(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180933
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】転写テープ
(51)【国際特許分類】
A45D 29/00 20060101AFI20231214BHJP
B41M 5/52 20060101ALI20231214BHJP
B44C 1/17 20060101ALI20231214BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20231214BHJP
A45D 31/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A45D29/00
B41M5/52 110
B44C1/17 N
B32B7/06
A45D31/00
B41M5/52 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094620
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西田 京平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 教一
【テーマコード(参考)】
2H186
3B005
4F100
【Fターム(参考)】
2H186AA13
2H186BA12
2H186BB02Z
2H186BB05X
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3B005GA17
4F100AA21B
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4F100BA03
4F100BA07
4F100CB00C
4F100GB71
4F100JB07
(57)【要約】
【課題】様々な大きさ、様々な形状の爪に合わせて、爪表面に転写することができ、かつ、爪表面に転写された転写層がインクジェットプリンターによる印刷に対して優れた受像性能を有し、使用者が好みに合った任意の絵柄を選択して、爪上に装飾することが可能なネイルプリンター用転写テープの提供。
【解決手段】インクジェット方式のネイルプリンター用の白色受像層を爪上に転写するための転写テープで、転写テープは基材側から少なくとも白色受像層、接着層の順で積層され、基材は厚み5μm以上26μm以下のポリエチレンテレフタレートで、白色受像層がスチレン共重合体をバインダーとして、酸化チタンを白色受像層の固形分中の60重量%以上85重量%以下含有する転写テープ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式のネイルプリンター用の白色受像層を爪上に転写するための転写テープであって、前記転写テープは基材上に前記基材側から少なくとも前記白色受像層、接着層の順で積層され、前記基材は厚み5μm以上26μm以下のポリエチレンテレフタレートであり、前記白色受像層がスチレン共重合体をバインダーとして、酸化チタンを前記白色受像層の固形分中の60重量%以上85重量%以下含有することを特徴とする転写テープ。
【請求項2】
前記スチレン共重合体がイソプレン、ブタジエン、エチレン、及びブチレンから選ばれる少なくとも1種とスチレンの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の転写テープ。
【請求項3】
前記白色受像層の厚さが15μm以上35μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の転写テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンターで絵柄等の装飾を施すための白色受像層を、爪の表面に転写するために使用するネイルプリンター用転写テープに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来から手足の爪表面に光沢や装飾を付与するための転写テープが提案されている。このような転写テープとして、特許文献1では、支持シート上に積層された透明層、絵柄層、ならびに該透明層および絵柄層よりも上層の接着剤層を有する転写部を備え、前記透明層が、前記接着剤層を介して爪に転写された前記転写部の表面に塗布されるトップコートに対して溶解性を有するネイルアート用転写シールが提案されている。しかしながら、特許文献1のネイルアート用転写シールは、当初から絵柄層が積層された転写シールであり、使用者が好みに合った任意の絵柄を選択することができなかった。
