(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180805
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】空調用コントローラのセンサ検査装置、センサ検査方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/49 20180101AFI20231214BHJP
【FI】
F24F11/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094408
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】青木 駿弥
(72)【発明者】
【氏名】杉山 渉
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 貴弘
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA38
3L260CA12
3L260CB63
3L260EA07
3L260FC34
3L260GA02
3L260GA17
(57)【要約】
【課題】空調用コントローラ2の筐体20の内部に設けられ、温度および湿度の少なくとも一方に関する計測を行う内部センサ21を、完成品の状態で迅速に検査することができる空調用コントローラ2のセンサ検査装置1、センサ検査方法を提供する。
【解決手段】実施形態のセンサ検査装置1は、空調用コントローラ2に対して空気の乱流を発生させる少なくとも1つのファン装置7と、空調用コントローラ2の筐体20の外部であって、ファン装置7によって発生する乱流の中に位置する少なくとも1つの外部センサ6と、ファン装置7を駆動した状態で計測した外部センサ6の計測結果および内部センサ21の計測結果を比較可能な状態で提示する提示部とを備え、空調用コントローラ2の内部に設けられている内部センサ21の検査を、完成品の状態で可能にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用コントローラの筐体の内部に設けられ、温度および湿度の少なくとも一方に関する計測を行う内部センサを、完成品の状態で検査するためのセンサ検査装置であって、
前記空調用コントローラに対して空気の乱流を発生させる少なくとも1つのファン装置と、
前記空調用コントローラの筐体の外部であって、前記ファン装置によって発生する乱流の中に位置する少なくとも1つの外部センサと、
前記ファン装置を駆動した状態で計測した前記外部センサの計測結果および前記内部センサの計測結果を比較可能な状態で提示する提示部と、
を備える空調用コントローラのセンサ検査装置。
【請求項2】
前記提示部は、前記内部センサの計測結果と前記外部センサの計測結果とが所定の範囲内で一致しているか否かを表示する、または、前記内部センサの計測結果と前記外部センサの計測結果とをそれぞれ表示する請求項1記載の空調用コントローラのセンサ検査装置。
【請求項3】
前記空調用コントローラおよび前記外部センサを収容する収容空間を備え、
前記ファン装置は、前記収容空間内において空気の乱流を発生させる請求項1記載の空調用コントローラのセンサ検査装置。
【請求項4】
前記収容空間の内部の温度、または、前記収容空間の内部の湿度のうち少なくとも一方を調整可能な調整部を備える請求項3記載の空調用コントローラのセンサ検査装置。
【請求項5】
前記筐体は、当該筐体の内部に繋がっている少なくとも1つの開口部を有するものであり、
前記ファン装置は、前記開口部を経由して前記筐体の内部に空気の乱流を発生させ、
前記外部センサは、前記筐体の外部であって、前記開口部を通って前記筐体の内部に空気が進入する入口側、または、前記筐体の内部から前記開口部を通って空気が排出される出口側の少なくとも一方に配置されている請求項1記載の空調用コントローラのセンサ検査装置。
【請求項6】
前記ファン装置によって発生する空気の流れを前記開口部に向けて案内する案内部を備える請求項5記載の空調用コントローラのセンサ検査装置。
【請求項7】
空調用コントローラの筐体の内部に設けられている内部センサを完成品の状態で検査するための検査方法であって、
前記空調用コントローラに対して空気の乱流を発生させる工程と、
空気の乱流が発生している状態で前記内部センサによる計測を行う工程と、
空気の乱流が発生している状態で、前記空調用コントローラの外部であって空気の乱流の中に位置するように設けられている外部センサにより計測を行う工程と、
