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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180832
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】めっき装置およびめっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/06 20060101AFI20231214BHJP
   C25D 17/08 20060101ALI20231214BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20231214BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20231214BHJP
   C25D 21/10 20060101ALI20231214BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C25D17/06 H
C25D17/06 E
C25D17/08 G
C25D17/00 G
C25D17/08 R
C25D21/12 L
C25D21/10 302
C25D7/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094449
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】絹野 敦士
(72)【発明者】
【氏名】錦内 栄史
【テーマコード(参考)】
4K024
【Fターム(参考)】
4K024BB11
4K024CB02
4K024CB03
4K024CB06
4K024CB09
4K024CB26
(57)【要約】
【課題】大型の基板でも姿勢を適正に維持し、しかも均一な皮膜を得ることのできるめっき装置およびめっき方法を提供する。
【解決手段】本発明は、矩形の基板の少なくとも一方主面をめっきするめっき装置であって、めっき液を貯留する処理槽と、処理槽内のめっき液に接液するアノード電極と、処理槽内で、一方主面を上向きにした水平姿勢で基板を保持する基板保持部とを備える。基板保持部は、カソード電極が設けられカソード電極を一方主面に接触させながら基板を把持するチャック機構を複数有し、基板の辺のうち少なくとも互いに対向する2辺の各々に対し、少なくとも1つずつチャック機構が配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の基板の少なくとも一方主面をめっきするめっき装置であって、
めっき液を貯留する処理槽と、
前記処理槽内のめっき液に接液するアノード電極と、
前記処理槽内で、前記一方主面を上向きにした水平姿勢で前記基板を保持する基板保持部と
を備え、
前記基板保持部は、カソード電極が設けられ前記カソード電極を前記一方主面に接触させながら前記基板を把持するチャック機構を複数有し、
前記基板の辺のうち少なくとも互いに対向する2辺の各々に対し、少なくとも1つずつ前記チャック機構が配置される、めっき装置。
【請求項2】
前記基板を下方から支持しつつ水平方向に搬送する搬送部を備え、
前記チャック機構は、上下方向において、前記搬送部により支持される前記基板の位置と同じ位置で前記基板を把持する、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記搬送部は、前記基板の辺のうち互いに平行な2辺と平行な方向に前記基板を搬送し、
前記チャック機構は、前記平行な2辺の各々に対し少なくとも1つずつ配置される、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記チャック機構は、前記平行な2辺と前記平行な2辺以外の少なくとも1つの辺との各々に対し少なくとも1つずつ配置される、請求項3に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記チャック機構は、前記基板の1つの辺に対して2以上配置される、請求項1ないし4のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項6】
前記基板保持部は、構造および形状が互いに同一である複数の前記チャック機構を有する、請求項1ないし4のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項7】
前記基板保持部は、複数の前記チャック機構が取り付けられる支持部材を有し、前記支持部材は、前記チャック機構の配設位置および配設数の少なくとも一方を変更可能である、請求項6に記載のめっき装置。
【請求項8】
前記チャック機構の各々は、
前記基板の前記一方主面に当接する第1部材と、
前記基板の前記一方主面と反対側の他方主面に当接する第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材とを相対的に昇降させて前記基板に対する把持およびその解除を行わせる昇降機構と
を有し、前記カソード電極が前記第1部材の下面に取り付けられている、請求項6に記載のめっき装置。
【請求項9】
前記第1部材の下面に、前記カソード電極の周囲を取り囲む環状のシール部材が設けられている、請求項8に記載のめっき装置。
【請求項10】
前記チャック機構の各々は、前記第1部材に対して相対的に前記第2部材を水平方向に移動させる進退機構を有する、請求項7に記載のめっき装置。
【請求項11】
前記第2部材に、前記基板の端面に当接することで前記基板の水平方向位置を規定する位置決め用部材が設けられている、請求項1ないし4のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項12】
前記位置決め用部材の側面のうち前記基板に向く側面は、下方ほど前記基板から遠ざかるテーパー面となっている、請求項11に記載のめっき装置。
【請求項13】
前記基板保持部は、各々が前記基板を把持する複数の前記チャック機構を一体的に水平方向に往復移動させる揺動機構を有する、請求項1ないし4のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項14】
前記基板を下方から支持しつつ回転することで前記基板を水平方向に搬送する搬送ローラーを備え、
前記揺動機構が前記チャック機構を往復移動させる際、該往復移動に同期して前記搬送ローラーが回転方向を変化させる、請求項13に記載のめっき装置。
【請求項15】
前記昇降機構は、前記第1部材および前記第2部材が前記処理槽内に進入して前記めっき液に接液する下部位置と、前記第1部材および前記第2部材が前記処理槽よりも上方に退避した上部位置との間で前記第1部材および前記第2部材を昇降させ、
前記上部位置にある前記第1部材および前記第2部材に対して、気流および洗浄液の少なくとも一方を吹き付ける洗浄機構をさらに備える、請求項8に記載のめっき装置。
【請求項16】
前記基板保持部は、前記チャック機構を水平方向に移動させる移動機構を有し、
前記洗浄機構は、前記移動機構による前記チャック機構の移動経路に沿って設けられ、前記洗浄機構との対向位置を通過する前記第1部材および前記第2部材に対して前記気流および前記洗浄液の少なくとも一方を吹き付ける、請求項15に記載のめっき装置。
【請求項17】
各々が複数の前記チャック機構を有する2組の前記基板保持部を備え、
当該2組の前記基板保持部のうち一方の前記基板保持部に設けられた前記移動機構と他方の基板保持部に設けられた前記移動機構とが、当該2組の前記基板保持部の各々に設けられた前記チャック機構を選択的に前記処理槽の上方に位置決めし、
前記洗浄機構は、前記処理槽の上方に位置決めされた前記チャック機構とは異なる前記チャック機構の前記第1部材および前記第2部材に対して前記気流および前記洗浄液の少なくとも一方を吹き付ける、請求項16に記載のめっき装置。
【請求項18】
2組の前記基板保持部のうち一方に、前記移動機構による移動方向と直交する方向に前記チャック機構を退避移動させる退避機構が設けられる、請求項17に記載のめっき装置。
【請求項19】
矩形の基板の少なくとも一方主面をめっきするめっき方法であって、
めっき液が貯留された処理槽内で、基板保持部により前記一方主面を上向きにした水平姿勢で前記基板を保持して前記めっき液に浸漬し、
前記基板保持部は、カソード電極が設けられ前記カソード電極を前記一方主面に接触させながら前記基板を把持するチャック機構を複数有し、
前記基板の辺のうち少なくとも互いに対向する2辺の各々に対し、少なくとも1つずつ前記チャック機構が配置され、
