(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180925
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ベーパーチャンバ及び電子機器
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20231214BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
F28D15/02 101H
F28D15/02 102A
H01L23/46 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094612
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】安達 貴光
(72)【発明者】
【氏名】富沢 周作
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 肇
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136CC14
5F136CC17
5F136CC24
5F136FA02
5F136FA03
5F136GA17
(57)【要約】
【課題】冷却効率を向上することができるベーパーチャンバ及び該ベーパーチャンバを備える電子機器を提供する。
【解決手段】ベーパーチャンバは、第1金属プレートと、外縁部が前記第1金属プレートと接合され、前記第1金属プレートとの間に作動流体が封入される密閉空間を形成する第2金属プレートと、前記密閉空間に収容されるウィック、を備え、前記第1金属プレートは、前記密閉空間に連通する貫通孔が形成され、さらに、前記貫通孔に挿入されて前記第1金属プレートと接合されることで前記貫通孔を封止すると共に、前記密閉空間側とは逆側にフラットな外面が設けられた金属ブロックを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベーパーチャンバであって、
第1金属プレートと、
外縁部が前記第1金属プレートと接合され、前記第1金属プレートとの間に作動流体が封入される密閉空間を形成する第2金属プレートと、
前記密閉空間に収容されるウィックと、
を備え、
前記第1金属プレートは、前記密閉空間に連通する貫通孔が形成され、
さらに、前記貫通孔に挿入されて前記第1金属プレートと接合されることで前記貫通孔を封止すると共に、前記密閉空間側とは逆側にフラットな外面が設けられた金属ブロックを備える
ことを特徴とするベーパーチャンバ。
【請求項2】
請求項1に記載のベーパーチャンバであって、
前記金属ブロックは、
前記貫通孔に埋め込まれるベース部と、
前記ベース部よりも大きな外形を有し、前記第1金属プレートの外面に接合されるフランジ部と、
を有する
ことを特徴とするベーパーチャンバ。
【請求項3】
請求項1に記載のベーパーチャンバであって、
前記金属ブロックは、
前記貫通孔に埋め込まれるベース部と、
前記ベース部よりも大きな外形を有し、前記密閉空間内で前記第1金属プレートの内面に接合されるフランジ部と、
を有する
ことを特徴とするベーパーチャンバ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のベーパーチャンバであって、
前記ウィックは、前記密閉空間内で前記第1金属プレートの内面に載置され、前記金属ブロックと接触している
ことを特徴とするベーパーチャンバ。
【請求項5】
請求項1に記載のベーパーチャンバであって、
さらに、前記密閉空間内で前記第1金属プレートと前記第2金属プレートとの間で起立する複数の支柱を備え、
前記支柱は、前記金属ブロックを避けた位置に配置されている
ことを特徴とするベーパーチャンバ。
【請求項6】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられた発熱体と、
前記筐体内に設けられ、前記発熱体が発生する熱を吸熱するベーパーチャンバと、
を備え、
前記ベーパーチャンバは、
貫通孔が形成された第1金属プレートと、
外縁部が前記第1金属プレートと接合され、前記第1金属プレートとの間に作動流体が封入される密閉空間を形成する第2金属プレートと、
前記密閉空間に収容されるウィックと、
