(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180835
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/86 20180101AFI20231214BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20231214BHJP
F24F 140/20 20180101ALN20231214BHJP
【FI】
F24F11/86
F25B1/00 361A
F25B1/00 371F
F25B1/00 371B
F25B1/00 341R
F24F140:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094454
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】上野 円
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA15
3L260CA12
3L260CB04
3L260CB13
3L260CB63
3L260FB02
(57)【要約】
【課題】始動時の音の発生を抑制できる空気調和機を提供する。
【解決手段】空気調和機10は、蒸発器(室内熱交換器160)と、圧縮機230と、凝縮器(室外熱交換器280)と、四方弁250と、膨張弁240とを含むサイクルを備え、さらに、蒸発温度検出部273と、凝縮温度検出部275と、圧縮比算出部213と、設定部214と、制御部215とを備える。蒸発温度検出部273は、蒸発冷媒の蒸発温度を検出する。凝縮温度検出部273は、凝縮冷媒の凝縮温度を検出する。圧縮比算出部213は、蒸発温度および凝縮温度から算出した圧縮比を算出する。設定部214は、圧縮比に基づいて圧縮機230の最低回転数を設定する。制御部215は、圧縮機230の目標回転数を最低回転数に変更するよう制御する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発器と、圧縮器と、凝縮器と、四方弁と、膨張弁とを含むサイクルを備えた空気調和機であって、
蒸発冷媒の蒸発温度を検出する蒸発温度検出部と、
凝縮冷媒の凝縮温度を検出する凝縮温度検出部と、
前記蒸発温度および前記凝縮温度から算出した圧縮比を算出する圧縮比算出部と、
前記圧縮比に基づいて前記圧縮器の最低回転数を設定する設定部と、
前記圧縮器の目標回転数を前記最低回転数に変更するよう制御する制御部と
をさらに備える、空気調和機。
【請求項2】
前記蒸発温度検出部は、前記圧縮器の底部において前記蒸発温度を検出し、
前記凝縮温度検出部は、前記圧縮器の底部において前記凝縮温度を検出する、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記空気調和機に設定された設定温度と、室温とに基づいて前記圧縮器の算出回転数を算出する回転数算出部と、
前記算出回転数と前記最低回転数とを比較する比較部と
をさらに備え、
前記制御部は、
前記最低回転数が前記算出回転数より大きいとき、前記最低回転数で前記圧縮器を運転する、請求項1または請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記圧縮器の検出回転数を検出する回転数検出部と、
前記検出回転数と前記最低回転数とを比較する比較部と、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記最低回転数が前記検出回転数より大きいとき、前記最低回転数で前記圧縮器を運転する、請求項1または請求項2に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記制御部は、前記圧縮器が運転停止状態に移行してから、運転開始状態となり、立ち上がり期間が経過するまで、前記圧縮器の前記目標回転数を前記最低回転数に変更するよう制御する、請求項1または請求項2に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記制御部は、前記立ち上がり期間が経過した後、定常期間が経過するまで、さらに、前記圧縮器の定常回転数を前記最低回転数に変更するよう制御する、請求項5に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記制御部は、前記立ち上がり期間の経過後において、前記圧縮器が運転停止状態に移行するまで、前記圧縮器を前記最低回転数よりも低い終期回転数で終期運転する、請求項5に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記制御部は、前記定常期間の経過後において、前記圧縮器が運転停止状態に移行するまで、前記圧縮器を前記最低回転数よりも低い終期回転数で終期運転する、請求項6に記載の空気調和機。
