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特開2023-180854飲料注出装置およびこれを備える飲料サーバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180854
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】飲料注出装置およびこれを備える飲料サーバ
(51)【国際特許分類】
   B67D 1/08 20060101AFI20231214BHJP
   B67D 1/14 20060101ALI20231214BHJP
   C12H 1/16 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B67D1/08 Z
B67D1/14 Z
C12H1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094495
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000113997
【氏名又は名称】株式会社アクリテック
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】宮谷 知久
(72)【発明者】
【氏名】内田 寿
(72)【発明者】
【氏名】白石 和哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 仁
【テーマコード(参考)】
3E082
4B128
【Fターム(参考)】
3E082AA04
3E082BB02
3E082CC01
3E082DD05
3E082FF03
4B128AC13
4B128AG09
4B128AP25
4B128AS01
4B128AT12
(57)【要約】
【課題】手動による操作性に優れるとともに泡品質の調整が容易且つ調整された泡品質の再現性が高い飲料注出装置を提供する。
【解決手段】飲料注出装置100は、傾倒操作が可能な操作レバー70と、操作レバー70の傾倒操作に伴って前後にスライド移動するスライド駒40と、スライド駒40のスライド方向に沿って対向配置されて内腔を発泡性飲料が通過する可撓性チューブ11と、操作レバー70の傾倒操作に応じたスライド駒40のスライド移動に伴うカムの作用で進退して可撓性チューブ11を付勢ばね51の弾圧力のみで押圧して内腔を開閉する開閉駒50と、操作レバー70の傾倒操作に応じたスライド駒40のスライド移動に伴うカムの作用で進退して可撓性チューブ11を付勢ばね61の弾圧力のみで押圧して内腔を絞って製泡する製泡駒60と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者による操作に応じて可撓性チューブの内腔を開閉して発泡性飲料の注出、注出停止及び泡付けを切り替え可能な飲料注出装置であって、
前記発泡性飲料を注出する注出位置と前記発泡性飲料の泡を注出する泡付位置と前記発泡性飲料の注出及び泡付けを停止する停止位置とに操作者による操作が可能な操作レバーと、
前記操作レバーの操作に伴って前後にスライド移動するスライド駒と、
前記操作レバーの操作に応じた前記スライド駒のスライド移動に伴うカムの作用で前記可撓性チューブとの対向方向に進退して前記可撓性チューブを付勢ばねの弾圧力のみで押圧して前記内腔を開閉する開閉駒と、
前記操作レバーの操作に応じた前記スライド駒のスライド移動に伴うカムの作用で前記開閉駒よりも注出側寄りの位置で前記可撓性チューブとの対向方向に進退して前記可撓性チューブを付勢ばねの弾圧力のみで押圧して前記内腔を絞って製泡する製泡駒と、
を備えることを特徴とする飲料注出装置。
【請求項2】
前記カムの機構は、
前記操作レバーが前記停止位置にあるときは、前記開閉駒および前記製泡駒を前記可撓性チューブに対する前進位置に位置させ、
前記操作レバーが前記注出位置にあるときは、前記開閉駒および前記製泡駒を前記可撓性チューブに対する後退位置に位置させ、
前記操作レバーが前記泡付位置にあるときは、前記開閉駒を前記可撓性チューブに対する後退位置に位置させるとともに前記製泡駒を前記可撓性チューブに対する前進位置に位置させる請求項1に記載の飲料注出装置。
【請求項3】
前記操作レバーは、前記スライド方向に沿って傾倒操作可能に構成されるとともに、前記スライド方向において前記発泡性飲料の注出側を前方としその反対側を後方とするとき、
前記操作レバーに操作力が作用していないときは自身軸線が直立した姿勢となる前記停止位置に位置し、
前記操作レバーを前方側に傾倒する操作力が作用して第一の前傾姿勢にあるときは前記注出位置に位置し、
前記操作レバーを後方側に傾倒する操作力が作用して後傾姿勢にあるときは前記泡付位置に位置する請求項2に記載の飲料注出装置。
【請求項4】
前記操作レバーは、前記第一の前傾姿勢よりも前記操作レバーを前方側に傾倒する操作力が作用して第二の前傾姿勢に傾倒操作可能に構成され、該第二の前傾姿勢にあるときは前記発泡性飲料の注出状態が維持される連注位置に位置し、
前記カムの機構は、前記操作レバーが前記連注位置にあるときは、前記開閉駒および前記製泡駒を前記可撓性チューブに対する後退位置に位置させるとともに、前記操作レバーに操作力が作用しなければその後退位置を保持する請求項3に記載の飲料注出装置。
【請求項5】
前記スライド駒は、スライド駒上面に形成された開閉駒用のカム溝と、スライド駒上面に形成された製泡駒用のカム溝と、を有し、
前記開閉駒及び前記製泡駒のカムフォロワ部が、各カム溝にそのカム面の傾斜に沿って進退可能に係合しており、
前記操作レバーが前記泡付位置に操作されるときに、前記スライド駒のスライド移動に伴うカムの作用として、前記製泡駒用のカム溝が、前記開閉駒用のカム溝よりもスライド移動方向で前記製泡駒の非動作状態を前記開閉駒よりも永く保持するようにカムのプロフィールが設定されている請求項2に記載の飲料注出装置。
【請求項6】
前記開閉駒または前記製泡駒による前記付勢ばねの弾圧力を調整する弾圧力調整機構を更に備える請求項1に記載の飲料注出装置。
【請求項7】
前記製泡駒の進退による前記内腔を絞る機構は、前記製泡駒の凹の押圧部で前記可撓性チューブを弾性変形させてその内腔に一の絞り流路を限って生じさせる請求項1に記載の飲料注出装置。
【請求項8】
前記可撓性チューブを前記スライド方向に沿って収容する凹の収容部と、前記可撓性チューブを収容し且つ保持するチューブ保持部と、を有するチューブ収容部を備え、
前記スライド方向において、前記可撓性チューブに前記製泡駒が進退する位置に対して前記発泡性飲料の注出側を前方としその反対側を後方とするとき、
