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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180783
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】減圧弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/28 20060101AFI20231214BHJP
   G05D 16/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
F16K17/28
G05D16/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094365
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊木 淳一
(72)【発明者】
【氏名】牧原 敬宏
(72)【発明者】
【氏名】堀田 裕
【テーマコード(参考)】
3H060
5H316
【Fターム(参考)】
3H060AA05
3H060BB10
3H060CC03
3H060DA02
3H060DC05
3H060DD05
3H060DD17
3H060EE06
5H316AA09
5H316BB01
5H316BB07
5H316EE02
(57)【要約】
【課題】内側部材の姿勢を安定させつつ外側部材の内周面と内側部材の外周面との間に液体が滞留することを抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】内側筒状部は、弁体部側の端部に位置する第1端部と、前記弁体部と反対側の端部に位置する第2端部と、前記第1端部と前記第2端部の間に位置する中間部と、を備えていてもよい。前記内側筒状部の前記中間部における外周面は、前記内側筒状部の周方向の全周にわたり前記内側筒状部の径方向の内側に凹んでいてもよい。前記内側筒状部の前記中間部における外周面と外側筒状部の内周面との間隔は、前記内側筒状部の前記第1端部における外周面と前記外側筒状部の内周面との間隔よりも広く、かつ、前記内側筒状部の前記第2端部における外周面と前記外側筒状部の内周面との間隔よりも広くてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側部材と、前記外側部材の内側に配置される内側部材とを備える減圧弁であって、
前記外側部材は、流体が通過可能な開口部が設けられた弁座部と、前記弁座部から筒状に延びる外側筒状部と、を備え、
前記内側部材は、前記開口部を開閉する弁体部と、前記弁体部から筒状に延びる内側筒状部であって前記外側筒状部の内側に配置される前記内側筒状部と、を備え、
前記内側筒状部は、前記弁体部側の端部に位置する第1端部と、前記弁体部と反対側の端部に位置する第2端部と、前記第1端部と前記第2端部の間に位置する中間部と、を備え、
前記内側筒状部の前記中間部における外周面は、前記内側筒状部の周方向の全周にわたり前記内側筒状部の径方向の内側に凹んでおり、
前記内側筒状部の前記中間部における外周面と前記外側筒状部の内周面との間隔は、前記内側筒状部の前記第1端部における外周面と前記外側筒状部の内周面との間隔よりも広く、かつ、前記内側筒状部の前記第2端部における外周面と前記外側筒状部の内周面との間隔よりも広い、減圧弁。
【請求項2】
請求項1に記載の減圧弁であって、
前記内側筒状部の前記第1端部における外周面と前記外側筒状部の内周面との間隔は、前記内側筒状部の前記第2端部における外周面と前記外側筒状部の内周面との間隔よりも広い、減圧弁。
【請求項3】
請求項1に記載の減圧弁であって、
