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  • 特開-体感速度制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180859
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】体感速度制御装置
(51)【国際特許分類】
   A63G 21/04 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
A63G21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094500
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100207217
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 智夫
(72)【発明者】
【氏名】對馬 淑亮
(72)【発明者】
【氏名】西野 由利恵
(57)【要約】
【課題】嗅覚刺激によりユーザの視覚する対象の動きに対して感じる速さを制御する。
【解決手段】体感速度制御装置は、対象者に、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じさせる第1イベント、または、遅く感じさせる第2イベントとされたイベントが発生すると、第1イベントまたは第2イベントに対応する香りを噴射させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者が体験する1つ以上のイベントの各々について、
前記対象者に、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じさせる第1イベントとするか、
または、
前記対象者に、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じさせる第2イベントとするか、
を選択する操作を受け付ける受付部と、
噴射装置に、
前記操作において前記第1イベントまたは前記第2イベントとすることを選択された或るイベントが発生するタイミングで、
前記操作において前記或るイベントについて選択された前記第1イベントまたは前記第2イベントに対応する香りを、
前記対象者に対して噴射させる噴射制御部と、
を備える、
体感速度制御装置。
【請求項2】
検出装置から、前記検出装置の検出結果を取得する取得部と、
前記検出結果から、前記或るイベントが発生するかを判定する判定部と、
をさらに備え、
前記判定部により前記或るイベントが発生すると判定されると、前記噴射制御部は、前記噴射装置に、前記操作において前記或るイベントについて選択された前記第1イベントまたは前記第2イベントに対応する香りを、前記対象者に対して噴射させる、
請求項1に記載の体感速度制御装置。
【請求項3】
前記検出装置は、前記対象者が運転する車両に搭載された車載センサであり、
前記判定部は、前記車載センサの検出結果から、前記車両の速度が法定速度よりも速いとの速度超過イベント、および、前記車両の速度が所定速度以下であるとの速度不足イベントの少なくとも一方が発生するかを判定する、
請求項2に記載の体感速度制御装置。
【請求項4】
前記検出装置は、前記対象者が搭乗する移動遊具の速度を検知する速度センサであり、
前記判定部は、前記速度センサの検出結果から、前記移動遊具の速度が所定速度以上であるとの高速イベントが発生するかを判定する、
請求項2に記載の体感速度制御装置。
【請求項5】
前記検出装置は、前記対象者が視聴する映像シーンを検知する映像検知装置であり、
前記判定部は、前記映像検知装置の検出結果から、前記映像シーンが動きの激しい場面であるとの動イベント、および、前記映像シーンが動きの緩慢な場面であるとの静イベントの少なくとも一方が発生するかを判定する、
請求項2に記載の体感速度制御装置。
【請求項6】
前記第1イベントに対応する香りは、ヒトが甘いと感じる香りであり、
前記第2イベントに対応する香りは、柑橘系の香りである、
請求項1から5の何れか1項に記載の体感速度制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体感速度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所望のタイミングで所望の匂いを提示する技術が知られている。例えば、下掲の特許文献1には、生活の様々な場面および時間にあわせて、例えば、瞑想をするときには気分の落ち着くような香りを、休憩時間には気分をリフレッシュするような香りを発生させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6934998号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yoshiaki Tsushimaら(2021). 「Olfactory stimulation modulates visual perception without training」. Frontiers in Neuroscience, 15:642584. (2021年8月2日オンライン版公開,doi:10.3389/fnins.2021.642584)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術は、場面等に適合する単純な嗅覚刺激しか想定しておらず、嗅覚刺激に伴ない、視覚する対象の動きに対して感じる速さが変化するというクロスモーダル現象を検討するものではない。本件発明者らは、非特許文献1に記載の通り、嗅覚刺激により、視覚する対象の動きに対して感じる速さが変化するという視覚と嗅覚とのクロスモーダル現象を発見、実証した。
【0006】
本発明は、一側面では、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、視覚と嗅覚とのクロスモーダル現象を利用して、嗅覚刺激により、ユーザが視覚する対象の動きに対して感じる速さ(および、それを要因の一つとするユーザの体感速度)を制御する体感速度制御装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の観点に係る体感速度制御装置は、対象者が体験する1つ以上のイベントの各々について、前記対象者に、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じさせる第1イベントとするか、または、前記対象者に、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じさせる第2イベントとするか、を選択する操作を受け付ける受付部と、噴射装置に、前記操作において前記第1イベントまたは前記第2イベントとすることを選択された或るイベントが発生するタイミングで、前記操作において前記或るイベントについて選択された前記第1イベントまたは前記第2イベントに対応する香りを、前記対象者に対して噴射させる噴射制御部と、を備える。
【0009】
