(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180780
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】微小チャンバーアレイ
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20231214BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094361
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友幸
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 涼
(72)【発明者】
【氏名】山口 和範
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
(72)【発明者】
【氏名】松本 良一
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 昭雄
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CC02
2G058CC05
2G058DA07
2G058GA01
(57)【要約】
【課題】流路を流れる溶媒を、良好に複数の収容部に導くことができる微小チャンバーアレイを提供する。
【解決手段】微小チャンバーアレイは、第1基板と、第1基板と対向する第2基板と、第1基板と第2基板との間に形成され、試料を含む溶媒が流れる流路と、第1基板の第2基板と対向する面に設けられたチャンバー本体部と、チャンバー本体部に形成された凹部からなる複数の収容部と、チャンバー本体部の表面から突出する複数の突出部と、を有し、複数の突出部は、第1方向で隣り合う複数の収容部の間に設けられ、かつ、第1方向と直交し流路に沿った第2方向に延在して設けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、試料を含む溶媒が流れる流路と、
前記第1基板の前記第2基板と対向する面に設けられたチャンバー本体部と、
前記チャンバー本体部に設けられた凹部からなる複数の収容部と、
前記チャンバー本体部の表面から突出する複数の突出部と、を有し、
前記複数の突出部は、第1方向で隣り合う前記複数の収容部の間に設けられ、かつ、前記第1方向と直交し前記流路に沿った第2方向に延在して設けられる
微小チャンバーアレイ。
【請求項2】
前記複数の収容部は、平面視でそれぞれ円形状であり、
前記複数の突出部の前記第2方向での長さは、前記複数の収容部の直径よりも長い
請求項1に記載の微小チャンバーアレイ。
【請求項3】
前記複数の収容部は、平面視で千鳥状に配置され、
前記複数の突出部は、前記第1方向で隣り合う前記複数の収容部の間に設けられ、かつ、前記第2方向で隣り合う前記複数の収容部の間に設けられ、
前記複数の突出部の前記第2方向での長さは、前記第2方向で隣り合う前記複数の収容部の間の距離の1/2以下である
請求項1に記載の微小チャンバーアレイ。
【請求項4】
前記流路の前記第2方向の一方に設けられ、前記溶媒が注入される注入口と、
前記流路の前記第2方向の他方に設けられ、前記溶媒が排出される排出口と、を有し、
前記複数の突出部の前記注入口側の一端は、それぞれ平面視で三角形状である
請求項1に記載の微小チャンバーアレイ。
【請求項5】
前記複数の突出部は、それぞれ平面視で菱形形状である
請求項1に記載の微小チャンバーアレイ。
【請求項6】
前記複数の収容部は、平面視でマトリクス状に配置され、
前記複数の突出部は、前記第2方向に配列された前記複数の収容部に亘って、前記第2方向に延在する
請求項1に記載の微小チャンバーアレイ。
【請求項7】
前記複数の収容部は、平面視でマトリクス状に配置され、
前記複数の突出部は、それぞれ前記第2方向に延在し、かつ、スリット部を介して前記第2方向に並んで配列される
請求項1に記載の微小チャンバーアレイ。
【請求項8】
前記複数の収容部は、平面視でマトリクス状に配置され、
前記複数の突出部は、平面視で平行四辺形状の複数の部分が前記第2方向に連なって形成される
請求項1に記載の微小チャンバーアレイ。
【請求項9】
前記流路の前記第2方向の一方に設けられ、前記溶媒が注入される注入口と、
前記流路の前記第2方向の他方に設けられ、前記溶媒が排出される排出口と、を有し、
前記チャンバー本体部の前記注入口側の辺と、前記複数の収容部が設けられた収容部形成領域との間の領域には、前記第2方向に延在する溝部が設けられる
請求項1に記載の微小チャンバーアレイ。
【請求項10】
前記流路の前記第2方向の一方に設けられ、前記溶媒が注入される注入口と、
前記流路の前記第2方向の他方に設けられ、前記溶媒が排出される排出口と、を有し、
前記チャンバー本体部の前記注入口側の一方の辺と、前記複数の収容部が設けられた収容部形成領域との間の領域には、前記複数の収容部と同等の平面形状を有する複数の開口部が設けられる
請求項1に記載の微小チャンバーアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小チャンバーアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、生体試料を含む溶媒が流れる流路と、流路に開口する複数の微小チャンバー(特許文献2では、「収容部」)とを有する高密度微小チャンバーアレイ(特許文献2では、「マイクロチャンバーアレイ」)について開示されている。