前記貫通孔に挿入されて前記第1金属プレートと接合されることで前記貫通孔を封止すると共に、前記密閉空間側とは逆側にフラットな外面が設けられた金属ブロックと、
前記金属ブロックの外面が、前記発熱体に接続される
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項6に記載の電子機器であって、
さらに、前記発熱体が実装され、前記ベーパーチャンバと略平行に配置される基板を備え、
前記発熱体として、
第1の発熱体と、
前記基板からの突出高さが前記第1の発熱体よりも大きい第2の発熱体と、
を備え、
前記貫通孔として、
第1の貫通孔と、
前記第1の貫通孔とは前記第1金属プレートの異なる位置に形成された第2の貫通孔と、
を備え、
前記金属ブロックとして、
前記第1の貫通孔に挿入され、その外面が前記第1の発熱体に接続される第1の金属ブロックと、
前記第2の貫通孔に挿入され、前記第1及び第2の発熱体の突出高さの差分だけ前記第1の金属ブロックよりも板厚が薄く形成されることで、その外面が前記第2の発熱体に接続される第2の金属ブロックと、
を備える
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーパーチャンバ及び該ベーパーチャンバを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の発熱体を搭載している。このような電子機器は、筐体内に冷却モジュールを搭載し、発熱体が発生する熱を吸熱し、外部に放熱する。特許文献1には、CPU等に対してベーパーチャンバを接続した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベーパーチャンバは、大きな外形を有するため、その外面をフラットに形成することが難しい。このため、ベーパーチャンバは、CPU等に直接的に接触しようとしても密着性が得られず、熱伝達効率が低下する。
【0005】
そこで、特許文献1の構成では、ベーパーチャンバの外面とCPU等の発熱体との間に銅ブロック等で形成された受熱板を挟むことで両者間の密着性を高め、熱伝達効率を向上させている。
【0006】
ところが、このような受熱板は、発熱体との間、及びベーパーチャンバとの間のそれぞれに熱伝導グリース等のTIM(Thermal Interface Material)を設ける必要がある。つまり受熱板を用いた構成では、発熱体と受熱板との間及び受熱板とベーパーチャンバとの間の合計2カ所にTIMが介在する熱伝達部が設けられるため、発熱体とベーパーチャンバとの間での熱抵抗が増大する。その結果、この構成では、ベーパーチャンバと発熱体との間の熱伝達効率の向上効果は限定的なものとなり、発熱体の冷却効率の一層の改善が望まれている。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、冷却効率を向上することができるベーパーチャンバ及び該ベーパーチャンバを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に係るベーパーチャンバは、第1金属プレートと、外縁部が前記第1金属プレートと接合され、前記第1金属プレートとの間に作動流体が封入される密閉空間を形成する第2金属プレートと、前記密閉空間に収容されるウィックと、を備え、前記第1金属プレートは、前記密閉空間に連通する貫通孔が形成され、さらに、前記貫通孔に挿入されて前記第1金属プレートと接合されることで前記貫通孔を封止すると共に、前記密閉空間側とは逆側にフラットな外面が設けられた金属ブロックを備える。
【0009】
本発明の第2態様に係る電子機器は、筐体と、前記筐体内に設けられた発熱体と、前記筐体内に設けられ、前記発熱体が発生する熱を吸熱するベーパーチャンバと、を備え、前記ベーパーチャンバは、貫通孔が形成された第1金属プレートと、外縁部が前記第1金属プレートと接合され、前記第1金属プレートとの間に作動流体が封入される密閉空間を形成する第2金属プレートと、前記密閉空間に収容されるウィックと、前記貫通孔に挿入されて前記第1金属プレートと接合されることで前記貫通孔を封止すると共に、前記密閉空間側とは逆側にフラットな外面が設けられた金属ブロックと、前記金属ブロックの外面が、前記発熱体に接続される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様によれば、冷却効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、筐体の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、ベーパーチャンバの模式的な側面断面図である。