【請求項9】
前記制御部は、前記目標回転数を前記最低回転数に変更する変更速度を、前記立ち上がり期間以外における通常変化速度よりも遅くする、請求項5に記載の空気調和機。
【請求項10】
前記制御部は、前記定常回転数を前記最低回転数に変更する変更速度を、前記定常期間以外における通常変化速度よりも遅くする、請求項6に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された空気調和機は、設定温度と室温との温度差に応じて圧縮機を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する空気調和機では、立ち上がり時に設定温度と室温との温度差が小さい場合、低回転数域で圧縮機を駆動しなければならない。しかし、低回転数域で圧縮機を駆動すると圧縮機から異音が発生することがある。
【0005】
本発明は、始動時の音の発生を抑制できる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気調和機は、蒸発器と、圧縮機と、凝縮器と、四方弁と、膨張弁とを含むサイクルを備え、さらに、蒸発温度検出部と、凝縮温度検出部と、圧縮比算出部と、設定部と、制御部とを備える。前記蒸発温度検出部は、蒸発冷媒の蒸発温度を検出する。前記凝縮温度検出部は、凝縮冷媒の凝縮温度を検出する。前記圧縮比算出部は、前記蒸発温度および前記凝縮温度から算出した圧縮比を算出する。前記設定部は、前記圧縮比に基づいて前記圧縮機の最低回転数を設定する。前記制御部は、前記圧縮機の目標回転数を前記最低回転数に変更するよう制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、始動時の音の発生を抑制できる空気調和機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る空気調和機の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】圧縮比と圧縮機回転数との関係を示す図である。
【
図4】最低回転数と圧縮機回転数との理想的な関係を示す図である。
【
図5】実際の最低回転数と圧縮機回転数との関係を示す図である。
【
図6】実施形態に係る空気調和機の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0010】
まず、
図1を参照して、実施形態に係る空気調和機10の構成について説明する。
図1は、空気調和機10の構成の一例を示すブロック図である。
【0011】
図1に示されるように、空気調和機10は、室内機100と、リモコン105と、室外機200とを備える。
【0012】
室内機100は、室内制御部110と、リモコン送受信部120と、室内ファンモータ130と、通信部140と、室内環境検出部150とを備える。
【0013】
リモコン105は、空気調和機10の運転モードを表示し、かつ運転指示を受け付ける。
【0014】
リモコン送受信部120は、リモコン105と後述する室内運転制御部111との間の信号の授受を司る。
【0015】
室内制御部110は、室内運転制御部111と、室内指令送信部112とを有する。
【0016】
室内指令送信部112は、室内ファンモータ130へ制御指令を送信する。
【0017】
通信部140は、室内運転制御部111と通信ネットワークとの間の信号の授受を司る。
【0018】
室内環境検出部150は、室温センサ151と、室内熱交換器温度センサ152とを含む。
【0019】
室温センサ151は、室内機100に配置される。
【0020】
室内熱交換器温度センサ152は、室内熱交換器160の近傍に配置される。
【0021】
室外機200は、室外制御部210と、室外ファンモータ220と、圧縮機230と、膨張弁240と、四方弁250と、サクション電磁弁260と、室外環境検出部270とを備える。
【0022】
このうち、室内機100の室内ファンモータ130と、室外機200の室外ファンモータ220、圧縮機230、膨張弁240、四方弁250、およびサクション電磁弁260は、室内機100と室外機200との間で冷媒を循環する冷凍サイクル320の一部を構成する。
【0023】
室外制御部210は、室外運転制御部211と、室外指令送信部212と、圧縮比算出部213と、設定部214と、制御部215と、回転数算出部216と、比較部217と、回転数検出部218とを有する。
【0024】
室外指令送信部212は、室外ファンモータ220、圧縮機230、膨張弁240、四方弁250、およびサクション電磁弁260の各々へ制御指令を送信する。
【0025】
