(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180932
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】加熱撹拌装置、加熱方法
(51)【国際特許分類】
H05B 6/10 20060101AFI20231214BHJP
H05B 6/06 20060101ALI20231214BHJP
B01F 27/86 20220101ALI20231214BHJP
B01F 35/213 20220101ALI20231214BHJP
B01F 35/221 20220101ALI20231214BHJP
B01F 35/53 20220101ALI20231214BHJP
B01F 35/92 20220101ALI20231214BHJP
B01F 35/93 20220101ALI20231214BHJP
B01F 35/95 20220101ALI20231214BHJP
【FI】
H05B6/10 371
H05B6/06 391
H05B6/06 393
H05B6/10 381
B01F27/86
B01F35/213
B01F35/221
B01F35/53
B01F35/92
B01F35/93
B01F35/95
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094619
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】303021609
【氏名又は名称】ニューブレクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390013815
【氏名又は名称】学校法人金井学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】麻 寧緒
(72)【発明者】
【氏名】中尾 一成
(72)【発明者】
【氏名】岸田 欣増
(72)【発明者】
【氏名】中道 正紀
【テーマコード(参考)】
3K059
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
3K059AA02
3K059AA08
3K059AB23
3K059AB26
3K059AB28
3K059AC33
3K059CD77
4G037CA18
4G037CA20
4G037EA04
4G078AA22
4G078BA05
4G078CA06
4G078CA08
4G078DA01
4G078DA14
4G078DC08
4G078EA03
(57)【要約】
【課題】被処理物を適切に加熱できる加熱撹拌装置を実現する。
【解決手段】撹拌槽(1)に収容された被処理物(15)を加熱撹拌する加熱撹拌装置(100)であって、撹拌槽(1)の内部に設けられた内部部材である撹拌翼(3)と、誘導加熱による発熱にて撹拌翼(3)を加熱する、少なくとも1つの内部加熱コイル(6a)を含む内部加熱部(6)と、誘導加熱による発熱にて撹拌槽(1)を加熱する、少なくとも1つの外部加熱コイル(5a)を含む外部加熱部(5)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された被処理物を加熱撹拌する加熱撹拌装置であって、
前記容器の内部に設けられた内部部材と、
誘導加熱による発熱にて前記内部部材を加熱する、少なくとも1つの内部加熱コイルを含む内部加熱部と、
誘導加熱による発熱にて前記容器を加熱する、少なくとも1つの外部加熱コイルを含む外部加熱部と、を備える、加熱撹拌装置。
【請求項2】
前記内部加熱部への給電および前記外部加熱部への給電を、互いに独立して変化させる加熱制御部を備える、請求項1に記載の加熱撹拌装置。
【請求項3】
前記容器に収容された前記被処理物の物理量の分布を測定する物理量測定器を備え、
前記加熱制御部は、前記物理量の分布に応じて、前記内部加熱部への給電量と前記外部加熱部への給電量との比を変化させる、請求項2に記載の加熱撹拌装置。
【請求項4】
前記物理量測定器は、
光ファイバセンサと、
前記光ファイバセンサからの信号を解析する光信号解析部と、を備える請求項3に記載の加熱撹拌装置。
【請求項5】
前記外部加熱部は、複数の前記外部加熱コイルを備え、
前記加熱制御部は、複数の前記外部加熱コイルへの給電を、互いに独立して変化させる、請求項2に記載の加熱撹拌装置。
【請求項6】
前記内部加熱部は、複数の前記内部加熱コイルを備え、
前記加熱制御部は、複数の前記内部加熱コイルへの給電を、互いに独立して変化させる、請求項2に記載の加熱撹拌装置。
【請求項7】
前記外部加熱部は、複数の前記外部加熱コイルを備え、
前記内部加熱部は、複数の前記内部加熱コイルを備え、
前記加熱制御部は、前記物理量の分布に応じて、前記外部加熱コイルごとに前記外部加熱コイルへの給電量、および前記内部加熱コイルごとに前記内部加熱コイルへの給電量を変化させる、請求項3に記載の加熱撹拌装置。
【請求項8】
複数の前記外部加熱コイルは、前記容器の外周に沿って配置されている、請求項7に記載の加熱撹拌装置。
【請求項9】
複数の前記外部加熱コイルは、前記容器の上下方向に沿って配置されている、請求項7に記載の加熱撹拌装置。
【請求項10】
前記内部部材は、撹拌翼、ドラフトチューブ、バッフル板または熱交換器である、請求項9に記載の加熱撹拌装置。
【請求項11】
前記外部加熱コイルまたは前記内部加熱コイルは、冷却媒体の流路となる中空部を有している請求項10に記載の加熱撹拌装置。
【請求項12】
容器に収容された被処理物を加熱する加熱方法であって、
前記容器の内部に設けられた内部部材を、誘導加熱による発熱にて加熱する少なくとも1つの内部加熱コイルを備える内部加熱部への給電を変化させるステップと、