当該構成によれば、前記体感速度制御装置は、前記対象者が体験するイベントごとに、前記第1イベントとするか、または、前記第2イベントとするか、を選択する操作を受け付ける。前記操作は、例えば、自動車メーカによる操作、対象者自身による操作、映像コンテンツの制作者、提供者による操作などである。そして、前記体感速度制御装置は、前記噴射装置に、前記操作において前記第1イベントまたは前記第2イベントとすることを選択された或るイベントが発生するタイミングで、前記操作において前記或るイベントについて選択された前記第1イベントまたは前記第2イベントに対応する香りを、前記対象者に対して噴射させる。
【0010】
ここで、本件発明者らは、前述の通り、嗅覚刺激により、視覚する対象の動きに対して感じる速さが変化するという視覚と嗅覚とのクロスモーダル現象を発見、実証した。このクロスモーダル現象を利用することにより、前記第1イベントに対応する香りを噴射された前記対象者は、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じるようになる。また、前記第2イベントに対応する香りを噴射された前記対象者は、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じるようになる。
【0011】
そのため、前記体感速度制御装置は、受け付けた前記操作における選択に応じて、前記対象者に、前記或るイベントにおいて視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じさせたり、遅く感じさせたりすることができる。つまり、前記体感速度制御装置は、視覚と嗅覚とのクロスモーダル現象を利用して、嗅覚刺激により、前記対象者の視覚する対象の動きに対して感じる速さ(および、それを要因の一つとする体感速度)を制御することができ、特に、受け付けた前記操作における選択に応じて、前記対象者の体感速度を制御することができるとの効果を奏する。
【0012】
第2の観点に係る体感速度制御装置は、上記第1の観点に係る体感速度制御装置において、前記検出装置の検出結果を取得する取得部と、前記検出結果から、前記或るイベントが発生するかを判定する判定部と、をさらに備え、前記判定部により前記或るイベントが発生すると判定されると、前記噴射制御部は、前記噴射装置に、前記操作において前記或るイベントについて選択された前記第1イベントまたは前記第2イベントに対応する香りを、前記対象者に対して噴射させてもよい。
【0013】
当該構成によれば、前記体感速度制御装置は、前記検出装置から、前記検出装置の検出結果を取得し、取得した検出結果から、前記或るイベントが発生するかを判定する。そして、前記体感速度制御装置は、前記或るイベントが発生すると判定すると、前記噴射装置に、前記操作において前記或るイベントについて選択された前記第1イベントまたは前記第2イベントに対応する香りを、前記対象者に対して噴射させる。そのため、前記体感速度制御装置は、前記検出装置から取得する検出結果を利用して、前記噴射装置が前記対象者に対して香りを噴射するタイミングを制御することができる。
【0014】
第3の観点に係る体感速度制御装置は、上記第2の観点に係る体感速度制御装置において、前記検出装置は、前記対象者が運転する車両に搭載された車載センサであり、前記判定部は、前記車載センサの検出結果から、前記車両の速度が法定速度よりも速いとの速度超過イベント、および、前記車両の速度が所定速度以下であるとの速度不足イベントの少なくとも一方が発生するかを判定してもよい。
【0015】
当該構成によれば、前記体感速度制御装置は、前記対象者が運転する車両の速度が法定速度よりも速いとの速度超過イベント、および、前記車両の速度が所定速度以下であるとの速度不足イベントの少なくとも一方が発生するかを判定する。前記速度不足イベントは、例えば、交通渋滞および前記対象者が運転する車両への追突事故などを招きかねないほど、前記対象者が運転する車両の速度が所定速度以下の大幅に遅い速度であるとのイベントである。
【0016】
例えば、自動車メーカなどは、前記操作として、前記速度超過イベントを前記第1イベントとする選択を行なってもよい。係る操作を受け付けることによって、前記体感速度制御装置は、前記速度超過イベントが発生すると判定すると、前記噴射装置に、前記第1イベントに対応する香りを、前記対象者に対して噴射させる。つまり、前記体感速度制御装置は、前記速度超過イベントが発生すると判定すると、前記噴射装置に、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じさせる」香りを、前記対象者に対して噴射させる。ここで、車両の速度が法定速度よりも速い場合、係る車両の運転者は、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じている」可能性がある。そこで、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じさせる」香りを嗅がせることによって、運転者は、つまり、前記対象者は、自然と、自らが運転する車両の速度を緩めると考えられる。そのため、前記体感速度制御装置は、前記対象者の体感速度を制御することによって、前記対象者に、運転する車両の速度を法定速度内に抑えるよう促すことができる。
【0017】
例えば、自動車メーカなどは、前記操作として、前記速度不足イベントを前記第2イベントとする選択を行なってもよい。係る操作を受け付けることによって、前記体感速度制御装置は、前記速度不足イベントが発生すると判定すると、前記噴射装置に、前記第2イベントに対応する香りを、前記対象者に対して噴射させる。つまり、前記体感速度制御装置は、前記速度不足イベントが発生すると判定すると、前記噴射装置に、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じさせる」香りを、前記対象者に対して噴射させる。ここで、前記速度不足イベントが発生している場合、係る車両の運転者は、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じている」可能性がある。そこで、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じさせる」香りを嗅がせることによって、運転者は、つまり、前記対象者は、自然と、自らが運転する車両の速度を速めると考えられる。そのため、前記体感速度制御装置は、前記対象者の体感速度を制御することによって、前記対象者に、事故等につながりかねない大幅な低速よりも速い速度で車両を運転するよう促すことができる。
【0018】
第4の観点に係る体感速度制御装置は、上記第2の観点に係る体感速度制御装置において、前記検出装置は、前記対象者が搭乗する移動遊具の速度を検知する速度センサであり、前記判定部は、前記速度センサの検出結果から、前記移動遊具の速度が所定速度以上であるとの高速イベントが発生するかを判定してもよい。
【0019】
当該構成によれば、前記体感速度制御装置は、前記対象者が搭乗する移動遊具(例えば、ジェットコースター)の速度が所定速度以上であるとの高速イベントが発生するかを判定する。そして、前記体感速度制御装置は、例えば、ジェットコースターの速度が所定速度以上であるとの高速イベントが発生すると判定すると、前記噴射装置に、前記操作において前記高速イベントについて選択された前記第1イベントまたは前記第2イベントに対応する香りを、前記対象者に対して噴射させる。
