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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180948
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20231214BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G01N23/046
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094645
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中本 智
(72)【発明者】
【氏名】林 祐樹
【テーマコード(参考)】
2G001
3D131
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001HA07
2G001HA13
2G001HA14
2G001JA08
2G001LA05
2G001MA07
3D131LA21
(57)【要約】
【課題】タイヤの種類によって断面画像の輝度が異なることによる不具合が生じにくくなる画像処理方法を提供する。
【解決手段】実施形態の空気入りタイヤは、タイヤの断面画像の処理方法において、全体画像の中にタイヤ断面画像及びリム断面画像が含まれ、前記全体画像から前記タイヤ断面画像のゴム製部分を抽出するタイヤ画像抽出ステップと、前記ゴム製部分の平均輝度を求める平均輝度算出ステップと、前記平均輝度を使用して、前記タイヤ断面画像の輝度を基準輝度に近づける処理を行う輝度調整ステップとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの断面画像の処理方法において、
全体画像の中にタイヤ断面画像及びリム断面画像が含まれ、前記全体画像から前記タイヤ断面画像のゴム製部分を抽出するタイヤ画像抽出ステップと、
前記ゴム製部分の平均輝度を求める平均輝度算出ステップと、
前記平均輝度を使用して、前記タイヤ断面画像の輝度を基準輝度に近づける処理を行う輝度調整ステップと、
を含む画像処理方法。
【請求項2】
前記タイヤ断面画像及び前記リム断面画像の前記全体画像の中で占める割合を5%以上15%以下とする、請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記タイヤ画像抽出ステップは、前記全体画像の中から輝度が所定範囲の部分を抽出することにより行われる、請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記所定範囲は、前記全体画像が256階調で表されるときの階調の数値で30以上150以下である、請求項3に記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記輝度調整ステップの後の画像に対して二値化処理が行われる、請求項1に記載の画像処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、タイヤ断面画像をCT装置で撮影し、その画像からタイヤ構成部品の形状を確認することが知られている。CT装置はX線を透過させてタイヤ断面の様子を非破壊で撮影する装置であり、X線の透過率はタイヤ構成部品の材料(例えばゴムの配合)により異なるため、撮影されたタイヤ断面画像の明るさ(輝度)はタイヤの種類によって異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-2841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タイヤ断面画像に対して画像処理をしようとする場合に、上記のようにタイヤの種類によって断面画像の輝度が異なると不具合が生じやすい。例えば、断面画像に対して二値化処理を行い、輝度が閾値より高い部分と閾値より低い部分とに分けることが考えられる。そのときに、輝度が比較的高いタイヤ断面画像を二値化処理することを想定して閾値が設定されていると、輝度が比較的低いタイヤ断面画像の二値化処理が適切になされない可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、上記のような不具合が生じにくくなる画像処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