前記容器を、誘導加熱による発熱にて加熱する外部加熱コイルを備える外部加熱部への給電を変化させるステップと含む、加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に収容された被処理物を加熱撹拌するための加熱撹拌装置、加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理物が収容された容器の外側に抵抗ヒータなどの加熱手段を配し、加熱手段を用いて容器を加熱することで被処理物を加熱する加熱撹拌装置が知られている(例えば、特許文献1)。従来の加熱撹拌装置では、抵抗ヒータからなる加熱手段以外に、蒸気、温水および油などを熱源として使用するものもある。
【0003】
また、容器の外部に加熱手段としての誘導加熱コイルを設置して加熱する装置も開発され既に製品化もされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱撹拌装置においては、容器に収容されている被処理物を適切に加熱することで、例えば、加熱時間を短くして省エネ化を実現できる。また、被処理物を適切に加熱することで、被処理物の品質を向上させることもできる。
【0006】
しかしながら、上述の従来技術は、容器の壁面からの熱供給のみであるため、被処理物における、容器の壁面に近い部分から遠い部分へと熱が伝わる。その際、壁面に近い部分の被処理物は撹拌されにくく、熱が伝わりにくい。また、容器の熱容量が大きいため、熱応答性が悪い。そのため、熱供給量を上げると、被処理物における容器の壁面に近い部分の温度が上がり過ぎ、適切に加熱、制御することができない。
【0007】
本発明の一態様は、被処理物を適切に加熱できる加熱撹拌装置等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る加熱撹拌装置は、容器に収容された被処理物を加熱撹拌する加熱撹拌装置であって、前記容器の内部に設けられた内部部材と、誘導加熱による発熱にて前記内部部材を加熱する、少なくとも1つの内部加熱コイルを含む内部加熱部と、誘導加熱による発熱にて前記容器を加熱する、少なくとも1つの外部加熱コイルを含む外部加熱部と、を備える。
【0009】
上記の構成によれば、内部加熱部と外部加熱部とを用いることで、容器に収容された被処理物を適切に加熱できる。
【0010】
前記内部加熱部への給電および前記外部加熱部への給電を、互いに独立して変化させる加熱制御部を備える構成としてもよい。
【0011】
前記容器に収容された前記被処理物の物理量の分布を測定する物理量測定器を備え、前記加熱制御部は、前記物理量の分布に応じて、前記内部加熱部への給電と前記外部加熱部
への給電との比を変化させる構成としてもよい。
【0012】
前記物理量測定器は、光ファイバセンサと、前記光ファイバセンサからの信号を解析する光信号解析部と、を備える構成としてもよい。
【0013】
前記外部加熱部は、複数の前記外部加熱コイルを備え、前記加熱制御部は、複数の前記外部加熱コイルへの給電を、互いに独立して変化させる構成としてもよい。
【0014】
前記内部加熱部は、複数の前記内部加熱コイルを備え、前記加熱制御部は、複数の前記内部加熱コイルへの給電を、互いに独立して変化させる構成としてもよい。
【0015】
前記外部加熱部は、複数の前記外部加熱コイルを備え、前記内部加熱部は、複数の前記内部加熱コイルを備え、前記加熱制御部は、前記物理量の分布に応じて、前記外部加熱コイルごとに前記外部加熱コイルへの給電、および前記内部加熱コイルごとに前記内部加熱コイルへの給電を変化させる構成としてもよい。
【0016】
複数の前記外部加熱コイルは、前記容器の外周に沿って配置されている、あるいは、前記容器の上下方向に沿って配置されている構成としてもよい。
【0017】
前記内部部材は、撹拌翼、ドラフトチューブ、バッフル板または熱交換器である構成としてもよい。
【0018】
前記外部加熱コイル又は前記内部加熱コイルは、冷却媒体の流路となる中空部を有している構成としてもよい。
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る加熱方法は、容器に収容された被処理物を加熱する加熱方法であって、前記容器の内部に設けられた内部部材を、誘導加熱による発熱にて加熱する少なくとも1つの内部加熱コイルを備える内部加熱部への給電を変化させるステップと、前記容器を、誘導加熱による発熱にて加熱する外部加熱コイルを備える外部加熱部への給電を変化させるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、被処理物を適切に加熱できる加熱撹拌装置等を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態1に係る加熱撹拌装置の構成を概略的に示す図である。
【
図4】
図1に示す加熱撹拌装置の外部加熱コイル又は内部加熱コイルとして用いることができる面状IHコイルの構成例を示す図である。
【
図5】
図1に示す加熱撹拌装置における協調連携制御による加熱プロセスの一例を示す図である。
【
図6】実施の形態2に係る加熱撹拌装置の構成を概略的に示す図である。
【
図10】実施の形態3に係る加熱撹拌装置の構成を概略的に示す図である。
【
図12】実施の形態4に係る加熱撹拌装置の構成を概略的に示す図である。
【
図14】実施の形態5に係る加熱撹拌装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0023】
(加熱撹拌装置)
図1は、実施の形態1に係る加熱撹拌装置100の構成を概略的に示す図である。
図1は、加熱撹拌装置100の縦断面を示している。なお、
図1においては、記載の便宜上、後述する外部加熱コイル5aが内部加熱コイル6aよりも大きく示されている。
図2は、
図1のA-A線矢視断面の模式図である。なお、
図2では、光ファイバセンサ9の記載を省略している。
【0024】
図1、
図2に示すように、加熱撹拌装置100は、撹拌槽1の内部に収容された被処理物15を加熱撹拌するための装置である。被処理物15は、液体、気体、固体(紛体、粒体等)およびこれらの混合物のいずれにも適用可能である。
【0025】
まず、
図1、
