(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180947
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】研磨機及び研磨加工における冷却方法
(51)【国際特許分類】
B24B 55/02 20060101AFI20231214BHJP
B24B 5/04 20060101ALI20231214BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B24B55/02 A
B24B5/04
B23Q11/10 A
B23Q11/10 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094640
(22)【出願日】2022-06-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】521037422
【氏名又は名称】株式会社佐竹製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健生
【テーマコード(参考)】
3C011
3C043
3C047
【Fターム(参考)】
3C011EE02
3C043AA01
3C043CC03
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C047FF01
3C047GG01
(57)【要約】
【課題】砥石にクーラントを効率良く十分にかけることができる研磨機を提供する。
【解決手段】研磨機1は、被加工物Wを研磨加工する際に用いられ、砥石23、及び砥石23と被加工物Wとの接触箇所CPへクーラントCLを供給するための供給用ノズル41を有する研磨機であって、クーラント供給用ノズル41の先端部近傍から砥石23の表面にかけてエアーABの吹き付けが可能なように砥石23の近傍に配置されたエアーノズル51を備える。研磨機1によれば、エアーノズル51によりクーラント供給用ノズル41の先端部近傍から砥石23の表面にかけてエアーの吹き付けがなされることで、高速回転する砥石23によって砥石23の外周面に沿って発生する空気流AFが、被加工物Wと砥石23との接触箇所CP上方で分散し、クーラントCLを砥石23から離す方向へ流そうとする力が弱まるため、砥石23にクーラントCLを十分にかけることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を研磨加工する際に用いられ、砥石、及び当該砥石と前記被加工物との接触箇所へクーラントを供給するための供給用ノズルを有する研磨機であって、
前記クーラント供給用ノズルの先端部近傍から前記砥石の表面にかけてエアーの吹き付けが可能なように前記砥石の近傍に配置されたエアーノズルを備える、ことを特徴とする研磨機。
【請求項2】
前記エアーノズルは、フラットノズルであり、水平方向又は当該水平方向に対し鋭角の範囲で傾けた方向に広がるエアーを吹き出すことが可能な姿勢で配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の研磨機。
【請求項3】
前記エアーノズルは、前記砥石の軸線方向又は当該軸線方向に対し鋭角の範囲で前記砥石側に傾けた方向へ向けてエアーを吹き出すことが可能な姿勢で配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の研磨機。
【請求項4】
前記エアーノズルは、前記クーラント供給用ノズルの先端より僅かに高い位置へ向けてエアーを吹き出すことが可能な高さで配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の研磨機。
【請求項5】
前記エアーノズルへのエアー供給路に設置され、エアーの吹き出し量を調節することが可能なエアー調節機器をさらに備える、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨機。
【請求項6】
砥石及びクーラント供給用ノズルを有する研磨機を用いて被加工物を研磨加工する際に、前記砥石と前記被加工物との接触箇所へ前記クーラント供給用ノズルからクーラントを供給する研磨加工における冷却方法であって、
