IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

特開2023-180788画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法
<>
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図1
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図2
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図3
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図4
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図5
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図6
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図7
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図8
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図9
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図10
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図11
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図12
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図13
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図14
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図15
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図16
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図17
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図18
  • 特開-画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180788
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20231214BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20231214BHJP
   G03G 21/08 20060101ALI20231214BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/16
G03G21/08
G03G15/01 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094372
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 麻美
(72)【発明者】
【氏名】久保 憲生
(72)【発明者】
【氏名】田内 康大
【テーマコード(参考)】
2H035
2H200
2H270
2H300
【Fターム(参考)】
2H035AA09
2H035AA11
2H035AB01
2H035AZ11
2H200GA34
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB22
2H200JA02
2H200JA21
2H200JA27
2H200JA29
2H200JC03
2H200JC15
2H200MA02
2H200PA20
2H200PA21
2H200PA22
2H200PB04
2H200PB17
2H270KA28
2H270KA49
2H270LA02
2H270LA12
2H270LA18
2H270LA20
2H270LA42
2H270LA51
2H270LA63
2H270LA67
2H270LD03
2H270LD09
2H270MA24
2H270MB13
2H270MC38
2H270MC47
2H270NC01
2H270ZC03
2H270ZC04
2H300EA05
2H300EB05
2H300EB07
2H300EB12
2H300EC02
2H300EC05
2H300EC09
2H300EC15
2H300EF03
2H300EF06
2H300EF08
2H300EF17
2H300EG02
2H300EH16
2H300EJ09
2H300EM01
2H300EM04
2H300FF05
2H300GG01
2H300GG02
2H300GG04
2H300GG11
2H300QQ02
2H300QQ25
2H300QQ26
2H300RR32
2H300RR50
2H300TT03
2H300TT04
(57)【要約】
【課題】二成分現像剤を用いる中間転写方式において、キャリア現像による画像不具合の発生を抑制するとともにトナー散りや色調変動も抑制可能な画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、像担持体と、帯電装置と、露光装置と、現像装置と、を有する複数の画像形成部と、中間転写ベルトと、一次転写部材と、二次転写部材と、除電装置と、画像読取部と、制御部と、を備える。除電装置は、像担持体の現像領域から一次転写ニップ部までの領域に転写前イレース光を照射する。制御部は、転写前イレース光を複数段階に変化させて出力された基準画像を画像読取部で読み取ることにより画像データを取得し、画像データを解析して画像不具合を測定するとともに、画像不具合が目標値内となるように転写前イレース光を調整する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感光層が形成された像担持体と、
前記像担持体の表面を所定の表面電位に帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像担持体に光を照射して帯電が減衰した静電潜像を形成する露光装置と、
磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を担持する現像剤担持体を備え、前記現像剤担持体が像担持体と対向位置する現像領域で前記像担持体の表面に形成された前記静電潜像をトナー像に現像する現像装置と、
を有する複数の画像形成部と、
前記画像形成部に隣接して配置され、前記像担持体の表面に形成された前記トナー像が外周面に一次転写される無端状の中間転写ベルトと、
前記像担持体と対向する位置で前記中間転写ベルトの内周面に接触して前記像担持体と前記中間転写ベルトの間に一次転写ニップ部を形成し、前記一次転写ニップ部において前記像担持体の表面に形成された前記トナー像を前記中間転写ベルトに一次転写する一次転写部材と、
前記中間転写ベルトに一次転写された前記トナー像を記録媒体上に二次転写する二次転写部材と、
前記像担持体の前記現像領域から前記一次転写ニップ部までの領域に転写前イレース光を照射する除電装置と、
前記中間転写ベルトに一次転写された前記トナー像、若しくは前記記録媒体上に出力された画像の読み取りを行う画像読取部と、
