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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180782
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
G03G15/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094364
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 保
(72)【発明者】
【氏名】又吉 晃
(72)【発明者】
【氏名】門田 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 麻美
(72)【発明者】
【氏名】菊地 英之介
(72)【発明者】
【氏名】藤原 一彰
【テーマコード(参考)】
2H270
【Fターム(参考)】
2H270LA18
2H270LA22
2H270LD03
2H270MA15
2H270MA16
2H270MA25
2H270MA29
2H270MB13
2H270MB15
2H270MB25
2H270SB03
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】二成分現像剤を用いる中間転写方式において、画像濃度を適正に維持しつつ、キャリア現像による画像不具合の発生を効果的に抑制可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、像担持体と、帯電装置と、露光装置と、現像装置と、を有する複数の画像形成部と、中間転写ベルトと、一次転写部材と、二次転写部材と、除電装置と、現像電圧電源と、転写電圧電源と、画像濃度センサーと、画像不具合検知部と、制御部と、を備える。画像不具合検知部は、現像直流電圧、一次転写電流、転写前イレース光の少なくとも一つを変化させて形成された基準画像の濃度変化に基づいて画像不具合の発生状況を検知する。制御部は、基準画像の濃度および画像不具合の発生状況に基づいて現像直流電圧、一次転写電流、転写前イレース光の出力を制御する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感光層が形成された像担持体と、
前記像担持体の表面を所定の表面電位に帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像担持体に光を照射して帯電が減衰した静電潜像を形成する露光装置と、
磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を担持する現像剤担持体を備え、前記現像剤担持体が像担持体と対向位置する現像領域で前記像担持体の表面に形成された前記静電潜像をトナー像に現像する現像装置と、
を有する複数の画像形成部と、
前記画像形成部に隣接して配置され、前記像担持体の表面に形成された前記トナー像が外周面に一次転写される無端状の中間転写ベルトと、
前記像担持体と対向する位置で前記中間転写ベルトの内周面に接触して前記像担持体と前記中間転写ベルトの間に一次転写ニップ部を形成し、前記一次転写ニップ部において前記像担持体の表面に形成された前記トナー像を前記中間転写ベルトに一次転写する一次転写部材と、
前記中間転写ベルトに一次転写された前記トナー像を記録媒体上に二次転写する二次転写部材と、
前記像担持体の前記現像領域から前記一次転写ニップ部までの領域に転写前イレース光を照射する除電装置と、
前記現像剤担持体に前記トナーと同極性の現像直流電圧を含む現像電圧を印加する現像電圧電源と、
前記一次転写部材に前記トナーと逆極性の一次転写電圧を印加する転写電圧電源と、
前記中間転写ベルト上に一次転写された前記トナー像の濃度を検知する画像濃度センサーと、
前記画像濃度センサーにより検知された前記トナー像の濃度変化に基づいて画像不具合の発生状況を検知する画像不具合検知部と、
前記現像剤担持体に印加される現像直流電圧、前記一次転写電圧を印加したときに前記一次転写部材と前記像担持体との間に流れる一次転写電流、および前記除電装置の前記転写前イレース光の出力を制御する制御部と、
を備え、
前記画像不具合検知部は、前記現像直流電圧、前記一次転写電流、前記転写前イレース光の少なくとも一つを変化させて形成された基準画像の濃度変化に基づいて画像不具合の発生状況を検知し、
前記制御部は、前記基準画像の濃度および前記画像不具合の発生状況に基づいて前記現像直流電圧、前記一次転写電流、前記転写前イレース光の出力を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
複数の前記画像形成部は、前記中間転写ベルトの移動方向に沿って配置されており、
前記基準画像は、ソリッドパターンからなる第1基準画像と、ハーフトーンパターンからなる第2基準画像と、を含み、
前記制御部は、
前記画像不具合検知部によって前記画像形成部のいずれかで前記第1基準画像の不具合が検知されたとき、当該画像形成部における前記現像直流電圧、前記一次転写電流、前記転写前イレース光の出力を制御し、
前記画像不具合検知部によって前記画像形成部のいずれかで前記第2基準画像の不具合が検知されたとき、当該画像形成部における前記現像直流電圧、前記一次転写電流、前記転写前イレース光の出力、および前記中間転写ベルトの移動方向に対し当該画像形成部よりも上流側の前記画像形成部における前記像担持体の表面電位と前記現像直流電圧との電位差である白地部電位差を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記基準画像の濃度および前記画像不具合の発生状況に基づいて前記現像直流電圧を決定した後、前記現像直流電圧と前記画像不具合が発生しない上限電圧とのマージンが一定以上となるように前記一次転写電流、前記転写前イレース光の出力を調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
複数の前記画像形成部は、前記中間転写ベルトの移動方向に沿って配置されており、
前記制御部は、前記中間転写ベルトの移動方向に対し最下流側以外の前記画像形成部においては前記一次転写電流よりも前記転写前イレース光の出力を優先的に制御し、前記最下流側に位置する前記画像形成部においては前記転写前イレース光の出力よりも前記一次転写電流を優先的に制御することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記最下流側以外の前記画像形成部においては、前記転写前イレース光の出力の調整で前記マージンが一定以上とならない場合に前記一次転写電流を調整し、前記最下流側に位置する前記画像形成部においては、前記一次転写電流の調整で前記マージンが一定以上とならない場合に前記転写前イレース光の出力を調整することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記最下流側に位置する前記画像形成部においては前記一次転写電流のみを制御することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記最下流側に位置する前記画像形成部は、ブラックの前記トナー像を形成するブラック画像形成部であり、前記最下流側以外の前記画像形成部は、ブラック以外の前記トナー像を形成するカラー画像形成部であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項8】
複数の前記画像形成部は、前記中間転写ベルトの移動方向に沿って配置されており、
隣接する2つの前記画像形成部の間に配置された前記除電装置は、前記中間転写ベルトの移動方向に対し下流側に位置する前記画像形成部の前記像担持体に前記転写前イレース光を照射するとともに、上流側に位置する前記画像形成部の前記像担持体に一次転写後の残留電荷を除去する転写後イレース光を照射することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項9】