前記砥石の近傍にエアーの吹き出しが可能なエアーノズルを設置することと、
前記クーラントを供給する際に、前記クーラント供給用ノズルの先端部近傍から前記砥石の表面にかけて前記エアーノズルによりエアーを吹き付けることと、を含むことを特徴とする研磨加工における冷却方法。
【請求項7】
前記エアーノズルとしてフラットノズルを用い、エアーが水平方向又は当該水平方向に対し鋭角の範囲で傾けた方向に広がるようにして前記エアーノズルによりエアーを吹き付ける、ことを特徴とする請求項6に記載の研磨加工における冷却方法。
【請求項8】
前記砥石の軸線方向又は当該軸線方向に対し鋭角の範囲で前記砥石側に傾けた方向へ向けて前記エアーノズルによりエアーを吹き付ける、ことを特徴とする請求項6に記載の研磨加工における冷却方法。
【請求項9】
前記クーラント供給用ノズルの先端より僅かに高い位置へ向けて前記エアーノズルによりエアーを吹き付ける、ことを特徴とする請求項6に記載の研磨加工における冷却方法。
【請求項10】
前記エアーノズルへのエアー供給路にエアーの吹き出し量を調節することが可能なエアー調節機器を設置することと、
前記クーラントが前記接触箇所に流れ込むように前記エアー調節機器を用いてエアーの吹き出し量を調節することと、をさらに含むことを特徴とする請求項6~9のいずれか一項に記載の研磨加工における冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨機及び研磨加工における冷却方法に関し、さらに詳しくは、被加工物を研磨加工する際に用いられ、砥石、及び当該砥石と前記被加工物との接触箇所へクーラントを供給するための供給用ノズルを有する研磨機、並びに、そのような研磨機を用いて被加工物を研磨加工する際に、砥石と被加工物との接触箇所へクーラント供給用ノズルからクーラントを供給する研磨加工における冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨機又は研削機を用い、被加工物を高速回転している砥石に接触させて表面加工する研磨加工又は研削加工が一般的に知られている(以下では、「研磨機又は研削機」について単に「研磨機」、研磨加工又は研削加工について単に「研磨加工」と記載する。)。研磨加工においては、被加工物を研磨する際の被加工物と砥石との接触による摩擦熱を抑制させるため、接触位置付近に水等の冷却液(以下では、「クーラント」と記載する。)が供給される。研磨加工においては、高速回転する砥石によって砥石の外周面に沿って発生する空気流の影響で、クーラントが砥石に十分にかからなくなることで冷却効率を低下させている、という課題があった(
図6参照)。すなわち、高速回転する砥石によって砥石の外周面に沿って発生する空気流により、クーラントの流れが砥石から離れていく方向に曲げられ、クーラントが砥石にかかり難くなる、という課題があった。このような課題を解決しようとする提案がなされている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、正面視山形状で特徴のある流体吐出通路と、第1吐出口及び第2吐出口を備えた特殊な形状のクーラント供給用ノズルが開示されている。このクーラント供給用ノズルを用いれば、被加工物と砥石との接触箇所にクーラントを効率良く供給できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような特殊な形状のクーラント供給用ノズルを使用すると、流路形状が異なることから供給するクーラントの流量や流速が従来よりも減ってしまう場合がある。このため、特に特殊なクーラント供給用ノズルを用いることなく、従来と同等の流量や流速でクーラントを砥石に効率良く十分にかけるようにしたい、という要望がある。
【0006】
本発明は、かかる要望に鑑みなされたものであり、クーラントを砥石に効率良く十分にかけることができる研磨機及び研磨加工における冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]上記課題を解決すべく、本発明に係る研磨機は、被加工物を研磨加工する際に用いられ、砥石、及び当該砥石と被加工物との接触箇所へクーラントを供給するための供給用ノズルを有する研磨機であって、クーラント供給用ノズルの先端部近傍から砥石の表面にかけてエアーの吹き付けが可能なように砥石の近傍に配置されたエアーノズルを備える、ことを特徴とする。
