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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180946
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/35 20130101AFI20231214BHJP
   G06F 21/62 20130101ALI20231214BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20231214BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20231214BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G06F21/35
G06F21/62
B41J29/00 E
B41J29/38 203
B41J29/00 Z
H04N1/00 838
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094638
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】稲吉 勇人
【テーマコード(参考)】
2C061
5C062
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ05
2C061AQ06
2C061CG01
2C061CG15
2C061CL08
2C061HK11
2C061HN08
2C061HN15
5C062AA02
5C062AA05
5C062AA13
5C062AA37
5C062AB20
5C062AB22
5C062AB23
5C062AB38
5C062AB40
5C062AB42
5C062AB53
5C062AC22
5C062AC34
5C062AC58
5C062AF02
5C062AF12
(57)【要約】
【課題】ユーザ情報の使用に係る利便性の低下を抑制しつつユーザ情報の流出を抑制できる。
【解決手段】記憶部110は、ユーザデータD1及びD2として、アクセスポイント4のSSID及びPINコードと関連付けてユーザ情報を記憶している。アクセス制限部は、ユーザ情報を使用可能とするか使用不可とするかを、下記条件(1)~(3)を用いたアクセス条件に基づいて判定する。(1)ユーザデータに対応するアクセスポイント4と通信部80を通じて接続中である。(2)ユーザデータに対応するアクセスポイント4と接続中でないが、そのアクセスポイント4との接続が可能である。(3)ユーザデータに対応するアクセスポイント4のPINコード又はユーザ設定のパスワードが入力された。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信により端末装置を通信ネットワークに接続させるための前記通信ネットワークごとに設置された無線接続装置を通じて前記通信ネットワークと通信する通信部と、
記憶部と、
前記記憶部の記憶内容に対するアクセス制限部と、
媒体に画像を形成する画像形成部とを備えており、
前記無線接続装置が、前記無線接続装置ごとに設定された接続情報を使用することで接続可能であり、
前記記憶部が、前記接続情報と関連付けてユーザ情報を記憶し、
前記アクセス制限部が、前記ユーザ情報を使用可能とするか使用不可とするかをアクセス条件に基づいて判定し、
前記アクセス条件が、
前記ユーザ情報を使用可能とするための必要条件として、
前記通信部が前記無線接続装置と接続中であるという第1条件を満たすことと、前記無線接続装置が前記通信部と通信可能に配置されていると共にその前記接続情報を前記通信部又は前記記憶部が保持しているという第2条件を満たすことと、前記第1条件及び前記第2条件の少なくともいずれかを満たすことと、前記第1条件及び暗証情報が入力されたという第3条件の少なくともいずれかを満たすことと、前記第2条件及び前記第3条件の少なくともいずれかを満たすことと、前記第1条件~前記第3条件の少なくともいずれかを満たすこととのいずれかを含んでおり、
前記アクセス制限部が使用可能とした前記記憶部の前記ユーザ情報が処理されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ユーザ情報の閲覧、前記ユーザ情報の編集、前記ユーザ情報の利用、外部との通信及び前記画像形成部による画像形成の少なくともいずれかに関する処理に、前記アクセス制限部が使用可能とした前記記憶部の前記ユーザ情報が使用されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記接続情報には、第1の前記暗証情報を含んでいる第1種情報と、前記第1の暗証情報を含まない第2種情報とがあり、
前記第1種情報を使用して接続する前記無線接続装置に関しては、前記アクセス条件が、前記必要条件として、前記第1条件及び前記第1の暗証情報に係る前記第3条件の少なくともいずれかを満たすことと、前記第2条件及び前記第1の暗証情報に係る前記3条件の少なくともいずれかを満たすことと、前記第1条件、前記第2条件及び前記第1の暗証情報に係る前記第3条件の少なくともいずれかを満たすこととのいずれかを含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記憶部が、ユーザによって設定された第2の前記暗証情報を前記第2種情報と関連付けて記憶し、
前記第2種情報を使用して接続する前記無線接続装置に関しては、前記アクセス条件が、前記必要条件として、前記第1条件及び前記第2の暗証情報に係る前記第3条件の少なくともいずれかを満たすことと、前記第2条件及び前記第2の暗証情報に係る前記3条件の少なくともいずれかを満たすことと、前記第1条件、前記第2条件及び前記第2の暗証情報に係る前記第3条件の少なくともいずれかを満たすこととのいずれかを含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記憶部が、前記接続情報と関連付けず、ユーザによって設定されたパスワードと関連付けてユーザ情報をさらに記憶し、
前記アクセス制限部が、前記接続情報と関連付けずに前記記憶部が記憶した前記ユーザ情報に関しては、ユーザによって前記暗証情報とは別途設定されたパスワードが入力されたことを必要条件として満たした場合に使用可能とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記憶部が、前記接続情報ともその他のパスワードとも関連付けずにユーザ情報をさらに記憶し、
前記アクセス制限部が、前記接続情報ともその他のパスワードとも関連付けずに前記記憶部が記憶した前記ユーザ情報に関しては、電源オフされるまで又は所定の時間が経過するまで使用可能とし、電源オフされてから又は所定の時間が経過してからは使用不可とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記記憶部が、第1の前記無線接続装置に関する前記接続情報と関連付けて第1の前記ユーザ情報を記憶していると共に、第2の前記無線接続装置に関する前記接続情報と関連付けて第2の前記ユーザ情報を記憶しており、
前記アクセス制限部が、