隣接する2つの前記画像形成部の間に配置された前記除電装置は、前記中間転写ベルトの移動方向に沿って位置調整可能であることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
複数の前記画像形成部は、前記中間転写ベルトの移動方向に沿って配置されており、
前記中間転写ベルトの移動方向に対し最上流側に位置する前記画像形成部は、前記除電装置が当該画像形成部に含まれる前記現像装置の、前記中間転写ベルトとの対向部に配置されており、
前記現像装置には、前記除電装置の汚染を防止する汚染防止フィルムの一端部が固定され、前記汚染防止フィルムの他端部が前記中間転写ベルトに接触するように配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記像担持体は、前記感光層としてアモルファスシリコン層を有し、前記中間転写ベルトは弾性層を有しない樹脂ベルトであり、前記現像剤担持体には、前記現像直流電圧に交流電圧を重畳した前記現像電圧が印加されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体を備えた複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に関し、特に、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いる中間転写方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、感光体等からなる像担持体上に形成した静電潜像を、現像装置により現像し、トナー像として可視化する。このような現像装置の一つとして、磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を用いる二成分現像方式が採用されている。二成分反転現像方式においては、感光体およびトナーは同極性に帯電しており、キャリアは逆極性に帯電している。そして、画像の白地部分に対応する感光体の電位は、キャリアを静電的に引き付ける方向に設定されている。しかし、通常は現像ローラーの磁力の方が大きいため、キャリアは現像ローラーから離れることなく現像装置内を循環する。
【0003】
ところで、感光体の表面電位は環境変化等によって変動する。感光体の表面電位が高くなると、キャリアが感光体の表面に移動する、いわゆる白地部キャリア現像が発生し易くなる。また、環境の変化等によってトナー帯電量が高くなった場合、画像濃度を確保するために、現像電位差を高くする。この現像電位差が大きくなりすぎると、キャリアに電荷が注入され、キャリアはトナーと同極性に帯電してしまう。そして、感光体上に形成された静電潜像にトナーが現像されるとき、トナーと共にキャリアも現像されてしまう、いわゆる画像部キャリア現像が発生する。
【0004】
一方、感光体から中間転写ベルト上に一次転写されたトナー像を用紙等の記録媒体に二次転写する中間転写方式の画像形成装置が広く用いられている。このような中間転写方式の画像形成装置において、白地部キャリア現像が発生すると、感光体に現像したキャリアが中間転写ベルトに移行する。中間転写ベルト下流の画像形成ユニットで感光体上に形成された画像を一次転写ニップ部で中間転写ベルトに移動させる際に、この上流の画像形成ユニットで中間転写ベルトに付着したキャリアが介在すると、このキャリアが感光体と中間転写ベルトの間に隙間を形成する。その結果、キャリアの周囲のトナーが中間転写ベルト上に移動できず、画像の一部が白く抜ける「白紋」という現象を発生させる。また、画像部キャリア現像が発生すると、感光体に現像したキャリアが、一次転写の際に感光体と中間転写ベルトの間に隙間を形成する。その結果、キャリアの周囲のトナーが中間転写ベルト上に移動できず、同様に「白紋」を発生させる。
【0005】
特に、感光層として誘電率の高いアモルファスシリコン層を有するアモルファスシリコン感光体を使用し、且つ直流電圧に交流電圧を重畳させた現像電圧を印加する場合は、現像電流が流れやすいため白地部キャリア現像および画像部キャリア現像の両方が発生し易くなる。さらに、中間転写ベルトとして硬質の樹脂ベルトを使用する場合は、白紋がより顕著に発生し易くなる。
【0006】
そこで、キャリア現像を抑制する方法が種々提案されており、例えば特許文献1には、現像ローラー上の磁気ブラシが感光体ドラムに接している部分の現像ローラー回転方向の最下流位置に向けて除電光を照射する除電装置を備えた画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、現像領域の下流部分に除電光(イレース光)を照射し、白地部分の表面電位を現像電位に近づけることによってキャリアを白地部分に現像する白地部電界を弱め、キャリア現像を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-185451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の方法では、現像剤搬送量が少なく現像ギャップ(感光体-現像ローラー間のギャップ)が広い場合は、イレース光が現像領域の中央付近まで影響する。そのため、感光体の表面電位が下がりすぎてしまい画像かぶりの悪化に繋がるという問題があった。また、電荷注入でキャリアの電荷が反転(逆帯電)し、トナーと同極性になることによって発生する、画像部キャリア現像を低減することはできなかった。そのため、画像部キャリア現像によって発生する白紋に対して有効な方法ではなかった。
【0009】
なお、感光体として硬質表面を有するアモルファスシリコン感光体を用い、中間転写ベルトを弾性ベルトにすることで、現像されたキャリアによるドラム表面の傷付きを抑制するとともに、キャリア付着による感光体と中間転写ベルトの間の隙間の発生を抑制してドラム傷やキャリア現像による「白紋」が発生しないようにすることも考えられる。
【0010】
しかし、中間転写ベルトを弾性ベルトとした場合、ベルトクリーニングにはゴムブレードではなくクリーニングブラシを用いる。このクリーニングブラシによるクリーニング性能は、ゴムブレードに比べて低いため、高印字率の画像が印刷されるとクリーニング不良が発生するおそれがあった。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑み、二成分現像剤を用いる中間転写方式において、画像濃度を適正に維持しつつ、キャリア現像による画像不具合の発生を効果的に抑制可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、像担持体と、帯電装置と、露光装置と、現像装置と、を有する複数の画像形成部と、中間転写ベルトと、一次転写部材と、除電装置と、現像電圧電源と、転写電圧電源と、画像濃度センサーと、画像不具合検知部と、制御部と、を備えた画像形成装置である。像担持体は、表面に感光層が形成される。帯電装置は、像担持体の表面を所定の表面電位に帯電させる。露光装置は、帯電装置により帯電された像担持体に光を照射して帯電が減衰した静電潜像を形成する。現像装置は、磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を担持する現像剤担持体を備え、現像剤担持体が像担持体と対向位置する現像領域で像担持体の表面に形成された静電潜像をトナー像に現像する。中間転写ベルトは、無端状であって画像形成部に隣接して配置され、像担持体の表面に形成されたトナー像が外周面に一次転写される。一次転写部材は、像担持体と対向する位置で中間転写ベルトの内周面に接触して像担持体と中間転写ベルトの間に一次転写ニップ部を形成し、一次転写ニップ部において像担持体の表面に形成されたトナー像を中間転写ベルトに一次転写する。除電装置は、像担持体の現像領域から一次転写ニップ部までの領域に転写前イレース光を照射する。現像電圧電源は、現像剤担持体に前記トナーと同極性の現像直流電圧を含む現像電圧を印加する。転写電圧電源は、一次転写部材にトナーと逆極性の一次転写電圧を印加する。