(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180852
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20231214BHJP
A61B 5/145 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G16H50/20
A61B5/145
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094493
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有田 亘佑
(72)【発明者】
【氏名】朴 龍勲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 優大
(72)【発明者】
【氏名】霜村 侑香
(72)【発明者】
【氏名】木村 朝輝
【テーマコード(参考)】
4C038
5L099
【Fターム(参考)】
4C038KK01
4C038KK10
4C038KL07
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】被検体の実際の体調状態に近い生体内部成分量を、より適切に特定することである。
【解決手段】実施形態の医用情報処理装置は、取得部と、基準データ特定部と、第1導出部と、第2導出部と、信頼度スコア決定部と、を持つ。取得部は、被検体に関する生体データを取得する。基準データ特定部は、前記生体データに基づいて第1特徴量に関する基準データを特定する。第1導出部は、前記生体データに含まれる第1特徴量を、前記第1特徴量と第2特徴量とを相互に変換可能なモデルに入力することで第2特徴量を取得する。第2導出部は、前記第2特徴量を前記モデルに入力することでシミュレートされた前記第1特徴量に関する擬似特徴データを導出する。信頼度スコア決定部は、前記基準データと前記擬似特徴データとに基づいて前記生体データに関する信頼度スコアを決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に関する生体データを取得する取得部と、
前記生体データに基づいて第1特徴量に関する基準データを特定する基準データ特定部と、
前記生体データに含まれる第1特徴量を、前記第1特徴量と第2特徴量とを相互に変換可能なモデルに入力することで第2特徴量を取得する第1導出部と、
前記第2特徴量を前記モデルに入力することでシミュレートされた前記第1特徴量に関する擬似特徴データを導出する第2導出部と、
前記基準データと前記擬似特徴データとに基づいて前記生体データに関する信頼度スコアを決定する信頼度スコア決定部と、
を備える医用情報処理装置。
【請求項2】
前記生体データは、単一または複数時相の生体データである、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記第1特徴量は、前記生体データから導出される特徴量であり、
前記第2特徴量は、前記第1特徴量から導出される特徴量である、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記基準データ特定部は、前記生体データに基づいて、複数の第1特徴量のそれぞれに対する基準データを特定し、
前記第1導出部は、前記第1特徴量のそれぞれを前記モデルに入力することで、複数の前記第2特徴量を導出し、
前記第2導出部は、複数の前記第2特徴量を前記モデルに入力することで複数の前記擬似特徴データを導出し、
前記信頼度スコア決定部は、複数の前記基準データと複数の前記擬似特徴データとに基づいて前記信頼度スコアを決定する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記生体データは、画像を含み、
前記信頼度スコア決定部は、前記画像に含まれる画素ごと、または、所定画像範囲における信頼度スコアを決定する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記信頼度スコア決定部により決定された信頼度スコアに関する情報を含む画像を生成する画像生成部を更に備える、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記画像生成部は、前記被検体の生体データとして取得された画像の領域のうち、前記信頼度スコアが閾値未満の領域をマスクした画像を生成する、
請求項6に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記画像生成部は、前記信頼度スコア決定部により決定された信頼度スコアが閾値未満である場合に、前記生体データの再取得を促す画像を生成する、
請求項6に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記信頼度スコア決定部により決定された信頼度スコアに基づいて調整された生体データを用いてモデルを学習する学習部を更に備える、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
コンピュータが、
被検体に関する生体データを取得し、
前記生体データに基づいて第1特徴量に関する基準データを特定し、
前記生体データに含まれる第1特徴量を、前記第1特徴量と第2特徴量とを相互に変換可能なモデルに入力することで第2特徴量を取得し、
前記第2特徴量を前記モデルに入力することでシミュレートされた前記第1特徴量に関する擬似特徴データを導出し、
前記基準データと前記擬似特徴データとに基づいて前記生体データに関する信頼度スコアを決定する、