前記チューブ保持部は、前記製泡駒の前方側の位置で前記可撓性チューブを凹の収容部内で保持する前側保持部と、該前側保持部とは前記スライド方向に離隔して前記製泡駒の後方側の位置で前記可撓性チューブを凹の収容部内で保持する後側保持部と、を有し、
前記前側保持部と前記後側保持部とは、前記スライド方向での保持部の長さが、前記後側保持部よりも前記前側保持部が短くなっている請求項1に記載の飲料注出装置。
【請求項9】
前記可撓性チューブと、前記発泡性飲料が収容される樽側に接続される接続チューブと、該接続チューブと前記可撓性チューブとを連結するチューブ接手と、によって構成される飲料導出路を用いており、
前記チューブ収容部は、後方側から順に、前記接続チューブを収容する接続チューブ収容溝と、前記チューブ接手を収容する接手収容部と、前記可撓性チューブを収容し且つ保持する前記チューブ保持部と、を有する請求項8に記載の飲料注出装置。
【請求項10】
タップベースと、該タップベースの上部を覆うタップヘッドとを備え、前記タップベースと前記タップヘッドとを上下方向に重ね合わせることで筐体構造が構成されており、
前記可撓性チューブは、前記スライド駒のスライド方向に沿って且つ水平に前記タップベースの内部のチューブ収容部に収容され、
前記スライド駒は、前記チューブ収容部に収容された前記可撓性チューブの長手方向に沿ってスライド移動可能に前記タップヘッドの内部に設けられ、
前記操作レバーは、前記タップヘッドの前側上部に上方に張り出して前記スライド方向への傾倒操作によって前記スライド駒をスライド操作可能に設けられている請求項1に記載の飲料注出装置。
【請求項11】
前記タップベースの前側には、前記スライド方向とは直交する軸線をもつ支軸が設けられ、
前記タップヘッドは、
前記支軸まわりの旋回動作によって前記タップベースに対して開閉可能に連結されて前記タップベース側でロックされた使用姿勢と前記タップベースに対して上方に旋回されたメンテナンス姿勢とに位置可能に構成され、
前記使用姿勢にあっては、前記タップベースと自身との間で前記チューブ収容部内の前記可撓性チューブを保持し、
前記メンテナンス姿勢にあっては、前記チューブ収容部において前記可撓性チューブ全体を視認可能な位置まで旋回されるとともに前記チューブ収容部から前記可撓性チューブを挿抜可能になっている請求項10に記載の飲料注出装置。
【請求項12】
前記可撓性チューブの先端に接続される注出ノズルを更に用いており、
前記使用姿勢にあっては、前記タップベースと前記タップヘッドとの間で前記注出ノズルを押圧保持し、
前記メンテナンス姿勢にあっては、前記注出ノズルを前記チューブ収容部から挿抜可能になっている請求項11に記載の飲料注出装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の飲料注出装置を有することを特徴とする飲料サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール等の発泡性飲料を注ぐための飲料注出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビールを注出する最後の過程でビール泡を生成してグラスに注ぐ製泡機構を備える飲料注出装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の飲料注出装置では、飲料注出用チューブの中央部を押し込み部材で押し込む製泡機構を備える。押し込み部材は、操作レバー(駆動部材)の前後方向の傾倒操作に応じて押し込み部材の高さ方向の位置が決められる。
これにより、同文献記載の技術では、飲料注出用チューブを押し込み量に応じて弾性変形させることで、チューブ内腔の断面積を絞ってオリフィスを生じさせて泡を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2017/208808
【特許文献2】特願2021-080608(未公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の製泡機構では、所望品質の泡を生成するためには、操作レバーの傾倒姿勢を常に所定の位置に保つように操作する必要がある。そのため、操作レバーの傾倒の程度に応じてオリフィスの断面積(形状)も決まってしまう。例えば傾倒が緩いとオリフィスの断面積が大きく、粗い泡となる。つまり、オリフィスの断面積(形状)が操作者の操作技能に依存するため泡付けの調節が難しくなる。そのため、泡品質の調整がより困難となり、泡品質もばらつくので、調整された泡品質の再現性を高める上で検討の余地がある。
【0006】
また、特許文献2では、チューブの押圧を電気的に制御する電気式注出機構を提案している。しかし、電気式注出機構の場合には機械式と比べて大型の駆動バルブを要する。そのため、注出機構の占有領域が大きくなるという問題がある。さらに、電気式注出機構は、従来の機械式の飲料注出装置とは操作性が大きく異なるため、操作者の使用時における違和感もある。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、手動による操作性に優れるとともに、泡品質の調整が容易且つ調整された泡品質の再現性の高い飲料注出装置およびこれを備える飲料サーバを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る飲料注出装置は、操作者による操作に応じて可撓性チューブの内腔を開閉して発泡性飲料の注出、注出停止及び泡付けを切り替え可能な飲料注出装置であって、前記発泡性飲料を注出する注出位置と前記発泡性飲料の泡を注出する泡付位置と前記発泡性飲料の注出及び泡付けを停止する停止位置とに操作者による操作が可能な操作レバーと、前記操作レバーの操作に伴って前後にスライド移動するスライド駒と、前記操作レバーの操作に応じた前記スライド駒のスライド移動に伴うカムの作用で前記可撓性チューブとの対向方向に進退して前記可撓性チューブを付勢ばねの弾圧力のみで押圧して前記内腔を開閉する開閉駒と、前記操作レバーの操作に応じた前記スライド駒のスライド移動に伴うカムの作用で前記開閉駒よりも注出側寄りの位置で前記可撓性チューブとの対向方向に進退して前記可撓性チューブを付勢ばねの弾圧力のみで押圧して前記内腔を絞って製泡する製泡駒と、を備える。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る飲料サーバは、本発明の一態様に係る飲料注出装置を有する。
【0010】