前記内部センサの計測結果および前記外部センサの計測結果を比較可能な状態で提示する工程と、を含む空調用コントローラの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調用コントローラの筐体の内部に設けられ、温度および湿度の少なくとも一方に関する計測を行う内部センサを、完成品の状態で検査するための空調用コントローラのセンサ検査装置、センサ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、室内の空調は、例えば特許文献1に示されているように、室内の温度や湿度を計測することによって行われる。そして、このようなセンサは、例えば室内の壁に設置される空調用コントローラの筐体内に設けることがある。なお、ここでいう空調用コントローラとは、空調の開始操作や終了操作の入力、設定温度の入力、室温の表示などを行うための比較的小型の電子機器を意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような空調用コントローラは、製品出荷前に検査が行われる。このとき、空調用コントローラの筐体内にセンサを設けた場合には、筐体内のセンサの計測結果と、筐体外に設けられているセンサの計測結果とを比較することにより、筐体内のセンサが正しく動作するか否かの検査も行われることになる。以下、筐体内に設けられているセンサを内部センサと称し、筐体外に設けられているセンサを外部センサと称する。
【0005】
ところで、内部センサの検査は、完成品の状態で行うことが望ましい。これは、完成品の状態で検査をすれば、検査後に組み立て作業などが発生しないことから、不具合品が出荷されてしまう可能性を大きく低減できると考えられるためである。
【0006】
しかしながら、内部センサが正しく動作しているか否かを検査するためには、筐体の内部の環境と外部の環境とを一致させる必要がある。その一方で、内部センサは、空調用コントローラの筐体内に設けられているため、外気つまりは外部センサが計測する環境から隔離された状態になっている。その結果、空調用コントローラを検査場所に設置しても直ぐには検査を行うことができず、筐体の内部の環境と、筐体の外部の環境とが一致するまで待機する必要があり、検査時間の短縮や生産性の向上を図る上で障害となっていた。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、空調用コントローラの筐体の内部に設けられ、温度および湿度の少なくとも一方に関する計測を行う内部センサを、完成品の状態で迅速に検査することができる空調用コントローラのセンサ検査装置、センサ検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明では、センサ検査装置は、空調用コントローラの筐体の内部に設けられ、温度および湿度の少なくとも一方に関する計測を行う内部センサを完成品の状態で検査するためのものであって、空調用コントローラに対して空気の乱流を発生させる少なくとも1つのファン装置と、空調用コントローラの筐体の外部であって、ファン装置によって発生する乱流の中に位置する少なくとも1つの外部センサと、ファン装置を駆動した状態で計測した外部センサの計測結果および内部センサの計測結果を比較可能な状態で提示する提示部と、を備えている。
【0009】
一般的に、乱流は、層流と比べると、空気の流れによって輸送される熱量が大きいと考えられる。そのため、ファン装置によって強制的に空調用コントローラに空気の流れを形成するとともに、その空気の流れを乱流とすることにより、空調用コントローラよりも空気の温度の方が低い場合には熱を奪い易くなり、空気の温度の方が高い場合には空調用コントローラに熱を与え易くなる。
【0010】
つまり、乱流を発生させることにより、空調用コントローラを分解したりすることなく、空調用コントローラの内部の環境と外部の環境とを平衡状態に遷移させ易くすることができる。したがって、空調用コントローラの筐体の内部に設けられ、温度および湿度の少なくとも一方に関する計測を行う内部センサを、完成品の状態で迅速に検査することができる。
【0011】
請求項2に記載した発明では、提示部は、内部センサの計測結果と外部センサの計測結果とが所定の範囲内で一致しているか否かを表示する、または、内部センサの計測結果と外部センサの計測結果とをそれぞれ表示する。これにより、試験を行う作業者は、試験結果を明確に把握することができる。
【0012】
この場合、提示部は、例えば製品のロット番号や試験結果などを管理する管理装置との間を通信可能に接続して各計測結果を送信し、外部の管理装置側で内部センサの計測結果と外部センサの計測結果とが所定の範囲内で一致しているか否かを表示したり、内部センサの計測結果と外部センサの計測結果とをそれぞれ表示したりする構成とすることができる。
【0013】
請求項3に記載した発明では、センサ検査装置は、空調用コントローラおよび外部センサを収容する収容空間を備え、ファン装置は、収容空間内において空気の乱流を発生させる。これにより、検査をする際には、室内の空調などの外乱を受けることなく検査を行うことができ、検査の精度を高めることができる。また、一般的な室内に比べて容積が小さい収容空間内は、温度や湿度を均等にしやすいため検査の精度を向上させることができる。また、小さな収容空間内で乱流を発生させて筐体の内部の環境と外部の環境とを整えればよいことから、検査に必要となる設備の簡素化および簡略化を期待することができる。
