(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180922
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】紫外線発光素子
(51)【国際特許分類】
H01L 33/10 20100101AFI20231214BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L33/10
H01L33/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094606
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恒輔
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA11
5F241CA05
5F241CA13
5F241CA40
5F241CA65
5F241CB11
5F241CB15
5F241FF16
(57)【要約】
【課題】発光を有効活用し、各種成分をより高精度に検出することの可能な紫外線発光素子を提供する。
【解決手段】基板2と、基板2の上にある反射層4と、反射層4の上にある発光層3と、を備え、基板2側から光を取り出す紫外線発光素子1であって、反射層4は、発光層3から放射される光のピーク波長の光を透過し、ピーク波長よりも長波長又は短波長の光のうちの少なくとも一部を反射する。反射層4で反射された長波長又は短波長の光を発光層3が吸収し発光層3は、吸収した短波長も用いてピーク波長を含む光を放射する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
当該基板の上にある反射層と、
当該反射層の上にある発光層と、を備え、
前記基板側から光を取り出す紫外線発光素子であって、
前記反射層は、前記発光層から放射される光のピーク波長の光を透過し、前記ピーク波長よりも長波長の光のうちの少なくとも一部を反射する
紫外線発光素子。
【請求項2】
当該紫外線発光素子から放射された光の発光スペクトルにおいて、
前記ピーク波長以上の波長の範囲の発光出力の積分値が、前記ピーク波長未満の波長の範囲の発光出力の積分値よりも小さい
請求項1に記載の紫外線発光素子。
【請求項3】
前記発光層は、前記反射層で反射された光を吸収し、該吸収した光も用いて前記ピーク波長を含む光を放射する
請求項1または請求項2に記載の紫外線発光素子。
【請求項4】
前記反射層はAlxGa1-xN/AlyGa1-yN(x<y)からなり、前記発光層はAlzGa1-zN(z<x)からなる請求項1または請求項2に記載の紫外線発光素子。
【請求項5】
前記反射層は、前記ピーク波長の光よりも短波長の光の少なくとも一部も反射し、
前記発光層は、前記反射層で反射された前記短波長の光も吸収する請求項1または請求項2に記載の紫外線発光素子。
【請求項6】
前記発光層は、前記短波長の光を吸収し、前記反射層を少なくとも部分的に透過する蛍光を発する請求項5に記載の紫外線発光素子。
【請求項7】
波長220nm以上235nm以下のピーク発光波長を有する
請求項1または請求項2に記載の紫外線発光素子。
【請求項8】
前記発光層が放射する光の半値幅が10nm以上である
請求項1または請求項2に記載の紫外線発光素子。
【請求項9】
前記基板から取り出される光の半値幅が、10nm未満である
請求項1または請求項2に記載の紫外線発光素子。
【請求項10】
前記基板の光を取り出す面に、凸構造及び凹構造のうちの少なくともいずれか一方の構造を有する
請求項1または請求項2に記載の紫外線発光素子。
【請求項11】
前記凸構造は、六角錐又は六角錐台形状である
請求項10に記載の紫外線発光素子。
【請求項12】
基板と、
前記基板の上にある発光層と、を備え、
前記基板側からピーク波長が220nm以上235nm以下の光を取り出す紫外線発光素子であって、
前記基板側から取り出された光の発光スペクトルにおいて、前記ピーク波長よりも長波長の範囲の前記発光スペクトルの積分値が、前記ピーク波長以下の範囲の前記発光スペクトルの積分値よりも小さい
紫外線発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紫外線発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線発光素子は波長に応じて様々な用途に用いられ、例えば、硝酸や亜硝酸、および硝酸イオンや亜硝酸イオン、また、塩素イオンの計測機器の光源として用いられている(例えば、特許文献1参照)。これらの検出を選択的にかつ高精度に検出するには、用いる紫外線光源のうち、検出に最も有効な波長の発光を選択的に高出力化し、有効では無い波長の発光を低出力化することが求められる。有効な波長の発光を選択的に高出力化する技術として、紫外線光源として紫外線LED(発光ダイオード)を用い、発光のピーク強度を高めるために反射層をダイオードのn型およびp型クラッド層に配置することで、フォトンリサイクリングにより光を増幅する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-121556号公報