本発明の一態様に係る飲料注出装置およびこれを備える飲料サーバによれば、操作者による操作レバーの操作に応じてスライド駒がスライド移動し、これに伴うカムの作用で開閉駒および製泡駒を進退させて可撓性チューブを押圧することで、発泡性飲料の注出、注出停止及び泡付けを切り替え可能である。そのため、手動による操作性に優れている。
【0011】
そして、開閉駒および製泡駒は、いずれもスライド駒のスライド移動に伴うカムの作用で進退するとともに飲料導出路を付勢ばねの弾圧力のみで可撓性チューブを押圧するので、操作者による操作レバーの操作力によらずに、カムのプロフィールに対応して予め設定されている付勢ばねの弾圧力のみで調圧される。そのため、開閉駒および製泡駒の押圧で変形後の可撓性チューブの内腔の断面積をほぼ一定に安定させることができる。よって、泡品質の調整が容易且つ調整された泡品質の再現性が高いため、安定した品質の泡を作ることができる。
なお、「付勢ばねの弾圧力のみ」とは、他の操作圧や機械的な作動圧が積極的に付勢作用していないという意味である。つまり、地球重力がばね部材や駒部材ないし他の構成部材に作用していることは当然であって、地球の重力下でのこれらの質量は、「ばね圧のみでの押圧力」として含まれる。
【発明の効果】
【0012】
上述したように、本発明によれば、手動による操作性に優れるとともに、泡品質の調整が容易且つ調整された泡品質の再現性が高い飲料注出装置およびこれを備える飲料サーバを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一態様に係る飲料注出装置を備える飲料サーバの一実施形態を説明する模式図である。
図2】本発明の一態様に係る飲料注出装置の一実施形態を説明する模式図であり、同図は、図1の飲料注出装置の部分を拡大図示するとともに要部を破断して示している。
図3】本発明の一態様に係る飲料注出装置の一実施形態の説明図であり、同図(a)は、図1の飲料注出装置の部分の模式的側面図であってタップヘッドを閉じた使用状態を示し、(b)はタップヘッドを開いたメンテナンス状態を示し、(c)は、同図(b)のメンテナンス状態を左斜め上方から見た模式的斜視図である。
図4】タップベースのチューブ収容部の説明図(図3(b)でのA矢視部分の模式的平面図)である。
図5】操作レバーの傾倒姿勢に応じた各部の連動関係を説明する模式図であり、同図は、操作レバーが停止位置にある状態を示している。
図6】操作レバーの傾倒姿勢に応じた各部の連動関係を説明する模式図であり、同図は、操作レバーが注出位置にある状態を示している。
図7】操作レバーの傾倒姿勢に応じた各部の連動関係を説明する模式図であり、同図は、操作レバーが連注位置にある状態を示している。
図8】操作レバーの傾倒姿勢に応じた各部の連動関係を説明する模式図であり、同図は、操作レバーが泡付位置にある状態を示している。
図9】開閉駒の進退動作による可撓性チューブの弾性変形状態を説明する模式図(図2でのX-X部分の要部断面)であり、同図(a)は開閉駒が後退した注出状態を示し、(b)は開閉駒が前進した停止状態を示している。
図10】製泡駒の進退動作による可撓性チューブの弾性変形状態を説明する模式図(図2でのY-Y部分の要部断面)であり、同図(a)は製泡駒が後退した注出状態を示し、(b)は製泡駒が前進した泡付状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を適宜参照しつつ説明する。
本実施形態の飲料注出装置に適用する発泡性飲料は、炭酸ガスを含有する発泡性飲料である。この種の発泡性飲料としては、代表的にはビールであるが、ビールの他に、ビールテイスト飲料(発泡酒、新ジャンル、ノンアルコールビール等を含む。)、その他の飲料であって大気に晒された状態で泡を発生する飲料を含む。
例えば、ビール等の発泡性飲料として、その泡持ち特性を示す指標値として使用されるNIBEM値が、好ましくは20以上、より好ましくは40以上、さらに好ましくは60以上の飲料である。NIBEM値の測定方法は、「改訂BCOJビール分析方法」(公益財団法人日本醸造協会)を参照。
【0015】
なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0016】
[飲料サーバ]
まず、飲料サーバの全体構造について説明する。
図1に示すように、本実施形態の飲料サーバ1は、発泡性飲料が収容された樽2を自身内部に格納する保持容器3と、樽2内に注出用ガス(例えば炭酸ガス)を送り込むガス供給器4と、保持容器3に付設されて飲料導出路10を介した発泡性飲料の注出および泡付け並びにそれらの停止状態を切り替えるための飲料注出装置100と、を備える。保持容器3は、その本体3a側面に開閉扉3bが設けられ、保持容器3の内部には、樽2に対する不図示の冷却ユニット等の機器が配置される。
【0017】
樽2の上部中央には飲料取出部2aが設けられ、ガス供給器4の送気管4aが樽2内にガスを送気可能に飲料取出部2aの側部に配管される。飲料導出路10は、基端側の接続チューブ13が飲料取出部2aの上部中央に着脱可能に装着される。
発泡性飲料は、ガス供給器4から供給されるガス圧によって樽2の飲料取出部2aから飲料導出路10に押し出される。飲料導出路10は、樽2からガス圧によって送り出される発泡性飲料を飲料注出装置100の注出口5まで導くように配管される。
【0018】
本実施形態の飲料注出装置100は、注出口5側のタップヘッド20と、タップヘッド20の上部を覆うタップベース30とを備える。タップベース30は、その基端側の装着部32が、開閉扉3bの中央上部寄りの位置にねじ止め等で着脱可能に固定される。これにより、飲料注出装置100は、保持容器3の本体3aの側部に張り出すように取り付けられる。
【0019】
飲料注出装置100の上部には、傾倒操作可能な操作レバー70がタップヘッド20からその上方に向けて張り出しており、飲料サーバ1の操作者は、保持容器3の正面から操作レバー70を手で傾倒操作可能になっている。また、操作者は、開閉扉3bを開くことにより飲料サーバ1の操作者が本体3a内部の樽2にアクセス可能となっている。
【0020】
[飲料注出装置]
次に、上記飲料注出装置100についてより詳しく説明する。
本実施形態の飲料注出装置100は、図2および図3に示すように、タップベース30とタップヘッド20とを上下方向に重ね合わせることで筐体構造が構成されている。図2に要部を拡大図示するように、飲料導出路10は、開閉扉3bに装着された装着部32裏面の挿通穴33に挿通されて上記本体3a内から飲料注出装置100内に導かれる。
【0021】
以下、飲料注出装置100の内部を通過する可撓性チューブ11の長手方向(図2の左右方向)を飲料サーバ1および飲料注出装置100の前後方向と呼ぶとともに、操作者側(図2の右側)を前方(または手前)、操作者側とは反対側(図2の左側)を後方(または奥)とも呼ぶ。また、可撓性チューブ11に対する側方を飲料注出装置100の左右方向とも呼ぶ。