画像濃度センサーは、中間転写ベルト上に一次転写されたトナー像の濃度を検知する。画像不具合検知部は、画像濃度センサーにより検知されたトナー像の濃度変化に基づいて画像不具合の発生状況を検知する。制御部は、現像剤担持体に印加される現像直流電圧、一次転写電圧が印加されたときに一次転写部材と像担持体との間に流れる一次転写電流、および除電装置の転写前イレース光の出力を制御する。画像不具合検知部は、現像直流電圧、一次転写電流、転写前イレース光の少なくとも一つを変化させて形成された基準画像の濃度変化に基づいて画像不具合の発生状況を検知する。制御部は、基準画像の濃度および画像不具合の発生状況に基づいて現像直流電圧、一次転写電流、転写前イレース光の出力を制御する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の構成によれば、現像直流電圧、一次転写電流、転写前イレース光の少なくとも一つを変化させて形成された基準画像の濃度変化に基づいて画像不具合の発生状況を検知し、基準画像の濃度および画像不具合の発生状況に基づいて現像直流電圧、一次転写電流、転写前イレース光の出力を制御することにより、一次転写画像の画像濃度を維持しつつ、キャリア現像による画像不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置100の内部構成を示す側面断面図
図2図1における画像形成部Pd周辺の構成を示す拡大図
図3】画像形成部Pdにおける感光体ドラム1d周辺の構成を示す図
図4】感光体ドラム1dと現像ローラー33との対向部分に磁気ブラシBが形成された状態を示す図
図5】除電装置50の平面図(図5(a))および側面図(図5(b))
図6】画像形成装置100の制御経路の一例を示すブロック図
図7】画像形成装置100において実行される白紋キャリブレーションの制御例を示すフローチャート
図8】ソリッドパターンの第1基準画像P1を示す図
図9】下流側の画像形成部における白紋発生状況の検知結果を上流側の画像形成部の転写前イレース光、一次転写電流および白地部電位差の調整にフィードバックさせる場合の制御例を示す図
図10】画像形成部Pdにおける白紋発生状況の検知結果に基づく画像形成部Pdの転写前イレース光、一次転写電流、および画像形成部Pa~Pdの白地部電位差の調整を行う場合の制御例を示すフローチャート
図11】横線パターンの第2基準画像P2を示す図
図12】チェッカーパターンの第2基準画像P2を示す図
図13】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置100の画像形成部Pa周辺の構成を示す拡大図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置100の内部構造を示す断面図である。画像形成装置100(ここではカラープリンター)本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、PcおよびPdが、搬送方向上流側(図1では左側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa~Pdは、異なる4色(イエロー、シアン、マゼンタおよびブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像および転写の各工程によりイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックの画像を順次形成する。
【0016】
これらの画像形成部Pa~Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム(像担持体)1a、1b、1cおよび1dが配設されている。さらに図1において反時計回り方向に回転する中間転写ベルト(中間転写体)8が各画像形成部Pa~Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a~1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a~1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次一次転写されて重畳される。その後、中間転写ベルト8上に一次転写されたトナー像は、二次転写ローラー9によって記録媒体の一例としての転写紙P上に二次転写される。さらに、トナー像が二次転写された転写紙Pは、定着部13においてトナー像が定着された後、画像形成装置100本体より排出される。感光体ドラム1a~1dを図1において時計回り方向に回転させながら、各感光体ドラム1a~1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0017】
トナー像が二次転写される転写紙Pは、画像形成装置100の本体下部に配置された用紙カセット16内に収容されている。転写紙Pは、給紙ローラー12aおよびレジストローラー対12bを介して二次転写ローラー9と中間転写ベルト8の駆動ローラー11とのニップ部へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。また、二次転写ローラー9の下流側には中間転写ベルト8の表面に残存するトナー等を除去するためのブレード状のベルトクリーナー20が配置されている。
【0018】
パソコン等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、メインモーター40(図6参照)により感光体ドラム1a~1dが回転駆動される。そして、帯電装置2a~2dによって感光体ドラム1a~1dの表面を均一に帯電させる。次いで露光装置5によって画像データに応じて光照射し、各感光体ドラム1a~1d上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置3a~3dには、それぞれイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックのトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置3a~3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはトナーコンテナ4a~4dから各現像装置3a~3dにトナーが補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置3a~3dにより感光体ドラム1a~1d上に供給され、静電的に付着する。これにより、露光装置5からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0019】
そして、一次転写ローラー6a~6dにより一次転写ローラー6a~6dと感光体ドラム1a~1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与される。これにより、感光体ドラム1a~1d上のイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの画像は、予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、一次転写後に感光体ドラム1a~1dの表面に残留したトナー等がクリーニング装置7a~7dにより除去される。
【0020】
中間転写ベルト8は、上流側の従動ローラー10と、下流側の駆動ローラー11とに掛け渡されている。ベルト駆動モーター41(図6参照)による駆動ローラー11の回転に伴い中間転写ベルト8が反時計回り方向に回転を開始すると、転写紙Pがレジストローラー対12bから所定のタイミングで駆動ローラー11と、これに隣接して設けられた二次転写ローラー9とのニップ部(二次転写ニップ部)へ搬送され、中間転写ベルト8上のトナー像が転写紙P上に二次転写される。トナー像が二次転写された転写紙Pは定着部13へと搬送される。
【0021】