【
図4A】
図4Aは、第1金属プレートに貫通孔を形成した状態を示す模式的な側面断面図である。
【
図4B】
図4Bは、
図4Aに示す第1金属プレートに金属ブロックを取り付けた状態を示す側面断面図である。
【
図4C】
図4Cは、
図4Bに示す第1金属プレートにウィック及び第2金属プレートを取り付ける動作を示す側面断面図である。
【
図4D】
図4Dは、
図4Cに示す第1金属プレートにウィック及び第2金属プレートを取り付けて製造されたベーパーチャンバの側面断面図である。
【
図5】
図5は、第1変形例に係るベーパーチャンバの模式的な側面断面図である。
【
図6】
図6は、第2変形例に係るベーパーチャンバの第2金属プレート及びウィックを分解した模式的な側面断面図である。
【
図7A】
図7Aは、参考例に係るベーパーチャンバの第1金属プレートに切削加工を施す前の状態を模式的に示す側面断面図である。
【
図7B】
図7Bは、
図7Aに示す第1金属プレートに切削加工を施した状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るベーパーチャンバ及び電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、電子機器10は、ディスプレイ筐体12と筐体14とをヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。本発明に係る電子機器は、ノート型PC以外、例えばデスクトップ型PC、タブレット型PC、スマートフォン、又はゲーム機等でもよい。
【0014】
ディスプレイ筐体12は、薄い扁平な箱体である。ディスプレイ筐体12には、ディスプレイ18が搭載されている。ディスプレイ18は、例えば有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)や液晶で構成される。
【0015】
以下、筐体14及びこれに搭載された各要素について、筐体12,14間を
図1に示すように開いた状態とし、ディスプレイ18を視認する姿勢を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、高さ方向(筐体14の厚み方向)を上下、と呼んで説明する。
【0016】
筐体14は、薄い扁平な箱体である。筐体14は、上面及び四周側面を形成するカバー部材14Aと、下面を形成するカバー部材14Bとで構成されている。上側のカバー部材14Aは、下面が開口した略バスタブ形状を有する。下側のカバー部材14Bは、略平板形状を有し、カバー部材14Aの下面開口を閉じる蓋体となる。カバー部材14A,14Bは、厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結される。筐体14の上面には、キーボード20及びタッチパッド21が設けられている。筐体14は、後端部がヒンジ16を用いてディスプレイ筐体12と連結されている。
【0017】
図2は、筐体14の内部構造を模式的に示す平面図であり、筐体14をキーボード20の少し下で切断した模式的な平面断面図である。
【0018】
図2に示すように、筐体14の内部には、冷却モジュール22と、マザーボード24と、バッテリ装置26とが設けられている。筐体14の内部には、さらに各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0019】
マザーボード24は、電子機器10のメインボードである。マザーボード24は、筐体14の後方寄りに配置され、左右方向に沿って延在している。マザーボード24は、CPU30及びGPU31の他、パワーコンポーネント、通信モジュール、メモリ、及び接続端子等の各種電子部品が実装されたプリント基板である。マザーボード24は、キーボード20の下に配置され、キーボード20の裏面やカバー部材14Aの内面にねじ止めされている。マザーボード24は、上面がカバー部材14Aに対する取付面となり、下面がCPU30等の実装面24aとなる(
図3参照)。
【0020】