【0020】
ここで、例えば、ジェットコースターでよりスリルを味わいたい場合、前記対象者は、前記高速イベントについて、予め、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じさせる第1イベント」を選択する操作を行なっておく。また、スリルを抑えたい場合、前記対象者は、前記高速イベントについて、予め、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じさせる第2イベント」を選択する操作を行なっておく。
【0021】
このような操作を予め受け付けておくことによって、前記体感速度制御装置は、前記高速イベントにおいて、前記噴射装置に、ジェットコースターの速度をより速いものに感じさせる、または、より遅いものに感じさせる香りを、前記対象者に対して噴射させる。そのため、前記体感速度制御装置は、前記高速イベントにおいて前記対象者がよりスリルを味わいたいか、または、スリルを抑えたいかに応じて、前記対象者が感じる速度(体感速度)を制御することができる。
【0022】
第5の観点に係る体感速度制御装置は、上記第2の観点に係る体感速度制御装置において、前記検出装置は、前記対象者が視聴する映像シーンを検知する映像検知装置であり、前記判定部は、前記映像検知装置の検出結果から、前記映像シーンが動きの激しい場面であるとの動イベント、および、前記映像シーンが動きの緩慢な場面であるとの静イベントの少なくとも一方が発生するかを判定してもよい。
【0023】
当該構成によれば、前記体感速度制御装置は、前記対象者が視聴する映像シーンが動きの激しい場面であるとの動イベント、および、前記対象者が視聴する映像シーンが動きの緩慢な場面であるとの静イベントの少なくとも一方が発生するかを判定する。
【0024】
ここで、例えば、前記映像シーンの制作者、提供者などは、前記操作として、前記動イベントを前記第1イベントとし、前記静イベントを前記第2イベントとする選択を行なってもよい。
【0025】
このような操作を予め受け付けておくことによって、前記体感速度制御装置は、前記動イベントにおいて、前記噴射装置に、前記映像シーンにおける動きをより速いものに感じさせる香りを、前記対象者に対して噴射させる。また、前記体感速度制御装置は、前記静イベントにおいて、前記噴射装置に、前記映像シーンにおける動きをより遅いものに感じさせる香りを、前記対象者に対して噴射させる。そのため、前記体感速度制御装置は、前記映像シーンにおける動きの激しさ、緩慢さに応じて、前記対象者が感じる速度(体感速度)を制御して、前記対象者が前記映像シーンに対して感じる臨場感等を向上させることができる。
【0026】
第6の観点に係る体感速度制御装置は、上記第1から第5のいずれかの観点に係る体感速度制御装置において、前記第1イベントに対応する香りは、ヒトが甘いと感じる香りであり、前記第2イベントに対応する香りは、柑橘系の香りであってもよい。
【0027】
当該構成によれば、前記第1イベントに対応する香りは、ヒトが甘いと感じる香りであり、前記第2イベントに対応する香りは、柑橘系の香りである。
【0028】
ここで、本件発明者らは、非特許文献1に記載の通り、バニラに代表される、ヒトが甘いと感じる香りを嗅ぐことによって、ヒトは、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じるようになるというクロスモーダル現象を発見、実証した。また、レモンに代表される、柑橘系の香りを嗅ぐことによって、ヒトは、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じるようになるというクロスモーダル現象を発見、実証した。ヒトが甘いと感じる香りとしては、バニラ以外に、例えば、キャラメルの香りなどを挙げることできる。また、柑橘系の香りとしては、レモン以外に、例えば、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、ベルガモット、柚子などの香りを挙げることができる。
【0029】
そのため、前記体感速度制御装置は、前記噴射装置に、バニラに代表される、ヒトが甘いと感じる香りを、前記対象者に対して噴射させることによって、前記対象者に、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じさせることができる。また、前記体感速度制御装置は、前記噴射装置に、レモンに代表される、柑橘系の香りを、前記対象者に対して噴射させることによって、前記対象者に、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じさせることができる。
【0030】
また、上記各観点に係る体感速度制御装置の別の態様として、本発明の一側面は、以上の各構成の全部又はその一部を実現する情報処理方法であってもよいし、プログラムであってもよいし、このようなプログラムを記憶した、コンピュータその他装置、機械等が読み取り可能な記憶媒体であってもよい。ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記憶媒体とは、プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的、又は、化学的作用によって蓄積する媒体である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、視覚と嗅覚とのクロスモーダル現象を利用して、嗅覚刺激により、ユーザの視覚する対象の動きに対して感じる速さ(および、それを要因の一つとするユーザの体感速度)を制御する体感速度制御装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明が適用される場面の一例を模式的に例示する。
図2図2は、実施の形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を模式的に例示する。
図3図3は、実施の形態に係る制御装置のソフトウェア構成の一例を模式的に例示する。
図4図4は、実施の形態に係る制御装置の処理手順の一例を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。なお、本実施形態において登場するデータを自然言語により説明しているが、より具体的には、コンピュータが認識可能な疑似言語、コマンド、パラメータ、マシン語等で指定される。
【0034】
§1 適用例
図1は、本発明を適用した場面の一例を模式的に例示する。本実施形態に係る体感速度制御システム100は、制御装置1、噴射装置2、および、検出装置3を備えている。
【0035】