【0014】
請求項4に記載した発明では、センサ検査装置は、収容空間の内部の温度、または、収容空間の内部の湿度のうち少なくとも一方を調整可能な調整部を備えている。これにより、例えば温度や湿度を変化させた複数の環境で検査を行うことにより、内部センサが正しく動作しているか否かを、より精度よく検査することができる。
【0015】
請求項5に記載した発明では、センサ検査装置は、筐体の内部に繋がっている少なくとも1つの開口部を有する空調用コントローラを検査対象とし、ファン装置は、開口部を経由して筐体の内部に空気の乱流を発生させ、外部センサは、筐体の外部であって、開口部を通って筐体の内部に空気が進入する入口側、または、筐体の内部から開口部を通って空気が排出される出口側の少なくとも一方に配置されている。これにより、外部センサと内部センサとが概ね一致した環境を計測することになり、検査の精度を向上させることができる。
【0016】
この場合、外部センサを筐体に空気が進入する入口側と、内部センサが計測した環境と同じ空気が筐体から排出される出口側とに配置することにより、外部センサと内部センサとが概ね一致した環境を計測していることを確認することもでき、検査の精度を向上させることができる。
【0017】
請求項6に記載した発明では、センサ検査装置は、ファン装置によって発生する空気の流れを筐体の開口部に向けて案内する案内部としての案内板を備えている。これにより、ファン装置が発生させた空気の乱流を、空調用コントローラの開口部に向けて集中的に案内することができ、迅速に筐体の内部の環境と外部の環境とを一致させることができる。
【0018】
請求項7に記載した発明では、空調用コントローラに対して空気の乱流を発生させる工程と、空気の乱流が発生している状態で内部センサによる計測を行う工程と、空気の乱流が発生している状態で、空調用コントローラの外部であって空気の乱流の中に位置するように設けられている外部センサにより計測を行う工程と、内部センサの計測結果および外部センサの計測結果を比較可能な状態で提示する工程と、を含む空調用コントローラの検査方法を採用することにより、空調用コントローラの筐体の内部に設けられている内部センサを完成品の状態で迅速に検査することができるなど、上記した他の請求項に係る発明と同様の効果を得ることができる。
【0019】
上記した請求項1から7に記載した発明は、阻害要因が無い限り、任意の2つ以上の発明を互いに組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態におけるセンサ検査装置の機械的構成例を模式的に示す図
【
図2】センサ検査装置の電気的構成例を模式的に示す図
【
図3】空調用コントローラの機械的構成例を模式的に示す図
【
図4】空調用コントローラの設置態様を模式的に示す図
【
図6】層流イメージと乱流イメージとを模式的に示す図
【
図7】外部センサの他の配置例を模式的に示す図その1
【
図8】外部センサの他の配置例を模式的に示す図その2
【
図9】空調用コントローラに対して乱流を発生させる他の態様を模式的に示す図
【
図10】調整部を設けた場合の電気的構成例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態のセンサ検査装置1は、外形が概ね直方体状に形成されている。以下、センサ検査装置1については、正面視における図示左右の向きを左右、図示上下の向きを上下、側面視における図示上下の向きを前後として説明する。このセンサ検査装置1は、内部に空調用コントローラ2を収容する収容空間3を有している。
【0022】
この収容空間3は、一例ではあるが、概ね250mm(W)×200mm(D)×120mm(H)程度の容積で形成されている。そして、収容空間3は、上部に透明な窓部材4が設けられており、窓部材4を開放することによって空調用コントローラ2の出し入れが可能になるとともに、窓部材4を閉鎖することによって簡易的に密閉された状態になる。つまり、センサ検査装置1は、検査を行う際、収容空間3内を外部から隔離した状態にすることができる。
【0023】
さて、収容空間3内には、載置部5、載置部5の左方に配置されている外部センサ6、外部センサ6の左方に配置されているファン装置7、および、前端側に配置されている制御回路部8などが設けられている。ただし、各部の配置は一例であり、これに限定されない。
【0024】
載置部5は、検査対象となる空調用コントローラ2を載置するために平板状に形成されており、その一部に、上下方向に貫通していて空調用コントローラ2の背面側に設けられている接続箇所への配線等の接続を可能にする長孔5aが形成されている。なお、接続箇所は、例えばケーブルを接続するコネクタや接点端子などで構成されている。