前記処理槽内のめっき液に接液するアノード電極と前記カソード電極との間に通電して前記一方主面をめっき処理する、めっき方法。
【請求項20】
前記基板保持部は、各々が前記基板を把持する複数の前記チャック機構を一体的に水平方向に往復移動させて、前記処理槽内で前記基板を揺動させる、請求項19に記載のめっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばプリント配線基板やガラス基板等の矩形基板の一方主面をめっきするめっき装置およびめっき方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、プリント配線基板、ガラス基板等の各種基板の表面に対し、めっきにより金属薄膜を形成する技術が広く用いられている。例えば特許文献1に記載のめっき装置では、めっき液を貯留する処理槽に搬送されてくる基板の一端部を、カソード電極が設けられたクランプにより把持し、該クランプが移動することで基板を処理槽内で搬送しながらめっき処理が施される。
【0003】
また、特許文献2に記載のめっき装置では、カソード電極が設けられ中央部が開口する環状の基板ホルダで基板の周縁部が把持される。そして、基板ホルダが吊り下げられた状態でめっき液を貯留する処理槽に浸漬されることにより、基板がめっき液により処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4268874号公報
【特許文献2】特開2021-031718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では基板の大版化が進んでおり、例えば1辺が1メートルを超えるような大型基板も製造されている。しかしながら、上記の従来技術はこのような大型基板を扱うのには適していない。すなわち、特許文献1に記載の技術は、基板の周縁部の一部のみをクランプにより把持し基板を搬送する構成となっている。このような構成では、基板は片持ち状態となっており、大型基板の姿勢を維持することが困難である。また、基板とカソード電極との接触面積が小さく、基板の表面内では電極との距離が位置により大きく異なるため、めっき処理により均一な皮膜を形成することが難しい。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術では、基板が大型になるとその周囲を取り囲む基板ホルダとしても大型のものが必要となり、めっき装置の装置規模が極めて大きくなってしまう。また、基板の大きさや形状に合わせて基板ホルダを用意する必要があり、基板の変更に容易に対応できない。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、大型の基板でも姿勢を適正に維持し、しかも均一な皮膜を得ることのできるめっき装置およびめっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様は、矩形の基板の少なくとも一方主面をめっきするめっき装置であって、めっき液を貯留する処理槽と、前記処理槽内のめっき液に接液するアノード電極と、前記処理槽内で、前記一方主面を上向きにした水平姿勢で前記基板を保持する基板保持部とを備えている。ここで、前記基板保持部は、カソード電極が設けられ前記カソード電極を前記一方主面に接触させながら前記基板を把持するチャック機構を複数有し、前記基板の辺のうち少なくとも互いに対向する2辺の各々に対し、少なくとも1つずつ前記チャック機構が配置される。
【0009】
また、本発明の他の一の態様は、矩形の基板の少なくとも一方主面をめっきするめっき方法であって、めっき液が貯留された処理槽内で、基板保持部により前記一方主面を上向きにした水平姿勢で前記基板を保持して前記めっき液に浸漬する。ここで、前記基板保持部は、カソード電極が設けられ前記カソード電極を前記一方主面に接触させながら前記基板を把持するチャック機構を複数有し、前記基板の辺のうち少なくとも互いに対向する2辺の各々に対し、少なくとも1つずつ前記チャック機構が配置されている。そして、前記処理槽内のめっき液に接液するアノード電極と前記カソード電極との間に通電して前記一方主面をめっき処理する。
【0010】
このように構成された発明では、矩形基板は少なくとも互いに対向する2辺をチャック機構により把持された状態の水平姿勢でめっき処理される。互いに対向する2辺が把持されることにより、基板は水平姿勢を安定的に維持することが可能である。また、基板の両端部それぞれでカソード電極を一方主面に接触させることができるので、基板の各位置における電極との距離を小さくして、均一な皮膜を形成することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、本発明では、水平姿勢の矩形基板の辺のうち少なくとも互いに対向する2辺が、カソード電極を備えたチャック機構により把持される。このため、大型の基板であっても、その姿勢を安定的に維持し、めっき処理により均一な皮膜を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るめっき装置の第1実施形態の概略構成を示す図である。
図2】めっき処理部の概略構成を示す正面図である。
図3図2のA-A線矢視図である。
図4】チャック機構の概略構成を示す図である。
図5】チャック機構を支持する機構の構造を示す図である。
図6】上側チャックの下部構造を示す図である。
図7】各部の動作を模式的に示す図である。
図8】チャック機構による基板の把持動作を示す図である。
図9】把持動作における上側および下側チャックの動きを示す拡大図である。
図10】位置決め用部材の形状および作用を示す図である。
図11】揺動動作を説明する図である。
図12】チャック洗浄処理を説明する図である。
図13】第1実施形態のめっき装置の変形例を説明する図である。
図14】この発明に係るめっき装置の第2実施形態を説明するための図である。
図15】この発明に係るめっき装置の第3実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るめっき装置の具体的態様について、いくつかの実施形態を示して説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は本発明に係るめっき装置の第1実施形態の概略構成を示す図である。このめっき装置1は、半導体基板、プリント配線基板、ガラス基板等の各種基板S(以下、単に「基板」という)の少なくとも一方主面に、金属(例えば金)の皮膜を電解めっきにより形成する装置である。以下の説明のために、XYZ直交座標系を図1に示すように定義する。図1はめっき装置1の側面視を示す図であり、水平かつ図1紙面に垂直な方向をX方向、これと直交する水平かつ図1紙面に沿った方向をY方向とする。また、鉛直方向をZ方向とする。また、各図において、点線矢印は各部材の移動方向を表すものとする。
【0015】
めっき装置1は、複数のフレーム部材を組み合わせて構成された筐体10に、後述する各部が組み付けられた構成を有している。なお、図1および以下の各図においては、図面が煩雑になるのを避けるために、一部構成の記載を適宜省略することがある。具体的には、部品を保持するための保持機構、部品を覆うカバー、それらを筐体10に取り付けるための機構など、発明の成立に対する寄与度が比較的低く、またその構造について適宜の公知技術を適用可能であり特段の説明を要しないと考えられる構成については、図示を省略することがある。
【0016】
図1はめっき装置1の正面図である。めっき装置1には、基板SをY方向に沿って搬送する搬送部2が設けられている。搬送部2は、図示しない支持機構により各々がX方向を軸方向として回転自在に支持され、Y方向に沿って並べられた複数の搬送ローラー21を備えている。図示しない駆動機構により搬送ローラー21を回転させることで、搬送部2は、基板Sを水平姿勢でY方向に搬送する。矩形の基板Sは、周囲の4辺のうち1辺を先頭にして搬送される。以下では、基板Sの搬送方向を符号Dtにより表す。
【0017】
めっき装置1はさらに、搬入部3、めっき処理部4、リンス処理部5、搬出部6、電源部7および制御部8を備えている。搬入部3、めっき処理部4、リンス処理部5および搬出部6は搬送部2による基板の搬送方向Dt(Y方向)に沿って、この順番で並べられている。すなわち、このめっき装置1では、基板Sは、搬送部2によりY方向に搬送されながら、上記各処理部において必要な処理を施される。
【0018】
