(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180806
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ダブルデッキエレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 1/40 20060101AFI20231214BHJP
B66B 3/02 20060101ALI20231214BHJP
B66B 1/14 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
B66B1/40 B
B66B3/02 Q
B66B1/14 D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094409
(22)【出願日】2022-06-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176016
【弁理士】
【氏名又は名称】森 優
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】服部 丈仁
(72)【発明者】
【氏名】山岡 俊平
(72)【発明者】
【氏名】大久保 順平
【テーマコード(参考)】
3F303
3F502
【Fターム(参考)】
3F303AA02
3F303CB04
3F303CB11
3F502HA01
3F502JB06
3F502JB08
3F502KA22
(57)【要約】
【課題】上かごと下かごを吊り下げる索状体に伸びが生じたとしても、上かごと下かごをそれぞれの目的階に可能な限り正確に着床させることができるダブルデッキエレベータを提供する。
【解決手段】索状体であるワイヤロープの一端側で吊り下げられた上かごと他端側で吊り下げられた下かごが内側に設けられた外かご枠を昇降路内の目標停止位置に停止させて、前記上かごと前記下かごをそれぞれの目的階に着床させるダブルデッキエレベータであって、前記外かご枠に設けられた近接センサであるフォトセンサ54A、55Aと、前記目標停止位置毎に設置され、フォトセンサ54A、55Aによって検出される被検出体である遮光板と、フォトセンサ54A、55Aの前記外かご枠に対する上下方向の位置を調整することができる上下位置調整機構100と、を設けた。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーブに掛けられて折り返された索状体の一端側で吊り下げられた上かごと他端側で吊り下げられた下かごが内側に設けられた外かご枠を昇降路内の目標停止位置に停止させて、前記上かごと前記下かごをそれぞれの目的階に着床させるダブルデッキエレベータであって、
前記外かご枠に設けられた近接センサと、
前記目標停止位置毎に設置され、前記近接センサによって検出される被検出体と、
前記近接センサの前記外かご枠に対する上下方向の位置を調整することができる上下位置調整機構と、
を有することを特徴とするダブルデッキエレベータ。
【請求項2】
前記上下位置調整機構は、
前記外かご枠と前記近接センサの一方に設けられ、上下方向に軸心を有する雌ネジを含む雌ネジ部材と、
前記外かご枠と前記近接センサの他方に設けられ、前記雌ネジ部材に螺入された雄ネジ部材と、
を含み、
前記雄ネジ部材が前記軸心周りに回転されることにより、前記雄ネジ部材が前記雌ネジ部材に対し相対的に螺進することで、前記近接センサの前記外かご枠に対する上下方向の位置が調整される構成となっていることを特徴とする請求項1に記載のダブルデッキエレベータ。
【請求項3】
前記上下位置調整機構は、前記雄ネジ部材を回転駆動するモータを含み、
初期状態からの前記索状体の伸び起因して前記外かご枠に対し相対的に変位した前記上かごと前記下かごの前記外かご枠に対する変位量を取得する変位量取得手段と、
前記モータを駆動制御する駆動制御手段と、
を有し、
前記駆動制御手段は、取得された前記変位量に応じた回転角分、前記近接センサが前記外かご枠に対し下方へ変位するよう、前記モータを回転させることを特徴とする請求項2に記載のダブルデッキエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルデッキエレベータに関し、特に、外かご枠内に上かごと下かごとが設けられてなるダブルデッキエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
昇降路内を昇降する外かご枠内に設置された上かごと下かごとで2階建て構成とされるダブルデッキエレベータは、単一のかごで構成されるエレベータと比較して、輸送力で優れる。また、同等の輸送力を得るための設置スペースが少なくて済む。このため、大規模高層建物への導入が進められている。
【0003】
前記外かご枠はカウンタウエイトと主ロープで連結されており、当該主ロープは、昇降路上部の機械室に設置された巻上機の綱車に掛けられている。そして、前記巻上機を構成する巻上機モータを駆動して、前記綱車を回転させることにより、外かご枠、ひいては
上・下かごの各々が昇降路内を昇降する。
【0004】
上記昇降の制御において、上・下かご各々の目的階に対応する目標位置まで外かご枠を昇降させるために、例えば、近接センサの一種であるフォトセンサと、フォトセンサの検出対象として、複数の遮光板とが用いられる(特許文献1)。フォトセンサは、外かご枠に取り付けられている。一方、複数の遮光板の各々は、前記目標位置の各々に対応させて、昇降路内にそれぞれ設置されている。
【0005】
先ず、初期運転として、外かご枠を最下の目標位置から最上の目標位置まで上昇させる。この際に、フォトセンサが上記遮光板の各々を検出した時における、前記巻上機モータに設けられているエンコーダの回転角をそれぞれ、目標停止位置として記憶しておく。
【0006】
そして、通常運転時には、上かごと下かご各々の目的階に対応する目標位置まで外かご枠を昇降させて、当該上かごと下かごが異なる階に着床させるべく巻上機モータが制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6658240号公報
【特許文献2】国際公開第2012/131755号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、建物によっては、上下二つの目的階の階床間距離が、目的階の組合せに依って異なることがある。このような建物に設置されるダブルデッキエレベータでは、同時に着床する二つの目的階の階床間距離に合わせて、上かごと下かごの間隔(かご間隔)を調整する必要がある。
【0009】
この調整を可能とするダブルデッキエレベータとして、外かご枠に設置された駆動シーブに掛けられて折り返された、索状体の一種であるワイヤロープの一端側で上かごを吊り下げ、他端側で下かごを吊り下げた階間調整機構を有するものが知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0010】