本実施形態に係る制御装置1は、噴射装置2による対象者4に対して噴射する香りの種類、および、噴射のタイミングを制御する制御装置であり、本発明に係る体感速度制御装置の一例である。本実施形態に係る制御装置1は、ユーザ(例えば、自動車メーカ、対象者4、映像コンテンツ(映像シーン)の制作者、提供者など)から、対象者4が体験する1つ以上のイベントの各々について、以下の操作を受け付ける。すなわち、制御装置1は、対象者4が体験する1つ以上のイベントの各々について、第1イベントEv1とするか、または、第2イベントEv2とするか、を選択する操作(選択操作Os)を受け付ける。第1イベントEv1は、「対象者4に、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じさせる」イベントである。また、第2イベントEv2は、「対象者4に、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じさせる」イベントである。
【0036】
また、本実施形態に係る制御装置1は、検出装置3から、検出装置3の検出結果Sdを取得する。制御装置1は、検出装置3から取得した検出結果Sdを用いて、以下の判定を実行する。すなわち、制御装置1は、検出結果Sdにより、「選択操作Osにおいて、第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることを選択されたイベントが発生するか」を、判定する。
【0037】
制御装置1は、「選択操作Osにおいて、第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることを選択されたイベントが発生する」と判定すると、発生すると判定したイベント(或るイベント)について選択操作Osにおいて選択されたのが、第1イベントEv1および第2イベントEv2の何れであるのかを特定する。そして、制御装置1は、特定した第1イベントEv1または第2イベントEv2に対応する香りを、噴射装置2に噴射させる。例えば、発生すると判定した或るイベントについて、選択操作Osにおいて「第1イベントEv1とする」ことが選択されていると、制御装置1は、噴射装置2に、第1イベントEv1に対応する第1の香りFr1を噴射させる。また、発生すると判定した或るイベントについて、選択操作Osにおいて「第2イベントEv2とする」ことが選択されていると、制御装置1は、噴射装置2に、第2イベントEv2に対応する第2の香りFr2を噴射させる。
【0038】
本実施形態において制御装置1は、「選択操作Osにおいて、第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることを選択されたイベントが発生する」と判定すると、噴射装置2に噴射指示Iiを送信して、対象者4に対して香りを噴射させる。特に、制御装置1は、噴射装置2が対象者4に対して噴射する香りを、「第1イベントEv1に対応する第1の香りFr1」とするか、または、「第2イベントEv2に対応する第2の香りFr2」とするか、を指定する種類指定情報を含む噴射指示Iiを、噴射装置2に送信する。種類指定情報においては、制御装置1が発生すると判定したイベント(或るイベント)について選択操作Osにおいて選択された第1イベントEv1または第2イベントEv2に対応する香りが指定されている。
【0039】
本実施形態に係る噴射装置2は、対象者4に対して香りを噴射する噴射装置であり、本発明に係る体感速度制御装置の一例である。噴射装置2は、対象者4に対して、複数の種類の香りの何れかを噴射することができ、少なくとも、「第1イベントEv1に対応する第1の香りFr1」または「第2イベントEv2に対応する第2の香りFr2」を、対象者4に対して噴射することができる。
【0040】
本実施形態に係る噴射装置2は、制御装置1に制御されて、対象者4に対して香りを噴射し、具体的には、制御装置1に指示されたタイミングで、制御装置1に指示された種類の香りを、対象者4に対して噴射する。すなわち、噴射装置2は、制御装置1から噴射指示Iiを受信すると、噴射指示Iiに含まれる種類指定情報において指定されている種類の香りを、対象者4に対して噴射する。具体的には、種類指定情報において指定されている、「第1イベントEv1に対応する第1の香りFr1」または「第2イベントEv2に対応する第2の香りFr2」を、噴射装置2は対象者4に対して噴射する。
【0041】
例えば、第1イベントEv1に対応する第1の香りFr1は、ヒトが甘いと感じる香りであり、第2イベントEv2に対応する香りは、柑橘系の香りである。本件発明者らは、非特許文献1に記載の通り、バニラに代表される、ヒトが甘いと感じる香り(第1の香りFr1)を嗅ぐことによって、ヒトは、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じるようになるというクロスモーダル現象を発見、実証した。また、レモンに代表される、柑橘系の香り(第2の香りFr2)を嗅ぐことによって、ヒトは、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じるようになるというクロスモーダル現象を発見、実証した。ヒトが甘いと感じる香りとしては、バニラ以外に、例えば、キャラメルの香りなどを挙げることできる。また、柑橘系の香りとしては、レモン以外に、例えば、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、ベルガモット、柚子などの香りを挙げることができる。
【0042】
そのため、制御装置1は、噴射装置2に、バニラに代表される、ヒトが甘いと感じる香り(第1の香りFr1)を、対象者4に対して噴射させることによって、対象者4に、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じさせることができる。また、制御装置1は、噴射装置2に、レモンに代表される、柑橘系の香り(第2の香りFr2)を、対象者4に対して噴射させることによって、対象者4に、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じさせることができる。
【0043】
ここで、ヒトが視覚する対象の動きが、ある種の特殊な動きを見せる時、自己運動感覚が誘発されることが知られている。例えばワープ映像のような、中心から放射状に流れるような映像、および、渦をまくような映像の少なくとも一方が提示された場合、観察者自身は動いていないにも関わらず、観察者に自己運動感覚が誘発されることが知られている。ワープ映像とは、観る者に超光速推進航法(ワープ)、タイムスリップなどを想起させるような映像をいう。一般に、中心から放射状に流れるような映像が提示された場合、観察者自身は動いていないにも関わらず、観察者は、前進(逆は後進)方向に、自己運動感覚を誘発される。また、渦をまくような映像が提示された場合、観察者自身は動いていないにも関わらず、観察者は、渦の回転とは逆の方向に、自己運動感覚を誘発される。このように、自己運動感覚の要因の一つとして視覚を挙げることができ、特に、ヒトが体感速度を感じる要因の一つとして、視覚する対象の動きに対して感じる速さを挙げることができる。そのため、「ユーザが視覚する対象の動きに対して感じる速さ」を制御することによって、「ユーザが視覚する対象の動きに対して感じる速さ」を要因の一つとするユーザの体感速度を、制御することができる。
【0044】