【0022】
本実施形態の例では、タップベース30の注出側には、可撓性チューブ11の先端の位置に、下方に向けて斜め前方に延びる注出ノズル90が配置される。注出ノズル90は、その内径寸法が基端側から先端側に向かって徐々に広がる円錐台状に形成されている。可撓性チューブ11は、柔軟性を有する弾性変形可能な樹脂素材によって形成されている。可撓性チューブ11は、飲料注出装置100のタップベース30内に水平に収容されるように配管される。
【0023】
そして、可撓性チューブ11は、タップベース30の注出側で下方に曲げられるとともに、可撓性チューブ11の先端部が、飲料注出装置100の内部で注出口5としての注出ノズル90の基端部に接続される。なお、本実施形態の例では、可撓性チューブ11の先端部に注出口5としての注出ノズル90が接続された例を示したが、これに限らず、可撓性チューブ11の先端部自体を注出口5としてもよい。
【0024】
上記操作レバー70は、タップヘッド20の前側上部に、スライド駒40をスライド移動可能に設けられる。本実施形態の操作レバー70は、レバー軸71と、レバー軸71の上部の連結部72に装着されるレバー本体75と、を備える。
レバー軸71の中間には半球面状の支点部73が設けられている。また、レバー軸71の下端部には、前後方向の端面が球面状をなす作用部74が形成されている。操作レバー70は、支点部73を中心として前後方向に傾ける傾倒操作が可能な状態でタップヘッド20の前側中央の位置に装着される。
【0025】
タップヘッド20の内側には、上記スライド駒40のスライド方向への移動を許容するとともに他の方向への移動は拘束するスライドガイド部25が形成されている(図9図10参照)。
スライド駒40は、スライドガイド部25のガイド面に沿って可撓性チューブ11の長手方向にスライド移動可能にタップヘッド20内に収容される。スライド駒40は、スライドガイド部25に収容された状態で開閉ばね51および製泡ばね61の弾圧力で、操作力が作用していないスライド方向の位置が保持される。なお、オプションとして、スライド方向の前後にスライドばね41を設けてスライド方向の位置を規制することもできる。
【0026】
スライド駒40の上面の前側寄りの位置には、操作レバー70とスライド駒40とを噛み合わせるための嵌合溝42が形成されている。レバー軸71は、作用部74の前後の球面部分がスライド駒40の嵌合溝42の内周面に摺接するようにスライド駒40に組み合わされる。これにより、操作者が操作レバー70を手で前後方向に傾倒操作すると、スライドガイド部25に収容されたスライド駒40が、スライドガイド部25のガイド面に沿って前後方向にスライド移動可能になっている。
【0027】
本実施形態の操作レバー70は、後述するように、操作レバー70が略直立した姿勢とされる停止位置P0(図5参照)と、停止位置P0よりも前側に操作レバー70が傾倒された注出位置P1(図6参照)と、停止位置P0よりも後側に操作レバー70が傾倒された泡付位置P3(図8参照)との間で傾倒操作が可能である。なお、本実施形態の飲料サーバ1では、操作レバー70は、発泡性飲料の注出状態を維持可能とする連注位置P2(図7参照)にも傾倒操作可能に構成されている。
【0028】
タップベース30の先端側上部には、図3に示すように、可撓性チューブ11の配置方向とは直交する軸線をもつ支軸23が設けられ、タップヘッド20の一端部には支軸23に回転自在に嵌り合うように下方に張り出す軸支部34が形成されている。
【0029】
タップヘッド20は、軸支部34が支軸23に対向方向で嵌め合わされ、タップベース30に対して支軸23まわりに旋回可能に組み合わされる。これにより、タップヘッド20は、タップベース30側でロックされた使用姿勢(同図(a))と、タップベース30に対して上方に旋回されたメンテナンス姿勢(同図(b)、(c))と、に位置可能になっている。
【0030】
なお、本実施形態では、タップヘッド20には、押圧ばねで進退可能に設けられた係合爪24が設けられるとともに、タップベース30には係合爪24に係合される凹部が設けられており、タップベース30とタップヘッド20との係合爪24を係合爪24の押圧ばねに抗して旋回させることで係合を解除して開閉されるようになっている。
【0031】
タップベース30とタップヘッド20とが対向する相互の当接面は、一対のチューブ保持面21、31として形成されている。図4に示すように、タップベース30の内部上面側にチューブ保持面31が形成され、チューブ保持面31にはチューブ収容部80が設けられている。チューブ収容部80の各部位は、収容される可撓性チューブ11の延在方向に沿った、チューブ保持面31の中心線CLに沿って飲料導出路10を収容可能になっている。
【0032】
本実施形態の飲料導出路10は、接続チューブ13、チューブ接手12および可撓性チューブ11を有して構成されている。接続チューブ13の先端側に、チューブ接手12を介して可撓性チューブ11がその内腔を発泡性飲料が通過可能な連通状態に接続される。接続チューブ13は、飲料注出装置100の手前で水平に延ばされた状態で、飲料注出装置100内部のチューブ接手12の入側に接続される。チューブ接手12の出側には可撓性チューブ11の基端部が接続される。
【0033】
タップベース30とタップヘッド20とは、相互のチューブ保持面21、31を上下に重ね合わせることにより、飲料注出装置100の内部に、可撓性チューブ11を含む飲料導出路10外面とほぼ密着して保持するチューブ格納領域が画成される。
本実施形態では、チューブ収容部80の各部位は、後方側から順に、接続チューブ13の先端部を収容する接続チューブ収容溝87と、接続チューブ収容溝87に連続してチューブ接手12の鍔部12aを収容する鍔部保持部84およびチューブ接手12の円筒状本体部を収容する接手収容部83と、接手収容部83に連続して可撓性チューブ11の押圧される途中部分を収容するチューブ保持部81と、を有する。
【0034】
チューブ保持部81は、チューブ収容部80内の定位置に可撓性チューブ11を保持するとともに、開閉溝50および製泡駒60による押圧時の弾性変形状態を安定させるために設けられる。特に、本実施形態のチューブ保持部81は、チューブ収容部80に収容された状態の可撓性チューブ11を左右から挟持して保持する左右一対の後側保持部81bおよび左右一対の前側保持部81aを有する。接手収容部83と後側保持部81bとの間には、開閉駒50に対向する位置に形成された開閉溝85が形成され、また、後側保持部81bと前側保持部81aとの間には、製泡駒60に対向する位置に形成された製泡溝86が形成されている。