前記第1及び前記第2の無線接続装置の両方に関する前記ユーザ情報がいずれも使用可能である場合に、前記第1及び第2のユーザ情報について統合モードを取ることができ、
前記統合モードにおいては、前記第1の無線接続装置に関する前記ユーザ情報が使用可能であること、及び、前記第2の無線接続装置に関する前記ユーザ情報が使用可能であることのいずれかであれば、前記第1及び第2のユーザ情報の両方について使用可能とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記記憶部が記憶した前記ユーザ情報を使用可能とするか否かを前記アクセス制限部が判定するタイミングが、前記ユーザ情報にアクセスしようとするとき、電源オンの直後、媒体に画像を形成するために前記画像形成部が使用する着色剤を収容した収容体が装着された直後及び所定の時間が経過するごとの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記無線接続装置が、前記無線接続装置を識別する識別情報を、接続中の端末装置へと提供可能に保持しており、
前記記憶部が、前記接続情報と関連付けて前記識別情報を記憶し、
前記アクセス条件が、接続中の前記無線接続装置から取得した前記識別情報が前記ユーザ情報と関連付けられた前記識別情報と一致することを必要条件として含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記記憶部が、符号化された前記ユーザ情報を記憶し、
前記記憶部の前記ユーザ情報がその使用の際に復号されることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に対して画像形成を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体に画像を形成する画像形成装置であって、外部との通信に使用する情報等、ユーザが装置の利用に当たって使用する各種のユーザ情報を保持するものがある。例えば、特許文献1の装置には、ジョブの実行結果を送信するためのメールアドレスを管理するアドレス帳が保存されている。このアドレス帳は上記ユーザ情報の一例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-13104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置の譲渡等によりユーザが変わった場合に、装置に保存された元のユーザのユーザ情報が新たなユーザに流出するおそれがある。このようなユーザ情報の流出を防止するためのセキュリティ対策が求められている。一方、セキュリティ対策の強化はユーザ情報の使用に係る利便性の低下に繋がるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、ユーザ情報の使用に係る利便性の低下を抑制しつつユーザ情報の流出を抑制できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置は、無線通信により端末装置を通信ネットワークに接続させるための前記通信ネットワークごとに設置された無線接続装置を通じて前記通信ネットワークと通信する通信部と、記憶部と、前記記憶部の記憶内容に対するアクセス制限部と、媒体に画像を形成する画像形成部とを備えており、前記無線接続装置が、前記無線接続装置ごとに設定された接続情報を使用することで接続可能であり、前記記憶部が、前記接続情報と関連付けてユーザ情報を記憶し、前記アクセス制限部が、前記ユーザ情報を使用可能とするか使用不可とするかをアクセス条件に基づいて判定し、前記アクセス条件が、前記ユーザ情報を使用可能とするための必要条件として、前記通信部が前記無線接続装置と接続中であるという第1条件を満たすことと、前記無線接続装置が前記通信部と通信可能に配置されていると共にその前記接続情報を前記通信部又は前記記憶部が保持しているという第2条件を満たすことと、前記第1条件及び前記第2条件の少なくともいずれかを満たすことと、前記第1条件及び暗証情報が入力されたという第3条件の少なくともいずれかを満たすことと、前記第2条件及び前記第3条件の少なくともいずれかを満たすことと、前記第1条件~前記第3条件の少なくともいずれかを満たすこととのいずれかを含んでおり、前記アクセス制限部が使用可能とした前記記憶部の前記ユーザ情報が処理される。
【発明の効果】
【0007】
無線接続装置と接続するために使用される接続情報に関連付けて記憶部がユーザ情報を記憶する。接続情報は無線接続装置ごとに設定されるため、画像形成装置の譲渡等によりユーザが変わると、画像形成装置と接続させる無線接続装置及びその接続に使用される接続情報も変わる。
【0008】
これを踏まえ、本発明では、アクセス条件として、第1条件を満たすか第2条件を満たす場合にアクセス制限部がユーザ情報を使用可能とする。これらの条件は、ユーザ情報と関連付けられた接続情報に係る無線接続装置と接続中又は接続可能な状態であることが前提となっている。したがって、無線接続装置と接続中か接続可能な状態であることでユーザ情報にアクセスできるので、ユーザ情報の使用に当たって利便性が低下しにくい。
【0009】
一方、第1条件~第3条件(暗証情報の入力)の少なくともいずれかを満たさなければアクセス制限部がユーザ情報を使用不可とする。画像形成装置の譲渡等によりユーザが変わると、新たなユーザの使用環境下では無線接続装置や接続情報、暗証情報が変わる。このため、第1条件~第3条件のいずれも満たされず、元のユーザの使用環境下で記憶部に記憶されたユーザ情報は使用できない状態となる。
【0010】
以上により、ユーザ情報の使用に係る利便性を低下させることなくユーザ情報の流出を抑制できる。なお、本発明において「無線接続装置と接続」とは、無線接続装置を通じた通信ネットワークとの通信が可能な状態になることをいう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るプリンタシステムの構成を示すブロック図である。
図2図1のプリンタシステムに含まれるプリンタの構成及びその周辺構成を示すブロック図である。
図3】(a)図2の記憶部に記憶されるユーザデータの構造の一例を示す図である。(b)図2の記憶部に記憶されるユーザデータの構造の別の一例を示す図である。
図4】(a)図2のアクセス制限部が行う統合モードの処理前におけるユーザデータの構造の一例を示す図である。(b)図2のアクセス制限部が行う統合モードの処理後におけるユーザデータの構造の一例を示す図である。
図5図2のアクセス制限部がユーザデータに対するアクセス制限を行う処理の流れを示すフローチャートである。
図6図2のアクセス制限部がユーザデータに対するアクセス制限を行う別の処理の流れを示すフローチャートである。
図7図2のアクセス制限部が行う統合モードの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好適な一実施形態に係るプリンタシステム1について図1図7を参照しつつ、以下に説明する。
【0013】