【0008】
[2]本発明に係る研磨機においては、エアーノズルは、フラットノズルであり、エアーが水平方向又は当該水平方向に対し鋭角の範囲で傾けた方向へ広がるエアーを吹き出すことが可能な姿勢で配置されていることが好ましい。
【0009】
[3]本発明に係る研磨機においては、エアーノズルは、砥石の軸線方向又は当該軸線方向に対し鋭角の範囲で砥石側に傾けた方向へ向けてエアーを吹き出すことが可能な姿勢で配置されていることが好ましい。
【0010】
[4]本発明に係る研磨機においては、エアーノズルは、クーラント供給用ノズルの先端より僅かに高い位置へ向けてエアーを吹き出すことが可能な高さで配置されていることが好ましい。
【0011】
[5]本発明に係る研磨機においては、エアーノズルへのエアー供給路に設置され、エアーの吹き出し量を調節することが可能なエアー調節機器をさらに備えることが好ましい。
【0012】
[6]また上記課題を解決すべく、本発明に係る研磨加工における冷却方法は、砥石及びクーラント供給用ノズルを有する研磨機を用いて被加工物を研磨加工する際に、砥石と被加工物との接触箇所へクーラント供給用ノズルからクーラントを供給する研磨加工における冷却方法であって、砥石の近傍にエアーの吹き出しが可能なエアーノズルを設置することと、クーラントを供給する際に、クーラント供給用ノズルの先端部近傍から砥石の表面にかけてエアーノズルによりエアーを吹き付けることと、を含むことを特徴とする。
【0013】
[7]本発明に係る研磨加工における冷却方法においては、エアーノズルとしてフラットノズルを用い、エアーが水平方向又は水平方向に対し鋭角の範囲で傾けた方向に広がるようにしてエアーノズルによりエアーを吹き付けることが好ましい。
【0014】
[8]本発明に係る研磨加工における冷却方法においては、砥石の軸線方向又は軸線方向に対し鋭角の範囲で砥石側に傾けた方向へ向けてエアーノズルによりエアーを吹き付けることが好ましい。
【0015】
[9]本発明に係る研磨加工における冷却方法においては、クーラント供給用ノズルの先端より僅かに高い位置へ向けてエアーノズルよりエアーを吹き付けることが好ましい。
【0016】
[10]本発明に係る研磨加工における冷却方法においては、エアーノズルへのエアー供給路にエアーの吹き出し量を調節することが可能なエアー調節機器を設置することと、クーラントが接触箇所に流れ込むようにエアー調節機器を用いてエアーの吹き出し量を調節することと、をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クーラントを砥石に効率良く十分にかけることができる研磨機及び研磨加工における冷却方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る研磨機の全体構成を示す平面視模式図である。
【
図2】
図1の研磨機に搭載されたエアーノズルの斜視図である。
【
図3】
図1の研磨機のクーラントの供給状態を示す側面視模式図である。
【
図4】
図1の研磨機におけるエアーの吹き付けを説明する平面視模式図である。
【
図5】
図1の研磨機におけるエアーの吹き付けを説明する正面視模式図である。
【
図6】従来の研磨機のクーラントの供給状態を示す側面視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して本発明の一実施形態である研磨機及び研磨加工における冷却方法を説明する。なお、各図面は必ずしも全ての構成・形状を示したものでも実際の寸法を厳密に反映したものでもない。
【0020】
(1-1.実施形態に係る研磨機の構成)
図1は、実施形態に係る研磨機1の全体構成を示す平面視模式図である。
図2は、研磨機1に搭載されたエアーノズル51の斜視図である。
図3は、研磨機1のクーラントCLの供給状態を示す側面視模式図である。
図4は、研磨機1におけるエアーABの吹き付けを説明する平面視模式図である。