【特許文献2】特開2002-33509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の構造では、有効では無い波長の発光を低出力化することが出来ない。さらにフォトンリサイクリングの観点から考えると、発光のピーク波長からずれた波長での発光のフォトンリサイクリングが不十分であり、光の有効活用という点から改善の余地がある。
上述した課題を解決するために、本開示は発光を有効活用し、且つ、硝酸や亜硝酸、および硝酸イオンや亜硝酸イオン、また、塩素イオン等といった各種成分をより高精度に検出することの可能な紫外線発光素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る紫外線発光素子は、基板と、当該基板の上にある反射層と、当該反射層の上にある発光層と、を備え、前記基板側から光を取り出す紫外線発光素子であって、前記反射層は、前記発光層から放射される光のピーク波長の光を透過し、前記ピーク波長よりも長波長の光のうちの少なくとも一部を反射することを特徴としている。
【0006】
また、本発明の他の実施形態に係る紫外線発光素子は、基板と、前記基板の上にある発光層と、を備え、前記基板側からピーク波長が220nm以上235nm以下の光を取り出す紫外線発光素子であって、前記基板側から取り出された光の発光スペクトルにおいて、前記ピーク波長よりも長波長の範囲の前記発光スペクトルの積分値が、前記ピーク波長以下の範囲の前記発光スペクトルの積分値よりも小さいことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、発光を有効活用し、且つ各種成分を高精度に検出することの可能な紫外線発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る紫外線発光素子の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】反射層の垂直入射における波長に対する透過率の一例を示すグラフである。
【
図3】反射層の量子井戸構造の周期を変化させた場合の、波長に対する透過率の一例を示すグラフである。
【
図4】反射層の量子井戸構造の膜厚tを変化させた場合の、垂直入射の透過率の計算結果の一例を示すグラフである。
【
図5】反射層の有無における、フォトンリサイクリングによるピーク波長の発光出力の向上が無いと仮定した場合の発光スペクトルを比較した一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、様々な変更を加えることができる。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
以下、本開示の実施形態に係る紫外線発光素子(LED)1について、
図1を参照して説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る紫外線発光素子1の一構成例を模式的に示す断面図である。
紫外線発光素子1は、基板2と、基板2の一方の面である第1主面2a上に配置された発光層3と、基板2と発光層3との間に配置された反射層4とを有し、基板2の第1主面2aとは逆側の第2主面2bが光取り出し面となっている。反射層4は発光層3からの発光のピーク波長の光を透過し、ピーク波長よりも長波長の発光を反射する。発光層3は反射層4で反射された長波長の発光を吸収する。
【0011】
さらに紫外線発光素子1は、発光層3を上下から挟む第1導電型半導体層6と、第1導電型半導体層6とは極性の異なる第2導電型半導体層7とを含む。さらに紫外線発光素子1は、第1導電型半導体層6に接する第1導電型電極8と、第2導電型半導体層7に接する第2導電型電極9とを含む。紫外線発光素子1は、樹脂等で封止された形態や、サブマウント基板に実装された形態なども含む。
【0012】
以下、各層について詳細に説明する。
<基板2>
基板2は、第1主面2a上に発光層3を含む積層薄膜10を配置可能に形成されていればよく、形状は特に制限されない。発光層3は、基板2の、発光層3とは反対側の第2主面2bの方向に光を放射する。
紫外線域の発光材料であるAlGaN積層薄膜を発光層3として配置する観点から、基板2はサファイア基板又は窒化アルミニウム基板であることが好ましい。窒化アルミニウム基板は単結晶の窒化アルミニウム基板であることが好ましい。
【0013】