医用情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
被検体に関する生体データを取得させ、
前記生体データに基づいて第1特徴量に関する基準データを特定させ、
前記生体データに含まれる第1特徴量を、前記第1特徴量と第2特徴量とを相互に変換可能なモデルに入力することで第2特徴量を取得させ、
前記第2特徴量を前記モデルに入力することでシミュレートされた前記第1特徴量に関する擬似特徴データを導出させ、
前記基準データと前記擬似特徴データとに基づいて前記生体データに関する信頼度スコアを決定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりヘモグロビン濃度や血中酸素飽和度等の生体内部成分は、疾患発症を検出する上で重要な情報となっている。ヘモグロビン濃度は、血流変化を伴う心不全、静脈血のうっ滞を伴う下肢静脈瘤等の血流由来の皮膚変化を引き起こす疾患判断の手がかりとなり得る。このような疾患の発症を早期に検出するためには、生体内部成分を継続的に監視する必要がある。その場合、特殊な機材を用いずに病室や在宅で手軽に計測できる手法が望ましい。特殊な機材を用いずに生体内部成分量を計測する手法として、光学カメラと物理モデルを活用し、MCML(Monte Carlo modeling of light transport in multi-layered tissues)で計算した輝度値と実測値との差が最小となる皮膚内部成分量を探索や決定する手法や、遺伝的アルゴリズムを用いて皮膚内部成分量を探索する手法が知られている。しかしながら、これらの手法は、計算した輝度値と実測値との差のみを成分量の決定基準としているため、組み合わせが異なる複数の成分量に対して同じ輝度値となり、解の一意性を満たさない場合や、探索範囲の不一致により、患者等の被検体の実際の体調状態に近い生体内部成分量を特定できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Romuald Jolivot, Yannick Benezeth, and Franck Marzani、“Skin Parameter Map Retrieval from a Dedicated Multispectral Imaging System Applied to Dermatology/Cosmetology”、Hindawi Publishing Corporation International Journal of Biomedical Imaging Volume 2013, Article ID 978289, 15 pages、Published Date:2013/09/18、http://dx.doi.org/10.1155/2013/978289
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題の一つは、被検体の実際の体調状態に近い生体内部成分量を、より適切に特定することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は、上記課題に限られず、後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の医用情報処理装置は、取得部と、基準データ特定部と、第1導出部と、第2導出部と、信頼度スコア決定部と、を持つ。取得部は、被検体に関する生体データを取得する。基準データ特定部は、前記生体データに基づいて第1特徴量に関する基準データを特定する。第1導出部は、前記生体データに含まれる第1特徴量を、前記第1特徴量と第2特徴量とを相互に変換可能なモデルに入力することで第2特徴量を取得する。第2導出部は、前記第2特徴量を前記モデルに入力することでシミュレートされた前記第1特徴量に関する擬似特徴データを導出する。信頼度スコア決定部は、前記基準データと前記擬似特徴データとに基づいて前記生体データに関する信頼度スコアを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の医用情報処理装置を含む医用情報システム1の構成の一例を示す図。
【
図2】基準データ特定機能142について説明するための図。
【
図3】第1導出機能143について説明するための図。
【
図4】モデルを用いた問題解析について説明するための図。
【
図5】第2導出機能144について説明するための図。
【
図6】信頼度スコア決定機能145について説明するための図。
【
図7】画像生成機能146により生成される第1画像IM10の一例を示す図。
【
図8】画像生成機能146により生成される第2画像IM20の一例を示す図。
【
図9】処理回路140で実行される処理の一連の流れを示すフローチャート。
【
図10】変形例の医用情報処理装置100Aを含む医用情報システム1Aの構成例を示す図。
【
図11】画像生成機能146によって生成される第3画像IM30の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の医用情報処理装置、医用情報処理方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、実施形態の医用情報処理装置を含む医用情報システム1の構成の一例を示す図である。医用情報システム1は、例えば、患者側端末10と、病院側端末20と、医用情報処理装置100とを備える。患者側端末10、病院側端末20、および医用情報処理装置100は、例えば、ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。なお、医用情報システム1には、患者側端末10および病院側端末20の少なくとも一方が複数設けられていてもよい。