CPU30は、マザーボード24の実装面24aの左右中央の左寄りに配置されている。CPU30は、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う。GPU31は、実装面24aでCPU30の右側に並んで配置されている。GPU31は、3Dグラフィックス等の画像描写に必要な演算を行う。
【0021】
バッテリ装置26は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置26は、マザーボード24の前方に配置され、筐体14の前端部に沿って左右に延在している。
【0022】
次に、冷却モジュール22の構成を説明する。
【0023】
CPU30及びGPU31は、筐体14内に搭載された電子部品中で最大級の発熱量の発熱体である。そこで、冷却モジュール22は、CPU30及びGPU31が発生する熱を吸熱及び拡散し、さらに筐体14外へと排出する。冷却モジュール22は、例えばマザーボード24の実装面24aの一部を覆うように積層される。
【0024】
図2に示すように、冷却モジュール22は、ベーパーチャンバ36と、ヒートパイプ38と、左右一対のヒートシンク40,41と、左右一対のファン42,43と、熱伝導プレート44と、を備える。
【0025】
ヒートパイプ38は、パイプ型の熱輸送デバイスである。ヒートパイプ38は、CPU30及びGPU31と上下方向にオーバーラップする位置でベーパーチャンバ36の下面36aに接続されている。本実施形態では、2本のヒートパイプ38a,38bを前後に2本1組で並列し、これらの両端部を左右のヒートシンク40,41に接続した構成を例示している。ヒートパイプ38は、1本や3本以上で用いてもよい。ヒートパイプ38は、例えば2本1組のものを2組設け、一方の組をヒートシンク40に接続し、他方の組をヒートシンク41に接続した構成等としてもよい。ヒートパイプ38a,38bは、金属パイプを薄く扁平に潰して断面楕円形状に形成し、金属パイプ内に形成された密閉空間に作動流体を封入した構成であり、一般的なヒートパイプと同一又は同様の構造でよい。
【0026】
左側のヒートシンク40は、複数のプレート状のフィンを左右方向に等間隔に並べた構造である。各フィンは、上下方向に起立し、前後方向に延在している。隣接するフィンの間には、ファン42から送られた空気が通過する隙間が形成されている。ヒートシンク40は、アルミニウムや銅のような高い熱伝導率を有する金属で形成されている。右側のヒートシンク41は、大きさ等は多少異なるが、基本的な構成は左側のヒートシンク40と左右対称であるため、詳細な説明を省略する。
【0027】
左側のファン42は、ヒートシンク40の直前に配置され、排気口42aがヒートシンク40に面している。ファン42は、ファン筐体42bの内部に収容されたインペラをモータによって回転させる遠心ファンである。ファン42は、ファン筐体42bの上下面にそれぞれ開口した吸気口42cから吸い込んだ筐体14内の空気を排気口42aから排出する。排気口42aからの送風は、ヒートシンク40を通過し、放熱を促進する。
【0028】
右側のファン43は、大きさ等は多少異なるが、基本的な構成は左側のファン42と左右対称であるため、詳細な説明を省略する。すなわち、ファン43についても、ヒートシンク41に面した排気口43aと、ファン筐体43bの上下面に開口した吸気口43cとを有する。
【0029】
熱伝導プレート44は、ベーパーチャンバ36の前縁部に連結され、前方に突出している。熱伝導プレート44は、アルミニウムや銅等の金属やグラファイト等の熱伝導率が高い材質で形成された薄いプレートである。熱伝導プレート44は、例えばマザーボード24に実装されたパワーコンポーネントを覆うように設けられている。
【0030】
次に、ベーパーチャンバ36の構成を説明する。
【0031】
図3は、ベーパーチャンバ36の模式的な側面断面図であり、ベーパーチャンバ36をマザーボード24に実装されたCPU30及びGPU31に接続した状態を示している。
【0032】
図2及び
図3に示すように、ベーパーチャンバ36は、プレート型の熱輸送デバイスである。ベーパーチャンバ36は、CPU30及びGPU31に接続され、これらの熱を吸熱及び拡散すると共に、その下面36aに接続されたヒートパイプ38に伝達することができる。本実施形態のベーパーチャンバ36は、左右のファン42,43の間に配置され、CPU30及びGPU31を覆う。ベーパーチャンバ36は、薄く変形し易いため、例えば上面36bの外周縁部や中央部に金属製のフレーム46を接合し、補強している(
図2参照)。フレーム46は、省略されてもよい。