本実施形態に係る検出装置3は、検出対象の状態等を検出し、検出結果を出力する検出装置であり、本発明に係る検出装置の一例である。検出装置3は、例えば、車載センサ、速度センサなどの各種のセンサであってもよく、対象者4が搭乗する移動体など、対象者4の視覚する対象の動きに連動して動く検出対象の状態(動きなど)を検出してもよい。対象者4が搭乗する移動体の例としては、対象者4が運転する車両、対象者4が登場する移動遊具(ジェットコースターなど)を挙げることができる。また、検出装置3は、対象者4が視聴する映像コンテンツ、映像シーンなど、対象者4の視覚する対象自体の状態(動きなど)を検出してもよく、例えば、対象者4が視聴する映像シーンを検知する映像検知装置であってもよい。
【0045】
検出装置3の出力する検出結果は、検出装置3が出力できるデータであれば、そのデータの種類は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。検出結果は、例えば、画像データ、音データ、数値データ、テキストデータ、その他、車載センサ、速度センサなどの各種のセンサにより得られる測定データなどであってよい。センサは、例えば、画像センサ(カメラ)、赤外線センサ、音センサ(マイクロフォン)、超音波センサ、光センサ、圧力センサ、気圧センサ、温度センサ等であってよい。また、センサは、例えば、環境センサ、車載センサ、速度センサ等であってよい。環境センサは、例えば、気圧計、温度計、湿度計、音圧計、音センサ、紫外線センサ、照度計、雨量計、ガスセンサ等であってよい。車載センサは、例えば、画像センサ、Lidar(light detection and ranging)センサ、ミリ波レーダ、超音波センサ、加速度センサ等であってよい。また、検出結果は、例えば、対象者が視聴する映像コンテンツ、映像シーンであってもよい。さらに、検出結果は、複数の異なる種類のデータにより構成されてもよい。
【0046】
なお、図1の例では、制御装置1と噴射装置2とはネットワークを介して互いに接続されている。また、制御装置1と検出装置3とは、ネットワークを介して互いに接続されている。ネットワークの種類は、例えば、インターネット、無線通信網、移動通信網、電話網、専用網等から適宜選択されてよい。ただし、制御装置1と噴射装置2との間、および、制御装置1と検出装置3との間でデータをやりとりする方法は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0047】
§2 構成例
[ハードウェア構成]
図2は、本実施形態に係る制御装置1のハードウェア構成の一例を模式的に例示する。図2に示されるとおり、本実施形態に係る制御装置1は、制御部11、記憶部12、通信インタフェース13、外部インタフェース14、入力装置15、出力装置16、およびドライブ17が電気的に接続されたコンピュータである。なお、図2では、通信インタフェースおよび外部インタフェースを「通信I/F」および「外部I/F」と記載している。
【0048】
制御部11は、ハードウェアプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、プログラムおよび各種データに基づいて情報処理を実行するように構成される。CPUは、プロセッサ・リソースの一例である。記憶部12は、メモリ・リソースの一例であり、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等で構成される。本実施形態では、記憶部12は、制御プログラム121、選択情報122などの各種情報を記憶する。
【0049】
制御プログラム121は、対象者4が視覚する対象の動きに対して感じる速さ(および、それを要因の一つとする対象者4の体感速度)を制御する後述の情報処理(図4)を制御装置1に実行させるためのプログラムである。制御プログラム121は、当該情報処理の一連の命令を含む。
【0050】
選択情報122は、制御装置1が受け付けた選択操作Osから生成される情報である。選択情報122は、選択操作Osにおいて、対象者4が体験する1つ以上のイベントの各々について、第1イベントEv1および第2イベントEv2のいずれとすることが選択されたかを示す情報である。つまり、選択情報122は、対象者4が体験するイベントごとに、選択操作Osにおいて、第1イベントEv1および第2イベントEv2の何れが選択されたかを示す。
【0051】
通信インタフェース13は、例えば、有線LAN(Local Area Network)モジュール、無線LANモジュール等であり、ネットワークを介した有線又は無線通信を行うためのインタフェースである。制御装置1は、この通信インタフェース13を利用して、他の情報処理装置との間で、ネットワークを介したデータ通信を実行してもよい。外部インタフェース14は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、専用ポート等であり、外部装置と接続するためのインタフェースである。外部インタフェース14の種類および数は、接続される外部装置の種類および数に応じて適宜選択されてよい。制御装置1は、通信インタフェース13および外部インタフェース14の少なくとも一方を介して、検出装置3に接続され、検出装置3から、検出装置3の検出結果Sdを取得する。
【0052】
入力装置15は、例えば、マウス、キーボード等の入力を行うための装置である。また、出力装置16は、例えば、ディスプレイ、スピーカ等の出力を行うための装置である。ユーザ等のオペレータは、入力装置15および出力装置16を利用することで、制御装置1を操作することができる。
【0053】
ドライブ17は、例えば、CDドライブ、DVDドライブ等であり、記憶媒体91に記憶されたプログラム等の各種情報を読み込むためのドライブ装置である。記憶媒体91は、コンピュータその他装置、機械等が、記憶されたプログラム等の各種情報を読み取り可能なように、当該プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積する媒体である。上記制御プログラム121および選択情報122の少なくとも一方は、記憶媒体91に記憶されていてもよい。制御装置1は、この記憶媒体91から、上記制御プログラム121および選択情報122の少なくとも一方を取得してもよい。なお、図2では、記憶媒体91の一例として、CD、DVD等のディスク型の記憶媒体を例示している。しかしながら、記憶媒体91の種類は、ディスク型に限られなくてもよく、ディスク型以外であってもよい。ディスク型以外の記憶媒体として、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリを挙げることができる。ドライブ17の種類は、記憶媒体91の種類に応じて任意に選択されてよい。
【0054】
なお、制御装置1の具体的なハードウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換および追加が可能である。例えば、プロセッサ・リソースは、複数のハードウェアプロセッサを含んでもよい。ハードウェアプロセッサは、マイクロプロセッサ、FPGA(field-programmable gate array)、DSP(digital signal processor)等で構成されてよい。記憶部12は、制御部11に含まれるRAMおよびROMにより構成されてもよい。通信インタフェース13、外部インタフェース14、入力装置15、出力装置16およびドライブ17の少なくともいずれかは省略されてもよい。制御装置1は、複数台のコンピュータで構成されてもよい。この場合、各コンピュータのハードウェア構成は、一致していてもよいし、一致していなくてもよい。また、制御装置1は、提供されるサービス専用に設計された情報処理装置の他、汎用のサーバ装置、PC(Personal Computer)等であってもよい。