図2を用いて、実施の形態1に係る加熱撹拌装置100の構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態1に係る加熱撹拌装置100は、撹拌槽1、蓋2、撹拌翼3、回転軸4、外部加熱部5、内部加熱部6、外部加熱用給電部7、内部加熱用給電部8、非接触給電システム16、光ファイバセンサ9、光信号解析部10、制御部11および操作部14などを備えている。なお、
図1では、撹拌槽1の内部に被処理物15が収容されている状態が示されている。
【0026】
<撹拌槽>
撹拌槽(容器)1は、被処理物15を収容し、蓋2は、撹拌槽1の上部開口を塞ぐ。撹拌槽1は、外部加熱部5が外部加熱コイル5aとして、導電被覆層33を持つ後述する第1の面状IHコイル20A(
図4参照)を有する場合は、導電体および非導電体のいずれから構成されていてもよい。
【0027】
外部加熱部5が外部加熱コイル5aとして、導電被覆層33を持たない後述する第2のIHコイル20B又は第3のIHコイル20C(
図4参照)を有する場合は、撹拌槽1は導電体より構成される。導電体としては、代表的にはステンレス鋼(SUS304)等の金属を挙げることができる。撹拌槽1は、一部が非導電体であってもよい。
【0028】
<撹拌翼>
撹拌翼(内部部材)3は、撹拌槽1の内部に配置されており、少なくとも一部分が被処理物15中に入り込んでいる。
図1では、撹拌翼3がダブルマックスブレンド翼である場合が示されている。撹拌翼3は、被処理物15の粘度に応じて適当な形状のものを用いることができ、例えば、ゲート翼、タービン翼、アンカー翼、リング翼、スクリュー翼およびダブルヘリカルリボン翼等を挙げることができる。
【0029】
撹拌翼3についても、内部加熱部6が内部加熱コイル6aとして、第1のIHコイル20Aを有する場合は、導電体および非導電体のいずれから構成されていてもよい。内部加熱部6が内部加熱コイル6aとして、第2のIHコイル20B又は第3のIHコイル20Cを有する場合は、撹拌翼3は導電体より構成される。撹拌翼3は、一部が非導電体であってもよい。
【0030】
<回転軸>
回転軸4は、軸方向AXにおける一方端部が、蓋2に形成された貫通孔を通って撹拌槽1の内部に挿通され、撹拌翼3の主軸に接続されている。回転軸4の軸方向AXにおける他方端部は、撹拌槽1の外部において、図示しないモータの回転軸4に連結されている。モータによって回転軸4を回転駆動させることにより、撹拌翼3が回転し、被処理物15が撹拌される。
【0031】
<外部加熱部>
外部加熱部5は、誘導加熱による発熱にて撹拌槽1を加熱する。外部加熱部5は、撹拌槽1の外部に配置され、撹拌槽1の外部より撹拌槽1の槽壁を介して被処理物15を加熱する。槽壁には、側壁および底壁が含まれる。外部加熱部5は、少なくとも1つの外部加熱コイル5aを含み、本実施の形態では、複数の外部加熱コイル5aを含む。複数の外部加熱コイル5aは、側壁において周方向に複数並んで配置されていてもよい。また、複数の外部加熱コイル5aは、側壁において上下方向に複数並んで配置されていてもよい。あるいは、上下方向のみに複数の帯状に並んで配置されても良い。
【0032】
本実施の形態では、外部加熱部5は、複数の外部加熱コイル5aが配置されたクラスター構造を採る。複数の外部加熱コイル5aは、撹拌槽1の槽壁に敷設されている。撹拌槽1の底壁においては、複数の外部加熱コイル5aは、中心部から外周部にかけて複数の同心円上に位置するように複数並んで配置されている。
【0033】
各外部加熱コイル5aの容量を同じとした場合、配置する外部加熱コイル5aの数を可変することで、外部加熱部5の加熱の容量を容易に変更することができる。各外部加熱コイル5aに供給する高周波電流を、後述する外部加熱用給電部7にて個々にインバータ制御することで、撹拌槽1に収容された被処理物15の加熱を、撹拌槽1内部の槽壁に近い部分において、複数のゾーンに分けたゾーン毎に制御することができる。
【0034】
側壁および底壁に敷設するように配置された複数の外部加熱コイル5aそれぞれの対応領域の1つずつが、外部加熱部5の複数のゾーンの最小単位となる。隣り合って位置する複数の外部加熱コイル5aのそれぞれに、同じ周波数の交流電源を供給してグループ化して、側壁上部ゾーン、側壁下部ゾーン、底壁外周部ゾーン、および底壁内周部ゾーンなどとすることもできる。また、側壁が周壁である場合、周方向にN(Nは2以上)分割すると共に上下方向のM(Mは複数)分割してN×M個のゾーン領域とすることもできる。
【0035】
本実施の形態では、外部加熱部5は、外部加熱コイル5aとして面状IHコイル20を有する。面状IHコイル20については後述する。
【0036】
<内部加熱部>
内部加熱部6は、誘導加熱による発熱にて内部部材を加熱する。本実施の形態では、撹拌翼3を加熱する。内部加熱部6は、撹拌槽1の内部に配置され、撹拌槽1の内部より内部部材を介して被処理物15を加熱する。内部加熱部6は、少なくとも1つの内部加熱コイル6aを含み、本実施の形態では、複数の内部加熱コイル6aを含む。
【0037】
本実施の形態では、内部加熱部6は、複数の内部加熱コイル6aが配置されたクラスター構造を採る。撹拌翼3が、ダブルマックスブレンド翼である場合、複数の内部加熱コイル6aは、翼板に内蔵され、横方向および上下方向に複数並んで配置されている。
【0038】
各内部加熱コイル6aの容量を同じとした場合、配置する内部加熱コイル6aの数を可変することで、内部加熱部6の加熱の容量を容易に変更することができる。各内部加熱コイル6aに供給する高周波電流を、後述する内部加熱用給電部8にて個々にインバータ制御することで、撹拌槽1内部に収容された被処理物15の加熱を、撹拌翼3が位置する内
周側において、複数のゾーンに分けたゾーン毎に制御することができる。
【0039】
撹拌翼3に複数の内部加熱コイル6aを配置する構成では、複数の内部加熱コイル6aそれぞれの対応領域の1つずつが、内部加熱部6の複数のゾーンの最小単位となる。隣り合って位置する複数の内部加熱コイル6aのそれぞれに、交流電源を供給してグループ化して、撹拌翼3の上部ゾーン、撹拌翼3の下部ゾーン、撹拌翼3の中心側ゾーン、および撹拌翼3の外周側ゾーンなどとすることもできる。
