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特開2023-180833搬送制御装置、搬送制御方法、搬送制御プログラム
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  • 特開-搬送制御装置、搬送制御方法、搬送制御プログラム 図1
  • 特開-搬送制御装置、搬送制御方法、搬送制御プログラム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180833
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】搬送制御装置、搬送制御方法、搬送制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/192 20060101AFI20231214BHJP
   B65G 43/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B65H23/192
B65G43/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094452
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 将大
【テーマコード(参考)】
3F027
3F105
【Fターム(参考)】
3F027AA03
3F027CA02
3F027DA01
3F027DA32
3F027EA01
3F027FA03
3F105AA01
3F105AA04
3F105AA11
3F105AA12
3F105AB00
3F105BA07
3F105CB01
3F105DA12
3F105DA13
3F105DB05
3F105DB11
3F105DC11
3F105DC17
(57)【要約】
【課題】ガイドローラと被搬送物の滑りを効果的に低減できる搬送制御装置等を提供する。
【解決手段】搬送制御装置1は、被搬送物3を案内するガイドローラ23の回転速度を検知するローラ速度検知部11と、ガイドローラ23に案内されている被搬送物3の搬送速度を検知する搬送速度検知部12と、ローラ速度検知部11によって検知されたガイドローラ23の回転速度と、搬送速度検知部12によって検知された被搬送物3の搬送速度の差が小さくなるように、ガイドローラ23の回転速度を調整するローラ速度調整部13と、を備える。ローラ速度検知部11および搬送速度検知部12は、ガイドローラ23および被搬送物3を同時に撮影可能なカメラ10によって構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を案内するガイドローラの回転速度を検知するローラ速度検知部と、
前記ガイドローラに案内されている前記被搬送物の搬送速度を検知する搬送速度検知部と、
検知された前記回転速度と前記搬送速度の差が小さくなるように、当該回転速度を調整するローラ速度調整部と、
を備える搬送制御装置。
【請求項2】
前記ローラ速度検知部および前記搬送速度検知部は、前記ガイドローラおよび前記被搬送物を同時に撮影可能な撮影装置によって構成される、請求項1に記載の搬送制御装置。
【請求項3】
前記ガイドローラにおける軸方向の少なくとも一端部の外周上において、前記被搬送物によって覆われない位置にローラ基準マークが設けられ、
前記撮影装置は、撮影した前記ローラ基準マークに基づいて前記ガイドローラの回転速度を検知する、
請求項2に記載の搬送制御装置。
【請求項4】
前記ローラ基準マークは、前記外周上において周方向に沿って等間隔で複数設けられる、請求項3に記載の搬送制御装置。
【請求項5】
前記被搬送物における搬送方向に直交する幅方向の少なくとも一端部の表面上に被搬送物基準マークが設けられ、
前記撮影装置は、撮影した前記被搬送物基準マークに基づいて前記被搬送物の搬送速度を検知する、
請求項2から4のいずれかに記載の搬送制御装置。
【請求項6】
前記被搬送物は、所定の処理が施される処理領域と、当該処理が施されない非処理領域を含み、
前記被搬送物基準マークは、前記非処理領域に設けられる、
請求項5に記載の搬送制御装置。
【請求項7】
前記所定の処理は前記処理領域に対する塗工処理であり、
前記被搬送物基準マークは前記塗工処理の際に前記非処理領域に塗工される、