図5は、研磨機1におけるエアーABの吹き付けを説明する正面視模式図である。
【0021】
研磨機1は、被加工物Wを研磨加工する際に用いられる。研磨機1は、いわゆる円筒研削盤であり、
図1に示すように、砥石部2、被加工物保持部3、クーラント供給部4、及びエアー供給部5を備えている。研磨機1は、被加工物保持部3で保持した被加工物Wの表面を、砥石部2を接触させて磨くことができる。なお、本明細書においては、研磨加工及び研削加工といった砥石で被加工物の表面を磨く加工全般について「研磨加工」と表現し、これら加工に用いる研磨盤及び研削盤といった高速回転する砥石で被加工物の表面を磨く加工機全般について「研磨機」と表現する。
【0022】
砥石部2は、所定の可動仕様により移動可能な砥石テーブル21、砥石テーブル21上に設置された砥石モータ22、及び砥石モータ22の出力軸に固定された砥石23を含み構成されている。砥石部2については既知であり、詳細な説明を省略するが、砥石23は、砥石モータ22により高速回転することが可能で、砥石テーブル21の可動仕様にて移動することが可能である。
【0023】
被加工物保持部3は、所定の可動仕様により移動可能な被加工物保持部テーブル31、被加工物保持部テーブル31上に設置された主軸センタ32及び芯押センタ33を含み構成されている。被加工物保持部3については既知であり、詳細な説明を省略するが、主軸センタ32は、チャッキング機構及びチャッキング機構を回転させる回転モータを有し、被加工物Wを保持し、必要に応じてチャッキング軸周りに回転させることができる。また、芯押センタ33は、主軸センタ32のチャッキング軸と同軸上に延びる部分を有し、被加工物Wを主軸センタ32と対向する方向から支持することができる。主軸センタ32にチャッキングされ、必要に応じて芯押センタ33に支持された被加工物Wは、被加工物保持部テーブル31の可動仕様にて移動することが可能である。なお、主軸センタ32及び芯押センタ33は、チャッキング軸方向に沿って移動可能に、被加工物保持部テーブル31上に設置されている。
【0024】
クーラント供給部4は、クーラントCLを送り出す液送ポンプ(不図示)と、クーラント供給路を介して液送ポンプに接続されてクーラントCLを吐出するクーラントノズル41とを備えている。クーラント供給部4については既知であり、詳細な説明を省略するが、研磨加工時において被加工物保持部3に保持された被加工物Wと砥石23との接触箇所CPの上方に配置されたクーラントノズル41から、接触箇所CP周辺に向けてクーラントCLを供給(吐出)し、被加工物Wを冷却する。
【0025】
エアー供給部5は、エアーABを発生させるエアーポンプ(不図示)と、エアー供給路を介してエアーポンプに接続されてエアーABを吹き出すエアーノズル51とを備えている。また、エアー供給部5は、エアーノズル51へのエアー供給路に設置され、エアーABの吹き出し量の調節することが可能なエアー調節機器52をさらに備えている。エアー供給部5は、エアーポンプで発生させたエアーABを、エアー調節機器52で供給量を調節したうえで、エアーノズル51から吹き出させることができる。
【0026】
エアーノズル51は、
図2に示すようなフラットノズルであり、所望の形状を維持可能でエアー供給路となるフレキシブルホースに接続されるエアー供給部分51a、及びエアー供給部分51aから流路を広げるフラット部分51bから構成されている。フラット部分51bの先端には、エアーABの吹き出し口である複数のノズル孔51cが一直線上に並び形成されている。エアーノズル51は、フレキシブルホースにより高さ、傾き、向きが固定されて設置され、ノズル孔51cが並ぶ方向に広がったエアーABをノズル孔51cが向く方向へ吹き出すことができる。より具体的には、エアーノズル51は、クーラント供給用ノズル41の先端部近傍から砥石23の表面にかけてエアーABの吹き付けが可能なように砥石23の近傍に配置されている。さらに具体的には、エアーノズル51は、
図3及び
図5に示すように、水平方向に広がるエアーABを吹き付けることが可能な姿勢(ノズル孔51cが並ぶ方向が水平となるような姿勢)で配置されている。これにより、エアーノズル51は、水平方向に広がるエアーABをクーラント供給用ノズル41の先端部近傍から砥石23の表面にかけて吹き付けることができる。また、エアーノズル51は、