定着部13に搬送された転写紙Pは、定着ローラー対13aにより加熱および加圧されてトナー像が転写紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられ、そのまま(或いは、両面搬送路18に送られて両面に画像が形成された後に)、排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0022】
画像形成部1dの下流側であって中間転写ベルト8と対向する位置には画像濃度センサー25が配置されている。画像濃度センサー25としては、一般にLED等から成る発光素子と、フォトダイオード等から成る受光素子を備えた光学センサーが用いられる。中間転写ベルト8上のトナー付着量を測定する際、発光素子から中間転写ベルト8上に形成された各基準画像に対し測定光を照射すると、測定光はトナーによって反射される光、およびベルト表面によって反射される光として受光素子に入射する。
【0023】
トナーおよびベルト表面からの反射光には正反射光と乱反射光とが含まれる。この正反射光および乱反射光は、偏光分離プリズムで分離された後、それぞれ別個の受光素子に入射する。各受光素子は、受光した正反射光と乱反射光を光電変換して制御部90(図6参照)に出力信号を出力する。そして、正反射光と乱反射光の出力信号の特性変化からトナー量を検知し、予め定められた基準濃度と比較して現像電圧の特性値などを調整することにより濃度補正(キャリブレーション)が行われる。
【0024】
図2は、図1における画像形成部Pd周辺の構造を示す拡大図である。図3は、画像形成部Pdにおける感光体ドラム1d周辺の構成を示す図である。なお、以下の説明では図1の画像形成部Pdを例示するが、画像形成部Pa~Pcについても基本的に同様の構成であるため説明を省略する。
【0025】
回転可能に配設された感光体ドラム1dの周囲および下方には、感光体ドラム1dを帯電させる帯電装置2dと、感光体ドラム1dに画像情報を露光する露光装置5(図1参照)と、感光体ドラム1d上にトナー像を形成する現像装置3dと、感光体ドラム1d上に残留した現像剤(トナー)等を除去するクリーニング装置7dが設けられている。また、現像装置3dとクリーニング装置7dとの間には中間転写ベルト8を挟んで一次転写ローラー6dが配置されている。
【0026】
感光体ドラム1dは、導電性基体19aと、導電性基体19aの表面に形成される感光層19bとで構成される。本実施形態では、アルミニウム製の円筒状の導電性基体19aの表面に、感光層19bとしてアモルファスシリコン層を積層している。
【0027】
帯電装置2dは、感光体ドラム1dに接触してドラム表面を均一に帯電させる帯電ローラー27と、帯電ローラー27をクリーニングするための帯電クリーニングブラシ29とを有している。なお、帯電クリーニングブラシ29に代えて帯電クリーニングローラーを用いても良い。帯電ローラー27には帯電電圧電源52により所定の直流電圧および交流電圧が印加される。そして、帯電装置2dによって、感光体ドラム1dの表面電位V0が、後述する現像ローラー33の現像直流電圧Vdcよりも高く、かつ、現像ローラー33の現像直流電圧Vdcとの電位差(白地部電位差)V0-Vdcが所定値(例えば150V以下)になるように帯電される。
【0028】
現像装置3dは、2本の攪拌搬送スクリュー30と、現像ローラー(現像剤担持体)33と、規制ブレード35と、磁性キャリアと非磁性のトナーとを含む二成分現像剤を収容する樹脂製の現像容器36と、を有する。
【0029】
現像ローラー33は、図3において反時計回り方向に回転する円筒状の非磁性の現像スリーブ33aと、現像スリーブ33aの内側に回転不能に固定され、複数の磁極を有するマグネット33bとで構成されている。本実施形態では、マグネット33bの磁極は、N極から成る規制極(図示せず)、S極から成る搬送極(図示せず)、N極から成る主極34、およびN極から成る剥離極(図示せず)等によって構成されている。
【0030】
現像ローラー33には、現像電圧電源53により現像直流電圧Vdcに現像交流電圧Vacが重畳された現像電圧が印加される。また、現像容器36には規制ブレード35が現像ローラー33の軸方向(図2の紙面と垂直方向)に沿って取り付けられている。規制ブレード35の先端部と現像ローラー33の外周面との間には僅かな隙間(規制ギャップ)が設けられている。
【0031】
図4は、感光体ドラム1dと現像ローラー33との対向部分に磁気ブラシBが形成された状態を示す図である。攪拌搬送スクリュー30によって、現像剤が攪拌されつつ現像ローラー33に搬送される。そして、図4に示すように、現像ローラー33上に磁性キャリアCおよびトナーTからなる磁気ブラシBが形成される。現像ローラー33上の磁気ブラシBは、現像ローラー33の回転によって規制ブレード35を通過し、現像ローラー33と感光体ドラム1dとの対向部分(現像領域R)に搬送される。現像ローラー33には現像直流電圧Vdcおよび現像交流電圧Vacが印加されているため、感光体ドラム1dの表面電位(画像部電位VL)との電位差によって現像ローラー33から感光体ドラム1dにトナーTが飛翔し、感光体ドラム1d上の静電潜像(露光部)が現像される。
【0032】
クリーニング装置7dは、クリーニングブレード(クリーニング部材)37、および回収スクリュー39を有している。クリーニングブレード37は、感光体ドラム1dに当接した状態で固定されており、感光体ドラム1dの表面に残存するトナー等を清掃する。クリーニングブレード37によって感光体ドラム1dの表面から除去された残留トナーは、回収スクリュー39の回転に伴ってクリーニング装置7dの外部に排出される。
【0033】
一次転写ローラー6dには、転写電圧電源54によりトナーTと逆極性の所定の一次転写電圧が印加される。
【0034】
中間転写ベルト8は、TPU(熱可塑性ポリウレタン)のような弾性層を有しない、樹脂ベルトによって形成されている。中間転写ベルト8の材質としては、熱可塑性樹脂であれば、PC(ポリカーボネート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PA(ポリアミド)、アクリル、ナイロン等、熱硬化性樹脂であれば、PI(ポリイミド)、PAI(ポリアミドイミド)等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であっても、その表面にアクリルコート等を施したものも使用可能である。また、中間転写ベルト8に導電性を付与するために、樹脂材料にイオン導電剤若しくは電子導電剤を添加している。
【0035】
現像装置3dの上方には、感光体ドラム1dの表面にイレース光(転写前イレース光)を照射する除電装置50が配置されている。図5に示すように、除電装置50は、基板50a上に複数のLEDチップ50bを所定間隔で実装したものである。除電装置50は、各感光体ドラム1a~1dに対して1つずつ設けられている。
【0036】
図2に示すように、画像形成部Pdの除電装置50は、例えば隣接する画像形成部Pcのクリーニング装置7cに取り付けられている。なお、画像形成部Pdの除電装置50を現像装置3dの上部に取り付けてもよい。
【0037】
除電装置50は、現像ローラー33の磁気ブラシBが感光体ドラム1dに接している現像領域から一次転写ニップ部までの領域に向けて転写前イレース光を照射するように配置されている。除電装置50の転写前イレース光によって、感光体ドラム1dの表面の非露光部(白地部)は、現像ローラー33の現像直流電圧Vdc以下で、且つ所定電位(例えば150V)以上となるように除電される。
【0038】
次に、本発明の画像形成装置100の制御経路について説明する。図6は、本発明の画像形成装置100に用いられる制御経路の一例を示すブロック図である。なお、画像形成装置100を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、画像形成装置100全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。
【0039】