【0033】
ベーパーチャンバ36は、第1金属プレート50と、第2金属プレート51と、密閉空間52と、ウィック54と、第1金属ブロック56と、第2金属ブロック57と、を有する。
【0034】
金属プレート50,51は、銅、アルミニウム又はステンレスのような熱伝導率が高い金属で形成された薄いプレートである。本実施形態の金属プレート50,51は、銅プレートを用いている。ベーパーチャンバ36は、金属プレート50,51の外縁部同士を接合して封止し、内側に作動流体が封入される密閉空間52を形成したものである。金属プレート50,51の外縁部は、例えば互いに溶接され、耳状の封止部36cを成している。
【0035】
本実施形態では、ベーパーチャンバ36の上面36b、つまり第1金属プレート50の外面50aがCPU30及びGPU31に対する接続面となる構成を例示している。この第1金属プレート50には、外面50aから密閉空間52まで連通する一対の貫通孔58,59が形成されている。貫通孔58,59は、それぞれ金属ブロック56,57の埋め込み穴となるものであり、例えば平面視で略矩形状の孔部である。
【0036】
密閉空間52は、作動流体が相変化を生じながら流通する流路となる。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。ウィック54は、密閉空間52内に収容される。ウィック54は、凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するためのものであり、例えば金属製の細線を綿状に編んだメッシュや微細流路等の多孔質体で形成される。本実施形態では、ウィック54は、密閉空間52内で第1金属プレート50の内面50bに載置され、内面50b及び金属ブロック56,57と接触している。このようにウィック54は、密閉空間52内で第2金属プレート51よりも金属ブロック56,57が取り付けられる第1金属プレート50に近い位置に配置されることが好ましい。
【0037】
ベーパーチャンバ36は、密閉空間52内の各所に支柱60が配置されている。支柱60は、密閉空間52の潰れや変形を抑制する補強部材である。支柱60は、第1金属プレート50の内面50bから起立して先端が第2金属プレート51に当接する。支柱60は、第2金属プレート51に形成されてもよい。ウィック54には、各支柱60が挿通される孔部が適宜形成される。各支柱60は、密閉空間52内の各支柱60が金属ブロック56,57を避けた位置に配置されるとよい(
図2及び
図3参照)。
【0038】
金属ブロック56,57は、銅、アルミニウム又はステンレスのような熱伝導率が高い金属で形成された薄いブロック状或いはプレート状の部材である。金属ブロック56,57は、ベーパーチャンバ36をCPU30及びGPU31に接続する際、実際にCPU30及びGPU31のダイの頂面に接触する部材である。
【0039】
電子機器10は、その仕様によってはGPU31を搭載しない場合もある。この場合には、ベーパーチャンバ36は、第2金属ブロック57を省略し、第1金属ブロック56のみを備えた構成とすればよい。また、ベーパーチャンバ36の接続対象が、3以上の場合、金属ブロック56,57に加えて、さらに別の金属ブロックを設けてもよい。
【0040】
第1金属ブロック56は、矩形板状のベース部56aと、ベース部56aよりも大きな外形を有する矩形板状のフランジ部56bとを有し、全体として階段状の山形に形成されている。ベース部56aは、貫通孔58に挿入され、その外周面56cが貫通孔58の内周面と接合される。フランジ部56bは、密閉空間52及び貫通孔58の外側に配置され、ベース部56a側の面56dが第1金属プレート50の外面50aと接合される。
図3中に破線で示す参照符号Wは、外周面56c及び面56dと第1金属プレート50とを接合する溶接部である。
【0041】
第2金属ブロック57は、その形状や大きさが多少異なる以外、基本的な構成は第1金属ブロック56と同一又は同様でよい。すなわち第2金属ブロック57も、矩形板状のベース部57aと、ベース部57aよりも大きな外形を有する矩形板状のフランジ部57bとを有する。第2金属ブロック57は、ベース部57aが貫通孔59に挿入され、その外周面56cが貫通孔59の内周面と溶接部Wで接合される。フランジ部57bは、密閉空間52及び貫通孔59の外側に配置され、ベース部57a側の面57dが外面50aと溶接部Wで接合される。
【0042】