【0040】
本実施の形態では、内部加熱部6は、内部加熱コイル6aとして外部加熱コイル5aと同じ面状IHコイル20を有する。
【0041】
<給電部>
外部加熱用給電部7および内部加熱用給電部8は、撹拌槽1の外部に配置されている。外部加熱用給電部7は外部加熱部5の外部加熱コイル5aに対して高周波電流(交流電流)を供給する。内部加熱用給電部8は内部加熱部6の内部加熱コイル6aに対して高周波電流を供給する。
【0042】
外部加熱用給電部7は、交流電源より外部加熱コイル5aに応じた高周波電流を生成するインバータ装置を備える。交流電源はたとえば商用電源である。インバータ装置は、図示してはいないが、コンバータ回路、コンデンサ、およびインバータ回路等を備えている。
【0043】
内部加熱用給電部8は、外部加熱用給電部7と同様の構成を有する。内部加熱用給電部8は、インバータ装置にて生成された交流電流を、内部加熱部6の内部加熱コイル6aに非接触給電システム16を介して供給する。
【0044】
外部加熱部5が、複数の外部加熱コイル5aを有する場合、1つのインバータ装置に対して1つの外部加熱コイル5aを配置してもよい。これにより、各インバータ装置の容量を小さくすることができ、この同じ容量のものを単位インバータとして大量生産することで低コスト化が図れる。インバータ装置は、制御部11からの制御に基づいて、対応する外部加熱コイル5aに必要な高周波電流を供給する。
【0045】
また、一つで、複数のIHコイルに対して各々のIHコイルに必要な高周波電流を供給できるインバータ装置を用いる場合は、1つのインバータ装置に対して複数の外部加熱コイル5aを配置してもよい。1つのインバータ装置に対して1つの外部加熱コイル5aを配置する構成に比べてインバータ装置の容量は大きくなるが、インバータ装置の数を減らすことができる。インバータ装置は、制御部11からの制御に基づいて、対応する複数の外部加熱コイル5aのそれぞれに必要な高周波電流を供給する。
【0046】
内部加熱部6においても同様である。つまり、内部加熱部6が、複数の内部加熱コイル6aを有する場合、1つのインバータ装置に対して1つの内部加熱コイル6aを配置してもよい。これにより、各インバータ装置の容量を小さくすることができ、外部加熱部と同様な理由で低コスト化が図れる。インバータ装置は、制御部11からの制御に基づいて、対応する内部加熱コイル6aに必要な高周波電流を供給する。
【0047】
また、一つで、複数のIHコイルに対して各々のIHコイルに必要な高周波電流を供給できるインバータ装置を用いる場合は、1つのインバータ装置に対して複数の内部加熱コイル6aを配置してもよい。1つのインバータ装置に対して1つの内部加熱コイル6aを配置する構成に比べてインバータ装置の容量は大きくなるが、インバータ装置の数を減らすことができる。インバータ装置は、制御部11からの制御に基づいて、対応する複数の
内部加熱コイル6aのそれぞれに必要な高周波電流を供給する。
【0048】
<光ファイバセンサ、光信号解析部>
光ファイバセンサ9は、被処理物の物理量の分布を測定する。光信号解析部10は、光ファイバセンサ9からの光信号を解析する。本実施形態では、光ファイバセンサ9および光信号解析部10にて、撹拌槽1に収容された被処理物の物理量の分布を測定する物理量測定器が構成されている。
【0049】
なお、物理量測定器は、物理量が温度である場合、複数の熱電対を設けて構成することでも可能である。しかしながら、光ファイバセンサ9を用いた構成とすることで、物理量の分布計測を容易に行うことができるといったメリットがある。
【0050】
光ファイバセンサ9は、光ファイバセンサ9aと光ファイバセンサ9bとを備える。光ファイバセンサ9aおよび光ファイバセンサ9bはどちらも、連続する1本の光ファイバで構成されている。
【0051】
光ファイバセンサ9aは、撹拌翼3に配設され、回転軸4の回転と共に全体が回転する回転式の光ファイバセンサである。光ファイバセンサ9aを用いて、被測定体である撹拌翼3あるいは撹拌翼3の周りの被処理物15の温度などが測定される。
【0052】
光ファイバセンサ9bは、撹拌槽1と撹拌翼3との間に配設され、撹拌槽1内に固定されて設置されている。光ファイバセンサ9bを用いて、被測定体である撹拌槽1内の被処理物15、撹拌槽1の内壁面の温度などが測定される。
【0053】
光ファイバセンサ9a,9b(以下、これらを総称する場合は、光ファイバセンサ9と称する)で測定された光信号は、ジョイント(図示せず)を経由して撹拌槽1の外部に取り出され、光信号解析部10に送られる。
【0054】
光信号解析部10は光ファイバセンサ9から出力された光信号を解析して制御部11に送る。光ファイバセンサ9を用いることで、温度等の物理量の3次元分布を測定することができる。
【0055】
<制御部>
制御部11は、加熱撹拌装置の各部を制御する。制御部11は、外部加熱用給電部7、内部加熱用給電部8、回転軸4に連結されているモータ(図示せず)等を制御する。制御部11および操作部14は、光信号解析部10より入力される信号を基に、温度など、被測定体の所望の位置の物理量、あるいは被測定体の物理量の分布を求める。制御部11および操作部14は、記憶用のメモリあるいはデータベースを備える。光信号解析部10の出力および操作部14の出力は、場合によっては、AI制御器(図示せず)に入力され、逆にAI制御器の出力が操作部14に入力される。
【0056】
制御部11は、光信号解析部10で解析された周波数シフト量から、制御変数としての、撹拌槽1内の被処理物15の温度、粘度、異物の付着状況、あるいはこれらの分布情報を基に、外部加熱用給電部7、内部加熱用給電部8、上記モータ(図示せず)等を可変制御する。
【0057】
制御部11は、加熱制御部であり、外部加熱用給電部7および内部加熱用給電部8を制御して、外部加熱部5および内部加熱部6への給電を、互いに独立して変化させる。給電を制御するとは、具体的には、給電量、給電のタイミング、給電のオンオフ等を制御することである。
【0058】