搬入部3は、外部から搬送されてくる未処理の基板Sを受け取って一時的に保持し、必要なタイミングで該基板Sをめっき処理部4へ供給する。めっき処理部4は、本発明に係るめっき方法を実行する処理主体となるものであり、基板Sをめっき液に浸漬してめっき処理を行う。その構成および動作については後に詳しく説明する。
【0019】
リンス処理部5は、リンス槽51と、バット52と、リンス液給排部59とを備えている。リンス槽51は、基板Sを収容するのに十分なサイズを有する内部空間にリンス液を貯留可能となっている。リンス槽51のY方向側側面のうち搬送経路Pと重なる部分には開口部が設けられ、該開口部に対してシャッター51a,51bが開閉自在に設けられている。
【0020】
バット52は、リンス槽51の下方に配置され、リンス槽51からこぼれたリンス液を受ける。リンス液給排部59は、必要に応じてリンス槽51にリンス液を供給しまたリンス槽51からリンス液を排出する。リンス処理部5は、めっき処理部4でめっき液に浸漬された基板Sに対しリンス処理を施す。リンス液としては例えば水が用いられる。搬出部6は、リンス処理後の基板Sが外部の搬送装置により後処理工程へ払い出されるまでの間、基板Sを一時的に留置する。
【0021】
電源部7は、装置各部に必要な電力を供給する。制御部8は、上記のように構成された装置各部を制御し、めっき装置1に所定の処理を行わせる。制御部8のハードウェア構成としては、例えば一般的なコンピューター装置と同様のものを用いることができる。すなわち、制御部8に設けられたCPU(図示省略)が予め準備された制御プログラムを実行することで、後述する各種の処理を実現することができる。以下では特に説明しないが、装置各部は制御部8からの制御指令に基づいて動作する。
【0022】
図2はめっき処理部の概略構成を示す正面図である。また、図3図2のA-A線矢視図であり、めっき処理部4をY方向に見た側面図に相当する。めっき処理部4は、めっき槽41と、バット42,44と、チャック部40と、めっき液給排部49とを備えている。めっき槽41は、基板Sを収容するのに十分なサイズを有する内部空間にめっき液を貯留可能となっている。バット42は、めっき槽41の下方に配置され、こぼれためっき液を受ける。チャック部40は、めっき槽41の上方に配置され、めっき処理を受ける基板Sを保持する。バット44は、めっき槽41の下方のバット42に対し(-Y)側に隣接して配置されている。めっき液給排部49は、必要に応じてめっき槽41にめっき液を供給しまためっき槽41からめっき液を排出する。
【0023】
図2に示すように、めっき槽41の(-Y)側側面および(+Y)側側面のうち搬送経路Pと重なる部分には開口部が設けられ、該開口部には開閉自在のシャッター41a,41bがそれぞれ設けられている。シャッター41a,41bの開状態では、めっき槽41の側面に設けられた開口部を介して、搬送部2により搬送経路Pを搬送される基板Sを通過させることができる。これにより、めっき槽41への未処理基板Sの搬入およびめっき槽41からの処理済み基板Sの搬出が可能となる。
【0024】
一方、閉状態ではめっき槽41の側面に設けられた開口部が閉塞される。このとき基板Sの搬送経路Pは遮断されるが、めっき槽41の内部には、開口部の高さを超えてめっき液を貯留することが可能となる。(-Y)側のシャッター41aの開状態でめっき槽41に基板Sが収容された後、シャッター41aが閉じられ、めっき槽41の内部空間がめっき液Lで満たされることにより、基板Sがめっき液Lに浸漬されめっき処理される。その後、めっき液が排出され(+Y)側のシャッター41bが開かれると、めっき処理後の基板Sがリンス部5へ搬出される。シャッター41a,41bの動作については、互いに独立して開閉してもよく、また一体的に開閉してもよい。
【0025】
めっき槽41内で搬送経路Pの上方には、アノード電極45が配置されている。アノード電極45は電源部7と電気的に接続される。めっき液Lはアノード電極45が接液するのに十分な量、めっき槽41に貯留される。後述するように、めっき槽41内で基板Sを保持するチャック機構にカソード電極が設けられており、これらの電極間に電源部7から直流電圧が印加されることで、基板Sの表面に電解めっきによる皮膜が形成されることになる。
【0026】
図3に示すように、めっき槽41に収容される基板SのX方向両端部のそれぞれに対応して2組のチャック部40が配置されている。これら2組のチャック部40はYZ平面に対して対称に配置されているが、基本的な構造は同一である。すなわち、各チャック部40は、少なくとも1つのチャック機構400と、チャック機構400を支持する支持フレーム430と、支持フレーム430をY方向に移動させる移動機構43とを備えている。
【0027】
この実施形態では、1つの支持フレーム430に対して3組のチャック機構400が取り付けられており、これらは支持フレーム430の移動に伴い、一体的にY方向に移動する。これにより、図2に示すように、各チャック機構400は、めっき槽41の上方に位置する「めっき位置」と、バット44の上方に位置する「洗浄位置」との間をY方向に往復移動可能となっている。後述するように、チャック機構400は基板Sを把持してめっき槽41内での基板Sの姿勢を安定的に維持するとともに、内蔵されたカソード電極を基板Sの一方主面に接触させることで、当該一方主面に電解めっきによる皮膜を形成させる。
【0028】
図3に示すように、搬送ローラー21の回転軸22には回転モーター23が結合されている。制御部8からの制御指令に応じ回転モーター23が回転することで搬送ローラー21が回転し、これにより基板SがY方向に搬送される。なお、一部のローラーについては駆動源が接続されない従動ローラーであってもよい。
【0029】
図4はチャック機構の概略構成を示す図である。また、図5はチャック機構を支持する機構の構造を示す図である。図4(a)はチャック機構400の構造を模式的に示す斜視図であり、図4(b)はチャック機構400による基板Sの把持状態を示す図である。なお、以下においてチャック機構400の構造および作用について説明する際、主として基板Sの(-X)側端部を保持するチャック機構400を例示して説明を行うが、同じ構造をZ軸回りに反転させて考えることにより、基板Sの(+X)側端部を保持するチャック機構の構造および動作を理解することが可能である。また、図の視認性を高めるため、図4(a)ではチャック機構400の構成のうち一部の図示を省略し、それらについては図5に記載している。
【0030】
チャック機構400は、互いに独立して昇降可能な上側チャック411と下側チャック421とで基板SのX方向端部を把持する。具体的には、上側チャック411および下側チャック421はそれぞれY方向を長手方向として細長く延びる平板状部材であり、上側チャック411の下面411bが基板Sの上面Saのうち(-X)側端部に当接し、下側チャック421の上面421aが基板Sの下面Sbのうち(-X)側端部に当接することで、基板Sを把持する。実際には、上側チャック411の下面411bにはカソード電極412が取り付けられており、カソード電極412が基板Sの上面Saに接触することとなる。
【0031】
つまり、図4(b)に示すように、下側チャック421は、高さ方向(Z方向)における基板Sの位置を規定する作用を有するとともに、上側チャック411に設けられたカソード電極412を基板Sに接触させるのに際してそのバックアップとしての作用をも有する。これにより、基板Sの高さ方向位置が安定的に維持され、またカソード電極412と基板上面Saとの電気的接触を確実にすることができる。
【0032】
上側チャック411の上面411aには、Z方向に延びるシャフト部材413が取り付けられており、シャフト部材413は昇降機構414により昇降自在に支持されている。上側チャック411は例えばねじを用いてシャフト部材413に固結され着脱自在(すなわち交換可能)となっている。昇降機構414は、ソレノイド、リニアモーター、ボールねじ機構等の適宜の直動機構を有しており、シャフト部材413を昇降させる。これにより、シャフト部材413の下端に取り付けられた上側チャック411が昇降する。ここでは、上側チャック411、シャフト部材413、昇降機構414等を含んで一体的に構成されたユニットを「上側チャックユニット410」と称する。
【0033】
同様に、下側チャック421の上面421aには、Z方向に延びるシャフト部材423が取り付けられており、シャフト部材423は昇降機構424により昇降自在に支持されている。下側チャック421は例えばねじを用いてシャフト部材423に固結され着脱自在となっている。昇降機構424は、例えばソレノイド、リニアモーター、ボールねじ機構等の適宜の直動機構を有しており、シャフト部材423を昇降させる。これにより、シャフト部材423の下端に取り付けられた下側チャック421が昇降する。ここでは、下側チャック421、シャフト部材423、昇降機構424等を含んで一体的に構成されたユニットを「下側チャックユニット420」と称する。