プリンタシステム1は、図1に示すように、プリンタ2(本発明の「画像形成装置」に相当する)、PC(Personal Computer)3、アクセスポイント4(本発明の「無線接続装置」に相当する)及び通信ネットワーク5を有している。これらは互いにデータ通信可能に接続されている。プリンタ2は、印刷紙などの媒体(以下、「用紙」とする)に対して画像を形成する。通信ネットワーク5は、LAN(Local Area Network)やインターネットを含んでおり、無線か有線かを問わず装置や端末を互いに繋いでこれら同士でデータ通信を行わせるネットワークである。
【0014】
アクセスポイント4は、プリンタ2やPC3等の端末装置とWi-Fi(登録商標)方式を採用した無線通信が可能であると共に、通信ネットワーク5と有線通信により接続する。これによりアクセスポイント4は、接続中の端末装置のそれぞれと通信ネットワーク5を接続させると共に、端末装置同士でデータ通信させる。以下、「アクセスポイント4と接続」とは、アクセスポイント4を通じた通信ネットワーク5との通信が可能な状態になることをいう。
【0015】
各端末装置がアクセスポイント4と接続するためにはアクセスポイント4のSSID(Service Set Identifier)が必要であり、多くの場合、PINコードが併せて必要となる。SSID及びPINコードのいずれも、アクセスポイント4ごとに設定されている。SSIDは、端末装置のアプリケーションの機能により、端末装置に搭載された、あるいは接続されたディスプレイに選択可能に表示される。1つの端末装置が、複数のアクセスポイント4と無線通信が可能な状態である場合、ディスプレイには複数のアクセスポイント4に対応する複数のSSIDが表示される。そして、表示されたSSIDから接続先となるものをユーザが選択することでそのSSIDに対応するアクセスポイント4と端末装置を接続させることが可能である。
【0016】
なお、SSID及びPINコードの両方が接続に必要である場合、これらは合わせて本発明の「接続情報(第1種情報)」に相当する。SSIDのみが接続に必要である場合、そのSSIDは本発明の「接続情報(第2種情報)」に相当する。PINコードは、本発明の「第1の暗証情報」に相当する。
【0017】
以下、プリンタ2についてより詳細に説明する。図2に示すように、プリンタ2は、インク供給部50、用紙供給部60、画像形成部70、通信部80、タッチパネルディスプレイ90及び制御部100を有している。インク供給部50、用紙供給部60、画像形成部70、通信部80及びタッチパネルディスプレイ90は、制御部100と電気的に接続しており、制御部100の制御により動作する。
【0018】
インク供給部50は、画像形成用のインク(本発明の「着色剤」に相当する)を貯留するインク容器51(本発明の「収容体」に相当する)を含んでいる。インク容器51は、プリンタ1の筐体内に着脱可能に配置されている。インク供給部50は、インク容器51内のインクを供給する供給通路を通じて画像形成部70と接続されている。用紙供給部60は、画像形成用の印刷用紙を収容する用紙容器61を含んでいる。用紙供給部60は、用紙容器61内の印刷用紙を搬送する搬送機構を通じて画像形成部70へと印刷用紙を供給する。画像形成部70は、用紙供給部60から供給される印刷用紙に対してインク供給部50から供給されたインクを吐出することで、PC3等から受け取った画像データに対応する画像を印刷用紙上に形成する。
【0019】
通信部80は、アクセスポイント4と接続するための通信回路やこれを制御する回路を含んでいる。プリンタ2は、通信部80を使用し、外部機器との間でアクセスポイント4及び通信ネットワーク5を通じたデータ通信を行う。通信部80は、プリンタ2との通信が可能な位置に配置されたアクセスポイント4からSSIDを取得し、その情報を制御部100に送信する。また、通信部80は、制御部100からSSIDを用いてアクセスポイント4との接続状況の問い合わせがあった際、そのSSIDに対応するアクセスポイント4との接続状況を示す情報やアクセスポイント4に係るその他の情報を制御部100に応答する。例えば、通信部80は、そのSSIDに対応するアクセスポイント4と接続中であるか否かを示す情報を接続状況として制御部100に応答する。また、通信部80は、接続中のアクセスポイント4からそのMACアドレス(Media Access Control address)を受け取り、制御部100に送信する。MACアドレスは、本発明の「識別情報」に相当する。
【0020】
また、通信部80は、FAX通信回線9と接続するための通信回路を含んでいる。プリンタ2は、外部機器との間でFAX通信回線9を通じたFAX通信を行うことができる。例えば、プリンタ2は、FAX通信により外部機器から受け取った通信文書を示す画像データを、アクセスポイント4及び通信ネットワーク5を通じたデータ通信により別の外部機器へと送信することができる。この送信には、例えば、Eメールが用いられる。
【0021】
タッチパネルディスプレイ90は、文字や画像等を画面に表示する。また、タッチパネルディスプレイ90は、画面に指等が接触するとその接触位置を検出し、検出結果を制御部100に送信する。これにより、タッチパネルディスプレイ90を通じて各種のユーザ入力が実行される。例えば、タッチパネルディスプレイ90に文字や数字等を表示しつつ、画面への指等の接触位置に基づいてどの文字が選択されたかを判定することで、一連の文字や数字等からなるPINコードやパスワード等の文字列をユーザ入力させることが可能である。また、プリンタ2の機能に関する各種の設定情報や、FAX通信を行う通信先のFAX番号の情報、Eメールの送信先アドレスの情報等の入力がタッチパネルディスプレイ90を通じて実施される。
【0022】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を備えている。ROMには、CPU及びASICが実行するプログラム等が格納されている。RAMは、プログラム実行時に必要なデータを一時的に記憶するものである。このデータには、PC3から送信されたり記録媒体から読み出されたりした画像データが含まれる。なお、制御部100は、CPUのみが各種処理を行うものであってもよいし、ASICのみが各種処理を行うものであってもよいし、CPUとASIC94とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御部100は、1つのCPUが単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPUが処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部100は、1つのASICが単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASICが処理を分担して行うものであってもよい。
【0023】
制御部100は、主な機能部として、記憶部110、アクセス制限部120及び情報管理部130を有している。記憶部110は、ユーザ情報を示すユーザデータを記憶している。ユーザ情報は、画像形成の品質や内容等に関する各種の設定情報、FAX通信を行う通信先のFAX番号の情報やEメールの送信先アドレスの情報等を含んでいる。図2に示すD1~D4は、このようなユーザデータの一例である。ユーザデータD1は、ユーザ情報1及び第1関連付け情報を示すデータを含んでいる。ユーザデータD2は、ユーザ情報2及び第2関連付け情報を示すデータを含んでいる。第1及び第2関連付け情報については後述する。ユーザデータD3は、ユーザ情報3及びパスワード(本発明の「第2の暗証情報」に相当する)を示すデータを含んでおり、関連付け情報を示すデータを含んでいない。ユーザデータD4はユーザ情報4を示すデータを含んでおり、関連付け情報及びパスワードのいずれを示すデータも含んでいない。