基板2の第1主面2a以外が外界に露出している場合、基板2がサファイア基板であると、紫外線発光素子1の発熱により基板2が外界の水等と反応して基板2の表面に水酸化膜が形成される場合がある。また、基板2が窒化アルミニウム基板であると、紫外線発光素子1の発熱により基板2が外界の酸素と反応して酸化膜が形成される場合がある。これらの膜(水酸化膜又は酸化膜)は、発光スペクトルの中心波長を含む光を減衰させたり、反射させたりして、所望の波長の光の発光効率を低減、すなわち出力を低下させてしまう。
【0014】
また、これらの膜は、形成時に外界の二酸化炭素若しくは基板2中に不純物として混入している炭素、又は紫外線発光素子(LED)1のパッケージで使用されている樹脂由来の炭素を含むことがある。これにより、各膜のバンドギャップエネルギーが発光エネルギーよりも大きいとしても、不純物由来の吸収が起こり、光の減衰が起こる。また、基板2の表面に、基板2とは屈折率の異なる層が形成されると、基板2との界面で反射が起こる。特に、例えば窒化アルミニウム基板と酸化アルミニウム層のように、基板2よりも低屈折率の材料からなる層が形成されると、より強い反射が起こり外界に光が取り出せなくなる。これらを防止する観点から、基板2の表面、つまり基板2の第1主面2a及び第2主面2bの露出している部分に保護膜を配置しても良い。保護膜の材料としては二酸化ケイ素や窒化ケイ素を用いても良く、これに限らない。
【0015】
基板2の転位密度は、107cm-2未満であることが好ましく、特に105cm-2未満であればより好ましい。積層薄膜10の転位密度低減の観点から、基板2の第1主面2a側の二乗平均平方根(RMS:Root Mean Square)高さ(二乗平均平方根高さRq)は、10μm×10μmの面積に対して約1nm未満であることが好ましい。また、積層薄膜10の表面を平坦かつ均一に形成するために、基板2の第2主面2b側の二乗平均平方根(RMS)高さ(二乗平均平方根高さRq)は、10μm×10μmの面積に対して約10nm未満であることが好ましい。
【0016】
<積層薄膜10>
積層薄膜10は、発光層3を含み、基板2の第1主面2a上に配置されていれば特に制限されない。
積層薄膜10は、発光効率向上の観点から、発光層3を挟むように第1導電型半導体層6と第2導電型半導体層7とを更に備えることが好ましい場合がある。ここで、「第1導電型」及び「第2導電型」は、互いに異なる導電性を示す半導体であることを意味し、一方がn型導電性の場合、他方はp型導電性となる。一般的には発光層3と基板2との間がn型半導体層となるように形成されるが、本実施形態はこれに制限されない。
【0017】
積層薄膜10には、発光層3と基板2との間に反射層4を含む。反射層4は発光層3から放射される発光のピーク波長の光を透過し、ピーク波長よりも長波長の発光を反射する。発光層3は反射層4で反射された長波長の発光を吸収する。これにより、発光層3から放射される発光のうち、ピーク波長よりも長波長の発光がフォトンリサイクリングにより発光層3において再利用されて、発光のピーク波長の光を高出力化できると同時に、ピーク波長よりも長波長の発光を低出力化させることが出来る。
【0018】
第1導電型半導体層6、発光層3及び第2導電型半導体層7以外の層としては、例えば、発光層3と、第1導電型半導体層6及び第2導電型半導体層7の少なくとも一方との間に、電子又は正孔をブロックする層が備えられていてもよい。
また、積層薄膜10の結晶性向上の観点から、積層薄膜10の基板2と接する側の面にバッファ層を更に備えることが好ましい場合がある。
また、発光層3に効率的に電力を供給する観点から、第1導電型半導体層6と接する第1導電型電極8と、第2導電型半導体層7と接する第2導電型電極9とを備えていても良い。
【0019】
また、積層薄膜10は、一部に発光層3を含んだ凸形状部を有するメサ構造であってもよい。
積層薄膜10は、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長)法により形成することが可能である。メサ構造を有する積層薄膜10は、上述したMOCVD法等により、積層薄膜10と同一構成の薄膜層を形成した後に、所望の領域をエッチングすることで形成することができる。
【0020】
(発光層3)
発光層3は、発光層3に電力が印加された時に発光層3のバンドギャップに応じた光を発する。本実施形態の紫外線発光素子1における発光層3は、発光スペクトルのピーク波長が紫外線域であれば特に制限されないが、好ましくはピーク波長が硝酸等を検出する光源として有効な200nm以上280nm以下の範囲内であり、より好ましくはピーク波長が硝酸等を高精度に検出する光源として有効な波長220nm以上235nm以下の範囲内であり、さらに好ましくはピーク波長が硝酸等を高精度に検出する光源として有効な225nm以上235nm以下の範囲内である。ここで、発光スペクトルが複数のピークを有する場合、発光強度が最も大きいピークの波長が光の中心波長として定義される。
【0021】
