(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180895
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
H10B 12/00 20230101AFI20231214BHJP
H10B 53/30 20230101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L27/108 601
H01L27/11507
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094570
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ハ
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和展
(72)【発明者】
【氏名】虎谷 健一郎
【テーマコード(参考)】
5F083
【Fターム(参考)】
5F083AD01
5F083AD11
5F083FR02
5F083JA60
5F083LA12
5F083LA16
5F083LA19
5F083PR03
5F083PR21
5F083PR22
5F083PR36
5F083PR40
(57)【要約】
【課題】半導体装置の性能を向上させる。
【解決手段】実施形態に係る半導体装置CTは、第1導電体22、第2導電体23、第3導電体21、半導体32、第1絶縁体31、及び絶縁領域33を含む。第1導電体22、第2導電体23、及び第3導電体21は、第1方向に互いに離れて並ぶ。半導体32は金属酸化物を含み、第1方向に延伸して第1導電体22及び第3導電体21に接する。第1絶縁体31は、半導体32と第2導電体23との間に設けられる。絶縁領域33は、第1方向に延伸して第1導電体22に接し、半導体32に囲まれている。半導体32は、第1部分と、第1部分と絶縁領域33の間の第2部分を含む。半導体32に含まれる金属酸化物の中の第1元素の濃度は、第2部分の方が、第1部分よりも高い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に互いに離れて並ぶ第1導電体、第2導電体、及び第3導電体と、
前記第1方向に延伸して前記第1導電体及び前記第3導電体に接する、金属酸化物を含む半導体と、
前記半導体と前記第2導電体との間に設けられる第1絶縁体と、
前記第1方向に延伸して前記第1導電体に接し、前記半導体に囲まれた絶縁領域と、
を含み、
前記半導体は、第1部分と、前記第1部分と前記絶縁領域の間の第2部分を含み、
前記半導体に含まれる金属酸化物の中の第1元素の濃度は、前記第2部分の方が、前記第1部分よりも高い、半導体装置。
【請求項2】
前記第1導電体と前記第3導電体との間に、前記第2導電体が設けられる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2導電体は前記半導体を囲んでいる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記絶縁領域は前記半導体と接している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1元素は、金属元素であり、前記金属酸化物に含まれる金属元素の中で酸素との結合エネルギーが最も大きい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1元素はガリウム、またはアルミニウムである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1元素は、前記半導体に含まれる元素の中で、酸素との結合エネルギーが最も大きい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1元素はカーボン、またはハフニウム、またはシリコンである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記絶縁領域は酸化シリコンを含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記絶縁領域は空隙である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記絶縁領域と前記第3導電体の間に前記半導体の一部が設けられている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記絶縁領域は、前記第3導電体に接している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
請求項1に記載の半導体装置と、
前記半導体装置の前記第1導電体または前記第3導電体に電気的に接続されたキャパシタと、
を含む、半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及び半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物半導体を用いた半導体装置と、当該半導体装置を使用した半導体記憶装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10439068号明細書