【0003】
また、特許文献2では、接着層とインク層が積層された転写層と、上記転写層の接着面と反対側の面が剥離可能に貼着された基材シートとを備えたことを特徴とする爪装飾用転写シートが提案されている。しかしながら、特許文献2の爪装飾用転写シートは、爪貼着片を爪と大略同じ幅に形成した後に、爪の先端縁の爪貼着片を爪に合わせて切断、すなわち、爪の縁に合わせて転写層をちぎる必要があるものであり、爪の形状に合わせて爪貼着片
を容易に貼り付けることができるものでは、無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-337601号公報
【特許文献2】特開2002-225496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、様々な大きさ、様々な形状の爪に合わせて、爪表面に転写することができ、かつ、爪表面に転写された転写層がインクジェットプリンターによる印刷に対して優れた受像性能を有することで、使用者が好みに合った任意の絵柄を選択して、爪上に装飾することが可能なネイルプリンター用転写テープの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明は、インクジェット方式のネイルプリンター用の白色受像層を爪上に転写するための転写テープであって、前記転写テープは基材上に前記基材側から少なくとも前記白色受像層、接着層の順で積層され、前記基材は厚み5μm以上26μm以下のポリエチレンテレフタレートであり、前記白色受像層がスチレン共重合体をバインダーとして、酸化チタンを前記白色受像層の固形分中の60重量%以上85重量%以下含有することを特徴とする転写テープである。
【0007】
第2発明は、前記スチレン共重合体がイソプレン、ブタジエン、エチレン、及びブチレンから選ばれる少なくとも1種とスチレンの共重合体であることを特徴とする第1発明に記載の転写テープである。
【0008】
第3発明は、前記白色受像層の厚さが15μm以上35μm以下であることを特徴とする第1発明又は第2発明に記載の転写テープである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ネイルプリンター用転写テープを、厚み5~26μmのポリエチレンテレフタレート基材上に、白色受像層、接着層をこの順で積層し、白色受像層がスチレン共重合体をバインダーとして、酸化チタンを白色受像層の固形分中の60重量%以上85重量%以下含有する転写テープとした。ネイルプリンター用転写テープをこのような構成とすることで、転写時の白色受像層のキレ性を良好なものとすることができるとともに、爪に転写した白色受像層がインクジェットプリンターでの印字に対する優れた受像性能を有するものとすることができる。このため、本発明の転写テープを使用すれば、白色受像層と接着層で構成される転写層を、容易に爪の形状に合わせて転写することが出来るとともに、転写された白色受像層がインクジェットプリンターで印字した画像の下地となって、爪上に印字しようとした画像の内容が確実に再現できる、ネイルプリンター用転写テープを提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の転写テープの一例である転写テープAの層構成を示す図である。
【
図2】本発明の転写テープとともに使用される、転写ヘラの一例である転写ヘラBの形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の転写テープを、さらに詳しく説明する。
【0012】
〔転写テープ〕
本発明の転写テープは、少なくとも基材上に白色受像層と接着層が、基材側から白色受像層、接着層の順で積層された転写テープである。本発明の転写テープの基材から接着層と白色受像層を、爪へ転写することによって、爪の表面にインクジェットプリンターでの印刷を受像できる白色受像層を転写することができる。
【0013】
本発明の転写テープの一例である転写テープAを
図1に示す。本発明の転写テープは、
図1に示すように、基材(10)の一方の面に白色受像層(11)、接着層(12)が基材側からこの順が積層された転写テープである。本発明の転写テープは、基材(10)と白色受像層(11)間に離型層を設けてもよく、離型層を設けることにより、基材(10)からの白色受像層(11)と接着層(12)の爪への転写性を向上することができる。但し、白色受像層(11)の転写時に、離型層が白色受像層(11)とともに転写されると、転写後の白色受像層(11)のインクジェットプリンターによる受像性能が低下するおそれがあるので、離型層は白色受像層(11)の転写時に確実に転写されない層であることが好ましい。また、接着層へのゴミや埃の付着を防止するために、接着層上に接着層から剥離可能なセパレータを設けてもよい。