上記階間調整機構によれば、駆動シーブを正転または逆転させることにより、上下方向に、上かごと下かごが相対的に近接したり離間したりするため、かご間隔の調整が可能となっている。
【0011】
しかしながら、上かごと下かごの自重によって常に引っ張られているワイヤロープには、経時的に伸びが生じる。この伸びによって、上かごと下かごは、外かご枠に対して相対的に下方へ変位する。この場合、外かご枠を上記目標位置に停止させたとしても、上かごと下かごには、それぞれの目的階との間で、上下方向にずれが生じてしまう。
【0012】
本発明は、上記した課題に鑑み、上かごと下かごを吊り下げる索状体に伸びが生じたとしても、上かごと下かごをそれぞれの目的階に可能な限り正確に着床させることができるダブルデッキエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明に係るダブルデッキエレベータは、シーブに掛けられて折り返された索状体の一端側で吊り下げられた上かごと他端側で吊り下げられた下かごが内側に設けられた外かご枠を昇降路内の目標停止位置に停止させて、前記上かごと前記下かごをそれぞれの目的階に着床させるダブルデッキエレベータであって、前記外かご枠に設けられた近接センサと、前記目標停止位置毎に設置され、前記近接センサによって検出される被検出体と、前記近接センサの前記外かご枠に対する上下方向の位置を調整することができる上下位置調整機構と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、前記上下位置調整機構は、前記外かご枠と前記近接センサの一方に設けられ、上下方向に軸心を有する雌ネジを含む雌ネジ部材と、前記外かご枠と前記近接センサの他方に設けられ、前記雌ネジ部材に螺入された雄ネジ部材と、を含み、前記雄ネジ部材が前記軸心周りに回転されることにより、前記雄ネジ部材が前記雌ネジ部材に対し相対的に螺進することで、前記近接センサの前記外かご枠に対する上下方向の位置が調整される構成となっていることを特徴とする。
【0015】
さらに、前記上下位置調整機構は、前記雄ネジ部材を回転駆動するモータを含み、初期状態からの前記索状体の伸び起因して前記外かご枠に対し相対的に変位した前記上かごと前記下かごの前記外かご枠に対する変位量を取得する変位量取得手段と、前記モータを駆動制御する駆動制御手段と、を有し、前記駆動制御手段は、取得された前記変位量に応じた回転角分、前記近接センサが前記外かご枠に対し下方へ変位するよう、前記モータを回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記の構成を有する本発明に係るダブルデッキエレベータによれば、上記上下位置調整機構により、上記索状体の伸びに起因し、上記外かご枠に対し相対的に変位した上記上かごと下かごの外かご枠に対する変位量に応じて、上記近接センサの外かご枠に対する位置を調整することが可能となる。
【0017】
これにより、上記索状体に伸びが生じたとしても、上記近接センサで上記被検出体を検出する目標停止位置で外かご枠を停止させたときに、上かごと下かごを、それぞれの目的階に可能な限り着床させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態1に係るダブルデッキエレベータの概略構成を示す図である。
【
図2】上記ダブルデッキエレベータに設けられたかご枠検出手段、上かご検出手段、および下かご検出手段を構成するフォトセンサと遮光板の概略構成を示す、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【
図3】上記かご枠検出手段の構成部材であるフォトセンサの上下方向の位置を調整可能にする位置調整機構の斜視図である。
【
図4】
図3とは異なる方向から視た上記位置調整機構の斜視図である。
【
図5】巻上機および巻上機等を制御する主制御装置、並びに、移動ユニットおよび移動ユニット等を制御する副制御装置を示したブロック図である。
【
図7】上記ダブルデッキエレベータの外かご枠に設置された副制御装置の有するRAM内およびROM内の記憶領域の一部を示す図である。
【
図8】上記ダブルデッキエレベータにおいて、上かごと下かごを吊り下げるワイヤロープの伸びに起因して、上かごと下かごが外かご枠に対し相対的に下方へ変位した状態を示す図である。
【
図9】実施形態2における上下位置調整機構の概略構成を示す図である。
【
図10】その他の実施形態に係るダブルデッキエレベータの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るダブルデッキエレベータの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<実施形態1>
〔全体構成〕
実施形態1に係るダブルデッキエレベータ10の概略構成を
図1に示す。ダブルデッキエレベータ10は、上梁12A、下梁12B、および上梁12Aと下梁12Bとを連結する2つの立枠12C,12Dを含み、正面視で、縦方向に(上下方向に)長い略長方形をした外かご枠12を有する。
【0020】
外かご枠12内側には、上かご14と下かご16とが上下方向に並んで設けられている。
【0021】
外かご枠12には、従動シーブ18が取り付けられており、上かご14よりも上方で従動シーブ18に掛けられて折り返されたワイヤロープ20の一端部が上かご14に連結され、他端部が下かご16に連結されている。これにより、従動シーブ18に掛けられたワイヤロープ20の一端側で上かご14が吊り下げられ、他端側で下かご16が吊り下げられた構成となっている。従動シーブ18は、後述するように、下かご16の上下移動に伴って走行するワイヤロープ20に従動して回転するシーブである。なお、上かご14と下かご16とは、上梁12Aと下梁12Bとの間に設置された、一対のガイドレール(不図示)によって、上下方向に移動自在に案内されている。
【0022】
外かご枠12における下かご16の下方には、下かご16を上下方向に移動させるための移動ユニット22が取り付けられている。移動ユニット22は、上下に変位するアクチュエータ24Aを有するねじ式ジャッキ24(以下、単に「ジャッキ24」と言う。)とジャッキ24を駆動するモータ26とを有し、前記アクチュエータ24Aの上端部が下かご16の下端部に連結されている。
【0023】
モータ26には、その出力軸の回転角を検出するロータリエンコーダ27(
図5)が設けられており、ロータリエンコーダ27からの出力結果に基づいて、前記出力軸の回転角(回転回数)を制御することにより、アクチュエータ24Aの上下方向の変位量の制御が可能となっている。
【0024】
