(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180841
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】避難時間算出装置及び避難時間算出システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20180101AFI20231214BHJP
【FI】
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094469
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 夏来
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 雅伸
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】藤井 聡
(72)【発明者】
【氏名】松原 正芳
(72)【発明者】
【氏名】山形 裕之
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】避難時間をリアルタイムに算出することが可能な避難時間算出装置及び避難時間算出システムを提供する。
【解決手段】避難計画作成装置(避難時間算出装置)Bは、病院(避難対象施設)の各種データを記憶する病院データベースAから施設データを所定のタイムインターバルで順次取得し、施設データに基づいて要支援者の避難に要する時間を避難時間としてリアルタイムに順次算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難対象施設から施設データを所定のタイムインターバルで順次取得し、前記施設データに基づいて要支援者の避難に要する時間を避難時間としてリアルタイムに算出することを特徴とする避難時間算出装置。
【請求項2】
操作部と、
前記施設データに基づいて要支援者、当該要支援者の状態、前記要支援者の収容に必要な必要収容機器数、支援者の必要数及び前記要支援者の避難に必要な搬送器具の必要数を少なくとも抽出する要支援者情報集計部と、
前記施設データに基づいて在勤者数及び在勤者の所在を少なくとも抽出する職員情報集計部と、
前記施設データに含まれる複数の避難経路と前記操作部から入力される前記避難経路の選択指示とに基づいて最適避難経路を設定する避難経路設定部と、
前記要支援者情報集計部及び前記職員情報集計部の抽出データ並びに前記避難経路設定部が設定した前記最適避難経路に基づいて前記避難時間を取得する避難時間解析部と
を備えることを特徴とする請求項1に避難時間算出装置。
【請求項3】
前記施設データ、前記抽出データ及び前記避難時間に基づいて避難計画を作成する避難計画部をさらに備えることを特徴とする請求項2に避難時間算出装置。
【請求項4】
前記避難対象施設は病院であり、前記要支援者は前記病院の入院患者である請求項1~3のいずれか一項に記載の避難時間算出装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の避難時間算出装置と、
前記施設データを記憶する施設データベースと
を備える避難時間算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難時間算出装置及び避難時間算出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記非特許文献1には、「小規模社会福祉施設に対する消防用設備等の技術上の基準の特例の適用について」と題した通知が記載されている。この通知には、小規模社会福祉施設における要保護者の避難所要時間の算出方法が年齢や車いす等、要保護者の状態別に定められている。
【0003】
また、下記非特許文献2には、避難安全検証自動計算システムの概要が開示されている。この避難安全検証自動計算システムは、CAD図面を下絵として取り込み、下絵に沿って必要な情報(属性)を入力することにより、避難時の歩行経路を自動で作図するとともに避難に要する時間を自動的に算出するものである。
【0004】
また、下記非特許文献3には、「オブジェクト指向に基づく介助行動シミュレーションモデル」と題した論文が開示されている。この介助行動シミュレーションモデルは、複数の避難者それぞれの行動特性と居室形状や避難経路を考慮した数値シミュレーションである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento161_11_sanko5-4.pdf
【非特許文献2】https://www.hdkumon.jp/system/index.html