制御部11は、測定された物理量の分布に応じて、外部加熱部5への給電および内部加熱部6への給電を変化させる。その一例として、制御部11は、測定された物理量の分布に応じて、外部加熱部5への給電量と内部加熱部6への給電量との比を変化させる。また、制御部は、外部加熱部5および内部加熱部6への給電を、互いに独立して変化させる。換言すると、制御部11は、測定された物理量の分布に応じて、外部加熱部5および内部加熱部6を協調連携制御する。
【0059】
また、本実施の形態では、外部加熱部5および内部加熱部6は、複数の外部加熱コイル5aおよび複数の内部加熱コイル6aを備えている。したがって、本実施の形態では、制御部11は、外部加熱部5が備える複数の外部加熱コイル5aへの給電を、互いに独立して変化(個別に変化)させる。同様に、制御部11は、内部加熱部6が備える複数の内部加熱コイル6aへの給電を、互いに独立して変化(個別に変化)させる。すなわち、制御部11は、複数の外部加熱コイル5aと複数の内部加熱コイル6aへの給電をそれぞれ個別に変化させる。
【0060】
さらに、制御部11は、物理量の分布に応じて、外部加熱コイル5aごとに外部加熱コイル5aへの給電、および内部加熱コイル6aごとに内部加熱コイル6aへの給電を変化させる。その一例として、制御部11は、物理量の分布に応じて、外部加熱コイル5aごとに外部加熱コイル5aへの給電量、および内部加熱コイル6aごとに内部加熱コイル6aへの給電量を変化させる。換言すると、制御部11は、測定された物理量の分布に応じて、外部加熱部5および内部加熱部6、並びに各外部加熱コイル5aおよび各内部加熱コイル6aを協調連携制御する。
【0061】
(面状IHコイル)
ここで、
図3、
図4を用いて、外部加熱コイル5aおよび内部加熱コイル6aとして用いることができる面状IHコイル20について説明する。
図3はコイル線30の断面の模式図である。符号3001,3002の図は、第1のコイル線30-1の断面の模式図であり、符号3003,3004の図は、第2のコイル線30-2の断面の模式図である。
【0062】
図4は、
図1に示す加熱撹拌装置の外部加熱コイル5a又は内部加熱コイル6aとして用いることができる面状IHコイル20の構成例を示す図である。符号4001の図は、第1の面状IHコイル20Aの平面模式図である。符号4002の図は、第2の面状IHコイル20Bの平面模式図である。符号4003の図は、第3の面状IHコイル20Cの模式図である。符号4004および符号4005の図は、符号4003の図のB-B線野視断面の模式図であり、導電線31がリッツ線31aの場合と、導電線31がホローチューブ31bである場合とを示す。なお、本明細書では、第1~第3の面状IHコイル20A~20Cを総称する場合に、面状IHコイル20を用いている。
【0063】
図3において符号3001,3002の図に示すように、第1のコイル線30-1は、導電線31の周囲を絶縁体32で被覆し、さらに絶縁体32の周囲を導電体からなる導電被覆層33で被覆した構成である。符号3003,3004の図に示すように、第2のコイル線30-2は、導電被覆層33が形成されていない、導電線31の周囲を絶縁体32で被覆しただけの構成である。
【0064】
導電線31としては、符号3001,3003の図に示す、通常の撚り線構成のリッツ線31a、あるいは、符号3002,3004の図に示す、管状のホローチューブ(通称、ホローコンダクタ)31b等を用いることができる。ホローチューブ31bを用いた場合、冷却路に冷却媒体を流すことで、通電・通水兼用体とすることができる。
【0065】
図4において符号4001の図に示すように、第1の面状IHコイル20Aは、第1のコイル線30-1を内周から外周に向かって巻回した構成である。符号4002の図に示すように、第2の面状IHコイル20Bは、第2のコイル線30-2を内周から外周に向かって巻回した構成である。
【0066】
符号4003~4005の図に示すように、第3の面状IHコイル20Cは、第2のコイル線30-2を用いた第2の面状IHコイル20Bの変形例である。第3の面状IHコイル20Cは、導電線31を内周から外周に向かって巻回し、さらにその全体を絶縁体32に代わる絶縁材料層34で絶縁被覆した構成である。絶縁材料層34としては、耐熱性にも優れたセラミック絶縁材料などを用いることができる。第3の面状IHコイル20Cは、気孔を封止することで、耐液浸、耐ガス浸透性、耐絶縁性、および安全性をより高く確保することができる。
【0067】
導電被覆層33を有する第1の面状IHコイル20Aは、導電線31に高周波電流が流されると、導電被覆層33が誘導加熱され、導電被覆層33に接触している被処理物を加熱する(熱交換する)。つまり、第1の面状IHコイル20Aは、その周辺に導電体が位置していなくても、被処理物を加熱することができる。
【0068】
導電被覆層33を有していない第2、第3の面状IHコイル20B,20Cは、導電線31に高周波電流が流されると、第2、第3の面状IHコイル20B,20Cの周辺に位置する導電体が誘導加熱される。つまり、第2、第3の面状IHコイル20B,20Cは、誘導加熱された周辺の導電体を介して導電体と接触している被処理物を加熱する。
【0069】
面状IHコイル20は、平面的な外観を有しているので、平らな部分への配置に適している。なお、配置する壁面あるいは内蔵させる部位が湾曲している場合は、面状IHコイル20に湾曲に合った反りを持たせてもよい。
【0070】
(撹拌槽の動作)
図5は、
図1に示す加熱撹拌装置100における協調連携制御による加熱プロセスの一例を示す図である。
【0071】
(1)加熱前半:
図5に示すように、加熱前半は、熱容量の大きい撹拌槽1を介さずに被処理物15を加熱可能な、撹拌槽1の内部に位置する内部加熱部6の加熱量の割合(以下、加熱割合)を、外部加熱部5よりも大きくする。例えば、内部加熱部6の加熱割合を0.95、外部加熱部5の加熱割合を0.05とする。
【0072】
さらに、外部加熱部5および内部加熱部6において、ゾーン間(つまり複数の外部加熱コイル5aおよび複数の内部加熱コイル6a)でも加熱量分配を行う。