【特許文献2】米国特許第10381220号明細書
【特許文献3】米国特許第9324880号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2018/0323311号明細書
【特許文献5】米国特許第9478668号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の性能を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1導電体、第2導電体、第3導電体、半導体、第1絶縁体、及び絶縁領域を含む。第1導電体、第2導電体、及び第3導電体は、第1方向に互いに離れて並ぶ。半導体は金属酸化物を含み、第1方向に延伸して第1導電体及び第3導電体に接する。第1絶縁体は、半導体と第2導電体との間に設けられる。絶縁領域は、第1方向に延伸して第1導電体に接し、半導体に囲まれている。半導体は、第1部分と、第1部分と絶縁領域の間の第2部分を含む。半導体に含まれる金属酸化物の中の第1元素の濃度は、第2部分の方が、第1部分よりも高い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る半導体記憶装置を含むメモリシステムの構成を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態に係る半導体記憶装置のメモリセルの構成を示すための回路図。
【
図3】第1実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの構造を示す断面図。
【
図4】第1実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの構造を示す断面図。
【
図5】第1実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの性質を示すグラフ。
【
図6】第1実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの性質を示すグラフ。
【
図7】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法の一例を示すフローチャート。
【
図8】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造途中の断面構造の一例を示す断面図。
【
図9】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造途中の断面構造の一例を示す断面図。
【
図10】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造途中の断面構造の一例を示す断面図。
【
図11】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造途中の断面構造の一例を示す断面図。
【
図12】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造途中の断面構造の一例を示す断面図。
【
図13】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造途中の断面構造の一例を示す断面図。
【
図14】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造途中の断面構造の一例を示す断面図。
【
図15】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造途中の断面構造の一例を示す断面図。
【
図16】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造途中の断面構造の一例を示す断面図。
【
図17】第1実施形態の変形例に係るトランジスタの構造を示す断面図。
【
図18】第2実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの構造を示す断面図。
【
図19】第2実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法の一例を示すフローチャート。
【
図20】第2実施形態に係る半導体記憶装置の製造途中の断面構造の一例を示す断面図。
【
図21】第3実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの構造を示す断面図。
【
図22】第3実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの性質を示すグラフ。
【
図23】第3実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの性質を示すグラフ。
【
図24】第3実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法の一例を示すフローチャート。
【