【非特許文献3】https://www.jstage.jst.go.jp/article/aija/60/467/60_KJ00004221037/_pdf/-char/ja
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように避難時間の算出方法、避難経路の決定手法及び介助行動のシミュレーション方法は、概ね確立されている。すなわち、避難時の介助対象者数や介助人員数(施設職員数)が確定している場合における避難方法は確立しつつある。
【0007】
しかしながら、避難時の介助対象者数や介助対象者数の状態は日々変化する事項である。また、介助人員数も日勤帯・夜勤帯といった時間帯により大きく異なる。さらには、その時々の状況により避難の難度も大きく変化する。すなわち、実際に災害が発生したときに事前の想定通りの避難方法や避難時間を実行することが困難な場合が十分に考えられる。
【0008】
例えば、病院では避難が必要な事態が発生した場合に管理職者等が患者数(介助対象者数)、職員数(介助人員数)を把握し、最も安全と考えられる避難行動をその場で判断して行っている。したがって、病院における患者数と職員数を特定して避難時間を少なくとも含む避難計画をリアルタイムに策定することが切望されている。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、避難時間をリアルタイムに算出することが可能な避難時間算出装置及び避難時間算出システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、避難時間算出装置に係る第1の解決手段として、避難対象施設から施設データを所定のタイムインターバルで順次取得し、前記施設データに基づいて要支援者の避難に要する時間を避難時間としてリアルタイムに算出する、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、避難時間算出装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、操作部と、前記施設データに基づいて要支援者、当該要支援者の状態、前記要支援者の収容に必要な必要収容機器数、支援者の必要数及び前記要支援者の避難に必要な搬送器具の必要数を少なくとも抽出する要支援者情報集計部と、前記施設データに基づいて在勤者数及び在勤者の所在を少なくとも抽出する職員情報集計部と、前記施設データに含まれる複数の避難経路と前記操作部から入力される前記避難経路の選択指示とに基づいて最適避難経路を設定する避難経路設定部と、前記要支援者情報集計部及び前記職員情報集計部の抽出データ並びに前記避難経路設定部が設定した前記最適避難経路に基づいて前記避難時間を取得する避難時間解析部とを備える、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、避難時間算出装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記施設データ、前記抽出データ及び前記避難時間に基づいて避難計画を作成する避難計画部をさらに備える、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、避難時間算出装置に係る第4の解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段において、前記避難対象施設は病院であり、前記要支援者は前記病院の入院患者である、という手段を採用する。
【0014】
本発明では、避難時間算出システムに係る解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段に係る避難時間算出装置と、前記施設データを記憶する施設データベースとを備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、避難時間をリアルタイムに算出することが可能な避難時間算出装置及び避難時間算出システムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る避難計画作成装置及び避難計画作成システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態における施設データと抽出データとの関係を示す表である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る避難計画作成装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る避難計画作成システムは、避難時に介助あるいは介護が必要な患者(要支援者)が依拠する病院を避難対象施設とする。この避難計画作成システムは、