【0034】
上側チャックユニット410は、支持部材401に取り付けられている。具体的には、上側チャックユニット410は、固定部材404を介して支持部材401に固定されている。したがって、上側チャック411は、支持部材401に対しては昇降移動のみが可能である。一方、下側チャックユニット420は、進退機構402を介して支持部材401に取り付けられている。具体的には、下側チャックユニット420が取り付けられた支持部材403が、X方向を可動方向とする進退機構402の可動部に結合されている。進退機構402は、例えばソレノイド、エアシリンダー、リニアモーター、ボールねじ機構等の適宜の直動機構を有しており、その本体部が支持部材401に固定されている。支持部材401の下部にはガイドレール405が設けられ、ガイドレール405に係合されたスライダー406が下側チャックユニット420に結合されている。
【0035】
このため、進退機構402の作動により、下側チャックユニット420は、図示しないストッパーにより規定される可動範囲内でX方向に移動可能となっている。したがって、下側チャック421は、支持部材401に対し、昇降機構424の作動による昇降移動と、進退機構402によるX方向の進退移動とが可能となっている。
【0036】
下側チャック421が可動範囲内で最も(+X)側まで進出した状態では、図4(b)に実線で示すように、下側チャック421の(+X)側先端部が基板Sの端面よりも(+X)側に位置し、下側チャック421の上面421aが基板Sの下面Sbを支持することができる。一方、図4(b)に点線で示すように、下側チャック421が可動範囲内で最も(-X)側まで後退した状態では、下側チャック421の(+X)側先端部は基板Sの端面よりも(-X)側に退避している。このため、下側チャック421が昇降する際に基板Sに接触することが回避される。
【0037】
チャック機構400では、上側チャック411と下側チャック421とが協働してめっき槽41内で基板Sを把持する。具体的には、めっき位置に位置決めされたチャック機構400から上側チャック411と下側チャック421とがめっき槽41内まで下降し、搬送ローラー21により支持される基板Sの高さと同じ高さで基板Sの端部を把持する。このため、めっき槽41内において基板Sは、上面が平坦な水平姿勢で保持されることになる。このときの上側チャック411および下側チャック421のZ方向位置を、以下では「下部位置」と称することとする。
【0038】
チャック機構400は、複数の部品を枠状に組み合わせてなる支持フレーム430に取り付けられる。具体的には、チャック機構400の支持部材401が支持フレーム430に固定されることで、チャック機構400が支持フレーム430により支持される。図2に示すように、この実施形態では、Y方向を長手方向として延びる支持フレーム430に3組のチャック機構400が取り付けられている。
【0039】
支持フレーム430は、走行機構43によりY方向に移動自在に支持される。より具体的には、走行機構43は、めっき処理部4の上方で筐体10に固定されY方向に延設されたガイドレール431と、ガイドレール431に係合されたスライダー432と、ガイドレール431に沿ってスライダー432をY方向に移動させる、図示しない駆動源とを備えている。これらの構成としては、適宜の直動機構、例えばリニアモーター、チェーン駆動機構、ベルト駆動機構等を適用可能である。例えば、これらの構成が予め一体化された単軸ロボットを好適に適用することができる。
【0040】
スライダー432には、下方へ延びるチャック支持部材433が取り付けられている。そして、チャック支持部材433の下端に、支持フレーム430が結合されている。したがって、スライダー432がガイドレール431に沿ってY方向に移動するとき、支持フレーム430およびこれに取り付けられたチャック機構400が一体的にY方向に移動する。つまり、制御部8からの制御指令に応じて走行機構43が作動しスライダー432を走行させることにより、チャック機構400はY方向に移動する。
【0041】
支持部材430に複数のチャック機構400が取り付けられているとき、それらのチャック機構400が一体的にY方向に移動することになる。これにより各チャック機構400は、めっき槽41の上方に位置するめっき位置と、バット44の上方に位置する洗浄位置との間で往復移動が可能となっている。なお、例えば図1図2に示すように、1つの支持フレーム430に対してスライダー432およびチャック支持部材433が複数組取り付けられてもよい。これにより、複数のチャック機構400が取り付けられた状態でも、支持フレーム430の姿勢を安定させ、また確実に移動させることが可能になる。
【0042】
このような構造により、上側チャック411および下側チャック421は以下のような動きを取り得る。すなわち、上側チャック411と下側チャック421とは、昇降機構412,422の作動により、互いに独立して昇降可能である。また、進退機構402の作動により、下側チャック421は、上側チャック411に対してX方向に進退移動可能である。そして、走行機構43の作動により、上側チャック411と下側チャック421とは一体的に、Y方向に移動可能である。
【0043】
走行機構43がチャック機構400をY方向に移動させるとき、上側チャック411および下側チャック421は、昇降機構412,422により上方に退避した状態となる。これにより、移動の際に上側チャック411および下側チャック421がめっき槽41の壁面に接触することが未然に防止されている。このときの上側チャック411および下側チャック421のZ方向位置を、以下では「上部位置」と称することとする。
【0044】
後述するように、この実施形態では複数のチャック機構400は基本的に同じタイミングで同じ動作をする。このため、制御部8によるチャック機構400の制御については、各チャック機構400に対し独立して行われてもよく、また並列的に行われてもよい。
【0045】
図6は上側チャックの下部構造を示す図である。図6(a)に示すように、上側チャック411の下面411bには、Y方向に延びるプレート状のカソード電極412が設けられている。カソード電極は電源部7と電気的に接続される。また、カソード電極412の周囲を取り囲むように、弾性材料により環状に形成されたシール部材415が設けられている。図6(b)に示すように、シール部材415の下端はカソード電極412の下面よりも下側まで延びている。
【0046】
このため、図6(c)に示すように、カソード電極412が基板Sの上面Saに接触するとき、シール部材415は弾性変形してカソード電極412の周囲を気密状態に取り囲む。したがって、基板Sがめっき液に浸漬される際にも、カソード電極412はめっき液に接触することなくドライ状態に維持される。このため、めっき液との接触に起因するカソード電極412の腐食や皮膜の形成を防止することができる。
【0047】
このように、上側チャック411の下面に設けられたカソード電極412が基板Sの一方主面、具体的には上面Saに接触し、また基板Sの上方には上面Saと対向するようにアノード電極45が配置されている。これらの電極間に電源部7から直流電圧が印加されることで、基板Sの上面Saに電解めっきによる金属皮膜を形成することができる。
【0048】
チャック機構400は、基板SのX方向両端部、つまり、搬送方向Dtに直交する幅方向の両端部において基板Sを把持する。そして、Y方向、つまり基板Sの搬送方向Dtに沿って複数設けられたチャック機構400により、基板SのX方向両端部ではその大部分が把持されている。チャック機構400は、基板Sを把持することでその姿勢を安定的に維持することに資するほか、Y方向に延びるカソード電極412を基板Sに接触させることで広い範囲に均一な電位を付与することができる。このため、このめっき装置1は、基板Sに対し均一性の良好なめっき皮膜を形成することが可能である。
【0049】
この他、めっき装置1には、チャック機構400に付着しためっき液を除去しチャック機構400を洗浄するための洗浄機構が設けられている。洗浄機構の構成およびその動作については後に詳しく説明する。
【0050】
次に、上記のように構成されためっき装置1の動作について説明する。めっき装置1の基本的な動作の流れは概略以下の通りである。未処理の基板Sは搬入部3に搬入される。基板Sは搬入部3からめっき処理部4に搬送され、めっき処理部4は基板Sに対して電解めっき処理を実行し、その表面(上面Sa)に金属皮膜を形成する。めっき処理された基板Sはリンス処理部5でリンス処理を受け、最終的に搬出部6へ搬出される。