図25】第3実施形態に係る半導体記憶装置の製造途中の断面構造の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態につき図面を参照して説明する。説明に際し、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。また、以下に示す実施形態は、技術的思想を例示するものである。実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を限定するものではない。実施形態は、種々の変更を加えることができる。
【0008】
[1]第1実施形態
[1-1]構成
第1実施形態に係る半導体記憶装置の構成について説明する。
【0009】
[1-1-1]半導体記憶装置
図1は、第1実施形態に係る半導体記憶装置を含むメモリシステムの構成を示すブロック図である。メモリシステムSYSは、記憶装置である。メモリシステムSYSは、図示しない外部のホスト機器からの命令に応じて、データの書込み動作や読出し動作等を実行する。
図1に示すように、メモリシステムSYSは、半導体記憶装置1と、メモリコントローラ2とを備える。半導体記憶装置1は、記憶素子の選択にトランジスタを用いる記憶装置である。半導体記憶装置1は、例えば、キャパシタを使用してデータを記憶してもよいし、強磁性体を使用してデータを記憶してもよい。本明細書では、半導体記憶装置1がDRAM(Dynamic Random Access Memory)であり、半導体装置がトランジスタである場合を例に説明する。半導体記憶装置1は、メモリコントローラ2によって制御される。半導体記憶装置1は、メモリセルアレイ11、入出力回路12、制御回路13、電圧生成回路14、書込み回路15、読出し回路16、ロウ選択回路17、カラム選択回路18、及びセンスアンプ19を含む。
【0010】
メモリセルアレイ11は、複数のメモリセルMC、複数のワード線WL、複数のビット線BL、及びプレート線PLを含む。各メモリセルMCは、1ビットのデータを記憶する。各メモリセルMCは、1つのビット線BLとプレート線PLとの間に接続され、且つ1つのワード線WLと接続されている。ワード線WLは、行(ロウ)と関連付けられている。ビット線BLは列(カラム)と関連付けられている。1つの行の選択及び1つの列の選択により、1つのメモリセルMCが特定される。
【0011】
入出力回路12は、メモリコントローラ2から、制御信号CNT、コマンドCMD、アドレス信号ADD、及びデータDATを受け取る。入出力回路12は、メモリコントローラ2にデータDATを送信する。半導体記憶装置1にデータを書き込む場合、データDATは書込みデータである。半導体記憶装置1からデータを読み出す場合、データDATは読出しデータである。
【0012】
制御回路13は、入出力回路12から制御信号CNT及びコマンドCMDを受け取る。制御回路13は、制御信号CNTによって指示される制御及びコマンドCMDに基づいて、書込み回路15及び読出し回路16を制御する。
【0013】
電圧生成回路14は、制御回路13の制御に基づいて、異なる大きさの複数の電圧を生成する。電圧生成回路14は、生成した電圧を、メモリセルアレイ11、書込み回路15、読出し回路16、ロウ選択回路17、カラム選択回路18、及びセンスアンプ19に供給する。
【0014】
書込み回路15は、メモリセルMCへのデータの書込みのための処理及び制御を行う。書込み回路15は、入出力回路12から書込みデータDwを受け取る。書込みデータDwは、データ書込み対象のメモリセルMCに書き込まれるデータである。書込み回路15は、電圧生成回路14から、データ書込みにおいて使用される1又は複数の電圧を受け取る。書込み回路15は、制御回路13の制御及び書込みデータDwに基づいて、データ書込みに使用される1又は複数の電圧をカラム選択回路18に供給する。
【0015】
読出し回路16は、メモリセルMCからのデータの読出しのための処理及び制御を行う。読出し回路16は、電圧生成回路14から、データ読出しにおいて使用される1又は複数の電圧を受け取る。読出し回路16は、制御回路13の制御に基づいて、データ読み出しに使用される電圧を使用して、メモリセルMCに記憶されているデータを判定する。判定されたデータは、読出しデータDrとして、入出力回路12に供給される。
【0016】
ロウ選択回路17は、入出力回路12からアドレス信号ADDを受け取る。ロウ選択回路17は、電圧生成回路14から受け取った電圧をメモリセルアレイ11に供給することにより、受け取ったアドレス信号ADDにより特定される行と関連付けられた1つのワード線WLを選択された状態にする。
【0017】
カラム選択回路18は、入出力回路12からアドレス信号ADDを受け取る。カラム選択回路18は、電圧生成回路14から受け取った電圧をメモリセルアレイ11に供給することにより、受け取ったアドレス信号ADDにより特定される列と関連付けられたビット線BLを選択された状態にする。
【0018】
センスアンプ19は、電圧生成回路14から複数の電圧を受け取り、受け取った電圧を使用して動作する。センスアンプ19は、データ読出しの間、データ読出し対象のメモリセルMCに記憶されているデータの判定のために、ビット線BL上の電圧を増幅する。
【0019】
[1-1-2]メモリセル