図6の例では、内部加熱部6が4分割されたゾーン加熱となっている。
【0073】
内部加熱部6は撹拌翼3に内蔵されて回転しているため、加熱の際の温度境界層が薄い。そのため、高伝熱かつ撹拌槽1に比べて撹拌翼3の熱容量が小さいため加熱の時定数が小さく、熱応答性に優れている。なお、加熱の際の温度境界層とは、撹拌翼3と被処理物15との間において温度が急激に変化する層のことである。
【0074】
それゆえ、加熱前半、内部加熱部6にて被処理物が迅速に加熱される。結果、撹拌翼3による循環流れによる対流伝熱が進行し、撹拌翼3の温度は均一化の方向に向かうが、実際には温度分布は不均一となる。外部加熱部5による槽壁からの加熱量は少であり、撹拌槽1の加熱に費やされる。
【0075】
(2)加熱中盤:加熱プロセスの前半では内部加熱部6は、複数に分割(図では4分割)されたゾーン加熱となっており、上述したような撹拌翼3から迅速な加熱がなされる。しかし、撹拌翼3は、回転軸4を中心に回転しているために、上下方向の加熱量分配に適しているが、周方向の加熱量分配には不向きである。つまり、撹拌翼3に設けられた内部加熱部6は、周方向の溶液の温度制御には不向きである。
【0076】
このような温度ムラの解消には、外部加熱部5による面制御が適している。そのため、被処理物15の温度が所定温度に達した加熱中盤は、外部加熱部5の加熱量を増加させ、外部加熱部5および内部加熱部6の加熱割合を、例えば0.5:0.5に折半する。
【0077】
さらに、高精度に温度調節をする場合、例えば、槽の上部の温度が高い場合には外部加熱部5および内部加熱部6において、ゾーン間でも加熱量分配を行う。
図5の例では、例えば外部加熱部5および内部加熱部6を共に上半分ゾーンと下半分ゾーンとに分割し、上半分ゾーンと下半分ゾーンの加熱比率を、上半分ゾーンを0.4、下半分ゾーンを0.6としている。このようにすることで、撹拌槽1の上部と下部とでの被処理物15の温度ムラを抑制して均一化することができる。この加熱プロセス中盤の加熱量分配にて、被処理物15の温度ムラを極小にし、各々の目的に応じた任意の温度分布が形成されていく。
【0078】
(3)加熱後半:加熱プロセスの後半においては、さらに、最適な温度分布を形成するために、例えば、外部加熱部5と内部加熱部6との加熱割合を0.95:0.05とする。ここでも、外部加熱部5および内部加熱部6において、ゾーン間でも加熱量分配を行う。加熱量を例えば撹拌槽1の槽壁に分布、集中させることにより、目標の最適な三次元温度分布が実現可能となる。つまり、光ファイバセンサ9にて撹拌槽1内の被処理物15の温度の3次元分布計測を行い、目標の最適な三次元温度分布が実現されるように、制御部11が外部加熱部5および内部加熱部6、並びに各外部加熱コイル5aおよび各内部加熱コイル6aを協調連携制御する。
【0079】
図5の例では、撹拌槽1の底部および上端部に検出された、温度が他の部分に比べて低い部分に対して、対応領域が該当する部分に含まれる外部加熱コイル5a’の加熱比率を、他の外部加熱コイル5aよりも高くしている。
【0080】
(効果)
上記構成によれば、加熱撹拌装置は、撹拌槽1の内部に設けられた内部部材である撹拌翼3と、誘導加熱による発熱にて内部部材を加熱する、少なくとも1つの内部加熱コイル6aを含む内部加熱部6と、誘導加熱による発熱にて撹拌槽1を加熱する、少なくとも1つの外部加熱コイル5aを含む外部加熱部5と、を備えている。
【0081】
これにより、外部加熱部5および内部加熱部を用いることで、従来構成の加熱撹拌装置のように、被処理物15の液面の近傍の撹拌槽壁面に近い部分の温度が上がり過ぎて、被処理物15を焦げ付かせるといった不具合を招来することなく、被処理物15を適切に加熱することができる。また、外部加熱部5および内部加熱部を用いることで、三次元的な加熱が可能となり、かつ加熱量の増加をもたらすことができる。
【0082】
そして、被処理物15を適切に加熱することができるので、例えば、加熱時間を短くして省エネ化を実現できる。また、被処理物15を適切に加熱することで、被処理物15の品質を向上させることもできる。
【0083】
また、外部加熱部5と内部加熱部6の複数部位、並びに各外部加熱コイル5aおよび各内部加熱コイル6aの加熱量の協調連携制御が可能となる。これによれば、現行のジャケット加熱の場合においては、槽内温度分布が強く撹拌翼の撹拌流れに依存し、かつ遅速、
脆弱なフィードバック制御であったのを、以下に説明するような量的、質的な転換を図ることが可能となる。
【0084】
つまり、1)大容量化(容量制御幅大)、2)任意かつ最適な三次元物理量分布、3)高速・高精度フィードバック制御が実現する。以下に具体的にその効果を説明する。
【0085】
1)に関して、撹拌槽1のスケールアップ(大容量化)の際に、被処理物に必要な加熱量は代表寸法Dの3乗に比例するのに対して、撹拌槽などのジャケットの伝熱面積はDの2乗でしか増加しない。そのため、撹拌槽の大容量化(大型化)には自ずと限界が生じていた。
【0086】
これに対して、上述の構成とすることで、三次元的に加熱部位が形成されるため、上記のスケールアップの限界を打破することが可能となる。つまり、従来構成と同じ温度差とすると外部加熱部と内部加熱部の両者の加熱により大容量加熱が実現する。また、加熱量を同じとすると高伝熱特性ゆえに極小温度差での加熱が実現され、焦げ付きが無く無駄のない製造に寄与することもできる。さらに、外部加熱部5および内部加熱部6が、給電を個々に制御可能な複数の外部加熱コイル5aおよび複数の内部加熱コイル6aを有しているので、電気的にゾーン部位の各加熱量可変や、ゾーンごとの加熱のオン、オフ時間制御による加熱(電気)量制御を行うことで、容量の制御や高精度な温度制御も可能となる。
【0087】
加えて、導電線31としてホローコンダクタ31bを用いた場合には、冷却媒体の流量
を可変することで、給電による加熱制御に加えて冷却することも可能となり、より高精度な温度制御を実現することができる。また、温度制御のみならず、温度制御を介して被処理物の粘度、プラスチックにおける重合度などの物理量を可変させることも可能となる。