【0051】
図7は各部の動作を模式的に示す図である。より具体的には、図7は、時刻Tの経過に沿った各部の動作を、上から下に向かう方向を時間軸として示したものである。時刻T0において搬入部3に未処理の基板Sが与えられた後、装置各部は次のような動作を実行する。図において括弧内は各部の初期状態を表している。また、図7において、各処理部の縦線が太線で表されている部分は、基板Sが当該処理部に存在していることを意味している。
【0052】
初期状態において、チャック機構400はめっき槽41上方のめっき位置に位置決めされ、上側チャック411および下側チャック421はめっき槽41と干渉しない上部位置に位置決めされている。なお、搬送経路Pに沿った基板Sの搬送の障害とならない限りにおいて、上側チャック411および下側チャック421はより下方に位置決めされていてもよい。
【0053】
搬入部3では、搬入された基板Sが一時的に留置されている。めっき処理部4では、めっき槽41のシャッター41a,41bが開かれ、搬送経路Pに沿った基板Sの搬送が可能となっている。このとき、めっき槽41内には、めっき液給排部49から供給されためっき液が開口部から流出しない程度の高さまで貯留されている。リンス処理部5においても、リンス槽51のシャッター51a,51bが開かれ、搬送経路Pに沿った基板Sの搬送が可能な状態となっている。搬出部6には、この時点では基板Sは存在しない。
【0054】
時刻T1において搬送部2が基板Sの搬送を開始し、基板Sは搬送経路Pに沿って搬送方向Dt(Y方向)に搬送され、最終的にめっき槽41まで搬送されてくる。図7において破線矢印は、搬送部2による基板Sの移送を表している。
【0055】
基板Sがめっき槽41内に搬入され搬送が停止されると、シャッター41a,41bが閉じられる。これと並行して、チャック機構400の上側チャック411および下側チャック421が下降し、基板Sを把持する。そして、めっき液給排部49からめっき槽41にめっき液Lが供給され、基板Sがチャック機構400に把持された状態でアノード電極45とカソード電極412との間に直流電圧が印加されて、電解めっき処理が行われる。
【0056】
図8はチャック機構による基板の把持動作を示す図であり、図9はこのときの上側および下側チャックの動きを示す拡大図である。図8(a)および図8(b)に示すように、搬入部3に搬入された基板Sは、搬送部2の搬送ローラー21の回転により搬送方向Dtに搬送され、最終的には図8(c)に示すようにめっき槽41に搬入される。基板Sがめっき槽41に搬入されるとシャッター41a,41bは閉じられる。めっき槽41に収容された基板Sに向けてチャック機構400の上側チャック411および下側チャック421が下降し、図8(d)に示すように基板Sを把持する。この状態でめっき液がめっき槽41に供給されることで、基板Sがめっき液に浸漬される。
【0057】
把持動作における上側チャック411および下側チャック421の動きは以下の通りである。図9(a)に示すように、上側チャック411および下側チャック421が上部位置に位置した状態から、まず下側チャック421が下部位置に向けて移動してくる。このとき下側チャック421は、基板Sの(-X)側端部に干渉しないように、(-X)方向側に退避した状態で下降してくる。図9(b)に示すように、下側チャック421は、二点鎖線で示す基板Sの下面Sbの位置よりも少し低い位置まで下降した後、基板Sに向けて(+X)方向に移動する。
【0058】
図9(c)に示すように、下側チャック421が所定の位置まで進出した後、僅かに上昇することで、下側チャック421の上面421aが基板Sの下面Sbに当接する。このとき、基板Sが上面Saを平坦にした水平姿勢を維持するように、下側チャック421の位置が設定されている。つまり、チャック機構400により把持される基板Sの端部の高さが、搬送ローラー21によって支持される基板Sの中央部の高さと同じになるように、下側チャック421の高さ方向位置が規定されている。
【0059】
一方、図9(c)および図9(d)に示すように、上側チャック411も上部位置から下部位置へ向けて下降し、下側チャック421により下面Sbが支持された基板Sの上面Saに当接する。このとき、上側チャック411の下面、厳密には上側チャック411の下面411bに設けられたカソード電極412の下面が、基板Sの上面Saに接触する。こうしてチャック機構400による基板Sの把持と、基板Sの上面Saとカソード電極412との電気的接触とが完了する。
【0060】
搬送経路Pに沿った搬送の過程で、基板Sの姿勢がばらつくことがあり得る。また、めっき槽41における基板Sの停止位置が所定位置からずれることがあり得る。これに起因する処理結果のばらつきを抑えるため、例えば次に示すように、下側チャック421に位置決め用部材が装着されることが好ましい。
【0061】
図10は位置決め用部材の形状および作用を示す図である。位置決め用部材426は、下側チャック421の上面421aに装着される部材であり、位置決め用部材426自体のXZ断面における断面形状は、倒立台形となっている。つまり、その(+X)側端面は、図10(a)に示すように、下方に向かうほど(-X)側に後退するテーパー形状となっている。なお、位置決め用部材426については、(+X)側端面がこのようにテーパー形状となっていればよく、他の部分の形状については図示のものに限定されない。
【0062】
基板Sを把持すべく下側チャック421が基板Sに向けて(+X)方向に移動する際、図10(b)に示すように、位置決め用部材426が基板Sの(-X)側端面に当接することで、X方向における基板Sの位置が規制される。基板Sの(-X)側端部と(+X)側端部とのそれぞれでこのように位置決め用部材426が基板Sの端面に当接させることで、X方向における基板Sの位置を適正化することができる。
【0063】
この状態から下側チャック421が上昇し基板Sの下面Sbに当接する際、位置決め用部材426の(+X)側端面がテーパー形状となっているため、図10(c)に示すように、位置決め用部材426は基板Sの端面から離間する。したがって、下側チャック421が上昇する際に位置決め用部材426が基板Sの端面を擦過することが回避される。
【0064】
位置決め用部材426は、X方向に長く延びるように設けられてもよく、また短い位置決め用部材426がX方向に離隔して複数設けられる構成でもよい。これらの構成により、基板Sが搬送経路Pに対し鉛直軸まわりに傾く、いわゆるスキュー状態を解消することができる。
【0065】
図7に戻って装置の動作説明を続ける。めっき槽41にめっき液Lが供給され基板Sが浸漬された状態で電極間に電圧が印加されることで、基板Sがめっき処理される。基板Sの上面SaのうちX方向の両端部に、Y方向に長く延びるカソード電極412が接触していることで、基板Sの上面Saにおける電界強度のばらつきが抑えられ、均一性の良好なめっき皮膜を形成することが可能となる。このとき、チャック機構400と搬送ローラー21とが連動して基板Sをめっき槽41内で揺動させることで、めっき皮膜の均一性をより向上させることができる。
【0066】
図11は揺動動作を説明する図である。走行機構43の作動により、チャック機構400を支持する支持フレーム430が図11上部に示す(+Y)方向への移動と、図11下部に示す(-Y)方向への移動とを交互に繰り返すことで、支持フレーム430に取り付けられたチャック機構400が一体的にY方向に往復移動し、チャック機構400に保持された基板Sがめっき液L内でY方向に揺動する。
【0067】
このとき、搬送ローラー21は支持フレーム430と連動する。すなわち、図11上部に示すように支持フレーム430が(+Y)方向へ移動しチャック機構400が基板Sを(+Y)方向に移動させるとき、搬送ローラー21は正転、つまり基板Sを搬送方向Dtに搬送する方向に回転する。一方、図11下部に示すように支持フレーム430が(-Y)方向へ移動しチャック機構400が基板Sを(-Y)方向に移動させるとき、搬送ローラー21は逆転、つまり基板Sを搬送方向Dtとは反対の方向(-Dt)に搬送するように回転する。
【0068】
このようにめっき液L中で基板Sを揺動させることで、めっき液Lを撹拌して液中イオン濃度の偏りを低減させ、めっき皮膜の均一性を高めることができる。めっき槽41内での基板Sの揺動は、基板Sの端部を把持するチャック機構400と、基板Sの中央部を下面側から支持する搬送ローラー21との連動によって実現される。このため、基板Sに局所的な応力が加わるのを防止し、水平姿勢を維持しつつ基板Sを揺動させることが可能となる。