次に、第1実施形態に係る半導体記憶装置のメモリセルの構成について、
図2を参照して説明する。
図2は、第1実施形態に係る半導体記憶装置のメモリセルの構成を示すための回路図である。
図2に示すように、各メモリセルMCは、セルキャパシタCCと、n型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるトランジスタCTを含む。セルキャパシタCCは、一方電極がプレート線PLと接続され、他方電極がトランジスタCTの一端と接続されている。セルキャパシタCCは、トランジスタCTと接続されるノードにおいて蓄積される電荷を使用して、データを記憶する。セルキャパシタCCのトランジスタCTと接続されるノードは、以下では、ストレージノードSNと称される場合がある。ストレージノードが電荷を蓄積しているか否かの状態が、メモリセルMCが“1”データを記憶している状態及び“0”データを記憶している状態に対応付けられる。以下では、例として、ストレージノードSNが電荷を蓄積している状態は、メモリセルMCが“1”データを記憶している状態として扱われ、ストレージノードSNが電荷を蓄積していない状態は、メモリセルMCが“0”データを記憶している状態として扱われる。トランジスタCTは、他端が1つのビット線BLと接続され、ゲートが1つのワード線WLと接続されている。
【0020】
[1-1-3]トランジスタ
次に、第1実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの構成について、
図3を参照して説明する。
【0021】
図3は、第1実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの構造を示す断面図である。
図3に示すように、トランジスタCTは、導電体21、22、及び23、絶縁体31及び33、並びに半導体32を含む。半導体32は、第1層32a、第2層32b、及び第3層32cを含む。
【0022】
導電体21は、トランジスタCTの一端または他端として機能する。導電体21は、図示しない基板の上方に設けられる。
【0023】
導電体22は、トランジスタCTの他端または一端として機能する。導電体22は、導電体21の上方に設けられる。
【0024】
導電体23は、トランジスタCTのゲート電極として機能する。導電体23は、導電体21の上方かつ導電体22の下方に設けられる。導電体21と導電体23との間、及び導電体22と導電体23との間には、それぞれ図示しない層間絶縁膜が設けられる。
【0025】
絶縁体33は、Z方向に延伸して設けられる。絶縁体33の上面は、導電体22に接している。絶縁体33の下面は、例えば、導電体21と導電体23との間に位置する。絶縁体33は、例えば酸化シリコン(SiO2)を含む。絶縁体33は、後述する絶縁体31よりも膜密度が低く、例えば酸素を透過させる。
【0026】
半導体32は、トランジスタCTのチャネルとして機能する。半導体32は、絶縁体33の側面と底面とに接し、導電体21と導電体22との間を電気的に接続するように構成される。詳細には、第3層32cは、絶縁体33の側面と底面とに接し、上面が導電体22と接している。第2層32bは、第3層32cの側面と底面とに接し、上面が導電体22と接している。第1層32aは、第2層32bの側面と底面とに接し、上面が導電体22と接し、底面が導電体21と接している。
【0027】
半導体32は、半導体の特性を有する金属酸化物を含む。半導体32は、金属酸化物以外の不純物を含んでいてもよい。半導体32は、例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、及び錫(Sn)から選択される少なくとも1つの元素と、酸素(O)を含む。半導体32は、より具体的には、例えば、In、Ga、Zn及びOを含んでもよいし、In、Al、Zn及びOを含んでもよい。本実施形態では、半導体32がIn、Ga、及びZnの酸化物を含む場合を例に説明する。
【0028】
絶縁体31は、トランジスタCTのゲート絶縁膜として機能する。絶縁体31は、半導体32の側面を覆っている。絶縁体31は、例えば酸化シリコンを含む。絶縁体31は、絶縁体33よりも膜密度が高く、例えば酸素を透過させない。
【0029】
図4は、第1実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの構造を示す断面図である。
図4は、
図3のIV-IV線の断面に対応している。トランジスタの中央に、絶縁体33が設けられる。絶縁体33の周囲を、半導体32が囲っている。詳細には、絶縁体33の周囲を、第3層32cが囲っている。第3層32cの周囲を、第2層32bが囲っている。第2層32bの周囲を、第1層32aが囲っている。半導体32の周囲を、絶縁体31が囲っている。絶縁体31の周囲を、導電体23が囲っている。
【0030】
以下では、半導体32について、XY平面において、絶縁体33が設けられる中央部分に近い位置を内側、第1層32aが設けられる外周部分に近い位置を外側と呼ぶ。例えば、第2層32bは、第1層32aよりも内側に位置している、と表現できる。例えば、第2層32bは、第3層32cよりも外側に位置している、と表現できる。
【0031】