ジャッキ24を駆動して、下かご16を上方へ移動させると、従動シーブ18に掛けられたワイヤロープ20で下かご16と連結された上かご14は、その自重により、下かご16の移動距離と同じ距離分下方へ移動する。これにより、上かご14と下かご16の上下方向における間隔(以下、「かご間隔」と言う。)を短くすることができる。
【0025】
一方、ジャッキ24を駆動して、下かご16を下方へ移動させると、上かご14は、引き上げられるため、かご間隔を長くすることができる。
【0026】
このように、移動ユニット22は、下かご16を上下方向に移動させることにより、かご間隔を変更するかご間隔変更手段として機能する。
【0027】
ここで、かご間隔とは、下かご16の床面16Aと上かご14の床面14Aとの間の上下方向における距離(D)を言う。本例において、調整されるべきかご間隔Dは、例えば、D1、D2、D3、D4の4通りとする。すなわち、ダブルデッキエレベータ10が設置される建築物において、下かご14と上かご16とが同時に着床される二つの階の間の階高は4通り存在することとする。
【0028】
かご間隔Dを正確に調整するため、本実施形態では、上かご14と下かご16の、外かご枠12に対する上下方向の絶対位置を検出する絶対位置検出手段を有している。
【0029】
この絶対位置検出手段として、ダブルデッキエレベータ10は、アブソリュートタイプの磁気式リニアスケール28(以下、「磁気スケール28」と言う。)を備えている。
【0030】
磁気スケール28は、一端部から他端部に至る間の絶対位置(距離)情報を、例えば、0.5mmの分解能で、磁気パターン(磁気目盛り)として記録した記録テープである磁気テープ30と磁気テープ30から前記磁気目盛りを読み取る2台の読取ユニット32,34とを含む。この磁気スケール28には、例えば、エルゴエレクトロニク株式会社製の「アブソリュート磁気スケール LIMAXシリーズ」など、公知のものを用いることができる。
【0031】
磁気テープ30は、外かご枠12に、長さ方向が上下方向となるように取り付けられている。本例では、上梁12Aと下梁12Bとの間に、張架されている。
【0032】
本例において、磁気テープ30は、目盛りが下から上に目盛られた状態となる向き(すなわち、上側程、目盛りの値が大きくなる向き)に取り付けられている。なお、磁気テープ30を外かご枠12に取り付ける向きは、この逆であっても構わない。
【0033】
読取ユニット32は上かご14に固定され、もう一方の読取ユニット34は下かご16に固定されている。なお、読取ユニット32,34各々の上かご14、下かご16に対する上下方向における固定位置は任意である。読取ユニット32,34各々の上かご14、下かご16に対する固定位置は、上かご14と下かご16が移動ユニット22によって上下に移動される際、読取ユニット32,34各々が、磁気テープ30に沿って移動でき、磁気テープ30に記録された磁気目盛りを読み取ることができるような位置であれば構わない。
【0034】
上記のようにして設けられた磁気スケール28において、読取ユニット32で読み取られる磁気目盛りの値が、読取時における上かご14の外かご枠12に対する上下方向の絶対位置を指標し、読取ユニット34で読み取られる磁気目盛りの値が、読取時における下かご16の外かご枠12に対する上下方向の絶対位置を指標する。すなわち、磁気スケール28によって、上かご14と下かご16の外かご枠12に対する上下方向の絶対位置を検出することができる。
【0035】
また、読取ユニット32と読取ユニット34が読み取った磁気目盛りの値(以下、「目盛値」と言う。)の差分(以下、「目盛差」と言う。)は、かご間隔Dと一対一で対応するため、かご間隔Dを指標する。
図1に示すように、上かご14と下かご16各々の床面14A,16Aから同じ高さに読取ユニット32,34がそれぞれ固定されている場合、前記目盛差は、かご間隔Dと等しくなる。読取ユニット32,34が読み取る目盛値が参照されて、後述するようにかご間隔Dが目的階の階高に調整される。
【0036】
上記のように、上かご14、下かご16等が設けられた外かご枠12が昇降する昇降路36上部には、機械室38が設けられており、機械室38には、巻上機40が設置されている。巻上機40は、巻上機モータ40A(
図5)、巻上機モータ40Aの出力軸(不図示)に設けられた綱車40B、および前記出力軸と同軸上に設けられたロータリエンコーダ40C等を含む。ロータリエンコーダ40Cには、例えば、マルチターン型アブソリュートタイプのものを用いることができる。
【0037】
巻上機40に隣接して、そらせ車42が設置されており、巻上機40の綱車40Bとそらせ車42には、主ロープ44が掛けられている。
【0038】
主ロープ44の一端部には外かご枠12が連結されており、他端部にはカウンタウエイト46が連結されている。
【0039】
上記の構成において、巻上機モータ40A(
図5)を駆動源として、綱車40Bが回転されると、外かご枠12、ひいては上かご14および下かご16とカウンタウエイト46とは、昇降路36内を互いに反対向きに昇降する。
【0040】
外かご枠12の昇降路36内での上下方向における位置を検出するかご枠検出手段48、上かご14の昇降路36内での上下方向における位置を検出する上かご検出手段50、および下かご16の昇降路36内での上下方向における位置を検出する下かご検出手段52が設けられている。
【0041】
かご枠検出手段48は、外かご枠12に設けられた一対のフォトセンサ54A、55Aと昇降路36の側壁36Aに固定された、フォトセンサ54A、55Aによって検出される被検出体である遮光板56Aを含む。
【0042】
上かご検出手段50は、上かご14に固定された一対のフォトセンサ54B、55Bと昇降路36の側壁36Aに固定された、フォトセンサ54B、55Bによって検出される被検出体である遮光板56Bを含む。
【0043】
下かご検出手段52は、下かご16に固定された一対のフォトセンサ54C、55Cと昇降路36の側壁36Aに固定された、フォトセンサ54C、55Cによって検出される被検出体である遮光板56Cを含む。
【0044】
フォトセンサ54A、54B、54Cの各々およびフォトセンサ55A、55B、55Cの各々は、いずれも基本的に同じ構成なので、これらを区別する必要のない場合は、アルファベットの添え字(A、B、C)を省略して説明する。また、遮光板56A、56B、56Cについても同様とする。
【0045】
図2(a)にフォトセンサ54と遮光板56の平面図を、
図2(b)にフォトセンサ54、55と遮光板56の側面図をそれぞれ示す。
フォトセンサ54は、
図2に示すように、発光素子542と受光素子544とが対向して設けられてなる透過型のフォトセンサであり、発光素子542と受光素子544の対向領域に相対的に進入する遮光板56を検出する構成となっている。
【0046】
フォトセンサ55はフォトセンサ54と同じセンサであり、不図示の発光素子と受光素子の対向領域に進入する遮光板56を検出する構成の透過型フォトセンサである。