【0088】
また、複数の外部加熱コイル5aおよび複数の内部加熱コイル6aを、同一の面状IHコイル20にて構成しているので、面状IHコイル20の量産によるコストダウンももたらされる。
【0089】
2)に関して、上述の構成とすることで、協調連携制御にて任意の被処理物15の三次元物理量分布を形成することが可能となる。その結果、最大収率、最高品質、最短時間、または最大省エネなど目的に応じた最適な温度分布が実現する。
【0090】
3)に関して、被処理物の温度、粘度などの物理量(撹拌パラメータ)の三次元分布の経時変化を測定し、データのAI処理などを行うことで、複数の外部加熱コイル5aおよび複数の内部加熱コイル6aの加熱量の迅速かつ高精度なフィードバック制御を実現可能である。
【0091】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0092】
図6は、実施の形態2に係る加熱撹拌装置100Aの構成を概略的に示す図である。
図6は、加熱撹拌装置100Aの縦断面を示しており、撹拌翼3Aについては正面図で示している。
図7は、加熱撹拌装置100Aの底面図である。なお、
図6においては、記載の便宜上、外部加熱用給電部7、内部加熱用給電部8、非接触給電システム16、光ファイバセンサ9、光信号解析部10、制御部11および操作部14などの記載を省略している。
【0093】
図6に示すように、本実施の形態に係る加熱撹拌装置100Aは、撹拌翼3として、IHコイル機能を兼ね備えた撹拌翼3Aを備えている。この点が実施の形態1に係る加熱撹拌装置100と異なる。
【0094】
撹拌翼3Aは、上下方向に分割して複数のコイルとすることで、上下方向のゾーン分けを行うことができる。また、
図7に示すように、面状IHコイル20は、前述した小判状や帯状に限らず、
図9に示すような、渦巻状に巻回した円形形状にすることもできる。
【0095】
図8、
図9を用いて、撹拌翼3Aに用いることができるIHコイル管21について説明する。
図8は、第1のIHコイル管21Aの構成を示す図である。符号8001の図は、第1のIHコイル管21Aの外観を示す図であり、符号8002の図は、符号8001の図のC-C矢視断面の模式図である。
図9は、第2のIHコイル管21Bの構成を示す図である。
【0096】
図8に示すように、第1のIHコイル管21Aは、例えばステンレス等の導電性材料からなる導電管(例えばSUS管)35の内部に、第2のコイル線30-2を複数条配置し、導電管35ごとコイル状に巻回した構成である。導電管35の内部の第2のコイル線30-2の導電線31に高周波電流が流されると、導電管35が誘導加熱される。その際、導電管35に、供給した電力の95%程度が入り、残りの5%未満の電力が第2のコイル線30-2のジュール熱に変換される。したがって、同様な形状を有するシーズヒーターのニクロム線と比較して高温になりにくく耐熱性に優れている。
【0097】
図9に示すように、第2のIHコイル管21Bは、第1のコイル線30-1を螺旋状に巻回した構成である。第2のIHコイル21Bの導電線31に高周波電流が流されると、導電被覆層33が誘導加熱される。第2のIHコイル管21Bは、螺旋状に2条巻き付けられたダブルヘリカルリボン構造を有している。ダブルヘリカルリボン構造とすることで、第2のIHコイル管21Bを回転させることで、被処理物15を搬送させる力が生まれる。導電管35の内部に第2のコイル線30-2を収容した第1のIHコイル管21を、ダブルヘリカルリボン構造としてもよい。
【0098】
図8、
図9に示すように、IHコイル管21の中央には、撹拌翼3Aの主軸22が設けられており、IHコイル管21と接続される。撹拌翼3Aの主軸22が前述した回転軸4と接続されることで、撹拌翼3Aが回転され、撹拌槽1内に収容されている被処理物15を撹拌する。
【0099】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0100】
図10は、実施の形態3に係る加熱撹拌装置100Bの構成を概略的に示す図である。
図10は、加熱撹拌装置100Bの縦断面を示している。
図11は、
図10のD-D線矢視断面の模式図である。なお、
図10においては、記載の便宜上、外部加熱用給電部7、内部加熱用給電部8、非接触給電システム16、光ファイバセンサ9、光信号解析部10、制御部11および操作部14などの記載を省略している。また。
図11では、光ファイバセンサ9の記載を省略している。
【0101】
図10,
図11に示すように、本実施の形態に係る加熱撹拌装置100Bは、撹拌翼3に代えて、内部加熱部6が設けられていない回転式の撹拌翼3Bと、撹拌翼3Bと撹拌槽1の側壁との間に、側壁の曲面に沿った円弧形状で配設された静止翼12が設けられてい
る。内部加熱部6は、静止翼12の内部に設けられている。静止翼12は、周方向に分轄され、上下方向に延在している。このような静止翼12内部に、内部加熱部6の複数の内部加熱コイル6aが内蔵されている。
【0102】
なお、
図11の例では、静止翼12内部に1つの内部加熱コイル6aが配置されている例を記載しているが、内部加熱コイル6aは、静止翼12内部に周方向および上下方向に敷設されるように配置されている。つまり、内部加熱コイル6aは、クラスター構造を採り、側壁の内側に周方向に複数並んで配置され、側壁の内側に上下方向に複数並んで配置されている。
【0103】
側壁の内側と静止翼12との間には、所定距離が確保されているので、複数の静止翼12はドラフトチューブのような機能を有する。これにより、静止翼12と側壁の内側との間で被処理物15の流れが促進され、撹拌混合性能が向上する。
【0104】
内部加熱コイル6aが、第1の面状IHコイル20Aである場合は、静止翼12は、導電体および非導電体のいずれから構成されていてもよい。内部加熱コイル6aが、第2の面状IHコイル20B又は第3の面状IHコイル20Cである場合は、静止翼12は導電体より構成される。静止翼12は、一部が非導電体であってもよい。
【0105】