前記除電装置の前記転写前イレース光を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記転写前イレース光を複数段階に変化させて出力された基準画像を前記画像読取部で読み取ることにより画像データを取得し、前記画像データを解析して画像不具合を測定するとともに、前記画像不具合が目標値内となるように前記転写前イレース光を調整することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記基準画像は、前記画像不具合である白紋測定用であり、ソリッドパターンと、所定の線幅のライン画像を所定間隔で印刷した横線パターンとで構成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記基準画像は、前記画像不具合であるブラーおよび線幅測定用であり、線幅の異なる複数のライン画像を所定間隔で印刷した横線パターンおよび縦線パターンで構成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記基準画像の濃度および前記画像不具合の発生状況に基づいて前記現像剤担持体に印加される現像直流電圧を決定した後、前記現像直流電圧と前記画像不具合が発生しない上限電圧とのマージンが一定以上となるように前記転写前イレース光の出力を調整することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
複数の前記画像形成部は、それぞれ異なる色の前記トナー像を形成し、
前記制御部は、少なくとも2以上の前記画像形成部において前記転写前イレース光の出力を同時に調整することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
複数の前記画像形成部は、前記中間転写ベルトの移動方向に沿って配置されており、
隣接する2つの前記画像形成部の間に配置された前記除電装置は、下流側に位置する前記画像形成部の前記像担持体に前記転写前イレース光を照射するとともに、上流側に位置する前記画像形成部の前記像担持体に一次転写後の残留電荷を除去する転写後イレース光を照射することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
隣接する2つの前記画像形成部の間に配置された前記除電装置は、前記中間転写ベルトの移動方向に沿って位置調整可能であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記像担持体は、前記感光層としてアモルファスシリコン層を有し、前記中間転写ベルトは弾性層を有しない樹脂ベルトであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
表面に感光層が形成された像担持体と、
前記像担持体の表面を所定の表面電位に帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像担持体に光を照射して帯電が減衰した静電潜像を形成する露光装置と、
磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を担持する現像剤担持体を備え、前記現像剤担持体が像担持体と対向位置する現像領域で前記像担持体の表面に形成された前記静電潜像をトナー像に現像する現像装置と、
を有する複数の画像形成部と、
前記画像形成部に隣接して配置され、前記像担持体の表面に形成された前記トナー像が外周面に一次転写される無端状の中間転写ベルトと、
前記像担持体と対向する位置で前記中間転写ベルトの内周面に接触して前記像担持体と前記中間転写ベルトの間に一次転写ニップ部を形成し、前記一次転写ニップ部において前記像担持体の表面に形成された前記トナー像を前記中間転写ベルトに一次転写する一次転写部材と、
前記中間転写ベルトに一次転写された前記トナー像を記録媒体上に二次転写する二次転写部材と、
前記像担持体の前記現像領域から前記一次転写ニップ部までの領域に転写前イレース光を照射する除電装置と、
前記除電装置の前記転写前イレース光を制御する制御部と、
を備えた画像形成装置と、
前記画像形成装置の出力画像を読み取る画像読取装置と、
前記画像読取装置によって読み取られた画像データを解析する画像解析装置と、
を含み、
前記転写前イレース光を複数段階に変化させて出力された基準画像を前記画像読取装置で読み取ることにより画像データを取得し、前記画像データを前記画像解析装置に送信して解析し、画像不具合を測定するとともに、測定結果を前記画像形成装置に送信して前記画像不具合が目標値内となるように前記転写前イレース光を調整することを特徴とする画像形成システム。
【請求項10】
表面に感光層が形成された像担持体と、
前記像担持体の表面を所定の表面電位に帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像担持体に光を照射して帯電が減衰した静電潜像を形成する露光装置と、
磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を担持する現像剤担持体を備え、前記現像剤担持体が像担持体と対向位置する現像領域で前記像担持体の表面に形成された前記静電潜像をトナー像に現像する現像装置と、
を有する複数の画像形成部と、
前記画像形成部に隣接して配置され、前記像担持体の表面に形成された前記トナー像が外周面に一次転写される無端状の中間転写ベルトと、
前記像担持体と対向する位置で前記中間転写ベルトの内周面に接触して前記像担持体と前記中間転写ベルトの間に一次転写ニップ部を形成し、前記一次転写ニップ部において前記像担持体の表面に形成された前記トナー像を前記中間転写ベルトに一次転写する一次転写部材と、
前記中間転写ベルトに一次転写された前記トナー像を記録媒体上に二次転写する二次転写部材と、
前記像担持体の前記現像領域から前記一次転写ニップ部までの領域に転写前イレース光を照射する除電装置と、
前記除電装置の前記転写前イレース光を制御する制御部と、
を備えた画像形成装置における、前記転写前イレース光の調整方法であって、
前記転写前イレース光を複数段階に変化させて基準画像を出力する工程と、
前記基準画像の画像データを取得し、取得された前記画像データを解析して画像不具合を測定する工程と、
前記画像不具合が目標値内となるように前記転写前イレース光を調整する工程と、
を含む、転写前イレース光の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体を備えた複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に関し、特に、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いる中間転写方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、感光体等からなる像担持体上に形成した静電潜像を、現像装置により現像し、トナー像として可視化する。このような現像装置の一つとして、磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を用いる二成分現像方式が採用されている。二成分反転現像方式においては、感光体およびトナーは同極性に帯電しており、キャリアは逆極性に帯電している。そして、画像の白地部分に対応する感光体の電位は、キャリアを静電的に引き付ける方向に設定されている。しかし、通常は現像ローラーの磁力の方が大きいため、キャリアは現像ローラーから離れることなく現像装置内を循環する。
【0003】
ところで、感光体の表面電位は環境変化等によって変動する。感光体の表面電位が高くなると、キャリアが感光体の表面に移動する、いわゆる白地部キャリア現像が発生し易くなる。また、環境の変化等によってトナー帯電量が高くなった場合、画像濃度を確保するために、現像電位差を高くする。この現像電位差が大きくなりすぎると、キャリアに電荷が注入され、キャリアはトナーと同極性に帯電してしまう。そして、感光体上に形成された静電潜像にトナーが現像されるとき、トナーと共にキャリアも現像されてしまう、いわゆる画像部キャリア現像が発生する。
【0004】