前記内側筒状部の前記第1端部における外周面と前記外側筒状部の内周面との間隔と、前記内側筒状部の前記第2端部における外周面と前記外側筒状部の内周面との間隔とは、同じ間隔である、減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に気体の圧力を調整する減圧弁が開示されている。特許文献1の減圧弁は、外側部材と、外側部材の内側に配置される内側部材とを備えている。外側部材は、気体が通過可能な開口部が設けられた弁座部と、弁座部から筒状に延びる外側筒状部とを備えている。内側部材は、弁座部の開口部を開閉する弁体部と、弁体部から筒状に延びる内側筒状部であって外側筒状部の内側に配置される内側筒状部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-115820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の減圧弁は気体の圧力を調整する弁であるが、この種の減圧弁により仮に液体の圧力を調整する場合、外側筒状部の内周面と内側筒状部の外周面との間に、液体が表面張力の作用により滞留することがある。この部分に液体が滞留すると、例えば寒冷地において、滞留した液体が凍結することにより減圧弁が動作不良を起こすことが考えられる。また、滞留した液体が凍結することにより体積が膨張し、その影響で内側部材の姿勢が外側部材の内側で傾くことが考えられる。また、気体の圧力を調整する減圧弁であっても、気体に混在している液体が外側筒状部の内周面と内側筒状部の外周面との間に浸入して滞留することがある。この場合にも、滞留した液体が凍結することにより減圧弁が動作不良を起こすことや内側部材の姿勢が傾くことが考えられる。
【0005】
本明細書は、内側部材の姿勢を安定させつつ外側部材の内周面と内側部材の外周面との間に液体が滞留することを抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する減圧弁は、外側部材と、前記外側部材の内側に配置される内側部材とを備えている。前記外側部材は、流体が通過可能な開口部が設けられた弁座部と、前記弁座部から筒状に延びる外側筒状部と、を備えていてもよい。前記内側部材は、前記開口部を開閉する弁体部と、前記弁体部から筒状に延びる内側筒状部であって前記外側筒状部の内側に配置される前記内側筒状部と、を備えていてもよい。前記内側筒状部は、前記弁体部側の端部に位置する第1端部と、前記弁体部と反対側の端部に位置する第2端部と、前記第1端部と前記第2端部の間に位置する中間部と、を備えていてもよい。前記内側筒状部の前記中間部における外周面は、前記内側筒状部の周方向の全周にわたり前記内側筒状部の径方向の内側に凹んでいてもよい。前記内側筒状部の前記中間部における外周面と前記外側筒状部の内周面との間隔は、前記内側筒状部の前記第1端部における外周面と前記外側筒状部の内周面との間隔よりも広く、かつ、前記内側筒状部の前記第2端部における外周面と前記外側筒状部の内周面との間隔よりも広くてもよい。
【0007】
この構成によれば、内側部材の内側筒状部の中間部における外周面が凹んでいるので、外側筒状部の内周面と内側筒状部の中間部における外周面との間に液体(例えば、液体燃料、又は気体燃料に混在している水等)が滞留することを抑制することができる。また、内側筒状部の中間部における外周面と外側筒状部の内周面との間隔が広くても、内側筒状部の第1端部と第2端部の存在により、内側筒状部の姿勢を外側筒状部の内側で安定させることができる。以上より、内側部材の姿勢を安定させつつ外側部材の内周面と内側部材の外周面との間に液体が滞留することを抑制することができる。
【0008】
前記内側筒状部の前記第1端部における外周面と前記外側筒状部の内周面との間隔は、前記内側筒状部の前記第2端部における外周面と前記外側筒状部の内周面との間隔よりも広くてもよい。
【0009】
この構成によれば、内側筒状部の第1端部における外周面と外側筒状部の内周面との間に液体が滞留することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例の減圧弁の断面図。
図2】実施例の弁体の断面図。
図3図2のIII-III断面図。
図4図2のIV-IV断面図。
図5図2のV-V断面図。
図6】実施例の内弁体の斜視図。
図7】変形例の減圧弁の断面図。
図8】試験例の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施例の減圧弁2について図面を参照して説明する。実施例の減圧弁2は、流体(例えば、水や液体燃料等の液体、又は水素ガス等の気体)の圧力を減圧させるための弁である。なお、以下では、液体の圧力を減圧させるための減圧弁2について説明する。図1に示すように、実施例の減圧弁2は、本体4と弁体6を備えている。