【0003】
また、特許文献3には、液体検体を流通させて、所定物質と、該流路に面して固定される特定物質との相互作用に基づいて該液体検体に関する分析を行なうのに使用される、分析用チップについて開示されている。特許文献3の分析用チップでは、流路内に凸状部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-40754号公報
【特許文献2】国際公開第2014/034781号
【特許文献3】特開2004-93558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2の高密度微小チャンバーアレイの流路及び微小チャンバーは、それぞれ相反する特性を持つ材料、すなわち疎水性を有する材料及び親水性を有する材料で形成される。このため、溶媒の種類、特性によって流路内に均一に流れない可能性がある。また、特許文献3では、微小チャンバーについて記載されていない。
【0006】
本発明は、流路を流れる溶媒を、良好に複数の収容部に導くことができる微小チャンバーアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の微小チャンバーアレイは、第1基板と、前記第1基板と対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に形成され、試料を含む溶媒が流れる流路と、前記第1基板の前記第2基板と対向する面に設けられたチャンバー本体部と、前記チャンバー本体部に形成された凹部からなる複数の収容部と、前記チャンバー本体部の表面から突出する複数の突出部と、を有し、複数の前記突出部は、第1方向で隣り合う複数の前記収容部の間に設けられ、かつ、前記第1方向と直交し前記流路に沿った第2方向に延在して設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る微小チャンバーアレイにおける、溶媒が流路に流れる状態を説明するための説明図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る微小チャンバーアレイの、複数の収容部及び複数の突出部の構成例を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の第1変形例に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の第2変形例に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の第3変形例に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の第4変形例に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態の第5変形例に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。
【
図12】
図12は、注入口側の微小チャンバーアレイを拡大して示す平面図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態の第6変形例に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。
【
図15】
図15は、第3実施形態に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す断面図である。
【
図16】
図16は、微小チャンバーアレイの製造方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、本開示の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本開示と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
本明細書及び特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。
図2は、
図1のII-II’断面図である。なお、
図1では、図面を見やすくするために、第2基板12、注入用治具51及び排出用治具53を二点鎖線で示している。
【0012】
図1及び
図2に示すように、微小チャンバーアレイ10は、第1基板11と、第2基板12と、チャンバー本体部21と、複数の収容部22と、複数の突出部23(
図4参照)と、スペーサ24と、シール部25と、を有する。なお、
図1から
図3では、複数の突出部23の図示を省略しているが、複数の突出部23の詳細な構成については、
図4にて後述する。
【0013】
第1基板11は、平坦な板状部材であり、例えば、ガラス基板である。第2基板12は、第1基板11と間隔を有して対向して配置される。第2基板12は、平坦な板状部材であり、例えば、ガラス基板である。なお、第1基板11及び第2基板12は、シリコンや樹脂等、他の材料で形成されていてもよい。また、複数の収容部22に収容された試料を観察するために、第1基板11及び第2基板12の少なくとも一方は、透光性を有する材料が用いられる。
【0014】