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き可能な記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、一時的に画像データ等を記憶する一時記憶部94、印字枚数を累積してカウントするカウンター95、画像形成装置100内の各装置に制御信号を送信したり操作部70からの入力信号を受信したりする複数(ここでは2つ)のI/F(インターフェイス)96、白紋の発生状況を検知する白紋検知部97を少なくとも備えている。また、制御部90は、画像形成装置100の本体内部の任意の場所に配置可能である。
【0040】
ROM92には、画像形成装置100の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、画像形成装置100の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、画像形成装置100の制御途中で発生した必要なデータや、画像形成装置100の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。
【0041】
白紋検知部97は、画像濃度センサー25によって検知された基準画像の濃度変化に基づいて、画像形成部Pa~Pdにおける白紋の発生状況を個別に検知する。
【0042】
また、制御部90は、画像形成装置100における各部分、装置に対し、CPU91からI/F96を通じて制御信号を送信する。また、各部分、装置からその状態を示す信号や入力信号がI/F96を通じてCPU91に送信される。制御部90が制御する各部分、装置としては、例えば、画像形成部Pa~Pd、露光装置5、二次転写ローラー9、メインモーター40、ベルト駆動モーター41、電圧制御回路51、画像入力部60、操作部70等が挙げられる。
【0043】
画像入力部60は、パソコン等から画像形成装置100に送信される画像データを受信する受信部である。画像入力部60より入力された画像信号はデジタル信号に変換された後、I/F96を介して一時記憶部94に送出される。
【0044】
電圧制御回路51は、帯電電圧電源52、現像電圧電源53、および転写電圧電源54と接続され、制御部90からの出力信号によりこれらの各電源を作動させる。電圧制御回路51からの制御信号によって、帯電電圧電源52は帯電装置2a~2d内の帯電ローラー27に帯電電圧を印加する。現像電圧電源53は現像装置3a~3d内の現像ローラー33に、現像直流電圧Vdcに現像交流電圧Vacを重畳した現像電圧を印加する。転写電圧電源54は一次転写ローラー6a~6dおよび二次転写ローラー9に、それぞれ所定の一次転写電圧および二次転写電圧を印加する。
【0045】
帯電電圧電源52から帯電ローラー27に印加される帯電電圧は、直流電圧であることが好ましい。帯電電圧が直流電圧である場合は、直流電圧と交流電圧の重畳電圧である場合と比較して、帯電ローラー27から感光体ドラム1a~1dへの放電量が少なく、感光体ドラム1a~1dの感光層19bの摩耗量を低減できる。
【0046】
操作部70には、液晶表示部71、各種の状態を示すLED72が設けられており、ユーザーは操作部70のストップ/クリアボタンを操作して画像形成を中止し、リセットボタンを操作して画像形成装置100の各種設定をデフォルト状態にする。液晶表示部71は、画像形成装置100の状態を示したり、画像形成状況や印字部数を表示したりするようになっている。画像形成装置100の各種設定はパソコンのプリンタードライバーから行われる。
【0047】
次に、本発明の特徴部分である除電装置50の転写前イレース光、一次転写ローラー6a~6dに印加する一次転写電流の制御について説明する。感光体ドラム1a~1dとしてアモルファスシリコン感光体を用い、二成分現像方式の現像装置3a~3dを用いる画像形成装置100では、感光層19bの抵抗が低いため、現像領域において磁気ブラシに電流が流れ易い。そのため、キャリアへの電荷注入や、磁気ブラシを通して感光体ドラム1a~1dへの電荷注入が生じ易くなる。特に、直流電圧に交流電圧を重畳した現像電圧を使用するシステムでは、磁気ブラシ(現像)電流が流れ易く、上述した電荷注入現象が顕著となる。
【0048】
そこで、本発明では転写前イレース光および一次転写電流の少なくとも一方を制御することで、キャリア現像に起因して画像上に発生する白紋を抑制する。以下、白紋の発生パターンおよび各発生パターンに対する白紋の抑制メカニズムについて詳述する。
【0049】
[1.白紋の発生パターンについて]
(1-1.白地部キャリア現像に起因する白紋)
或る画像形成部(例えば画像形成部Pa)において白地部キャリア現像が発生した場合、当該画像形成部Paでは白紋は発生しないが、感光体ドラム1aに現像されたキャリアが中間転写ベルト8へ移動すると、下流側の画像形成部(例えば画像形成部Pb)でトナーを一次転写しようとしたときに、そのキャリアが感光体ドラム1bと中間転写ベルト8の間に挟まり、キャリア周辺のトナーの移動を阻害する。その結果、下流側のトナーの色(シアン)の部分に白抜け(白紋)が発生する。この場合、最下流の画像形成部Pdにおける黒色の部分の白紋が最も悪化する。また、白地部キャリア現像に起因する白紋は、ハーフトーンパターンや横線パターン、縦線パターン、チェッカー(格子状)パターン等において発生しやすい。
【0050】
(1-2.画像部キャリア現像に起因する白紋)
例えば、反転現像において、感光体ドラム1a~1dの白地部電位V0=+250V、画像部(露光後)電位VL=+20V、現像直流電圧Vdc=+180V、現像交流電圧Vpp=1100Vである場合、画像部を現像する際に、キャリアおよび感光体ドラム1a~1dへの電荷注入が発生する。特に、感光体ドラム1a~1dとして抵抗の低いアモルファスシリコン感光体を用い、低抵抗のキャリアを用いると、この電荷注入が発生し易い。電荷注入が発生すると、画像部電位は現像直流電圧に近づく方向に変化し、キャリアの帯電極性もトナーと同極性に変化する。その結果、キャリアはトナーと同様に感光体ドラム1a~1dの画像部に現像される(画像部キャリア現像)。
【0051】
そして、画像部に現像されたキャリアが樹脂製の中間転写ベルト8へ転写され、感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の間に介在することにより、キャリア周辺のトナーが感光体ドラム1a~1dから中間転写ベルト8へ移動し難くなる。その結果、キャリアの周辺に白抜け(白紋)が発生する。画像部キャリア現像による白紋は、白地部と画像部の電位差が最も大きいベタパターンにおいて発生しやすい。
【0052】
なお、中間転写ベルト8が樹脂ベルトである場合と弾性ベルトである場合とで、ドラム上に付着したキャリア周辺での感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の接触状態が異なるため、白紋の発生状況は異なる。より詳細には、中間転写ベルト8が弾性ベルトである場合は中間転写ベルト8がキャリアに沿って変形するため、キャリア周辺のトナーも移動することができ、白紋は発生し難い。
【0053】
(1-3.画像のエッジ部へのキャリア現像に起因する白紋)
ハーフトーンパターンや横線パターン、縦線パターン、チェッカーパターン等のエッジ部分(白地部分)にキャリアが現像されると、中間転写ベルト8への一次転写時に周囲のトナーの移動を阻害する。その結果、キャリアの周辺に白抜け(白紋)が発生する。この場合のキャリアの帯電極性はトナーと逆極性(負極性)である。
【0054】
[2.白紋の抑制メカニズムについて]
上述した白紋を改善する方法として、感光体ドラム1a~1dから中間転写ベルト8への一次転写を行う前に、感光体ドラム1a~1dの表面に除電装置50によって転写前イレース光を照射することが効果的であることを見出した。以下、白紋の抑制メカニズムについて説明する。
【0055】
(2-1.転写前イレース光による白地部キャリア現像に起因する白紋の抑制)
前述したように、例えば画像形成部Paで白地部キャリア現像が発生した場合、画像形成部Paの下流側の画像形成部Pb~Pdで白紋が発生する。そのため、下流側の画像形成部Pb~Pdにおけるトナー像の一次転写性を高めることで、白地部キャリア現像に起因する白紋の発生を抑制することができる。