一方、感光体から中間転写ベルト上に一次転写されたトナー像を用紙等の記録媒体に二次転写する中間転写方式の画像形成装置が広く用いられている。このような中間転写方式の画像形成装置において、白地部キャリア現像が発生すると、感光体に現像したキャリアが中間転写ベルトに移行する。中間転写ベルト下流の画像形成ユニットで感光体上に形成された画像を一次転写ニップ部で中間転写ベルトに移動させる際に、この上流の画像形成ユニットで中間転写ベルトに付着したキャリアが介在すると、このキャリアが感光体と中間転写ベルトの間に隙間を形成する。その結果、キャリアの周囲のトナーが中間転写ベルト上に移動できず、画像の一部が白く抜ける「白紋」という現象を発生させる。また、画像部キャリア現像が発生すると、感光体に現像したキャリアが、一次転写の際に感光体と中間転写ベルトの間に隙間を形成する。その結果、キャリアの周囲のトナーが中間転写ベルト上に移動できず、同様に「白紋」を発生させる。
【0005】
特に、感光層として誘電率の高いアモルファスシリコン層を有するアモルファスシリコン感光体を使用し、且つ直流電圧に交流電圧を重畳させた現像電圧を印加する場合は、現像電流が流れやすいため白地部キャリア現像および画像部キャリア現像の両方が発生し易くなる。さらに、中間転写ベルトとして硬質の樹脂ベルトを使用する場合は、白紋がより顕著に発生し易くなる。
【0006】
そこで、キャリア現像を抑制する方法が種々提案されており、例えば特許文献1には、現像ローラー上の磁気ブラシが感光体ドラムに接している部分の現像ローラー回転方向の最下流位置に向けて除電光を照射する除電装置を備えた画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、現像領域の下流部分に除電光(イレース光)を照射し、白地部分の表面電位を現像電位に近づけることによってキャリアを白地部分に現像する白地部電界を弱め、キャリア現像を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-185451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の方法によれば、イレース光の出力を上げるにつれて白紋の抑制効果は高くなる。しかし、イレース光の出力を上げると、白紋の抑制効果と相反してトナー散り、ブラーによる文字画像の画質劣化や、ハーフトーン画像の色調変動等を引き起こすという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、二成分現像剤を用いる中間転写方式において、キャリア現像による画像不具合の発生を効果的に抑制するとともにトナーの散りや色調変動も抑制可能な画像形成装置、画像形成システムおよび転写前イレース光の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、像担持体と、帯電装置と、露光装置と、現像装置と、を有する複数の画像形成部と、中間転写ベルトと、一次転写部材と、二次転写部材と、除電装置と、画像読取部と、制御部と、を備えた画像形成装置である。像担持体は、表面に感光層が形成される。帯電装置は、像担持体の表面を所定の表面電位に帯電させる。露光装置は、帯電装置により帯電された像担持体に光を照射して帯電が減衰した静電潜像を形成する。現像装置は、磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を担持する現像剤担持体を備え、現像剤担持体が像担持体と対向位置する現像領域で像担持体の表面に形成された静電潜像をトナー像に現像する。中間転写ベルトは、無端状であって画像形成部に隣接して配置され、像担持体の表面に形成されたトナー像が外周面に一次転写される。一次転写部材は、像担持体と対向する位置で中間転写ベルトの内周面に接触して像担持体と中間転写ベルトの間に一次転写ニップ部を形成し、一次転写ニップ部において像担持体の表面に形成されたトナー像を中間転写ベルトに一次転写する。二次転写部材は、中間転写ベルトに一次転写されたトナー像を記録媒体上に二次転写する。除電装置は、像担持体の現像領域から一次転写ニップ部までの領域に転写前イレース光を照射する。画像読取部は、中間転写ベルトに一次転写されたトナー像、若しくは記録媒体上に出力された画像の読み取りを行う。制御部は、転写前イレース光を複数段階に変化させて出力された基準画像を画像読取部で読み取ることにより画像データを取得し、画像データを解析して画像不具合を測定するとともに、画像不具合が目標値内となるように転写前イレース光を調整する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の構成によれば、転写前イレース光を複数段階に変化させて出力された基準画像を画像読取部で読み取ることにより画像データを取得する。そして、画像データを解析して画像不具合を測定するとともに、画像不具合が目標値内となるように転写前イレース光を調整する。これにより、実際の画像不具合の発生状況を転写前イレース光の出力の設定に反映させることができる。従って、転写前イレース光の出力を、キャリア現像による画像不具合と文字画像のトナー散りの両方を抑制可能な範囲に精度よく設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置100の内部構成を示す側面断面図
図2図1における画像形成部Pd周辺の構成を示す拡大図
図3】画像形成部Pdにおける感光体ドラム1d周辺の構成を示す図
図4】感光体ドラム1dと現像ローラー33との対向部分に磁気ブラシBが形成された状態を示す図
図5】除電装置50の平面図(図5(a))および側面図(図5(b))
図6】画像形成装置100の制御経路の一例を示すブロック図
図7】トナー散りの発生メカニズムの説明図
図8】転写前イレース光をオフ状態にした場合(図8(a))とオン状態(入力電流10mA)にした場合(図8(a))の文字画像の写真
図9】転写前イレース光の出力とブラーとの関係を示すグラフ
図10】転写前イレース光の出力と線幅との関係を示すグラフ
図11】白紋測定用の基準画像P1の一例を示す図
図12】線幅、ブラー測定用の基準画像P2の一例を示す図
図13】第1実施形態の画像形成装置100において実行される白紋キャリブレーションの制御例を示すフローチャート
図14】基準画像P1の解析から得られた白紋の発生状況を示すグラフ
図15】基準画像P2の解析から得られたブラーの発生状況を示すグラフ
図16】基準画像P2の解析から得られた線幅の増加を示すグラフ
図17】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置100の画像形成部Pa周辺の構成を示す拡大図
図18】中間転写ベルト8上に形成されたトナー像を読み取るCIS81を備え、CIS81で読み取られた画像データを画像解析装置101に送信して得られた解析データを用いて転写前イレース光の調整を行う画像形成システムを示す図
図19】転写紙Pに出力された画像データを画像読取装置102により読み取った後、画像解析装置101に送信して得られた解析データを用いて転写前イレース光の調整を行う画像形成システムを示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置100の内部構造を示す断面図である。画像形成装置100(ここではカラー複合機)本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、PcおよびPdが、搬送方向上流側(図1では左側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa~Pdは、異なる4色(イエロー、シアン、マゼンタおよびブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像および転写の各工程によりイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックの画像を順次形成する。
【0014】