【0010】
ネットワークNWは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を示す。ネットワークNWは、無線/有線LAN(Local Area Network)や、WAN(Wide Area Network)、インターネット網、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワーク、衛星通信ネットワーク等を含む。
【0011】
患者側端末10は、患者(被検体の一例)に関する生体データを取得し、取得した生体データを、ネットワークNWを介して医用情報処理装置100に送信する。生体データは、例えば、患者の生体内部成分のパラメータを取得可能なデータである。生体データには、例えば、患者の皮膚画像や、各種センサによって取得される情報(例えば、吸光度)が含まれる。生体内分成分のパラメータとは、例えば、ヘモグロビン濃度(以下、Hb濃度)、メラニン濃度(以下、Me濃度)等の生体内部成分量である。また、生体内部成分のパラメータには、患者の皮膚の表皮の厚さや真皮の厚さ等が含まれてよい。また、生体内部成分のパラメータには、血液中の酸素飽和度、血糖値等が含まれてよい。
【0012】
患者側端末10は、1または複数時相の生体データを送信する。また、患者側端末10は、生体データを送信する場合に、患者情報(例えば、患者を識別する識別情報)や生体データ基本情報(例えば、生体データの種別や取得日時情報)を送信してもよい。患者側端末10は、上述した処理を実行する機能を備える装置であり、例えば、スマートフォンやタブレット端末、カメラ装置、ウェアラブル端末である。
【0013】
病院側端末20は、ネットワークNWを介して医用情報処理装置100による処理結果を取得し、取得した情報を表示して、医師等のユーザに患者の状態等を提供する。病院側端末20は、設置型のPC(Personal Computer)やサーバ等でもよく、可搬型のスマートフォンやタブレット端末等でもよい。
【0014】
医用情報処理装置100は、患者側端末10から送信された生体データを受信して、生体データから生体内部成分量の信頼度を定量化する等の処理を行う。また、医用情報処理装置100は、処理結果を自装置のディスプレイに表示させたり、ネットワークNWを介して病院側端末20に送信する。
【0015】
ここで、医用情報処理装置100の機能構成について説明する。医用情報処理装置100は、例えば、通信インターフェース110と、入力インターフェース120と、ディスプレイ130と、処理回路140と、メモリ150とを備える。
【0016】
通信インターフェース110は、例えば、NIC(Network Interface Controller)等の通信インターフェースを含む。通信インターフェース110は、ネットワークNWを介して患者側端末10や病院側端末20等の外部装置と通信し、取得される情報を処理回路140等に出力する。また、通信インターフェース110は、処理回路140による制御を受けて、ネットワークNWを介して接続された病院側端末20等の外部装置に情報を送信する。
【0017】
入力インターフェース120は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路140に送信する。入力インターフェース120は、例えば、ユーザにより入力操作が行われた場合に、入力操作に応じた情報を生成する。入力インターフェース120は、生成した入力操作に応じた情報を処理回路140に送信する。入力インターフェース120は、例えば、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパネル等により実現される。また、入力インターフェース120は、例えば、マイク等の音声入力を受け付けるユーザインターフェースによって実現されてもよい。入力インターフェース120がタッチパネルである場合、後述するディスプレイ130は入力インターフェース120と一体として形成されてよい。
【0018】
ディスプレイ130は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ130は、処理回路140によって生成された画像や、ユーザからの各種の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。例えば、ディスプレイ130は、LCD(Liquid Crystal Display)や、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。
【0019】
処理回路140は、例えば、取得機能141と、基準データ特定機能142と、第1導出機能143と、第2導出機能144と、信頼度スコア決定機能145と、画像生成機能146と、表示制御機能147とを備える。処理回路140は、例えば、ハードウェアプロセッサが記憶装置(記憶回路)に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0020】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。
【0021】
記憶装置にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。上記のプログラムは、予め記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の非一時的記憶媒体に格納されており、非一時的記憶媒体が医用情報処理装置100のドライブ装置(不図示)に装着されることで非一時的記憶媒体から記憶装置にインストールされてもよい。
【0022】
ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0023】
メモリ150は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。これらの非一過性の記憶媒体は、NAS(Network Attached Storage)や外部ストレージサーバ装置といったネットワークNWを介して接続される他の記憶装置によって実現されてもよい。また、これらの非一過性の記憶媒体は、ROM(Read Only Memory)やレジスタ等の記憶装置によって実現されてもよい。メモリ150には、例えば、生体データ(Data Base)151やモデルDB152、プログラム、その他の各種情報が格納される。
【0024】
取得機能141は、通信インターフェース110を介して患者側端末10から送信された生体データを取得する。また、取得機能141は、取得した生体データを患者情報や生体データ基本情報等に対応付けて生体データDB151に格納してもよい。また、取得機能141は、生体データDB151から生体データを取得してもよい。なお、生体データDB151は、ネットワークNWを介して外部装置から取得してもよい。
【0025】
また、取得機能141は、取得した生体データからモデルDB152に格納されたモデルを用いた所定の変換が可能な情報を取得してもよい。モデルDB152に格納されたモデルは、シミュレート等によって第1特徴量と第2特徴量とを相互に変換可能な物理モデルや数理モデルである。第1特徴量は、例えば、生体データから導出される特徴量である。第1特徴量とは、例えば、画像の輝度値や、吸光度である。第2特徴量は、第1特徴量から導出される特徴量である。第2特徴量とは、例えば、生体内部成分のパラメータである。以下では、第2特徴量をモデルに入力してシミュレートされた第1特徴量を取得することを「順問題解析」と称し、第1特徴量をモデルに入力してシミュレートされた第2特徴量を取得することを「逆問題解析」と称する場合がある。また、第1特徴量および第2特徴量のうち一方をモデルに入力することでシミュレートされた他方の特徴量に関するデータを「擬似特徴データ」と称する場合がある。
【0026】
生体データDB151に格納されたモデルには、例えば、クベルカムンク理論に基づく皮膚の光反射の推定手法により第1特徴量と第2特徴量とを相互に変換するモデル(以下、「第1モデル」と称する)や、MCML等を用いた生体組織内での光散乱シミュレーションにより第1特徴量と第2特徴量とを相互に変換するモデル(以下、「第2モデル」と称する)、ランベルト-ベールの法則を用いて光の物質による吸収を定式化し、第1特徴量と第2特徴量とを相互に変換する物理モデル(以下、「第3モデル」と称する)等が含まれる。モデルDB152は、ネットワークNWを介して外部装置から取得されてよい。
【0027】
例えば、取得機能141は、後段の処理(例えば、第1導出機能143、第2導出機能144の処理)で第1モデルまたは第2モデルを用いる場合には、生体データに含まれる皮膚画像から輝度値を取得し、第3モデルを用いる場合には、生体データに含まれるセンサ結果から吸光度を取得する。
【0028】
また、取得機能141は、生体データに含まれる生体内部成分のパラメータを導出するうえでノイズとなる情報(例えば、画像に含まれる掌紋や皺、毛に関する情報)を除去するため、生体データに平滑化フィルタリングやエッジ抽出除去等の処理(前処理)を行ってもよい。更に、取得機能141は、単一時相のデータを取得してもよく、複数時相のデータを時系列で取得してもよい。
【0029】
基準データ特定機能142は、生体内部成分のパラメータの変化に基づく特徴(基準データ)を特定する。基準データとは、例えば、特定したい生体内部成分量の変化を反映する特徴を示す指標値である。
図2は、基準データ特定機能142について説明するための図である。なお、以下では、生体データとして、患者動画像MVを用いるものとし、第1特徴量として輝度値を用い、第2特徴量としてHb濃度を用いるものとする。輝度値は、例えば、RGBのうち少なくとも一つの輝度値である。以下では、一例としてR(緑)の輝度値を用いるものとする。患者動画像MVは、例えば、患者の同一領域の皮膚を異なる時刻tで撮影した複数時相の画像(例えば、皮膚内の血液の色を画像から抽出可能な皮膚画像)である。患者動画像MVには、帯域の情報が含まれてよい。
【0030】
基準データ特定機能142は、患者動画像MVに含まれる時相ごとの皮膚画像から、輝度値に関する基準データと特定する。例えば、拍動による心臓の収縮と拡張のサイクルによって、体内の血流量も増減する(血液の流れが変化する)。例えば、収縮時は、血流量が多くなる(ヘモグロビン濃度が大きくなる)ため、血液中のヘモグロビンの吸光度が大きくなり輝度値は小さくなる。一方、拡張時は、血流量が少ない(ヘモグロビン濃度が小さくなる)ため、ヘモグロビンの吸光度が小さくなり輝度値は大きくなる。したがって、画像領域中の同一箇所の画素の時間経過に伴う輝度値も、
図2に示すように周期的に増減を繰り返す。したがって、基準データ特定機能142は、拍動によって生じる輝度値の時間変化のうち所定領域の輝度値の変化を示す情報(輝度値変化部分)を基準データとして特定する。この基準データは、所定領域のHb濃度の変化を示す情報とみなしてもよい。
【0031】
図2の例において、基準データ特定機能142は、輝度値の周期的な変化のうち、Hb濃度の増加を示す時間領域(輝度値の増減を示す波形の極大値(凸部)から極小値(凹部)までの範囲)の輝度値を抽出している。なお、基準データ特定機能142は、