【0007】
[1]タイヤの断面画像の処理方法において、全体画像の中にタイヤ断面画像及びリム断面画像が含まれ、前記全体画像から前記タイヤ断面画像のゴム製部分を抽出するタイヤ画像抽出ステップと、前記ゴム製部分の平均輝度を求める平均輝度算出ステップと、前記平均輝度を使用して、前記タイヤ断面画像の輝度を基準輝度に近づける処理を行う輝度調整ステップと、を含む画像処理方法。
【0008】
[2]前記タイヤ断面画像及び前記リム断面画像の前記全体画像の中で占める割合を5%以上15%以下とする、[1]に記載の画像処理方法。
【0009】
[3]前記タイヤ画像抽出ステップは、前記全体画像の中から輝度が所定範囲の部分を抽出することにより行われる、[1]又は[2]に記載の画像処理方法。
【0010】
[4]前記所定範囲は、前記全体画像が256階調で表されるときの階調の数値で30以上150以下である、[3]に記載の画像処理方法。
【0011】
[5]前記輝度調整ステップの後の画像に対して二値化処理が行われる、[1]~[4]のいずれかに記載の画像処理方法。
【発明の効果】
【0012】
本実施形態によれば、どのようなタイヤ断面画像も輝度が基準輝度に近づくので、その後の画像処理において不具合が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】画像処理装置の構成を示す図。
図2】(a)は輝度調整前の全体画像。(b)は輝度調整後の全体画像。
図3】(a)は回転前の全体画像。(b)は回転後の全体画像。
図4】リム付きタイヤ断面画像のビードコア近傍の拡大図。(a)は二値化処理前の画像。(b)は二値化処理後で膨張収縮処理前の画像。(c)は(b)の画像に対して1回目の膨張処理を行った後の画像。(d)は(c)の画像に対して1回目の収縮処理を行った後の画像。
図5】リム付きタイヤ断面画像の輪郭線を簡略化して示す図。
図6】膨張収縮処理前後の輪郭線を示す図。(a)は膨張収縮処理前のリム付きタイヤ断面画像。(b)は膨張収縮処理後のトレッドの輪郭線を示す図。
図7】タイヤ断面画像の部分拡大図。内側参照点の決定方法を説明する図。
図8】画像処理のフローチャート。
図9】輝度調整のフローチャート。
図10】画像を回転させる処理のフローチャート。
図11】ノイズ処理のフローチャート。
図12】外側輪郭線と内側輪郭線の分類のフローチャート。
図13】長さ測定用モデル作成のフローチャート。
図14】タイヤの厚みの算出のフローチャート。
図15】タイヤ断面画像が上、リム断面画像が下になったリム付きタイヤ断面画像。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0015】
図1に示されるのは、本実施形態の画像処理装置10である。本実施形態の画像処理装置10は、空気入りタイヤの断面画像(以下「タイヤ断面画像」とする)における所定部分の寸法を自動的に測定する装置である。
【0016】
本実施形態におけるタイヤ断面画像は、空気入りタイヤ(以下「タイヤ」とする)の断面画像であって、タイヤ外面に対する垂線とタイヤ回転軸とを通る平面を断面としたときの画像である。また、特に事情がない限り、タイヤ断面画像についての説明におけるタイヤ軸方向とはタイヤ回転軸の延長方向のことである。また、タイヤ断面画像において、タイヤ径方向はタイヤ軸方向に直交する方向と一致する。
【0017】
また、本実施形態におけるタイヤ断面画像は、X線を利用したCT(Computed Tomography)装置で撮影される画像である。
【0018】
画像処理装置10は、処理部、記憶部、入力部及び表示部を含むコンピュータにより実現される。記憶部として、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等が設けられている。記憶部には、本実施形態を実行するためのプログラム、CT装置で撮影されたタイヤ断面画像のデータ、後述する各種処理後の画像データ等が記憶される。
【0019】