図3及び
図5に示すように(
図3では、エアーノズル51が紙面奥側に向けてエアーを吹き出している。)、クーラント供給用ノズル41の先端より僅かに高い位置に配置されている。これにより、エアーノズル51は、クーラント供給用ノズル41の先端より僅かに高い位置へ向けてエアーABを吹き出すことができる。また、エアーノズル51は、
図4に示すように、砥石23の軸線L方向に対し鋭角の範囲で砥石23側に傾けた方向へ向けてエアーABを吹き出すことが可能な姿勢で配置されている。これにより、エアーノズル51は、砥石23の軸線L方向に対し鋭角の範囲で砥石23側に傾けた方向へ向けてエアーABを吹き出すことができる。
【0027】
エアー調節機器52は、一例としてエアーバルブであり、バルブの絞り状態で、エアーABの流量が調節される。
【0028】
上記のように構成された研磨機1は、研磨加工の際、被加工物保持部3に保持された被加工物Wを砥石部2の高速回転する砥石23に接触させることで、被加工物W表面を研磨する。また、研磨機1は、研磨加工の際、クーラントノズル41からクーラントCLを接触箇所CPに向けて吐出する。また、研磨機1は、研磨加工の際、エアーノズル51から、クーラント供給用ノズル41の先端より僅かに高い位置で、砥石23の軸線L方向に対し砥石23側に鋭角の範囲で傾けた方向へ向けて、クーラント供給用ノズル41の先端部近傍から砥石23の表面にかけて、水平方向に広がるエアーABを吹き付ける。
【0029】
つまり、研磨機1においては、
図3に示すように、研磨加工の際、被加工物Wと砥石23との接触箇所CPにおいて摩擦熱が発生するが、クーラントノズル41から吐出されるクーラントCLで冷却している。ここで、研磨機1における砥石23の外周面付近には、砥石23の高速回転によって砥石23表面から離れようとする流れの空気流AFが発生する。しかしながら、クーラントCLを吐出するクーラント供給用ノズル41先端付近において、この空気流AFは、エアーノズル51から吹き付けられるエアーABによって分散され、すなわち、クーラント吐出付近上方の空気流AF1とクーラント吐出付近下方の空気流AF2とに分断され、弱まっている。これにより、研磨機1においては、クーラントCLが空気流AFの影響を受けて砥石23から離れる方向に流され難くなることで、砥石23表面にしっかりかかるとともに被加工物Wと砥石23との接触箇所CPに十分に届き、接触箇所CPで発生する摩擦熱を効率良く冷却している。
【0030】
(1-2.実施形態に係る研磨加工における冷却方法)
以下に、実施形態に係る研磨加工における冷却方法を説明するが、説明の便宜上、
図1~
図5を参照し、各部について前述した研磨機1と対応させた名称及び符号を付して説明する。
【0031】
実施形態に係る研磨加工における冷却方法は、砥石23及びクーラント供給用ノズル41を有する研磨機1を用いて被加工物Wを研磨加工する際に、砥石23と被加工物Wとの接触箇所CPへクーラント供給用ノズル41からクーラントCLを供給する研磨加工における冷却方法である。この冷却方法においては、砥石23の近傍にエアーABの吹き出しが可能なエアーノズル51を設置し、クーラントCLを供給する際に、クーラント供給用ノズル41の先端部近傍から砥石23の表面にかけてエアーノズル51によりエアーABを吹き付ける。
【0032】
この冷却方法においては、好ましくは、エアーノズル51としてフラットノズルを用い、エアーABが水平方向又は水平方向に対し鋭角の範囲で傾けた方向に広がるようにして、エアーノズル51によりエアーABを吹き付ける。
【0033】
また、この冷却方法においては、好ましくは、砥石23の軸線L方向又は軸線L方向に対し鋭角の範囲で砥石23側に傾けた方向へ向けて、エアーノズル51によりエアーABを吹き付ける。
【0034】
また、この冷却方法においては、好ましくは、クーラント供給用ノズル41の先端より僅かに高い位置へ向けて、エアーノズル51によりエアーABを吹き付ける。
【0035】