【0012】
本体4は、第1流路91と、第2流路92と、第1弁座部10と、本体筒状部122とを備えている。第1流路91と第2流路92は、水や燃料等の液体が通過可能に構成されている。第1流路91と第2流路92の間に第1弁座部10が設けられている。第1弁座部10から本体筒状部122が筒状に延びている。第1弁座部10と本体筒状部122は、一体で構成されている。
【0013】
第1流路91は、液体の流れ方向において第1弁座部10よりも上流側に設けられている。第1流路91は、液体の供給元(例えば、燃料ポンプ(不図示))に接続されている。液体の供給元から第1流路91に液体が供給される。第2流路92は、液体の流れ方向において第1流路91及び第1弁座部10よりも下流側に設けられている。第2流路92は、液体の供給先(例えば、エンジン(不図示))に接続されている。第2流路92を通じて液体の供給先に液体が供給される。
【0014】
第1弁座部10は、液体が通過可能な第1開口部12を備えている。第1弁座部10の中心部に第1開口部12が設けられている。第1開口部12を通じて上流側の第1流路91と下流側の第2流路92とが連通する。また、第1弁座部10は、第1座面14を備えている。第1座面14は、第1開口部12の周囲に設けられている。第1座面14は、第1弁座部10の第1流路91側の面に設けられている。第1座面14は、第1流路91に面している。
【0015】
次に、弁体6について説明する。弁体6は、第1流路91に配置されている。弁体6は、第1弁座部10の第1開口部12及び第1座面14と向かい合うように配置されている。弁体6は、第1座面14に対して当接する又は離間することにより第1開口部12を開閉する。第1開口部12が開放されると、第1開口部12を通じて第1流路91から第2流路92へ液体が流れる。
【0016】
図1及び図2に示すように、弁体6は、外側弁体20(外側部材の一例)と内側弁体30(内側部材の一例)とを備えている。外側弁体20は、例えば、樹脂(シリコーンゴムや合成ゴム等)から構成されている。外側弁体20は、第1弁座部10の第1開口部12及び第1座面14と向かい合うように配置されている。外側弁体20は、第1座面14に対して当接する又は離間する。
【0017】
外側弁体20は、第1先端部21と、第1筒状部22(外側筒状部の一例)と、第1基端部23と、第3流路93とを備えている。第1先端部21と第1筒状部22と第1基端部23は、一体で構成されている。第1先端部21が第1弁座部10と向かい合っている。第1先端部21と第1筒状部22と第1基端部23の内側に第3流路93が設けられている。
【0018】
第1先端部21は、略円錐状に構成されている。変形例では、第1先端部21は、略楕円錐状や略多角錐状に構成されていてもよい。第1先端部21の内径と外径が先端側に向かって縮径している。第1先端部21は、液体が通過可能な第2開口部24を備えている。第1先端部21の径方向の中心部に第2開口部24が設けられている。第1弁座部10の第1開口部12と外側弁体20の第2開口部24とを通じて、上流側の第3流路93と下流側の第2流路92とが連通する。
【0019】
また、第1先端部21は、第1弁体部26と第2弁座部27を備えている。第1弁体部26は、第1先端部21の外周面側(第1弁座部10側)に設けられている。第2弁座部27は、第1先端部21の内周面側(第3流路93側)に設けられている。第2弁座部27に第2開口部24が設けられている。
【0020】
第1弁体部26は、本体4の第1弁座部10の第1座面14と向かい合っている。第1弁体部26は、第1座面14に対して当接する又は離間する第1当接面262を備えている。第1当接面262は、第1先端部21の外周面に設けられており、第1座面14に面している。第1当接面262は、第2開口部24の周囲に設けられている。
【0021】
第2弁座部27は、第2座面272を備えている。第2座面272は、第2開口部24の周囲に設けられている。第2座面272は、第1先端部21の内周面に設けられており、第3流路93に面している。
【0022】