処理部はCPU(Central Processing Unit)等で構成されている。処理部は、ROM等に記憶されているプログラムをRAM上に読み出して実行することにより、本実施形態の画像処理を実行する。入力部は、例えばマウス及びキーボードであり、画像処理装置10の利用者(以下「利用者」とする)からの入力を受け付ける。表示部は、例えばディスプレイであり、タイヤ断面画像等の各種データや、入力部による入力画面等を表示する。
【0020】
なお、プログラムは、CD-ROM、CD-R、USB等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて配布されたり、インターネットに接続されたコンピュータに格納されインターネット経由でダウンロードされる形で配布されたりする。
【0021】
画像処理装置10は、上記のように処理部がプログラムを実行することにより実現される。図1に示されるように、画像処理装置10は、グレースケール変換部11、輝度調整部12、画像回転部13、二値化処理部14、ノイズ処理部15、輪郭線検出部16、輪郭線種別部17、長さ測定用モデル作成部18及び長さ算出部19を機能的に有している。
【0022】
CT装置は、リムに装着された状態でのタイヤの断面画像を撮影する。撮影されるのは、タイヤ周方向の任意の位置における、リムに装着されたタイヤの断面画像である。撮影の結果、タイヤ断面画像とともに、同じ断面上のリム部分の断面画像(以下「リム断面画像」とする)が取得される。タイヤ断面画像とリム断面画像とを含む、取得された画像の全体のことを「全体画像」とする。また、タイヤ断面画像とリム断面画像とが一体となったものを「リム付きタイヤ断面画像」とする。リム付きタイヤ断面画像の全体画像の中で占める割合(面積比)は、5%以上15%以下が好ましく、8%以上12%以下がさらに好ましい。
【0023】
CT装置で撮影された全体画像においては、X線が吸収されやすい部分ほど明るく写り、X線が透過されやすい部分ほど暗く写る。そのため、ビードコアやリム等の金属部分が明るく写り、ゴム製の部分(以下「ゴム製部分」)が暗く写る。ゴム製部分については、配合によりX線の透過率が異なるため、タイヤの種類毎に明るさが異なる。金属部分についても、金属の種類によって明るさが異なる。また、何もない所は黒又は暗い色になる。
【0024】
図1に示されるグレースケール変換部11は、CT装置で撮影され画像処理装置10に取り込まれた全体画像を、グレースケールの画像に変換する。変換により、全体画像が、黒を0、白を255とする0から255までの256階調の画像になる。以下の説明において、階調を表す数値のことを輝度とする。輝度が大きいとは白に近いことを意味し、輝度が小さいとは黒に近いことを意味する。
【0025】
グレースケールの全体画像は点群データからなる。点群データには、少なくとも、画像を形成する多数の点(ピクセル)それぞれの座標と輝度のデータが含まれる。また、全体画像のサイズは縦横とも1000ピクセル以上である。具体例としては、縦1200ピクセル、横1800ピクセルである。なお、本実施形態の説明において、画像を構成するピクセルのことを点ということがある。
【0026】
図1に示される輝度調整部12は、グレースケールのタイヤ断面画像の輝度を、基準となる輝度(以下「基準輝度」とする)に近付ける。図1に示されるように、輝度調整部12は、タイヤ画像抽出部12aと、輝度変更部12bとを含む。
【0027】
タイヤ画像抽出部12aは、全体画像の中から、タイヤ断面画像の中のゴム製部分を抽出する。ゴム製部分の中にトレッドゴム、サイドウォールゴム、ビードフィラー、ベルトトッピングゴム等が含まれる。様々なタイヤの断面画像を調査した結果から、全体画像の中でタイヤ断面画像のゴム製部分がどの程度の輝度となるかについて、予めわかっている。そこで、タイヤ画像抽出部12aは、全体画像の中から輝度が所定範囲の部分を抽出することにより、タイヤ断面画像のゴム製部分を抽出する。このときの所定範囲は、例えば、輝度(上記の通り全体画像が256階調で表されるときの階調の数値)が30以上150以下である。
【0028】
タイヤ断面画像のゴム製部分が抽出されると、輝度変更部12bが、まず、ゴム製部分の平均輝度を算出する。平均輝度とは、計算範囲を構成する全ピクセルの輝度の合計を、計算範囲を構成するピクセル数で割った値のことである。従って、ゴム製部分の平均輝度は、ゴム製部分を構成する全ピクセルの輝度の合計を、ゴム製部分を構成するピクセル数で割った値である。なお、複数のタイヤ断面画像についてそれぞれ画像処理しようとする場合は、平均輝度はタイヤ断面画像毎に算出される。