チャンバー本体部21は、第1基板11の表面、すなわち第1基板11の第2基板12と対向する面に設けられる。チャンバー本体部21は、疎水性の膜であり、例えば、アモルファスフッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロアルキル基を側鎖に有するポリマー(フルオロアルキルエチルメタクリレートの重合体や、メタクリレートとの共重合体など)、ポリシロキサン(シロキサンの側鎖に疎水性のメチル基又は疎水性の強いフルオロアルキル基に有するポリマー)などのポリマー膜を表面に加工した構造で形成される。より具体的には、チャンバー本体部21は、水溶液と濡れ性が悪く、油との親和性が良い。
【0015】
チャンバー本体部21は、収容部形成領域AAと、周辺領域GAとを有する。収容部形成領域AAは、複数の収容部22が形成された領域である。
図1に示す例では、複数の収容部形成領域AAは、チャンバー本体部21にマトリクス状に配置される。周辺領域GAは、複数の収容部22が形成されない領域であり、複数の収容部形成領域AAの間及び複数の収容部形成領域AAよりもチャンバー本体部21の外縁側に設けられる。
【0016】
なお、以下の説明において、第1方向Dxは、第1基板11の表面と平行な面内の一方向である。第2方向Dyは、第1基板11の表面と平行な面内の一方向であり、第1方向Dxと直交する方向である。なお、第2方向Dyは、第1方向Dxと直交しないで交差してもよい。第3方向Dzは、第1方向Dx及び第2方向Dyと直交する方向である。第3方向Dzは、第1基板11の表面の法線方向である。また、「平面視」とは、第1基板11の表面と垂直な方向から見た場合の位置関係をいう。
【0017】
図2に示すように、複数の収容部22は、チャンバー本体部21に形成された凹部で構成される。複数の収容部22は、検出対象の試料を含む溶媒31(
図3参照)を収容するための空間であり、微小チャンバーあるいはマイクロチャンバーとも呼ばれる。複数の収容部22は、チャンバー本体部21を厚さ方向に貫通して設けられる。つまり、複数の収容部22の内壁はチャンバー本体部21の材料で構成され、複数の収容部22の底面は第1基板11の表面、例えばガラスで構成される。ガラスは、チャンバー本体部21よりも親水性を有する。すなわち、複数の収容部22は、チャンバー本体部21の表面よりも親水性を有する。
【0018】
図1に示すように、複数のスペーサ24は、チャンバー本体部21の周辺領域GAに設けられた壁状の部材であり、第1方向Dxに並んで配列され、それぞれ第2方向Dyに延在する。第1方向Dxに隣り合う複数のスペーサ24の間で、複数の収容部形成領域AAが第2方向Dyに並んで配列される。また、複数のスペーサ24の上端部は第2基板12に接している(
図5参照)。これにより、チャンバー本体部21と第2基板12との第3方向Dzでの間隔が規定される。
【0019】
このような構成により、第1基板11と第2基板12との間、かつ、平面視で複数のスペーサ24の間に、注入口52から排出口54に向かって溶媒31、34(
図3参照)が流れる流路55が形成される。
図1に示す例では、複数のスペーサ24で区切られた3つの流路55が設けられ、3つの流路55は、それぞれ第2方向Dyに沿って延在する。溶媒31が注入される注入口52は、流路55の第2方向Dyの一方に設けられ、溶媒31が排出される排出口54は、流路55の第2方向Dyの他方に設けられる。
【0020】
シール部25は、第1基板11と、第2基板12とを貼り合わせる部材であり、第1基板11のチャンバー本体部21よりも外縁側に設けられる。シール部25は、第1基板11の第2方向Dyに延在する辺に沿って設けられる。また、シール部25には、注入口52に対応する辺に第1開口25aが設けられ、第1開口25aの反対側で、排出口54に対応する辺に第2開口25bが設けられる。
【0021】
図2に示すように、注入用治具51は、第1基板11及び第2基板12の、第2方向Dyの一方の端部を覆って設けられる。排出用治具53は、注入用治具51の反対側で、第1基板11及び第2基板12の、第2方向Dyの他方の端部を覆って設けられる。注入用治具51及び排出用治具53は、それぞれ第1部分51a、53aと、第2部分51b、53bと、第3部分51c、53cと、を有する。第1部分51a、53aは、第3方向Dzに延在し第1基板11と第2基板12との間の隙間を覆って設けられる。第2部分51b、53bは、第1基板11の裏面の一部と重なって設けられる。第3部分51c、53cは、第2基板12の表面の一部と重なって設けられる。
【0022】
注入用治具51の第3部分51cには、第3方向Dzに貫通する注入口52が設けられる。排出用治具53の第3部分51cには、第3方向Dzに貫通する排出口54が設けられる。第2基板12の第2方向Dyでの長さは、第1基板11の第2方向Dyでの長さよりも短く形成される。注入用治具51の注入口52及び排出用治具53の排出口54は、それぞれ第2基板12と重ならない領域に設けられる。このような構成により、注入口52、流路55及び排出口54は、連通して設けられる。
【0023】
図3は、第1実施形態に係る微小チャンバーアレイにおける、溶媒が流路に流れる状態を説明するための説明図である。なお、
図3各図は、微小チャンバーアレイ10の注入口52側の一部を拡大して示す断面図である。
【0024】