【0024】
また、記憶部110は、過去のアクセスポイント4との接続履歴情報を示す接続履歴データD10を記憶している。接続履歴データは、過去に接続したことがあるアクセスポイント4に関するSSID及びPINコード(接続に必要な場合)を含んでいる。
【0025】
アクセス制限部120は、ある条件に基づいて記憶部110のユーザデータ(例えば、ユーザデータD1~D4)へのアクセスを制限する。このアクセス制限の詳細は後述する。
【0026】
情報管理部130は、ユーザデータの新規作成や、アクセス制限部120によりアクセスが許可されたユーザ情報に対する各種の処理を実行する。新規作成は、ユーザデータを新たに作成し、記憶部110の記憶内容に追加する処理である。例えば、ユーザがタッチパネルディスプレイ90を通じて新たにユーザ情報を入力した際に、入力した情報を示すユーザデータが新規に生成される。情報管理部130は、適宜の暗号化方式を用いてユーザ情報及び関連付け情報等を符号化したものをユーザデータとする。
【0027】
また、上記各種の処理には、ユーザ情報の閲覧、編集、統合並びにユーザ情報を用いた通信及び画像形成の処理が含まれる。これらの処理は、必要に応じてユーザデータを復号した上で実行される。閲覧は、タッチパネルディスプレイ90にユーザ情報の内容を表示させる処理である。編集は、ユーザ情報の内容を一部削除・変更したりユーザ情報に新たな情報を追加したりする処理である。ユーザ情報の統合については後述する。ユーザ情報を用いた通信は、ユーザ情報が示すFAX番号の宛先にFAX通信により文書を送信したり、ユーザ情報が示すアドレスの宛先にEメールにより画像データを送信したりする処理である。画像形成の処理は、用紙供給部60及び画像形成部70を制御し、ユーザ情報が示す設定情報に従って印刷用紙に対する画像形成をこれらに実行させる処理である。情報管理部130が行う処理には、これら以外のユーザ情報の利用に関する処理(例えば、ユーザによる指示の有無に依らないユーザ情報の加工・使用等)が含まれてもよい。
【0028】
上記の他、制御部100は、プリンタ2と通信可能な位置にあって未接続であるアクセスポイント4がある場合に、記憶部110の接続履歴データD10に基づき、そのアクセスポイント4が過去に接続したことがあるときには、そのアクセスポイント4と接続できない事情(別のアクセスポイント4と接続中である等の事情)がない限り、通信部80を通じたそのアクセスポイント4との接続を開始する。この接続は、ユーザによる接続の指示がなくても自動で開始される。また、制御部100は、過去に接続したことがなくPINコードが必要なアクセスポイント4に関し、ユーザに接続を指示された場合には、PINコードがユーザ入力された場合にそのPINコードに基づいて通信部80を通じたそのアクセスポイント4との接続を開始する。制御部100は、過去に接続したことがなくPINコードが必要ないアクセスポイント4に関し、ユーザに接続を指示された場合には、通信部80を通じたそのアクセスポイント4との接続を開始する。
【0029】
ところで、プリンタ2のユーザが別のユーザへとプリンタ2を譲渡したこと等によりユーザが変わった場合に、記憶部110に記憶された元のユーザのユーザ情報が新たなユーザに流出するおそれがある。このようなユーザ情報の流出を防止するため、本実施形態においては、ユーザデータが以下のように構成されていると共に、アクセス制限部120が以下のようにユーザデータへのアクセス制限を実行する。
【0030】
ユーザデータは、アクセスポイント4ごとに作成可能であり、アクセスポイント4とユーザ情報を関連付けるための関連付け情報を示すデータを含んでいる。関連付け情報は、ユーザデータが新規作成される際に接続中のアクセスポイント4のSSIDを含んでいる。関連付け情報には第1関連付け情報及び第2関連付け情報の2種類がある。第1関連付け情報は、アクセスポイント4への接続にPINコードが必要である場合に用いられる。第1関連付け情報は、図3(a)に示すように、アクセスポイント4のSSIDと併せて、PINコードを含んでいる。第2関連付け情報は、アクセスポイント4への接続にPINコードが必要でない場合に用いられる。第2関連付け情報は、図3(b)に示すように、アクセスポイント4のSSIDと併せて、ユーザ設定のパスワードを含んでいる。このパスワードは、ユーザデータの作成時又はユーザデータへの最初のアクセス時にタッチパネルディスプレイ90を通じたユーザ入力に基づいて設定される。パスワードが未だ設定されていない場合には、第2関連付け情報は、パスワードが未設定であることを示す情報をパスワードの代わりに含んでいる。
【0031】
例えば、図2のユーザデータD1は、1つのアクセスポイント4(以下、AP-1とする)に関する第1関連付け情報を示す情報を含んでいる。つまり、ユーザデータD1に係る第1関連付け情報は、AP-1のSSID及びPINコードを含んでいる。また、図2のユーザデータD2は、AP-1と異なるアクセスポイント4(以下、AP-2とする)に関する第2関連付け情報を示す情報を含んでいる。つまり、ユーザデータD2に係る第2関連付け情報は、AP-2のSSIDを含んでおり、PINコードは含んでいない。
【0032】
この他、ユーザデータは、対応するアクセスポイント4に係るその他の情報を示すデータを含んでいてもよい。例えば、アクセスポイント4のMACアドレスを示すデータを含んでいてもよい。
【0033】
また、ユーザデータは、アクセスポイント4に関連付けずに作成可能である。このようなユーザデータには、ユーザ設定のパスワードを含んだもの(例えば、図2のユーザデータD3)と、ユーザ設定のパスワードを含まないもの(例えば、図2のユーザデータD4)とがある。前者のパスワードは、上記同様、ユーザデータの作成時又はユーザデータへの最初のアクセス時にタッチパネルディスプレイ90を通じてユーザによって設定される。後者のユーザデータは、後述の通り、一時的なデータとして使用される。
【0034】
アクセス制限部120は、アクセスポイント4と関連付けられたユーザデータ(例えば、図2のユーザデータD1及びD2)について、以下のアクセス条件が満たされているかどうかを判定する。そして、満たされていないと判定した場合にはそのユーザデータへのアクセスを禁止する。一方、アクセス制限部120は、アクセス条件が満たされていると判定した場合にはそのユーザデータへのアクセスを許可する。
【0035】
<アクセス条件>
アクセス条件は、以下のイ)~ヘ)のいずれかを必要条件として含んでいる。アクセス条件中の必要条件としてイ)~ヘ)のいずれが採用されるかは任意である。
イ)条件(1)を満たすこと。
ロ)条件(2)を満たすこと。
ハ)条件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満たすこと。
ニ)条件(1)及び(3)の少なくともいずれかを満たすこと。
ホ)条件(2)及び(3)の少なくともいずれかを満たすこと。