【0069】
再び図7の説明に戻る。基板Sをめっき液Lに浸漬し、電極間に電圧を印加しつつ基板Sを揺動させる状態を一定時間継続した後、電圧印加が停止されめっき液Lが排出されることで、めっき処理が停止される。そして、チャック機構400による基板Sの把持が解除され、シャッター41bが開かれて、時刻T2において、搬送部2は基板Sをめっき処理部4からリンス処理部5へ移送する。チャック機構400による基板把持の解除は、図9に示した動作を逆順に実行することにより実現可能である。
【0070】
リンス処理部5では、リンス槽51に基板Sが収容されるとシャッター51a,51bが閉じられ、リンス液給排部59からリンス液が供給されて、基板Sがリンス処理される。リンス処理が所定時間行われた後、リンス液が排出されシャッター51bが開かれて、時刻T3において基板Sは搬出部6に排出される。
【0071】
なお、めっき槽41からのめっき液の排出およびリンス槽51からのリンス液の排出においては、槽内の液体を完全に排出することを要しない。すなわち、槽内で支持される基板Sが液体から露出し搬出可能となる程度まで液体が排出されている限りにおいて、槽内に液体が残留していることは問題ない。むしろ、液体を残留させておくことで、次の基板Sに対する処理の際に槽内を満たすのに必要な液体の量を低減させることが可能となる。このことは、液体の消費量を少なくし環境負荷を低減させることに資する。
【0072】
一方、基板Sの把持を解除した後のチャック機構400は、上側チャック411および下側チャック421に付着しためっき液を除去するための洗浄処理を受ける。チャック洗浄処理は以下のようにして行われる。
【0073】
図12はチャック洗浄処理を説明する図である。ここまで図示を省略してきたが、めっき装置1は洗浄機構9を備えている。洗浄機構9は、めっき槽41よりも(-Y)側でバット42の上方に配置されたエアノズル91と、バット44の上方に配置された洗浄水ノズル92およびエアノズル93とを備えている。図12(a)に示すように、チャック機構400の上側チャック411および下側チャック421は、基板Sの把持を解除した後上方へ退避する。この状態から支持フレーム430が洗浄位置へ向けて(-Y)方向に移動すると、図12(b)に示すように、各チャック機構400の上側チャック411および下側チャック421はそれぞれ、第1洗浄部91、第2洗浄部92および第3洗浄部93との対向位置をこの順番で通過する。
【0074】
図12(c)は第1洗浄部91のより詳しい構造を示す。第1洗浄部91は、エアノズル911,912,913を備えており、上側チャック411および下側チャック421に対して気流を吹き付けて、これらに残留付着しているめっき液を吹き飛ばす。具体的には、エアノズル911は上側チャック411の側方から主としてその上面411aに向けて気流を吹き付ける。エアノズル912は、上側チャック411の下方から上側チャック411の下面411bに向けて気流を吹き付ける。上側チャック411および下側チャック421から落下しためっき液が付着することがあり得るため、エアノズル912を洗浄水により洗浄するための機構が併設されることがより好ましい。エアノズル913は、下側チャック421の側方から主としてその上面421aに向けて気流を吹き付ける。吹き飛ばされためっき液および洗浄水はバット42により受け止められ回収される。
【0075】
第2洗浄部92は、主として上側チャック411に対して洗浄水を吹き付け、その下面411bおよびここに設けられたカソード電極412を洗浄する。具体的には、第2洗浄部92では、図12(c)に示すエアノズル912の位置に洗浄水ノズルが設けられ、該洗浄水ノズルから上側チャック411の下面411bに洗浄水が供給される。これにより、上側チャック411の下面411b、カソード電極412およびシール部材415が洗浄される。第3洗浄部93は、第1洗浄部91と同等の構成を有しており、上側チャック411および下側チャック421に残留付着した洗浄水を気流の吹き付けにより除去しこれらを乾燥させる。第3洗浄部93では、エアノズルを洗浄する機構は必要ない。
【0076】
図12(d)に示すように、支持フレーム430に取り付けられたチャック機構400の全てが洗浄機構9との対向位置を通過することで、それぞれのチャック機構400に設けられた上側チャック411および下側チャック421の洗浄が完了する。その後、支持フレーム430が(+Y)方向に移動して、各チャック機構400はめっき位置に戻る。こうしてチャック機構400が洗浄され、次の基板Sに対する処理を実行する際に、残留付着しためっき液が基板Sに付着するのを防止することができる。
【0077】
次に、複数の基板Sに対し順次めっき処理を実行する場合の各部の動作について検討する。基板Sは、搬入部3、めっき処理部4、リンス処理部5および搬出部6の順に搬送され、図7に太線で示したように、これらの各処理部には一定期間、基板Sが滞留している。原理的には、これらの処理部から基板Sが搬出された直後から次の被処理基板を搬入することが可能である。したがって、1つの基板Sが搬出される度に次の基板Sを送り込むことで、複数の基板Sを効率よく処理することが可能である。
【0078】
ただし、チャック機構400が洗浄位置において洗浄処理を受けている際にその下方で基板Sを通過させる場合、飛散した洗浄水等が基板Sに付着するおそれがある。これを防止するために、搬入部3からめっき処理部4への基板Sの搬入を洗浄処理の終了後に実行することが好ましい。なお、図示しないカバーやシールド部材等の設置により、搬送される基板Sと洗浄機構9とを隔離する構成とすれば、チャック機構400の洗浄と基板Sの搬送とを併行して実行することが可能である。
【0079】
<変形例>
図13は第1実施形態のめっき装置の変形例を説明する図である。上記実施形態のめっき装置1では、基板SのX方向両端部が、Y方向に延びるカソード電極412を備える3組のチャック機構400によりそれぞれ把持されている。図13(a)において、斜線を付した領域Rは、基板Sの上面Saのうちチャック機構400により把持されカソード電極412と接触する領域を示している。基板Sは、X方向の両端部のそれぞれで3箇所ずつカソード電極412と接触する。
【0080】
各カソード電極412はY方向に細長く形成されているため、矩形の基板SのうちX方向両側の2辺の大部分と接触する。このようにカソード電極412が基板Sの対向する2辺のうち大部分と接触することで、基板Sの上面Saの広い範囲に均一な電位を付与し、均一なめっき皮膜を得ることが可能になる。
【0081】
ここで、基板Sのサイズが異なる場合にも同様の効果を得られる変形例について説明する。例えば図13(b)に示すように、基板SのY方向長さが上記事例のものよりも大きい場合には、Y方向に並べるチャック機構の数を増加させることで、その長さをカバーすることが可能になる。これとは逆に、基板SのY方向長さが上記事例のものよりも小さい場合には、Y方向に並べるチャック機構の数を減らしてもよい。
【0082】
このように、基板Sの辺の長さに応じてY方向におけるチャック機構の配設数を増減することで、種々のサイズの基板Sに対応することができる。図4に示したようにチャック機構400を独立したユニットとし、支持フレーム430に対して着脱可能な構成としておけば、その配設数および配置を調整することで、基板Sのサイズ変更に対しても柔軟に対応することができる。
【0083】
複数のチャック機構400を同一構造のユニットとしてモジュール化しておき、支持フレーム430についても、チャック機構400を取り付けるための構造(例えばねじ穴)を予備的に複数設けておくことで、このような調整を容易に行うことができる。
【0084】
<第2実施形態>
図14はこの発明に係るめっき装置の第2実施形態を説明するための図である。図13と同様に、図14においても、基板Sの上面Saのうちチャック機構400により把持される領域Rを斜線により示している。上記実施形態では、図13(a)に示したように、X方向、つまり基板Sの搬送方向Dtに直交する幅方向の2辺がチャック機構400により把持される。これにより、めっき槽41内での基板Sの姿勢の安定化および付与電位の均一化が図られている。
【0085】
同様の効果は、Y方向における基板Sの両端部が把持されることによっても得られる。すなわち、図14(a)に示すように、基板Sのうち、Y方向両端部、つまり搬送方向Dtにおける先端部と後端部とがチャック機構により把持される。ここでは先端部と後端部とにそれぞれ2組のチャック機構が設けられるが、1辺の長さに応じてチャック機構の配設数を最適化すればよいことは上記した通りである。また、チャック機構の構成としては、上記実施形態におけるチャック機構400と同一のものを、その配設方向を90度回転させて用いることができる。