図3に示すように、注入口52に溶媒供給部30(ノズル)が挿入され、溶媒31は、注入口52から流路55に注入される(ステップST11)。溶媒31は、検出対象の試料(図示しない)と、試薬32と、を含む親水性溶媒である。親水性溶媒は、例えば、水、親水性アルコール(具体的にはメタノール、エタノール、IPAなど炭化水素数が小さいもの)、親水性エーテル、ケトン、ニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミドイオン性溶液、N,N-ジメチルホルムアミド電解質溶液等が用いられる。検出対象の試料は、例えば生体分子やウイルス等である。試薬32は、試料と反応する材料である。
【0025】
その後、溶媒供給部30が取り除かれ、一定の期間放置される(ステップST12)。試薬32は、溶媒31内で沈降してチャンバー本体部21の上に配置される。また、一部の試薬32は、検出対象の試料を含む溶媒31とともに収容部22に収容される。
【0026】
次に、注入口52に溶媒供給部33(ノズル)が挿入され、溶媒34は、注入口52から流路55に注入される(ステップST13)。溶媒34は、疎水性の溶媒であり、例えばn-ヘキサデカンなどの直鎖飽和炭化水素、シクロヘキサンのような環状飽和炭化水素、不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、シリコーンオイル、パーフルオロカーボン、ハロゲン系溶媒等が用いられる。溶媒34は、ステップST11、ST12で注入された溶媒31及び試薬32を排出口54側に押し出すように注入される。これにより、試薬32は各収容部22に収容される。
【0027】
その後、溶媒34は、各収容部22を覆って流路55内に充填され、溶媒供給部33が取り除かれる(ステップST14)。各収容部22には、検出対象の試料及び試薬32を含む溶媒31が収容される。また、収容部22に収容された検出対象の試料及び試薬32を含む溶媒31は、溶媒34で覆われる。
【0028】
上述したように、複数の収容部22の少なくとも底面は親水性を有し、チャンバー本体部21は疎水性を有する。すなわち、複数の収容部22は、検出対象の試料及び試薬32を含む溶媒31と親和性が高く、チャンバー本体部21は、複数の収容部22を覆う溶媒34と親和性が高い。これにより、各収容部22に効率よく検出対象の試料及び試薬32を含む溶媒31が収容される。微小チャンバーアレイ10は、第1基板11の裏面側から、各収容部22に封入された試料からの蛍光を観察し、各収容部22内での試料の有無を検出することができる。
【0029】
次に、収容部形成領域AAに設けられた複数の収容部22及び複数の突出部23の詳細な構成について説明する。
図4は、第1実施形態に係る微小チャンバーアレイの、複数の収容部及び複数の突出部の構成例を模式的に示す平面図である。
図5は、
図4のV-V’断面図である。
【0030】
図4に示すように、複数の収容部22は、平面視でそれぞれ円形状であり、収容部形成領域AAに千鳥状に配置される。言い換えると、複数の収容部22は三角格子状に配置される。すなわち、第1方向Dxに並ぶn行目の複数の収容部22と、第1方向Dxに並ぶn+1行目の複数の収容部22と、の位置がずれるように配置される。
【0031】
図4及び
図5に示すように、複数の突出部23は、チャンバー本体部21の表面から突出して設けられる。複数の突出部23は、疎水性の材料が用いられ、例えばチャンバー本体部21と同じく、アモルファスフッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロアルキル基を側鎖に有するポリマー(フルオロアルキルエチルメタクリレートの重合体や、メタクリレートとの共重合体など)、ポリシロキサン(シロキサンの側鎖に疎水性のメチル基又は疎水性の強いフルオロアルキル基に有するポリマー)などのポリマー膜を表面に加工した構造でも良いし、突出部23の表面をパーフルオロアルキルシラン等で表面処理した構造でもよい。
図4に示すように、複数の突出部23は、第1方向Dxで隣り合う複数の収容部22の間に設けられ、第2方向Dyに沿って延在して設けられる。複数の突出部23は、第2方向Dyの一端23aと、一端23aと反対側の他端23bとを有する。
【0032】
複数の突出部23は、矢印Fで示す溶媒31、34が流れる方向に沿って延在する。また、複数の突出部23は、第1方向Dxで隣り合う複数の収容部22とそれぞれ離れて配置される。また、複数の突出部23は、第2方向Dyで隣り合う複数の収容部22の間に設けられる。複数の突出部23の一端23a及び他端23bは、それぞれ第2方向Dyで隣り合う複数の収容部22と離れて配置される。
【0033】
複数の突出部23の第2方向Dyでの長さL1は、複数の収容部22の直径D1よりも長い。また、複数の突出部23の第2方向Dyでの長さL1は、第2方向Dyで隣り合う複数の収容部22の間の距離W2の1/2以下である。また、複数の突出部23の第1方向Dxでの幅は、第1方向Dxで隣り合う複数の収容部22の距離W1よりも十分に小さい。複数の収容部22の直径D1は、例えば2μm以上10μm以下程度である。第1方向Dxで隣り合う複数の収容部22の距離W1は、例えば5μm以上20μm以下程度である。
【0034】
図5に示すように、複数の突出部23の上端部は、第2基板12に接して設けられる。複数の突出部23の高さは、複数のスペーサ24の高さと同等である。複数の突出部23の第1方向Dxでの幅は、複数のスペーサ24の第1方向Dxでの幅よりも小さい。複数の突出部23は、複数のスペーサ24と同じ材料を用いてもよい。この場合、複数の突出部23は、複数のスペーサ24と同じ工程で形成される。複数の突出部23の高さ、及び、複数のスペーサ24の高さは、例えば2μm以上10μm以下程度である。また、チャンバー本体部21の膜厚は、0.5μm以上3μm以下程度である。ただし、複数の突出部23の高さは、複数のスペーサ24の高さよりも低くてもよい。
