ回路である。
【0071】
常時待機装置は、上記に限ることなく、通常時に動作の実行を待機し、非常時に所定の動作を行う任意の装置でよい。動作部は、非常時に所定の動作を行う任意の部材でよい。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
2…電力系統、 3…開閉器、 4…直流回路、 6…上位装置、 8…外部装置、 10、10a…電力緊急融通装置(常時待機装置)、 12…電力変換器、 14…ゲートパルス発生装置(制御装置)、 21…ロジック部、 22…パルスアンプ部、 23…制御電源ユニット、 24…故障表示器、 25…停電補償ユニット、 26…リレーユニット、 30…模擬電圧発生装置、 32…開閉器
図1
図2
図3