【0035】
さらに、本実施形態のチューブ保持部81には、前側保持部81aよりも前方に、チューブ案内面88と、チューブ案内面88の左右に設けられた一対の保持板ガイド面89と、抽出側端部に開口するノズル収容穴82と、が設けられている。チューブ案内面88は、凸の半円形状の断面輪郭を描くように滑らかに形成され、下方に向けて曲げられる可撓性チューブ11の屈曲状態を保持する。
【0036】
そして、可撓性チューブ11の先端に接続された注出ノズル90は、自身先端の注出口5の側がノズル収容穴82に挿入されるとともに、注出ノズル90の基端側で左右に張り出す一対のノズル保持板91が一対の保持板ガイド面89にガイドされた状態で注出ノズル90の装着姿勢が保持される。
【0037】
ここで、タップヘッド20内のスライド駒40は、チューブ収容部80の上方に対向して配置される。上記スライド駒40の上面には、嵌合溝42よりも後ろ側に、所定のカムプロフィールに形成された略V字状をなす二つのカム溝45およびカム溝46が設けられている。カム溝45とカム溝46との間には山部44が設けられている。
【0038】
スライド駒40は、スライド駒40上面に形成された開閉駒50用のカム溝45と、製泡駒60用のカム溝46と、を有し、二つのカム溝45、46の部分には、スライド駒40のスライド範囲での干渉が生じないようにスライド方向に沿って伸びる案内スロット43が上下方向に貫通形成されている。
【0039】
そして、タップヘッド20の内部には、後方から順に、開閉駒50及び製泡駒60が設けられ、開閉駒50及び製泡駒60のカムフォロワ部53、63が、各カム溝45、46のカム面の傾斜(カムプロフィール)に沿って進退可能に係合している。これにより、開閉駒50は、スライド駒40によって進退されて可撓性チューブ11の内腔を開閉可能であり、また、製泡駒60は、スライド駒40によって進退されて可撓性チューブ11を泡の注出に適した状態に弾性変形可能になっている。
【0040】
より詳しくは、開閉駒50は、押圧部52と、押圧部52の上部左右に張り出す一対のカムフォロワ部53とを有する正面視略T字状の部材である。カムフォロワ部53は、下方に向けて凸型のカムフォロワを構成している。開閉駒50の押圧部52は、スライド駒40の上方から案内スロット43に差し込まれるとともに、一対のカムフォロワ部53が後側のカム溝45に嵌合された状態で装着されている。
【0041】
その装着状態において、開閉駒50は、付勢ばねである開閉ばね51によって上下方向の上側から下側に向けて常時付勢されている。本実施形態では、開閉ばね51の弾圧力を調整する弾圧力調整機構54として、開閉ばね51の上部に押しねじと押しねじのねじ込み位置を固定するナットとを備え、開閉ばね51による押圧力を調整可能になっている。
【0042】
また、製泡駒60は、押圧部62と、押圧部62の上部左右に張り出す一対のカムフォロワ部63とを有する正面視略T字状の部材である。カムフォロワ部63は、下方に向けて凸型のカムフォロワを構成している。製泡駒60の押圧部62は、スライド駒40の上方から案内スロット43に差し込まれるとともに、一対のカムフォロワ部63が前側のカム溝46に嵌合された状態で装着される。
【0043】
その装着状態において、製泡駒60は、付勢ばねである製泡ばね61によって上下方向の上側から下側に向けて常時付勢される。本実施形態では、製泡ばね61の弾圧力を調整する弾圧力調整機構64として、製泡ばね61の上部に押しねじと押しねじのねじ込み位置を固定するナットとを備え、製泡ばね61による押圧力を調整可能になっている。
【0044】
ここで、図10に示すように、製泡駒60の進退による可撓性チューブ11の内腔を絞る機構は、製泡駒60の凹の押圧部62で可撓性チューブ11を弾性変形させて飲料導出路内に一の絞り流路を限って生じさせるように構成されている。
特に、可撓性チューブ11に対する流路絞り機構は、同図(b)に示すように、製泡溝86の底壁部86dとこれに上下で対向する製泡駒60の凹の押圧部62内面に形成された左右一対の制限側壁部62a、62bとによる三点挟圧構造になっている。
【0045】
さらに、チューブ収容部80は、製泡駒60の押圧部と協働して可撓性チューブ11を挟み込む底壁部86dを有し、一対の制限側壁部62a、62bの相互は、製泡駒60の進退方向に対して線対称に形成され、底壁部86dと一対の制限側壁部62a、62bとは、可撓性チューブ11の外周面に三点で同時に接触する。なお、三点挟圧構造とする上で、底壁部86dの下面に凸部を設けてもよい。但し、底壁部86dの下面に凸部を設けた場合には泡の生成の安定性が低下する傾向となる。そのため、本実施形態の飲料注出装置100では、底壁部86dの下面は平面にしている。
【0046】
[動作および作用効果]
次に、本実施形態の飲料サーバ1およびこれに装備された飲料注出装置100の動作および作用効果について説明する。まず、飲料注出装置100のメンテナンス、特に、飲料導出路10の装着手順について説明する。
【0047】
本実施形態の飲料注出装置100のメンテナンス時には、タップベース30とタップヘッド20との係合爪24の係合を解除し、軸支部34を中心として、タップヘッド20を上方前側に手で旋回させて開姿勢にする。これにより、図3(b)に示すように、タップベース30とタップヘッド20との間が分割されて、飲料注出装置100の内部の、可撓性チューブ11を保持するチューブ収容部80が視認可能に開放される。
【0048】
次いで、図3(c)に示すように、飲料導出路10をチューブ収容部80に配置して可撓性チューブ11の先端部を注出ノズル90に手で挿入する。チューブ収容部80の左右には挟持部としてチューブ保持部81が形成されているので、チューブ収容部80に挿通された可撓性チューブ11を、チューブ保持部81で左右側方から挟持しつつ、チューブ案内面89に沿って曲げられた状態が保持されて注出ノズル90の基端部に導く。
【0049】
その後に、図3(a)に示すように、タップヘッド20をタップベース30と重なるように閉姿勢まで手で旋回させる。これにより、工具等の器具を用いることなくチューブ格納領域の所定位置に可撓性チューブ11を通し、タップヘッド20を下方に旋回させて閉姿勢にすることによって可撓性チューブ11を含む飲料導出路10を保持することができる。なお、飲料導出路10を取り外す際は、上述とは逆の手順で可能なので説明を省略する。
【0050】
次に、飲料注出装置100による発泡性飲料の注出、注出停止及び泡付け操作について図5図10を適宜参照しつつ説明する。