ヘ)条件(1)~(3)の少なくともいずれかを満たすこと。
【0036】
上記において、条件(1)~(3)は以下の通りである。
(1)ユーザデータが示すSSIDに対応するアクセスポイント4(以下、ユーザデータに対応するアクセスポイント4とする)と通信部80を通じて接続中である。
(2)ユーザデータに対応するアクセスポイント4と接続中でないが、そのアクセスポイント4との接続が可能である。
(3)ユーザデータに対応するアクセスポイント4のPINコード(第1関連付け情報の場合)又はユーザ設定のパスワード(第2関連付け情報の場合)が入力された。
【0037】
条件(1)は、ユーザデータに対応するアクセスポイント4との接続状況をアクセス制限部120が通信部80に問い合わせた場合における通信部80からの応答内容に基づいて判定される。条件(1)は本発明の「第1条件」に相当する。
【0038】
条件(2)において、ユーザデータが第1関連付け情報に係る場合には、「接続が可能」とは、ユーザデータに対応するアクセスポイント4がプリンタ2と通信可能な位置にあり、記憶部110の接続履歴データD10としてSSID及びPINコードが保持されていることから、PINコードを入力しなくてもそのアクセスポイント4と接続可能であることをいう。また、ユーザデータが第2関連付け情報に係る場合には、「接続が可能」とは、ユーザデータに対応するアクセスポイント4がプリンタ2と通信可能な位置にあり、記憶部110の接続履歴データD10としてSSIDが保持されていることから、そのアクセスポイント4と接続可能であることをいう。条件(2)は本発明の「第2条件」に相当する。
【0039】
条件(3)は、ユーザデータが第1関連付け情報に係る場合には、タッチパネルディスプレイ90を通じてユーザ入力がなされたPINコードが、ユーザデータが示すPINコードと一致するか否かに基づいて判定される。ユーザデータが第2関連付け情報に係る場合には、タッチパネルディスプレイ90を通じてユーザ入力がなされたパスワードが、ユーザデータが示すパスワードと一致するか否かに基づいて判定される。(3)の条件が満たされるか否かは、ユーザデータに対応するアクセスポイント4がプリンタ2と通信可能な位置にあるか否かに関わらない。条件(3)は本発明の「第3条件」に相当する。
【0040】
上記イ)~ヘ)は必要条件であるため、アクセス条件としてこれら以外の条件が追加されてもよい。例えば、上記へ)が必要条件として採用される場合に、これに加え、「(4)接続中のアクセスポイント4から取得されたMACアドレスがユーザデータが示すMACアドレスと一致すること」という条件が採用されてもよい。また、例えば、上記に加え、「(5)アクセス許可の対象となるユーザデータに対応するアクセスポイント4との最近の接続からの経過時間が所定の長さ以下であること」という条件が採用されてもよい。この場合、(4)又は(5)が満たされたとしても、上記ヘ)の条件が併せて満たされなければ、つまり、条件(1)~(3)のすくなくともいずれかが併せて満たされなければアクセスが許可されない。
【0041】
また、アクセス制限部120は、2つのアクセスポイント4と一体一に関連付けられた2つのユーザデータが示す両方のユーザ情報を統合して取り扱う統合モードを取ることができる。統合モードは、上記2つのユーザデータの一方についてアクセスが許可されれば、つまり、アクセス条件が満たされれば、2つのユーザデータが示すユーザ情報の両方についてアクセスが許可されるというモードである。統合モードは一時的に維持されてもよい。例えば、プリンタ2の電源がオンになっている期間にのみ統合モードが維持されてもよい。この場合、プリンタ2の電源がオフになったりすると、統合モードが解除される。なお、2つのアクセスポイント4は、本発明の「第1の無線接続装置」及び「第2の無線接続装置」に相当する。また、2つのユーザデータが示すユーザ情報は、本発明の「第1のユーザ情報」及び「第2のユーザ情報」に相当する。
【0042】
統合モードを開始する処理の一例は以下の通りである。アクセス制限部120は、統合モードの対象となるべき2つのユーザデータのそれぞれについてアクセスが許可されるか否かを判定する。この判定には、2つのユーザデータに対して互いに同じアクセス条件が用いられてもよいし、互いに異なるアクセス条件が用いられてもよい。例えば、2つのユーザデータに対応する2つのアクセスポイント4のうち、接続中のアクセスポイント4には上記イ)を必要条件とするアクセス条件が、接続中でないアクセスポイント4には上記ホ)を必要条件とするアクセス条件がそれぞれ用いられてもよい。また、上記イ)~ヘ)のいずれとも異なる必要条件が用いられてもよい。例えば、「条件(3)を満たすこと」が必要条件として用いられてもよい。2つのユーザデータの両方についてアクセスが許可されると判定された場合に、これら2つのユーザデータについて統合モードが開始される。
【0043】
図4は、図2に示すユーザデータD1及びD2の両方が統合モードによりアクセス可能な状態となる状況を一例として示している。図4(a)は、統合モードを取る前のユーザデータD1及びD2に相当する。例えば、AP-2との接続中に、AP-1におけるPINコードが入力されたことで、ユーザデータD1及びD2の両方についてアクセスが許可されることに基づき、ユーザデータD1及びD2が統合モードになったとする。このとき、アクセス制限部120は、図4(b)に示す通り、ユーザデータD1におけるユーザ情報1を示すデータを複製し、ユーザデータD2に追加する。この場合、AP-2と接続している限り、ユーザデータD2へのアクセスが許可されるので、ユーザデータD2中のユーザ情報1及びユーザ情報2の両方に対してアクセスが可能となる。よって、統合モードの機能が実現する。例えば、プリンタ2の電源がオフにされた等により、統合モードが解除されると、アクセス制限部120は、ユーザデータD2におけるユーザ情報2を示すデータを記憶部110の記憶内容から削除する。
【0044】
アクセスポイント4と関連付けられていないユーザデータについて、アクセス制限部120は、以下のようにアクセスを制限する。まず、パスワードを示すデータを含んだユーザデータ(例えば、図2のユーザデータD3)については、アクセス制限部120は、ユーザ入力により適切なパスワードが入力された場合に限り、そのユーザデータへのアクセスを許可する。そして、パスワードを示すデータを含まないユーザデータ(例えば、図2のユーザデータD4)について、アクセス制限部120は、所定の制限条件を満たさない場合にはそのユーザデータへのアクセスを許可するが、所定の制限条件を満たせばそのユーザデータへのアクセスを禁止する。所定の制限条件とは、例えば、プリンタ2の電源がオフされたこと、所定の時間が経過したこと、又はこれらの少なくともいずれかが満たされたことである。
【0045】
以下、アクセス制限部120がユーザデータに対するアクセス制限を行う処理の具体的な流れについて図5及び図6のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、図5及び図6に示す処理が実行されるタイミングは、情報管理部130によるユーザデータに対する各種の処理が実行される直前である。図5及び図6に示す処理によりユーザデータへのアクセスが許可された場合に限り、情報管理部130によるユーザデータに対する各種の処理が実行される。