【0056】
白地部キャリア現像による白紋は、特に、静電潜像に表面電位がV0である部分(白地部)とVLである部分(画像部)の境界(エッジ部分)が多く存在する画像で顕著に発生する。これは、元々エッジ部分の転写性が弱いためである。そこで、転写前イレース光による転写前の光除電を行うことでV0の電位を低下させ、V0とVLの電位差を小さくすることで、一次転写性を向上させることができる。その結果、白紋の発生を抑制する方向に制御できる。
【0057】
なお、白地部キャリア現像による白紋が転写前イレース光による転写前の光除電によって解消しない場合は、上流側の画像形成部Paの白地部電位差(V0-Vdc)を低下させて白地部キャリア現像を抑制する方法もある。但し、この方法では画像形成部Paでの画像かぶりが悪化する可能性があるので注意が必要である。
【0058】
(2-2.転写前イレース光による画像部キャリア現像に起因する白紋の抑制)
画像部キャリア現像が発生した場合、本来は負極性であるキャリアに電荷が注入され、正極性になっている。キャリアに電荷が注入されている状態では、当然、感光体ドラム1a~1dにも電荷注入が発生している。感光体ドラム1a~1dへの電荷注入は、感光体ドラム1a~1dの表面電位を現像直流電圧Vdc(+180V)に近づける方向へ作用するため、画像部電位VL(+20V)は、キャリアが接触している部分だけ上昇することになる。
【0059】
その結果、電荷注入の発生した部分とその周辺部とで画像部電位VLに電位差が生じることとなる。感光体ドラム1a~1d上での電位差はその部分で回り込み電界を発生させることとなり、感光体ドラム1a~1d上のトナーはこの強い回り込み電界の力で感光体ドラム1a~1dに保持される。電荷注入の発生した部分のトナー像が一次転写部へ到達したときも、この回り込み電界がトナーの移動を阻害し、白紋が発生する。
【0060】
ここで、ベタ画像であっても実際にトナーが感光体ドラム1a~1dの表面を隠蔽しているのは70~80%程度であり、定着処理によってトナーが溶融して広がることで紙面上を被覆する。そのため、除電装置50によって転写前イレース光を照射すると、ベタ画像部であっても、転写前イレース光は感光体ドラム1a~1dの表面に十分到達することができる。
【0061】
電荷注入により表面電位が上昇した部分(キャリアが接触している部分)に転写前イレース光が照射されると、その部分の画像部電位VLが低下し、周辺の電位と等しくなる。その結果、トナーの電気的な束縛は解消し、キャリア周辺のトナーも中間転写ベルト8へ移動し易くなる。これにより、画像部キャリア現像による白紋は、転写前イレース光を照射することで解消することができる。但し、照射するイレース光が強すぎると、感光体ドラム1a~1dの電気的なトナー保持力が小さくなりすぎて、文字画像のエッジ部分等でのトナーの散りが多くなる。
【0062】
(2-3.転写前イレース光によるエッジ部へのキャリア現像に起因する白紋の抑制)
画像のエッジ部へのキャリア現像は、エッジ電位差(V0-VL)によって発生するため、転写前イレースによってV0を低下させると感光体ドラム1a~1dへのトナーの付着力が低下し、白紋は解消する。また、この場合は、白地部電位差(V0-Vdc)を低下させることで、画像濃度をある程度維持しながら、白紋を改善することができる。
【0063】
(2-4.一次転写電流の制御による白紋の抑制)
また、一次転写電流を大きくすることによっても、白地部キャリア現像、画像部キャリア現像、およびエッジ部へのキャリア現像に起因する白紋を解消することができる。キャリアによって感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の距離が広がっても、一次転写電流を大きくすることによってトナーを感光体ドラム1a~1dから中間転写ベルト8に移動させることができる。但し、一次転写電流を大きくした場合、中間転写ベルト8上に既に一次転写されているトナーの帯電量を上昇させてしまい、二次転写ニップ部における転写紙Pへの二次転写性が低下するおそれがある。
【0064】
そのため、転写前イレース光と一次転写電流の特性をうまく使い分けて白紋抑制制御を行うことが好ましい。基本的には、イエロー、シアン、マゼンタのトナー像を形成する画像形成部Pa~Pcは文字画像よりも中間調の画像を形成する場合が多いので、多少のトナーの散りが発生しても問題はない。一方、一次転写電流を高くするとトナーの帯電量上昇が発生して二次転写性が低下しまう。特に、最上流側の画像形成部Paで形成されるイエローのトナー像は、画像形成部Pb~Pdを通過する毎に帯電量が上昇することになり、二次転写が非常に難しくなる。そのため、画像形成部Pa~Pcでは一次転写電流よりも転写前イレース光を優先的に変化させて白紋抑制制御を行うことが好ましい。
【0065】
一方、ブラックのトナー像を形成する画像形成部Pdは中間調よりも文字画像を形成する場合が多いので、トナーの散りの方が問題となる。そのため、画像形成部Pdでは転写前イレース光よりも一次転写電流を優先的に変化させて白紋抑制制御を行うことが好ましい。具体的には、画像形成部Pa~Pcにおける転写前イレース光の半分以下の出力に設定することで白紋を抑制する方法や、転写前イレース光を用いずに一次転写電流を高めに設定することで白紋を抑制する方法が用いられる。
【0066】
図7は、画像形成装置100において実行される白紋キャリブレーション(白紋抑制制御)の制御例を示すフローチャートである。必要に応じて図1図6を参照しながら、図7のステップに沿って白紋キャリブレーションの実行手順について説明する。なお、白紋キャリブレーションの開始時には転写前イレース光の出力、一次転写電流は基準値(デフォルト)に設定されているものとする。白紋キャリブレーションの実行タイミングは、画像形成装置100の電源投入時や省電力(スリープ)モードからの復帰時、前回の白紋キャリブレーションの実行からの累積印刷枚数が所定枚数に到達した時などが挙げられる。
【0067】
先ず、制御部90は、基準画像の濃度変化を測定する(ステップS1)。具体的には、画像形成部Pa~Pdにおいて形成された基準画像を中間転写ベルト8へ一次転写し、画像濃度センサー25により画像濃度を測定する。本制御例では、基準画像として図8に示したようなソリッド(ベタ)パターンの第1基準画像P1を用いる。画像濃度の測定結果は制御部90の白紋検知部97に送信される。
【0068】
白紋検知部97は、基準画像の濃度変化が一定以上であるか否かを判定する(ステップS2)。濃度変化が一定以上でない場合は(ステップS2でNo)、白地部電位差V0-Vdcを一定に維持しながら現像直流電圧Vdcを上昇させて(ステップS3)ステップS1に戻り、濃度変化が一定以上(ステップS2でYes)となるまで基準画像の形成(現像)を継続する。これにより、Vdcと画像濃度(白紋発生)との関係を取得する。
【0069】
次に、制御部90は、Vdcと画像濃度の関係から、濃度変化が一定以上となる白紋発生電圧Vdc1を予測する(ステップS4)。そして、予測される白紋発生電圧Vdc1と、画像濃度が適正範囲である画像濃度適正電圧Vdc2とを比較し(ステップS5)、|Vdc2|≦|Vdc1|であるか否かを判定する(ステップS6)。|Vdc2|≦|Vdc1|である場合は(ステップS6でYes)、現像直流電圧Vdcとして画像濃度適正電圧Vdc2を設定し、転写前イレース光の出力、一次転写電流を、白紋が発生せず画像濃度が適正となるように設定して(ステップS7)処理を終了する。
【0070】
|Vdc2|>|Vdc1|である場合は(ステップS6でNo)、制御部90は、白紋キャリブレーションを実行中の画像形成部Pa~Pdのトナー色がブラック(画像形成部Pd)であるか否かを判定する(ステップS8)。トナー色がブラックである場合は(ステップS8でYes)、制御部90は、一次転写電流が上限値であるか否かを判定する(ステップS9)。一次転写電流が上限値でない場合は(ステップS9でNo)、制御部90は電圧制御回路51に制御信号を送信して転写電圧電源54から一次転写ローラー6dに印加される一次転写電圧を制御し、感光体ドラム1dと一次転写ローラー6dの間に流れる一次転写電流を上昇させる(ステップS10)。