図1に示すように、病院データベースA及び避難計画作成装置Bを備えている。
【0018】
ここで、本実施形態に係る避難計画作成システム及び避難計画作成装置Bは、災害避難時における避難時間をリアルタイムに算出するとともに避難計画をも作成する本実施形態の避難時間算出システム及び避難時間算出装置である。
【0019】
なお、避難時に介助あるいは介護が必要な要支援者が依拠する施設には、本実施形態で取り上げる病院の他に社会福祉施設等の介護施設がある。すなわち、病院はあくまで対象施設の一例である。本発明は、様々な患者が入院している病院の他に、様々な介護を必要とする要介護者が入居している介護施設を避難対象施設とする。
【0020】
このような避難対象施設には、災害避難時に支援が必要な要支援者が多数存在する。病院における入院患者は災害避難時に支援が必要な要支援者であり、介護施設における要介護者は災害避難時に支援が必要な要支援者である。
【0021】
病院データベースAは、病院(避難対象施設)の各種データを施設データD1として記憶する施設データベースであり、施設データD1を避難計画作成装置Bに出力する。この病院データベースAには、時間の経過とともに変動し得る各種データが順次更新登録される。上記施設データD1は、
図2に示すように、病院における職員勤務情報、電子カルテ、入院患者情報、病院平面図及び避難経路図を少なくとも含む。
【0022】
職員勤務情報は、病院(避難対象施設)における部署毎の職員の勤怠情報であり、例えば病院の退勤管理システムから取得されて病院データベースAに順次更新登録される。すなわち、この職員勤務情報は、現時点において病院の各部署において出勤している在勤職員の人数(在勤職員数)と在勤職員の所在(所属部署)等を示すものである。なお、在勤職員は、災害避難時に入院患者(要支援者)を支援する支援者(在勤者)である。
【0023】
電子カルテは、従来の紙のカルテを電子化したものであり、病院における各種患者(入院患者及び通院患者)の病名や診療内容等が登録された電子データである。この電子カルテは、病院データベースAに診療の進行とともに順次更新登録されるものであり、診療の進行とともに変化する現在の患者の状態が示されている。
【0024】
入院患者情報は、病院における入院患者の人数、性別及び所在等を示す情報であり、病院データベースAに順次更新登録される。入院患者は、自身の病状に応じた病入病棟に入院するが、入院病棟が複数階に亘る場合や入院病棟が複数存在する場合がある。入院患者情報は、このような入院患者がどこの入院病棟のどの階のどの部屋に入院しているのかを示すものである。
【0025】
病院平面図は、病院における各フロアの平面図である。病院が複数階からなる場合や複数の病棟からなる場合、病院平面図は、各病棟かつ各階におけるフロア構成を示す平面図である。このような病院平面図は、病院における改装工事や病棟等の建て増し等が発生した場合に更新される。
【0026】
避難経路図は、災害発生時に入院患者をどのような経路で避難させるのかを示す図面である。この避難経路図は、病院が様々な災害毎に策定したものであり、水害用避難経路図または地震用避難経路図等、災害の種類毎に病院データベースAに登録されている。
【0027】
避難計画作成装置Bは、避難対象施設の病院データベースAから施設データD1を所定のタイムインターバルで順次取得し、当該施設データD1に基づいて入院患者(要支援者)の災害避難に要する時間を避難時間としてリアルタイムに算出する装置である。また、避難計画作成装置Bは、災害避難に関する避難計画をも作成する。
【0028】
この避難計画作成装置Bは、例えば汎用コンピュータに避難計画作成プログラム(アプリケーションプログラム)を搭載したものである。避難計画作成装置Bは、
図1に示すように職員情報集計部1、患者情報集計部2、避難経路設定部3、避難時間解析部4、避難計画部5、出力部6及び操作部7を機能構成要素として備えている。これら各機能構成要素は、汎用コンピュータのハードウエアと避難計画作成プログラム(ソフトウエア)との協働によって実現される。
【0029】
職員情報集計部1は、
図2に示すように、施設データD1の職員勤務情報から在勤者数及び在勤者の所在を抽出データD2としてリアルタイムに抽出する機能構成要素である。この職員情報集計部1は、例えば病院の各部署毎に在勤者数及び在勤者の所在を抽出データD2として抽出し、当該抽出データD2を施設データD1とともに避難時間解析部4に出力する。なお、職員情報集計部1が難時間解析部4に出力する抽出データD2は、病院の職員つまり支援者に関する情報(支援者情報)である。
【0030】
患者情報集計部2は、本実施形態における要支援者情報集計部である。この患者情報集計部2は、施設データD1の電子カルテ及び入院患者情報から入院患者の所在、入院患者の状態、入院患者の収容に必要な必要病床数(必要収容機器数)、避難時における支援者の必要数、避難時における搬送器具の必要台数及びその他関連情報を抽出データD2としてリアルタイムに抽出する機能構成要素である。