【0046】
図5は、第1関連付け情報(PINコードあり)に係るユーザデータについての処理に相当する。まず、アクセス制限部120は、判定対象となるユーザデータに対応するアクセスポイント4(以下、対応APとする)が通信部80を通じて接続中であるか否か(条件(1))を判定する(S1)。対応APに接続中であると判定すると(S1、Yes)、アクセス制限部120はそのユーザデータについてアクセスを許可する(S7)。そして、一連の処理を終了する。
【0047】
対応APに接続中でないと判定すると(S1、No)、アクセス制限部120は対応APがPINコード入力なしで接続可能であるか否か(条件(2))を判定する(S2)。対応APにPINコードの入力なしで接続可能であると判定すると(S2、Yes)、アクセス制限部120はそのユーザデータについてアクセスを許可する(S7)。そして、一連の処理を終了する。
【0048】
対応APにPINコードの入力なしで接続可能ではないと判定すると(S2、No)、アクセス制限部120は対応APが「PINコードを入力すれば接続可能な状態」であるか否かを判定する(S3)。ここで、「PINコードを入力すれば接続可能」とは、対応APがプリンタ2と通信可能な位置に配置されており、接続中でなくPINコードの入力なしで接続可能でもないが、PINコードが入力されることで接続を開始できることをいう。このような状態は、例えば、過去に対応APと接続したことがあり、記憶部110が接続履歴データD10としてSSIDとPINコードを記憶しているが、何らかの事情で接続のためにPINコードの再入力が必要となっている状態に相当する。何らかの事情とは、例えば、過去に接続したことがあっても、一定期間以上、未接続の状態で経過すると再接続の際にPINコードの再入力が必要となる仕様が採用されている等の事情である。
【0049】
対応APが「PINコードを入力すれば接続可能な状態」であると判定すると(S3、Yes)、アクセス制限部120はS5以降の処理を実行する(後述)。対応APが「PINコードを入力すれば接続可能な状態」でないと判定すると(S3、No)、アクセス制限部120は、対応APのPINコードが保持されているか否か、つまり、記憶部110が接続履歴データD10としてPINコードを記憶しているか否かを判定する(S4)。対応APのPINコードが保持されていないと判定すると(S4、No)、アクセス制限部120は、ユーザデータへのアクセスを禁止する(S8)。そして、一連の処理を終了する。
【0050】
対応APのPINコードが保持されていると判定すると(S4、No)、アクセス制限部120は、タッチパネルディスプレイ90を通じたユーザ入力によるPINコードの入力をユーザに促す(S5)。この処理は、例えば、タッチパネルディスプレイ90に「PINコードを入力してください」等のメッセージを表示させ、タッチパネルディスプレイ90を通じた文字列の入力をユーザに行わせる処理である。アクセス制限部120は、S5において入力されたPINコードを記憶部110の記憶内容と照合し、ユーザデータが示すPINコードと一致するか否か(条件(3))を判定する(S6)。ユーザデータが示すPINコードと一致すると判定すると(S6、Yes)、アクセス制限部120は、そのユーザデータについてアクセスを許可する(S7)。そして、一連の処理を終了する。一方、ユーザデータが示すPINコードと一致しないと判定すると(S6、No)、アクセス制限部120は、そのユーザデータについてアクセスを禁止する(S8)。そして、一連の処理を終了する。
【0051】
図6は、第2関連付け情報(PINコードなし)に係るユーザデータについての処理に相当する。まず、アクセス制限部120は、対応APが通信部80を通じて接続中であるか否か(条件(1))を判定する(S11)。対応APに接続中であると判定すると(S11、Yes)、アクセス制限部120は、そのユーザデータについてパスワードが設定済みか否かを判定する(S19)。パスワードが設定済みであると判定すると(S19、Yes)、アクセス制限部120は、そのユーザデータについてアクセスを許可する(S16)。そして、一連の処理を終了する。パスワードが設定済みでないと判定すると(S19、No)、アクセス制限部120は、そのユーザデータについてタッチパネルディスプレイ90を通じたユーザ入力に基づきパスワードを設定(S18)した上で、アクセスを許可する(S16)。そして、一連の処理を終了する。
【0052】
S11において、対応APに接続中でないと判定すると(S11、No)、アクセス制限部120は、対応APが接続可能な状態か否か(条件(2))、つまり、対応APがプリンタ2と通信可能な位置にあるか否かを判定する(S12)。対応APが接続可能な状態であると判定すると(S12、Yes)、アクセス制限部120はS19の処理を実行する。S19以降の処理は上記の通りである。
【0053】
対応APが接続可能な状態でないと判定すると(S12、No)、アクセス制限部120は、タッチパネルディスプレイ90を通じたユーザ入力によるパスワードの入力をユーザに促す(S14)。この処理は、例えば、タッチパネルディスプレイ90に「パスワードを入力してください」等のメッセージを表示させ、タッチパネルディスプレイ90を通じた文字列の入力をユーザに行わせる処理である。アクセス制限部120は、S14において入力されたパスワードを記憶部110の記憶内容と照合し、ユーザデータが示すパスワードと一致するか否か(条件(3))を判定する(S15)。ユーザデータが示すパスワードと一致すると判定すると(S15、Yes)、アクセス制限部120は、そのユーザデータについてアクセスを許可する(S16)。そして、一連の処理を終了する。一方、ユーザデータが示すパスワードと一致しないと判定すると(S15、No)、アクセス制限部120は、そのユーザデータについてアクセスを禁止する(S20)。そして、一連の処理を終了する。
【0054】
以下、アクセス制限部120が2つのアクセスポイント4(以下、対応AP1及び対応AP2とする)と関連付けられたユーザ情報に対して統合モードを開始する処理の流れの一例を図7のフローチャートに従って説明する。なお、図7のフローチャートは、対応AP1及び対応AP2のいずれについても、PINコードが使用されるか否かに関わらず適用される。
【0055】
まず、アクセス制限部120は、対応AP1が通信部80を通じて接続中であること(条件(1))及び対応AP1が接続可能であること(条件(2))のいずれかを満たすか否かを判定する(S31)。S31の判定処理は、対応AP1がPINコードありの場合には図5のS1及びS2の判定処理に、対応AP1がPINコードなしの場合には図6のS11及びS12の判定処理にそれぞれ対応する。
【0056】
上記いずれかを満たすと判定すると(S31、Yes)、アクセス制限部120はS36以降の処理を実行する(後述)。上記いずれも満たさないと判定すると(S31、No)、アクセス制限部120は、対応AP1が「PINコードを入力すれば接続可能な状態」であるか否かを判定する(S32)。この判定処理は、対応AP1がPINコードありの場合には、図5のS3の判定処理に対応する。対応AP1がPINコードなしの場合には、「PINコードを入力すれば接続可能な状態」でないと判定される。
【0057】