【0029】
次に、輝度変更部12bは、ゴム製部分の平均輝度を使用して、タイヤ断面画像の輝度を、基準輝度に近づける処理を行う。そのために、輝度変更部12bは、基準輝度をゴム製部分の平均輝度で割った値(すなわち、(基準輝度)/(ゴム製部分の平均輝度))をスケーリング係数として設定する。そして、輝度変更部12bは、全体画像の中のゴム製部分の全ピクセルのそれぞれについて、ピクセルの輝度にスケーリング係数を掛ける計算(スケーリング計算)を行う。スケーリング計算により、ゴム製部分の輝度が基準輝度に近づく。
【0030】
なお、リム断面画像及び背景にはタイヤ毎又は撮影毎の輝度のばらつきがほとんどなく、リム断面画像及び背景に対してスケーリング計算が行われる必要性は低い。そのため、本実施形態においてはスケーリング計算が全体画像の中のゴム製部分のみに対して行われる。
【0031】
タイヤ断面画像の輝度が基準輝度に近づくことにより、タイヤ断面画像が元は比較的暗かった場合は全体的に明るく変化し、元は比較的明るかった場合は全体的に暗く変化する。例えば、図2(a)のように元々暗かった全体画像が、図2(b)のように明るい画像に変化する。このように、タイヤ断面画像の輝度が基準輝度に近づくことにより、どのタイヤ断面画像も略同じ明るさになる。
【0032】
図1に示される画像回転部13は、タイヤ断面画像上のタイヤ軸方向(以下において「タイヤ軸方向」とし、図3に矢印Dで示す)が基準線に対して平行になるように、全体画像をその面上で回転させる。このとき、画像回転部13は、タイヤ断面画像が上でリム断面画像が下になるようにする。ここで、基準線はX座標軸である。
【0033】
リム付きタイヤ断面画像は、互いに直交するX座標軸及びY座標軸(図3(a)に表示)からなる直交座標系に表される。しかし、画像処理装置10に取り込まれた直後のリム付きタイヤ断面画像は、図3(a)に示されるように、その軸方向が基準線となるX座標軸に対して傾いている。そこで、上記のように画像回転部13が全体画像を回転させて、タイヤ断面画像の軸方向が基準線となるX座標軸に対して平行になるようにする。
【0034】
図1に示されるように、画像回転部13は、ビードコア検出部13aと、回転部13bとを含む。
【0035】
ビードコア検出部13aは、全体画像の中からビードコアを検出する。全体画像において、ビードコアは最も輝度の大きい部分である。そこで、ビードコア検出部13aは、輝度が所定の閾値以上の部分をビードコアとして検出する。閾値として、例えば、全体画像が256階調で表されるときの階調の数値で250が採用される。
【0036】
ビードコアはタイヤのセリアル側と反セリアル側の両方にあるため、ビードコア検出部13aは全体画像から2つのビードコアを検出する。なお、セリアル側とは、タイヤ軸方向のうち表面にセリアルが表示されている方のことである。また、反セリアル側とは、タイヤ軸方向のうちセリアル側と反対側のことである。
【0037】
さらに、ビードコア検出部13aは、セリアル側と反セリアル側それぞれのビードコアの重心の座標を算出する。ビードコアの重心のX座標は、ビードコアを形成する各ピクセルのX座標の総和を、ビードコアを形成するピクセル数で割ることによって求まる。また、ビードコアの重心のY座標は、ビードコアを形成する各ピクセルのY座標の総和を、ビードコアを形成するピクセル数で割ることによって求まる。ビードコア検出部13aはこの計算方法でセリアル側と反セリアル側それぞれのビードコアの重心の座標を算出する。
【0038】
画像回転部13の回転部13bは、まず、セリアル側と反セリアル側それぞれのビードコアの重心を結ぶ直線を求める。セリアル側のビードコアの重心座標を(x1、y1)、反セリアル側のビードコアの重心座標を(x2、y2)とすると、直線は次の式で表すことができる。
【0039】
【数1】
この式から、ビードコアの重心同士を結ぶ直線の傾きが(y2-y1)/(x2-x1)であることがわかる。ビードコアの重心同士を結ぶ直線と基準線とのなす角度θは、直線の傾きを用いて次の式で求まる。
【0040】
【数2】