なお、ゲート電極からの電界の強さは、ゲート電極からの距離に応じて低下する。よって、チャネルにかかる電界の強さは、外側ほど強く、内側ほど弱い。例えば、第3層32cにかかる電界の強さは、第2層32bにかかる電界の強さよりも弱く、かつ第1層32aにかかる電界の強さよりも弱い。第2層32bにかかる電界の強さは、第1層32aにかかる電界の強さよりも弱い。
【0032】
図5は、第1実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの性質を示すグラフである。
図5は、
図3のV-V線における性質に対応している。
図5では、半導体32に含まれる元素のうち、酸素との結合エネルギーが最も大きい金属元素の濃度と、酸素欠損Vo-の密度と、抵抗率ρとを示している。本明細書において、元素の濃度とは、質量パーセント濃度を示している。本実施形態に示す例では、半導体32に含まれる元素のうち、酸素との結合エネルギーが最も大きい金属元素はガリウムである。
図5に示すように、半導体32において、ガリウムの濃度は、XY平面において内側ほど高い。より詳細には、第3層32cのガリウムの濃度は、第2層32bのガリウムの濃度よりも高い。第2層32bのガリウムの濃度は、第1層32aのガリウムの濃度よりも高い。半導体32において、酸素欠損の密度は、XY平面において外側ほど高い。より詳細には、第1層32aの酸素欠損の密度は、第2層32bの酸素欠損の密度よりも高い。第2層32bの酸素欠損の密度は、第3層32cの酸素欠損の密度よりも高い。半導体32において、抵抗率は、XY平面において内側ほど高い。より詳細には、第3層32cの抵抗率は、第2層32bの抵抗率よりも高い。第2層32bの抵抗率は、第1層32aの抵抗率よりも高い。なお、元素の濃度は、TEM-EDX(Transmission Electron Microscope - Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて調べることができる。また、ガリウムの濃度の最も低い部分と最も高い部分との差は、例えば5%以上である。
【0033】
図6は、第1実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの性質を示すグラフである。
図6は、
図3のVI-VI線における性質に対応している。
図6に示すように、半導体32において、ガリウムの濃度、酸素欠損Vo-の密度、及び抵抗率ρのそれぞれは、Z方向において略均一である。
【0034】
[1-2]製造方法
図7は、第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図8~
図16のそれぞれは、第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。図示された断面構造は、
図3に対応する領域を示す。
図7に示すように、第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造工程では、S10~S18の処理が順に実行される。以下に、
図7を適宜参照して、製造工程の一例について説明する。
【0035】
まず、
図8に示すように、導電体21、絶縁体24、導電体23、及び絶縁体25が、この順に形成される(S10)。導電体21及び23の形成には、例えばスパッタリングが使用される。
【0036】
次に、
図9に示すように、ホールHLが形成される(S11)。ホールHLは、絶縁体31、半導体32、及び絶縁体33が設けられる空間に対応する。ホールHLは、例えばフォトリソグラフィと異方性エッチングとによって、絶縁体25の上面から導電体21の上面に達するように形成される。異方性エッチングとしては、例えばRIE(Reactive ion etching)が利用される。
【0037】
次に、
図10に示すように、絶縁体31が形成される(S12)。絶縁体31は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)によって、絶縁体25の上面と、ホールHLの内壁と、ホールHLの底面とのそれぞれに形成される。
【0038】
次に、
図11に示すように、絶縁体31が加工される(S13)。具体的には、例えばRIE等の異方性エッチングによって、絶縁体25上に形成された絶縁体31と、ホールHLの底面に形成された絶縁体31とが除去される。
【0039】
次に、
図12に示すように、半導体32が形成される(S14)。具体的には、第1層32aが、例えばALD(Atomic Layer Deposition)によって、絶縁体25の上面と、絶縁体31の上面及び側壁と、導電体21の上面とのそれぞれに形成される。さらに、第1層32aの上面及び側壁に第2層32bが形成され、第2層32bの上面及び側壁に第3層32cが形成される。なお、第2層32bは、第1層32aよりもガリウムの濃度が高くなるように形成される。第3層32cは、第2層32bよりもガリウムの濃度が高くなるように形成される。
【0040】
次に、
図13に示すように、絶縁体33が形成される(S15)。具体的には、第3層32cの上面及び側壁に絶縁体33が設けられ、ホールHLが埋められる。
【0041】
次に、