第1筒状部22について説明する。第1筒状部22は、第1弁体部26及び第2弁座部27から筒状に延びている。第1筒状部22は、略円筒状に構成されている。変形例では、第1筒状部22は、略楕円筒状や略多角筒状に構成されていてもよい。図3図5に示す断面では、第1筒状部22の内周面52が略円形状に構成されている。変形例では、第1筒状部22の内周面52が略楕円形状や略多角形状に構成されていてもよい。図1及び図2に示すように、第1筒状部22は、第1先端部21の後端部(第1弁座部10と反対側の端部)から後方(上流側)へ筒状に延びている。第1筒状部22は、第1先端部21と第1基端部23の間に位置している。
【0023】
第1基端部23は、略円環状に構成されている。変形例では、第1基端部23は、略楕円環状や略多角環状に構成されていてもよい。第1基端部23は、第1筒状部22の後端部(第1先端部21と反対側の端部)から第1筒状部22の径方向の内側に向かって延びている。第1基端部23は、液体が通過可能な第3開口部25を備えている。第1基端部23の径方向の中心部に第3開口部25が設けられている。第3開口部25を通じて第1流路91と第3流路93が連通する。
【0024】
次に、内側弁体30について説明する。内側弁体30は、例えば、金属(合金等)から構成されている。内側弁体30は、外側弁体20の内側の第3流路93に配置されている。内側弁体30は、外側弁体20の第2開口部24及び第2弁座部27と向かい合うように配置されている。内側弁体30は、第2弁座部27に対して当接する又は離間することにより第2開口部24を開閉する。第2開口部24が開放されると、第2開口部24と第1弁座部10の第1開口部12を通じて第3流路93から第2流路92へ液体が流れる。
【0025】
内側弁体30は、第2先端部31と、突出部36と、第2筒状部32(内側筒状部の一例)と、バネ室35とを備えている。第2先端部31と突出部36と第2筒状部32は、一体で構成されている。第2筒状部32の内側にバネ室35が設けられている。
【0026】
第2先端部31は、略円錐状に構成されている。変形例では、第2先端部31は、略楕円錐状や略多角錐状に構成されていてもよい。第2先端部31の外径が先端側に向かって縮径している。
【0027】
第2先端部31は、第2弁体部33を備えている。第2弁体部33は、第2先端部31の外周面側(第2弁座部27側)に設けられている。第2弁体部33は、外側弁体20の第2開口部24及び第2弁座部27と向かい合っている。第2弁体部33は、第2弁座部27に対して当接する又は離間することにより第2開口部24を開閉する。
【0028】
第2弁体部33は、第2弁座部27の第2座面272に対して当接する又は離間する第2当接面332を備えている。第2当接面332は、第2先端部31の外周面に設けられており、外側弁体20の第2座面272に面している。
【0029】
突出部36は、第2先端部31から外側弁体20の第2開口部24に向かって延びている。突出部36は、第2開口部24に挿入されており、第2流路92に向かって延びている。突出部36は、第2開口部24から第2流路92側に突出している。突出部36は、第1弁座部10の第1開口部12に挿入されている。
【0030】
次に、第2筒状部32について説明する。第2筒状部32は、第2弁体部33から筒状に延びている。第2筒状部32は、略円筒状に構成されている。変形例では、第2筒状部32は、略楕円筒状や略多角筒状に構成されていてもよい。図3図5に示す断面では、第2筒状部32の外周面62が略円形状に構成されている。変形例では、第2筒状部32の外周面62が略楕円形状や略多角形状に構成されていてもよい。図1図2及び図6に示すように、第2筒状部32は、第2先端部31の後端部(突出部36と反対側の端部)から後方(上流側)へ筒状に延びている。第2筒状部32は、外側弁体20の第1筒状部22の内側に配置されている。
【0031】
第2筒状部32は、第1端部80と、第2端部82と、中間部84とを備えている。第1端部80は、第2筒状部32における第2先端部31側(第2弁体部33側)の端部に位置している。第2端部82は、第2筒状部32における第2先端部31と反対側(第2弁体部33と反対側)の端部に位置している。中間部84は、第2筒状部32における第1端部80と第2端部82の間に位置している。
