(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180929
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20231214BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G08G1/01 A
G08G1/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094616
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真輝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐希
(72)【発明者】
【氏名】井手 宏二
(72)【発明者】
【氏名】大八木 大史
(72)【発明者】
【氏名】篠田 祥尚
(72)【発明者】
【氏名】中山 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】金子 智洋
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB12
5H181BB13
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF27
5H181MB08
5H181MC04
5H181MC17
5H181MC19
(57)【要約】
【課題】全ての画像データについて一律にプライバシー処理を行うのではなく、必要な場合にのみプライバシー処理を行うことができる情報処理システム、情報処理装置および情報処理プログラムを提供すること。
【解決手段】情報処理システムは、車載カメラによって周囲の画像を撮影する車両と、プロセッサを有する情報処理装置と、を備え、プロセッサが、取得した画像データについて、予め定められた特定イベントが発生した場合は、プライバシー処理をせずに保存し、特定イベントが発生しなかった場合は、プライバシー処理をして保存する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載カメラによって周囲の画像を撮影する車両と、
プロセッサを有する情報処理装置と、
を備え、
前記プロセッサは、取得した画像データについて、予め定められた特定イベントが発生した場合は、プライバシー処理をせずに保存し、前記特定イベントが発生しなかった場合は、プライバシー処理をして保存する、
情報処理システム。
【請求項2】
前記特定イベントは、交通事故、または犯罪を含む事件に関連したイベントである、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記特定イベントが発生した位置、または前記特定イベントが発生した時間に関する情報を用いて、前記特定イベントに紐づいた画像データを特定し、
特定した画像データについて、プライバシー処理をせずに保存する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、外部から取得した交通事故、または犯罪を含む事件に関連した情報に基づいて、前記特定イベントの有無を判定する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、取得した前記画像データを画像処理することにより、前記特定イベントの有無を判定する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、取得した画像データについて、予め定められた特定イベントが発生した場合は、プライバシー処理をせずに保存し、前記特定イベントが発生しなかった場合は、プライバシー処理をして保存する、
情報処理装置。
【請求項7】
前記特定イベントは、交通事故、または犯罪を含む事件に関連したイベントである、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記特定イベントが発生した位置、または前記特定イベントが発生した時間に関する情報を用いて、前記特定イベントに紐づいた画像データを特定し、
特定した画像データについて、プライバシー処理をせずに保存する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、外部から取得した交通事故、または犯罪を含む事件に関連した情報に基づいて、前記特定イベントの有無を判定する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、取得した前記画像データを画像処理することにより、前記特定イベントの有無を判定する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項11】
プロセッサに、取得した画像データについて、予め定められた特定イベントが発生した場合は、プライバシー処理をせずに保存し、前記特定イベントが発生しなかった場合は、プライバシー処理をして保存する、
ことを実行させる情報処理プログラム。
【請求項12】
前記特定イベントは、交通事故、または犯罪を含む事件に関連したイベントである、
請求項11に記載の情報処理プログラム。
【請求項13】
前記プロセッサに、
前記特定イベントが発生した位置、または前記特定イベントが発生した時間に関する情報を用いて、前記特定イベントに紐づいた画像データを特定し、
特定した画像データについて、プライバシー処理をせずに保存する、
ことを実行させる請求項11に記載の情報処理プログラム。
【請求項14】
前記プロセッサに、外部から取得した交通事故、または犯罪を含む事件に関連した情報に基づいて、前記特定イベントの有無を判定する、
ことを実行させる請求項11に記載の情報処理プログラム。
【請求項15】
前記プロセッサに、取得した前記画像データを画像処理することにより、前記特定イベントの有無を判定する、
ことを実行させる請求項11に記載の情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理システム、情報処理装置および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、収集した画像データから、プライバシーデータを含む部分を検知し、当該部分の秘匿化を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械学習を用いて、画像データから人や車両を識別する際には上記技術を適用することが考えられるが、収集した全ての画像データについて一律にプライバシー処理を行うのではなく、必要な場合にのみプライバシー処理を行うことができる技術が求められている。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、収集した全ての画像データについて一律にプライバシー処理を行うのではなく、必要な場合にのみプライバシー処理を行うことができる情報処理システム、情報処理装置および情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る情報処理システムは、車載カメラによって周囲の画像を撮影する車両と、プロセッサを有する情報処理装置と、を備え、前記プロセッサが、取得した画像データについて、予め定められた特定イベントが発生した場合は、プライバシー処理をせずに保存し、前記特定イベントが発生しなかった場合は、プライバシー処理をして保存する。