金属ブロック56,57は、密閉空間52に臨む内面56e,57eとは逆側の外面56f,57fが高い平面度でフラットに形成されている。外面56f,57fの平面度は、例えばプラスマイナス0.05mm程度に設定してもよい。この平面度は、例えばCPU30及びGPU31のダイの頂面に接触させた際、大きな隙間や傾きを生じることなく密着可能な程度である。
図3中の参照符号62は、熱伝導性グリースや液体金属等のTIMであり、外面56f,57fとCPU30やGPU31の頂面との密着性を高めるための部材である。
【0043】
ここで、本実施形態のベーパーチャンバ36は、例えば、第1金属プレート50の板厚は、貫通孔58,59が形成され、密閉空間52を形成する部分が0.5mm程度、封止部36cを形成する部分が0.42mm程度である。また、第2金属プレート51の板厚は、0.28mm程度である。一方、金属ブロック56,57の板厚は、ベース部56a,57aが0.5mm程度、フランジ部56bが1.8mm程度、フランジ部57bが0.2mm程度である。なお、これらの板厚の数値は例示であり、ベーパーチャンバ36の用途や搭載機器等によって適宜変更されることは言うまでもない。
【0044】
なお、このようなフランジ部56b,57bの板厚の違いは、マザーボード24の実装面24aからのCPU30及びGPU31の突出高さの差分に応じたものである。つまり突出高さが低いCPU30に接続される第1金属ブロック56のフランジ部56bの板厚は、突出高さが高いGPU31に接続される第2金属ブロック57のフランジ部57bの板厚よりも、上記差分だけ厚く構成されている。これによりベーパーチャンバ36は、マザーボード24と略平行に配置された状態で、金属ブロック56,57がCPU30及びGPU31に密着する。その結果、ベーパーチャンバ36は、金属ブロック56,57がCPU30及びGPU31との間に隙間を生じること、或いははベーパーチャンバ36が傾き等を生じることが抑制される。
【0045】
図2から明らかなように、平面視での金属ブロック56,57の外形(表面積)は、ベーパーチャンバ36の外形よりも相当に小さい。このため、第1金属プレート50と金属ブロック56,57とは、その板厚はあまり変わらないが、外面56f,57fは外面50aよりも高い平面度のフラットな面に容易に加工できる。
【0046】
次に、
図4A~
図4Dを参照して、ベーパーチャンバ36の製造方法の一手順を説明する。上記したように、金属ブロック56,57は、その形状や大きさが多少異なる以外、基本的な構成は同一又は同様である。そこで、以下では、
図4A~
図4Dに示すように、ベーパーチャンバ36について、第1金属ブロック56のみを設けた構成を例示して説明し、第2金属ブロック57及びその取付方法についての説明は省略する。
【0047】
先ず、
図4Aに示すように、第1金属プレート50に貫通孔58を形成する。貫通孔58は、第1金属プレート50の成形時にプレス等で形成してもよいし、第1金属プレート50の成形後に穴あけ加工等で形成してもよい。
【0048】
次に、
図4Bに示すように、第1金属ブロック56を第1金属プレート50に固定する。第1金属ブロック56は、ベース部56aを外面50a側から貫通孔58に挿入し、フランジ部56bを外面50aに当接させる。そして、ベース部56aの外周面56cを貫通孔58の内周面に溶接し、フランジ部56bの面56dを外面50aに溶接する。これにより第1金属ブロック56が、貫通孔58を封止した状態で第1金属プレート50と一体に固定される。
【0049】
ところで、
図4Bに示すように、単にベース部56aを貫通孔58に挿入し、両者を溶接部Wで接合しただけでは、ベース部56aの端面及び溶接部Wの余剰部W1が第1金属プレート50の内面50b側に膨出し、段差を生じる可能性がある。密閉空間52は、このような段差が形成されたままであると、ウィック54の接触率が低下し、またウィック54を流れる液相の作動流体の円滑な流通が阻害される。
【0050】
そこで、
図4B及び
図4Cに示すように、密閉空間52に露出する段差の発生を解消すべく、内面50b側に膨出するベース部56aの端面及び余剰部W1をCNC工作機械等の刃具64で切削する。これにより金属ブロック56は、第1金属プレート50の内面50bと面一に形成されたフラットな内面56eが形成される。
【0051】
続いて、
図4C及び