図2に示すように、Hb濃度の増加を示す複数の時間領域の輝度値を平均化して基準データを特定する。これにより、各時間領域による輝度値のバラツキを抑制することができる。なお、基準データ特定機能142は、Hb濃度の増加を示す複数の時間領域のうち、何れかを選択して基準データを特定してもよい。また、基準データ特定機能142はHb濃度の減少を示す時間領域(輝度値の極小値から極大値までの範囲)での輝度値を基準データとして特定してもよい。
【0032】
第1導出機能143は、生体データに含まれる輝度値をモデルに入力してHb濃度を含む生体内部成分量を導出する。
図3は、第1導出機能143について説明するための図である。第1導出機能143は、例えば、生体データである患者動画像MVから時相ごとに基準データを取得した箇所と同一箇所の画素の輝度値を、モデルDB151に格納されたモデル(例えば、第1モデルまたは第2モデル等の物理モデル)に入力して問題解析により生体内部成分量を導出する。
【0033】
図4は、モデルを用いた問題解析について説明するための図である。例えば、第1導出機能143および第2導出機能144で用いられるモデル(例えば、物理モデル152A)は、生体内部成分のパラメータ(例えば、Hb濃度:A、Mel濃度:B、表皮厚さ:C、真皮厚さ:D)を入力とし、順問題解析によって輝度値(RGB値)を出力するモデルである。この場合、第1導出機能143は、この物理モデル152Aを用いて、時相ごとの画素の輝度値(RGB値)から逆問題解析によって生体内部成分パラメータを導出する。
【0034】
第2導出機能144は、第1導出機能143により導出された生体内部成分のパラメータを入力として、基準データと比較できるようにシミュレーションされた輝度値データ(擬似特徴データ)を導出する。
図5は、第2導出機能144について説明するための図である。第2導出機能144は、生体内部成分のパラメータ(例えば、Hb濃度:A、Mel濃度:B、表皮厚さ:C、真皮厚さ:D)のうち、少なくとも基準データに対応するデータ(Hb濃度)を所定量ごとに変化させながら、その値を物理モデル152Aに入力し、物理モデル152Aの順問題解析によって繰り返し得られる値を、シミュレートされた第1特徴量に関する擬似特徴データ(
図5では「患者シミュレーションデータ」と称する)として導出する。所定量は、固定量でもよく、生体内部成分ごとに可変に設定されてもよい。また、所定量ごとに変化させる回数(繰り返し回数)は、比較する基準データの時間経過に基づいて設定されてもよく、固定回数でもよい。
【0035】
なお、第2導出機能144は、Hb濃度を上記回数だけ所定量ごとに増加させた生体内部成分量の集合を生成し、生成した集合をモデルに入力して、生体内部成分量の集合に対して輝度値を導出してもよい。また、第2導出機能144は、
図5の例に示すように輝度値の範囲(0~255)を所定範囲(例えば、0~1の範囲)で正規化してもよい。
図5の例では、第2導出機能144は、所定の増加量ΔAでHb濃度を増加させながら、物理モデル152Aに入力してシミュレートされたそれぞれの輝度値の変化()を擬似特徴データとして導出する。なお、
図5の例では、基準データが拍動による輝度変化周期の極大から極小までの変化であったため、擬似特徴データも同様に、極大から極小になるまでを導出しているが、基準データが極小から極大までの範囲である場合、第2導出機能144は、Hb濃度を所定量△Aで徐々に減少させてシミュレートされた擬似特徴データを導出する。
【0036】
信頼度スコア決定機能145は、第1導出機能143により導出された基準データと第2導出機能144により導出された擬似特徴データとから生体内部成分量の信頼度スコアを決定する。
図6は、信頼度スコア決定機能145について説明するための図である。信頼度スコア決定機能145は、基準データと、疑似特徴データ(患者データシミュレーション値)の値とを比較し、二つの入力データがどれだけ近いか(Hb濃度がどれだけ信頼できるか)を評価し、それぞれのデータの類似度を定量化する指標値(例えば、信頼度スコア)を決定する。例えば、信頼度スコア決定機能145は、二つの入力値の内積から信頼度スコアを決定してもよい。この場合、信頼度スコア決定機能145は、内積が1に近いほど信頼度スコアを高くする。
【0037】
また、信頼度スコア決定機能145は、二つの入力値の平均絶対誤差(MAE:Mean Absolute Error)の逆数(1/MAE)を用いて信頼度スコアを決定してもよく、平均二乗誤差(MSE:Mean Squared Error)の逆数(1/MSE)を用いて信頼度スコアを決定してもよい。この場合、信頼度スコア決定機能145は、逆数の値が大きいほど信頼度スコアを高くする。また、信頼度スコア決定機能145は、それぞれの入力値の変化において、隣り合う2点間の傾きの総和が近いほど信頼度スコアを高くする。また、信頼度スコア決定機能145は、二つの入力値の類似度合を算出する他の手法を用いてもよい。
【0038】
信頼度スコア決定機能145は、上述した処理を患者動画像MVに含まれる画像の画素ごとに実行することで、画像全体に対する信頼度スコアを取得することができる。なお、信頼度スコア決定機能145は、画像全体のうち信頼度スコアが必要な所定画像範囲のみを対象にスコアを決定してもよい。上記画像領域は、患者動画像MVの撮像位置に基づいて決定されてもよく、ユーザにより入力インターフェース120から設定されてもよい。
【0039】
画像生成機能146は、信頼度スコア決定機能145により決定された信頼度スコアに関する情報を含む画像を生成する。
図7は、画像生成機能146により生成される第1画像IM10の一例を示す図である。以下に説明する画像IM10に表示される内容やレイアウト、色、デザイン等の表示態様についてはこれに限定されるものではなない。以降で説明する他の画像についても同様である。
【0040】