【0071】
次に、制御部90は、一次転写電流が上限値に到達したか否かを判定する(ステップS11)。一次転写電流が上限値に到達していない場合は(ステップS11でNo)ステップS1に戻り、基準画像の濃度変化を測定し、以下同様の手順を繰り返す(ステップS1~S11)。
【0072】
一方、白紋キャリブレーションを実行中の画像形成部Pa~Pdのトナー色がブラックでない場合は(ステップS8でNo)、制御部90は、除電装置50の転写前イレース光の出力が上限値であるか否かを判定する(ステップS12)。転写前イレース光の出力が上限値でない場合は(ステップS12でNo)、制御部90は除電装置50に制御信号を送信して除電装置50の転写前イレース光の出力(入力電流)を上昇させる(ステップS13)。
【0073】
次に、制御部90は、転写前イレース光の出力が上限値に到達したか否かを判定する(ステップS14)。一次転写電流が上限値に到達していない場合は(ステップS14でNo)ステップS1に戻り、基準画像の濃度変化を測定し、以下同様の手順を繰り返す(ステップS1~S14)。
【0074】
また、ステップS9で一次転写電流が上限値である場合は(ステップS9でYes)、制御部90は転写前イレース光の出力を上昇させる(ステップS13)。ステップS12で転写前イレース光の出力が上限値である場合は(ステップS12でYes)、制御部90は一次転写電流を上昇させる(ステップS10)。
【0075】
ステップS11で一次転写電流が上限値に到達した場合(ステップS11でYes)、若しくはステップS14で転写前イレース光の出力が上限値に到達した場合(ステップS14でYes)は、現像直流電圧Vdcとして画像濃度適正電圧Vdc2を設定し、転写前イレース光の出力、一次転写電流を上限値に設定して(ステップS15)処理を終了する。
【0076】
図7に示した制御例によれば、現像直流電圧Vdcを段階的に上昇させて形成した基準画像の画像濃度を測定することで、白紋の発生する白紋発生電圧Vdc1を予測する。次に、白紋発生電圧Vdc1と画像濃度適正電圧Vdc2を比較する。そして、画像濃度適正電圧Vdc2が白紋発生電圧Vdc1以下であるとき現像直流電圧Vdcとして画像濃度適正電圧Vdc2を設定する。これにより、一次転写画像の画像濃度を維持しつつ、キャリア現像による白紋の発生を効果的に抑制することができる。
【0077】
また、画像濃度適正電圧Vdc2が白紋発生電圧Vdc1よりも大きいときは、白紋キャリブレーションを実行中のトナー色がイエロー、シアン、マゼンタの場合は、転写前イレース光の出力を優先的に上昇させる。そして、転写前イレース光を上限値まで上昇しても画像濃度適正電圧Vdc2が白紋発生電圧Vdc1よりも大きい場合は、次に一次転写電流を上昇させる。これにより、イエロー、シアン、マゼンタの画像形成部Pa~Pcにおいてはトナー帯電量の上昇による二次転写不良を抑制しつつ、白紋の発生を抑制することができる。
【0078】
一方、白紋キャリブレーションを実行中のトナー色がブラックの場合は、一次転写電流を優先的に上昇させる。そして、一次転写電流を上限値まで上昇しても画像濃度適正電圧Vdc2が白紋発生電圧Vdc1よりも大きい場合は、次に転写前イレース光の出力を上昇させる。これにより、ブラックの画像形成部Pdにおいては転写前の除電によるトナーの散りを抑制しつつ、白紋の発生を抑制することができる。
【0079】
また、下流側の画像形成部における白紋発生状況は、上流側の画像形成部におけるキャリア現像の発生状況を反映している場合がある。例えば、ブラックの画像形成部Pdにおいて白紋が発生している場合、上流側のイエロー、シアン、マゼンタの画像形成部Pa~Pcでは白地部キャリア現像が発生している可能性がある。そのため、画像形成部Pdの白紋発生状況に応じて、イエロー、シアン、マゼンタの画像形成部Pa~Pcの白地部電位差を変更する必要がある。
【0080】
そこで、下流側の画像形成部における白紋検知部97の白紋発生状況の検知結果を上流側の画像形成部の白地部電位差の調整にフィードバックさせることが好ましい。画像形成部Pa~Pdにおける白紋発生状況の検知結果のフィードバック先を図9に示す。なお、白紋の発生状況はキャリア抵抗や現像電圧の影響を受けるため、フィードバックのかけ方は画像形成装置100の仕様によって異なる。
【0081】
図10は、ブラックの画像形成部Pdにおける白紋発生状況の検知結果に基づく画像形成部Pdの転写前イレース光、一次転写電流、および画像形成部Pa~Pdの白地部電位差の調整を行う場合の制御例を示すフローチャートである。本制御例では、基準画像として図8に示したようなソリッド(ベタ)パターンの第1基準画像P1を用いる白紋検知(ステップS1)と、図11に示すような0,1mmのライン画像を0.1mm間隔で印刷した横線パターン(ハーフトーンパターン)の第2基準画像P2、或いは図12に示すようなベタ部と白地部が1.0mmサイクルでマトリクス状に並ぶチェッカーパターン(ハーフトーンパターン)の第2基準画像P2を用いる白紋検知(ステップS2)とを並行して行う。
【0082】
ソリッド(ベタ)パターンによる白紋検知(ステップS1)では、白地部電位差V0-Vdcを一定に維持しながら現像直流電圧Vdcを上昇させて第1基準画像P1を形成し、第1基準画像P1の濃度変化に基づいて白紋検知部97により白紋発生状況を確認する(ステップS11)。
【0083】
次に、転写前イレース光、一次転写電流を調整し(ステップS12)、白紋検知部97により白紋が解消したか否かを判定する(ステップS13)。ソリッド(ベタ)パターンの白紋が解消しない場合は(ステップS13でNo)、画像形成部PdのVdc、転写前イレース光、一次転写電流が原因であるため、ステップS11に戻り、ソリッド(ベタ)パターンによる白紋検知を繰り返す(ステップS11~S13)。
【0084】
ハーフトーンパターンによる白紋検知(ステップS2)では、白地部電位差V0-Vdcを一定に維持しながら現像直流電圧Vdcを上昇させて第2基準画像P2を形成し、第2基準画像P2の濃度変化に基づいて白紋検知部97により白紋発生状況を確認する(ステップS21)。
【0085】
次に、転写前イレース光、一次転写電流を調整し(ステップS22)、白紋検知部97により白紋が解消したか否かを判定する(ステップS23)。ハーフトーンパターンの白紋が解消しない場合は(ステップS23でNo)、上流側の画像形成部Pa~Pcでの白地部キャリア現像が原因である可能性がある。
【0086】
そこで、画像形成部Pa~PcのV0-Vdcを変更して(ステップS24)ステップS21に戻り、ハーフトーンパターンによる白紋検知を繰り返す(ステップS21~S24)。ハーフパターンの白紋が解消した場合は(ステップS23でYes)、画像形成部Pa~PcのV0-Vdcを決定する(ステップS25)。
【0087】
その後、画像形成部PdのVdc、転写前イレース光、一次転写電流を、ソリッド(ベタ)パターンおよびハーフトーンパターンの白紋が解消(ステップS13、S23でYes)したときのVdc、転写前イレース光、一次転写電流に決定して(ステップS3)処理を終了する。
【0088】
図10に示した制御例によれば、画像形成部Pdにおける白紋検知結果を上流側の画像形成部Pa~PcにおけるV0-Vdcの設定にフィードバックすることで、画像形成部Pdにおける画像部キャリア現像に起因する白紋の発生に加えて、画像形成部Pa~Pcにおける白地部キャリア現像に起因する白紋の発生も効果的に抑制することができる。
【0089】
図13は、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置100の画像形成部Pa周辺の構成を示す拡大図である。本実施形態では、画像形成部Pb(図1参照)の感光体ドラム1bに転写前イレース光(図13の破線矢印)を照射する除電装置50は、画像形成部Paの感光体ドラム1aに転写後イレース光(図13の白矢印)を照射する。同様に、画像形成部Pc、Pd(図1参照)の感光体ドラム1c、1dに転写前イレース光を照射する除電装置50は、画像形成部Pb、Pcの感光体ドラム1b、1cに転写後イレース光を照射する。また、画像形成部Paの感光体ドラム1aに転写前イレース光を照射する除電装置50の上流側に汚染防止フィルム80を配置している。画像形成装置100の他の部分の構成は第1実施形態と同様である。