【0025】
外部センサ6は、本実施形態では、収容空間3内の温度と湿度とを計測する温湿度センサによって構成されている。ただし、検査対象が温度であれば外部センサ6を温度センサで構成することができるし、検査対象が湿度であれば外部センサ6を湿度センサで構成することができる。この外部センサ6は、載置部5とファン装置7との間、つまりは、ファン装置7が発生させる空気の流れにおいて空調用コントローラ2よりも上流側に位置している。
【0026】
ファン装置7は、本実施形態ではいわゆるシロッコファンで構成されており、収容空間3内におい空調用コントローラ2に向かう空気の流れを形成する。このファン装置7は、後述するように、空調用コントローラ2に対して空気の乱流を発生可能なように、送風能力や空調用コントローラ2までの距離などを適宜選択あるいは設定されている。つまり、外部センサ6およびファン装置7は、空調用コントローラ2に対して所定の位置関係となるように配置されている。
【0027】
具体的には、外部センサ6は、平面視にて示すように、外気を導入するための複数の導入孔6aが上面に形成されており、その上面が概ね載置部5と同じ高さとなるように配置されている。また、外部センサ6は、空調用コントローラ2とファン装置7との間に位置している。つまり、外部センサ6は、ファン装置7によって発生した黒抜きの矢印F1にて示す乱流の中に位置することになる。より具体的に言えば、外部センサ6は、乱流の中、もしくは、導入孔6aを経由して乱流が流入可能な位置に配置されている。
【0028】
このファン装置7は、正面視にて示すように、空気の吹き出し口7aが、載置部5に載置された空調用コントローラ2の側方と概ね同じ高さとなるように配置されている。また、ファン装置7は、平面視にて示すように、空気の吹き出し口7aが、概ね載置部5に載置された空調用コントローラ2の概ね図示左下の角部と対向するように配置されている。なお、後述するように、本実施形態の空調用コントローラ2は、図示左下の角部に内部に繋がる開口部が設けられている。
【0029】
制御回路部8は、
図2に電気的構成として示すように、制御部10、電源回路11、操作ボタン12、表示ランプ13などにより構成されている。ただし、
図2に示す制御回路部8の構成は一例である。制御部10は、マイクロコンピュータで構成されており、センサ検査装置1の全体を制御する。具体的には、制御部10は、ファン装置7の駆動の制御、外部センサ6による計測結果の取得、空調用コントローラ2との間で通信することによる内部センサ21による計測結果の取得などの処理を行う。
【0030】
また、制御部10は、後述するように、空調用コントローラ2に設けられている内部センサ21による計測結果と外部センサ6による計測結果とを比較することにより、内部センサ21が正しく動作しているか否かを検査する処理、検査結果を提示する処理とを実行する。なお、内部センサ21が正しく動作しているとは、内部センサ21が設置されている場所の温度や湿度を正しく計測できていることを意味している。
【0031】
操作ボタン12は、
図1に示すように、例えば検査を開始するためのSTARTボタン12a、検査を終了するためのSTOPボタン12bなどで構成されている。また、表示ランプ13は、内部センサ21が正しく動作している場合に点灯するPASSランプ13a、内部センサ21に異常がある場合に点灯するFAILランプ13bなどで構成されている。本実施形態の場合、制御回路部8は、内部センサ21の計測結果と外部センサ6の計測結果とが所定の範囲内で一致している場合に内部センサ21が正しく動作していると判定する。つまり、制御部10および表示ランプ13は、ファン装置7を駆動した状態で計測した外部センサ6の計測結果および内部センサ21の計測結果を比較可能な状態で提示する提示部として機能する。ただし、
図1に示すボタンやランプの数や配置はこれに限定されない。
【0032】
空調用コントローラ2は、
図3に示すように、概ね薄い直方体状に形成された筐体20を有しており、その筐体20の内部に内部センサ21が配置されている。以下、空調用コントローラ2については、正面視における図示左右の向きを左右、図示上下の向きを上下、側面視における図示左右の向きを前後として説明する。
【0033】
内部センサ21は、筐体20内の左下部分に配置されており、その側方および下方には、筐体20の内部と外部とに繋がっている複数のスリット22がそれぞれ設けられている。そして、空調用コントローラ2を例えば室内の壁面に設置した場合には、矢印F2にて示すように、自然対流によって底面のスリット22から側方のスリット22に空気が流れることになる。本実施形態では、内部センサ21は、温度と湿度とを計測する温湿度センサによって構成されている。なお、内部センサ21は、温度検出用として例えば測温抵抗体、熱電対、放射温度計、サーミスター測温体などの検温素子を用いることができるし、湿度検出用として例えば高分子抵抗方式や高分子静電容量方式の検湿素子などを用いることができる。