図7に示す画像IM10には、例えば、患者情報表示領域AR11と、生体データ表示領域AR12と、信頼度スコア表示領域AR13と、生体内部成分量表示領域AR14と、設定入力領域AR15と、処理結果表示領域AR16とが含まれる。患者情報表示領域AR11には、生体データを取得した患者を識別する識別情報(例えば、患者ID)や、生体データの取得日時(例えば、皮膚画像の撮影日時)が表示される。生体データ表示領域AR12には、生体データDB151に含まれる信頼度スコアを決定した対象画像(
図7の例では、皮膚画像IM11)が表示される。
【0041】
信頼度スコア表示領域AR13には、皮膚画像IM11に対する信頼度スコアの分布画像IM12が表示される。生体内部成分量表示領域AR14には、皮膚画像IM11に対する生体内部成分量(例えば、Hb濃度)の導出結果を示す画像IM14、IM15が表示される。設定入力領域AR15には、信頼度スコアの下限値をユーザに設定させるための画像が表示される。
図7の例では、ユーザが入力インターフェース120への操作入力または病院側端末20からの指示によって信頼度下限値を調整することができるスライダーが表示されている。例えば、画像生成機能146は、ユーザによって設定された信頼度下限値に基づいて、Hb濃度導出結果を示す画像IM13のうち、信頼度スコアが信頼度下限値未満の領域をマスクした画像IM14を表示させる。マスクするとは、例えば、他の画像を重畳表示させることでもよく、除去することでもよく、非表示にすることでもよい。これにより、ユーザは、信頼度の高いHb濃度を把握することができる。処理結果表示領域AR16には、信頼度下限値以上の画像領域に対するHb濃度や輝度値等の処理結果が表示される。
【0042】
表示制御機能147は、画像生成機能146により表示された画像IM10をディスプレイ130に表示させたり、ネットワークNWを介して病院側端末20に送信させる。また、表示制御機能147は、処理結果等をメモリ150に格納してもよく、メモリ150に格納された情報をディスプレイ130に表示させたり、病院側端末20に送信させてもよい。
【0043】
第1画像IM10を表示させることで、例えば、信頼度スコアを含む生体内部成分量を医師等に提供できる。そのため、医師は、生体内部成分量から信頼度の低いものを除外し、信頼度の高いデータから診断できるため、患者の疾患発症の見逃し等を防止でき、より適切な診断が可能となる。
【0044】
なお、画像生成機能146は、第1画像IM10に代えて(または加えて)、他の画像を生成してもよい。
図8は、画像生成機能146により生成される第2画像IM20の一例を示す図である。第2画像I20は、患者に生体データの再取得(
図8の例では、皮膚画像の再撮影)を促す情報が含まれる。
【0045】
図8に示す第2画像IM20には、例えば、患者情報表示領域AR21と、生体データ表示領域AR22と、信頼度スコア表示領域AR23と、生体内部成分量表示領域AR24と、処理結果表示領域AR25とが含まれる。患者情報表示領域AR21、生体データ表示領域AR22、および信頼度スコア表示領域AR23には、上述した第1画像IM10の表示領域AR11~AR13と同様の情報が表示される。生体内部成分量表示領域AR24には、皮膚画像IM11に対する生体内部成分量(例えば、Hb濃度)の導出結果を示す画像IM14が表示される。また、処理結果表示領域AR25には、処理対象の生体内部成分量に対する信頼度スコアの情報(数値)と、処理結果に基づく再撮影の要否に関する情報が表示される。
【0046】
例えば、皮膚画像IM11における生体内部成分量の信頼度スコアが閾値未満である場合、画像生成機能146は、患者に生体データ(皮膚画像)の再取得を促す情報を表示させる。
図8の例では、信頼度スコア(34.5±13(%))が閾値未満であるため、生体データの再取得が必要であることを示す情報(「警告:撮影ミスの可能性があります。再撮影が必要です。」)等の情報が生体内部成分量表示領域AR24に表示されている。
【0047】
表示制御機能147は、第2画像IM20が生成された場合には、ディスプレイ130に表示させたり、病院側端末20に送信する他、患者側端末10に送信して生体データの再取得および再送信を促してもよい。第2画像IM20を表示させることで、信頼度スコアが低い場合に患者に入力データの再取得を促すため、信頼度スコア低い情報によって誤った診断が行われたり、疾患発症(例えば、心不全発症や下肢静脈瘤発症)が見逃されることを防止することができる。
【0048】
[処理フロー]
以下、実施形態における処理回路140の処理フローについて説明する。
図9は、処理回路140で実行される処理の一連の流れを示すフローチャートである。
図9の例において、取得機能141は、生体データDB151から生体内部成分量を取得するため皮膚画像(複数時相の画像を含む動画像)を取得する(ステップS100)。次に、基準データ特定機能142は、取得した皮膚画像から拍動によりHb濃度増加に伴う輝度値変化部分(基準データ)を特定する(ステップS110)。
【0049】
次に、第1導出機能143は、基準データを取得した画素と同一の対象画素を選択し(ステップS120)、選択した対象画素の輝度値に対するHb濃度を導出する(ステップS130)。また、第1導出機能143は、Hb濃度を増加させた生体内部成分量の集合を生成する(ステップS140)。
【0050】
次に、第2導出機能144は、生体内部成分量の集合に対して輝度値を導出して、患者データシミュレーション値(擬似特徴データ)を算出する(ステップS150)。次に、信頼度スコア決定機能145は、基準データと患者データシミュレーション値とに基づいて信頼度スコアを決定する(ステップS160)。次に、画像生成機能146は、信頼度スコアを含む画像を生成する(ステップS170)。次に、表示制御機能147は、生成した画像をディスプレイ130に表示させる(ステップS180)。ステップS180では、生成した画像を、ネットワークを介して外部装置(病院側端末20)に送信してもよい。これにより、本フローチャートの処理は、終了する。