発光層3の具体的構造の一例としては、量子井戸構造が挙げられる。発光層3の構造として、例えば、組成比が異なる(バンドギャップが異なる)AlGaN層を積層した量子井戸構造が採用可能である。より好ましくは組成比が異なる(バンドギャップが異なる)AlGaN層を多層積層した多重量子井戸が発光層3の構造として採用可能である。より具体的な構造としては、組成がAl0.87Ga0.13Nの井戸層(厚さ1nm)3層と、組成がAl0.97Ga0.03Nの障壁層(厚さ5nm)2層を交互に積層した3重量子井戸構造が挙げられる。
【0022】
発光層3は、反射層4で反射された、発光のピーク波長の光よりも長波長の光を吸収し、キャリア分離と再結合を行うことで再度ピーク波長を含む発光を行う。この観点から、発光層3の材料としては、高いフォトンリサイクリング効率を有するAlGaNが好ましい。なお、実際の紫外線発光素子(LED)は量子井戸のAlGaN材料のバンドギャップよりも小さい、長波長側の光を放射することが多々ある。その理由は、発光層3内の不純物や欠陥によることもあり、あるいは量子井戸では無い層(例えば第1あるいは第2導電型半導体層6、7)からの発光が得られることがあるからである。紫外線発光素子(LED)の中でも波長が220nm以上235nm以下の比較的短波長域で発光する紫外線発光素子(LED)においては、特にこの量子井戸層では無い層からの発光(特に、長波長側の発光)が顕著に観測されるため、本実施形態におけるフォトンリサイクリングの効果が極めて高い。この長波長側の発光を吸収して電荷分離して生成したキャリア(電子と正孔)は、電圧が印加されている紫外線発光素子(LED)ではキャリア輸送されて、発光層3でキャリア再結合し、吸収した光の波長よりも短い波長の光を放射する。
【0023】
また、量子井戸層のAlGaNは上記理由を一つの理由として、あるいはバンド端近傍の波長域では吸収率の裾を有するために、バンドギャップよりも小さなエネルギーの光を吸収することが多々ある。そのため、発光層3は、反射層4で反射されたピーク波長よりも長波長側の発光を吸収することが出来る。
【0024】
また、上記実施形態では、反射層4が長波長の光を反射する構成としているが、長波長の光だけでなく、反射層4が、さらに短波長の光も反射する構成であってもよい。つまり、発光層3は、反射層4で反射された、発光のピーク波長の光よりも長波長の光だけでなく、発光のピーク波長の光よりも短波長の発光も吸収し、キャリア分離と再結合を行うことで再度ピーク波長を含む発光を行っても良い。発光のピーク波長の光よりも短波長の発光も吸収し、キャリア分離と再結合とを行う観点から、高いフォトンリサイクリング効率を有するAlGaNが反射層4の材料として好ましい。
【0025】
なお、実際の紫外線発光素子(LED)は量子井戸のAlGaN材料のバンドギャップよりも大きい、短波長側の光を放射することが多々ある。ピーク波長よりも短波長の発光も再利用することで、本発明におけるフォトンリサイクリングの効果が極めて高くなる。
また、反射層4が短波長の光を反射する構成の場合、発光層3は反射層4で反射された短波長の光を吸収して、反射層4を少なくとも部分的に透過する蛍光を発する蛍光体を有していても良い。この場合、発光層3に適切なピーク波長の発光を発するために、種々不純物を添加する手法が効果的である。
【0026】
また、短波長の発光を吸収して、反射層4を少なくとも部分的に透過する蛍光を発する蛍光体を発光層3以外の箇所に有していても良い。具体的には、蛍光体を、基板2や、第1あるいは第2導電型半導体層6、7に有していても良い。この場合、蛍光体は層状であっても、分散体であっても良い。蛍光体が基板2に含まれる場合、短波長の発光は基板2で吸収されて、発光層3からのピーク波長を含む発光へと変換される。変換された光はそのまま外部へ放射されてフォトンリサイクリングには寄与しないが、フォトンリサイクリングの効果が働きピーク波長が急峻となった発光をより急峻にして外部へ取り出す効果がある。
フォトンリサイクリングの効果は、特に発光層3から、発光の半値幅が10nm以上となる光を発する場合に効果が高い。これは、半値幅が広い紫外線発光素子(LED)では、ピーク波長より長波長側、あるいは短波長側の相対発光出力がメインピークよりも高くなるため、フォトンリサイクリングによる高出力化が有効になるからである。
【0027】
(第1導電型半導体層6)
第1導電型半導体層6の材料としては、AlN、GaN、InNの単結晶及び混晶が挙げられ、またこれらの組み合わせ(多層)であっても良い。基板2が窒化アルミニウム基板の場合、格子定数の差が小さいAl/(Al+Ga)比率が0.8以上のAlGaNが第1導電型半導体層6として好ましい場合がある。
図1に示すように、第1導電型半導体層6は、第1導電型半導体層6の一部が除去されることにより形成された第1積層領域6aと、第1導電型半導体層6の第1積層領域6aを除く領域に位置してメサ構造を構成する第2積層領域6bとを有している。