室内制御部110および室外制御部210は、互いに協働して1つの制御部310として動作する。制御部310は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサと、記憶部とを含む。制御部310の記憶部は、半導体メモリのような記憶装置を含み、データおよびコンピュータプログラムを記憶する。制御部310のプロセッサは、記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって、冷凍サイクル320を含む空気調和機10の各構成を制御する。
【0026】
室外環境検出部270は、外気温センサ271と、室外熱交換器温度センサ272と、蒸発温度検出部273と、サクション温度センサ274と、凝縮温度検出部275とを含む。
【0027】
次に、
図1および
図2を参照して、冷凍サイクル320の全体構成を説明する。
図2は、冷凍サイクル320の構成の一例を示す図である。
【0028】
図2に示されるように、冷凍サイクル320は、室内熱交換器160と、室外熱交換器280と、二方弁291と、三方弁292とをさらに備える。矢印D1は、冷房サイクルにおいて冷媒が流れる方向を示す。冷媒流路は、矢印D1に沿って、圧縮機230から、四方弁250、室外熱交換器280、膨張弁240、二方弁291、室内熱交換器160、三方弁292、サクション電磁弁260、および四方弁250を順次経て、圧縮機230へ戻る。暖房サイクルにおいて冷媒が流れる方向は、矢印D1と逆の方向である。
【0029】
二方弁291および三方弁292は、室外機200の冷媒出入口に配置される。二方弁291および三方弁292は、空気調和機10の設置時に、いずれも手動で開操作される。
【0030】
外気温センサ271、および、室外熱交換器温度センサ272は、室外熱交換器280の近傍に配置される。
【0031】
蒸発温度検出部273、および、サクション温度センサ274は、圧縮機230の近傍に配置される。
【0032】
凝縮温度検出部275は、膨張弁240の近傍に配置される。
【0033】
次に、
図1および
図2に加え、さらに
図3~
図6を参照して、本実施形態に係る空気調和機10の制御を詳細に説明する。
図3は、圧縮比と圧縮機回転数との関係を示す図である。
図4は、最低回転数と圧縮機回転数との理想的な関係を示す図である。
図5は、実際の最低回転数と圧縮機回転数との関係を示す図である。
図6は、空気調和機10の制御を示すフローチャートである。
【0034】
本実施形態は、例えば、
図5に示すように、圧縮機230の負荷(例えば圧縮比)を基に算出した最低回転数以下の圧縮機回転数で圧縮機230を運転させる場合、圧縮機230の圧縮機回転数を最低回転数に補正することを主旨とする。
【0035】
図3の実線で示すように、空気調和機10が始動してしばらくは、設定温度と室温とに差があるため、圧縮機230を高回転数(1200rpm~1400rpm)で駆動する。この時の圧縮比は、0~1程度である。圧縮比については、後述する。
【0036】
設定温度と室温との差が小さくなるに従って、圧縮機230の圧縮機回転数を低減させる。具体的には、1300rpmから200rpmまで低減させる。このときの圧縮比は、2~3である。
【0037】
しかし、空気調和機10の始動時に圧縮機230を小さい圧縮機回転数で回転させると、圧縮機230の構造的要因で音が発生することがある。具体的には、長時間、空気調和機10を使用して、ユーザーが設定した設定温度と室温とにわずかな差しかない場合に、空気調和機10の電源をOFF後、短時間で再度電源をONにした場合に起こり得る。
【0038】
本実施形態に係る空気調和機10は、省エネの観点からも、始動時であっても音が発生せず、かつ、できるだけ少ない回転数で圧縮機230を運転させて省エネを実現したいというニーズに応えるものである。
【0039】
例えば、
図4に示すように、破線で示す圧縮機230の目標回転数が、実線で示す最低回転数よりも小さい場合に、
図5で示すように、圧縮機230の目標回転数を最低回転数に近付けるよう制御するものである。
【0040】
蒸発温度検出部273は、蒸発冷媒の蒸発温度Teを検出する(ステップS10)。
【0041】
凝縮温度検出部275は、凝縮冷媒の凝縮温度Tcを検出する(ステップS11)。
【0042】
圧縮比算出部213は、蒸発温度Teおよび凝縮温度Tcから算出した圧縮比を算出する(ステップS12)。
【0043】
具体的には、一例として、圧縮比算出部213は、(凝縮温度Tc/蒸発温度Te)に基づいて圧縮比を算出してもよい。
【0044】
設定部214は、圧縮比に基づいて圧縮機230の最低回転数を設定する(ステップS13)。
【0045】
制御部215は、圧縮機230の目標回転数を最低回転数に変更するよう制御する(ステップS14)。
【0046】
本実施形態によれば、始動時の音の発生を抑制できる。
【0047】