【0014】
(基材)
本発明の転写テープに使用する基材としては、白色受像層と接着層(以下、白色受像層と接着層を合わせて転写層と言う)の転写性と転写時の転写層のキレ性の両方に優れているため、ポリエチレンテレフタレートが好適である。基材にポリエチレンテレフタレートを使用した場合、基材の厚さは5μm以上26μm以下が好ましく、9μm以上17μm以下がより好ましい。基材の厚さが5μm未満になるか、または26μmを超えると、転写時の転写層のキレ性が低下する。ここで、転写層のキレ性とは、転写層の転写される部分と、転写される部分の周りの転写されない転写層との切れ易さを示す性能である。転写層のキレ性が低下すると、転写された転写層の周囲にバリや、破れが発生し、転写された転写層の見た目が悪くなる他、白色受像層のインクジェットプリンターでの印字に対する受像性能が低下するおそれもある。
【0015】
(白色受像層)
白色受像層は爪に転写されて、インクジェットプリンターでの印刷を受像する層であるとともに、基材と白色受像層間に離型層を設けない場合には、基材から剥離する剥離性能も有することが好ましく、かつ基材上に容易に積層できる性能を合わせ持つ層であることが好ましい。基材上に容易に積層できるという観点から、白色受像層は、バインダーとして樹脂を含有する層であることが好ましい。なお、バインダーとは、塗工により形成された各層の成分であり、前記各層に含有する粒子や添加剤等の成分を、前記各層中に保持するため使用される成分である。白色受像層のバインダーとして用いる樹脂は、インクジェットプリンターによる印字に対する受像性能、爪表面へ転写後に表面層となった際の耐擦性、耐水性、耐溶剤性を含む耐久性という観点から、各種樹脂の中でも、スチレン共重合体が好ましい。また、白色受像層のバインダーとして、スチレン共重合体の中でも、イソプレン、ブタジエン、エチレン、ブチレンから選ばれる少なくとも1種とスチレンの共重合体を使用することにより、白色受像層の、インクジェットプリンターによる印字に対する受像性能と、爪表面へ転写後に表面層となった際の耐擦性、耐水性、耐溶剤性を含む耐久性の両方を特に向上することができる。白色受像層のバインダーとしては、スチレン共重合体とともに、他の樹脂を用いることも可能であるが、バインダーとしてスチレン共重合体ととも用いる樹脂は、スチレン共重合体を使用することで得られるインクジェットプリンターによる印字に対する受像性能、爪表面へ転写後に表面層となった際の耐擦性、耐水性、耐溶剤性を含む耐久性を阻害しない樹脂を使用することが好ましい。このような樹脂としては、脂環式飽和炭化水素などが例示される。
【0016】
白色受像層に含有するスチレン共重合体の含有割合は、白色受像層固形分中の14重量%以上38重量%以下が好ましい。白色受像層固形分中のスチレン共重合体の含有割合が14重量%未満になると、対擦性、耐水性、耐溶剤性を含む耐久性が低下する。一方、白色受像層固形分中のスチレン共重合体の含有割合が38重量%を超えると、インクジェットプリンターによる印刷の受像性能が低下し、印字不良が発生するおそれがある。
【0017】
白色受像層は、インクジェットプリンターによる印刷を受像する層であるとともに、爪に転写されて爪の色を隠蔽する層である。白色受像層が、爪の色を隠蔽することによって、白色受像層上にインクジェットプリンターで作製される印刷が、爪の色の影響を受けず、印刷しようと意図した色の印刷が再現される。このような隠蔽性能を確保するために、白色受像層へは白色顔料を含有する。
【0018】
白色受像層に含有する白色顔料としては、各種白色顔料の中でも、酸化チタンが、最も好ましい。酸化チタンを含有することにより十分な隠蔽性を確保できるとともに、酸化チタンがインクジェットプリンターのインクを吸収する性質を持っているために、インクジェットプリンターによる受像性能も確保することができる。また、酸化チタンを含有することにより、白色受像層のキレ性を向上することができるので、爪への転写性能も良好となる。
【0019】
白色受像層に含有する酸化チタンの含有割合は、白色受像層固形分中の60重量%以上85重量%以下が好ましい。白色受像層固形分中の酸化チタンの含有割合が60重量%未満になると、インクジェットプリンターによる印刷の受像性能が低下するとともに、白色受像層の白色度と隠蔽性能が低下し、インクジェットプリンターによる印刷の色が意図した色に見えなくなり、印刷色の再現性が低下する。一方、白色受像層固形分中の酸化チタンの含有割合が85重量%を超えると、耐擦性、耐水性、耐溶剤性を含む耐久性が低下し、爪上に転写後の白色受像層が、削れ易くなるとともに、水に濡れると剥がれ易くなる。