【0034】
このスリット22は、外気を導入および内部の空気を排出するためのものであって、筐体20の内部に繋がっている開口部に相当する。また、
図3では、スリット22を見やすくするために意図的に大きく記載しているが、近年では、空調用コントローラ2の小型化や軽量化に伴って筐体20が薄型化していること、また、意匠性の観点から、スリット22を小さくする傾向にある。なお、スリット22の位置や数は、
図3に示したものに限定されず、例えば筐体20の上面に設けたり、後面に設けたりする構成とすることができる。
【0035】
さて、空調用コントローラ2は、一般的に、運転状態や設定温度、実際の室温などを表示する表示器23が設けられており、筐体20の内部には、内部センサ21の計測結果を取得する処理、表示器23の表示を制御する処理、外部の空調装置との間で通信する処理などを行う端末側制御部24が設けられている。この端末側制御部24は、例えばマイクロコンピュータで構成されている。また、表示器23は、本実施形態ではタッチパネル式のものを想定しており、表示回路25によって駆動され、運転時には操作用のアイコンなども表示される。なお、空調用コントローラ2は、利用者が操作するボタンを備えたものであってもよい。
【0036】
これら表示器23や端末側制御部24あるいは表示回路25などの電気部品は、運転時に発熱すると考えられる。そして、その熱が筐体20内に篭ると、内部センサ21の計測結果と実際の外気温とにずれが生じ、空調制御時の誤差要因となる。そのため、筐体20の内部は、底面から上方に向けて延びている仕切壁26aと、側面から右方に延びている仕切壁26bとによって、内部センサ21側と端末側制御部24のような他の電気部品側とが仕切られている。
【0037】
そのため、空調用コントローラ2では、他の電気部品の発熱が内部センサ21に影響を与えることを抑制しつつ、筐体20の異なる2面に設けられているスリット22の間を空気が流れるように、つまりは、底面のスリット22から側面のスリット22に向かうように空気の流れが誘導されている。なお、スリット22を設けても必ずしも筐体20の内部の環境が外部の環境と一致するとは限らないことから、空調用コントローラ2は、内部センサ21が正しく動作していることを前提として、内部センサ21によって計測された例えば温度を、運転時の電気部品からの発熱を考慮して補正することができる。
【0038】
この空調用コントローラ2は、
図4に示すように、センサ検査装置1の収容空間3に収容された状態で検査が行われる。なお、A-A線破断視は、
図1におけるA-A線に沿った破断面を模式的に示すものであり、B-B線破断視は、
図1におけるB-B線に沿った破断面を模式的に示すものである。
【0039】
載置部5に載置した状態の空調用コントローラ2の左方側には、A-A線破断視に示すように、概ね空調用コントローラ2の前面(図示上方側の面)に対応した高さで送風ファン側に延びているとともに、B-B線破断視に示すように空調用コントローラ2の底面(図示右方側の面)よりも前方(図示右方)において収容空間3の下端に向かって曲げられている案内板30が設けられている。
【0040】
この案内板30は、外部センサ6の上面とともに、ファン装置7から噴き出された空気を、空調用コントローラ2のスリット22に向けて集中的に案内する案内部に相当する。換言すると、センサ検査装置1は、案内板30と外部センサ6とによって、ファン装置7からの空気を空調用コントローラ2に効率的に集中させるダクトのような機能を実現している。
【0041】
次に、上記した構成の作用および効果について説明する。
空調用コントローラ2は、内部センサ21が正しく温度を検出できているか否かの検査が行われる。この場合、一般的には、筐体20の内部の温度や湿度を、筐体20の外部の温度や湿度と一致させることにより、つまりは、筐体20の内部の環境と外部の環境とを一致させることにより検査が行われる。そして、そのような検査は、製品出荷前に、完成品の状態で行うことが望ましい。これは、完成品の状態で検査をすれば、検査後に組み立て作業などが発生しないことから、不具合品が出荷されてしまう可能性を大きく低減できると考えられるためである。
【0042】
しかし、内部センサ21は空調用コントローラ2の筐体20内に設けられていることから、外気つまりは外部センサ6が計測する環境からいわば隔離された状態になっている。そのため、空調用コントローラ2を検査場所に設置しても、筐体20の内部の環境と外部の環境が異なっていることが想定されるため、直ぐには検査を行うことができず、筐体20の内部の環境と外部の環境とが一致するまで待機する必要がある。このため、検査時間の短縮や生産性の向上を図る上で障害となっていた。
【0043】
そこで、本実施形態では、空調用コントローラ2の筐体20の内部に設けられ、温度および湿度の少なくとも一方に関する計測を行う内部センサ21を、完成品の状態で迅速に検査することができるようにしている。