まず、飲料注出装置100の操作レバー70は、操作レバー70に操作力が作用していないときは、図5に示すように、操作レバー70の軸線が直立した姿勢となる停止位置P0にある。操作レバー70が停止位置P0にあるときは、製泡駒60のカムフォロワ部63はスライド駒40のカム溝46の谷に嵌合し、開閉駒50のカムフォロワ部53はスライド駒40のカム溝45の谷に嵌合している。
【0051】
そのため、開閉駒50および製泡駒60ともに可撓性チューブ11との対向方向に前進した状態にある。このとき、開閉駒50および製泡駒60とも開閉ばね51および製泡ばね61の弾圧力で可撓性チューブ11を所期の状態に押圧している。このとき、本実施形態の例では、開閉駒50は、図9(b)に示すように、開閉部での流路を完全に閉じている。
【0052】
なお、製泡駒60は、このとき、図10(b)に示すように、可撓性チューブ11の製泡部での流路を所定に絞った状態とされている。これにより、発泡性飲料は注出停止状態が保持される。また、開閉ばね51および製泡ばね61の弾圧力(スライドばね41がある場合は更にスライドばね41も加えての弾圧力)がバランスして、操作レバー70は軸線を垂直な中立姿勢で自立している。
【0053】
次に、本実施形態の飲料サーバ1において、発泡性飲料をグラスに注ぐ際は、操作者は、図6に示すように、操作レバー70を中立姿勢から手で操作者側から見て手前側(図6の右方向)に第一の前傾姿勢に至るまで押圧する(注出位置P1)。
【0054】
操作レバー70を第一の前傾姿勢に至るまで前方側に傾倒する操作力が作用すると、これにより、スライド駒40が後方(図6の左方向)に第一の前傾姿勢に応じた位置まで移動する。それに伴い、上述したカムの作用によって、開閉駒50の凸型カムフォロワがスライド駒40のカム溝45の前部カム面に沿って前部カム面の途中部分上方に移動し、図9(a)に示すように、開閉部での流路が開放される。さらに、製泡駒60の凸型カムフォロワがスライド駒40のカム溝45の前部カム面に沿ってその途中部分まで上方に移動し、図10(a)に示すように、製泡部での流路も開放される。これにより、発泡性飲料をグラスに注ぐことができる。
【0055】
ここで、本実施形態の飲料サーバ1において、操作レバー70は、図7に示すように、上記第一の前傾姿勢よりも操作レバー70を前方側に傾倒する操作力を作用させて第二の前傾姿勢にまで傾倒操作可能に構成されている。
そして、第二の前傾姿勢のときは発泡性飲料の注出状態が維持される連注位置P2に位置する。つまり、発泡性飲料を例えばピッチャー等の大型容器に注ぐ際は、同図に示すように、操作レバー70を注出位置P1から手で更に操作者側から見て手前側(図7の右方向)に押す(連注位置P2)。
【0056】
これにより、スライド駒40が第二の前傾姿勢に応じて更に後方の奥(図7の左方向)に移動する。それに伴って、開閉駒50の凸型カムフォロワがスライド駒40のカム溝45の前部カム面を乗り越えて山部44に至り、山部44頂きの水平面に向けて押圧される。
【0057】
その押圧状態において、開閉ばね51および製泡ばね61の弾圧力(スライドばね41がある場合は更にスライドばね41も加えての弾圧力)がバランスするようになっており、操作レバー70に操作力が作用しなければその傾倒姿勢を保持される。これにより、操作レバー70に更に操作力を作用させて連注位置P2から操作レバー70を中立姿勢とする停止位置P0に戻すまでは、発泡性飲料の注出状態が維持され、発泡性飲料をピッチャー等の大型容器に継続して注ぐことができる。
【0058】
次に、本実施形態の飲料サーバ1において、グラスに泡付けを行う際は、操作者は、図8に示すように、飲料注出装置100の操作レバー70を中立姿勢から手で操作者側から見て奥側(図8の左方向)に押す(泡付位置P3)。これにより、スライド駒40が前方(図8の右方向)に移動する。それに伴って、開閉駒50の凸型カムフォロワがスライド駒40のカム溝45の後部カム面に沿って上方に移動し、図9(a)に示したように、可撓性チューブ11の開閉部での流路が開放される。
【0059】
さらに、製泡駒60の凸型カムフォロワがスライド駒40のカム溝46の後部カム面に規制された押圧状態とされ、図10(b)に示すように、可撓性チューブ11の製泡部での流路が所定に絞られる。
特に、本実施形態では、製泡駒60の進退による流路絞り機構は、前側保持部81aおよび後側保持部81bの凹の収容部内に保持された位置で可撓性チューブ11を製泡駒60の対向する凹の押圧部62で弾性変形させて飲料導出路10内に一の絞り流路を限って生じさせる。これにより、チューブ内腔の断面積を絞ってオリフィスを生じさせて泡を生成し、所望の泡付けを行うことができる。
【0060】
このように、本実施形態の飲料注出装置100によれば、開閉駒50は、操作レバー70の傾倒操作に応じたスライド駒40のスライド移動に伴うカムの作用で変換された可撓性チューブ11に対する進退作動によって可撓性チューブ11を開閉ばね51の弾圧力のみで開閉できる。同様に、製泡駒60は、操作レバー70の傾倒操作に応じたスライド駒40のスライド移動に伴うカムの作用で変換された可撓性チューブ11に対する進退作動によって可撓性チューブ11を製泡ばね61の弾圧力のみで絞って製泡できる。
【0061】
つまり、本実施形態の飲料注出装置100では、付勢ばね51,61のばね圧のみでの押圧力による調圧方式を採用しているので、常に一定の安定した押圧力で押圧できる。そのため、上記例示した特許文献1記載の技術のように、操作者の力加減によらずに、変形後の可撓性チューブ11内腔の断面積をほぼ一定に安定させることができる。
よって、本実施形態の飲料注出装置100およびこれを備える飲料サーバ1によれば、手動による操作性に優れるとともに、泡品質の調整が容易且つ調整された泡品質の再現性が高い。そのため、安定した泡品質のビール等の発泡性飲料を注ぐことができる[発明1、発明13]。
【0062】
なお、本実施形態では、操作レバー70は、その傾倒操作に応じてスライド駒40をスライド移動可能とする構成例を示したが、手動による操作性については、操作レバー70は、傾倒操作に限らず、手動操作可能なレバーであれば、種々の態様を採用できる。例えば、操作レバー70についてもスライド移動する構成とし、そのスライド移動に応じてスライド駒40をスライド移動可能に構成してもよい。
【0063】
また、本実施形態の飲料注出装置100によれば、操作レバー70は、発泡性飲料の注出及び泡付けを停止する停止位置P0と、発泡性飲料を注出する注出位置P1と、発泡性飲料の泡を生成して注出する泡付位置P3と、に傾倒操作可能に構成され、カム機構は、操作レバー70が停止位置P0にあるときは、開閉駒50および製泡駒60を可撓性チューブ11に対する前進位置に位置させる。