請求項6に記載の搬送制御装置。
【請求項8】
前記被搬送物基準マークは、前記表面上において前記搬送方向に沿って等間隔で複数設けられる、請求項5に記載の搬送制御装置。
【請求項9】
被搬送物を案内するガイドローラの回転速度を検知するローラ速度検知ステップと、
前記ガイドローラに案内されている前記被搬送物の搬送速度を検知する搬送速度検知ステップと、
検知された前記回転速度と前記搬送速度の差が小さくなるように、当該回転速度を調整するローラ速度調整ステップと、
を備える搬送制御方法。
【請求項10】
被搬送物を案内するガイドローラの回転速度を検知するローラ速度検知ステップと、
前記ガイドローラに案内されている前記被搬送物の搬送速度を検知する搬送速度検知ステップと、
検知された前記回転速度と前記搬送速度の差が小さくなるように、当該回転速度を調整するローラ速度調整ステップと、
をコンピュータに実行させる搬送制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基材に塗工処理を施す塗工装置が開示されている。塗工処理部の上流および下流には、当該塗工処理部に対して基材を押圧しながら、上流側から下流側に向かう搬送方向に沿って塗工前後の基材を搬送するガイドローラが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-217947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のようなガイドローラがモータ等によって回転駆動される場合、その回転速度と当該ガイドローラに案内されている基材の搬送速度に差が生じうる。この場合、ガイドローラと基材の間の速度差による「滑り」のために、基材に傷や皺等の欠陥が生じる恐れがある。ガイドローラと基材の速度差をなくすために、一対のガイドローラによって基材を表裏両面から挟み込むことも考えられるが、特許文献1の図1にも示されているように、特に塗工直後の基材の塗工面には未乾燥の塗工材が存在するため、ガイドローラを接触させることができない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、ガイドローラと被搬送物の滑りを効果的に低減できる搬送制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の搬送制御装置は、被搬送物を案内するガイドローラの回転速度を検知するローラ速度検知部と、ガイドローラに案内されている被搬送物の搬送速度を検知する搬送速度検知部と、検知された回転速度と搬送速度の差が小さくなるように、当該回転速度を調整するローラ速度調整部と、を備える。
【0007】
この態様では、ガイドローラの回転速度および被搬送物の搬送速度がそれぞれ検知され、その差が小さくなるようにガイドローラの回転速度が調整される。従って、ガイドローラと被搬送物の滑りを効果的に低減できる。
【0008】
本発明の別の態様は、搬送制御方法である。この方法は、被搬送物を案内するガイドローラの回転速度を検知するローラ速度検知ステップと、ガイドローラに案内されている被搬送物の搬送速度を検知する搬送速度検知ステップと、検知された回転速度と搬送速度の差が小さくなるように、当該回転速度を調整するローラ速度調整ステップと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガイドローラと被搬送物の滑りを効果的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】搬送制御装置の構成を模式的に示す。
図2】カメラによって撮影されるガイドローラおよび被搬送物の画像を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、被搬送物3を搬送する搬送装置2の搬送動作を制御する搬送制御装置1の構成を模式的に示す。被搬送物3としては、紐やワイヤ等の線状のものや、紙、布、フィルム、箔、ゴム等の面状またはシート状のものが例示される。本実施形態では、シート状の基材を被搬送物3として搬送方向(図1において概ね左から右に向かう方向)に搬送するロール・ツー・ロール(Roll-to-Roll)方式の搬送装置2について説明する。搬送装置2は、搬送される被搬送物に対して任意の処理を施す装置、例えば、被搬送物にコーティング等の塗工処理を施すコータまたは塗工装置、被搬送物に印刷を施す印刷機、被搬送物に張力を印加して延伸する延伸装置等の一部でもよい。本実施形態では搬送装置2が塗工装置の一部であるものとする。