【0035】
図4に戻って、複数の突出部23について各行ごとに、1行目の複数の突出部23-1、2行目の複数の突出部23-2、3行目の複数の突出部23-3、4行目の複数の突出部23-4、5行目の複数の突出部23-5と表す。なお、以下の説明では、親水性の溶媒31の流動について説明する、親水性の溶媒31についての説明は疎水性の溶媒34についても適用できる。
【0036】
矢印Faに沿って1行目の複数の突出部23-1の間を通って流動する溶媒31は、2行目の突出部23-2で矢印Fb、Fcに沿った方向に分岐される。
【0037】
矢印Fbに沿って流動する溶媒31は、3行目の突出部23-3で矢印Fd、Feに沿った方向に分岐される。同様に、矢印Fcに沿って流動する溶媒31は、3行目の突出部23-3で矢印Ff、Fgに沿った方向に分岐される。Feに沿った方向に流動する溶媒31と、矢印Ffに沿った方向に流動する溶媒31とは、第1方向Dxに隣り合う2つの突出部23-3の間で合流する。
【0038】
以下同様に、複数の突出部23-4、23-5により、溶媒31、34は、分岐と合流を繰り返しつつ、全体として注入口52から排出口54に向かって、流路55(第2方向Dy)に沿って流動する。
【0039】
このような構成により、溶媒31は、複数の突出部23により効率よく複数の収容部22に導かれる。より詳細には、微小チャンバーアレイ10は、チャンバー本体部21が疎水性材料で形成され、複数の収容部22が親水性材料で形成され、領域ごとに溶媒31又は溶媒34との親水性が異なる場合であっても、複数の突出部23により溶媒31、34の流動の偏りが生じることを抑制できる。したがって微小チャンバーアレイ10は、複数の突出部23がない場合に比べて、溶媒31、34を、流路55の全体に均一に流動させることができる。
【0040】
また、複数の突出部23の第2方向Dyでの長さL1、複数の収容部22の直径D1及び複数の収容部22の間の距離W1、W2を、上述したような関係を満たすように形成することで、溶媒31は、複数の突出部23の各行ごとに良好に分岐と合流を繰り返して流動する。これにより、溶媒31は効率よく複数の収容部22に導かれる。
【0041】
なお、
図4に示す複数の収容部22及び複数の突出部23の、配置、数、形状等は、あくまで一例であり、適宜変更することができる。
図4に示す例では、収容部形成領域AA内で、複数の突出部23の数は、複数の収容部22の数と等しい。ただしこれに限定されず、複数の突出部23の数は、複数の収容部22の数と異なっていてもよい。具体的には、複数の突出部23は複数の収容部22ごとに設けられているが、これに限定されず、複数の収容部22をひとまとまりとしたグループを収容部グループとして、収容部グループごとに突出部23を形成してもよい。
【0042】
なお、
図2、
図3及び
図5では、複数の収容部22は、内壁が第1基板11の表面に対して垂直に設けられている。ただし、これに限定されず、複数の収容部22は、テーパー形状であってもよい。すなわち、複数の収容部22の内壁が第1基板11の表面に対して傾斜して設けられていてもよい。また、注入用治具51及び排出用治具53は、図示しない固定部材により第1基板11及び第2基板12と一体に設けられていてもよい。あるいは、注入用治具51及び排出用治具53は、必要に応じて、第1基板11及び第2基板12から取り外し可能に設けられていてもよい。
【0043】
(第1実施形態の変形例)
次に、複数の収容部22及び複数の突出部23の、各種変形例について説明する。
図6は、第1実施形態の第1変形例に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。なお、以下の説明では、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0044】
図6に示すように、第1実施形態の第1変形例に係る微小チャンバーアレイ10Aでは、複数の突出部23Aの第2方向Dyの一端23Aa、すなわち注入口52(
図1参照)側の一端23Aaが、それぞれ平面視で三角形状である。第1変形例では、溶媒31は、突出部23Aの一端23Aaに衝突する際に生じる乱流が抑制され、突出部23Aの一端23Aaで良好に分岐される。したがって、第1変形例では、溶媒31をスムーズに複数の収容部22に導くことができる。
【0045】
図7は、第1実施形態の第2変形例に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。
図7に示すように、第1実施形態の第2変形例に係る微小チャンバーアレイ10Bでは、複数の突出部23Bはそれぞれ平面視で菱形形状である。言い換えると、複数の突出部23Bはそれぞれ平面視で平行四辺形状である。複数の突出部23Bは、平面視で、2つ対角線が直交し、かつ、2つ対角線の長さが異なっている。複数の突出部23Bは、長い対角線が第2方向Dyに沿って、短い対角線が第1方向Dxに沿って設けられる。
【0046】
第2変形例では、溶媒31は、突出部23Bの一端23Baに衝突する際に生じる乱流が抑制され、突出部23Bの一端23Baで良好に分岐される。また、溶媒31は、突出部23Bの他端23Bbでの乱流の発生も抑制される。したがって、第2変形例では、溶媒31はスムーズに複数の収容部22に導かれる。