次に、蒸発温度検出部273は、圧縮機230の底部において蒸発温度Teを検出してもよい。
【0048】
凝縮温度検出部275は、圧縮機230の底部において凝縮温度Tcを検出してもよい。
【0049】
圧縮機230の底部における蒸発温度Teの一例は、圧縮機230の底部に溜まったオイルと冷媒によりもたらされる温度である。より具体的には、冷媒の温度が凝縮温度Tcよりも低くなると、冷媒は液化し、圧縮機230の底部でオイルと混ざりやすくなる。そのため、圧縮機230の底部の温度、または、液化した冷媒の温度を測定することにより、蒸発温度Teと凝縮温度Tcとを比較することができる。
【0050】
具体的には、一例として、圧縮機230の底部に熱電対を配置してもよい。
【0051】
また、凝縮温度検出部275は、圧縮機230の吐出温度と凝縮温度Tcとの差を検出してもよい。
【0052】
本実施形態によれば、圧縮機230が暖機されたことを検知でき、圧縮機230の目標回転数を最低回転数に容易に移行できる。
【0053】
次に、回転数算出部216は、空気調和機10に設定された設定温度と、室温とに基づいて圧縮機230の算出回転数を算出する。
【0054】
比較部217は、算出回転数と最低回転数とを比較する。
【0055】
制御部215は、最低回転数が算出回転数より大きいとき、最低回転数で圧縮機230を運転する。
【0056】
目標回転数は、一例として、設定温度で決まる。すなわち、ユーザーがリモコン105(
図1)で設定温度を指示したとき、室温が設定温度に向かうために、空気調和機10が圧縮機230の圧縮機回転数(目標回転数)を最低回転数より小さい回転数で運転した場合、制御部215は、目標回転数を最低回転数に変更させる。最低回転数は、圧縮機230が音を発せず、かつ、省エネを実現できる最低の回転数である。
【0057】
別言すれば、圧縮比を元に最低回転数を補正すると記述することもできる。
【0058】
本実施形態によれば、始動時の音の発生を抑制することができ、かつ、省エネも実現できる。
【0059】
回転数検出部216は、圧縮機230の検出回転数を検出する。
【0060】
比較部217は、検出回転数と最低回転数とを比較する。
【0061】
制御部215は、最低回転数が検出回転数より大きいとき、最低回転数で圧縮機230を運転する。
【0062】
本実施形態によれば、圧縮機230が暖機された場合においても、最低回転数で圧縮機230を運転することにより、より省エネを実現することができる。
【0063】
次に、制御部215は、圧縮機230が運転停止状態に移行してから、運転開始状態となり、立ち上がり期間が経過するまで、圧縮機230の目標回転数を最低回転数に変更するよう制御する。
【0064】
本実施形態によれば、圧縮機230が暖機されることにより、始動時から生じていた音がなくなるまで、圧縮機230の目標回転数を最低回転数に設定することができる。
【0065】
制御部215は、立ち上がり期間が経過した後、定常期間が経過するまで、さらに、圧縮機230の定常回転数を最低回転数に変更するよう制御してもよい。
【0066】
本実施形態によれば、圧縮機230が定常運転の期間に入った後も、できるだけ回転数を下げることにより、音の発生を抑制し、省エネを実現することができる。
【0067】
制御部215は、立ち上がり期間の経過後において、圧縮機230が運転停止状態に移行するまで、圧縮機230を最低回転数よりも低い終期回転数で終期運転する。
【0068】
制御部215は、定常期間の経過後において、圧縮機230が運転停止状態に移行するまで、圧縮機230を最低回転数よりも低い終期回転数で終期運転する。
【0069】
本実施形態によれば、圧縮機230の始動時における最低回転数よりも、定常時以降の最低回転数をより小さくすることにより、さらに好適に省エネを実現することができる。
【0070】
制御部215は、目標回転数を最低回転数に変更する変更速度を、立ち上がり期間以外における通常変化速度よりも遅くする。
【0071】
制御部215は、定常回転数を最低回転数に変更する変更速度を、定常期間以外における通常変化速度よりも遅くする。
【0072】
本実施形態によれば、圧縮機230を安全に運転できる。
【0073】
上記した実施形態の説明は、本発明における好適な実施形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。上記実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、空気調和機の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 空気調和機
100 室内機
200 室外機
213 圧縮比算出部
214 設定部
215 制御部
216 回転数算出部
217 比較部
218 回転数検出部
274 蒸発温度検出部
275 凝縮温度検出部