【0028】
第1導電型半導体層6を構成する第1導電型半導体がn型半導体である場合、第1導電型半導体層6として、例えばSiが1×1019cm-3の濃度でドープされたAlGaNを用いることができる。また、第1導電型半導体層として、極性を有する混晶半導体の混晶組成比率を連続的に変化させる分極ドーピング法によりn型化したAlGaNを用いても良い。
第1導電型半導体層6を構成する第1導電型半導体層がp型半導体である場合、第1導電型半導体層として例えばMgが3×1019cm-3の濃度でドープされたAlGaNを用いることができる。また、第1導電型半導体層として、極性を有する混晶半導体の混晶組成比率を連続的に変化させる分極ドーピング法によりp型化したAlGaNを用いても良い。230nm未満のピーク波長を有する光を発光する発光層3の活性層に効率良くキャリアを輸送する観点から、第1導電型半導体層としてAl/(Al+Ga)比率が0.8以上のAlGaNを用いることが好ましい。
【0029】
(第2導電型半導体層7)
第2導電型半導体層7の材料としては、AlN、GaN、InNの単結晶及び混晶が挙げられ、これらの組み合わせ(多層)であっても良い。
第2導電型半導体層7を構成する第2導電型半導体層がn型半導体である場合、第2導電型半導体層として例えばSiが1×1019cm-3の濃度でドープされたAlGaNを用いることができる。また、第2導電型半導体層として、極性を有する混晶半導体の混晶組成比率を連続的に変化させる分極ドーピング法によりn型化したAlGaNを用いても良い。
【0030】
第2導電型半導体層7を構成する第2導電型半導体層がp型半導体である場合、第2導電型半導体層として例えばMgが3×1019cm-3の濃度でドープされたAlGaNを用いることができる。第2導電型半導体層がp型半導体である場合、第2導電型電極9とのコンタクト抵抗を下げる観点から、第2導電型半導体層7はAl/(Al+Ga)比率が基板2から離れる方向に連続的又は段階的に小さくなるAlGaN傾斜組成を有していても良い。また、発光効率を低減させる電子やホールの動きを抑制する観点から、第2導電型半導体層7の発光層3側にバンドギャップの大きいバリア層を有していても良い。また、第2導電型電極9との接触抵抗を低減する観点から、第2導電型半導体層7の第2導電型電極9側に不純物が多量にドーピングされたコンタクト層(不図示)を有していても良い。
【0031】
<第1導電型電極8、第2導電型電極9>
第1、第2導電型電極8、9は、接触する第1、第2導電型半導体層6、7とオーミック接続となる材料で形成されることが好ましい。
n型半導体層(例えば、第1導電型半導体層6)と接する電極(例えば、第1導電型電極8)を構成する材料としては、Ti、Al、Ni、Au、Cr、V、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W若しくはその合金、又はITO等が挙げられ、アルミニウムとニッケルとを含む材料がコンタクト抵抗低減の観点からより好ましい。
【0032】
p型半導体層(例えば、第2導電型半導体層7)と接する電極(例えば、第2導電型電極9)を構成する材料としては、例えばNi、Au、Pt、Ag、Rh、Pd、Pt、Cu及びその合金、又はITO等が挙げられる。p型半導体層が窒化物半導体層の場合、窒化物半導体層とのコンタクト抵抗が小さいNi、Au若しくはこれらの合金、又はITOが好ましい。
第1導電型電極8及び第2導電型電極9は接続のために、例えばAu、Al、Cu、Ag、W等の金属層を連続して形成しても良く、導電性の高いAuが用いられることが望ましい場合がある。また、密着性向上のため、積層薄膜10との界面にTiをさらに含んでいても良い。
【0033】
<反射層4>
本実施形態に係る紫外線発光素子1は、基板2と発光層3との間に反射層4が備えられている。前述のように、反射層4は発光層3から放射される発光のピーク波長の光を透過し、ピーク波長よりも長波長の発光を反射する。
反射層4としては、AlN、GaN、InNの単結晶及び混晶が挙げられ、またこれらの組み合わせ(多層)であっても良い。基板2が窒化アルミニウム基板の場合、格子定数の差が小さいAl/(Al+Ga)比率が0.8以上のAlGaNが反射層として好ましい場合がある。これは同時に、上層に形成する第1導電型半導体層6としてのAlGaN積層膜に対しても格子整合しやすく、高品質な薄膜成長を実現できるために好ましい。
【0034】
反射層4は、メサ内、すなわち、平面視で発光層3を含む凸形状部と重なる領域にのみ配置されていてもよく、メサ外、すなわち、平面視で凸形状部と重なる領域だけでなく凸形状部と重ならない領域にまで配置されていても良い。