【0032】
第2筒状部32の中間部84における外周面62は、第2筒状部32の周方向の全周にわたり第2筒状部32の径方向の内側に凹んでいる。第2筒状部32の中間部84における外周面62は、凹状に湾曲している。中間部84における外周面62の曲面は、第1端部80から第2端部82まで延びている。
【0033】
第2筒状部32の外径は、第2筒状部32の軸方向に沿って変化する。第2筒状部32の第1端部80と第2端部82における外径は、軸方向に変化する第2筒状部32の外径のうちで最大の外径である。第2筒状部32の中間部84における外径は、第2筒状部32の第1端部80及び第2端部82における外径よりも小さい。
【0034】
図3図5に示すように、内側弁体30の第2筒状部32の外周面62は、第2筒状部32の径方向において、外側弁体20の第1筒状部22の内周面52と向かい合っている。第2筒状部32の外周面62と第1筒状部22の内周面52との間には、液体が通過可能な隙間60が設けられている。外側弁体20の内側の第3流路93を液体が通過するときに、その液体が隙間60を通過する。
【0035】
第2筒状部32の外周面62と第1筒状部22の内周面52との間隔は、第2筒状部32の軸方向に沿って変化する。第2筒状部32の中間部84における外周面62と第1筒状部22の内周面52との間隔W84は、第2筒状部32の第1端部80における外周面62と第1筒状部22の内周面52との間隔W80よりも広い(図3及び図4参照)。また、第2筒状部32の中間部84における外周面62と第1筒状部22の内周面52との間隔W84は、第2筒状部32の第2端部82における外周面62と第1筒状部22の内周面52との間隔W82よりも広い(図3及び図5参照)。第1端部80における間隔W80及び第2端部82における間隔W82は、軸方向に変化する第2筒状部32の外周面62と第1筒状部22の内周面52との間隔のうちで最小の間隔である。実施例では、第1端部80における間隔W80と、第2端部82における間隔W82とは、同じ間隔である。
【0036】
図1に示すように、内側弁体30のバネ室35には、小コイルバネ50が配置されている。小コイルバネ50は、弁体6の軸方向に沿って伸縮する。小コイルバネ50は、上流側から下流側に向けて弁体6(内側弁体30及び外側弁体20)を押圧する。
【0037】
減圧弁2は、ピストン100と大コイルバネ102を更に備えている。ピストン100は、図1の左右方向に移動可能に構成されている。ピストン100は、大コイルバネ102によって弁体6側に押圧されている。ピストン100は、内側弁体30の突出部36に向けて突出する突出部101を備えている。
【0038】
次に、上記の減圧弁2の動作について説明する。最初は減圧弁2が閉弁状態であるとする。即ち、弁体6が本体4の第1弁座部10に当接しており、第1開口部12が閉状態であるとする。また、内側弁体30が外側弁体20に当接しており、第2開口部24が閉状態であるとする。減圧弁2の閉弁状態では、第2流路92における液体の圧力が比較的高い状態に維持されている。
【0039】
(開弁動作)
減圧弁2では、液体の供給先に液体が供給されることにより第2流路92の液体の圧力が低下する。そうすると、第2流路92の液体の圧力を受圧しているピストン100が大コイルバネ102によって弁体6側に押圧され、ピストン100が弁体6側に移動する。第2流路92の液体の圧力が大きく低下すると、それに伴ってピストン100が弁体6側に大きく移動する。一方、第2流路92の液体の圧力の低下量が小さい場合は、それに伴ってピストン100の弁体6側への移動量も小さくなる。
【0040】
ピストン100が弁体6側に移動していくと、ピストン100の突出部101が内側弁体30の突出部36に当接して内側弁体30を上流側に押圧する。これによって、内側弁体30が上流側に移動する。ピストン100が弁体6側に大きく移動すると、内側弁体30が上流側に大きく移動する。一方、ピストン100の弁体6側への移動量が小さい場合は、内側弁体30の上流側への移動量も小さくなる。
【0041】