これらの画像形成部Pa~Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム(像担持体)1a、1b、1cおよび1dが配設されている。さらに図1において反時計回り方向に回転する中間転写ベルト(中間転写体)8が各画像形成部Pa~Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a~1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a~1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次一次転写されて重畳される。その後、中間転写ベルト8上に一次転写されたトナー像は、二次転写ローラー9によって記録媒体の一例としての転写紙P上に二次転写される。さらに、トナー像が二次転写された転写紙Pは、定着部13においてトナー像が定着された後、画像形成装置100本体より排出される。感光体ドラム1a~1dを図1において時計回り方向に回転させながら、各感光体ドラム1a~1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0015】
トナー像が二次転写される転写紙Pは、画像形成装置100の本体下部に配置された用紙カセット16内に収容されている。転写紙Pは、給紙ローラー12aおよびレジストローラー対12bを介して二次転写ローラー9と中間転写ベルト8の駆動ローラー11とのニップ部へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。また、二次転写ローラー9の下流側には中間転写ベルト8の表面に残存するトナー等を除去するためのブレード状のベルトクリーナー20が配置されている。
【0016】
パソコン等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、メインモーター40(図6参照)により感光体ドラム1a~1dが回転駆動される。そして、帯電装置2a~2dによって感光体ドラム1a~1dの表面を均一に帯電させる。次いで露光装置5によって画像データに応じて光照射し、各感光体ドラム1a~1d上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置3a~3dには、それぞれイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックのトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置3a~3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはトナーコンテナ4a~4dから各現像装置3a~3dにトナーが補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置3a~3dにより感光体ドラム1a~1d上に供給され、静電的に付着する。これにより、露光装置5からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0017】
そして、一次転写ローラー6a~6dにより一次転写ローラー6a~6dと感光体ドラム1a~1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与される。これにより、感光体ドラム1a~1d上のイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの画像は、予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、一次転写後に感光体ドラム1a~1dの表面に残留したトナー等がクリーニング装置7a~7dにより除去される。
【0018】
中間転写ベルト8は、上流側の従動ローラー10と、下流側の駆動ローラー11とに掛け渡されている。ベルト駆動モーター41(図6参照)による駆動ローラー11の回転に伴い中間転写ベルト8が反時計回り方向に回転を開始すると、転写紙Pがレジストローラー対12bから所定のタイミングで駆動ローラー11と、これに隣接して設けられた二次転写ローラー9とのニップ部(二次転写ニップ部)へ搬送され、中間転写ベルト8上のトナー像が転写紙P上に二次転写される。トナー像が二次転写された転写紙Pは定着部13へと搬送される。
【0019】
定着部13に搬送された転写紙Pは、定着ローラー対13aにより加熱および加圧されてトナー像が転写紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられ、そのまま(或いは、両面搬送路18に送られて両面に画像が形成された後に)、排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0020】
排出トレイ17の上方には画像読取部21が配置されており、画像読取部21の上面には原稿搬送装置22が付設されている。画像読取部21は、複写時に原稿を照明するスキャナーランプや原稿からの反射光の光路を変更するミラーが搭載された走査光学系、原稿からの反射光を集光して結像する集光レンズ、および結像された画像光を電気信号に変換するCCDセンサー等(いずれも図示せず)から構成されており、原稿画像を読み取って画像データに変換する。原稿搬送装置22は、シート状の原稿を画像読取部21の読取位置に自動的に搬送する。
【0021】
画像形成部1dの下流側であって中間転写ベルト8と対向する位置には画像濃度センサー25が配置されている。画像濃度センサー25としては、一般にLED等から成る発光素子と、フォトダイオード等から成る受光素子を備えた光学センサーが用いられる。中間転写ベルト8上のトナー付着量を測定する際、発光素子から中間転写ベルト8上に形成された各基準画像に対し測定光を照射すると、測定光はトナーによって反射される光、およびベルト表面によって反射される光として受光素子に入射する。
【0022】
トナーおよびベルト表面からの反射光には正反射光と乱反射光とが含まれる。この正反射光および乱反射光は、偏光分離プリズムで分離された後、それぞれ別個の受光素子に入射する。各受光素子は、受光した正反射光と乱反射光を光電変換して制御部90(図6参照)に出力信号を出力する。そして、正反射光と乱反射光の出力信号の特性変化からトナー量を検知し、予め定められた基準濃度と比較して現像電圧の特性値などを調整することにより濃度補正(キャリブレーション)が行われる。
【0023】
図2は、図1における画像形成部Pd周辺の構造を示す拡大図である。図3は、画像形成部Pdにおける感光体ドラム1d周辺の構成を示す図である。なお、以下の説明では図1の画像形成部Pdを例示するが、画像形成部Pa~Pcについても基本的に同様の構成であるため説明を省略する。
【0024】
回転可能に配設された感光体ドラム1dの周囲および下方には、感光体ドラム1dを帯電させる帯電装置2dと、感光体ドラム1dに画像情報を露光する露光装置5(図1参照)と、感光体ドラム1d上にトナー像を形成する現像装置3dと、感光体ドラム1d上に残留した現像剤(トナー)等を除去するクリーニング装置7dが設けられている。また、現像装置3dとクリーニング装置7dとの間には中間転写ベルト8を挟んで一次転写ローラー6dが配置されている。
【0025】
感光体ドラム1dは、導電性基体19aと、導電性基体19aの表面に形成される感光層19bとで構成される。本実施形態では、アルミニウム製の円筒状の導電性基体19aの表面に、感光層19bとしてアモルファスシリコン層を積層している。
【0026】
帯電装置2dは、感光体ドラム1dに接触してドラム表面を均一に帯電させる帯電ローラー27と、帯電ローラー27をクリーニングするための帯電クリーニングブラシ29とを有している。なお、帯電クリーニングブラシ29に代えて帯電クリーニングローラーを用いても良い。帯電ローラー27には帯電電圧電源52により所定の直流電圧および交流電圧が印加される。そして、帯電装置2dによって、感光体ドラム1dの表面電位V0が、後述する現像ローラー33の現像直流電圧Vdcよりも高く、かつ、現像ローラー33の現像直流電圧Vdcとの電位差(白地部電位差)V0-Vdcが所定値(例えば150V以下)になるように帯電される。
【0027】