【0086】
ここで、特に基板Sの先端部、つまり(+Y)側端部に対応して設けられるチャック機構において、図10に示す位置決め用部材426が設けられたチャック機構400を採用することで、次のような作用効果が得られる。
【0087】
基板Sがめっき槽41に搬入される際、搬送方向Dtにおける基板Sの停止位置がばらつくことがある。これは、例えば搬送経路Pの適宜の位置に基板Sを検出するセンサーを設け、該センサーが基板Sを検出したときに搬送を停止するように構成したとしても、停止までのタイムラグやそのばらつきにより、基板Sを規定の位置で停止させることが困難であるからである。このような停止位置のずれは、基板Sとカソード電極との位置関係のばらつきにつながり、めっき品質の安定性を損なうこととなる。
【0088】
基板Sの幅方向両端部をチャック機構400により把持する構成では、たとえ位置決め用部材426が設けられていたとしても、搬送方向Dtにおける基板Sの位置ずれを補正することができない。一方、搬送方向Dtにおける基板Sの両端部に対応してチャック機構400が設けられる場合、位置決め用部材426はこのような搬送方向Dtの位置ずれを補正することが可能となる。
【0089】
特に、搬送方向Dtにおける基板Sの先端部に対応してチャック機構400が設けられる場合には、図14(b)に示すように、例えば処理槽41への基板Sの搬入に先立って当該チャック機構400の下側チャック421を下部位置まで下降させておき、搬送されてくる基板Sの先端部を位置決め用部材426に突き当てるようにすることで、基板Sの停止位置を一定にすることができる。
【0090】
<変形例>
第1および第2実施形態の変形例として、図14(c)に示すように、基板Sの4辺全てに対応するようにチャック機構が配置されてもよい。各々のチャック機構としては、図4に示したチャック機構4と同一構造のものを用いることができる。このような構成では、基板Sの4辺にカソード電極が接触するため、基板Sの上面Saに対し付与される電位の均一性は最良となり、めっき皮膜の品質としては最も良好なものが得られる。
【0091】
このように、チャック機構は、矩形基板の4辺のうち少なくとも対向する2辺に対して設けられることが望ましい。これにより、基板の姿勢を安定的に維持し、また広い範囲に均一な電位を付与することで、めっき品質を向上させることができる。4辺の全てをチャック機構により把持することで、その効果は最大となる。
【0092】
<第3実施形態>
上記した第1実施形態のめっき装置1では、基板Sとともにめっき液に浸漬された上側チャック411および下側チャック421を洗浄するために、チャック機構400を(-Y)方向に洗浄位置まで移動させて洗浄処理を行う必要がある。このための動作が、複数基板を連続的に処理する際のタクトタイム短縮の障害となることがあり得る。この問題を解消するために、以下のような実施形態が考えられる。
【0093】
図15はこの発明に係るめっき装置の第3実施形態の構成を示す図である。より具体的には、図15(a)は第3実施形態のめっき装置1Aにおけるめっき処理部4Aの概略構成を示す正面図であり、図15(b)はその側面図である。第1実施形態のめっき装置1と共通の構成を用いることができるものについては、可能な限り第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のめっき装置1Aは、第1実施形態のめっき装置1に設けられたものと同等の2組のチャック部40に加えて、これらを挟むようにもう2組のチャック部47を備えている。
【0094】
すなわち、一方のチャック部47は、(-X)側のチャック部40よりもさらに外側、つまり(-X)側に配置されている。他方のチャック部47は、(+X)側のチャック部40よりもさらに(+X)側に配置されている。各チャック部47は、図4に示されるチャック機構400および図5に示される走行機構43を備える点でチャック部40と共通するが、チャック機構400をX方向に移動させるための退避機構470をさらに備える点では相違している。
【0095】
より詳しくは、退避機構470は、走行機構43のうちチャック支持部材433に取り付けられてX方向に延びるガイドレール471を備えている。支持フレーム430はガイドレール471に係合され、退避機構470に設けられた適宜の直動機構472によりX方向に移動可能となっている。すなわち、チャック部47では、退避機構470が作動することで、支持フレーム430に取り付けられたチャック機構400がX方向に所定の可動範囲内で移動可能となっている。
【0096】
チャック部47のチャック機構400がX方向における最も内側に移動した状態では、チャック部40と同様に、上側チャック411および下側チャック421をめっき槽41内に進入させて基板Sを把持することが可能である。一方、チャック部47のチャック機構400がX方向における最も外側に移動した状態(図15(b)に示す状態)では、チャック機構400はチャック部40のチャック機構400よりも外側まで退避する。
【0097】
このような構成によれば、2対のチャック部40,47を交互にめっき位置に位置させ、その間に他方を洗浄位置に移動させて洗浄処理を行うことで、タクトタイムの向上を図ることができる。チャック部40,47の位置を入れ替える際、チャック機構400同士が干渉するのを避けるために、チャック部47のチャック機構400を退避させる必要がある。この目的のために、退避機構470が設けられている。
【0098】
<その他>
以上説明したように、上記各実施形態において、めっき装置1,1Aが本発明の「めっき装置」に相当しており、その処理対象となる基板Sが本発明の「基板」に相当し、基板Sの上面Saが本発明の「一方主面」に相当している。そして、めっき液Lを貯留するめっき槽41が本発明の「処理槽」として機能している。また、チャック機構400が本発明の「チャック機構」として機能し、これを含むチャック部40,47が本発明の「基板保持部」として機能している。また、支持フレーム430が本発明の「支持部材」として機能している。
【0099】
またチャック機構400において、上側チャック411および下側チャック421がそれぞれ、本発明の「第1部材」および「第2部材」として機能しており、これらを昇降させる昇降機構413,423が本発明の「昇降機構」として機能している。また、進退機構402が本発明の「進退機構」として機能している。また、第3実施形態における退避機構470が、本発明の「退避機構」として機能している。
【0100】
また、本実施形態の走行機構43は、チャック機構400をY方向に移動させるものであり、めっき位置と洗浄位置との間で移動させる機能と、めっき処理においてチャック機構400を揺動させる機能とを兼備している。このため、走行機構43は、本発明の「移動機構」および「揺動機構」としての機能を有している。
【0101】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、矩形の基板Sの対向する2辺または4辺全てに対してチャック機構400が設けられる。しかしながら、本発明において、チャック機構は少なくとも対向する2辺に設けられればよい。この意味においては、4辺のうち3辺をチャック機構で把持するようにしてもよい。この場合、基板の位置合わせという観点から、その搬送方向における先端部に当たる辺と、搬送方向に直交する方向で対向する2辺とが把持されることが好ましい。
【0102】
また例えば、上記実施形態は、搬送ローラー21により処理槽41内に搬送されてくる基板Sをチャック機構400が把持する構成となっている。しかしながら、搬送手段はローラーに限定されず任意である。一方、チャック機構により把持した状態で基板を搬送するとの態様も考えられる。この場合、搬送手段は必須の構成ではないが、大型の基板の姿勢を安定的に維持するためには、基板Sの中央部を下方から支持する何らかのバックアップ手段が設けられることが望ましい。
【0103】
また例えば、上記実施形態では、めっき槽41内で基板Sを揺動させる際、チャック機構400の往復移動と連動させて搬送ローラー21の回転方向を切り替えている。このとき、搬送ローラー21の駆動方向を切り替えるのに代えて、搬送ローラー21を駆動源から切り離し、チャック機構400による揺動に対して搬送ローラー21が従動回転するように構成されてもよい。
【0104】
なお、処理対象となる基板については、厳密な意味でいう幾何学的な矩形である必要はない。例えばいずれかの辺に若干の凹凸があるような基板であっても、包絡外形が概略矩形とみなせる形状であれば足りる。