【0020】
白色受像層に使用する酸化チタンの平均粒子径は0.1μm以上0.5μm以下が好ましく、0.2μm以上0.4μm以下がより好ましい。平均粒子径が0.1μm未満になると塗工液の粘度が高くなって基材への塗工が困難になる。また0.5μmを超えると塗工液での均一な分散が困難になる。ここでの平均粒子径は、(株)島津製作所製のレーザ回析式粒度分布測定装置「SALD-1100」で、測定したものである。平均粒子径を算出する上での、粒子量の基準(次元)は、体積基準を用いている。白色受像層厚さ(乾燥後厚さ、以下同様)は、15μm以上35μm以下であることが好ましい。白色受像層厚さが、15μm未満になると、インクジェットプリンターによる印刷の受像性能が低下するとともに、白色受像層の白色度と隠蔽性能が低下し、インクジェットプリンターによる印刷の色が意図した色に見えなくなり、印刷色の再現性が低下する。また、白色受像層厚さが35μmを超えると、白色受像層のキレ性が低下し、転写された白色受像層の周辺部でバリが発生しやすくなる。
【0021】
白色受像層は、上記材料を適当な溶媒へ分散又は溶解して、塗工液とし、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法等の公知の手段により、基材上に塗工して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。
【0022】
白色受像層には、白色受像層に要求される各種の機能を阻害しない範囲内であれば、各種の添加剤を含有しても良い。前記添加剤としては、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤などがあげられる。これらの添加剤は、通常化粧品に使用される添加剤が好ましく、更に皮膚に対する安全性が高い添加剤がより好ましい。
【0023】
(接着層)
本発明の転写テープでは、白色受像層上の最外層(接着層を保護するセパレータ等の剥離可能な層を除く最外層)として接着層が設けられる。本発明の転写テープでは、インクジェットプリンターの印刷を受像する白色受像層と、爪への接着性を付与する接着層を分けて機能分離することにより、接着層に十分な接着力を付与しつつ、白色受像層と接着層を含む転写層のキレ性を良好にできる。
【0024】
接着層に使用する材料としては、各種粘着性を有する樹脂が使用可能であるが、接着力の調整が容易で、かつ、圧力を加えることにより粘着性を発現しやすい性質を有しているため、各種粘着性樹脂の中でも、アクリル粘着剤を用いることが好ましい。接着層の接着力は、0.5N/25mm幅以上2.0N/25mm幅以下が好ましい。接着層の接着力が0.5N/25mm未満になると、転写後に1週間を超える長期間にわたって使用する場合には、接着性が維持できず、浮きや剥がれが発生するおそれがある。一方、接着層の接着力が2.0N/25mmを超えると接着力が強すぎて、使用後に接着層を含む転写層を爪から剥がす際に、剥がれにくくなる。
【0025】
(接着層の接着力測定)
接着層の接着力は、以下の方法で測定することができる。PET基材表面にシリコーン離型処理した離型シート上に接着層を積層し、接着層上に白色受像層を積層して接着力測定用シートを準備する。接着力測定用シートの白色受像層上に片面接着テープ(日東電工製ニットー31B、テープ幅25mm)を貼り付ける。次に片面接着テープの両端に沿って接着力測定用シートをカットし、長さ150mm幅25mmの接着力測定片を準備する。接着力測定片の離型シートを剥がして、露出した接着層を、厚み2mmのステンレス鋼板(JISG4305に規定するSUS304鋼板で、表面仕上げBA(冷間圧延後、光輝熱処理)の鋼板を使用し、表面粗さは、JIS B0601に規定するRa:50±25nmのものとする)に2Kgのローラーを1往復させる方式で圧着し、圧着後室温で約24時間放置する。次に、常温・常湿中で引っ張り試験機を用いて、180°の剥離角度、剥離速度:1200mm/minで転写テープの長手方向に、転写テープをステンレス鋼板から剥離させて転写テープの接着層の接着力(N/25mm)を測定する。
【0026】
接着層厚さ(乾燥後厚さ、以下同様)は、0.5μm以上2.5μm以下が好ましい。接着層厚みが0.5μmを下回ると、転写後の1週間を超える長期間にわたって使用する場合に、接着性が維持できず、浮きや剥がれが発生するおそれがある。一方、接着層厚さが2.5μmを超えると、接着力が強すぎて、使用後に接着層を含む転写層を爪から剥がす際に、剥がれにくくなる。
【0027】
(転写ヘラ)