図4Dに示すように、第1金属プレート50の内面50bにウィック54を設置した後、第1金属プレート50に第2金属プレート51を接合し、封止部36cを形成する。この際、ウィック54は、金属ブロック56とオーバーラップする位置では、内面56eに接触する。
【0052】
これにより金属プレート50,51間にウィック54を収容した密閉空間52が形成され、下面36aに第1金属ブロック56の外面56fが露出したベーパーチャンバ36の製造が完了する。
図2及び
図3に示すように、ベーパーチャンバ36が金属ブロック56,57を備える構成である場合は、上記した第1金属ブロック56の取付工程と同時に又はこれと前後して第2金属ブロック57の取付工程を実行すればよい。
【0053】
以上のように、本実施形態のベーパーチャンバ36は、第2金属プレート51と共に密閉空間52を形成する第1金属プレート50に密閉空間52に連通する貫通孔58,59を形成している。そして、ベーパーチャンバ36は、貫通孔58,59に挿入されて第1金属プレート50と接合されることで貫通孔58,59を封止すると共に、密閉空間52側とは逆側の外面56f,57fがフラットに形成された金属ブロック56,57を備える。
【0054】
従って、当該ベーパーチャンバ36は、その冷却対象であるCPU30及びGPU31との間には、TIM62を介在させた熱伝達部が1カ所のみ設けられる。
図3中に1点鎖線で示す矢印は、熱の流れを模式的に示したものである。例えばCPU30が発生する熱は、先ず、CPU30の頂面からTIM62を介して第1金属ブロック56の外面56fに伝達される。そして、外面56fに伝達された熱は、高い熱伝導率を有する第1金属ブロック56の内部を効率よく伝導した後、内面56eから作動流体へと効率よく伝達され、迅速に拡散される。なお、GPU31とベーパーチャンバ36との間の熱移動も同様である。
【0055】
これにより本実施形態のベーパーチャンバ36は、従来のように受熱板を用いてCPU30等と接続される構成と比べて、TIMを用いた熱伝達部が半減し、CPU30等とベーパーチャンバとの間での熱抵抗が大幅に低減される。このため、ベーパーチャンバ36は、CPU30及びGPU31が発生する熱を効率よく吸熱でき、これらの冷却効率が向上する。その結果、ベーパーチャンバ36を備える冷却モジュール22の冷却性能も向上し、電子機器10のパフォーマンスも向上する。
【0056】
図3に示すように、金属ブロック56,57は、貫通孔58,59を封止するベース部56a,57aと一体に設けられたフランジ部56b,57bを有する。これにより金属ブロック56,57の第1金属プレート50に対する接合強度が向上する。またフランジ部56b,57bは、製造時に第1金属プレート50に対する金属ブロック56,57の位置決めを容易にする作用もあり、製造効率が向上する。
【0057】
図3に示すように、ベーパーチャンバ36では、ウィック54が金属ブロック56,57が接合される第1金属プレート50の内面50bに載置され、金属ブロック56,57と接触している。このため、ベーパーチャンバ36は、放熱によって気相から液相に凝縮した作動流体により、CPU30及びGPU31の熱を金属ブロック56,57から直接的に吸熱することができる。その結果、ベーパーチャンバ36は、金属ブロック56,57から作動流体への熱伝達効率が向上し、CPU30等の冷却性能が一層向上する。
【0058】
図2及び
図3に示すように、ベーパーチャンバ36は、各支柱60が密閉空間52内で金属ブロック56,57を避けた位置に配置されている。このため、金属ブロック56,57は、その内面56e,57eが支柱60で塞がれず、最大面積でウィック54と接触する。その結果、ベーパーチャンバ36は、金属ブロック56,57から作動流体への熱伝達効率が一層向上する。
【0059】
なお、上記では、金属ブロック56,57を設けた第1金属プレート50に封止部36c及び密閉空間52を形成するための略L字状の折曲部を設けた構成を例示したが、この折曲部は第2金属プレート51側に設けても勿論よい。
【0060】
図5は、第1変形例に係るベーパーチャンバ70の模式的な側面断面図である。
図5において、
図1~
図4Dに示される参照符号と同一の参照符号は、同一又は同様な構成を示し、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略し、以下の
図6~
図7Bについても同様とする。なお、
図5~
図7Bに示す構成例では、第1金属ブロック56のみを代表的に図示しているが、これらの構成例でも