【0105】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係るめっき装置は、例えば基板を下方から支持しつつ水平方向に搬送する搬送部を備え、該チャック機構は、上下方向において、搬送部により支持される基板の位置と同じ位置で基板を把持するように構成されてよい。このような構成によれば、搬送部とチャック機構とにより基板を平坦かつ水平な姿勢に維持することができる。
【0106】
また例えば、搬送部が、基板の辺のうち互いに平行な2辺と平行な方向に基板を搬送する場合、チャック機構は、当該平行な2辺の各々に対し少なくとも1つずつ配置されてもよい。つまり、チャック機構は、基板の搬送方向と直交する幅方向の2辺をそれぞれ把持するように構成されてよい。このような構成によれば、搬送部による基板の支持および搬送と、チャック機構による基板の把持とを組み合わせて、処理層への基板の搬入、めっき処理および処理後の基板の搬出をスムーズに行うことが可能であり、複数基板に対する処理を効率よく行うことが可能となる。
【0107】
この場合、例えばチャック機構は、平行な2辺に加えて、それ以外の少なくとも1つの辺に対して少なくとも1つずつ配置されてもよい。把持される辺の数が増えるほど、基板の姿勢を維持する効果、および均一な電位付与によるめっき品質の向上効果を高めることが可能である。
【0108】
また例えば、チャック機構は、基板の1つの辺に対して2以上配置されてよい。このような構成によれば、辺の長さのうちチャック機構に把持される領域の比率が大きくなり、このことは安定的な姿勢維持に資する。
【0109】
また例えば、基板保持部は、構造および形状が互いに同一である複数のチャック機構を有するものであってよい。このような構成によれば、複数のチャック機構を同一の仕様で製造することが可能となり、製造コストや交換用部品の管理コスト等を削減することができる。
【0110】
この場合、例えば、基板保持部は、複数のチャック機構が取り付けられる支持部材を有し、支持部材は、チャック機構の配設位置および配設数の少なくとも一方を変更可能であってもよい。このような構成によれば、各種サイズに基板に対してチャック機構の配置を容易に最適化することが可能である。
【0111】
また例えば、チャック機構の各々は、基板の一方主面に当接する第1部材と、基板の一方主面と反対側の他方主面に当接する第2部材と、第1部材と第2部材とを相対的に昇降させて基板に対する把持およびその解除を行わせる昇降機構とを有し、カソード電極が第1部材の下面に取り付けられた構造であってよい。このような構成によれば、第1部材と第2部材とで基板を挟み込むことによる基板の把持が、基板に対しカソード電極を確実に接触させるという作用を兼ねることになる。したがって、チャック機構は基板の姿勢を安定させつつ、カソード電極との電気的接続についても安定させることができる。
【0112】
この場合さらに、第1部材の下面に、カソード電極の周囲を取り囲む環状のシール部材が設けられてもよい。このような構成によれば、めっき液中でカソード電極の周囲に気密空間を形成して、カソード電極がめっき液に触れるのを抑制することができる。
【0113】
また例えば、チャック機構の各々は、第1部材に対して相対的に第2部材を水平方向に移動させる進退機構を有していてもよい。このような構成によれば、水平方向における第1部材と第2部材との間隔を変更して、第2部材が基板の下面まで回り込んで基板を把持可能な状態と、第2部材が基板から外側へ退避して基板と接触することなく昇降可能な状態とを切り替えることが可能となる。すなわち、昇降機構が第2部材を上方へ移動させる際に、第2部材と基板とが干渉するのを回避することができる。
【0114】
また例えば、第2部材に、基板の端面に当接することで基板の水平方向位置を規定する位置決め用部材が設けられてもよい。外部から処理槽に搬入されてくる基板については、その位置にばらつきが生じ得る。第2部材に位置決め用部材を設け、チャック機構による把持動作において基板の端面が位置決め用部材に突き当てられることで位置補正が行われるようにすれば、別途アライメント調整を行う必要がなくなる。
【0115】
この場合、位置決め用部材の側面のうち基板に向く側面は、下方ほど基板から遠ざかるテーパー面となっていてもよい。このような構成によれば、基板の端面が位置決め用部材に突き当てられた後、第2部材が基板の下面に当接するための移動において、位置決め用部材が基板の端面を擦過することが回避される。
【0116】
また例えば、基板保持部は、各々が基板を把持する複数のチャック機構を一体的に水平方向に往復移動させる揺動機構を有していてよい。このような構成によれば、チャック機構によりめっき液中で保持される基板を揺動させることで、めっき処理により形成される皮膜の均一性を向上させることが可能になる。
【0117】
この場合、基板を下方から支持しつつ回転することで基板を水平方向に搬送する搬送ローラーを備え、揺動機構がチャック機構を往復移動させる際、該往復移動に同期して搬送ローラーが回転方向を変化させるように構成されてもよい。このような構成によれば、基板の中央部を下方から支持する搬送ローラーと、基板の端部を把持するチャック機構とが連動することで、基板の姿勢を安定させたまま、また基板に過度なストレスを与えることなく基板を揺動させることができる。
【0118】
また例えば、昇降機構が、第1部材および第2部材が処理槽内に進入してめっき液に接液する下部位置と、第1部材および第2部材が処理槽よりも上方に退避した上部位置との間で第1部材および第2部材を昇降させる構成において、上部位置にある第1部材および第2部材に対して、気流および洗浄液の少なくとも一方を吹き付ける洗浄機構がさらに設けられてもよい。このような構成によれば、めっき液から引き揚げられた第1部材および第2部材を洗浄して、残留付着するめっき液を除去することができる。このため、複数の基板を順次処理する場合において、残留めっき液が基板に付着して処理品質を低下させることが防止される。
【0119】
ここで、例えば基板保持部が、チャック機構を水平方向に移動させる移動機構を有する場合、洗浄機構は、移動機構によるチャック機構の移動経路に沿って設けられ、洗浄機構との対向位置を通過する第1部材および第2部材に対して気流および洗浄液の少なくとも一方を吹き付けるように構成されてもよい。特に複数のチャック機構が設けられる場合、第1部材および第2部材を洗浄機構との対向位置に順次通過させることで、それらを効率よく洗浄することが可能である。
【0120】
さらに、各々が複数のチャック機構を有する2組の基板保持部を設けて、当該2組の基板保持部のうち一方に設けられた移動機構と他方に設けられた移動機構とが、当該2組の基板保持部の各々に設けられたチャック機構を選択的に処理槽の上方に位置決めするように構成されてもよい。この場合、洗浄機構は、処理槽の上方に位置決めされたチャック機構とは異なるチャック機構の第1部材および第2部材に対して気流および洗浄液の少なくとも一方を吹き付けるように構成されてもよい。このような構成によれば、2組の基板保持部を交互に使用してめっき処理および洗浄処理を行うことで、処理のタクトタイムを短縮することが可能になる。
【0121】
またこの場合、2組の基板保持部のうち一方に、移動機構による移動方向と直交する方向にチャック機構を退避移動させる退避機構が設けられてもよい。このような構成によれば、2組の基板保持部の位置を入れ替える際に、チャック機構同士が干渉するのを回避することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
この発明は、基板の一方主面をめっき処理して皮膜を形成する技術に好適である。特に、大型の矩形基板を処理対象とする場合に顕著な効果を有するものである。
【符号の説明】
【0123】
1 めっき装置
2 搬送部
4 めっき処理部
9 洗浄機構
21 搬送ローラー
41 処理槽
40,47 チャック部(基板保持部)
43 走行機構(揺動機構、移動機構)
45 アノード電極
400 チャック機構
402 進退機構
411 第1部材
412 カソード電極
413,423 昇降機構
415 シール部材
421 第2部材
426 位置決め用部材
430 支持フレーム(支持部材)
470 退避機構
L めっき液
S 基板
Sa (基板Sの)上面(一方主面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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