【0047】
図1に戻り、遮光板56A、56B、56C各々の上下方向における固定位置について説明する。
【0048】
先ず、遮光板56B、56Cについて説明すると、遮光板56Bは、上かご14が目的階に着床した状態のときに、フォトセンサ54Bとフォトセンサ55Bで同時に検出される位置に固定されている。
【0049】
遮光板56Cは、下かご16が目的階に着床したときに、フォトセンサ54Cとフォトセンサ55Cで同時に検出される位置に固定されている。
【0050】
よって、フォトセンサ54B、55B、フォトセンサ54C、55Cが遮光板56B、56Cをそれぞれ検出しているか否かによって、上かご14、下かご16の各々が目的階に着床しているかどうかを判断することができる。
【0051】
遮光板56Aは、上かご14および下かご16が同時に各々の目的階に着床しており、かつ、ワイヤロープ20の長さが基準長であるときに、フォトセンサ54Aとフォトセンサ55Aで同時に検出される位置に固定されている。ここで基準長とは、ダブルデッキエレベータ10の建物への設置が完了した時点であって、上かご14および下かご16に乗客等が乗っていない状態におけるワイヤロープ20の長さをいう。換言すれば、基準長は、設計仕様で規定されるワイヤロープ20の長さである。
【0052】
遮光板56Bと遮光板56Cは、上かご14と下かご16とが同時に着床する二つの目的階毎に、一対として設けられている。また、当該一対の遮光板56B,56Cに対応させて、遮光板56Aが設けられている。すなわち、遮光板56Aは、外かご枠12の昇降路36内の上下方向における目標停止位置毎に設けられている。
【0053】
フォトセンサ54B、55Bとフォトセンサ54C、55Cは、上かご14と下かご16にそれぞれ固定されている。一方、フォトセンサ54A、55Aは、上下位置調整機構100によって、外かご枠12に対する上下方向位置を調整可能に設けられている。
【0054】
図3は、位置調整機構100の斜視図を、
図4は、
図3とは異なる方向から視た位置調整機構100の斜視図をそれぞれ示している。
【0055】
位置調整機構100は、外かご枠12(
図3、
図4では不図示)に固定されたブラケット102を有する。ブラケット102は、例えば、金属板がプレス加工されたものであり、水平姿勢で設けられた横板部102aと横板部102aの一端部から直角に屈曲された短冊状の縦板部102bを含む。縦板部102bには、上下方向に長い長孔102cが開設されている。
【0056】
位置調整機構100は、また、スライド部材104を有する。スライド部材104は、長方形の金属板の4辺部が直角に屈曲された箱型をしている。箱形をしたスライド部材104の各部名称に関し、符号104aで指し示す部分を底部、符号104bで指し示す部分を第1側壁部、符号104cで指し示す部分を第2側壁部と、それぞれ称することとする。
【0057】
底部104aには、不図示の取付ネジによって、フォトセンサ54Aとフォトセンサ55Aが図示のように取り付けられている。
【0058】
第1側壁部104bには、二つの雌ネジ(不図示)が、上下方向に間隔を空けて、厚み方向に形成されている。当該二つの雌ネジの各々には、長孔102cに挿入されたボルト106、108がそれぞれ螺入されている。
【0059】
ボルト106、108が緩められた状態では、スライド部材104(ひいては、フォトセンサ54A、55A)は、ブラケット102(ひいては、外かご枠12)に対し、上下方向にスライド自在となる。一方、ボルト106、108が締め付けられると、スライド部材104(ひいては、フォトセンサ54A、55A)は、ブラケット102(ひいては、外かご枠12)に固定される。
【0060】
第2側壁部104cには、短冊状をした金属板がL字状に屈曲されてなるアングル部材110が取り付けられている。アングル部材110の屈曲部を境に、短い方を横板部110a、長い方を縦板部110bと称することとする。
【0061】
縦板部110bには、二つのネジ挿通孔(不図示)が、上下方向に間隔を空けて、厚み方向に開設されている。第2側壁部104cには、二つの雌ネジ(不図示)が、上下方向に前記ネジ挿通孔と同じ間隔で、厚み方向に形成されている。
【0062】
アングル部材110は、縦板部110bの上記二つのネジ挿通孔の各々に挿入され、第2側壁部104cに形成された上記二つの雌ネジの各々に螺合したボルト112、114によって、スライド部材104に固定されている。
【0063】
横板部110aには、その厚み方向にネジ挿通孔(不図示)が開設されており、当該ネジ挿通孔に雌ネジ部(不図示)を連通させた状態の雌ネジ部材であるナット116が、スポット溶接(不図示)により横板部110bに固定されている。固定されたナット116の雌ネジ部は上下方向(本例では、垂直方向)に軸心を有している。
【0064】
ブラケット102の横板部102aには、ネジ挿通孔(不図示)が開設されていて、当該ネジ挿通孔に挿入された雄ネジ部材であるボルト118がナット116に螺入されている。
図4では、ナット116に螺入されたボルト118の先端側が横板部110aの前記ネジ挿通孔(不図示)から下方へ突出した部分が現れている。
【0065】
上記の構成を有する上下位置調整機構100において、ボルト106、108を緩めて、ボルト118の頭部118aを回転させれば、ナット116がボルト118の雄ネジ部に対し、相対的に上下方向に螺進する。頭部118aの上方から見て、時計回りに回転させれば、ナット116は上方へ螺進(移動)し、反時計回りに回転させれば、ナット116は、下方へ螺進(移動)する。
【0066】
これにより、ナット116が固定されているアングル部材110、ひいてはアングル部材110に固定されているスライド部材104、スライド部材104に取り付けられているフォトセンサ54A、55Aが上下方向に移動することとなる。すなわち、上下位置調整機構100によれば、ボルト118を回転させることにより、フォトセンサ54A、55Aの外かご枠12に対する上下方向の位置を調整することができる。上下方向の位置の調整距離については後述する。
【0067】
上記の構造を有するダブルデッキエレベータ10は、主制御装置58と副制御装置66とによって、運転制御等がなされる。
【0068】
主制御装置58は、機械室38に設置されており、巻上機40の巻上機モータ40A(
図5)などの駆動制御を行う。主制御装置58は、巻上機40のロータリエンコーダ40Cからの出力値(回転角)に基づき、巻上機モータ40Aを回転制御して、外かご枠12を昇降させる。
【0069】
主制御装置58は、
図5に示すように、CPU60にRAM62やROM64が接続された構成を有している。
【0070】
ROM64は、
図6に示すように、昇降テーブル640を有する。昇降テーブル640は、下かご16と上かご14が同時に着床する階(目的階)の組毎に、ロータリエンコーダの目標回転角およびかご間隔識別情報を対応付けて記憶したテーブルである。当該対応付けの各々はID(001、002、003、…)で識別される。