【0007】
本開示に係る情報処理装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサが、取得した画像データについて、予め定められた特定イベントが発生した場合は、プライバシー処理をせずに保存し、前記特定イベントが発生しなかった場合は、プライバシー処理をして保存する。
【0008】
本開示に係る情報処理プログラムは、プロセッサに、取得した画像データについて、予め定められた特定イベントが発生した場合は、プライバシー処理をせずに保存し、前記特定イベントが発生しなかった場合は、プライバシー処理をして保存することを実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、収集した全ての画像データについて一律にプライバシー処理を行うのではなく、必要な場合にのみプライバシー処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る情報処理システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る情報処理装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る情報処理装置が実行する情報処理方法(プライバシー処理方法)の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態に係る情報処理システム、情報処理装置および情報処理プログラムについて、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
(情報処理システム)
実施形態に係る情報処理システムについて、
図1および
図2を参照しながら説明する。情報処理システム1は、
図1に示すように、情報処理装置10と、車両20と、を有している。情報処理装置10および車両20は、いずれも通信機能を備えており、ネットワークNを通じて相互に通信可能に構成されている。このネットワークNは、例えばインターネット回線網、携帯電話回線網等から構成される。
【0013】
(情報処理装置)
情報処理装置10は、車両20から取得した画像データに対して、所定の条件下でプライバシー処理を行うためのものである。この情報処理装置10は、例えばワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータによって実現される。
【0014】
ここで、本実施形態における「プライバシー処理」とは、例えば画像データに含まれるプライバシーデータ(例えば歩行者の顔、車両ナンバー、地名、店名等のプライバシーを特定可能なデータ)を、マスク処理(例えばモザイク処理等)によって後から加工する処理のことを示している。このプライバシー処理では、加工後にマスクを除去できないように、不可逆的な加工が施される。
【0015】
情報処理装置10は、
図2に示すように、制御部11と、通信部12と、記憶部13と、を備えている。制御部11は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等からなるプロセッサと、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等からなるメモリ(主記憶部)と、を備えている。
【0016】
制御部11は、記憶部13に格納されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等を制御することにより、所定の目的に合致した機能を実現する。制御部11は、記憶部13に格納されたプログラムの実行を通じて、プライバシー処理部111として機能する。
【0017】
プライバシー処理部111は、車両20から取得した画像データについて、予め定められた特定イベントが発生した場合に、プライバシー処理をせずに記憶部13に保存する。一方、プライバシー処理部111は、車両20から取得した画像データについて、特定イベントが発生しなかった場合は、プライバシー処理をして記憶部13に保存する。なお、プライバシー処理部111は、画像データに対してプライバシー処理を施した場合、加工前の画像データ(生データ)を一定期間(例えば一週間等)後に削除し、記憶部13には蓄積しない。
【0018】
ここで、「特定イベント」とは、例えば交通事故、または犯罪を含む事件(以下、「事故・事件」という)に関連したイベントのことを示している。「画像データについて特定イベントが発生する」とは、画像データの中に特定イベントが含まれること、例えば画像データの中に事故・事件の場面(例えばパトカー、消防車、救急車等の緊急車両、事故現場等)が含まれていることを示している。
【0019】
プライバシー処理部111は、例えば車両20から画像データを取得した後に、取得した画像データに特定イベントが紐づいているか否かを判定する。そして、プライバシー処理部111は、画像データに特定イベントが紐づいている場合に、当該画像データに対してプライバシー処理を施さずに記憶部13に保存する。一方、プライバシー処理部111は、画像データに特定イベントが紐づいていない場合に、当該画像データに対してプライバシー処理を施して記憶部13に保存する。このように、プライバシー処理部111では、特定イベントが紐づいている画像データについては、プライバシー処理を行わず、後からプライバシーデータを確認できる状態で記憶部13に保存する。なお、プライバシー処理部111は、例えば外部トリガまたは内部トリガに基づいて、特定イベントの有無を判定する。
【0020】
「外部トリガ」としては、事故・事件に関連した情報を、外部(例えば事故・事件に関連した情報を収集する外部のサーバ等)から取得することが挙げられる。この場合、プライバシー処理部111は、外部から取得した事故・事件に関連した情報に基づいて、特定イベントの有無を判定する。
【0021】