図3に示す構成例と同様に2つの金属ブロック56,57を備えてもよいことは勿論である。
【0061】
図5に示すベーパーチャンバ70が備える第1金属ブロック56は、フランジ部56bを有していない点が
図3のベーパーチャンバ36と異なる。すなわち、フランジ部56b,57bによって第1金属プレート50に対する接合強度を向上させる必要がない場合には、金属ブロック56,57は、フランジ部56b,57bを省略することもできる。
【0062】
図6は、第2変形例に係るベーパーチャンバ72の第2金属プレート51及びウィック54を分解した模式的な側面断面図である。
【0063】
図4B及び
図4Cに示すように、上記したベーパーチャンバ36は、通常、その製造時に工作機械の刃具64による切削工程が必要となる。一方、
図6に示すベーパーチャンバ72は、この切削工程を省略可能な構成を有する。
【0064】
図6に示すように、ベーパーチャンバ72は、金属ブロック56,57とは構成の異なる金属ブロック74を備える。金属ブロック74は、フランジ部56bに代えて、ベース部56aの密閉空間52側に設けられたフランジ部74aを有する。フランジ部74aは、その上下両面がフラットに形成され、第1金属プレート50の内面50bに載置される。ウィック54は、フランジ部74aの表面に設けられる。
【0065】
従って、ベーパーチャンバ72は、第1金属プレート50の内面50bがフラットなフランジ部74aで覆われるため、溶接部Wの接合時に余剰部W1を生じ難く、ベース部56aの端面が密閉空間52内に膨出することもない。その結果、ベーパーチャンバ72は、上記した切削工程を省略することができ、製造コストを削減できる。但し、ベーパーチャンバ72は、密閉空間52内にフランジ部74aが配置される。このため、ベーパーチャンバ72は、
図3に示すベーパーチャンバ36と比べて全体の板厚が厚くなる傾向にあり、逆に、上記したベーパーチャンバ36は全体の板厚を薄くできるという利点がある。
【0066】
図7Aは、参考例に係るベーパーチャンバ80の第1金属プレート82に切削加工を施す前の状態を模式的に示す側面断面図である。
図7Bは、
図7Aに示す第1金属プレート82に切削加工を施した状態を示す側面断面図であり、第2金属プレート51及びウィック54を分解して図示している。
【0067】
図7A及び
図7Bに示すように、参考例に係るベーパーチャンバ80は、第1金属プレート82に切削加工を施すことで第1金属ブロック56を成形したものである。
図7Aに示すように、第1金属プレート82は、切削加工前の状態では、密閉空間52を形成する部分の板厚が
図3に示す第1金属ブロック56又は第2金属ブロック57の板厚と同等な厚みを有する。このような第1金属プレート82は、その外面をCNC工作機械等の刃具64で切削することで、一部に金属ブロック56,57の代わりとなる金属ブロック84を形成した構成である。
図7B中の参照符号Cは、刃具64による切削面を示す。
【0068】
このようなベーパーチャンバ80は、
図4A~
図4Cに示す貫通孔58,59の形成工程と余剰部W1等の切削工程とが不要であるという利点がある。しかしながら、ベーパーチャンバ80は、例えば1辺が10cm以上もある第1金属プレート82の大部分に切削加工を施す必要があり、
図3に示すベーパーチャンバ36等と比べて製造コストが顕著に高くなり、加工時間も長いため、量産性に劣る。つまり上記したベーパーチャンバ36等は、製造時間や製造コストが比較的小さくて済むため、量産に適しているとも言える。
【0069】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0070】
ファン42,43及びヒートシンク40,41は、左右一対ではなく、一方のみで構成されてもよく、熱伝導プレート44は省略されてもよい。また、ベーパーチャンバ36等は、ファン42やヒートパイプ38と組み合わせたモジュール構造ではなく、単独の冷却手段として電子機器に搭載することもできる。
【符号の説明】
【0071】
10 電子機器
14 筐体
22 冷却モジュール
24 マザーボード
30 CPU
31 GPU
36,70,72,80 ベーパーチャンバ
50,82 第1金属プレート
51 第2金属プレート
52 密閉空間
54 ウィック
56 第1金属ブロック
57 第2金属ブロック
58,59 貫通孔
60 支柱
74、84 金属ブロック