【0051】
[変形例]
実施形態の医用情報処理装置100は、例えば、信頼度スコア決定機能145によって算出された生体データに対する信頼度スコアをCDS(Clinical Decision Support;臨床意思決定支援)用のモデルの学習時に用いてもよい。以下、上記内容を医用情報処理装置の変形例として説明する。なお、上述の医用情報システム1で説明した構成と同様の構成については、同様の名称および符号を付するものとし、ここでの具体的な説明は省略する。
【0052】
図10は、変形例の医用情報処理装置100Aを含む医用情報システム1Aの構成例を示す図である。医用情報システム1は、例えば、患者側端末10と、病院側端末20と、医用情報処理装置100Aとを備える。患者側端末10、病院側端末20、および医用情報処理装置100Aは、例えば、ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。
【0053】
医用情報処理装置100Aは、例えば、通信インターフェース110と、入力インターフェース120と、ディスプレイ130と、処理回路140Aと、メモリ150とを備える。処理回路140Aは、例えば、取得機能141と、基準データ特定機能142と、第1導出機能143と、第2導出機能144と、信頼度スコア決定機能145と、画像生成機能146と、表示制御機能147と、学習機能148とを備える。処理回路140Aは、医用情報処理装置100の処理回路140と比較して学習機能148を有する点で相違する。したがって、以下では主に学習機能148を中心として説明する。
【0054】
学習機能148は、信頼度スコア決定機能145により決定された信頼度スコアに基づいて調整された生体データを用いてモデルを学習する。例えば、学習機能148は、信頼度スコア決定機能145により決定された信頼度スコアを用いて、CDS用モデルや他のモデル(例えば、モデルDB152に格納されたモデル)を学習する。CDSモデルは、例えば、医療現場(例えば、病院側端末20)や美容現場、その他のコンピュータ診断支援(CAD;Computer Aided Diagnosis)システム等の画像解析を実行する現場で使用される。
【0055】
学習機能148は、皮膚画像を取得して平滑化フィルタリングやエッジ抽出除去等の前処理を行う。また、学習機能148は、学習データとテストデータの分割を行い、分割したデータから信頼度スコア決定機能145により決定された信頼度(信頼度スコア)を基に学習に用いる領域を選出する。具体的には、学習対象となる皮膚画像から生体内部成分量の信頼度スコアが閾値(例えば、75[%])未満の低信頼な領域をマスクする。その後、学習機能148は、マスクされていない信頼度スコアが閾値以上のデータを用いてCDSモデルの学習を行う。学習には、例えばディープラーニング(深層学習)やその他の機械学習等の周知の学習手法が用いられる。また、学習機能148は、学習結果の精度(Accuracy)を評価してもよい。
【0056】
画像生成機能146は、学習機能148によって処理された結果を含む画像を生成する。
図11は、画像生成機能146によって生成される第3画像IM30の一例を示す図である。
図11の例において、画像IM30には、学習内容表示領域AR31と、学習結果表示領域AR32とが含まれる。学習内容表示領域AR31には、学習機能148によって実行される学習処理の流れや、各処理の結果が表示される。
図11の例では、処理結果として、皮膚画像IM11と、信頼度スコアが低い領域がマスクされた画像IM14が示されている。
【0057】
学習結果表示領域AR32には、例えば、学習データのサンプル数や、スクリーニング(信頼度スコアに基づくマスク処理)の有無に基づいて学習されたモデルの評価結果(精度)が表示される。表示制御機能147は、生成された画像をディスプレイ130に表示したり、ネットワークNWを介して外部装置に送信する。
【0058】
上述した変形例によれば、画像IM30等の情報をユーザに提供することで、信頼度スコアをモデルの学習に用いるか否かの判断に用いることができる。なお、医用情報処理装置100Aは、入力インターフェース120を介してユーザからモデルの学習にスクリーニング有りのデータを用いるか、スクリーニング無しのデータ用いるかの選択を受け付けて、受け付けた結果に対応させた学習処理を実行してもよい。
【0059】
実施形態の医用情報処理装置100、100Aは、患者側端末10における機能の少なくとも一部が含まれてもよく、病院側端末20の機能の少なくとも一部が含まれてもよい。したがって、医用情報処理装置100、100Aに患者の生体データ(例えば、患者動画像等)を撮影する機能が設けられていてもよく、医師等が医用情報処理装置100、100Aのディスプレイ130に表示される画像を見ながら患者の診断等を行ってもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、生体内部成分のパラメータとして主にHb濃度を用いて説明したが、これに代えて(または加えて)、生体データとして取得可能な他の生体内部成分量(例えば、Mel濃度や血糖値、静脈血酸素飽和度(SpO2)、動脈血酸素飽和度(SvO2)に対する信頼度スコアを決定してもよい。この場合、実施形態の医用情報処理装置100、100Aは、取得機能141により取得される生体データの内容、基準データ特定機能142により特定される基準データの内容に応じて、信頼度スコアを算出する生体内部成分のパラメータを変更する。例えば、基準データがセンサにより検出された吸光度である場合には、生体内部成分のパラメータとして、血液中の酸素飽和度(例えば、静脈血酸素飽和度、動脈血酸素飽和度)が選択される。また、実施形態の医用情報処理装置100、100Aは、入力インターフェース120を介してユーザから信頼度スコアを決定する対象の情報を受け付け、受け付けた対象に応じた情報を用いて処理を行ってもよい。