対応AP1が「PINコードを入力すれば接続可能な状態」であると判定すると(S32、Yes)、アクセス制限部120はS34以降の処理を実行する(後述)。対応AP1が「PINコードを入力すれば接続可能な状態」でないと判定すると(S32、No)、アクセス制限部120は、対応AP1が「PINコードが使用されないアクセスポイント4であり且つパスワードが設定されていない」か否かを判定する(S33)。対応AP1が「PINコードが使用されないアクセスポイント4であり且つパスワードが設定されていない」と判定すると(S33、Yes)、アクセス制限部120は、統合モードを取らないと判定する(S42)。そして、一連の処理を終了する。
【0058】
対応AP1がPINコードが使用されるアクセスポイント4であるか、又はPINコードが使用されないアクセスポイント4であるがパスワードが設定されていると判定すると(S33、No)、アクセス制限部120は、対応AP1について、タッチパネルディスプレイ90を通じたユーザ入力によるPINコード又はパスワードの入力をユーザに促す(S34)。この処理は、S5又はS14の処理と同様である。アクセス制限部120は、S34において入力されたPINコード又はパスワードを記憶部110の記憶内容と照合し、対応AP1に対応するユーザデータが示すPINコード又はパスワードと一致するか否か(条件(3))を判定する(S35)。対応AP1に対応するユーザデータが示すPINコード又はパスワードと一致しないと判定すると(S35、No)、アクセス制限部120は、統合モードを取らないと判定する(S42)。そして、一連の処理を終了する。
【0059】
対応AP1に対応するユーザデータが示すPINコード又はパスワードと一致すると判定すると(S35、Yes)、アクセス制限部120は、対応AP2が通信部80を通じて接続中であること(条件(1))及び対応AP1がPINコード入力なしで接続可能であること(条件(2))のいずれかを満たすか否かを判定する(S36)。S36の判定処理は、対応AP2がPINコードありの場合には図5のS1及びS2の判定処理に、対応AP2がPINコードなしの場合には図6のS11及びS12の判定処理にそれぞれ対応する。
【0060】
上記いずれかを満たすと判定すると(S36、Yes)、アクセス制限部120は、統合モードを取ると判定し、統合モードを開始する(S41)。そして、一連の処理を終了する。
【0061】
上記いずれも満たさないと判定すると(S36、No)、アクセス制限部120は、対応AP2が「PINコードを入力すれば接続可能な状態」であるか否かを判定する(S37)。この判定処理は、対応AP2がPINコードありの場合には、図5のS3の判定処理に対応する。対応AP2がPINコードなしの場合には、「PINコードを入力すれば接続可能な状態」でないと判定される。
【0062】
対応AP2が「PINコードを入力すれば接続可能な状態」であると判定すると(S37、Yes)、アクセス制限部120はS39以降の処理を実行する(後述)。対応AP2が「PINコードを入力すれば接続可能な状態」でないと判定すると(S37、No)、アクセス制限部120は、対応AP2が「PINコードが使用されないアクセスポイント4であり且つパスワードが設定されていない」か否かを判定する(S38)。対応AP2が「PINコードが使用されないアクセスポイント4であり且つパスワードが設定されていない」と判定すると(S38、Yes)、アクセス制限部120は、統合モードを取らないと判定する(S42)。そして、一連の処理を終了する。
【0063】
対応AP2がPINコードが使用されるアクセスポイント4であるか、又はPINコードが使用されないアクセスポイント4であるがパスワードが設定されていると判定すると(S38、No)、アクセス制限部120は、対応AP2について、タッチパネルディスプレイ90を通じたユーザ入力によるPINコード又はパスワードの入力をユーザに促す(S39)。この処理は、S5又はS14の処理と同様である。アクセス制限部120は、S39において入力されたPINコード又はパスワードを記憶部110の記憶内容と照合し、対応AP2に対応するユーザデータが示すPINコード又はパスワードと一致するか否か(条件(3))を判定する(S40)。対応AP2に対応するユーザデータが示すPINコード又はパスワードと一致しないと判定すると(S40、No)、アクセス制限部120は、統合モードを取らないと判定する(S42)。そして、一連の処理を終了する。
【0064】
対応AP2に対応するユーザデータが示すPINコード又はパスワードと一致すると判定すると(S40、Yes)、アクセス制限部120は、統合モードを取ると判定し、統合モードを開始する(S41)。そして、一連の処理を終了する。
【0065】
なお、S41において、統合モードを開始する前にユーザに対して統合モードを開始するか否かの同意を求めた上で、統合モードを開始してもよい。例えば、「(SSID1)及び(SSID2)と関連付けられたユーザ情報について統合モードを開始しますか/Yes No」とのメッセージをタッチパネルディスプレイ90に表示させ、これに対してタッチパネルディスプレイ90を通じたユーザ入力によりユーザが「Yes」を選択した場合に、統合モードを開始してもよい。上記メッセージのうち、(SSID1)は対応AP1のSSIDの文字列に相当し、(SSID2)は対応AP2のSSIDの文字列に相当する。
【0066】
以上説明した本実施形態によると、アクセスポイント4と接続するために使用されるSSID等に関連付けて記憶部110がユーザデータ(ユーザ情報を示すデータ)を記憶する。SSIDはアクセスポイント4ごとに設定されているため、プリンタ2の譲渡等によりユーザが変わると、プリンタ2と接続させるアクセスポイント4及びその接続に使用されるSSID等も変わる。
【0067】
これを踏まえ、本実施形態では、ユーザデータへのアクセス制限を行うための条件として、イ)~ヘ)のいずれかを必要条件として含んだアクセス条件が用いられている。イ)~ヘ)は、いずれも、条件(1)を満たすか条件(2)を満たす場合に、アクセス制限部120がユーザデータへのアクセスを許可するものとなっている。条件(1)(2)は、ユーザデータと対応するアクセスポイント4と接続中又は接続可能な状態であることが前提となっている。したがって、アクセスポイント4と接続中か接続可能な状態であることでユーザデータにアクセスできるので、ユーザデータの使用に当たって利便性が低下しにくい。
【0068】
一方、イ)~ヘ)のいずれが採用された場合であっても、条件(1)~条件(3)の少なくともいずれかを満たさなければアクセス制限部120がユーザデータへのアクセスを禁止する。プリンタ2の譲渡等によりユーザが変わると、新たなユーザの使用環境下ではアクセスポイント4やSSID、PINコード又はパスワードが変わる。このため、条件(1)~条件(3)のいずれも満たされず、元のユーザの使用環境下で記憶部110に記憶されたユーザデータへのアクセスは禁止される。
【0069】
以上により、ユーザ情報の使用に係る利便性を低下させることなくユーザ情報の流出を抑制できる。
【0070】