図14に示すように、平坦化処理が実行される(S16)。具体的には、CMP(Chemical Mechanical Polishing)によって、絶縁体25が形成された層よりも上層に形成された第1層32a、第2層32b、及び第3層32cと、絶縁体33とが除去される。
【0042】
次に、
図15に示すように、アニール処理が実行される(S17)。具体的には、酸素を含む雰囲気においてアニール処理が実行され、半導体32に酸素が取り込まれる。酸素は、第1層32a、第2層32b、及び第3層32cの上面から取り込まれる。また、酸素は、絶縁体33を介して第3層32cの側壁から取り込まれる。
図15の矢印40は、酸素の流れを示している。
【0043】
そして、
図16に示すように、導電体22が形成される(S18)。これにより、
図3を参照して説明した第1実施形態に係るトランジスタの構造が形成される。
【0044】
なお、S17に示したアニール処理は、S16の処理が完了した後であれば、任意のタイミングで実行しても良い。
【0045】
[1-3]効果
第1実施形態によれば、トランジスタの性能を向上させることができる。
【0046】
酸化物半導体においてキャリアとして振る舞う酸素欠損は、例えばアニール処理によってその量が制御される。アニール処理を実行する際に、酸化物半導体に酸素が供給される経路が限られていた場合、酸素欠損の分布に偏りが生じ得る。縦型のトランジスタにおいて、縦方向の酸素欠損の分布に偏りが生じた場合、酸素欠損の少ない部分で抵抗率が上昇するため、トランジスタがオンした際の電流供給能力が低下し得る。
【0047】
実施形態に係るトランジスタは、絶縁体33を備える。絶縁体33は、アニール処理において酸素の通り道となり、半導体32全体に酸素が供給される。これにより、半導体32の縦方向の酸素欠損の分布が略均一になり、トランジスタの電流供給能力を向上させることができる。
【0048】
また、ゲート電極からの電界の強さは、ゲート電極からの距離に応じて低下する。縦型のトランジスタにおいて、チャネルの内側部分にかかる電界は、チャネルの外周部分にかかる電界よりも弱くなる。トランジスタをオフさせる際に、チャネルの内側部分にかかる電界が弱いため、チャネルの内側部分が十分にオフ状態にならないと、トランジスタの電流遮断能力が劣化し得る。
【0049】
実施形態に係るトランジスタの半導体32は、XY平面において内側ほど、半導体32に含まれる金属元素のうち、酸素との結合エネルギーが最も大きい金属元素、例えばガリウムの濃度が高い。酸素との結合エネルギーが最も大きい金属元素の濃度が高いと、アニールにおいて酸素欠損がより多く埋められ、抵抗率が高くなる。すなわち、実施形態に係るトランジスタは、内側ほど抵抗率が高くなるように設けられた半導体32を含む。これにより、チャネルにおいてゲートからの電界が弱い内側ほど抵抗率が高くなるため、トランジスタをオフ状態にした際のリーク電流が抑制され、トランジスタの電流遮断能力を向上させることができる。
【0050】
なお、半導体32が、第1層32a、第2層32b、及び第3層32cを含む場合について説明したが、これに限られない。半導体32には、2層以上の半導体層が含まれていれば良い。
【0051】
[1-4]第1実施形態の変形例
第1実施形態では、絶縁体33が設けられる場合を例に説明した。絶縁体33の形成は省略されても良い。具体的には、
図7及び
図13を参照して説明したS15の処理は省略されても良い。
図17は、第1実施形態の変形例に係るトランジスタの構造を示す断面図である。第1実施形態の変形例は、第1実施形態に対して、S15の処理が省略された点が異なる。
図17に示すように、第1実施形態の変形例に係るトランジスタは、エアギャップ(空隙)を有している。第1実施形態の変形例に係るトランジスタでは、第1実施形態において絶縁体33が設けられていた空間がエアギャップVOとなっている。このように構成しても、エアギャップVOが第1実施形態における絶縁体33と同様に酸素の通り道として機能するため、第1実施形態と同様にトランジスタの性能を向上させることができる。
【0052】
また、第1実施形態では、絶縁体33の下端が、導電体21が設けられる層と導電体23が設けられる層との間に位置する場合を例に説明した。絶縁体33の下端は、導電体23の設けられる層に位置しても良いし、導電体23が設けられる層と導電体22が設けられる層との間に位置しても良い。
【0053】
半導体記憶装置の製造工程において、例えば半導体32形成後の工程(以降、後工程と呼ぶ)を実行すると、後工程で生じた熱によって酸素が半導体32内から外部に放出され、半導体32内において酸素欠損が増加する。この酸素欠損の増加は、絶縁体33の下端が上部にあるほど、半導体32の上部に偏って生じる。つまり、絶縁体33の下端の位置を調整することで、半導体32の上部と下部の抵抗率の差を小さくすることができる。
【0054】
例えば、半導体32と導電体22との接触面積が、半導体32と導電体21との接触面積よりも狭い場合、トランジスタの上部と下部で接触抵抗の差を小さくするためには、半導体32の上部の抵抗率を低下させることが考えられる。それを実現する手段として、絶縁体33の下端の位置を調整することは有効である。
【0055】
[2]第2実施形態