また、この冷却方法においては、好ましくは、エアーノズル51へのエアー供給路にエアーABの吹き出し量を調節することが可能な、例えばエアーバルブや圧力調整レギュレータといったエアー調節機器52を設置し、クーラントCLが接触箇所CPに流れ込むように、かつノイズとならない程度にエアー調節機器52を用いてエアーABの吹き出し量を調節する。具体的な一例としては、エアーノズル51に0.05MPa~0.1MPaの圧力がかかるようエアー調節機器52を調節する。また別の具体的な一例としては、クーラントCLの吐出開始に対応させてエアーABを吹き出させ、クーラントCLの吐出停止に対応させてエアーABの吹き出しを停止させる。
【0036】
上記のような研磨加工における冷却方法においては、被加工物保持部3に保持された被加工物Wを砥石部2の高速回転する砥石23に接触させることで、被加工物W表面を研磨し、その際に、クーラントノズル41からクーラントCLを接触箇所CPに向けて吐出する。また、その際に、エアーノズル51から、クーラント供給用ノズル41の先端より僅かに高い位置で、砥石23の軸線L方向又は砥石23の軸線L方向に対し砥石23側に鋭角の範囲で傾けた方向へ向けて、クーラント供給用ノズル41の先端部近傍から砥石23の表面にかけて、水平方向又は水平方向に対し鋭角に傾く方向に広がるエアーABを吹き付ける。
【0037】
つまり、上記のような研磨加工における冷却方法においては、
図3に示すように、研磨加工の際、被加工物Wと砥石23との接触箇所CPにおいて摩擦熱が発生するが、クーラントノズル41から吐出されるクーラントCLで冷却している。ここで、研磨機1における砥石23の外周面付近には、砥石23の高速回転によって砥石23表面から離れようとする流れの空気流AFが発生する。しかしながら、クーラント供給用ノズル41からクーラントCLを吐出する付近において、この空気流AFをエアーノズル51から吹き付けるエアーABによって分散させ、すなわち、この空気流AFをクーラント吐出付近上方の空気流AF1とクーラント吐出付近下方の空気流AF2とに分断させて弱めている。これにより、上記のような研磨加工における冷却方法においては、クーラントCLを空気流AFの影響により砥石23から離れる方向に流され難くして砥石23表面にしっかりかかるようになり、被加工物Wと砥石23との接触箇所CPに十分に届き接触箇所CPで発生する摩擦熱を効率良く冷却している。
【0038】
(1-3.実施形態に係る作用・効果)
【0039】
実施形態に係る研磨機1は、砥石23と被加工物Wとの接触箇所CPへクーラントCLを供給するための供給用ノズル41を有し、クーラント供給用ノズル41の先端部近傍から砥石23の表面にかけてエアーABの吹き付けが可能なように砥石23の近傍に配置されたエアーノズル51を備えている。そして、研磨機1により行われる研磨加工における冷却方法は、クーラントCLを供給する際に、砥石23の近傍に設置されたエアーノズル51によりクーラント供給用ノズル41の先端部近傍から砥石23の表面にかけてエアーABを吹き付ける。これにより、高速回転する砥石23によって砥石23の外周面に沿って発生する空気流AFが、被加工物Wと砥石23との接触箇所CP上方のクーラント供給用ノズル41の先端部近傍付近で一旦分散する。これにより、砥石23の外周面に沿って発生する空気流AFが弱まるため、すなわち、クーラントCLを砥石23から離す方向へ流そうとする力が弱まるため、クーラントCLが砥石23に十分にかかり接触箇所CPにもしっかり届くようになる。
【0040】
その結果、研磨機1及び研磨機1により行われる研磨加工における冷却方法は、クーラントCLを砥石23に効率良く十分にかけることができる研磨機及び研磨加工における冷却方法となる。
【0041】
研磨機1においては、エアーノズル51は、フラットノズルであり、エアーABが水平方向又は当該水平方向に対し鋭角の範囲で傾けた方向へ広がるエアーABを吹き出すことが可能な姿勢で配置されている。そして、研磨機1により行われる研磨加工における冷却方法においては、エアーノズル51としてのフラットノズルを用い、エアーABが水平方向又は水平方向に対し鋭角の範囲で傾けた方向に広がるようにして、エアーABを吹き付ける。このように、クーラント供給用ノズル41の先端部近傍から砥石23の表面にかけての隙間にエアーABを吹き付けることで、砥石23の外周面に沿って発生する空気流AFを砥石23の幅方向に切れ間なく分散させることができるため、クーラント供給に悪影響を及ぼしている空気流AFをより減少させることができる。