現像装置3dは、2本の攪拌搬送スクリュー30と、現像ローラー(現像剤担持体)33と、規制ブレード35と、磁性キャリアと非磁性のトナーとを含む二成分現像剤を収容する樹脂製の現像容器36と、を有する。
【0028】
現像ローラー33は、図3において反時計回り方向に回転する円筒状の非磁性の現像スリーブ33aと、現像スリーブ33aの内側に回転不能に固定され、複数の磁極を有するマグネット33bとで構成されている。本実施形態では、マグネット33bの磁極は、N極から成る規制極(図示せず)、S極から成る搬送極(図示せず)、N極から成る主極34、およびN極から成る剥離極(図示せず)等によって構成されている。
【0029】
現像ローラー33には、現像電圧電源53により現像直流電圧Vdcに現像交流電圧Vacが重畳された現像電圧が印加される。また、現像容器36には規制ブレード35が現像ローラー33の軸方向(図2の紙面と垂直方向)に沿って取り付けられている。規制ブレード35の先端部と現像ローラー33の外周面との間には僅かな隙間(規制ギャップ)が設けられている。
【0030】
図4は、感光体ドラム1dと現像ローラー33との対向部分に磁気ブラシBが形成された状態を示す図である。攪拌搬送スクリュー30によって、現像剤が攪拌されつつ現像ローラー33に搬送される。そして、図4に示すように、現像ローラー33上に磁性キャリアCおよびトナーTからなる磁気ブラシBが形成される。現像ローラー33上の磁気ブラシBは、現像ローラー33の回転によって規制ブレード35を通過し、現像ローラー33と感光体ドラム1dとの対向部分(現像領域R)に搬送される。現像ローラー33には現像直流電圧Vdcおよび現像交流電圧Vacが印加されているため、感光体ドラム1dの表面電位(画像部電位VL)との電位差によって現像ローラー33から感光体ドラム1dにトナーTが飛翔し、感光体ドラム1d上の静電潜像(露光部)が現像される。
【0031】
クリーニング装置7dは、クリーニングブレード(クリーニング部材)37、および回収スクリュー39を有している。クリーニングブレード37は、感光体ドラム1dに当接した状態で固定されており、感光体ドラム1dの表面に残存するトナー等を清掃する。クリーニングブレード37によって感光体ドラム1dの表面から除去された残留トナーは、回収スクリュー39の回転に伴ってクリーニング装置5dの外部に排出される。
【0032】
一次転写ローラー6dには、転写電圧電源54(図3参照)によりトナーTと逆極性の所定の一次転写電圧が印加される。
【0033】
中間転写ベルト8は、TPU(熱可塑性ポリウレタン)のような弾性層を有しない、樹脂ベルトによって形成されている。中間転写ベルト8の材質としては、熱可塑性樹脂であれば、PC(ポリカーボネート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PA(ポリアミド)、アクリル、ナイロン等、熱硬化性樹脂であれば、PI(ポリイミド)、PAI(ポリアミドイミド)等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であっても、その表面にアクリルコート等を施したものも使用可能である。また、中間転写ベルト8に導電性を付与するために、樹脂材料にイオン導電剤若しくは電子導電剤を添加している。
【0034】
現像装置3dの上方には、感光体ドラム1dの表面にイレース光(転写前イレース光)を照射する除電装置50が配置されている。図5に示すように、除電装置50は、基板50a上に複数のLEDチップ50bを所定間隔で実装したものである。除電装置50は、各感光体ドラム1a~1dに対して1つずつ設けられている。
【0035】
図2に示すように、画像形成部Pdの除電装置50は、例えば隣接する画像形成部Pcのクリーニング装置5cに取り付けられている。なお、画像形成部Pdの除電装置50を現像装置3dの上部に取り付けてもよい。
【0036】
除電装置50は、現像ローラー33の磁気ブラシBが感光体ドラム1dに接している現像領域から一次転写ニップ部までの領域に向けて転写前イレース光を照射するように配置されている。除電装置50の転写前イレース光によって、感光体ドラム1dの表面の非露光部(白地部)は、現像ローラー33の現像直流電圧Vdc以下で、且つ所定電位(例えば150V)以上となるように除電される。
【0037】
次に、本発明の画像形成装置100の制御経路について説明する。図6は、本発明の画像形成装置100に用いられる制御経路の一例を示すブロック図である。なお、画像形成装置100を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、画像形成装置100全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。
【0038】
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き可能な記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、一時的に画像データ等を記憶する一時記憶部94、印字枚数を累積してカウントするカウンター95、画像形成装置100内の各装置に制御信号を送信したり操作部70からの入力信号を受信したりする複数(ここでは2つ)のI/F(インターフェイス)96を少なくとも備えている。また、制御部90は、画像形成装置100の本体内部の任意の場所に配置可能である。
【0039】
ROM92には、画像形成装置100の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、画像形成装置100の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、画像形成装置100の制御途中で発生した必要なデータや、画像形成装置100の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。
【0040】
また、制御部90は、画像形成装置100における各部分、装置に対し、CPU91からI/F96を通じて制御信号を送信する。また、各部分、装置からその状態を示す信号や入力信号がI/F96を通じてCPU91に送信される。制御部90が制御する各部分、装置としては、例えば、画像形成部Pa~Pd、露光装置5、二次転写ローラー9、メインモーター40、ベルト駆動モーター41、電圧制御回路51、画像入力部60、操作部70等が挙げられる。
【0041】
画像入力部60は、パソコン等から画像形成装置100に送信される画像データを受信する受信部である。画像入力部60より入力された画像信号はデジタル信号に変換された後、I/F96を介して一時記憶部94に送出される。
【0042】
電圧制御回路51は、帯電電圧電源52、現像電圧電源53、および転写電圧電源54と接続され、制御部90からの出力信号によりこれらの各電源を作動させる。電圧制御回路51からの制御信号によって、帯電電圧電源52は帯電装置2a~2d内の帯電ローラー27に帯電電圧を印加する。現像電圧電源53は現像装置3a~3d内の現像ローラー33に、現像直流電圧Vdcに現像交流電圧Vacを重畳した現像電圧を印加する。転写電圧電源54は一次転写ローラー6a~6dおよび二次転写ローラー9に、それぞれ所定の一次転写電圧および二次転写電圧を印加する。
【0043】
帯電電圧電源52から帯電ローラー27に印加される帯電電圧は、直流電圧であることが好ましい。帯電電圧が直流電圧である場合は、直流電圧と交流電圧の重畳電圧である場合と比較して、帯電ローラー27から感光体ドラム1a~1dへの放電量が少なく、感光体ドラム1a~1dの感光層19bの摩耗量を低減できる。
【0044】
操作部70には、液晶表示部71、各種の状態を示すLED72が設けられており、ユーザーは操作部70のストップ/クリアボタンを操作して画像形成を中止し、リセットボタンを操作して画像形成装置100の各種設定をデフォルト状態にする。液晶表示部71は、画像形成装置100の状態を示したり、画像形成状況や印字部数を表示したりするようになっている。画像形成装置100の各種設定はパソコンのプリンタードライバーから行われる。