【0055】
[ソフトウェア構成]
図3は、本実施形態に係る制御装置1のソフトウェア構成の一例を模式的に例示する。制御装置1の制御部11は、記憶部12に記憶された制御プログラム121をRAMに展開する。そして、制御部11は、CPUにより、RAMに展開された制御プログラム121に含まれる命令を解釈および実行して、各構成要素を制御する。これにより、図3に示されるとおり、本実施形態に係る制御装置1は、受付部111、取得部112、判定部113、および、噴射制御部114をソフトウェアモジュールとして備えるコンピュータとして動作する。すなわち、本実施形態では、制御装置1の各ソフトウェアモジュールは、制御部11(CPU)により実現される。
【0056】
受付部111は、ユーザから、「対象者4が体験する1つ以上のイベントの各々について、第1イベントEv1とするか、または、第2イベントEv2とするか、を選択する」選択操作Osを受け付ける。受付部111は、受け付けた選択操作Osから、「選択操作Osにおいて、対象者4が体験する1つ以上のイベントの各々について、第1イベントEv1および第2イベントEv2のいずれとすることが選択されたか」を示す選択情報122を生成する。受付部111は、生成した選択情報122を記憶部12に格納する(記憶する)。
【0057】
取得部112は、検出装置3から、検出装置3の検出結果Sdを取得する。取得部112は、検出結果Sdを、判定部113に通知する。
【0058】
判定部113は、取得部112から通知された検出結果Sdから、「選択操作Osにおいて、第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることを選択されたイベントが発生するか」を、判定する。判定部113は、「選択操作Osにおいて、第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることを選択されたイベントが発生する」と判定すると、係る判定の結果(判定結果)を、噴射制御部114に通知する。
【0059】
噴射制御部114は、判定部113から「選択操作Osにおいて、第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることを選択されたイベントが発生する」との判定結果を通知されると、先ず、記憶部12に格納されている選択情報122を参照する。噴射制御部114は、選択情報122を参照して、判定部113によって「発生する」と判定されたイベント(或るイベント)について、選択操作Osにおいて選択されたのが、第1イベントEv1および第2イベントEv2の何れであるのかを特定する。そして、噴射制御部114は、特定した第1イベントEv1または第2イベントEv2に対応する香りを指定する種類指定情報を含む噴射指示Iiを、噴射装置2に送信する。例えば、選択情報122において、判定部113によって「発生する」と判定された或るイベントについて「第1イベントEv1が選択されている」のを特定すると、噴射制御部114は、第1の香りFr1を指定する種類指定情報を含む噴射指示Iiを、送信する。また、選択情報122において、判定部113によって「発生する」と判定された或るイベントについて「第2イベントEv2が選択されている」のを特定すると、噴射制御部114は、第2の香りFr2を指定する種類指定情報を含む噴射指示Iiを、送信する。噴射指示Iiを受信した噴射装置2は、噴射指示Iiに含まれる種類指定情報において指定されている種類の香りを、つまり、第1の香りFr1または第2の香りFr2を、対象者4に対して噴射する。
【0060】
以上に説明した通り、制御装置1は、第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることが選択された或るイベントが発生すると判定すると、係る或るイベントについて選択された、第1イベントEv1または第2イベントEv2に対応する香りを、対象者4に対して噴射させる。
【0061】
§3 動作例
図4は、本実施形態に係る制御装置1の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下で説明する処理手順は、「嗅覚刺激により、ユーザの視覚する対象の動きに対して感じる速さ(および、それを要因の一つとするユーザの体感速度)を制御する」体感速度制御方法の一例である。ただし、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各ステップは可能な限り変更されてよい。更に、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、および追加が可能である。
【0062】
(ステップS101)
ステップS101では、制御部11は、受付部111として動作し、対象者4が体験する1つ以上のイベントの各々について、つまり、対象者4が体験するイベントごとに、第1イベントEv1とするか、または、第2イベントEv2とするかを選択する操作(選択操作Os)を受け付ける。
【0063】
(ステップS102)
ステップS102では、制御部11は、受付部111として動作し、受け付けた操作(選択操作Os)に基づいて、イベントごとに、第1イベントEv1および第2イベントEv2の何れが選択されたかを示す選択情報122を記憶する(記憶部12に格納する)。
【0064】
(ステップS103)
ステップS103では、制御部11は、取得部112として動作し、検出装置3から、検出装置3の検出結果Sdを取得する。
【0065】
(ステップS104)
ステップS104では、制御部11は、判定部113として動作し、ステップS103において取得した検出結果Sdから、「選択操作Osにおいて、第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることを選択されたイベントが発生するか」を、判定する。「選択操作Osにおいて、第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることを選択されたイベントが発生しない」と判定すると(S104で「NO」)、制御部11は、ステップS103を再び実行する。「選択操作Osにおいて、第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることを選択されたイベントが発生する」と判定するまで、制御部11は、ステップS103およびステップS104を繰り返す。「選択操作Osにおいて、第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることを選択されたイベントが発生する」と判定すると(S104で「YES」)、制御部11はステップS105に進む。
【0066】
(ステップS105)
ステップS105では、制御部11は、噴射制御部114として動作し、選択情報122を参照して、ステップS104において発生すると判定したイベントについて、第1イベントEv1および第2イベントEv2の何れが選択されたかを特定する。