内側弁体30が上流側へ移動していくと、内側弁体30の第2弁体部33が外側弁体20の第2弁座部27から離間して第2開口部24が開状態になる。第2開口部24が開状態になると、外側弁体20の内側の第3流路93から第2開口部24を通じて第2流路92へ液体が流出する。この状態が第1開弁状態である。第2流路92の液体の圧力と第1流路91の液体の圧力との差圧が比較的高い場合は第1開弁状態になる。なお、第1開弁状態では、第3流路93を通過する液体の圧力により外側弁体20が下流側に押圧されている。これにより、外側弁体20が本体4の第1弁座部10に当接する。
【0042】
第1開弁状態から内側弁体30が更に上流側へ移動していくと、内側弁体30の第2筒状部32が外側弁体20の第1基端部23に当接して第1基端部23を上流側へ押圧する。そうすると、外側弁体20が上流側へ移動する。外側弁体20が上流側へ移動していくと、外側弁体20の第1弁体部26が第1弁座部10の第1座面14から離間して第1開口部12が開状態になる。第1開口部12が開状態になると、第1流路91から第1開口部12を通じて第2流路92へ液体が流出する。この状態が第2開弁状態である。第2流路92の液体の圧力と第1流路91の液体の圧力との差圧が比較的低い場合は第2開弁状態になる。
【0043】
(閉弁動作)
次に、閉弁動作について説明する。閉弁動作は、上記の開弁動作とは反対の動作である。上記の減圧弁2では、第2流路92に液体が流入すると、第2流路92の液体の圧力が上昇する。そうすると、第2流路92の液体の圧力によってピストン100が弁体6と反対側に押圧され、ピストン100が弁体6と反対側(即ち、下流側)に移動する。ピストン100が下流側に移動していくと、それに伴って内側弁体30が下流側に移動する。
【0044】
内側弁体30が下流側へ移動していくと、内側弁体30の第2弁体部33が外側弁体20の第2弁座部27に当接して第2開口部24が閉状態になる。内側弁体30が更に下流側へ移動していくと、内側弁体30によって外側弁体20が下流側に押圧され、内側弁体30と外側弁体20が下流側に移動する。内側弁体30と外側弁体20が下流側に移動していくと、外側弁体20の第1弁体部26が本体4の第1弁座部10に当接して第1開口部12が閉状態になる。
【0045】
(効果)
以上、実施例の減圧弁2について説明した。以上の説明から明らかなように、実施例の減圧弁2では、内側弁体30が、外側弁体20の第2開口部24を開閉する第2弁体部33と、第2弁体部33から筒状に延びる第2筒状部32であって外側弁体20の第1筒状部22の内側に配置される第2筒状部32とを備えている。第2筒状部32は、第2弁体部33側の端部に位置する第1端部80と、第2弁体部33と反対側(外側弁体20の第1基端部23側)の端部に位置する第2端部82と、第1端部80と第2端部82の間に位置する中間部84とを備えている。第2筒状部32の中間部84における外周面62は、第2筒状部32の周方向の全周にわたり第2筒状部32の径方向の内側に凹んでいる。第2筒状部32の中間部84における外周面62と第1筒状部22の内周面52との間隔W84は、第2筒状部32の第1端部80における外周面62と第1筒状部22の内周面52との間隔W80よりも広い。また、第2筒状部32の中間部84における外周面62と第1筒状部22の内周面52との間隔W84は、第2筒状部32の第2端部82における外周面62と第1筒状部22の内周面52との間隔W82よりも広い。
【0046】
この構成によれば、内側弁体30の第2筒状部32の中間部84における外周面62が内側に凹んでいることにより、第2筒状部32の中間部84における外周面62と第1筒状部22の内周面52との間に液体が滞留することを抑制することができる。また、第2筒状部32の中間部84における外周面62と第1筒状部22の内周面52との間隔が広くても、第2筒状部32の第1端部80と第2端部82の存在により、第2筒状部32の姿勢を第1筒状部22の内側で安定させることができる。以上より、内側弁体30の姿勢を安定させつつ外側弁体20の内周面52と内側弁体30の外周面62との間に液体が滞留することを抑制することができる。
【0047】
(変形例)
(1)内側弁体30の第2筒状部32の第1端部80における外径は、第2筒状部32の第2端部82における外径よりも小さくてもよい。即ち、第2筒状部32の第1端部80における外周面62と第1筒状部22の内周面52との間隔W80が、第2筒状部32の第2端部82における外周面62と第1筒状部22の内周面52との間隔W82よりも広くてもよい。この構成によれば、第2筒状部32の第1端部80における外周面62と第1筒状部22の内周面52との間に液体が滞留することを抑制することができる。