【0071】
目標回転角は、外かご枠12の昇降制御において、CPU60により参照される。CPU60は、ロータリエンコーダ40Cからの出力値(回転角)が、目的階に対応する目標回転角(E1、E2、E3、…のいずれか)と一致するまで、巻上機モータ40Aを回転駆動させ、一致した状態で巻上機モータ40Aを停止させる。これにより、外かご枠12は、昇降路36内の上下方向において、上かご14と下かご16が各々の目的階に同時に着床することができる位置(目標停止位置)に停止されることとなる。目標回転角は、昇降路36内の上下方向における外かご枠12の目標停止位置と一対一で対応しているため、目標回転角は、目標停止位置に他ならない。
【0072】
昇降テーブル640内の目標回転角の各々は、データ取得運転の際に格納される。データ取得運転では、実際に外かご枠12を昇降させ、かご枠検出手段48各々によって外かご枠12が検出されたときにロータリエンコーダ40Cが出力する各出力値(回転角)を昇降テーブル640に格納する。データ取得運転は、ダブルデッキエレベータ10が、建築物に設置されたとき、およびその後、定期的に行われ、昇降テーブル640の目標回転角は適時に更新される。
【0073】
かご間隔識別情報d1、d2、d3、d4は、かご間隔D1、D2、D3、D4をそれぞれ特定するものである。例えば、下かご16の目的階が1、上かご14の目的階が2の場合、かご間隔DはD1に調整されるべきであるので、昇降テーブル640のかご間隔識別情報のID=001に対応する欄には「d1」が記憶されている。
【0074】
図5に戻り、CPU60は、ROM64に格納された各種制御プログラムを実行することにより、巻上機モータ40Aなどを統括的に制御して、円滑な外かご枠12(上かご14、下かご16)の昇降路36における昇降動作等による運転を実現する。また、主制御装置58(のCPU60)は、副制御装置66に対し、所定のタイミングで後述する「かご間隔調整指令」、「初期位置取得指令」、「伸び量算出指令」等の種々の実行指令等を出す。
RAM62は、CPU60が各種制御プログラムを実行する際のワークメモリとして用いられる。
【0075】
副制御装置66は、
図1に示すように、外かご枠12に設置されている。副制御装置66は、移動ユニット22を駆動制御して、かご間隔Dを調整する。副制御装置66は、
図5に示すように、CPU68とCPU68に接続されたROM70およびRAM72を有している。ROM70は、CPU68が実行する各種プログラムを格納している他、各種の情報を記憶するテーブルや記憶領域を有している。
【0076】
RAM72は、CPU68が各種プログラムを実行する際のワークメモリとして用いられる他、各種の記憶領域を有している。
【0077】
ROM70は、
図7(a)に示すように、かご間隔情報テーブル700を有する。かご間隔情報テーブル700は、かご間隔識別情報d1、d2、d3、d4とそれぞれに対応する目盛差ΔS1、ΔS2、ΔS3、ΔS4とを対応付けて記憶している。目盛差ΔS1~ΔS4を以下、「基準目盛差」と言う。基準目盛差ΔS1~ΔS4の各々は、必要とされるかご間隔精度を考慮して、許容される幅をもったものとされている。主制御装置58からかご間隔識別情報(d1、d2、d3、d4のいずれか)を含むかご間隔調整指令を受け取ると、CPU68は、かご間隔情報テーブル700から、対応する基準目盛差(ΔS1、ΔS2、ΔS3、ΔS4のいずれか)を読み出す。そして、CPU68は、読取ユニット32,34が読み取る目盛値から得られる目盛差が基準目盛差の範囲に入るように、移動ユニット22を制御して、上かご14と下かご16を上下方向に移動させる。これにより、かご間隔Dが、上下二つの目的階の階高に適合したかご間隔(D1~D4のいずれか)に調整される。
【0078】
しかしながら、上かご14と下かご16を吊り下げているワイヤロープ20には、常に、張力が掛かっており、この張力のため、ワイヤロープ20には、時間の経過につれて伸びが生じる。
【0079】
このため、かご間隔Dが正確に調整された状態で、外かご枠12を目標停止位置に停止させたとしても、上かご14と下かご16は、それぞれの目的階との間で、上下方向にずれが生じてしまう。当該ずれの量は、ワイヤロープ20の伸びに起因し、外かご枠12に対し相対的に変位した上かご14と下かご16の外かご枠12に対する変位量(以下、「相対変位量」と言う。)に他ならない。そこで、相対変位量に対応させて、外かご枠12の停止位置を調整する必要がある。それには、先ず、ワイヤロープ20の伸び量に対応する相対変位量を把握する必要がある。
【0080】
〔相対変位量取得〕
以下、相対変位量の取得について、第1、第2、第3の三通りの取得方法について説明する。
(第1取得方法)
第1取得方法は、磁気スケール28を利用し、ワイヤロープ20の伸び量から取得する方法である。ワイヤロープ20の伸び量の取得方法は特許文献1に詳細に記載されているため、ここでは、簡潔に述べることとする。
【0081】
伸び量の取得のために、ROM70、RAM72は、さらに、磁気スケール28の読取ユニット32,34が読み取った目盛値を記憶する記憶領域等を有している。
【0082】
ROM70は、
図7(b)に示すように、読取ユニット32,34が読み取った目盛値を記憶する領域として、読取ユニット32(上かご)、読取ユニット34(下かご)毎に、初期位置記憶領域701,702を有する。
RAM72は、
図7(c)に示すように、読取ユニット32,34が読み取った目盛値を記憶する領域として、読取ユニット32(上かご)、読取ユニット34(下かご)毎に、経時位置記憶領域721,722を有する。すなわち、ROM70およびRAM72は、磁気スケール28の読取ユニット32,34が読み取った目盛値(絶対位置)を、それぞれ区別して記憶する記憶手段として機能する。初期位置記憶領域701,702と経時位置記憶領域721,722とは、読取ユニット32,34による読み取りのタイミングに応じてROM70またはRAM72内に設けられている記憶領域であるが、当該タイミングについては後述する。
【0083】
RAM72は、また、
図7(f)に示すように、初期位置記憶領域701,702、経時位置記憶領域721,722に記憶された絶対位置の各々に基づき、後述のようにして算出される伸び量を記憶する伸び量記憶領域723を有する。
【0084】
RAM72は、さらに、
図7(g)に示すように、伸び量記憶領域723に記憶されている伸び量から算出した相対変位量を記憶する相対変位量記憶領域724を有する。
【0085】
続いて、副制御装置66で実行されるワイヤロープ20の伸び量取得処理等について説明する。主制御装置58から、前記「初期位置取得指令」を受け取ると、副制御装置66のCPU68(
図3)は、初期位置取得処理を行う。