【0045】
次に、本発明の特徴部分である除電装置50の転写前イレース光の制御について説明する。感光体ドラム1a~1dとしてアモルファスシリコン感光体を用い、二成分現像方式の現像装置3a~3dを用いる画像形成装置100では、感光層19bの抵抗が低いため、現像領域において磁気ブラシに電流が流れ易い。そのため、キャリアへの電荷注入や、磁気ブラシを通して感光体ドラム1a~1dへの電荷注入が生じ易くなる。特に、直流電圧に交流電圧を重畳した現像電圧を使用するシステムでは、磁気ブラシ(現像)電流が流れ易く、上述した電荷注入現象が顕著となる。
【0046】
そこで、本発明では転写前イレース光を制御することで、キャリア現像起因で画像上に発生する白紋を抑制する。以下、白紋の発生パターンおよび各発生パターンに対する白紋の抑制メカニズムについて詳述する。
【0047】
[1.白紋の発生パターンについて]
(1-1.白地部キャリア現像に起因する白紋)
或る画像形成部(例えば画像形成部Pa)において白地部キャリア現像が発生した場合、当該画像形成部Paでは白紋は発生しないが、感光体ドラム1aに現像されたキャリアが中間転写ベルト8へ移動すると、下流側の画像形成部(例えば画像形成部Pb)でトナーを一次転写しようとしたときに、そのキャリアが感光体ドラム1bと中間転写ベルト8の間に挟まり、キャリア周辺のトナーの移動を阻害する。その結果、下流側のトナーの色(シアン)の部分に白抜け(白紋)が発生する。この場合、最下流の画像形成部Pdにおける黒色の部分の白紋が最も悪化する。また、白地部キャリア現像に起因する白紋は、ハーフトーンパターンや横線パターン、縦線パターン、チェッカー(格子状)パターン等において発生しやすい。
【0048】
(1-2.画像部キャリア現像に起因する白紋)
例えば、反転現像において、感光体ドラム1a~1dの白地部電位V0=+250V、画像部(露光後)電位VL=+20V、現像直流電圧Vdc=+180V、現像交流電圧Vpp=1100Vである場合、画像部を現像する際に、キャリアおよび感光体ドラム1a~1dへの電荷注入が発生する。特に、感光体ドラム1a~1dとして抵抗の低いアモルファスシリコン感光体を用い、低抵抗のキャリアを用いると、この電荷注入が発生し易い。電荷注入が発生すると、画像部電位は現像直流電圧に近づく方向に変化し、キャリアの帯電極性もトナーと同極性に変化する。その結果、キャリアはトナーと同様に感光体ドラム1a~1dの画像部に現像される(画像部キャリア現像)。
【0049】
そして、画像部に現像されたキャリアが樹脂製の中間転写ベルト8へ転写され、感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の間に介在することにより、キャリア周辺のトナーが感光体ドラム1a~1dから中間転写ベルト8へ移動し難くなる。その結果、キャリアの周辺に白抜け(白紋)が発生する。画像部キャリア現像による白紋は、白地部と画像部の電位差が最も大きいベタパターンにおいて発生しやすい。
【0050】
なお、中間転写ベルト8が樹脂ベルトである場合と弾性ベルトである場合とで、ドラム上に付着したキャリア周辺での感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の接触状態が異なるため、白紋の発生状況は異なる。より詳細には、中間転写ベルト8が弾性ベルトである場合は中間転写ベルト8がキャリアに沿って変形するため、キャリア周辺のトナーも移動することができ、白紋は発生し難い。
【0051】
(1-3.画像のエッジ部へのキャリア現像に起因する白紋)
ハーフトーンパターンや横線パターン、縦線パターン、チェッカーパターン等のエッジ部分(白地部分)にキャリアが現像されると、中間転写ベルト8への一次転写時に周囲のトナーの移動を阻害する。その結果、キャリアの周辺に白抜け(白紋)が発生する。この場合のキャリアの帯電極性はトナーと逆極性(負極性)である。
【0052】
[2.白紋の抑制メカニズムについて]
上述した白紋を改善する方法として、感光体ドラム1a~1dから中間転写ベルト8への一次転写を行う前に、感光体ドラム1a~1dの表面に除電装置50によって転写前イレース光を照射することが効果的であることを見出した。以下、白紋の抑制メカニズムについて説明する。
【0053】
(2-1.転写前イレース光による白地部キャリア現像に起因する白紋の抑制)
前述したように、例えば画像形成部Paで白地部キャリア現像が発生した場合、画像形成部Paの下流側の画像形成部Pb~Pdで白紋が発生する。そのため、下流側の画像形成部Pb~Pdにおけるトナー像の一次転写性を高めることで、白地部キャリア現像に起因する白紋の発生を抑制することができる。
【0054】
白地部キャリア現像による白紋は、特に、静電潜像に表面電位がV0である部分(白地部)とVLである部分(画像部)の境界(エッジ部分)が多く存在する画像で顕著に発生する。これは、元々エッジ部分の転写性が弱いためである。そこで、転写前イレース光による転写前の光除電を行うことでV0の電位を低下させ、V0とVLの電位差を小さくすることで、一次転写性を向上させることができる。その結果、白紋の発生を抑制する方向に制御できる。
【0055】
なお、白地部キャリア現像による白紋が転写前イレース光による転写前の光除電によって解消しない場合は、上流側の画像形成部Paの白地部電位差(V0-Vdc)を低下させて白地部キャリア現像を抑制する方法もある。但し、この方法では画像形成部Paでの画像かぶりが悪化する可能性があるので注意が必要である。
【0056】
(2-2.転写前イレース光による画像部キャリア現像に起因する白紋の抑制)
画像部キャリア現像が発生した場合、本来は負極性であるキャリアに電荷が注入され、正極性になっている。キャリアに電荷が注入されている状態では、当然、感光体ドラム1a~1dにも電荷注入が発生している。感光体ドラム1a~1dへの電荷注入は、感光体ドラム1a~1dの表面電位を現像直流電圧Vdc(+180V)に近づける方向へ作用するため、画像部電位VL(+20V)は、キャリアが接触している部分だけ上昇することになる。
【0057】
その結果、電荷注入の発生した部分とその周辺部とで画像部電位VLに電位差が生じることとなる。感光体ドラム1a~1d上での電位差はその部分で回り込み電界を発生させることとなり、感光体ドラム1a~1d上のトナーはこの強い回り込み電界の力で感光体ドラム1a~1dに保持される。電荷注入の発生した部分のトナー像が一次転写部へ到達したときも、この回り込み電界がトナーの移動を阻害し、白紋が発生する。
【0058】
ここで、ベタ画像であっても実際にトナーが感光体ドラム1a~1dの表面を隠蔽しているのは70~80%程度であり、定着処理によってトナーが溶融して広がることで紙面上を被覆する。そのため、除電装置50によって転写前イレース光を照射すると、ベタ画像部であっても、転写前イレース光は感光体ドラム1a~1dの表面に十分到達することができる。
【0059】
電荷注入により表面電位が上昇した部分(キャリアが接触している部分)に転写前イレース光が照射されると、その部分の画像部電位VLが低下し、周辺の電位と等しくなる。その結果、トナーの電気的な束縛は解消し、キャリア周辺のトナーも中間転写ベルト8へ移動し易くなる。これにより、画像部キャリア現像による白紋は、転写前イレース光を照射することで解消することができる。但し、照射するイレース光が強すぎると、感光体ドラム1a~1dの電気的なトナー保持力が小さくなりすぎて、文字画像のエッジ部分等でのトナーの散りが多くなる。
【0060】
(2-3.転写前イレース光によるエッジ部へのキャリア現像に起因する白紋の抑制)
画像のエッジ部へのキャリア現像は、エッジ電位差(V0-VL)によって発生するため、転写前イレースによってV0を低下させると感光体ドラム1a~1dへのトナーの付着力が低下し、白紋は解消する。また、この場合は、白地部電位差(V0-Vdc)を低下させることで、画像濃度をある程度維持しながら、白紋を改善することができる。
【0061】
[3.トナー散りの発生メカニズムについて]