反射層4は導電性を有していても、有していなくても良い。反射層4が導電性を有する場合、反射層4がn型半導体層で構成される場合は、例えばSiが1×1019cm-3の濃度でドープされたAlGaNを用いることができる。また、反射層4として、極性を有する混晶半導体の混晶組成比率を連続的に変化させる分極ドーピング法によりn型化したAlGaNを用いても良い。
反射層4がp型半導体層で構成される場合、反射層4として、例えばMgが3×1019cm-3の濃度でドープされたAlGaNを用いることができる。また、反射層4として、極性を有する混晶半導体の混晶組成比率を連続的に変化させる分極ドーピング法によりp型化したAlGaNを用いても良い。
【0035】
本実施形態に係る紫外線発光素子1は、反射層4が発光層3から放射される発光のピーク波長の光を透過し、ピーク波長よりも長波長の発光を反射し、発光層3は反射された長波長の発光を吸収することを特徴としている。この観点から、反射層4はAlxGa1-xNとAlyGa1-yNの周期的な積層膜であることが好ましい(x<y)。この場合、発光のピーク波長の光を透過させる観点から、AlxGa1-xN及びAlyGa1-yNは、発光層3のAlzGa1-zNの組成に対して、z<x<yであることが好ましい。
例えば、組成比率Z=0.85のときの、ピーク波長を225nmと想定した際の反射層4の構成としては、AlN(厚さ25nm)/AlxGa1-xN(厚さ25nm)からなる積層構造が100周期相当積層された積層膜が挙げられる。
【0036】
図2に、光学薄膜設計シミュレーションソフト(Thin Film View version3.2.5 ナリー・ソフトウェア製)を用いた際の、AlN(厚さ25nm)/Al
xGa
1-xN(厚さ25nm)からなる積層構造が100周期相当積層された積層膜からなる反射層の垂直入射における透過率のグラフを示す。
図2において、横軸は発光波長、縦軸は透過率であり、組成比率が0.85、0.9、0.95の場合の透過率を示す。なお、設計においては、反射層のAl
xGa
1-xN側から光を放射し、周囲の環境はAlNであるという仮定の下で計算を行った。Al
xGa
1-xNの屈折率は、表1~表3の値を用いた。表1~表3は、AlGaNからなる膜における、Al/III組成比率が、0.85、0.9、0.95、1である場合の、光の波長λ(nm)に応じた屈折率を示す。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
図2に示すように、反射層は、ピーク波長225nmの光を85%以上透過し、ピーク波長よりも長波長の発光を5%以下反射させることが出来ていることを確認した。具体的には、例えば、Al/III組成比率xがx=0.95では、波長231nm以上232nm以下で、ピーク波長よりも長波長の発光の透過率が5%以下となり、同様にx=0.9では波長232nm以上236nm以下で透過率が5%以下となり、x=0.85では波長233nm以上240nm以下で透過率が5%以下となることを確認した。つまり、この反射層がピーク波長よりも長波長域の発光を反射し、フォトンリサイクリングを行うのに適していることを確認した。また、この結果から、ピーク波長よりも長波長の発光を効率よく遮断するにはz<x<yであることが好ましく、より好ましくはz<x<yかつx<0.95であり、より好ましくはz<x<yかつx<0.9であることを確認した。
【0041】
さらに、反射層の量子井戸構造AlN(25nm)/Al
0.85Ga
0.15N(25nm)の周期を、5周期、及び10~80周期まで10周期毎に変えた際の、波長に対する透過率を
図3に示す。
図3において、横軸は発光波長、縦軸は透過率である。ピーク波長230nmよりも長波長の233nmから240nm程度の範囲内で、いずれの周期である場合も透過率が小さく且つ、周期が長いときほど、透過率は小さくなっている。
図3から、ピーク波長より長波長の発光を効率よく反射させてフォトンリサイクリングの効果を高める観点から、量子井戸構造の周期数は、ピーク波長よりも長波長となる233nmから240nm程度の範囲内で透過率が50%程度よりも小さくなる、10周期以上であることが好ましく、20周期以上がより好ましく、30周期以上がより好ましく、40周期以上がより好ましい。さらに、厚膜化させることで成長中にクラックが入ることを抑制するために、反射層の全膜厚は3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、その条件を満たす周期数を選択することが好ましい。
さらに、反射層の量子井戸構造AlN(25nm)/Al
0.85Ga
0.15N(tnm)の膜厚tを20nmから30nmまで1nm毎に変化させた場合の垂直入射の透過率の計算結果を
図4に示す。
図4において、横軸は発光波長、縦軸は透過率である。
【0042】