【0047】
図8は、第1実施形態の第3変形例に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。
図8に示すように、第1実施形態の第3変形例に係る微小チャンバーアレイ10Cでは、複数の収容部22は、収容部形成領域AAでマトリクス状に配置される。すなわち、複数の収容部22は、第1方向Dxに配列され、かつ、第2方向Dyに配列される。
【0048】
第3変形例では、複数の突出部23Cは、第2方向Dyに配列された複数の収容部22に亘って第2方向Dyに延在する。また、複数の突出部23Cは、第1方向Dxに並んで配列され、それぞれ第1方向Dxに隣り合う複数の収容部22の間に設けられる。複数の突出部23Cは、それぞれ収容部形成領域AAの第2方向Dyの一方の辺から第2方向Dyの他方の辺に亘って第2方向Dyに延在する。言い換えると、突出部23Cの一端23Caと他端23Cbとの間に収容部形成領域AAが配置される。なお、
図8では1つ収容部形成領域AAを示しているが、突出部23Cは、第2方向Dyに配列された複数の収容部形成領域AAに亘って連続して設けられていてもよい。
【0049】
第3変形例では、第1方向Dxに隣り合う複数の突出部23Cの間に、それぞれ第2方向Dyに延在する流路が形成される。複数の突出部23Cの間で形成された流路に、複数の収容部22が第2方向Dyに沿って配列される。言い換えると、複数の突出部23Cにより、スペーサ24の間の1つの流路55が、複数の突出部23Cにより第2方向Dyに配列された複数の収容部22ごとに分割される。このため、溶媒31は、第1方向Dxに隣り合う複数の突出部23Cの間を通って第2方向Dyに流動することとなり、溶媒31の流動の偏りが抑制される。
【0050】
図9は、第1実施形態の第4変形例に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。
図9に示すように、第1実施形態の第4変形例に係る微小チャンバーアレイ10Dでは、複数の突出部23Dは、それぞれ第2方向Dyに延在し、かつ、スリット部SLを介して第2方向に並んで配列される。突出部23Dの一端23Daと、突出部23Dと第2方向Dyに隣り合う他の突出部23Dの他端23Dbとの間にスリット部SLが形成される。また、複数の突出部23Dは、第1方向Dxに隣り合う複数の収容部22の間に配置される。また、スリット部SLは、複数の収容部22と第1方向Dxに隣り合わない位置に設けられる。
【0051】
複数の突出部23Dは、第2方向Dyに配列された複数の収容部22ごとにスリット部SLにより離れて配置されている。ただし、これに限定されず、第2方向Dyに並ぶ複数の収容部22をひとまとまりとしたグループを収容部グループとして、収容部グループごとに突出部23Dを設けてもよい。
【0052】
図10は、第1実施形態の第5変形例に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。
図10に示すように、第1実施形態の第5変形例に係る微小チャンバーアレイ10Eでは、複数の突出部23Eは、平面視で平行四辺形状の複数の部分23Eaが第2方向Dyに連なって形成される。
図10に示す例では、複数の部分23Eaはそれぞれ平面視で菱形形状である。
【0053】
複数の部分23Eaを、それぞれ各辺を延長した仮想線で結ぶ個別の平行四辺形状(菱形形状)とした場合に、平面視で、2つの対角線23Eb、23Ecが直交し、かつ、2つの対角線23Eb、23Ecの長さが異なる。長い対角線23Ebが第2方向Dyに沿って設けられる。また、短い対角線23Ecが第1方向Dxに沿って設けられる。
【0054】
このような構成により、複数の突出部23Eは、第1方向Dxでの幅が流路55(第2方向Dy)に沿って周期的に異なって設けられる。第2方向Dyで複数の部分23Eaが接続される箇所、すなわち突出部23Eの第1方向Dxでの幅が小さい箇所が、収容部22と第1方向Dxに隣り合って配置される。また、複数の部分23Eaの短い対角線23Ecが設けられる箇所、すなわち突出部23Eの第1方向Dxでの幅が大きい箇所が、第2方向Dyで隣り合う複数の収容部22の間の領域に配置される。
【0055】
第5変形例では、収容部22がある領域で流路55の第1方向Dxでの幅が大きくなり、収容部22がない領域で流路55の第1方向Dxでの幅が小さくなる。これにより、第5変形例では、流路55での収容部22の実質的な配置密度(流路55の面積に対する収容部22の面積の比率)を大きくすることができ、溶媒31を効率よく複数の収容部22に導くことができる。
【0056】
なお、第1実施形態及び第1変形例から第5変形例に示した複数の収容部22及び複数の突出部23、23A、23B、23C、23D、23Eの構成は、あくまで一例であり、適宜変更することができる。また、1つの微小チャンバーアレイ10で、第1実施形態及び第1変形例から第5変形例の構成を適宜組み合わせてもよい。
【0057】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。
図12は、注入口側の微小チャンバーアレイを拡大して示す平面図である。
図13は、
図12のXIII-XIII’断面図である。なお、
図11では、図面を見やすくするために、チャンバー本体部21の注入口52側に設けられた複数の溝部62(
図12、
図13参照)及び複数の突出部23の図示を省略して示す。