ところで、転写前イレース光を照射すると、白紋の発生は抑制されるが、同時にトナー散りが悪化する。そこで、現像直流電圧および転写前イレース光の出力を変化させたときの画像濃度、白紋、トナー散りの発生状況を検証した。試験方法は、図1に示したような試験機において、現像直流電圧、除電装置50の転写前イレース光の出力と、画像濃度、白紋およびトナー散りとの関係について調査した。
【0062】
画像形成条件は、印字速度(プロセス速度)を70枚/分とし、現像ローラー33には外周面をブラスト加工された十点平均粗さ(JIS)5~10μmの外径20mmの現像スリーブ33aを使用した。規制ブレード35は、厚さ1.5mmのステンレス(SUS430)製の磁性ブレードを用い、規制ブレード35と現像ローラー33との距離(規制ギャップ)を0.5±0.03mmとした。現像ローラー33には、80~250Vの直流電圧(Vdcキャリブレーションにより決定)にピークツーピーク値(Vpp)500~1400V(Vacキャリブレーションにより決定)の交流電圧を重畳した現像電圧を印加した。感光体ドラム1a~1dの表面電位(白地部電位)V0を150~320V(白地部電位差:V0-Vdc=70Vに固定)、画像部電位VLを20Vとした。
【0063】
感光体ドラム1a~1dは、比誘電率11のアモルファスシリコン(a-Si)感光体を用い、感光体ドラム1a~1dに対する現像ローラー33の周速比を1.8(対向位置でトレール回転)、感光体ドラム1a~1d-現像ローラー33間の距離(DS間距離)を0.375±0.025mmとした。また、感光体ドラム1a~1dの表面電位(明電位)を160~350V(Vdcキャリブレーションにより決定、Vo-Vdc=70V)、画像部電位(暗電位)を20Vとした。中間転写ベルト8には弾性層を有しない樹脂ベルトを使用した。
【0064】
除電装置50は、波長640nmのイレース光を出射するLED50b(R8C/2C、EVERLIGHT社製)を基板50aに実装したものを用いた。
【0065】
(画像濃度、白紋、トナー散りの評価方法)
白紋の大きさは、標準的なもので横1.5mm、縦0.5mm程度である。そこで、6cm幅のソリッド(ベタ)画像を用いて、白紋の発生状態を検知した。白紋の発生状態は画像濃度センサー25(スポット径φ3mm)を用いて0.7mmピッチで基準画像の濃度を測定した。そして、画像濃度が閾値より低下した場合、もしくは、一定幅で濃度低下が発生した場合は、白紋が発生したと判定した。
【0066】
評価基準は、画像濃度は目標濃度が出ているものを○、目標濃度が出ていないものを×とした。白紋は発生個数が0個の場合は○、1~2個認知すると△、3個以上認知すると×とした。トナー散りはブラーが目標値(0.24)以内のものを○、目標値を超えるものを×とした。評価結果を現像直流電圧Vdc、転写前イレース光の入力電流と併せて表1に示す。
【0067】







【表1】
【0068】
表1に示すように、画像濃度を確保しており、且つ白紋の発生が無いもの(ハッチング箇所)は、転写前イレース光の出力を上げていくにつれて現像直流電圧Vdcのマージン(裕度)が拡がることが分かる。また、マージンに影響はしていないが、転写前イレース光の出力を上げていくにつれて文字散りが悪化していくことも分かる。
【0069】
図7は、トナー散りの発生メカニズムの説明図であり、それぞれ転写前イレース光の照射前の状態(図7(a))、転写前イレース光の照射直後の状態(図7(b))、一次転写時の状態(図7(c))を示している。図8は、文字画像の写真であり、それぞれ転写前イレース光をOFFにした場合(図8(a))、転写前イレース光の入力電流を10mAにした場合(図8(b))を示している。
【0070】
転写前イレース光を照射する前は、図7(a)に示すように、露光によって感光体1a~1d表面電位(ハッチング領域)の減衰した部分にトナーTが保持されている。イレース光を照射すると、図7(b)に示すように、トナーTの周囲の表面電位が低下し、トナーTが保持されている部分の電位とほぼ等しくなっている。その結果、一次転写時には感光体1a~1d上のトナーTに対する電気的な保持力が無くなり、図7(c)に示すように、中間転写ベルト8上に一次転写されたトナーが拘束されずに散ってしまう。
【0071】
これにより、転写前イレース光をオフにした場合は、図8(a)のように鮮明な文字画像となるが、転写前イレース光を照射した場合は、図8(b)のように輪郭がぼやけた文字画像となる。
【0072】
図9図10は、それぞれ転写前イレース光の出力とブラーおよび線幅との関係を示すグラフである。ブラー(Blur)は画像品質分析において使用される、ライン画像におけるトナーの散り具合を示す用語であり、ライン画像から散ったトナーの割合を数値化したものである。図9および図10に示すように、ライン画像を形成するドット数が1ドット(〇のデータ系列)、2ドット(△のデータ系列)、4ドット(◇のデータ系列)、8ドット(×のデータ系列)と大きくなるにつれて、また転写前イレース光の出力が大きくなるにつれてブラーの発生が顕著となる。また、線幅も大きくなる。
【0073】
そこで、本実施形態では、白紋および文字画像のトナー散りの両方が発生しない範囲で転写前イレース光の出力を制御する。ここで、文字画像のトナー散りレベルは直接計測することはできないため、白紋キャリブレーション(白紋解消制御)の実行時に白紋およびトナー散りの測定用の基準画像を形成する。形成された基準画像を転写紙Pに出力して画像読取部21(図1参照)で読み取り、読み取られた画像データを解析することにより白紋の有無および線幅(もしくはブラー)を測定する。基準画像の一例を図11図12に示す。
【0074】
図11は、白紋測定用の基準画像P1の一例である。基準画像P1は、それぞれ幅8mmのソリッドパターンP1a、横線パターンP1bで構成される。横線パターンP1bは、0.1mmのライン画像を0.1mm間隔で印刷したものである。
【0075】
図12は、線幅、ブラー測定用の基準画像P2の一例である。基準画像P2は、0.1mm、0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mmのライン画像を所定間隔で印刷した横線パターンp2aおよび縦線パターンンP2bで構成される。
【0076】
制御部90は、基準画像P1、P2の解析データを反映させて転写前イレース光を調整する。これにより、転写前イレース光の出力を白紋およびトナー散りの発生しないレベルに設定することができる。
【0077】
さらに、中間色(二次色)は各色(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック)のドットの重ね合わせにより作成されるため、画像形成部Pa~Pdにおいてドットの散り具合が変化すると色調変動を起こす要因となる。そこで、複数の画像形成部Pa~Pd(現像装置3a~3dおよび除電装置50)を備える場合は、少なくとも2以上の画像形成部Pa~Pdにおいて転写前イレース光の出力調整を同時に行うことが好ましい。
【0078】
図13は、本実施形態の画像形成装置100において実行される白紋キャリブレーションの制御例を示すフローチャートである。必要に応じて図1図12を参照しながら、図13のステップに沿って白紋キャリブレーションの実行手順について説明する。なお、白紋キャリブレーションの開始時には転写前イレース光の出力は基準値(デフォルト)に設定されているものとする。白紋キャリブレーションの実行タイミングは、画像形成装置100の電源投入時や省電力(スリープ)モードからの復帰時、前回の白紋キャリブレーションの実行からの累積印刷枚数が所定枚数に到達した時などが挙げられる。
【0079】
先ず、制御部90は、基準画像を出力する(ステップS1)。具体的には、転写前イレース光の出力(入力電流)を0mA(オフ状態)から複数段階に変化(オン状態)させて形成した基準画像を中間転写ベルト8に一次転写し、さらに転写紙Pに二次転写する。
【0080】
次に、転写紙P上に出力された基準画像を画像読取部21に載置して読み取りを行う(ステップS2)。読み取られた画像データは一時記憶部94に送信される。制御部90は、一時記憶部94に送信された画像データを解析する(ステップS3)。解析結果の一例を図14図16に示す。