【0090】
この構成によれば、転写前イレース光による一次転写前の感光体ドラム1b(1c、1d)の表面の除電と、転写後イレース光による一次転写後の感光体ドラム1a(1b、1c)の表面の除電とを一つの除電装置50で行うことができる。
【0091】
一つの除電装置50を用いて上流側の感光体ドラム1a(1b、1c)の転写後の除電と下流側の感光体ドラム1b(1c、1d)の転写前の除電を行う場合、転写前イレース光の出力を調整すると転写後イレース光の出力も変化してしまう。そのため、除電装置50の位置を、中間転写ベルト8の移動方向(図13の左右方向)に調整可能としておく。これにより、例えば下流側の感光体ドラム1b(1c、1d)に対する転写前イレース光の出力を低下させたときに、除電装置50を上流側の感光体ドラム1a(1b、1c)に近づけることで、転写後イレース光の照射による除電効果を低下させずに転写前イレース光による除電効果を低下させることができる。
【0092】
また、感光体ドラム1aに転写前イレース光を照射する除電装置50(図13の左側の除電装置50)は、中間転写ベルト8に沿った空気流が現像ローラー33と一次転写ローラー6aの間(転写前領域)に流れ込み、トナー飛散を生じさせ易い。そこで、本実施形態では、中間転写ベルト8の移動方向に対して除電装置50の上流側に可撓性の汚染防止フィルム80を配置している。
【0093】
汚染防止フィルム80は、一端側(基端側)が現像装置3aの長手方向全域に固定されており、他端側(自由端側)を中間転写ベルト8に接触している。これにより、画像形成部Paの転写前領域への空気流の流れ込みを抑え、トナー飛散による除電装置50の汚染を抑制することができる。
【0094】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記各実施形態では画像形成装置100として図1に示したようなカラープリンターを例に挙げて説明したが、本発明はカラープリンターに限らず、カラー複写機やカラー複合機等、二成分現像式の現像装置を備えた中間転写方式の画像形成装置に適用可能である。以下、実施例により本発明の効果について更に具体的に説明する。
【実施例0095】
[転写前イレース光および一次転写電流を変化させた場合の白紋および画像濃度の評価]
転写前イレース光の出力および一次転写電流を変化させた場合の白紋および画像濃度の評価を行った。試験方法は、図1に示したような試験機において、図7に示した制御手順によって現像直流電圧、除電装置50の転写前イレース光、一次転写電流を決定し、転写前イレース光の出力、一次転写電流と白紋および画像濃度との関係について、イエロー、シアン、マゼンタの画像形成部Pa~Pcと、ブラックの画像形成部Pdに分けて調査した。
【0096】
画像形成条件は、印字速度(プロセス速度)を70枚/分とし、現像ローラー33には外周面をブラスト加工された十点平均粗さ(JIS)5~10μmの外径20mmの現像スリーブ33aを使用した。規制ブレード35は、厚さ1.5mmのステンレス(SUS430)製の磁性ブレードを用い、規制ブレード35と現像ローラー33との距離(規制ギャップ)を0.5±0.03mmとした。現像ローラー33には、90~280Vの直流電圧(Vdcキャリブレーションにより決定)にピークツーピーク値(Vpp)900~1300V(Vacキャリブレーションにより決定)の交流電圧を重畳した現像電圧を印加した。感光体ドラム1a~1dの表面電位(白地部電位)V0を160~350V(Vdcキャリブによって決定:V0-Vdc=70V)、画像部電位VLを20Vとした。
【0097】
感光体ドラム1a~1dは、比誘電率11のアモルファスシリコン(a-Si)感光体を用い、感光体ドラム1a~1dに対する現像ローラー33の周速比を1.8(対向位置でトレール回転)、感光体ドラム1a~1d-現像ローラー33間の距離(DS間距離)を0.375±0.025mmとした。また、感光体ドラム1a~1dの表面電位(明電位)を160~350V(Vdcキャリブレーションにより決定、Vo-Vdc=70V)、画像部電位(暗電位)を20Vとした。中間転写ベルト8には弾性層を有しない樹脂ベルトを使用した。
【0098】
除電装置50は、波長640nmのイレース光を出射するLED50b(R8C/2C、EVERLIGHT社製)を基板50aに実装したものを用いた。
【0099】
(白紋、画像濃度の評価方法)
白紋の大きさは、標準的なもので横1.5mm、縦0.5mm程度である。そこで、6cm幅のソリッド(ベタ)パターン(図8参照)や横線パターン、チェッカーパターン等のハーフトーンパターン(図11図12参照)を用いて、白紋の状態を検知した。白紋の状態は画像濃度センサー25(スポット径φ3mm)を用いて0.7mmピッチで基準画像の濃度を測定した。そして、画像濃度が閾値より低下した場合、もしくは、一定幅で濃度低下が発生した場合は、白紋が発生したと判定した。
【0100】
評価基準は、白紋は発生個数が0個の場合は○、1~2個認知すると△、3個以上認知すると×とした。画像濃度は目標濃度が出ているものを○、目標濃度が出ていないものを×とした。評価結果を現像直流電圧、除電装置50の入力電流値、一次転写電流と併せて表1、表2に示す。本実施例では、画像濃度を確保できるVdcと、白紋が発生しない上限電圧とのマージン(裕度)を20Vと定めている。また、転写前イレース光の入力電流の上限値を15μA、一次転写電流の上限値を40mAとしている。
【0101】
【表1】
【0102】





【表2】
【0103】
表1は、イエロー、シアン、マゼンタの画像形成部Pa~Pcにおける試験結果を示している。表1に示すように、画像形成部Pa~Pcでは現像直流電圧130V、転写前イレース光の入力電流10μA、一次転写電流20mA(試験例18)が設定値となる。
【0104】
画像形成部Pa~Pcでは、転写前イレース光の入力電流を15μAまで上げても画像濃度を確保できるVdcと、白紋が発生しない上限電圧とのマージン(裕度)が取れない場合は、次に一次転写電流を上昇させる。
【0105】
表2は、ブラックの画像形成部Pdにおける試験結果を示している。表2に示すように、画像形成部Pdでは現像直流電圧130V、転写前イレース光の入力電流0μA、一次転写電流40mA(試験例18)が設定値となる。
【0106】
画像形成部Pdでは、一次転写電流を40mAまで上げても画像濃度を確保できるVdcと、白紋が発生しない上限電圧とのマージン(裕度)が取れない場合は、次に転写前イレース光の入力電流を上昇させる。
【0107】
以上の結果より、図7に示した白紋キャリブレーションによって現像直流電圧、除電装置50の転写前イレース光、一次転写電流を決定することで、白紋の発生を効果的に抑制することができ、且つ、画像濃度の低下も抑制可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いる中間転写方式の画像形成装置に利用可能である。本発明の利用により、画像濃度を適正に維持しつつ、キャリア現像による画像不具合の発生を効果的に抑制可能な画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0109】
Pa~Pd 画像形成部
1a~1d 感光体ドラム(像担持体)
2a~2d 帯電装置
3a~3d 現像装置
5 露光装置
6a~6d 一次転写ローラー(一次転写部材)
8 中間転写ベルト
9 二次転写ローラー(二次転写部材)
25 画像濃度センサー
33 現像ローラー(現像剤担持体)
50 除電装置
80 汚染防止フィルム
90 制御部
97 白紋検知部(画像不具合検知部)
100 画像形成装置
P1 第1基準画像
P2 第2基準画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13