【0058】
図11に示すように、第2実施形態に係る微小チャンバーアレイ10Fでは、シール部25の注入口52側(第2方向Dyの一方)の辺に、複数の第1開口25aが設けられ、また、シール部25の排出口54側(第2方向Dyの他方)の辺に、複数の第2開口25bが設けられる。複数の第1開口25a及び複数の第2開口25bは、それぞれ、第1方向Dxに配列された複数の流路55ごとに設けられる。
【0059】
これにより、注入口52から注入された溶媒31は、複数の流路55ごとに複数の第1開口25aで分岐されて、チャンバー本体部21の注入口52側(第2方向Dyの一方)の辺に流れる。これにより、複数の流路55に対して1つの第1開口25aが設けられた構成に比べて、チャンバー本体部21の注入口52側での溶媒31の流動の偏りが抑制され、溶媒31はスムーズに各流路55に注入される。また、複数の流路55ごとに複数の第1開口25a及び複数の第2開口25bが設けられているので、溶媒31の注入時や、微小チャンバーアレイ10Fの保管時での、収容部形成領域AAへの異物の侵入を抑制することができる。
【0060】
図12及び
図13に示すように、第2実施形態に係る微小チャンバーアレイ10Fでは、チャンバー本体部21の注入口52側(第2方向Dyの一方)の辺と、複数の収容部22が形成された収容部形成領域AAとの間の領域に、第2方向Dyに延在する複数の溝部26が形成される。複数の溝部26は、第1開口25aに対応する領域に設けられ、第1方向Dxに並んで配置される。また、複数の溝部26は、チャンバー本体部21の注入口52側(第2方向Dyの一方)の辺から、収容部形成領域AA側に向けて、第1方向Dxでの幅が大きくなるようにテーパー状に設けられる。
【0061】
図13に示すように、複数の溝部26は、チャンバー本体部21を厚さ方向に貫通して設けられる。つまり、複数の溝部26の内壁は、チャンバー本体部21の材料で構成され、複数の溝部26の底面は、第1基板11の表面、例えばガラスで構成される。したがって、複数の溝部26の少なくとも底面は親水性を有し、チャンバー本体部21の表面は疎水性を有する。
【0062】
また、チャンバー本体部21の注入口52側(第2方向Dyの一方)の辺と、収容部形成領域AAとの間の領域で、複数の溝部26の合計の面積と、チャンバー本体部21の面積(複数の溝部26が設けられていない部分の面積)と、は同程度(面積比1:1)になるように設けられる。これにより、親水性を有する溶媒31及び疎水性を有する溶媒34のいずれに対しても、チャンバー本体部21の注入口52側(第2方向Dyの一方)の辺から収容部形成領域AAまでの領域で同等の濡れ性を有するように構成される。これにより、微小チャンバーアレイ10Fでは、親水性を有する溶媒31及び疎水性を有する溶媒34のいずれも、スムーズにチャンバー本体部21の注入口52側(第2方向Dyの一方)の辺から収容部形成領域AAに流動することとなる。
【0063】
なお、
図12及び
図13では、1つの収容部形成領域AAに対し4つの溝部26が設けられているが、これに限定されない。溝部26は、1つの収容部形成領域AAに対し1つ以上3つ以下でもよいし、5つ以上設けられていてもよい。また、複数の溝部26は、収容部形成領域AA側に向けて拡がるテーパー形状であるが、これに限定されず、第2方向Dyに平行に設けられていてもよい。また、複数の溝部26の合計の面積と、チャンバー本体部21の面積と、は同程度(面積比1:1)に限定されず、使用される溶媒31、溶媒34の種類や濡れ性に応じて変更することが好ましい。
【0064】
なお、
図13では、複数の溝部26は、内壁が第1基板11の表面に対して垂直に設けられている。ただし、これに限定されず、複数の溝部26は、テーパー形状であってもよい。すなわち、複数の溝部26の内壁が第1基板11の表面に対して傾斜して設けられていてもよい。
【0065】
図12に示す複数の収容部22及び複数の突出部23の構成、配置は、上述した第1実施形態(
図4参照)と同様であり、繰り返しの説明は省略する。ただし、これに限定されず、第2実施形態の構成は、上述した第1変形例から第5変形例の構成と組み合わせることができる。
【0066】
(第2実施形態の第6変形例)
図14は、第2実施形態の第6変形例に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す平面図である。
図14に示すように、第2実施形態の第6変形例に係る微小チャンバーアレイ10Gでは、上述した複数の溝部26に換えて、チャンバー本体部21の注入口52側(第2方向Dyの一方)の辺と、複数の収容部22が形成された収容部形成領域AAとの間の領域に、収容部22と同等の平面形状を有する複数の開口部26Aが形成される。
【0067】
複数の開口部26Aは、収容部22と同様の円形状である。また、図示は省略するが、複数の開口部26Aは、チャンバー本体部21を厚さ方向に貫通して設けられる。つまり、複数の開口部26Aの内壁は、チャンバー本体部21の材料で形成され、複数の開口部26Aの底面は、第1基板11の表面、例えばガラスで構成される。
【0068】
第6変形例においても、上述した第2実施形態と同様に、親水性を有する溶媒31及び疎水性を有する溶媒34のいずれに対しても、チャンバー本体部21の注入口52側(第2方向Dyの一方)の辺から収容部形成領域AAまでの領域で同等の濡れ性を有するように構成される。なお、複数の開口部26Aは、収容部22と異なる直径であってもよい。また複数の開口部26Aは、収容部22と異なる形状であってもよく、円形状に限定されず、四角形状あるいは多角形状等、他の形状であってもよい。