【0086】
前記初期位置取得指令は、ワイヤロープ20が新品と交換された直後等、ワイヤロープ20が前記基準長の長さに調整された状態で取り付けられた直後のタイミングで発せられる。ここで、取り付けられたワイヤロープ20が当該基準長の長さにある状態を「初期状態」とする。
【0087】
初期位置取得指令を受け取ると、CPU68は、読取ユニット32および読取ユニット34から、それぞれ、上かご14の絶対位置(目盛値)と下かご16の絶対位置(目盛値)を取得し、取得した上かご14の絶対位置と下かご16の絶対位置を、それぞれ、ROM70の初期位置記憶領域701,702(
図7(b))に記憶する。
【0088】
ここで、初期位置記憶領域701,702にそれぞれ記憶された絶対位置(目盛値)を、以降、「初期位置」と称することとする。また、初期位置記憶領域701,702に記憶された初期位置をそれぞれ、
図7(d)に示すように、「U1」、「L1」として、以下説明する。
【0089】
次に、副制御装置66で実行される伸び量算出処理をについて説明する。主制御装置58から、前記「伸び量算出指令」を受け取ると、副制御装置66のCPU68(
図5)は、伸び量算出処理を行う。
【0090】
前記伸び量算出指令は、ダブルデッキエレベータ10の、毎日における稼動開始時や、毎日における深夜閑散時の所定時刻等の所定のタイミングで発せられる。伸び量算出指令を受け取ると、CPU68は、読取ユニット32および読取ユニット34から、それぞれ、上かご14の絶対位置(目盛値)と下かご16の絶対位置(目盛値)を取得し、取得した上かご14の絶対位置と下かご16の絶対位置を、それぞれ、RAM72の経時位置記憶領域721,722(
図7(c))に上書きで記憶する。
【0091】
ここで、経時位置記憶領域721,722にそれぞれ記憶された絶対位置を、以降、「経時位置」と称することとする。また、経時位置記憶領域721,722に記憶された経時位置をそれぞれ、
図7(e)に示すように、「U2」、「L2」として、以下説明する。
【0092】
次に、CPU68は、下かご16の経時位置L2と下かご16の初期位置L1の差分ΔLを算出する。
【0093】
ΔL=(L2)-(L1) …(1)
【0094】
算出した差分ΔLと上かご14の初期位置U1とから、ワイヤロープ20に伸びが生じていないと仮定した場合の上かご14の推定位置Usを算出する。ここで、「推定位置」は、経時位置記憶領域721,722にそれぞれ記憶されている絶対位置(経時位置)が、読取ユニット32,34で読み取られた時点における推定位置である。
【0095】
Us=(U1)-(ΔL) …(2)
【0096】
式(2)は、ワイヤロープ20に伸びが生じていないとすると、上かご14は、下かご16の変位量(ΔL)と同じ量変位したところに位置することになることに基づく。
【0097】
上かご14の経時位置U2と算出した推定位置Usとの差分ΔUを算出する。
【0098】
ΔU=(Us)-(U2) …(3)
【0099】
本例の場合、差分ΔUが、ワイヤロープ20の伸び量ΔRになるので、ΔUを、そのまま、ワイヤロープ20の伸び量ΔRとして、RAM72の伸び量記憶領域723(
図7(f))に記憶する。
【0100】
すなわち、ワイヤロープ20に伸びが生じていないとした場合(ワイヤロープ20が基準長のままであるとした場合)の上かご14の推定位置(目盛値)から、上かご14の現実の経時位置(目盛値)を減算することによりワイヤロープ20において、初期位置の検出時(第1の時点)から経時位置の検出時(第2の時点)に至る間にワイヤロープ20に生じた伸び量(経年変化による伸び量)が算出されるのである。
【0101】
ワイヤロープ20の伸び量ΔRの場合、その半分の(ΔR/2)が、外かご枠12を目標停止位置に停止させたときの、上かご14と下かご16の、それぞれの目的階との間の上下方向のずれ量に該当する。すなわち、(ΔR/2)が、初期状態からのワイヤロープ20の伸びに起因して、外かご枠12に対し相対的に変位した上かご14と下かご16の外かご枠12に対する変位量(相対変位量)に該当する。CPU68は、(ΔR/2)をRAM72の相対変位量記憶領域724(
図7(g))に記憶する。
【0102】
以上説明したように、第1取得方法の場合は、副制御装置66、磁気スケール28が、初期状態からのワイヤロープ20の伸びに起因して、外かご枠12に対し相対的に変位した上かご14と下かご16の外かご枠12に対する変位量(相対変位量)を取得する変位量取得手段として機能する。
【0103】
RAM72に記憶されている相対変位量(ΔR/2)は、副制御装置66に接続した保守用の携帯端末(不図示)によって知ることができる。すなわち、前記携帯端末(不図示)を、副制御装置66に接続して、RAM72から相対変位量を読み出し、読み出された相対変位量を当該携帯端末のモニタ画面に表示させることによって、保守管理の作業員が、ワイヤロープ20の経年変化による伸びに起因する相対変位量を知ることができる。
【0104】
あるいは、上記携帯端末は、主制御装置58に接続して、主制御装置58から副制御装置66のRAM72に記憶された相対変位量を読み出すようにしても構わない。
【0105】
(第2取得方法)
第2取得方法は、かご枠検出手段48、および上かご検出手段50、下かご検出手段52を利用して、相対変位量を取得する方法である。第2取得方法について、
図8を参照しながら説明する。
【0106】
図8(a)は、例えば、ロータリエンコーダ40Cからの出力値(回転角)が、目的階(下かご14が3階、上かご16が4階)に対応する目標回転角E3(
図6)と一致する位置で外かご枠12が停止している状態である。すなわち、フォトセンサ54Aとフォトセンサ55Aが同時に遮光板56Aを検出している状態である。また、本例では、ワイヤロープ20がΔR伸びた状態を想定している。
【0107】
ワイヤロープ20がΔR伸びているため、上かご16と下かご14は、各々の着床位置から、(ΔR/2)の距離分(相対変位量分)、それぞれ下方へずれている。このため、フォトセンサ55Bは、遮光板56Bを検出しておらず、フォトセンサ55Cは、遮光板56Cを検出していない。
【0108】
上記の状態から、主制御装置58は、巻上機モータ40Aを制御して、フォトセンサ54Bとフォトセンサ55Bが同時に遮光板56Bを検出し、フォトセンサ54Cとフォトセンサ55Cが同時に遮光板56Cを検出するまで、外かご枠12を引き上げる。主制御装置58は、この引上げ開始時のロータリエンコーダ40Cの出力値と引上げ終了時のロータリエンコーダ40Cの出力値の差分から、この間の外かご枠12の上下方向の移動距離を割り出す。この移動距離が、外かご枠12を目標停止位置に停止させたときの、上かご14と下かご16の、それぞれの目的階との間の上下方向のずれ量、すなわち相対変位量に該当する。
【0109】