【0042】
研磨機1においては、エアーノズル51は、砥石23の軸線L方向又は当該軸線L方向から鋭角の範囲で砥石23側に傾けた方向へ向けてエアーABを吹き出すことが可能な姿勢で配置されている。そして、研磨機1により行われる研磨加工における冷却方法においては、砥石23の軸線L方向から鋭角の範囲で砥石23側に傾けた方向へ向けて、エアーノズル51よりエアーABを吹き付ける。このようにエアーABを吹き付けることで、砥石23の外周面に沿って発生する空気流AFを砥石23の軸線L方向へ流すように分散させることができるため、すなわち、砥石23に邪魔されず分散させることができるため、砥石23の外周面に沿って発生してクーラント供給に悪影響を及ぼしている空気流AFをさらに減少させることができる。また、砥石23側に傾けた方向へ向けてエアーを吹き付ける場合には、砥石23の外周面に沿って発生する空気流AFを砥石23側に押し戻すことができるため、空気流AFをクーラント供給に悪影響を及ぼし難い方向へ流しやすくできる。
【0043】
研磨機1においては、エアーノズル51は、クーラント供給用ノズル41の先端より僅かに高い位置へ向けて、エアーABを吹き出すことが可能な高さで配置されている。そして、研磨機1により行われる研磨加工における冷却方法においては、クーラント供給用ノズル41の先端より僅かに高い位置へ向けて、エアーノズル51によりエアーABを吹き付ける。このようにエアーABを吹き付けることで、クーラントCLの吐出口より僅か上方において砥石23の外周面に沿って発生する空気流AFを分散させることになり、クーラントCL吐出時の空気流AFによる悪影響を減少させることができる。
【0044】
研磨機1においては、エアーノズル51へのエアー供給路に設置され、エアーABの吹き出し量を調節することが可能なエアー調節機器52をさらに備えている。そして、研磨機1により行われる研磨加工における冷却方法においては、エアー調節機器52を用い、クーラントCLが接触箇所CPに流れ込むようにエアーABの吹き出し量を調節する。このように、ノイズにならないようにエアーABの吹き出し量を調整することで、砥石23にクーラントCLをより効率良く十分にかけることができる。
【0045】
[その他の形態]
以上、本発明を上記の実施形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0046】
(1)上記実施形態において記載した構成要素の数、形状、位置、大きさ、向き、圧力値等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0047】
(2)上記した実施形態の研磨機1においては、エアーノズル51は、水平方向に広がるエアーを吹き出すことが可能な姿勢で配置されているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。高速回転する砥石により砥石の外周面に沿って発生する空気流AFを分散させやすい向きで配置すればよい。そうはいっても、エアーノズルを水平方向に対し鋭角の範囲で傾けた方向に広がるエアーを吹き出すことが可能な姿勢で設置すると、砥石の外周面に沿って発生する空気流AFを分散させて分断しやすく、好ましい。
【0048】
(3)上記した実施形態の研磨機1においては、エアーノズル51は、砥石23の軸線L方向に対し鋭角の範囲で砥石23側に傾けた方向へ向けてエアーを吹き出すことが可能な姿勢で配置されているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。エアーノズルが砥石の軸線方向へ向けてエアーを吹き出すことが可能な姿勢で配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…研磨機、2…砥石部、3…被加工物保持部、4…クーラント供給部、5…エアー供給部、21…砥石テーブル、22…砥石モータ、23…砥石、31…被加工物保持部テーブル、32…主軸センタ、33…芯押センタ、41…クーラント供給用ノズル、51…エアーノズル、51a…エアー供給部分、51b…フラット部分、51c…エアーノズル孔、52…エアー調節機器、AB…エアー、AF…砥石の外周面に沿って発生する空気流、AF1…拡散前の砥石の外周面に沿って発生する空気流、AF2…拡散後の砥石の外周面に沿って発生する空気流、CL…クーラント、CP…接触箇所、L…砥石の軸線、W…被加工物