本発明の転写テープはエラストマー製の転写ヘラとともに用いることで、爪上に接着層と白色受像層を含む転写層を容易に転写して、爪上に、浮きや剥がれなく転写層を定着することができる。エラストマー製とはエラストマーを主成分とする材料でよく、必ずしも100%エラストマーの材料でなくてもよい。また、転写ヘラは全てがエラストマー製である必要はなく、少なくとも、爪に転写テープの転写層を転写するために、転写テープを押圧する転写ヘラ先端部が、エラストマー製であればよい。
【0028】
転写ヘラに使用するエラストマーのビッカース硬度は、43HV以上70HV以下が好ましい。エラストマーのビッカース硬度が43HV未満になると転写テープの接着層が爪に十分に接着せず、転写後の転写層に浮きや剥がれが発生するおそれがある。一方、エラストマーのビッカース硬度が70HVを超えると、転写時に白色受像層にキズが入ったり、白色受像層が変形して、インクジェットプリンターでの受像性能が低下するとともに、転写後の爪の見た目が悪くなるおそれがある。エラストマーのビッカース硬度HVは、微小硬度計(株式会社ミツトヨ製のHM221)を使用して、荷重0.01Nをエラストマー材料の平らな部分に15秒間加えて、JIS Z2244に従って3回測定した平均値である。ビッカース硬度が上記範囲内であれば、使用するエラストマー材質には特に制限は無く、ポリウレタンエラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリアミドエラストマー、ナイロン12系エラストマー、ポリエステルエラストマー等のエラストマーや、アクリルゴム、NBR、イソプレンゴム、SBR、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム等の各種ゴム材料が使用可能である。
【0029】
転写ヘラ先端部の転写テープを押圧する面積は、2mm2(例えば縦1mm×横2mm)以上6mm2(例えば縦2mm×横3mm)以下であることが好ましい。面積が2mm2未満になると、単位面積当たりの押圧力が大きくなって、白色受像層を傷つけるおそれがある。また、面積が2mm2未満になると、転写ヘラの先端部が破損し易くなる。一方、面積が、6mm2を超えると転写テープを押圧する単位面積当たりの押圧力が小さくなって、転写テープの接着層が十分に接着せず、転写後の転写層に浮きや剥がれが発生するおそれがある。
【0030】
転写ヘラ先端部の押圧面の形状は長方形、又は正方形であることが好ましい。押圧面の形状を長方形、又は正方形とすることで、長方形、又は正方形の一辺に沿って転写ヘラを爪上で移動させることによって、転写ヘラで押圧した転写テープ面に均等に押圧力を加えることができる。転写ヘラ先端部の押圧面の形状が長方形である場合には、長い方の一辺の長さは3mm以下であることが好ましい。爪の表面は湾曲しており、長方形の長い方の一辺が3mmを超えると、転写ヘラ先端部が爪表面の曲面に沿うことができず、転写ヘラが転写テープに均一な圧力を加えることができなくなり、転写層の転写不良が発生し易くなる。
【0031】
(インクジェットプリンター)
本発明で、爪上に転写した転写テープの白色受像層上に画像等を印刷するプリンターである所謂ネイルプリンターとしては、インクジェットプリンターを好ましく使用することができる。ネイルプリンターとして使用するインクジェットプリンターが印刷のために吐出するインクは、人体に使用するため、溶媒として有機溶剤を含有しないことが好ましい。しかしながら、インクに活性エネルギー線硬化型組成物を含有する場合などには、インクの溶媒として有機溶剤が使用されることがある。インクの溶媒として有機溶剤を含有している場合には、有機溶剤が受像層に浸透して受像層を溶かすことによって、受像層に割れが生じることがある。受像層が割れると、印刷後の受像層表面の見た目が悪くなる他、酷い場合には、受像層が浮き上がることもあるが、本発明の転写テープを爪上に転写した白色受像層は、バインダーとしてスチレン共重合体を使用しているので、有機溶剤を使用したインクを受像する場合にも、白色受像層表面に割れが生じることはない。
【0032】
(実施例)
本発明を、以下の実施例、比較例を用いて、更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。以下、各材料の配合量について、部と表示するものについては、特に断りがない限り、重量部を示すものとする。
【0033】
(転写テープ)
(実施例1)
(白色受像層)
下記処方の材料を混練して作製した白色受像層塗工液を厚さ6μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗工、乾燥させて、厚さ25μmの白色受像層を形成した。