また、上述の実施形態において、ニ)~ヘ)のいずれかが採用された場合には、条件(3)を満たすこと、つまり、PINコードの入力により、第1関連付け情報(PINコードあり)に係るユーザデータへのアクセスが許可される。このため、例えば、条件(1)及び(2)のいずれも満たさない使用環境下においても、PINコードを入力することでユーザデータにアクセス可能である。
【0071】
また、上述の実施形態において、ニ)~ヘ)のいずれかが採用された場合には、条件(3)を満たすこと、つまり、ユーザ設定されたパスワードの入力により、第2関連付け情報(PINコードなし)に係るユーザデータへのアクセスが許可される。このため、ユーザデータのアクセスに関するセキュリティが向上する。
【0072】
また、上述の実施形態においては、アクセスポイント4と関連付られていないユーザデータが保持されている場合にも、別途、ユーザ設定されたパスワードに基づいてアクセスが制限される。このため、セキュリティを確保しつつユーザデータを使用可能である。
【0073】
また、上述の実施形態においては、アクセスポイント4ともその他のパスワードとも関連付けられていないユーザデータがある場合には、所定の制限条件を満たせばそのユーザ情報を使用不可とすることで、一時的な使用のみに留める。これにより、セキュリティが確保される。
【0074】
また、上述の実施形態においては、2つのユーザデータについてアクセスが許可されれば統合モードを取ることができる。統合モードを取った場合、2つのユーザデータのいずれかについて使用可能であれば2つのユーザデータの両方に対してアクセスが許可される。このため、例えば、2つのアクセスポイント4がプリンタ2と通信可能な位置にある場合や、あるアクセスポイント4と関連付けてユーザデータが新規作成された後に、新たな別のアクセスポイント4と関連付けて別のユーザデータが新規作成された場合など、2つのアクセスポイント4が使用される環境下においても、ユーザの利便性の低下を抑制しつつセキュリティを確保できる。
【0075】
また、上述の実施形態において、アクセス条件として、上記イ)~ヘ)のいずれかの条件に加え、MACアドレスを使用した条件が採用された場合には、上記イ)~ヘ)のいずれかの条件のみならず、さらにMACアドレスが一致するか否かをもってユーザ情報の使用可否が判定されることになる。プリンタ2の譲渡等によりユーザが変わると、プリンタ2を接続させるアクセスポイント4も変わるため、そのMACアドレスも変わる。したがって、MACアドレスの一致をアクセス条件に加えることで、ユーザ情報の流出がより有効に抑制される。
【0076】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0077】
例えば、上述の実施形態では、ユーザデータが関連付け情報を示すデータとユーザ情報を示すデータの両方を含んでおり、関連付け情報がアクセスポイント4のSSID等を含んでいる。これによって、ユーザ情報とアクセスポイント4が互いに関連付けられている。これに対し、ユーザ情報とアクセスポイント4の関連付けが別の方法で行われてもよい。例えば、ユーザデータがユーザ情報を示すデータのみからなり、ユーザデータを識別するデータ識別情報を設定した上で、そのデータ識別情報とアクセスポイント4とを関連付けるテーブルを示すテーブルデータがユーザデータと別に用意されてもよい。この場合において、ユーザ情報の統合が、テーブルデータ上の関連付けを変更することで実行されてもよい。例えば、ユーザデータ1とユーザデータ2とが統合の対象となる際に、ユーザデータ1のデータ識別情報とユーザデータ2のデータ識別情報とを1つのアクセスポイント4に共通に関連付けるようにテーブルデータの内容が変更されてもよい。これにより、ユーザデータ1及びユーザデータ2と関連付けられた1つのアクセスポイント4が接続中である等によりアクセス条件が満たされた場合に、ユーザデータ1及びユーザデータ2の両方についてアクセスが許可される。
【0078】
また、上述の実施形態では、図5又は図6のフローチャートに示されるユーザデータへのアクセス許可の可否判定が、情報管理部130がユーザデータに対する各種の処理を行う直前に行われる。これに対し、その他のタイミングで上記判定がなされてもよい。例えば、プリンタ2の電源オンの直後や、インク容器51がプリンタ1の筐体内に装着された直後に行われてもよい。これらのタイミングは、使用環境が変化したときである可能性がある。このため、このようなタイミングで判定されることで、使用環境の変化に応じた適切な判定がなされる。また、所定の時間が経過するごとに判定がなされてもよい。これによると、ユーザデータにアクセスしようとするときにあらためて判定する必要性が低くなる。
【0079】
また、上述の実施形態では、PINコードを使用しないアクセスポイント4に対応するユーザデータは、第2関連付け情報としてユーザ設定のパスワードが用いられることでアクセスが許可される。これに対し、このようなパスワードを用いずにユーザデータへのアクセスが許可されてもよい。この場合、アクセス条件中の必要条件は、条件(1)を満たすこと、条件(2)を満たすこと、並びに条件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満たすことのいずれかを含むものとする。また、条件(2)は、ユーザデータに対応するアクセスポイント4がプリンタ2と通信可能な位置にあることで満たされ、PINコードやパスワードが保持されていることは必要とされないものとする。これにより、アクセスポイント4に接続可能であるか、アクセスポイント4に接続可能であるときにユーザデータへのアクセスが許可される。
【0080】
また、上述の実施形態において、2つのアクセスポイント4と一体一に関連付けられた2つのユーザデータが示す両方のユーザ情報を統合して取り扱う統合モードを取ることができる。これについて、AP-1~AP-3を3つのアクセスポイント4とするとき、例えば、AP-1とAP-2に関してユーザ情報を統合した後に、AP-1とAP-3に関してユーザ情報を統合した場合、AP-1~AP-3に関する全てのユーザ情報が統合されてもよい。つまり、このような統合により、AP-1~AP-3のいずれかに関してユーザデータへのアクセスが許可されれば全てのAP-1~AP-3に対応する全てのユーザデータへのアクセスが許可されてもよい。
【0081】
加えて、上述の各実施形態においては、プリンタ2に対して本発明を適用する場合について説明したが、これには限定されない。本発明は、ヘッドからインクを吐出するインクジェット式のその他の画像形成装置、例えば、複合機やコピー機などに適用されてもよい。また、インクジェット方式でインクを印刷用紙に付着させる代わりに、トナー(本発明の「着色剤」に相当する)を印刷用紙に付着させることで画像記録処理を実行するレーザー式の画像形成装置に適用されてもよい。この場合、画像形成装置にはトナーを収容するトナーカートリッジ(本発明の「収容体」に相当する)が着脱可能に装着される。
【符号の説明】
【0082】
1 プリンタシステム
2 プリンタ
3 PC
4 アクセスポイント
5 通信ネットワーク
50 インク供給部
51 インク容器
60 用紙供給部
70 画像形成部
80 通信部
90 タッチパネルディスプレイ
100 制御部
110 記憶部
120 アクセス制限部
130 情報管理部
D1~D4 ユーザデータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7