【0014】
搬送装置2は、被搬送物3の搬送経路上に設けられて当該被搬送物3を搬送方向に搬送または案内する複数のローラ21~24を備える。第1基準ローラ21および第2基準ローラ22は、被搬送物3を表裏両面から挟み込みながら搬送する。例えば、第1基準ローラ21および第2基準ローラ22の一方は、不図示の駆動モータによって回転駆動される駆動ローラであり、第1基準ローラ21および第2基準ローラ22の他方は、駆動ローラと連動して回転する従動ローラである。第1基準ローラ21および/または第2基準ローラ22の外周面をゴム等の滑りにくい材料で構成することで、被搬送物3との間の滑りの発生を効果的に防止できる。この場合、第1基準ローラ21および/または第2基準ローラ22の回転速度と、第1基準ローラ21および第2基準ローラ22に挟み込まれて案内されている被搬送物3の搬送速度は実質的に等しい。
【0015】
第1基準ローラ21および第2基準ローラ22は、被搬送物3の塗工面(図1における上面)に塗工材をコーティングする塗工処理部を構成してもよい。この場合の第1基準ローラ21は、特許文献1の図1における「ロッド23」と同様に、不図示の塗工材を被搬送物3の塗工面にコーティングする。一方、第2基準ローラ22は、特許文献1の図1における「センター押圧ローラ50」と同様に、被搬送物3を塗工面の裏面から第1基準ローラ21に対して押圧する。
【0016】
第1基準ローラ21および第2基準ローラ22の後段に設けられるガイドローラ23は、塗工面の裏面(図1における下面)に接触しながら被搬送物3を搬送方向に案内する。ガイドローラ23は、減速機26を介した駆動モータ25によって、回転軸231の周りに図1における時計回り方向に回転駆動される。ここで、ガイドローラ23と被搬送物3の速度差または滑りをなくすためには、第1基準ローラ21および第2基準ローラ22のような一対のガイドローラによって被搬送物3を表裏両面から挟み込むのが好ましいが、前述のように第1基準ローラ21によってコーティングされた未乾燥の塗工材が存在する被搬送物3の塗工面にガイドローラを接触させることはできない。このため、駆動モータ25および減速機26によるガイドローラ23の回転速度と、当該ガイドローラ23に案内されている被搬送物3の搬送速度に差が生じうる。ガイドローラ23と被搬送物3の間の速度差による「滑り」のために、被搬送物3に傷や皺等の欠陥が生じる恐れがある。後述する搬送制御装置1によれば、ガイドローラ23と被搬送物3の滑りを効果的に低減できる。
【0017】
ガイドローラ23の後段に設けられるガイドローラ24は、塗工面(図1における上面)に接触しながら被搬送物3を搬送方向に案内する。ガイドローラ24は、ガイドローラ23と同様に、不図示の駆動モータや減速機によって図1における反時計回り方向に回転駆動されてもよい。なお、第1基準ローラ21によって塗工面にコーティングされた塗工材は、被搬送物3がガイドローラ24に到達するまでの間に乾燥しているものとする。このため、ガイドローラ24を塗工面に接触させても問題ない。図示は省略するが、後述する搬送制御装置1を、ガイドローラ23に加えてまたは代えてガイドローラ24に適用してもよい。
【0018】
搬送制御装置1は、ローラ速度検知部11と、搬送速度検知部12と、ローラ速度調整部13を備える。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。
【0019】
ローラ速度検知部11は、被搬送物3を案内するガイドローラ23の回転速度を検知する。搬送速度検知部12は、ガイドローラ23に案内されている被搬送物3の搬送速度を検知する。ローラ速度検知部11および搬送速度検知部12は、例えば、ガイドローラ23および被搬送物3を同時に撮影可能な撮影装置としてのカメラ10によって構成される。
【0020】
図2は、カメラ10によって撮影されるガイドローラ23および被搬送物3の画像を模式的に示す。カメラ10が撮影する図2のような画像は、動画でもよいし連続的または間欠的な複数の静止画でもよい。ガイドローラ23は、駆動モータ25および減速機26によって、左右方向(軸方向)の回転軸231の周りに回転駆動される。被搬送物3は、回転するガイドローラ23に案内されて上下方向(搬送方向)に搬送される。