(白色受像層塗工液)
酸化チタン(平均粒子径0.3μm、固形分100%) 37.5部
スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(固形分100%) 11.9部
ポリカルボン酸型分散剤(固形分40%) 1.5部
トルオール 49.1部
合計 100.0部
【0034】
実施例1の転写テープの白色受像層上に、下記接着層塗工液を塗工し、100℃で2分間加熱・乾燥して、乾燥後の厚さが1.5μmになる様調整して接着層を形成した。
(接着層塗工液)
アクリル系共重合体(アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ブチル共重合物、重量平均分子量:約500,000、固形分 37%) 100.0部
ヘキサメチレンジイソシアネート(固形分 37.5%) 0.5部
合計 100.5部
【0035】
実施例1の転写テープの接着層と、シリコーン系剥離剤を塗工した厚さ25μmのカバーフィルム(ポリエチレンテレフタレート製)の剥離剤塗工面とを向かい合わせて2本のロール(ゴムロールとメタルロール)にて挟み込み、空気を逃がしながら両者を貼り合わせて、本発明の実施例1の転写テープを得た。
【0036】
(実施例2)
基材を厚さ12μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、実施例2の転写テープを得た。
【0037】
(実施例3)
基材を厚さ25μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、実施例3の転写テープを得た。
【0038】
(実施例4)
基材を厚さ12μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更し、白色受像層塗工液を下記の処方に変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、実施例4の転写テープを得た。
(白色受像層塗工液)
酸化チタン(平均粒子径0.3μm、固形分100%) 37.5部
スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(固形分100%) 11.9部
ポリカルボン酸型分散剤(固形分40%) 1.5部
トルオール 49.1部
合計 100.0部
【0039】
(実施例5)
基材を厚さ12μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更し、白色受像層塗工液を下記の処方に変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、実施例5の転写テープを得た。
(白色受像層塗工液)
酸化チタン(平均粒子径0.3μm、固形分100%) 37.5部
スチレン-ブタジエン共重合体(固形分100%) 11.9部
ポリカルボン酸型分散剤(固形分40%) 1.5部
トルオール 49.1部
合計 100.0部
【0040】
(実施例6)
基材を厚さ12μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更し、白色受像層塗工液を下記の処方に変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、実施例6の転写テープを得た。
(白色受像層塗工液)
酸化チタン(平均粒子径0.3μm、固形分100%) 37.5部
スチレン-エチレンーブチレンースチレン共重合体 (固形分100%) 11.9部
ポリカルボン酸型分散剤(固形分40%) 1.5部
トルオール 49.1部
合計 100.0部
【0041】
(実施例7)
基材を厚さ12μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更し、白色受像層塗工液を下記の処方に変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、実施例7の転写テープを得た。
(白色受像層塗工液)
酸化チタン(平均粒子径0.3μm、固形分100%) 37.5部
スチレン-アクリル共重合体(固形分100%) 11.9部
ポリカルボン酸型分散剤(固形分40%) 1.5部
トルオール 49.1部
合計 100.0部
【0042】
(実施例8)
基材を厚さ10μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、実施例8の転写テープを得た。
【0043】
(実施例9)