内部加熱コイル6aが、第1の面状IHコイル20Aである場合、静止翼12のみならず、内部加熱コイル6aの近傍に位置する導電体、例えば、撹拌槽1の槽壁、槽壁に設けられた後出するバッフル板13(
図12,13参照)等の構造物も同時に誘導加熱される。バッフル板等が加熱されることで、被処理物15を、より一層三次元的に加熱することができ、加熱量の増加をもたらすことができる。
【0106】
また、このように、静止翼12に設けられた内部加熱部6は回転しないため、非接触給電システム16を設ける必要なく、撹拌槽1又は蓋2に形成した貫通孔を通して内部加熱部6に給電することができる。
【0107】
〔実施の形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0108】
図12は、実施の形態4に係る加熱撹拌装置100Cの構成を概略的に示す図である。
図12は、加熱撹拌装置100Cの縦断面を示している。
図13は、
図12のE-E線矢視断面の模式図である。なお、
図12においては、記載の便宜上、撹拌翼3(3B)、回転軸4、外部加熱部5、外部加熱用給電部7、内部加熱用給電部8、非接触給電システム16、光ファイバセンサ9、光信号解析部10、制御部11および操作部14などの記載を省略している。また。
図13では、撹拌翼3(3B)、外部加熱部5、光ファイバセンサ9の記載を省略している。
【0109】
図12,
図13に示すように、本実施の形態に係る加熱撹拌装置100Cは、撹拌槽1の側壁の内側に、撹拌混合性能を上げるためのバッフル板(内部部材)13が形成されている。バッフル板13は、上下方向に延在し、周方向に複数配置されている。
図12,
図13の例では、周方向にバッフル板13が4枚配設されている。
【0110】
内部加熱部6は、バッフル板13に設けられている。バッフル板13内部に、内部加熱部6の複数の内部加熱コイル6aが内蔵されている。
【0111】
内部加熱コイル6aは、バッフル板13内部に径方向および上下方向に複数、敷設されるように配置されている。つまり、内部加熱コイル6aは、クラスター構造を採り、バッフル板13の幅方向である径方向に複数並んで配置され、バッフル板13の高さ方向である上下方向に複数並んで配置されている。
【0112】
バッフル板13に設けられた内部加熱部6は回転しないため、非接触給電システム16を設ける必要なく、撹拌槽1又は蓋2に形成した貫通孔を通して内部加熱部6に給電することができる。
【0113】
このような構成は、被処理物15を三次元的に加熱すると共に、伝熱面積の拡大する効果、および付着物を抑制する、あるいは溶解する効果がある。
【0114】
〔実施の形態5〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0115】
図14は、実施の形態5に係る加熱撹拌装置100Dの構成を概略的に示す図である。
図14は、加熱撹拌装置100Dの縦断面を示している。
図14においては、記載の便宜上、撹拌翼3(3B)、回転軸4、外部加熱部5、外部加熱用給電部7、内部加熱用給電部8、非接触給電システム16、光ファイバセンサ9、光信号解析部10、制御部11および操作部14などの記載を省略している。
【0116】
図14に示すように、本実施の形態に係る加熱撹拌装置100Dは、撹拌槽1の側壁の内側に、撹拌混合性能を上げるためのドラフトチューブ(内部部材)17が配設されている。ドラフトチューブ17は、撹拌槽1を外塔とすると、内筒に相当する。ドラフトチューブ17は、側壁の内側との間に所定距離を確保して設けられ、上下方向に延在する。
【0117】
内部加熱部6は、ドラフトチューブ17に内蔵されている。ドラフトチューブ17の内部に、内部加熱部6の複数の内部加熱コイル6aが内蔵されている。
【0118】
内部加熱コイル6aは、ドラフトチューブ17の形状に沿って、周方向および上下方向に複数、敷設されるように配置されている。つまり、内部加熱コイル6aは、クラスター構造を採り、ドラフトチューブ17の周方向に複数並んで配置され、ドラフトチューブ17の高さ方向である上下方向に複数並んで配置されている。
【0119】
ドラフトチューブ17に設けられた内部加熱部6は回転しないため、非接触給電システム16を設ける必要なく、撹拌槽1又は蓋2に形成した貫通孔を通して内部加熱部6に給電することができる。
【0120】
このような構成は、被処理物15を三次元的に加熱すると共に、例えば、晶析による結晶化の際の微小結晶粒の溶解や結晶付着抑制に効果がある。
【0121】
なお、上記説明においては、内部部材として、撹拌翼3,3A,3B、バッフル板13、およびドラフトチューブ17といった、撹拌に関する部材を例示した。しかしながら、内部部材はこれらに限らず、例えば、ホローチューブ31bのような内部に空洞を有する管を撹拌槽1の内部に配置し、空洞に冷媒あるいは熱媒を流して被処理物15と熱交換を行う熱交換器等であってもよい。
【0122】
〔付記事項〕
本発明の加熱撹拌装置は、様々な分野に適用することができる。例えば、食材を加熱撹拌する調理器などに本発明の加熱撹拌装置を適用することができる。また、下水汚泥処理を行う下水汚泥処理装置や、有機物を発酵させる発酵処理装置、モノマー同士を組み合わせて巨大高分子物質を生成する重合反応器、プラスチックのケミカルリサイクル装置、高粘度物質の脱溶剤、脱モノマーおよび脱揮を行なう蒸発器などに本発明の加熱撹拌装置を適用することができる。
【0123】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0124】
1 撹拌槽
6 内部加熱部
3、3A、3B 撹拌翼(内部部材)
5 外部加熱部
5a、5a’ 外部加熱コイル
6a 内部加熱コイル
7 外部加熱用給電部
8 内部加熱用給電部
9、9a、9a 光ファイバセンサ
10 光信号解析部
11 制御部
12 静止翼(内部部材)
13 バッフル板(内部部材)
15 被処理物
17 ドラフトチューブ(内部部材)
20 面状IHコイル
21 IHコイル管
100、100A、100B、100C、100D 加熱撹拌装置