【0044】
センサ検査装置1は、
図5に示す検査方法の手順に従って、完成品の空調用コントローラ2の筐体20の内部に設けられている内部センサ21を検査している。なお、
図5は、1つの空調用コントローラ2の試験手順を示している。具体的には、空調用コントローラ2の試験では、まず、空調用コントローを収容空間3に収容する(S1)。このとき、空調用コントローラ2は、載置部5に載置されるとともに制御部10との通信用のケーブルなどが接続される。
【0045】
続いて、窓部を閉鎖した後、ファン装置7を駆動して(S2)、各センサによる計測を開始する(S3)。センサ検査装置1の場合、STARTボタン12aを押すことにより、ファン装置7が駆動され、外部センサ6により計測が開始され、空調用コントローラ2に通電されて内部センサ21による計測が開始される。なお、各センサの計測結果は制御部10によって適宜取得されている。
【0046】
このステップS2は、空調用コントローラ2に対して空気の乱流を発生させる工程に相当し、ステップS3は、空気の乱流が発生している状態で内部センサ21による計測を行う工程、および、空気の乱流が発生している状態で、空調用コントローラ2の外部であって空気の乱流の中に位置するように設けられている外部センサ6により計測を行う工程に相当する。
【0047】
さて、ファン装置7は、上記したように空調用コントローラ2に対して乱流を発生させる。本実施形態の場合、ファン装置7から送風される空気の流れのレイノルズ数(Re)が、臨界レイノルズ数(Rec=2300)を超えた状態になっていることを乱流としている。これは、センサ検査装置1の場合、上記したように、ファン装置7と空調用コントローラ2との間が疑似的なダクトで接続された状態となっているためである。なお、ファン装置7からの空気の流れのレイノルズ数が十分に大きければ、乱流とみなすことができる。また、筐体20の内部に設けられている内部センサ21や仕切壁26あるいは電気部品により、筐体20の内部に乱流を発生させた状態で検査することもできる。
【0048】
さて、一般的に、乱流は、層流に比べて空気の流れによって輸送される熱量が大きいと考えられる。具体的には、
図6に層流イメージとして示すように、黒抜きの矢印F0にて示す空気の流れが空調用コントローラ2の筐体20に対して層流(L)となる場合の熱交換量が白抜きの矢印H0で模式的に示す大きさであったとする。これに対して、乱流イメージとして示すように、黒抜きの矢印F1にて示す空気の流れが空調用コントローラ2の筐体20に対して乱流(T)となる場合の熱交換量は、周知のように、白抜きの矢印H1で模式的に示したように層流(L)の場合の熱交換量よりも大きくなると考えられる。そのため、空調用コントローラ2の筐体20に対して乱流を発生させることにより、筐体20の内部から熱を奪いやすくなる、あるいは、筐体20の内部に熱を与え易くなることから、筐体20の内部の環境と外部の環境とを平衡状態に移行させ易くなる。
【0049】
さらに、本実施形態においては、空調用コントローラ2の筐体20にスリット22を設け、乱流が筐体20の側面のスリット22を経由して筐体20の内部に進入するとともに、筐体20の異なる面ここでは底面のスリット22を経由して筐体20の外部に排出される。これにより、さらに迅速に、筐体20の内部の環境を外部の環境と一致させることが可能になる。
【0050】
また、本実施形態では、概ね密閉された収容空間3内で検査を行うことから、室内の空気の流れなどの外乱を受けることなく検査を行うことができる。また、収容空間3は一般的な室内に比べて圧倒的に小さいと想定されることから、一般的な室内に比べて容積が小さい収容空間3内は、温度や湿度が均等にし易いと考えられるため、検査の精度を向上させることができる。また、小さな収容空間3内で乱流を発生させて筐体20の内部の環境と外部の環境とを整えればよいことから、検査に必要となる設備の簡素化および簡略化を期待することができる。
【0051】
計測を開始すると、所定の待機期間が経過したか否か、または、内部センサ21と外部センサ6の計測結果が所定の範囲内で一致したか否かを判定する(S4)。待機期間は、例えば予め試験を行うことにより、ファン装置7を駆動した状態において筐体20の内部の環境と外部の環境とがほぼ一致した状態になった判断できる程度の時間を設定できる。また、所定の範囲は、空調用コントローラ2に求められる精度に基づいて、例えば数パーセント程度などを適宜設定することができる。
【0052】
そして、所定の待機期間が経過していない場合、および、所定の範囲内で一致していない場合には(S4:NO)、計測を継続する。一方、所定の待機期間が経過した場合、または、内部センサ21と外部センサ6の計測結果が所定の範囲内で一致した場合には(S4:YES)、試験結果を提示する(S5)。
【0053】