第2実施形態に係る半導体記憶装置は、第1実施形態に係る半導体記憶装置に対して、半導体32及び絶縁体33の形状が異なる。以下に、第2実施形態に係る半導体記憶装置について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0056】
[2-1]構成
[2-1-1]トランジスタ
図18は、第2実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの構造を示す断面図である。第2実施形態に係るトランジスタは、第1実施形態に係るトランジスタに対して、絶縁体33の下端が半導体32を貫通し、導電体21に接している点が異なる。
【0057】
絶縁体33は、Z方向に延伸して設けられる。絶縁体33の上面は、導電体22に接している。絶縁体33の下面は、導電体21に接している。絶縁体33は、例えば酸化シリコンを含む。絶縁体33は、絶縁体31と比べて膜密度が低く、例えば酸素を透過させる。
【0058】
半導体32は、トランジスタCTのチャネルとして機能する。半導体32は、絶縁体33の側面に接し、導電体21と導電体22とのそれぞれと電気的に接続されている。詳細には、第3層は、絶縁体33の側面の一部に接し、上面が導電体22と接している。第2層32bは、第3層32cの側面及び底面と、絶縁体33の側面の一部とに接し、上面が導電体22と接している。第1層32aは、第2層32bの側面及び底面と、絶縁体33の側面の一部とに接し、上面が導電体22と接し、底面が導電体21と接している。
【0059】
第2実施形態に係る半導体記憶装置のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0060】
[2-2]製造方法
図19は、第2実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図20は、第2実施形態に係る半導体記憶装置の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。図示された断面構造は、
図18に対応する領域を示す。
図19に示すように、第2実施形態に係る半導体記憶装置の製造工程では、S10~S14、S20、S15~S18の処理が順に実行される。以下に、
図19を適宜参照して、製造工程の一例について説明する。
【0061】
S10からS14までは、第1実施形態に係るトランジスタと同様である。
【0062】
次に、
図20に示すように、ホールHL2が加工される(S20)。具体的には、例えばRIE等の異方性エッチングによって、第3層32c、第2層32b、及び第1層32aそれぞれの一部が除去される。その結果、底部で導電体21が露出したホールHL2が形成される。
【0063】
S15からS18までは、第1実施形態に係るトランジスタと同様である。これにより、
図18を参照して説明した第2実施形態に係るトランジスタの構造が形成される。
【0064】
[2-3]効果
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、トランジスタの性能を向上させることができる。
【0065】
第2実施形態では、絶縁体33の下端が導電体21に接している。これにより、アニール処理において、半導体32のより下部にまで酸素を取り込ませることができる。よって、第1実施形態と同様に、半導体32の縦方向の酸素欠損の分布が略均一になり、トランジスタの電流供給能力を向上させることができる。
【0066】
[3]第3実施形態
第3実施形態に係る半導体記憶装置は、第1実施形態に係る半導体記憶装置に対して、半導体32の構成が異なる。以下に、第3実施形態に係る半導体記憶装置について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0067】
[3-1]構成
[3-1-1]トランジスタ
図21は、第3実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの構造を示す断面図である。第3実施形態に係るトランジスタは、第1実施形態に係るトランジスタに対して、半導体32が含む層が異なる。第3実施形態に係るトランジスタにおいて、半導体32は、第1層32aが第1層32dに、第2層32bが第2層32eに、第3層32cが第3層32fに、それぞれ変更されている。第1層32d、第2層32e、及び第3層32fは、酸化物半導体に、酸素との結合エネルギーが酸化物半導体を構成する金属元素よりも大きい元素、例えばカーボン(C)、ハフニウム(Hf)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)等がドープされた構成を有する。第3実施形態では、半導体32について、In、Ga、及びZnの酸化物を含む半導体に、Cがドープされた場合を例に説明する。
【0068】
図22は、第3実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの性質を示すグラフである。
図22は、
図21のXXII-XXII線における性質に対応している。
図22では、酸化物半導体に添加された元素のうち、酸素との結合エネルギーが最も大きい元素の濃度と、酸素欠損Vo-の密度と、抵抗率ρとを示している。第3実施形態に示す例では、酸化物半導体に添加された元素のうち、酸素との結合エネルギーが最も大きい元素はカーボンである。