【0064】
ここで、例えば特許文献1記載の技術のように、停止位置P0のときに製泡駒60を後退位置に設定することもできる。
しかしながら、本実施形態のように、停止位置P0のときに製泡駒60を前進位置に設定することによって、泡付位置P3に向けた操作レバー70の傾倒操作を開始した直後から泡付けが可能となる。
つまり、前者の設定とした場合、製泡駒60を前進位置にした後に、開閉駒50を後退させる必要があるため、操作レバー70の傾倒操作に対して泡付けにタイムラグが生じるからである。また、製泡駒60の前進と同時に開閉駒50を後退させると、操作レバー70の傾倒操作直後の泡品質が悪化するという問題がある。
【0065】
さらに、本実施形態のカムの機構は、操作レバー70が注出位置P1にあるときは、開閉駒50および製泡駒60を可撓性チューブ11に対する後退位置に位置させ、操作レバー70が泡付位置P3にあるときは、開閉駒50を可撓性チューブ11に対する後退位置に位置させるとともに、製泡駒60を可撓性チューブ11に対する前進位置に位置させる。そのため、本実施形態の飲料注出装置100によれば、操作レバー70の傾倒操作とこれに応じたカムの機構とによる円滑な連動作動によって、従来の手動型の飲料注出装置同様の優れた操作性を維持しつつ、小型でコンパクトな飲料注出装置を実現する上で好適である[発明2]。
【0066】
特に、本実施形態の飲料注出装置100によれば、操作レバー70は、操作レバー70に操作力が作用していないときは自身軸線が直立した姿勢となる停止位置P0に位置し、操作レバー70を前方側に傾倒する操作力が作用して第一の前傾姿勢のときは注出位置P1に位置し、操作レバー70を後方側に傾倒する操作力が作用して後傾姿勢のときは泡付位置P3に位置するという傾倒動作になっているので、従来の手動型の飲料注出装置同様の優れた操作性を維持しつつ、小型でコンパクトな飲料注出装置が実現する上でより好適である[発明3]。
【0067】
さらに、本実施形態の飲料注出装置100では、図7に示したように、操作レバー70が、発泡性飲料の注出状態が維持される連注位置P2に傾倒操作可能に構成され、カムの機構は、操作レバー70が連注位置P2にあるときは、操作レバー70に操作力が作用しなければその傾倒姿勢を保持できる。そのため、本実施形態の飲料注出装置100によれば、その傾倒姿勢が保持されて、発泡性飲料をグラスに注ぐ際は勿論、発泡性飲料をピッチャー等の大型容器に継続して発泡性飲料を注ぐことができるため、利便性により優れている[発明4]。
【0068】
また、本実施形態の飲料注出装置100では、図8に示したように、操作レバー70が泡付位置P3に操作されるときに、スライド駒40のスライド移動に伴うカムの作用として、スライド移動方向で製泡駒60の非動作状態を開閉駒50よりも永く保持するように、製泡駒60用のカム溝46は、開閉駒50用のカム溝45よりもスライド移動方向でのカムのプロフィール(谷の底面)を広く(長く)設定している。
【0069】
そのため、本実施形態の飲料注出装置100によれば、操作レバー70を奥に倒し切らない状態(飲料流路10が完全に開放されていない状態)であっても泡を生成できる。換言すれば、操作レバー70の中立姿勢からの傾倒角度がより小さい時点から泡を生成可能である。これにより、操作レバーの傾倒角度に応じた泡付け速度(量)のより繊細な調整が可能となり、操作レバー70の傾倒角度に対する泡付け調整範囲を拡大できるため、泡付け速度(量)の調整がより容易になる[発明5]。
【0070】
また、本実施形態の飲料注出装置100によれば、図2に示したように、開閉駒50または製泡駒60による付勢ばね(51,61)の弾圧力を調整する弾圧力調整機構(54,64)を備えるので、各個の押圧力を個別に調整できる。そのため、発泡性飲料の注出量や泡品質の調整がより容易且つ調整された注出量や泡品質の再現性をより高める上で好適である[発明6]。
【0071】
ここで、中空円筒状の可撓性チューブ11を単に上下から押圧すると、変形後のチューブ内腔断面は横方向に扁平な楕円形となる。そのため、上から押圧する押圧部材による押し込み量の僅かな違いやチューブの僅かな寸法誤差によって変形後の扁平楕円形状の内腔断面が大きく変化してしまい、場合によっては流路を塞いでしまうこともある。
また、例えば特許文献1記載の技術のような、飲料導出路内に2以上の絞り流路を生じさせるような押圧方法では、2以上の絞り流路の形状再現性が、一の絞り流路を限って生じさせる場合と比較して低いものとなり、泡品質の調整が比較的に難しく、調整された泡品質の再現性を高めることも比較的に困難である。特に、例えば特許文献1記載の技術のような押圧方法の場合、チューブや樹脂部品の寸法誤差が大きいと、泡が出ない等の不具合が生じ易く、寸法誤差が与える泡品質への影響が大きい。
【0072】
これに対し、本実施形態の飲料注出装置100によれば、製泡駒60の進退による内腔を絞る機構は、図10に示したように、製泡駒60の凹の押圧部62a,62bで可撓性チューブ11を弾性変形させて可撓性チューブ11の内腔に一の絞り流路を限って生じさせるので、泡品質の調整が容易且つ調整された泡品質の再現性を高くする上でより好適である[発明7]。
【0073】
特に、本実施形態の飲料注出装置100では、図10(b)に示したように、可撓性チューブ11に対する流路絞り機構は、チューブ収容部80の底壁部86dとこれに上下で対向する凹の押圧部62内面に形成された左右一対の制限側壁部62a、62bとによる三点挟圧構造を採用している。
これにより、本実施形態の飲料注出装置100によれば、上下からの押圧変形後のチューブ内腔の断面積を、押し込み量やチューブの寸法誤差に拘わらずほぼ一定に安定させることができる。そのため、手動による操作性に優れるとともに泡品質の調整が容易且つ調整された泡品質の再現性が高いため、安定した品質の泡を作る上で極めて優れている。
【0074】
また、本実施形態の飲料注出装置100によれば、可撓性チューブ11を凹の収容部内で保持するチューブ保持部81を備えるので、製泡駒60の対向位置での可撓性チューブ11の位置を確実に保持できる。
特に、本実施形態のチューブ保持部81は、可撓性チューブ11の延在方向での製泡駒60の前側の位置で可撓性チューブ11を凹の収容部内で保持する前側保持部81aと、前側保持部81aとはスライド方向に離隔して製泡駒60の後側の位置で可撓性チューブ11を凹の収容部内で保持する後側保持部81bと、を有するので、製泡駒60の前後近傍の位置で確実に可撓性チューブ11を保持可能である。
【0075】