【0021】
被搬送物3は、塗工処理や印刷処理等の所定の処理が施される処理領域31と、当該処理が施されない非処理領域32を含む。被搬送物3の表面のほとんどを占める処理領域31は、搬送方向(上下方向)に直交する幅方向(左右方向)の中央の領域である。一方、非処理領域32は、被搬送物3における幅方向の両端部の領域である。一般的な塗工装置は、被搬送物3の処理領域31に塗工処理を施す一方、非処理領域32には何の処理も施さない。これに対して図示の例では、被搬送物3における幅方向の少なくとも一端部(図2の例では右端部)の非処理領域32の表面上に一または複数の被搬送物基準マーク33が設けられる。被搬送物基準マーク33は、塗工処理部(第1基準ローラ21等)が処理領域31に塗工処理を施す際に、同じ塗工材で非処理領域32に形成したものでもよい。あるいは、被搬送物基準マーク33は、塗工処理部とは異なる印刷処理部が非処理領域32に印刷したものでもよいし、非処理領域32に予め形成されているものでもよい。
【0022】
被搬送物基準マーク33は、非処理領域32の表面上において搬送方向(上下方向)に沿って等間隔で複数設けられる。搬送速度検知部12を構成するカメラ10は、撮影した一または複数の被搬送物基準マーク33に基づいて被搬送物3の搬送速度を検知する。例えば、カメラ10が撮影した動画における被搬送物基準マーク33の移動に基づいて被搬送物3の搬送速度を直接的に検知できる。また、カメラ10が撮影した一連の静止画における被搬送物基準マーク33の変位を、カメラ10による撮影間隔で除算することで被搬送物3の搬送速度を演算できる。
【0023】
以上のようにカメラ10が撮影した画像に基づいて被搬送物3の搬送速度を高精度に検知または演算する上では、被搬送物3の搬送位置によらず少なくとも一つの被搬送物基準マーク33が画像に写るようにするのが好ましい。具体的には、被搬送物基準マーク33の搬送方向の間隔を、カメラ10が撮影する画像の搬送方向の長さ以下とするのが好ましい。被搬送物基準マーク33の数を増やし、その間隔を短くするほど、被搬送物3の搬送速度を高精度に検知または演算できる。
【0024】
なお、被搬送物3に印刷処理を施す印刷機では、各ページの区切りを示すマークや、各色の印刷ユニットの色合せ(見当合せ)のためのレジスタマーク等が、各ページの絵柄と共に処理領域31および/または非処理領域32に印刷される。このため、図2に示されるような被搬送物基準マーク33を追加的に設ける必要はなく、これらの既存のマークを被搬送物基準マーク33として利用できる。一方、一般的な塗工装置ではページの区切りがなく、被搬送物3の処理領域31に連続的かつ一様に塗工処理が施されるため、図2に示されるような被搬送物基準マーク33を追加的に設けるのが好ましい。
【0025】
被搬送物3における被搬送物基準マーク33と同様に、ガイドローラ23には一または複数のローラ基準マーク232が設けられる。具体的には、ガイドローラ23における軸方向(左右方向)の少なくとも一端部(図2の例では右端部)の外周上において、被搬送物3によって覆われない位置に一または複数のローラ基準マーク232が設けられる。
【0026】
ローラ基準マーク232は、被搬送物3の幅方向の一端(右端)から更に一端側(右側)に突出して露出されているガイドローラ23の一端部の外周上において周方向に沿って等間隔で複数設けられる。ローラ速度検知部11を構成するカメラ10は、撮影した一または複数のローラ基準マーク232に基づいてガイドローラ23の回転速度を検知する。例えば、カメラ10が撮影した動画におけるローラ基準マーク232の移動に基づいてガイドローラ23の回転速度を直接的に検知できる。また、カメラ10が撮影した一連の静止画におけるローラ基準マーク232の変位を、カメラ10による撮影間隔で除算することでガイドローラ23の回転速度を演算できる。
【0027】
以上のようにカメラ10が撮影した画像に基づいてガイドローラ23の回転速度を高精度に検知または演算する上では、ガイドローラ23の回転位置または回転角度によらず少なくとも一つのローラ基準マーク232が画像に写るようにするのが好ましい。具体的には、複数のローラ基準マーク232が等間隔で設けられるとして、少なくとも二つのローラ基準マーク232(「180度」の間隔)を設けるのが好ましい。ローラ基準マーク232の数を増やし、その間隔を短くするほど、ガイドローラ23の回転速度を高精度に検知または演算できる。