基材を厚さ16μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、実施例9の転写テープを得た。
【0044】
(実施例10)
基材を厚さ20μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、実施例10の転写テープを得た。
【0045】
(実施例11)
基材を厚さ12μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更し、白色受像層塗工液を下記の処方に変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、実施例11の転写テープを得た。
(白色受像層塗工液)
酸化チタン(平均粒子径0.3μm、固形分100%) 31.0部
スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(固形分100%) 18.4部
ポリカルボン酸型分散剤(固形分40%) 1.5部
トルオール 49.1部
合計 100.0部
【0046】
(実施例12)
基材を厚さ12μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更し、白色受像層塗工液を下記の処方に変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、実施例12の転写テープを得た。
(白色受像層塗工液)
酸化チタン(平均粒子径0.3μm、固形分100%) 34.0部
スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(固形分100%) 15.4部
ポリカルボン酸型分散剤(固形分40%) 1.5部
トルオール 49.1部
合計 100.0部
【0047】
(実施例13)
基材を厚さ12μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更し、白色受像層塗工液を下記の処方に変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、実施例13の転写テープを得た。
(白色受像層塗工液)
酸化チタン(平均粒子径0.3μm、固形分100%) 42.0部
スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(固形分100%) 7.4部
ポリカルボン酸型分散剤(固形分40%) 1.5部
トルオール 49.1部
合計 100.0部
【0048】
(比較例1)
基材を厚さ4.5μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、比較例1の転写テープを得た。
【0049】
(比較例2)
基材を厚さ50μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、比較例2の転写テープを得た。
【0050】
(比較例3)
基材を厚さ12μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更し、白色受像層塗工液を下記の処方に変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、比較例3の転写テープを得た。
(白色受像層塗工液)
酸化チタン(平均粒子径0.3μm、固形分100%) 28.5部
スチレン-イソプレン-スチレン共重合体 (固形分100%) 20.9部
ポリカルボン酸型分散剤(固形分40%) 1.5部
トルオール 49.1部
合計 100.0部
【0051】
(比較例4)
基材を厚さ12μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更し、白色受像層塗工液を下記の処方に変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、比較例4の転写テープを得た。
(白色受像層塗工液)
酸化チタン(平均粒子径0.3μm、固形分100%) 44.0部
スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(固形分100%) 5.4部
ポリカルボン酸型分散剤(固形分40%) 1.5部
トルオール 49.1部
合計 100.0部
【0052】
(比較例5)
基材を厚さ12μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更し、白色受像層塗工液を下記の処方に変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、比較例5の転写テープを得た。