【0031】
患者情報集計部2は、このような抽出データD2を施設データD1及び抽出データD2とともに避難時間解析部4に出力する。なお、患者情報集計部2が避難時間解析部4に出力する抽出データD2は、要支援者である入院患者に関する情報(要支援者情報)である。また、抽出データD2におけるその他関連情報は、避難時における病床移動の優先順位等である。
【0032】
避難経路設定部3は、
図2に示すように、施設データD1の病院平面図及び避難経路図から最適避難経路を抽出データD2としてリアルタイムに抽出する機能構成要素である。なお、この避難経路設定部3は、抽出データD2の抽出に際して操作部7から入力される災害種類(選択指示)を用いる。
【0033】
すなわち、避難経路設定部3は、施設データD1として登録されている複数の避難経路図のうち、操作部7で指定された災害種類に対応する避難経路図(指定避難経路図)を選択し、当該指定避難経路図が示す指定避難経を病院平面図上に示したものを最適避難経路として抽出する。避難経路設定部3は、このような最適避難経路を施設データD1とともに避難時間解析部4に出力する。
【0034】
例えば病院の浸水被害に基づく災害避難では、浸水の虞がある1階の入院患者を上階に避難させる必要がある。よって、浸水被害に基づく災害避難では1階から上階の避難病室までの避難経路が最適避難経路として抽出される。また、地震に基づく災害避難では、上階の入院患者を下階に避難させる必要があるので、上階から下階の避難病室までの避難経路が最適避難経路として抽出される。
【0035】
避難時間解析部4は、災害避難時における避難時間をリアルタイムに算出する機能構成要素である。この避難時間解析部4は、職員情報集計部1から入力される支援者情報、患者情報集計部2から入力される要支援者情報及び避難経路設定部3から入力される最適避難経路に基づいて、入院患者(要支援者)の災害避難に要する時間を避難時間として算出する。
【0036】
すなわち、避難時間解析部4は、要支援者情報で示される入院患者(要支援者)を支援者情報で示される在勤職員(支援者)で最適避難経路に沿って避難させる場合の工数(作業量)、また当該工数を構成する要素作業に要する時間(要素作業時間)を見積もる。
【0037】
避難時間解析部4は、上記要素作業時間に工数を乗算した時間を避難時間として算出し、当該避難時間を施設データD1及び抽出データD2とともに避難計画部5に出力する。なお、この避難時間算出には、非特許文献1に記載された移動時間算定方法、病院で実際に避難訓練を行った際の避難時間実積、非特許文献3に記載された避難シミュレーションを利用してもよい。
【0038】
避難計画部5は、避難時間解析部4から入力される施設データD1、抽出データD2及び避難時間等に基づいて避難計画を策定する機能構成要素である。この避難計画部5は、施設データD1、抽出データD2及び避難時間に基づいて、どの入院患者をどの在勤職員がどの順番で最適避難経路に沿って避難させるかを解析する。なお、避難計画部5は、操作部7から入力される在勤職員の必要人員をも加味して避難計画を策定する。
【0039】
避難計画部5は、この解析結果に基づく避難計画を出力部6に出力する。この避難計画は、例えば避難計画全体を示すガントチャートである。すなわち、避難計画(ガントチャート)には、入院患者(要支援者)を避難させる際に各在勤職員(支援者)が行う具体的な作業手順、各作業に要する要素作業時間及び避難計画全体の避難時間等が示されている。
【0040】
出力部6は、避難計画(ガントチャート)を出力するハードウエアであり、例えば表示装置、記憶装置及び通信装置等から構成されている。すなわち、出力部6は、避難計画(ガントチャート)を画像として表示装置に表示し、避難計画(ガントチャート)を記憶装置に記憶させ、また通信装置を用いて避難計画(ガントチャート)を外部に送信する。
【0041】
操作部7は、上述した避難時間の算出及び避難計画の作成に必要な操作情報を病院の防災担当者が入力するハードウエアであり、例えばマウス等のポインティングデバイスやキーボードである。病院の防災担当者は、上述した災害種類や在勤職員の必要人員等を操作部7を用いて避難計画作成装置Aに入力する。
【0042】
次に、本実施形態に係る避難計画作成システム及び避難計画作成装置Bの動作について、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0043】