さらに、本実施形態の飲料注出装置100では、前側保持部81aと後側保持部81bとは、スライド方向(つまり可撓性チューブ11の延在方向)での保持部の長さが、後側保持部81bよりも前側保持部81aが短くなっているので、これにより、製泡駒60の前後近傍の位置で確実に可撓性チューブ11を保持しつつ抽出側での管路長を可及的に短くできる。そのため、泡品質の調整が容易且つ調整された泡品質の再現性の高い安定した品質の泡を作る上で好適である[発明8]。
【0076】
また、本実施形態の飲料注出装置100によれば、飲料導出路10は、チューブ収容部80に対して手で簡単に挿抜可能に構成されているので、特段の工具や固定のための部品が不要になっており、飲料導出路10の交換および装着作業のメンテナンス性についても優れている[発明9]。
【0077】
特に、本実施形態では、図4に示したように、飲料導出路10は、可撓性チューブ11と、樽2の側に接続される接続チューブ13と、接続チューブ13と可撓性チューブ11とを連結するチューブ接手12と、を有して構成されているので、可撓性チューブ、接続チューブおよびチューブ接手の各構成部分を個別に取り外してメンテナンスできる。なお、飲料導出路10を一体化して各構成部分を取り外しできない構成としてもよい。但し、飲料導出路10は先端ほど汚れ易い(温度が高いため)ので、可撓性チューブ10以降を取り外して交換可能に構成することは好ましい。
【0078】
そして、チューブ収容部80は、後方側から順に、接続チューブ13を収容する接続チューブ収容溝87と、チューブ接手12を収容する接手収容部と、可撓性チューブ11を収容し且つ保持するチューブ保持部81と、によって構成されるので、飲料導出路10の各構成部分を所期の位置に確実に保持する上で好適である。
【0079】
また、本実施形態の飲料注出装置100によれば、図2に示したように、タップベース30とタップヘッド20とを上下方向に重ね合わせることで筐体構造が構成されている。さらに、可撓性チューブ11は、タップベース30内に設けられて可撓性チューブ11を凹の収容部内で保持するチューブ収容部80に前後方向に沿って水平に収容されるように手で配管できる。
【0080】
そして、スライド駒40は、タップヘッド20の内部に、チューブ収容部80内の可撓性チューブ11の長手方向に沿ってスライド移動可能に収容され、操作レバー70は、タップヘッド20の前側上部に上方に張り出して前後方向への傾倒操作によってスライド駒40をスライド操作可能に設けられているので、可及的に少ない部品から筐体および主要部品を構成することによって、低コスト化を可能としてメンテナンス性に優れた構造として好適である[発明10]。
【0081】
さらに、本実施形態の飲料注出装置100によれば、図3に示したように、タップベース30の前側には、前後方向とは直交する軸線をもつ支軸23が設けられ、タップヘッド20は、支軸23まわりの旋回動作によってタップベース30に対して開閉可能に連結されてタップベース30側でロックされた使用姿勢とタップベース30に対して上方に旋回されたメンテナンス姿勢とに位置可能に構成されているので、可撓性チューブ11を含む飲料導出路10に対するメンテナンス性に優れている。
【0082】
特に、本実施形態の飲料注出装置100によれば、使用姿勢にあっては、タップベース30とタップヘッド20との間でチューブ接手12を保持するとともに、メンテナンス姿勢にあっては、タップベース30上面でのチューブ収容部80において飲料導出路10全体を視認可能な位置まで旋回され、工具を用いることなく飲料導出路10をチューブ収容部80から挿抜可能になっているので、可撓性チューブ11を含む飲料導出路10のメンテナンス性に極めて優れているといえる[発明11]。
【0083】
また、本実施形態の飲料注出装置100によれば、飲料導出路10は、図3および図4にも示したように、注出ノズル90を更に有し、注出ノズル90は、その内径寸法が基端側から先端側に向かって徐々に広がる円錐台状に形成されているので、飲料注出時の泡発生を抑制する上で好適である。
つまり、可撓性チューブ11の内径が流速に対して小さすぎる場合、注出口5から注出された飲料の流れが不安定となり、グラスに注がれた際に泡が発生し易くなる。そのため、本実施形態の飲料注出装置100では、内径を徐々に広げるような注出ノズル90を設けることで整流して、飲料注出時の泡発生を抑制している。
【0084】
また、本実施形態の飲料注出装置100によれば、使用姿勢にあっては、タップベース30とタップヘッド20との間で注出ノズル90(この例ではノズル保持板91の部分)を押圧保持し、メンテナンス姿勢にあっては、注出ノズル90を含む飲料導出路10を、工具を用いることなくチューブ収容部80から挿抜可能になっているので、メンテナンス性に優れた構造としてより好適である[発明12]。
【0085】
以上説明したように、本実施形態の飲料注出装置100およびこれを備える飲料サーバ1によれば、手動による操作性に優れるとともに、泡品質の調整が容易且つ調整された泡品質の再現性が高い。
なお、本発明に係る飲料注出装置およびこれを備える飲料サーバは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0086】
1 飲料サーバ
2 樽
2a 飲料取出部
3 保持容器
3a 本体
3b 開閉扉
4 ガス供給器
4a 送気管
5 注出口
10 飲料導出路
11 可撓性チューブ
12 チューブ接手
13 接続チューブ
20 タップヘッド
21 (タップヘッド側の)チューブ保持面
22 ノズル保持アーム
23 支軸
24 係合爪
25 スライドガイド部
30 タップベース
31 (タップベース側の)チューブ保持面
32 装着部
33 挿通穴
34 軸支部
40 スライド駒
41 スライドばね
42 嵌合溝
43 案内スロット
44 山部
45 カム溝
46 カム溝
50 開閉駒
51 開閉ばね(付勢ばね)
52 押圧部
53 カムフォロワ部
54 弾圧力調整機構
60 製泡駒
61 製泡ばね(付勢ばね)
62 押圧部
63 カムフォロワ部
64 弾圧力調整機構
70 操作レバー
71 レバー軸
72 連結部
73 支点部
74 作用部
75 レバー本体
80 チューブ収容部
81 チューブ保持部
81a 前側保持部
81b 後側保持部
82 ノズル収容穴
83 接手収容部(凹の収容部)
84 鍔部保持部(凹の収容部)
85 開閉溝
86 製泡溝
87 接続チューブ収容溝(凹の収容部)
88 チューブ案内面
89 保持板ガイド面
90 注出ノズル
91 ノズル保持板
100 飲料注出装置
P0 停止位置
P1 注出位置
P2 連注位置
P3 泡付位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10