ピーク波長225nmの発光に対して、ピーク波長よりも長波長の発光を効果的に反射させる観点から、この設計下においては、膜厚tが23nm以上が好ましい。膜厚tが23nm以上であると、ピーク波長225nmの発光を85%以上透過させることが出来、かつ225nmよりも長波長の発光を反射させることが出来ている。具体的には、t=23nmでは波長228nm以上234nm以下で、t=24nmでは波長230nm以上237nm以下で、t=26nmでは波長236nm以上242nm以下で、t=27nmでは波長239nm以上245nm以下で、t=28nmでは波長242nm以上248nm以下で、t=29nmでは波長245nm以上251nm以下で、t=30nmでは波長249nm以上253nm以下で、光の透過率が5%以下となり、反射させることが出来ている。反射層の量子井戸構造の膜厚tが大きくなるとピーク波長と反射させる波長との差が大きくなるため、ピーク波長をより急峻にするためには、ピーク波長と反射させる波長の差が5nmより小さいことが好ましく、そのため上記の場合膜厚tは24nm以下が好ましい。つまり、より好ましい範囲は膜厚tが23nm以上24nm以下である。Al
xGa
1-xN(
図4の場合x=0.85)の屈折率n(波長225nmの時、x=0.85ではn=2.7)とした場合、ピーク波長の発光を透過させつつ長波長域の発光を反射させる観点から、膜厚tは(ピーク波長)÷(4n-1nm)から(ピーク波長)÷(4n-1.5nm)であることが好ましい。この場合、発光ピーク波長225nmでx=0.85ではn=2.7で(ピーク波長)÷(4n-1)は23nm、(ピーク波長)÷(4n-1.5nm)は24nmとなり、上記好ましい範囲に収まる。
【0043】
なお、上記実施形態では、反射層4の材料としてAlGaNを用いたが、他の材料を用いても構わない。反射層4の材料として、例えば、Gaの酸化物やAlの酸化物、BNやInN、あるいはこれら成分とAlNやGaNとの混晶が挙げられる。
反射層4から発光されたピーク波長の光を効率的に透過する観点から、反射層4は、発光層3から発光された光の中心波長に対して±1nmの波長の光を透過する材料で形成されていることが好ましい。具体的には上述するAlGaNとAlGaNとの積層構造が挙げられる。この際、下記(1)式で表されるAlGaNのバンドギャップエネルギーEに対応する波長λが、該発光層3からの中心波長よりも短ければ、上記透過する材料となり得る。
λ=1240/E ……(1)
【0044】
また、目的に応じて、中心波長に対して±5nmの波長の光を透過することが好ましい場合もある。ここで「Xnmの波長の光を透過する」とは、波長Xnmに対する光の反射率が30%以下であることを意味する。また、反射層は、用途等に応じて、ピーク波長よりも長波長の発光を一部反射し、一部以外は透過しても良い。この場合、反射とは光の反射率が70%以上を意味し、透過とは光の反射率が30%以下を言う。フォトンリサイクリングを行う観点から、本発明の反射層において、発光層のピーク波長の光における透過率は反射層における透過率より高い必要がある。また、発光層のピーク波長より長波長の光の反射層における反射率は、ピーク波長における反射率より高い必要がある。
【0045】
紫外線発光素子1の発光を効率よくフォトンリサイクリングする観点から、反射層4における、ピーク波長より長波長の発光を反射する波長幅は5nmより大きいことが好ましく、10nmより大きいことが好ましく、30nmより大きいことが好ましい。反射層4において反射する光の波長は、ピーク波長との差が20nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがより好ましい。
反射層4は発光層3からのピーク波長の発光を透過し、ピーク波長よりも短波長の発光を反射しても良い。この場合、
図2~
図4に示す例のように、膜厚やAlGaNの組成を調節する事で実現出来る。
【0046】
本実施形態に係る紫外線発光素子1は基板2の、光を取り出す取り出し面(第2主面2b)に凸部あるいは凹部形状の構造を有していても良い。凸部は、円錐、角錐、半球形、錐台など多様な凸形状・密度により設けられてよい。基板2がAlN基板で形成される際に、安定した結晶面により物理的耐性、化学的耐性の高い凸形状を実現する観点から、凸部の側面が(10-1-1)面からなる角錐形を含むことが好ましい。この観点から、六方晶の結晶構造の安定面を反映した、六角錐あるいは六角錐台形状がさらに好ましい。この凸部が複数個あってもよく、その場合一つの形状で形成されていても複数の形状が混在していても良い。凹部は円錐、角錐、半球形、錐台など多様な凸形状・密度により設けられてよい。
【0047】
また、基板2がAlN基板で形成される際に、安定した結晶面により物理的耐性、化学的耐性の高い凹形状を実現する観点から、凹部の側面が(10-1-1)面からなる角錐形を含むことが好ましい。この観点から、六方晶の結晶構造の安定面を反映した、六角錐あるいは六角錐台形状がさらに好ましい。この凹部が複数個あってもよく、その場合一つの形状で形成されていても複数の形状が混在していても良い。凸部及び凹部の大きさは特に制限されないが、高さが0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。凸部および凹部の大きさは、倍率20000倍の電子線走査顕微鏡(SEM)で凸部あるいは凹部の表面を観察したときの画像から測定することが可能である。