【0067】
(ステップS106)
ステップS106では、制御部11は、噴射制御部114として動作し、ステップS105において特定した第1イベントEv1または第2イベントEv2に対応する香りを、噴射制御部114に噴射させる。すなわち、制御部11は、ステップS105において特定した第1イベントEv1または第2イベントEv2に対応する香りを指定する種類指定情報を含む噴射指示Iiを、噴射装置2に送信して、噴射装置2に、種類指定情報において指定する第1の香りFr1または第2の香りFr2を、対象者4に対して噴射させる。例えば、制御部11は、S104で発生すると判定したイベントについて、ステップS105で第1イベントEv1が選択されたことを特定すると、噴射装置2に、第1の香りFr1を対象者4に対して噴射させる。また、制御部11は、S104で発生すると判定したイベントについて、ステップS105で第2イベントEv2が選択されたことを特定すると、噴射装置2に、第2の香りFr2を対象者4に対して噴射させる。
【0068】
[特徴]
以上のとおり、本実施形態では、制御装置1(体感速度制御装置)は、受付部111と噴射制御部114とを備える。受付部111は、対象者4が体験する1つ以上のイベントの各々について、第1イベントEv1とするか、または、第2イベントEv2とするか、を選択する選択操作Osを受け付ける。第1イベントEv1は、「対象者4に、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じさせる」イベントである。第2イベントEv2は、「対象者4に、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じさせる」イベントである。選択操作Osは、例えば、自動車メーカによる操作、対象者自身による操作、映像コンテンツ制作者・提供者による操作などである。噴射制御部114は、噴射装置2に、選択操作Osにおいて第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることを選択された或るイベントが発生するタイミングで、第1の香りFr1または第2の香りFr2を、対象者4に対して噴射させる。第1の香りFr1は、第1イベントEv1に対応する香りであり、第2の香りFr2は、第2イベントEv2に対応する香りである。すなわち、噴射制御部114は、噴射装置2に、或るイベントが発生するタイミングで、選択操作Osにおいて係る或るイベントについて選択された第1イベントEv1または第2イベントEv2に対応する香りを、対象者4に対して噴射させる。
【0069】
当該構成によれば、制御装置1は、対象者4が体験するイベントごとに、第1イベントEv1とするか、または、第2イベントEv2とするか、を選択する選択操作Osを受け付ける。そして、制御装置1は、噴射装置2に、選択操作Osにおいて第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることを選択された或るイベントが発生するタイミングで、選択操作Osにおいて係る或るイベントについて選択された第1イベントEv1または第2イベントEv2に対応する香りを、対象者4に対して噴射させる。
【0070】
ここで、本件発明者らは、前述の通り、嗅覚刺激により、視覚する対象の動きに対して感じる速さが変化するという視覚と嗅覚とのクロスモーダル現象を発見、実証した。このクロスモーダル現象を利用することにより、第1イベントEv1に対応する香り(第1の香りFr1)を噴射された対象者4は、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じるようになる。また、第2イベントEv2に対応する香り(第2の香りFr2)を噴射された対象者4は、視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じるようになる。
【0071】
そのため、制御装置1は、受け付けた選択操作Osにおける選択に応じて、対象者4に、第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることを選択された或るイベントにおいて視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じさせたり、遅く感じさせたりすることができる。つまり、制御装置1は、視覚と嗅覚とのクロスモーダル現象を利用して、嗅覚刺激により、対象者4の視覚する対象の動きに対して感じる速さ(および、それを要因の一つとする体感速度)を制御することができ、特に、受け付けた選択操作Osにおける選択に応じて、対象者4の体感速度を制御することができるとの効果を奏する。
【0072】
本実施形態では、制御装置1はさらに、取得部112と判定部113とを備える。取得部112は、検出装置3から、検出装置3の検出結果Sdを取得する。判定部113は、検出結果Sdから、選択操作Osにおいて第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることを選択されたイベント(或るイベント)が発生するかを判定する。判定部113により係る或るイベントが発生すると判定されると、噴射制御部114は、噴射装置2に、選択操作Osにおいて係る或るイベントについて選択された第1イベントEv1または第2イベントEv2に対応する香りを、対象者4に対して噴射させる。
【0073】
当該構成によれば、制御装置1は、検出装置3から、検出装置3の検出結果Sdを取得し、取得した検出結果Sdから、選択操作Osにおいて第1イベントEv1または第2イベントEv2とすることを選択されたイベント(或るイベント)が発生するかを判定する。そして、制御装置1は、係る或るイベントが発生すると判定すると、噴射装置2に、選択操作Osにおいて係る或るイベントについて選択された第1イベントEv1または第2イベントEv2に対応する香りを、対象者4に対して噴射させる。そのため、制御装置1は、検出装置3から取得する検出結果Sdを利用して、噴射装置2が対象者4に対して香りを噴射するタイミングを制御することができる。
【0074】
[検出装置が車載センサである例]
本実施形態において、検出装置3は、対象者4が運転する車両(不図示)に搭載された車載センサであってもよい。その場合、判定部113は、係る車載センサの検出結果Sdから、対象者4が運転する車両の速度が法定速度よりも速いとの速度超過イベント、および、係る車両の速度が所定速度以下であるとの速度不足イベントの少なくとも一方が発生するかを判定する。
【0075】
当該構成によれば、制御装置1は、対象者4が運転する車両の速度が法定速度よりも速いとの速度超過イベント、および、係る車両の速度が所定速度以下であるとの速度不足イベントの少なくとも一方が発生するかを判定する。速度不足イベントは、例えば、交通渋滞および対象者4が運転する車両への追突事故などを招きかねないほど、対象者4が運転する車両の速度が所定速度以下の大幅に遅い速度であるとのイベントである。
【0076】