【0069】
(第3実施形態)
図15は、第3実施形態に係る微小チャンバーアレイを模式的に示す断面図である。
図15に示すように、第3実施形態に係る微小チャンバーアレイ10Hでは、注入用治具51Aの第1部分51Aaに、第2方向Dyに貫通する注入口52Aが設けられる。また、排出用治具53Aの第1部分53Aaに、第2方向Dyに貫通する排出口54Aが設けられる。
【0070】
注入用治具51Aの第2部分51Ab及び排出用治具53Aの第2部分53Abは、それぞれ第1基板11の裏面の一部と重なって設けられる。注入用治具51Aの第3部分51Ac及び排出用治具53Aの第3部分53Acは、それぞれ第2基板12の表面の一部と重なって設けられる。第2部分51Ab、53Ab及び第3部分51Ac、53Acには、貫通孔が設けられていない。
【0071】
第3実施形態では、注入口52A、流路55及び排出口54Aが、第2方向Dyに沿って直線状に設けられるので、注入口52Aから排出口54Aまで溶媒31をスムーズに流動させることができる。
【0072】
(微小チャンバーアレイの製造方法)
図16は、微小チャンバーアレイの製造方法を説明するための説明図である。
図17は、
図16のステップST22における積層構造を示す断面図である。
図16に示すように、微小チャンバーアレイ10の製造方法において、製造装置は、まず、第1マザー基板101の複数の個片形成予定領域103に、それぞれチャンバー本体部21、複数の収容部22、複数の突出部23、スペーサ24、及びシール部25(ステップST24及び
図4参照)を形成する(ステップST21)。複数の個片形成予定領域103は、第1マザー基板101にマトリクス状に配置される。マトリクス状に配置された複数の個片形成予定領域103の外側に、外周シール部102が設けられる。個片形成予定領域103は、個片に分割された後にそれぞれ微小チャンバーアレイ10として形成される予定の領域である。
【0073】
次に、製造装置は、第1マザー基板101と第2マザー基板110とを対向させて貼り合わせる(ステップST22)。
図17に示すように、第1マザー基板101と第2マザー基板110とは、外周シール部102及びシール部25により貼り合わされる。個片形成予定領域103のチャンバー本体部21、複数の収容部22、複数の突出部23、スペーサ24及びシール部25は、第1マザー基板101と第2マザー基板110との間に配置される。
【0074】
ステップST22では、必要に応じて第1マザー基板101又は第2マザー基板110のスリミングを行ってもよい。第1マザー基板101又は第2マザー基板110は、例えば化学研磨により研磨されてもよいし、機械研磨が適用されてもよい。スリミングは、複数の収容部22内の試料を観察する側に対応する基板に対して行われる。例えば第1基板11側から観察する場合には、第1マザー基板101にスリミングが適用される。あるいは、第1マザー基板101及び第2マザー基板110の両方にスリミングを適用してもよい。
【0075】
次に、
図16に示すように、製造装置は、第1マザー基板101及び第2マザー基板110から外周シール部102を除去する(ステップST23)。具体的には、第1マザー基板101及び第2マザー基板110が貼り合わされた状態で、複数の個片形成予定領域103よりも外縁側、かつ、外周シール部102よりも内側の部分を切断する。これにより、複数の個片形成予定領域103が残る。なお、ステップST23では、第2マザー基板110を省略して示す。
【0076】
次に、製造装置は、第1マザー基板101及び第2マザー基板110を、個片形成予定領域103ごとに分割し、シール部25に第1開口25a及び第2開口25bを形成する(ステップST24)。なお、ステップST24では、第2基板12を省略して示す。その後、第1基板11及び第2基板12に、注入用治具51及び排出用治具53(
図2参照)を取り付けることで、微小チャンバーアレイ10が製造できる。
【0077】
なお、
図16及び
図17に示す微小チャンバーアレイ10の製造方法は、説明を分かりやすくするために模式的に示したものであり、適宜変更してもよい。例えば、第1マザー基板101の個片形成予定領域103は、3行4列で配置されているが、実際には12以上の多数の個片形成予定領域103が設けられていてもよい。
【0078】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本発明の技術的範囲に属する。上述した各実施形態及び各変形例の要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0079】
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H 微小チャンバーアレイ
11 第1基板
12 第2基板
21 チャンバー本体部
22 収容部
23、23A、23B、23C、23D、23E 突出部
23a 一端
23b 他端
24 スペーサ
25 シール部
25a 第1開口
25b 第2開口
26 溝部
26A 開口部
30、33 溶媒供給部
31、34 溶媒
32 試薬
51、51A 注入用治具
52、52A 注入口
53、53A 排出用治具
54、54A 排出口
55 流路
AA 収容部形成領域
GA 周辺領域
SL スリット部