図22に示すように、半導体32において、カーボンの濃度は、XY平面において内側ほど高い。より詳細には、第3層32fのカーボンの濃度は、第2層32eのカーボンの濃度よりも高い。第2層32eのカーボンの濃度は、第1層32dのカーボンの濃度よりも高い。半導体32において、酸素欠損の密度は、XY平面において外側ほど高い。より詳細には、第1層32dの酸素欠損の密度は、第2層32eの酸素欠損の密度よりも高い。第2層32eの酸素欠損の密度は、第3層32fの酸素欠損の密度よりも高い。半導体32において、抵抗率は、XY平面において内側ほど高い。より詳細には、第3層32fの抵抗率は、第2層32eの抵抗率よりも高い。第2層32eの抵抗率は、第1層32dの抵抗率よりも高い。
【0069】
図23は、第3実施形態に係る半導体記憶装置のトランジスタの性質を示すグラフである。
図23は、
図21のXXIII-XXIII線における性質に対応している。
図23に示すように、半導体32において、カーボンの濃度、酸素欠損Vo-の密度、及び抵抗率ρのそれぞれは、Z方向において略均一である。
【0070】
第3実施形態に係る半導体記憶装置のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0071】
[3-2]製造方法
図24は、第3実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図25は、第3実施形態に係る半導体記憶装置の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。図示された断面構造は、
図21に対応する領域を示す。
図24に示すように、第3実施形態に係る半導体記憶装置の製造工程では、S10~S13、S30~S32、S15~S18の処理が順に実行される。以下に、
図24を適宜参照して、製造工程の一例について説明する。
【0072】
S10からS13までは、第1実施形態に係るトランジスタと同様である。
【0073】
次に、第1層32dが形成される(S30)。具体的には、酸化物半導体層50aを、絶縁体25の上面と、絶縁体31の上面及び側壁と、導電体21の上面とに形成する。そして、
図25に示すように、形成された酸化物半導体層50aにカーボンをイオン注入することで、第1層32dが形成される。
図25の矢印60は、カーボンのイオン注入を示している。
【0074】
次に、第2層32eが形成される(S31)。具体的には、酸化物半導体層50bを、第1層32dの上面及び側壁に形成する。そして、形成された酸化物半導体層50bに、第1層32dよりもカーボンの濃度が高くなるように、カーボンをイオン注入することで、第2層32eが形成される。
【0075】
次に、第3層32fが形成される(S32)。具体的には、酸化物半導体層50cを、第2層32eの上面及び側壁に形成する。そして、形成された酸化物半導体層50cに、第2層32eよりもカーボンの濃度が高くなるように、カーボンをイオン注入することで、第3層32fが形成される。
【0076】
S15からS18までは、第1実施形態に係るトランジスタと同様である。これにより、
図21を参照して説明した第3実施形態に係るトランジスタの構造が形成される。
【0077】
[3-3]効果
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、トランジスタの性能を向上させることができる。
【0078】
第3実施形態では、酸化物半導体にドープされたカーボンの濃度が、XY平面において内側ほど高くなるように設けられている。すなわち、第3実施形態に係るトランジスタは、内側ほど抵抗率が高くなるように設けられた半導体32を含む。これにより、第3実施形態に係るトランジスタは、第1実施形態に係るトランジスタと同様に、トランジスタの電流遮断能力を向上させることができる。
【0079】
なお、半導体32が、第1層32d、第2層32e、及び第3層32fを含む場合について説明したが、これに限られない。半導体32には、2層以上の半導体層が含まれていれば良い。
【0080】
[4]その他
本明細書において“接続”は、電気的に接続されている事を示し、例えば間に別の素子を介することを除外しない。また、“電気的に接続される”は、電気的に接続されたものと同様に動作することが可能であれば、絶縁体を介していても良い。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1…半導体記憶装置、2…メモリコントローラ、11…メモリセルアレイ、12…入出力回路、13…制御回路、14…電圧生成回路、15…書込み回路、16…読出し回路、17…ロウ選択回路、18…カラム選択回路、19…センスアンプ、21~23…導電体、24,25,31…絶縁体、32…半導体、32a,32d…第1層、32b,32e…第2層、32c,32f…第3層、33…絶縁体、40…矢印、50a,50b,50c…酸化物半導体層、60…矢印、BL…ビット線、CC…セルキャパシタ、CT…トランジスタ、MC…メモリセル、PL…プレート線、SYS…メモリシステム、WL…ワード線、VO…エアギャップ。