例えば、自動車メーカなどは、選択操作Osとして、前述の速度超過イベントを第1イベントEv1とする選択を行なってもよい。係る操作を受け付けることによって、制御装置1は、速度超過イベントが発生すると判定すると、噴射装置2に、第1イベントEv1に対応する香りを、対象者4に対して噴射させる。つまり、制御装置1は、速度超過イベントが発生すると判定すると、噴射装置2に、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じさせる」香り(第1の香りFr1)を、対象者4に対して噴射させる。ここで、車両の速度が法定速度よりも速い場合、係る車両の運転者は、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じている」可能性がある。そこで、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じさせる」香りを嗅がせることによって、運転者は、つまり、対象者4は、自然と、自らが運転する車両の速度を緩めると考えられる。そのため、制御装置1は、対象者4の体感速度を制御することによって、対象者4に、運転する車両の速度を法定速度内に抑えるよう促すことができる。
【0077】
例えば、自動車メーカなどは、選択操作Osとして、前述の速度不足イベントを第2イベントEv2とする選択を行なってもよい。係る操作を受け付けることによって、制御装置1は、速度不足イベントが発生すると判定すると、噴射装置2に、第2イベントEv2に対応する香りを、対象者4に対して噴射させる。つまり、制御装置1は、速度不足イベントが発生すると判定すると、噴射装置2に、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じさせる」香り(第2の香りFr2)を、対象者4に対して噴射させる。ここで、速度不足イベントが発生している場合、係る車両の運転者は、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じている」可能性がある。そこで、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じさせる」香りを嗅がせることによって、運転者は、つまり、対象者4は、自然と、自らが運転する車両の速度を速めると考えられる。そのため、制御装置1は、対象者4の体感速度を制御することによって、対象者4に、事故等につながりかねない大幅な低速よりも速い速度で車両を運転するよう促すことができる。
【0078】
[検出装置が速度センサである例]
本実施形態において、検出装置3は、対象者4が搭乗する移動遊具の速度を検知する速度センサであってもよい。その場合、判定部113は、係る速度センサの検出結果Sdから、対象者4が搭乗する移動遊具の速度が所定速度以上であるとの高速イベントが発生するかを判定する。
【0079】
当該構成によれば、制御装置1は、対象者4が搭乗する移動遊具(例えば、ジェットコースター)の速度が所定速度以上であるとの高速イベントが発生するかを判定する。そして、制御装置1は、例えば、ジェットコースターの速度が所定速度以上であるとの高速イベントが発生すると判定すると、噴射装置2に、選択操作Osにおいて係る高速イベントについて選択された第1イベントEv1または第2イベントEv2に対応する香りを、対象者4に対して噴射させる。
【0080】
ここで、例えば、ジェットコースターでよりスリルを味わいたい場合、対象者4は、前述の高速イベントについて、予め、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも速く感じさせる第1イベントEv1」を選択する操作を行なっておく。また、スリルを抑えたい場合、対象者4は、前述の高速イベントについて、予め、「視覚する対象の動きの速さを、実際の速さよりも遅く感じさせる第2イベントEv2」を選択する操作を行なっておく。
【0081】
このような操作を予め受け付けておくことによって、制御装置1は、高速イベントにおいて、噴射装置2に、ジェットコースターの速度をより速いものに感じさせる、または、より遅いものに感じさせる香りを、対象者4に対して噴射させる。そのため、制御装置1は、高速イベントにおいて対象者4がよりスリルを味わいたいか、または、スリルを抑えたいかに応じて、対象者4が感じる速度(体感速度)を制御することができる。
【0082】
[検出装置が映像検知装置である例]
本実施形態において、検出装置3は、対象者4が視聴する映像シーンを検知する映像検知装置であってもよい。その場合、判定部113は、係る映像検知装置の検出結果Sdから、対象者4が視聴する映像シーンが動きの激しい場面であるとの動イベント、および、係る映像シーンが動きの緩慢な場面であるとの静イベントの少なくとも一方が発生するかを判定する。
【0083】
当該構成によれば、制御装置1は、対象者4が視聴する映像シーンが動きの激しい場面であるとの動イベント、および、対象者4が視聴する映像シーンが動きの緩慢な場面であるとの静イベントの少なくとも一方が発生するかを判定する。
【0084】
ここで、例えば、対象者4が視聴する映像シーンの制作者、提供者などは、選択操作Osとして、前述の動イベントを第1イベントEv1とし、前述の静イベントを第2イベントEv2とする選択を行なってもよい。
【0085】
このような操作を予め受け付けておくことによって、制御装置1は、動イベントにおいて、噴射装置2に、対象者4が視聴する映像シーンにおける動きをより速いものに感じさせる香り(第1の香りFr1)を、対象者4に対して噴射させる。また、制御装置1は、静イベントにおいて、噴射装置2に、対象者4が視聴する映像シーンにおける動きをより遅いものに感じさせる香り(第2の香りFr2)を、対象者4に対して噴射させる。そのため、制御装置1は、対象者4が視聴する映像シーンにおける動きの激しさ、緩慢さに応じて、対象者4が感じる速度(体感速度)を制御して、対象者4が係る映像シーンに対して感じる臨場感等を向上させることができる。
【0086】
§4 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良又は変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0087】
上記実施形態では、制御装置1、噴射装置2、および、検出装置3は、それぞれ別個のコンピュータにより構成されている例を説明した。しかしながら、本実施形態に係る体感速度制御システム100の構成は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。たとえば、制御装置1と噴射装置2とは一体のコンピュータであってもよい。同様に、制御装置1と検出装置3とは一体のコンピュータであってもよい。さらに、制御装置1、噴射装置2、および、検出装置3を一体のコンピュータとしてもよい。また、例えば、制御装置1、噴射装置2、および、検出装置3のうちの少なくとも何れか1つは、複数台のコンピュータにより構成されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…制御装置、2…噴射装置、3…検出装置、4…対象者、
111…受付部、112…取得部、113…判定部、114…噴射制御部、
Ev1…第1イベント、Ev2…第2イベント、Os…選択操作(操作)、
Sd…検出結果
図1
図2
図3
図4