【0061】
また、上述の実施形態の例では、拍動による輝度値変化を想定して基準データ等を特定したが、これに代えて、カフ等の部材を用いた血管を圧迫に伴う輝度値変化(血流量の減少による輝度値の増加)を想定した基準データ等を特定してもよい。
【0062】
また、実施形態の医用情報処理装置100、100Aは、単一時相の画像から特定される基準データと同画像から導出される擬似特徴データとに基づいて信頼度スコアを決定してもよい。また、実施形態の医用情報処理装置100、100Aは、複数の基準データと複数の擬似特徴データとに基づいて信頼度スコアを決定してもよい。この場合、基準データ特定機能142は、生体データに基づいて、複数の第1特徴量のそれぞれに対する基準データを特定する。また、第1導出機能143は、第1特徴量のそれぞれをモデルに入力することで、複数の第2特徴量を導出し、第2導出機能144は、複数の第2特徴量をモデルに入力することで複数の擬似特徴データを導出する。そして、信頼度スコア決定機能145は、複数の基準データと複数の擬似特徴データとに基づいて信頼度スコアを決定する。このように、単一時相または複数時相を用いた様々な条件での比較ができるため、より詳細な信頼度スコアを決定することでき、被検体の実際の体調状態により近い生体内部成分量を、より適切に特定することができる。
【0063】
なお、上述した実施形態において、取得機能141は「取得部」の一例であり、基準データ特定機能142は「基準データ特定部」の一例であり、第1導出機能143は「第1導出部」の一例であり、第2導出機能144は「第2導出部」の一例であり、信頼度スコア決定機能145は「信頼度スコア決定部」の一例であり、画像生成機能146は「画像生成部」の一例であり、表示制御機能147は「表示制御部」の一例であり、学習機能148は「学習部」の一例である。
【0064】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、実施形態の医用情報処理装置は、被検体に関する生体データを取得する取得部と、前記生体データに基づいて第1特徴量に関する基準データを特定する基準データ特定部と、前記生体データに含まれる第1特徴量を、前記第1特徴量と第2特徴量とを相互に変換可能なモデルに入力することで第2特徴量を取得する第1導出部と、前記第2特徴量を前記モデルに入力することでシミュレートされた前記第1特徴量に関する擬似特徴データを導出する第2導出部と、前記基準データと前記擬似特徴データとに基づいて前記生体データに関する信頼度スコアを決定する信頼度スコア決定部と、を持つことにより、被検体の実際の体調状態に近い生体内部成分量を、より適切に特定することができる。
【0065】
具体的には、実施形態によれば、生体内部成分量の変化に基づく特徴を基準データとして導出すると共に、モデルを用いて生体内部成分量に関してシミュレートされた擬似特徴データを導出し、それぞれのデータから生体内部成分量の信頼度を定量化することで、低信頼の生体内部成分量を除外することができ、医師の診断等において、患者の疾患発症の見逃し等を防止することができるため、より適切な診断が可能となる。
【0066】
また、実施形態によれば、信頼度スコアが低い生体データについては、データの再取得を促す情報を提供することで、適切な生体データを取得でき、被検体の実際の体調状態に近い生体内部成分量を、より適切に特定することができる。したがって、患者の疾患発症の見逃し等を防止することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、モデルの学習に信頼度スコアの高い情報のみを用いることで、より精度が高いモデルを取得することができる。
【0068】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを格納するメモリと、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記プログラムを実行することにより、
被検体に関する生体データを取得し、
前記生体データに基づいて第1特徴量に関する基準データを特定し、
前記生体データに含まれる第1特徴量を、前記第1特徴量と第2特徴量とを相互に変換可能なモデルに入力することで第2特徴量を取得し、
前記第2特徴量を前記モデルに入力することでシミュレートされた前記第1特徴量に関する擬似特徴データを導出し、
前記基準データと前記擬似特徴データとに基づいて前記生体データに関する信頼度スコアを決定する、
医用情報処理装置。
【0069】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の軽減、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
1、1A…医用情報システム、10…患者側端末、20…病院側端末、100、100A…医用情報処理装置、110…通信インターフェース、120…入力インターフェース、130…ディスプレイ、140、140A…処理回路、141…取得機能、142…基準データ特定機能、143…第1導出機能、144…第2導出機能、145…信頼度スコア決定機能、146…画像生成機能、147…表示制御機能、148…学習機能、150…メモリ