主制御装置58は、上記相対変位量をRAM62に記憶する。RAM62に記憶されている相対変位量は、主制御装置58に接続した保守用の携帯端末(不図示)によって知ることができる。
【0110】
以上説明したように、第2取得方法の場合は、主制御装置58、巻上機40、かご枠検出手段48、および上かご検出手段50、下かご検出手段52が、相対変位量を取得する変位量取得手段として機能する。
【0111】
(第3取得方法)
第3取得方法は、保守作業員が実測する方法である。例えば、上述した
図8(a)に示す状態で、上かご14の外かご枠12に対する基準位置(
図1に示す状態での位置)からのずれ量、および/または下かご16の外かご枠12に対する基準位置(
図1に示す状態での位置)からのずれ量を、メジャー等を用いて実測する方法である。当該ずれ量が相対変位量に該当する。
【0112】
続いて、上記第1~第3のいずれかの方法で取得した相対変位量に基く、フォトセンサ54A、55Aの上下方向位置の調整について、
図3、
図4、および
図8を参照しながら説明する。保守作業員は、第1、第2の取得方法による場合は、上記携帯端末(不図示)により、第3取得方法の場合は、実測により相対変位量を知ることができる。
【0113】
保守作業員は、上下位置調整機構100のボルト106、108を緩め、ボルト118の頭部118aをその上方から見て反時計回りに回転させて、フォトセンサ54A、55Aを下方へ移動させる。移動距離は、上記相対変位量である。例えば、ボルト118のネジピッチが1mmであれば、頭部118aを1回転させれば、フォトセンサ54A、55Aが1mm移動するため、回転回数の目安となる。移動距離は、例えば、横板部102aの下面と横板部110aの上面間の距離を計測する等して調整することができる。フォトセンサ54A、55Aの移動作業が終了すると、ボルト106、108を締め付けて、上下位置調整作業が終了する。
【0114】
図8(b)は、上記上下位置調整作業が完了した時点でのフォトセンサ54A、55Aの位置を示している。上下位置調整作業により、フォトセンサ54A、55Aは、
図8(a)に示す位置よりも、外かご枠12に対し相対的に下方へ相対変位量(ΔR/2)分、下方へ移動されている。
【0115】
フォトセンサ54A、55Aの上下方向の位置を調整した後は、上述したデータ取得運転を実行し、昇降テーブル640の目標回転角を更新する。更新後は、ロータリエンコーダ40Cからの出力値(回転角)が、目的階に対応する目標回転角と一致するまで、巻上機モータ40Aが回転駆動され、一致した状態で巻上機モータ40Aが停止されて、フォトセンサ54Aとフォトセンサ55Aが同時に遮光板56Aを検出する位置に外かご枠12が停止されると、
図8(c)に示すように、上かご14および下かご16は、各々の目的階からずれることなく着床することとなる。
【0116】
以上説明したように、実施形態1に係るダブルデッキエレベータ10によれば、上下位置調整機構100により、前記相対変位量に応じて外かご枠12に設けられたフォトセンサ54A、55Aの外かご枠12に対する位置を下方へ調整することができる。
【0117】
これにより、ワイヤロープ20に伸びが生じたとしても、フォトセンサ54A、55Aで遮光板56Aを検出する目標停止位置で外かご12を停止させたときに、上かご14と下かご16は、それぞれの目的階に可能な限り正確に着床することとなる。
【0118】
なお、上記実施形態1では、かご枠検出手段48を構成するフォトセンサ54A、55Aと遮光板56Aの内、フォトセンサ54A、55Aの外かご枠12に対する相対位置を調整することとしたが、遮光板56Aの昇降路36に対する上下方向の位置を調整することも考えられる。しかしながら、遮光板56Aは、上記した通り、外かご枠12の目標停止位置毎に設けられているため、位置調整も目標停止位置毎に複数回、繰り返さなければならず、多くの時間を要することとなる。これに対し、実施形態1では、1箇所の調整でよいため、大幅に作業時間を短縮することができる。
【0119】
<実施形態2>
実施形態1では、フォトセンサ54A、55Aの外かご枠12に対する上下方向の位置の調整を保守作業員が手作業で行ったが、実施形態2では、自動で行えるようになっている。実施形態2は、上下位置調整機構100に代えて、後述する上下位置調整機構200を有し、上下位置調整機構200を構成するモータ212(
図9)の駆動制御に副制御装置66を用いる以外は、基本的に、実施形態1と同様の構成である。よって、共通する部分の説明については省略し、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0120】
図9に実施形態2における上下位置調整機構200の概略構成を示す。上下位置調整機構200において、フォトセンサ54A、55Aは、角筒状をした保持部材202に取り付けられている。保持部材202は、直動案内204を介して、外かご枠12に取り付けられている。
【0121】
直動案内204は、外かご枠12に固定されたレール204aと保持部材202に固定されたスライダ204bを含む。直動案内204は、保持部材204を外かご枠12に対し、上下方向にスライド自在に案内する。
【0122】
保持部材202の上端には、ボールねじ206を構成する雌ネジ部材であるナット206aが取り付けられている。保持部材202に取り付けられたナット206aの雌ネジ部(不図示)は、上下方向(本例では、垂直方向)に軸心を有している。
【0123】
ナット206aには、ボールねじ206を構成する雄ネジ部材であるねじ軸206bが螺入されている。ねじ軸206bの上端部部分は、ナット206aから突出している。ねじ軸206bの下端部部分は保持部材202から突出している。
【0124】
ねじ軸206bの下端部は、外かご枠12に固定された支持部材208に設けられた軸受(不図示)により回転自在に軸支されている。
【0125】
ねじ軸206bの上端部は、カップリング210を介して、モータ212の出力軸212aに連結されている。モータ212は、取付部材214によって、外かご枠12に固定されている。モータ212は、カップリング210を介して、ねじ軸206bを回転駆動する。モータ212には、例えば、ステッピングモータを用いることができる。
【0126】
上記の構成を有する上下位置調整機構200によれば、モータ212を正転させると保持部材202が下向きに移動し、逆転させると上向きに移動する。実施形態2では、モータ212の駆動制御をする駆動制御手段として、副制御装置66(
図5)を用いている。なお、モータ212と副制御装置66の接続関係の図示についは省略する。
【0127】
次に、上下位置調整機構200によるフォトセンサ54A、55Aの移動処理について、相対変量の取得方法毎に説明する。
【0128】
(第1取得方法の場合)
副制御装置66のCPU68は、RAM72内の相対変位量記憶領域724(