このステップS5では、センサ検査装置1は、所定の待機期間が経過しても計測結果が一致していなかった場合には、つまりは、内部の環境と外部の環境とが概ね一致した状態になっているにも関わらず計測結果が一致しなかった場合には、内部センサ21に不具合があると判定する。一方、センサ検査装置1は、センサ検査装置1は、計測結果が一致した場合には、内部センサ21が正しく動作していると判定する。なお、待機期間を待たずに計測結果が一致した場合には、検査時間を短縮できることになる。
【0054】
そして、センサ検査装置1は、試験結果を提示する(S6)。このとき、センサ検査装置1は、内部センサ21が正しく動作していると判定した場合には、上記したPASSランプ13aを点灯することにより、内部センサ21が正しく動作していることを作業者に対して提示する。あるいは、センサ検査装置1は、内部センサ21に不具合があると判定した場合には、上記したFAILランプ13bを点灯することにより、内部センサ21に不具合があることを作業者に対して提示する。このステップS6は、内部センサ21の計測結果および外部センサ6の計測結果を比較可能な状態で提示する工程に相当する。
【0055】
その後、ファン装置7を停止し(S7)、空調用コントローラ2を収容空間3から取り出して(S8)、一回の検査が終了する。そして、検査が終了した空調コントローラ2は、他の検査や梱包などの別工程に送られる。ただし、上記した内部センサ21を検査する工程の後には、空調用コントローラ2を分解したり組み立てたりする工程は存在しない。このように、センサ検査装置1は、筐体20の内部に設けられている内部センサ21の検査を、完成品の空調用コントローラ2で実施可能としている。
【0056】
以上説明したセンサ検査装置1およびセンサ検査法穂によれば次のような効果を得ることができる。
【0057】
センサ検査装置1は、空調用コントローラ2の筐体20の内部に設けられ、温度および湿度の少なくとも一方に関する計測を行う内部センサ21を完成品の状態で検査するためのものであって、空調用コントローラ2に対して空気の乱流を発生させる少なくとも1つのファン装置7と、空調用コントローラ2の筐体20の外部であって、ファン装置7によって発生する乱流の中に位置する少なくとも1つの外部センサ6と、ファン装置7を駆動した状態で計測した外部センサ6の計測結果および内部センサ21の計測結果を比較可能な状態で提示する提示部と、を備えている。これにより、空調用コントローラ2の筐体20の内部に設けられ、温度および湿度の少なくとも一方に関する計測を行う内部センサ21を、完成品の状態で迅速に検査することができる。
【0058】
また、上記したセンサ検査装置1を用いて、空調用コントローラ2に対して空気の乱流を発生させる工程と、空気の乱流が発生している状態で内部センサ21による計測を行う工程と、空気の乱流が発生している状態で、空調用コントローラ2の外部であって空気の乱流の中に位置するように設けられている外部センサ6により計測を行う工程と、内部センサ21の計測結果および外部センサ6の計測結果を比較可能な状態で提示する工程と、を含む空調用コントローラ2の検査方法を採用することにより、空調用コントローラ2の筐体20の内部に設けられている内部センサ21を完成品の状態で迅速に検査することができる。
【0059】
センサ検査装置1は、提示部は、内部センサ21の計測結果と外部センサ6の計測結果とが所定の範囲内で一致しているか否かを表示する。これにより、作業者は、試験結果を明確に把握することができる。
【0060】
この場合、提示部を、内部センサ21の計測結果と外部センサ6の計測結果とをそれぞれ数値として表示することにより、内部センサ21が正しく動作しているか否かを作業者が判断可能にする構成とすることができる。また、例えば製品のロット番号や試験結果などを管理する管理装置との間を通信可能に接続して各計測結果を送信し、外部の管理装置側で内部センサ21の計測結果と外部センサ6の計測結果とが所定の範囲内で一致しているか否かを表示したり、内部センサ21の計測結果と外部センサ6の計測結果とをそれぞれ表示したりする構成とすることができる。
【0061】
また、センサ検査装置1は、空調用コントローラ2および外部センサ6を収容する収容空間3を備え、ファン装置7は、収容空間3内において空気の乱流を発生させる。これにより、検査をする際には、室内の空調などの外乱を受けることなく検査を行うことができ、検査の精度を高めることができる。また、一般的な室内に比べて容積が小さい収容空間3内は、温度や湿度を均等にしやすいため検査の精度を向上させることができる。また、小さな収容空間3内で乱流を発生させて筐体20の内部の環境と外部の環境とを整えればよいことから、検査に必要となる設備の簡素化および簡略化を期待することができる。
【0062】
また、センサ検査装置1では、筐体20の内部に繋がっている少なくとも1つの開口部を有する空調用コントローラ2に対して、ファン装置7により開口部を経由して筐体20の内部に空気の乱流を発生させ、外部センサ6を、筐体20の外部であって、開口部を通って筐体20の内部に空気が進入する入口側に配置している。