避難計画作成装置Bは、避難計画作成プログラムが起動すると、最初に開始条件が満足しているか否かを判断する(ステップS1)。本実施形態に係る避難計画作成システム及び避難計画作成装置Bは、避難時間及び避難計画のリアルタイム性を重視しているので、開始条件を満足する度つまりステップS1の判断が「Yes」になる度にステップS2~S8の処理を繰り返すことにより、避難時間の算出及び避難計画の作成を繰返し実行する。
【0044】
上記開始条件は、避難時間及び避難計画のリアルタイム性を確保する必要から、避難時間の算出及び避難計画の作成に関する時間条件や施設データD1の変化条件が設定される。すなわち、病院(避難対象施設)の避難担当者は、操作部7を操作することによって開始条件を避難計画作成装置Bに予め設定する。
【0045】
例えば、開始条件が時間条件の一つである開始時刻であった場合、避難計画作成装置Bは、現在時刻が開始時刻に一致する度に避難時間の算出を開始する。また、開始条件が施設データD1の変化条件の一つである在勤職員(支援者)または入院患者(要支援者)の増減数であった場合、避難計画作成装置Bは、前回の避難時間の算出時における在勤職員(支援者)または入院患者(要支援者)の人数に対して所定の増減数を施設データD1に基づいて検知する度に避難時間の算出を開始する。
【0046】
そして、避難計画作成装置Bは、予め設定された開始条件が満足していると判断すると(ステップS1)、病院データベースAから施設データD1を取得する(ステップS2)。すなわち、避難計画作成装置Bにおいて、職員情報集計部1は病院データベースAから職員勤怠情報を取得し、患者情報集計部2は病院データベースAから電子カルテ及び入院患者情報を取得し、また避難経路設定部3は電子カルテ及び入院患者情報を取得する。
【0047】
そして、職員情報集計部1、患者情報集計部2及び避難経路設定部3は、各々に施設データD1から抽出データD2を取得する(ステップS3)。すなわち、職員情報集計部1は、職員勤怠情報から在勤職員数及び在勤職員の所在を取得する。また、患者情報集計部2は、電子カルテ及び入院患者情報から入院患者の所在、入院患者の状態、避難時の必要病床数、避難時における支援者の必要数、避難時における搬送器具の必要台数及びその他関連情報を取得する。さらに、避難経路設定部3は、病院平面図及び避難経路図から最適避難経路を取得する。
【0048】
そして、避難時間解析部4は、職員情報集計部1、患者情報集計部2及び避難経路設定部3から入力された抽出データD2及び施設データD1に基づいて災害避難に要する入院患者(要支援者)の避難時間を算出する(ステップS4)。そして、避難時間解析部4は、避難時間を抽出データD2及び施設データD1とともに避難計画部5に出力する。
【0049】
ここで、避難計画部5は、操作部7から避難計画の作成指示が入力されりるか否かを判断する(ステップS5)。避難計画部5は、このステップS5の判断が「No」の場合つまり避難担当者が避難計画の作成を要求しない場合、入院患者(要支援者)の避難時間を出力部6に出力する(ステップS6)。
【0050】
一方、ステップS5の判断が「Yes」の場合つまり避難担当者が避難計画の作成を要求した場合、避難計画部5は、避難時間、抽出データD2及び施設データD1に基づいて現時点における避難計画を作成する(ステップS7)。そして、避難計画部5は、現時点の避難計画を出力部6に出力する(ステップS8)。
【0051】
避難計画作成装置Bは、避難計画部5におけるステップS6,S8の処理が完了すると、ステップS1の判断処理を繰り返すことにより、入院患者(要支援者)の避難時間の算出、または当該避難時間の算出及び避難計画の作成をステップS1の判断処理が「Yes」となる度つまり開始条件を満足する度に繰返し実行する。
【0052】
このような本実施形態によれば、入院患者(要支援者)の避難時間の算出、または当該避難時間の算出及び避難計画の作成が開始条件を満足する度に繰返し実行されるので、避難時間をリアルタイムに算出する、または避難時間をリアルタイムに算出することに加え避難計画をリアルタイムに作成することが可能な避難計画作成システム及び避難計画作成装置Bを提供することができる。
【0053】
本実施形態によれば、その日その時間帯の状況をもとにした入院患者(要支援者)の災害避難に必要な避難時間と具体的な工程がリアルタイムに出力され、また病院職員への具体的な避難手順の提示が可能となる。したがって、本実施形態によれば、従来は人手で避難手順を判断するという属人的な手順が標準化されるため、例えば経験の浅い職員でも的確な患者の避難判断が可能となり、ひいては災害時において患者の命を確実に救うことに大きく貢献することが期待できる。
【符号の説明】
【0054】
A 病院データベース(施設データベース)
B 避難計画作成装置(避難時間算出装置)
D1 施設データ
1 職員情報集計部
2 患者情報集計部(要支援者情報集計部)
3 避難経路設定部
4 避難時間解析部
5 避難計画部
6 出力部
7 操作部