すなわち、プライバシー処理部111は、事故・事件に関連した情報を、外部のサーバ等から取得する。続いて、プライバシー処理部111は、特定イベントが発生した位置(場所)、または特定イベントが発生した時間に関する情報を用いて、車両20から取得した画像データの中から、特定イベントに紐づいている画像データを特定する。そして、プライバシー処理部111は、特定イベントに紐づいている画像データについては、プライバシー処理をせずに記憶部13に保存する。このように、特定イベントが発生した位置や時間に基づいて画像データを照合することにより、画像データにおける特定イベントの有無を判定することができる。
【0022】
「内部トリガ」としては、車両20から取得した画像データから、事故・事件に関連した情報を特定することが挙げられる。この場合、プライバシー処理部111は、車両20から取得した画像データを画像処理することにより、特定イベントの有無を判定する。
【0023】
すなわち、プライバシー処理部111は、車両20から取得した画像データについて、画像処理技術を用いて解析することにより、当該画像データの中に事故・事件の場面、すなわち特定イベントが含まれているか否かを判定する。そして、プライバシー処理部111は、特定イベントが含まれている画像、すなわち特定イベントが紐づいている画像データについては、プライバシー処理をせずに記憶部13に保存する。このように、画像データ自体を解析することにより、画像データにおける特定イベントの有無を判定することができる。
【0024】
通信部12は、例えば各種情報を送受信可能な通信モジュール等により構成される。通信部12は、ネットワークNを通じて、車両20や外部サーバ等と通信を行い、各種情報を送受信する。なお、外部サーバとしては、例えば交通事故、または犯罪を含む事件に関連した情報を収集し、配信するようなサーバが挙げられる。
【0025】
記憶部13は、例えばEPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)およびリムーバブルメディア等の記録媒体によって実現される。リムーバブルメディアとしては、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体が挙げられる。
【0026】
記憶部13には、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベース等が格納可能である。また、記憶部13には、画像データ131が格納されている。なお、記憶部13には、画像データ131の他にも、必要に応じて制御部11における処理結果等が格納されてもよい。
【0027】
画像データ131には、例えば車両20から取得した画像データ(生データ)、プライバシー処理部111によってプライバシー処理が施された(特定イベントが紐づいている)画像データ、プライバシー処理部111によってプライバシー処理が施されていない(特定イベントが紐づいていない)画像データ等が、含まれる。
【0028】
(車両)
車両20は、画像データを収集するためのものである。この車両20としては、一般的なガソリン車、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プライグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。また、車両20は、手動運転車両であってもよく、あるいは自動運転車両であってもよい。
【0029】
また、車両20は、例えば車載カメラと、DCM(Data Communication Module)等の通信機能とを備えている。車両20は、車載カメラによって周囲の画像を撮影し、撮影した画像データを、ネットワークNを通じて情報処理装置10に送信する。
【0030】
(情報処理方法)
実施形態に係る情報処理装置が実行する情報処理方法(プライバシー処理方法)の処理手順の一例について、
図3を参照しながら説明する。
【0031】
まず、プライバシー処理部111は、車両20から画像データを取得する(ステップS1)。続いて、プライバシー処理部111は、各画像データについて、例えば前記した外部トリガまたは内部トリガに基づいて、特定イベントの有無を判定する(ステップS2)。
【0032】
特定イベントがないと判定した場合(ステップS2でNo)、プライバシー処理部111は、特定イベントに関連する画像データについて、プライバシー処理を施して記憶部13に保存し(ステップS3)、本処理を完了する。一方、特定イベントがあると判定した場合(ステップS2でYes)、プライバシー処理部111は、当該画像データについて、プライバシー処理を施さずに記憶部13に保存し(ステップS4)、本処理を完了する。
【0033】
以上説明した実施形態に係る情報処理システム、情報処理装置および情報処理プログラムでは、車両20によって収集した画像データについて、予め定めた特定イベントが発生した場合はプライバシー処理をせず、特定イベントが発生しなかった場合はプライバシー処理をする。これにより、特定イベント(例えば事故・事件に関連したイベント)が含まれる画像データについては、プライバシー処理がされないため、このような画像データについて、特定イベントの分析(例えば事故・事件の原因の分析等)等に活用することができる。
【0034】
更なる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わし、かつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【0035】
例えば、本実施形態では、画像データを収集する主体として車両20を例示したが、車両20以外の移動体や、その他の端末装置等によって画像データを収集してもよい。また、本実施形態では、車両20から情報処理装置10へと、画像データが直接転送される例を説明したが、車両20から所定の装置に画像データを一旦蓄積し、この装置から情報処理装置10へと画像データを転送してもよい。
【0036】
また、本実施形態では、プライバシー処理が施されていない画像データについても、情報処理装置10の記憶部13に保存する場合を例示したが、プライバシー処理が施されていない画像データを、車両20が備える記憶部に保存してもよい。
【0037】
また、本実施形態では、情報処理装置10のプライバシー処理部111で画像データのプライバシー処理を行う例を説明したが、プライバシー処理の要否だけを情報処理装置10で判定し、画像データのプライバシー処理は車両20側で行ってもよい。あるいは、プライバシー処理の要否の判定と、画像データのプライバシー処理とを、全て車両20側で行ってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 情報処理システム
10 情報処理装置
11 制御部
111 プライバシー処理部
12 通信部
13 記憶部
131 画像データ
20 車両
N ネットワーク