【0081】
図14は、基準画像P1の解析から得られた白紋の発生状況を示すグラフである。図14に示すように、転写前イレース光の入力電流が0mA(オフ状態、点線)のときは濃度変動が3回発生しているため白紋発生は3個、転写前イレース光の入力電流が5mA(破線)のときは濃度変動が1回発生しているため白紋発生は1個、転写前イレース光の入力電流が10mA(実線)のときは濃度変動が発生していないため白紋発生は無しとなる。
【0082】
図15および図16は、それぞれ基準画像P2の解析から得られたブラーの発生状況および線幅の増加を示すグラフである。本実施形態では、画像評価システム(PIAS-II、QEA社製)を使用して線幅およびブラーを測定した。図15に示すように、転写前イレース光の入力電流が0mA(オフ状態、点線)、5mA(破線)、10mA(実線)と上昇するにつれてブラーが増加していることがわかる。
【0083】
図16に示すように、転写前イレース光の入力電流が0mA(オフ状態、点線)のときは線幅の測定値(縦軸)は線幅の設定値(横軸)と同一であるが、転写前イレース光の入力電流が5mA(破線)、10mA(実線)と上昇するにつれて線幅の測定値が設定値よりも増加していることがわかる。
【0084】
次に、制御部90は、白紋、ブラー、および線幅が目標値内となる転写前イレース光の出力が有るか否かを判定する(ステップS4)。目標値内となる転写前イレース光の出力が有る場合は(ステップS4でYes)、白紋、ブラー、および線幅が目標値となる転写前イレース光の出力を適正値として設定して(ステップS5)処理を終了する。
【0085】
一方、白紋、ブラー、および線幅が目標値内となる転写前イレース光の出力がない場合は(ステップS4でNo)、制御部90は、転写前イレース光の出力を変更して(ステップS6)ステップS1に戻り、以下同様の手順を繰り返す(ステップS1~S5)。
【0086】
図13に示した制御例によれば、転写前イレース光の出力を複数段階に変化させて基準画像を形成し、転写紙Pに出力する。そして、出力された基準画像を画像読取部21で読み取り、得られた画像データから白紋、ブラー、および線幅が目標値内となるように転写前イレース光の出力を調整する。
【0087】
これにより、実際の白紋の発生状況を転写前イレース光の出力の設定に反映させることができる。従って、転写前イレース光の出力を、キャリア現像による白紋と文字画像のトナー散りの両方を抑制可能な範囲に精度よく設定することができる。
【0088】
さらに、2以上の画像形成部Pa~Pdにおいて転写前イレース光の出力調整を同時に行うことにより、中間色(二次色)の色調変動も抑制することができる。
【0089】
図17は、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置100の画像形成部Pa周辺の構成を示す拡大図である。本実施形態では、画像形成部Pb(図1参照)の感光体ドラム1bに転写前イレース光(図17の破線矢印)を照射する除電装置50は、画像形成部Paの感光体ドラム1aに転写後イレース光(図17の白矢印)を照射する。同様に、画像形成部Pc、Pd(図1参照)の感光体ドラム1c、1dに転写前イレース光を照射する除電装置50は、画像形成部Pb、Pcの感光体ドラム1b、1cに転写後イレース光を照射する。また、画像形成部Paの感光体ドラム1aに転写前イレース光を照射する除電装置50の上流側に汚染防止フィルム80を配置している。画像形成装置100の他の部分の構成は第1実施形態と同様である。
【0090】
この構成によれば、転写前イレース光による一次転写前の感光体ドラム1b(1c、1d)の表面の除電と、転写後イレース光による一次転写後の感光体ドラム1a(1b、1c)の表面の除電とを一つの除電装置50で行うことができる。
【0091】
一つの除電装置50を用いて上流側の感光体ドラム1a(1b、1c)の転写後の除電と下流側の感光体ドラム1b(1c、1d)の転写前の除電を行う場合、転写前イレース光の出力を調整すると転写後イレース光の出力も変化してしまう。そのため、除電装置50の位置を、中間転写ベルト8の移動方向(図17の左右方向)に調整可能としておく。これにより、例えば下流側の感光体ドラム1b(1c、1d)に対する転写前イレース光の出力を低下させたときに、除電装置50を上流側の感光体ドラム1a(1b、1c)に近づけることで、転写後イレース光の照射による除電効果を低下させずに転写前イレース光による除電効果を低下させることができる。
【0092】
また、感光体ドラム1aに転写前イレース光を照射する除電装置50(図17の左側の除電装置50)は、中間転写ベルト8に沿った空気流が現像ローラー33と一次転写ローラー6aの間(転写前領域)に流れ込み、トナー飛散を生じさせ易い。そこで、本実施形態では、中間転写ベルト8の移動方向に対して除電装置50の上流側に可撓性の汚染防止フィルム80を配置している。
【0093】
汚染防止フィルム80は、一端側(基端側)が現像装置3aの長手方向全域に固定されており、他端側(自由端側)を中間転写ベルト8に接触している。これにより、画像形成部Paの転写前領域への空気流の流れ込みを抑え、トナー飛散による除電装置50の汚染を抑制することができる。
【0094】
その他本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記各実施形態では画像形成装置100として図1に示したようなカラー複合機を例示し、転写紙P上に出力された基準画像を画像読取部21で読み取り、読み取られた基準画像の画像データを解析することにより白紋および文字画像のトナー散りの両方が発生しない範囲で転写前イレース光の出力を制御しているが、これに限定されるものではない。
【0095】
例えば、画像形成装置100が画像読取部21を持たないカラープリンターの場合、図18に示すように、中間転写ベルト8上に形成されたトナー像を読み取るCIS(Contact Image Sensor)81を配置し、CIS81によって読み取られた基準画像の画像データを制御部90に送信して解析することもできる。
【0096】
また、CIS81によって読み取られた基準画像の画像データを、制御部90を介して外部の画像解析装置101に送信することもできる。そして、画像解析装置101による画像データの解析結果を制御部90に再送信し、白紋、ブラー、および線幅が目標値内となるように転写前イレース光の出力を調整する画像形成システムとすることもできる。
【0097】
或いは、図19に示すように、画像形成装置100の画像形成部Pa~Pdにおいて転写紙P上に出力された基準画像を外部の画像読取装置(スキャナー)102で読み取り、読み取られた基準画像の画像データを外部の画像解析装置101に送信して解析する。そして、画像解析装置101による画像データの解析結果を画像形成装置100にフィードバックし、白紋、ブラー、および線幅が目標値内となるように転写前イレース光の出力を調整する画像形成システムとすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いる中間転写方式の画像形成装置に利用可能である。本発明の利用により、キャリア現像による白紋の発生効果的に抑制するとともに、転写前イレース光によるトナー散りや色調変動も抑制可能な画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0099】
Pa~Pd 画像形成部
1a~1d 感光体ドラム(像担持体)
2a~2d 帯電装置
3a~3d 現像装置
5 露光装置
6a~6d 一次転写ローラー(一次転写部材)
8 中間転写ベルト
21 画像読取部
25 画像濃度センサー
33 現像ローラー(現像剤担持体)
50 除電装置
80 汚染防止フィルム
81 CIS(画像読取部)
90 制御部
100 画像形成装置
101 画像解析装置
102 画像読取装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19