(白色受像層塗工液)
酸化チタン(平均粒子径0.3μm、固形分100%) 37.5部
ブタジエン(固形分100%) 11.9部
ポリカルボン酸型分散剤(固形分40%) 1.5部
トルオール 49.1部
合計 100.0部
【0053】
(比較例6)
基材を厚さ38μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更した以外は、実施例1の転写テープと同様の方法で、比較例6の転写テープを得た。
【0054】
(転写ヘラ)
図2に示す形状の転写ヘラで、転写ヘラ先端部がビッカース硬度47HVのポリウレタンエラストマーである転写ヘラを準備した。転写テープの押圧面は1mm×3mmの長方形で、転写ヘラ先端部は
図2の転写ヘラ本体の穴に脱着可能な構造とし、転写ヘラ先端部は転写ヘラ本体から5mm突出する状態で転写ヘラに装着されるものとした。
【0055】
上記転写テープの各実施例と比較例について、下記のキレ性評価、受像性評価、耐溶剤性評価を実施した。
【0056】
(評価方法)
(キレ性測定)
各実施例、各比較例の転写テープのセパレータを剥がし、接着層を付け爪に軽く接触させた状態で、転写ヘラの先端部押圧面を1.5Nで転写テープを基材側から付け爪に押し当てた状態で、転写ヘラ先端部押圧面の3mmの辺の垂直方向で、かつ付け爪の長手方向に移動させることによって、転写テープの転写層(接着層と白色受像層)を付け爪に転写する。転写層の転写のためにする、転写ヘラの付け爪上を移動する回数は、同一箇所について5回とする。また、転写層の転写のためにする、転写ヘラの付け爪上の移動は、付け爪の端部まで転写層を確実に転写するように実施する。転写後、付け爪から転写テープの基材をはがして、付け爪への転写層の貼り付け状態を目視確認する。キレ性評価の確認としては、付け爪全面の転写状態と、付け爪端部の転写層の状態の両方を確認する。付け爪全面の転写状態と付け爪端部の転写層の状態は、それぞれ、下記の評価基準で評価した。評価用の爪としては、下記の市販されている付け爪を使用した。この転写結果を、以下の基準により評価した。この評価結果を、表1に示す。
評価に使用した付け爪、製造メーカー:YFFSFDC
材質:ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)
サイズ:縦25mm×横15mm×高さ5mm
付け爪全面の転写状態の評価基準
(目視にて付け爪全面の状態を確認した。)
◎:付け爪全面に転写層が浮きや欠けなく転写できている。
×:転写層の浮きや欠けがある。
付け爪端部の転写層の状態の評価基準
拡大率10倍の目盛り付きルーペ(最小目盛り0.1mm)を用いて、付け爪の周囲の状態を目視確認した。
◎:付け爪端部の転写層端部に、がたつきはあるが、突出量が0.1mmを超えるがたつきはない。
○:付け爪端部の転写層端部に突出量が0.1mmを超えて突出するがたつきはあるが、がたつきの突出量の最大は、0.3mm以下である。
×:付け爪端部の転写層端部に突出量が0.3mmを超えて突出するがたつきがある。
【0057】
(受像性評価)
ネイルプリンター(小泉成器株式会社製プリネイル KNP-N800/P)を使用して、下記の印字条件にて、上記キレ性評価で、各実施例、比較例の転写テープから転写層を転写した付け爪の転写層に、所定の画像を印刷した。受像性評価の確認としては、付け爪全面の印字(受像)状態を、以下の基準により評価した。この評価結果を、表1に示す。
受像性の評価基準
◎:付け爪全面に問題なく所定の画像が印刷されている。
○:付け爪全面に所定の画像が印刷されているが、所定の画像よりも印字の濃度が部分的に薄い部分がある。
×:付け爪の一部に、所定の画像が印刷されていない部分がある。
【0058】
(耐溶剤性評価)
上記受像性評価で、各実施例、比較例の転写テープから転写層を転写した付け爪の転写層表面に所定の画像を印刷した付け爪を用い、各付け爪の印刷上全面に、トップコート(コーセーコスメニエンス株式会社製 ネイルホリックSP012)を塗布し、トップコートの乾燥後に付け爪の表面状態を目視及び、拡大率10倍のルーペを使用した目視にて、以下の評価基準により評価した。この評価結果を、表1に示す。
耐溶剤性評価基準
◎:トップコートを塗布した付け爪表面に割れ等の変化なし。
○:トップコートを塗布した付け爪表面に、ルーペで拡大すれば見える微細な割れが発生しているが、目視では割れは確認できない。
×:トップコートを塗布した付け爪表面に、目視で確認できる割れが発生した。
【0059】
【符号の説明】
【0060】
10…基材(転写テープ)
11…白色受像層(転写テープ)
12…接着層(転写テープ)
A…転写テープ
B…転写ヘラ