【0028】
また、被搬送物3における被搬送物基準マーク33の間隔と、ガイドローラ23におけるローラ基準マーク232の間隔は互いに独立に設定可能であるが、被搬送物基準マーク33の間隔よりローラ基準マーク232の間隔を小さくするのが好ましい。カメラ10が撮影する図2のような画像では、ガイドローラ23が占める面積は被搬送物3が占める面積より顕著に小さいため、ガイドローラ23の回転速度の検知精度が低下しやすい。そこで、ローラ基準マーク232の間隔を被搬送物基準マーク33の間隔より小さくすることで、ガイドローラ23の回転速度の検知精度を高められる。
【0029】
なお、ガイドローラ23を回転駆動する駆動モータ25や減速機26、あるいはガイドローラ23自体に、その回転位置や回転速度を検知するエンコーダ等の回転検知部が設けられる場合は、それらをローラ速度検知部11として利用できる。この場合、図2に示されるようなローラ基準マーク232を追加的に設ける必要はない。
【0030】
ローラ速度調整部13は、ローラ速度検知部11によって検知されたガイドローラ23の回転速度と、搬送速度検知部12によって検知された被搬送物3の搬送速度の差が小さくなるように、ガイドローラ23の回転速度を調整する。具体的には、ローラ速度調整部13は、ガイドローラ23と被搬送物3の間の速度差(すなわち「滑り」)を小さくするための速度指令を駆動モータ25に与える。この結果、駆動モータ25および減速機26によるガイドローラ23の回転駆動速度が、被搬送物3の搬送速度に近づくため、ガイドローラ23と被搬送物3の滑りが効果的に低減される。なお、ローラ速度調整部13は、ガイドローラ23と被搬送物3の速度差が調整不可能な程度に大きい場合、ガイドローラ23の回転速度を調整しなくてもよい。この場合、不図示の異常報知部が、当該異常を搬送装置2および/または搬送制御装置1の管理者等に報知する。これに加えてまたは代えて、不図示の異常停止部が、搬送装置2および/または搬送制御装置1を異常停止させてもよい。
【0031】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0032】
前述の実施形態では、ローラ速度検知部11および搬送速度検知部12を構成するカメラ10による速度検知を支援するために、ローラ基準マーク232および被搬送物基準マーク33が追加的に設けられたが、このようなマーク232、33がなくても十分な精度での速度検知を可能にする画像処理技術または画像認識技術の進歩が期待される。このような技術が利用可能な場合には、ローラ基準マーク232および/または被搬送物基準マーク33を追加的に設ける必要はなく、カメラ10はガイドローラ23および被搬送物3の画像から直接的にそれぞれの速度を検知できる。
【0033】
なお、ガイドローラ23と被搬送物3の間に滑りがある場合、被搬送物3に傷や皺等の欠陥が生じる場合がある。これらの欠陥を検知したカメラ10(ローラ速度検知部11および搬送速度検知部12)は、ガイドローラ23と被搬送物3の間に調整すべき速度差があると判定してもよい。この場合のローラ速度調整部13は、カメラ10によって検知された被搬送物3の欠陥がなくなるように、ガイドローラ23の回転速度を調整する。
【0034】
また、前述の実施形態では、ローラ速度検知部11および搬送速度検知部12がカメラ10によって構成されたが、その他の任意の原理に基づくセンサによって構成されてもよい。例えば、カメラ10も包含される光学センサ、電磁気センサ、機械センサ、熱センサ、音響センサを、ローラ速度検知部11および/または搬送速度検知部12として利用できる可能性がある。このようなセンサは、ガイドローラ23および/または被搬送物3の移動を示唆する情報を取得し、必要に応じて加工または演算することでそれぞれの速度を検知する。
【0035】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 搬送制御装置、2 搬送装置、3 被搬送物、10 カメラ、11 ローラ速度検知部、12 搬送速度検知部、13 ローラ速度調整部、23 ガイドローラ、25 駆動モータ、26 減速機、31 処理領域、32 非処理領域、33 被搬送物基準マーク、231 回転軸、232 ローラ基準マーク。
図1
図2