【0048】
(2)上記の実施例では、第2筒状部32の中間部84における外周面62が湾曲面状に構成されていたが、この構成に限定されない。変形例では、第2筒状部32の中間部84における外周面62が屈曲面状に構成されていてもよい。
【0049】
(3)上記の実施例では、弁体6が外側弁体20を備えていたが、この構成に限定されない。変形例では、弁体6が外側弁体20を備えていなくてもよい。この場合、図7に示すように、本体4の第1流路91に内側弁体30が配置されている。内側弁体30は、本体4の第1弁座部10の第1開口部12及び第1座面14と向かい合うように配置されている。内側弁体30の第2弁体部33が第1座面14に対して当接する又は離間することにより第1開口部12を開閉する。
【0050】
内側弁体30の第2筒状部32の外周面62は、第2筒状部32の径方向において、本体4(外側部材の他の一例)の本体筒状部122(外側筒状部の他の一例)の内周面152と向かい合っている。内側弁体30の第2筒状部32の中間部84における外周面62と本体4の本体筒状部122の内周面152との間隔は、第2筒状部32の第1端部80における外周面62と本体筒状部122の内周面152との間隔よりも広い。また、第2筒状部32の中間部84における外周面62と本体4の本体筒状部122の内周面152との間隔は、第2筒状部32の第2端部82における外周面62と本体筒状部122の内周面152との間隔よりも広い。
【0051】
(4)上記の実施例では、液体の圧力を減圧させるための減圧弁2について説明したが、この構成に限定されない。変形例では、気体(例えば、水素ガス等)の圧力を減圧させるための減圧弁2であってもよい。この場合であっても、気体に混在している液体(例えば、水等)が外側弁体20の内周面52と内側弁体30の外周面62との間に滞留することを抑制することができる。
【0052】
(試験例)
試験例と比較例による比較試験について説明する。試験例の減圧弁は、上記の実施例の減圧弁2とした。比較例の減圧弁は、実施例の減圧弁2と比較して、内側弁体30の第2筒状部32の中間部84における外周面62が凹んでいない構成とした。試験例と比較例について、内側弁体30の第2筒状部32の中間部84における外周面62と、外側弁体20の第1筒状部22の内周面52と、の隙間60に滞留する液体の量をシミュレーションにより比較した。
【0053】
図8に示すグラフは、比較試験の結果を示すグラフである。図8に示すグラフの横軸は、液体が隙間60を流れた時間である。グラフの縦軸は、第1流路91と第3流路93の体積に対する、第2筒状部32の中間部84における外周面62に面する隙間60に滞留する液体の体積の割合である。図8に示すように、試験例の減圧弁(実施例の減圧弁2)では、第2筒状部32の中間部84における外周面62に面する隙間60に滞留する液体の量が、比較例の減圧弁よりも約45%少ないことが確認された。以上より、試験例の減圧弁(実施例の減圧弁2)によれば、外側弁体20の内周面52と内側弁体30の外周面62との間に液体が滞留することを抑制できることが確認された。
【0054】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0055】
2:減圧弁、4:本体、6:弁体、10:弁座、12:第1開口部、14:外側弁座部、20:外側弁体、21:第1先端部、22:第1筒状部、23:第1基端部、24:第2開口部、25:第3開口部、26:外側弁体部、27:内側弁座部、30:内側弁体、31:第2先端部、32:第2筒状部、33:内側弁体部、35:バネ室、36:突出部、50:小コイルバネ、52:内周面、60:隙間、62:外周面、80:第1端部、82:第2端部、84:中間部、91:第1流路、92:第2流路、93:第3流路、100:ピストン、101:突出部、102:大コイルバネ、122:筒状部、152:内周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8