【0048】
本実施形態に係る紫外線発光素子1において基板2の裏面に凹凸構造を有することにより、本発明のピーク波長の光の強度をより高めることが出来る。本構造を有することによりピーク波長よりも長波長の波長領域および短波長の波長領域の発光強度も高める可能性もあるが、上記反射層4により十分にこれら長波長の波長領域および短波長の波長領域の発光強度を十分低減できていれば、実用上問題となることは無い。つまり、本基板裏面に凹凸構造を有する素子は、上記反射層4を有する素子と組み合わせることによる効果が大きい。
【0049】
本実施形態に係る紫外線発光素子(LED)1は、以下のような効果を有する。本実施形態における紫外線発光素子1は、ピーク波長の発光強度を高めることが出来、かつピーク波長より長波長側、あるいは長波長と短波長の両方の発光出力を低出力化させることが出来る。つまり、ピーク波長を高出力化してよりシャープな発光スペクトルを実現することが出来る。本実施形態に係る紫外線発光素子1は、計測器用途での使用において高精度、高感度化することが出来る。
特に、発光層3からの発光の半値幅が10nm以上となる場合、半値幅が広い紫外線発光素子(LED)では、ピーク波長より長波長側、あるいは短波長側の相対発光出力がメインピークよりも高くなるため、フォトンリサイクリングによる高出力化が有効となると共に、紫外線発光素子1から取り出される光の半値幅を10nm未満に制限することが期待でき、高精度及び高感度化をより一層図ることができる。
【0050】
図5は、本実施形態に係る紫外線発光素子1において反射層4を用いた場合(DBR有り)と、反射層4が無い場合(DBR無し)の、フォトンリサイクリングによるピーク波長の発光出力の向上が無いと仮定した場合での発光スペクトルの比較を示したものである。
反射層が無い場合の紫外線発光素子は以下の手順で作製した。
すなわち、単結晶窒化アルミニウム基板上に以下の1)~4)の薄膜を有機気相成長法で順次成長させた。
1):Siを不純物としてドープした厚さ550 nmのN-Al
0.9Ga
0.1N
2):20周期の厚さ3nmの、Al
0.8Ga
0.2Nの量子井戸層と厚さ8nmの障壁層
3)厚さ11nmのAlN層
4)厚さ50nmのp-AlGaN層
【0051】
その後、n型半導体を露出させるメサ加工を施した後にn型電極及びp型電極を配置し、パッケージ化する。
このパッケージ化された積層体、すなわち発光ダイオードに700mAの電流を印加する。以上により、
図5に示す反射層を持たない紫外線発光素子(発光ダイオード)による発光スペクトルを得る。
反射層を持たない紫外線発光素子について、積分強度を比較すると、ピーク波長229nm未満の発光出力の積分強度は14.2mW、ピーク波長229nm以上の発光出力の積分強度は24.2mWである。つまり、229nm未満の発光出力の積分強度と229nm以上の発光出力の積分強度の比率は1対1.70となっている。この場合の発光の半値幅は8.8nmである。
【0052】
基板2としての単結晶窒化アルミニウム基板と第1導電型半導体層6としてのn-Al
0.9Ga
0.1Nとの間に80周期のAlN(25nm)/Al
0.85Ga
0.15N(25nm)を配置した発光ダイオードの発光スペクトルの計算予測値を
図5中の反射層ありの場合のスペクトルで示す。このスペクトルは、反射層無しの発光スペクトルに、前記AlN(25nm)/Al
0.85Ga
0.15N(25nm)の反射率の計算値を掛けた値となっている。なお、実際にはフォトンリサイクリングの効果が働きピーク波長の発光強度がより高くなるが、本計算ではフォトンリサイクリングの効果を考慮していない。
【0053】
この結果から、ピーク発光の波長がシャープになっていることが分かる。積分強度を比較すると、ピーク波長229nm未満の発光出力の積分強度は12.2mW、229nm以上の発光出力の積分強度は8.3mWである。つまり、229nm未満の発光出力の積分強度と229nm以上の発光出力の積分強度の比率は1対0.68となっている。つまり、AlN(25nm)/Al0.85Ga0.15N(25nm)層を配置することで長波長側のブロードな迷光を抑制できていることが分かる。この場合の発光の半値幅は6.2nmである。
【0054】
以上、本開示を実施の形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0055】
1 紫外線発光素子
2 基板
3 発光層
4 反射層
6 第1導電型半導体層
7 第2導電型半導体層
8 第1導電型電極
9 第2導電型電極
10 積層薄膜