【0063】
これにより、外部センサ6と内部センサ21とが概ね一致した環境を計測することになり、検査の精度を向上させることができる。また、意匠性の観点からスリット22のような開口部が小さい場合であっても、ファン装置7によって強制的に、また、迅速に筐体20の内部の空気と外部の空気とを入れ替えることができ、検査時間の短縮を図ることができる。
【0064】
この場合、
図7に示すように、外部センサ6を、筐体20の内部から開口部を通って空気が排出される出口側に配置することもできる。これにより、外部センサ6と内部センサ21とが概ね一致した環境を計測することになり、検査の精度を向上させることができる。あるいは、
図8に示すように、外部センサ6を、筐体20に空気が進入する入口側と筐体20から空気が排出される出口側とに配置することもできる。これにより、外部センサ6と内部センサ21とが概ね一致した環境を計測することになり、また、外部センサ6と内部センサ21とが概ね一致した環境を計測していることを確認することもでき、検査の精度を向上させることができる。
【0065】
また、
図9に示すように、ファン装置7を軸流ファンで構成し、筐体20から空気を吸い出す向きに設置することができる。この場合、外部センサ6を筐体20の内部から開口部を通って空気が排出される出口側であって、空気の乱流の中に配置することにより、外部センサ6と内部センサ21とが概ね一致した環境を計測することになり、検査の精度を向上させることができる。また、空調用コントローラ2との間において空気が流れる流路を制限するために案内板30を設けることもできる。なお、図示は省略するが、
図9における筐体20への空気の入口側に外部センサ6を配置することができるし、空気の入口側と出口側の双方に外部センサ6を配置することもできる。
【0066】
また、センサ検査装置1は、ファン装置7によって発生する空気の流れを筐体20の開口部に向けて案内する案内部としての案内板30を備えている。これにより、ファン装置7が発生させた空気の乱流を、空調用コントローラ2のスリット22に向けて集中的に案内することができ、迅速に筐体20の内部の環境と外部の環境とを一致させることができる。また、案内部によって実施形態のようにダクト状の流路を形成することにより、乱流の発生条件を把握し易くすることができ、検査の妥当性を担保することもできる。
【0067】
また、
図10に示すように、収容空間3の内部の温度、または、収容空間3の内部の湿度のうち少なくとも一方を調整可能な調整部40を備える構成とすることができる。これにより、例えば温度や湿度を変化させた複数の環境で検査を行うことにより、内部センサ21が正しく動作しているか否かを、より精度よく検査することができる。この調整部40は、例えばヒータや加湿器などにより構成することができる。
【0068】
本発明は上記した、あるいは図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、また、阻害要因が無い限り、上記したいずれか2つ以上の構成を任意または適宜組み合わせて変形あるいは拡張をすることができ、それらの変形や拡張は均等の範囲に含まれる。
実施形態では開口部を有する空調用コントローラ2を例示したが、明確な開口部が設けられていない空調用コントローラ2を検査対象とすることができる。
【0069】
実施形態では、内部センサ21を温度と湿度とを計測する温湿度センサで構成する例を示したが、温度センサのみで構成することができるし、個別の温度センサと湿度センサとを設けたり、複数個所に温度センサを設けたりするなど、複数の内部センサ21を設ける構成とすることができる。
【0070】
実施形態では空調用コントローラ2を収容する収容空間3を有するセンサ検査装置1を例示したが、センサ検査装置1は、収容空間3を有しない構成とすることができる。例えば作業台に、ファン装置7を空調用コントローラ2に対して空気の乱流を発生可能な位置に配置し、外部センサ6を空調用コントローラ2の筐体20の外部であってファン装置7によって発生する乱流の中に位置させることにより、収容空間3を有しないセンサ検査装置1を実現することができる。あるいは、空調用コントローラ2、ファン装置7、外部センサ6を所定の位置に配置するための治具等を作業台に設置することによっても、収容空間3を有しないセンサ検査装置1を実現することができる。その場合、空調用コントローラ2に表示される温度と、外部センサ6によって計測された温度とを比較することで検査を行うことができる。
【符号の説明】
【0071】
図面中、1はセンサ検査装置、2は空調用コントローラ、3は収容空間、6は外部センサ、7はファン装置、8は制御回路部(提示部)、10制御部(提示部)、13は表示ランプ(提示部)、13aはPASSランプ(提示部)、13bはFAILランプ(提示部)、20は筐体、21は内部センサ、22はスリット(開口部)、30は案内板(案内部)、40は調整部を示す。