【手続補正書】
【提出日】2022-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を研磨加工する際に用いられ、
前記被加工物を保持する被加工物保持部と、
回転駆動される砥石と、
クーラントの吐出ノズル先端が下向きに配置され、前記砥石と前記被加工物との接触箇所へ前記クーラントを供給するクーラント供給用ノズルと、
エアーの吹出ノズル先端が水平向きに配置され、回転する砥石の外周面に沿って発生した空気流に水平方向のエアーを吹き付けて前記空気流を砥石回転方向の上流側空気流と下流側空気流とに分断させるエアーノズルと、を有する研磨機であって、
前記エアーノズルは、エアーの吹き出し口となる複数のノズル孔が水平に並び、前記クーラント供給用ノズルと砥石軸線方向に離間して設置されるフラットノズルであり、
前記複数のノズル孔は、前記クーラントの吐出ノズル先端より僅かに高い位置で、かつ、前記砥石軸線方向に対し鋭角の範囲で前記砥石側に傾けた方向へ向けて配置されていることを特徴とする研磨機。
【請求項2】
前記フラットノズルは、エアー供給路となるフレキシブルホースに接続固定されていることを特徴とする請求項1記載の研磨機。
【請求項3】
前記エアー供給路に設置され、前記フラットノズルからのエアーの吹き出し量を調節するエアー調節機器を備えていることを特徴とする請求項2記載の研磨機。
【請求項4】
請求項3記載の研磨機を使用した研磨加工における冷却方法であって、前記エアー調節機器を用いて、前記クーラントが前記接触箇所に流れ込むようにエアーの吹き出し量を設定範囲内に調節することを特徴とする研磨加工における冷却方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
[1]上記課題を解決すべく、本発明に係る研磨機は、被加工物を研磨加工する際に用いられ、前記被加工物を保持する被加工物保持部と、回転駆動される砥石と、クーラントの吐出ノズル先端が下向きに配置され、前記砥石と前記被加工物との接触箇所へ前記クーラントを供給するクーラント供給用ノズルと、エアーの吹出ノズル先端が水平向きに配置され、回転する砥石の外周面に沿って発生した空気流に水平方向のエアーを吹き付けて前記空気流を砥石回転方向の上流側空気流と下流側空気流とに分断させるエアーノズルと、を有する研磨機であって、前記エアーノズルは、エアーの吹き出し口となる複数のノズル孔が水平に並び、前記クーラント供給用ノズルと砥石軸線方向に離間して設置されるフラットノズルであり、前記複数のノズル孔は、前記クーラントの吐出ノズル先端より僅かに高い位置で、かつ、前記砥石軸線方向に対し鋭角の範囲で前記砥石側に傾けた方向へ向けて配置されていることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
[2]本発明に係る研磨機においては、前記フラットノズルは、エアー供給路となるフレキシブルホースに接続固定されていることが好ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
[3]本発明に係る研磨機においては、前記エアー供給路に設置され、前記フラットノズルからのエアーの吹き出し量を調節するエアー調節機器を備えていることが好ましい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
[4]また上記課題を解決すべく、本発明に係る研磨加工における冷却方法は、前記研磨機を使用した研磨加工における冷却方法であって、前記エアー調節機器を用いて、前記クーラントが前記接触箇所に流れ込むようにエアーの吹き出し量を設定範囲内に調節することを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】