図7(g))を参照し、相対変位量を得る。CPU68は、得られた相対変位量に応じた、モータ212の回転角を算出し、算出した回転角分、モータ212を正転させて、フォトセンサ54A、55Aを外かご枠12に対し下方へ変位させる。
【0129】
(第2取得方法の場合)
副制御装置66のCPU68は、主制御装置58のRAM62を参照して、相対変位量を得る。CPU68は、得られた相対変位量に応じた、モータ212の回転角を算出し、算出した回転角分、モータ212を正転させて、フォトセンサ54A、55Aを外かご枠12に対し下方へ変位させる
【0130】
(第3取得方法の場合)
保守作業員は、副制御装置66に携帯端末(不図示)を接続し、実測によって得られた相対変位量を、前記携帯端末から副制御装置66のRAM72の相対変位量記憶領域724(
図7(g))に格納する。
【0131】
よって、第3取得方法の場合は、副制御装置66が、前記携帯端末から相対変位量を受け付けて、取得する変位量取得手段として機能する。副制御装置66のCPU68は、相対変位量記憶領域724を参照して、相対変位量を得る。CPU68は、得られた相対変位量に応じた、モータ212の回転角を算出し、算出した回転角分、モータ212を正転させて、フォトセンサ54A、55Aを外かご枠12に対し下方へ変位させる。
【0132】
以上、本発明に係るダブルデッキエレベータを実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記形態に限られないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
(1)実施形態1、2に係るダブルデッキエレベータ10は、上かご14と下かご16の一方を(本例では、下かご16を)、ジャッキ24で上下方向に移動させるジャッキ式のダブルデッキエレベータであったが、
図10に示すダブルデッキエレベータ80は、上かご14と下かご16とを連結するワイヤロープ20が、外かご枠12の上梁12Aに設置された副巻上機82の駆動シーブ82Aに掛けられて、駆動シーブ82Aをモータ82Bで回転駆動することにより、かご間隔を変更するトラクション式のダブルデッキエレベータである。
【0133】
ダブルデッキエレベータ80は、上かご14と下かご16のかご間隔を変更するための駆動方式が異なる以外は、実質的に、実施形態1、2のダブルデッキエレベータ10と同じ構成である。よって、
図10において、
図1に示したダブルデッキエレベータ10と実質的に同じ構成には、同じ符号を付して、その説明については省略する。
【0134】
(2)上記実施形態では、上かご14と下かご16とを外かご枠12内で吊り下げる索状体として、ワイヤロープ20を用いたが、上かご14と下かご16とを吊り下げる索状体は、ワイヤロープに限らず、例えば、スチールコード等の心線入りのゴムベルトや炭素繊維からなるベルトを用いても構わない。要は、本発明は、経年変化によって伸びが生じるような索状体で上かごと下かごを吊り下げた構成を有するダブルデッキエレベータに適用できるのである。
【0135】
(3)上記実施形態では、近接センサとして光電形であるフォトセンサ54、55を用いたが、これに限らず、誘導形や静電容量形の近接センサを用いても構わない。なお、上記実施形態では、フォトセンサ54、55によって検出される被検出体として遮光板56を用いたが、被検出体の材質等は、用いられる近接センサの種類に応じて適宜選択される。
【0136】
(4)上記実施形態では、外かご枠12に雄ネジ部材であるボルト118、ねじ軸206bを設け、フォトセンサ54、55に雌ネジ部材であるナット116、ナット206aを設けたが、これとは逆に、外かご枠12の雌ネジ部材を設け、フォトセンサ54、55に雄ネジ部材を設けることとしても構わない。
【0137】
例えば、実施形態1(
図3、
図4)であれば、横板部102aにナットを溶接等により固定し、横板部110aのネジ挿通孔(不図示)に下方からボルトを挿入し、前記ナットに螺入する構成とすることができる。
【0138】
また、実施形態2(
図9)であれば、取付部材214にボールねじのナットを固定し、これにボールねじのねじ軸を螺入させ、当該ねじ軸を保持部材202に取り付けたモータで回転駆動する構成とすることができる。
【0139】
(5)上記実施形態では、従動シーブ18(
図1)または駆動シーブ82A(
図10)に掛けられて折り返されたワイヤロープ20の一端部を上かご14に直接連結し、他端部を下かご16に直接連結して、上かご14と下かご16を吊り下げることとしたが、上かご14と下かご16のワイヤロープによる吊り下げ態様はこれに限らず、例えば、ワイヤロープの一端部(第1端部)と他端部(第2端部)をそれぞれ外かご枠に固定し、駆動シーブから前記第1端部に至るワイヤロープ部分に第1の動滑車を掛け、前記第2端部に至るワイヤロープ部分に第2の動滑車を掛けて、第1の動滑車に上かごを連結し、第2の動滑車に下かごを連結することにより、上・下かごをワイヤロープで吊り下げる構成としても構わない。
【0140】
そのような吊り下げ態様とした構成とする場合におけるローピングの概念図は、特許文献1の
図11、
図12に、変形例1、変形例2として記載されている(特許文献1の段落[0142]-[0146]、[0156]-[0158])ので、本件での記載は省略する。
【0141】
前記相対変位量を前記第1取得方法、すなわち、磁気スケール28を利用してワイヤロープ20の伸び量から取得する方法による場合、上記実施形態では、取得した伸び量がΔRであれば、その半分の(ΔR/2)が相対変位量となった。
【0142】
しかしながら、ローピングの違いから、前記変形例1、前記変形例2において、伸び量がΔRの場合に対応する相対変位量は以下のようになる。
【0143】
変形例1:相対変位量=(ΔR/8)
変形例2:相対変位量=(ΔR/12)
【0144】
すなわち、初期状態からのワイヤロープの伸び起因して外かご枠に対し相対的に変位した上かごと下かごの外かご枠に対する相対変位量は、前記ワイヤロープの伸び量(ΔR)が同じであっても、上記ローピングによって、異なった値[(ΔR/2)、(ΔR/8)、(ΔR/12)等]となる。
【0145】
要するに、前記第1取得方法は、ワイヤロープの伸び量と、ワイヤロープの伸びに起因してかご枠に対し相対的に変位した上かごと下かごの外かご枠に対する相対変位量との間に一定の相関関係があれば適用できるのである。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明に係るダブルデッキエレベータは、例えば、階高に不揃いがある建物に設置するエレベータとして好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0147】
10、80 ダブルデッキエレベータ
12 外かご枠
14 上かご
16 下かご
20 ワイヤロープ
54A、55A フォトセンサ
56C 遮光板
100、200 上下位置調整機構