ところで、図2及び図3に示されるように、画像処理装置10に取り込まれた時点での全体画像において、リム付きタイヤ断面画像は上下逆になっている(すなわち、タイヤ断面画像が下、リム断面画像が上になっている)。そこで、タイヤ断面画像の軸方向がX座標軸に対して平行になり、かつ、タイヤ断面画像が上でリム断面画像が下になるようにするために、タイヤ断面画像を回転させる角度(回転角度θ’)が決定される。具体的には、ビードコアの重心同士を結ぶ直線と基準線とのなす角度θに180°を足した角度が、タイヤ断面画像を回転させる角度(回転角度θ’)として決定される。
【0041】
このようにして回転角度θ’が求まると、回転部13bは、リム付きタイヤ断面画像を含む全体画像を回転させる。その回転角度は先に求まった回転角度θ’である。回転は全体画像の面上で行われるため、画像回転軸は平面状の全体画像に直交する方向に延びる軸である。
【0042】
回転により、タイヤ断面画像のタイヤ軸方向がX座標方向となり、タイヤ断面画像のタイヤ径方向がY座標方向となる。すなわち、回転前は図3(a)のようにタイヤ軸方向がX座標方向に対して傾斜していた場合でも、回転後は図3(b)のようにタイヤ軸方向がX座標方向となる。全体画像の回転後、必要に応じてトリミングが行われる。
【0043】
図1に示される二値化処理部14は、全体画像の二値化処理を行う。二値化処理においては、0より大きく255より小さいいずれかの輝度が閾値として設定される。閾値の決め方は適宜選択できる。そして、輝度が閾値より大きいピクセルは信号値1である白のピクセルに変換される。また、輝度が閾値より小さいピクセルは信号値0である黒のピクセルに変換される。これにより、元々輝度の大きかったタイヤ断面画像及びリム断面画像が白となり、元々輝度の小さかった背景が黒くなる。
【0044】
図4(a)は、二値化処理前のリム付きタイヤ断面画像のビードコア近傍を拡大したものである。図4(a)において、場所(座標)毎に輝度が様々であることがわかる。例えば、ビードコア及びリムの場所は輝度が大きく、背景は輝度が小さく、ゴム製部分は輝度が中間程度であることがわかる。この画像が、二値化処理により図4(b)のように白と黒のみからなる画像に変換される。
【0045】
図1に示されるノイズ処理部15は、二値化処理後のリム付きタイヤ断面画像からノイズを除去する。まず、ノイズ処理部15は、二値化処理後のリム付きタイヤ断面画像の中の所定範囲の座標及び信号値を、膨張収縮処理前の画像データとして保存する。この所定範囲のことを「保存範囲」とする。
【0046】
保存範囲は、次の膨張収縮処理によってリム付きタイヤ断面画像の本来の輪郭線が崩れてしまうおそれのある範囲である。保存範囲は、長方形等の所定形状の範囲である。保存範囲は、利用者に手作業によって選択されても良いし、形状を認識することにより自動的に選択されても良い。本実施形態では、図4(b)において正方形の枠で囲われた範囲、すなわちフランジとタイヤとの隙間を含む範囲が保存範囲として選択される。
【0047】
ノイズ処理部15は、保存範囲の画像データの保存後、二値化処理後の全体画像に対して膨張収縮処理を行う。膨張処理においては、所定の形状及び大きさを有するカーネルが画像内で走査される。そして、走査中の各位置において、注目画素(注目するピクセル)を中心とするカーネル内に信号値1(白)のピクセルが1つでも含まれていれば注目画素の信号値が1とされる(すなわち、注目画素の信号値が元々1であった場合は1のままとされ、0であった場合は1に変換される)。そのため、膨張処理によって白の領域が膨張する。また、膨張処理によって小さな黒のノイズ(欠け等)が消滅する。
【0048】
収縮処理においては、上記のカーネルが画像内で走査される。そして、走査中の各位置において、注目画素を中心とするカーネル内に信号値0(黒)のピクセルが1つでも含まれていれば注目画素の信号値が0とされる(すなわち、注目画素の信号値が元々0であった場合は0のままとされ、1であった場合は0に変換される)。そのため、収縮処理によって白の領域が収縮する。また、収縮処理によって小さな白のノイズが消滅する。
【0049】
ノイズ処理部15は、まず膨張処理を行い、それに続いて収縮処理を行う。膨張処理を行った後の画像が図4(c)、それに続いて収縮処理を行った後の画像が図4(c)である。図示省略するが、膨張処理の後収縮処理を行うことにより、リム付きタイヤ断面画像にあった欠けが埋められる。
【0050】
次に、ノイズ処理部15は、収縮処理を行い、それに続いて膨張処理を行う。収縮処理の後膨張処理を行うことにより、リム付きタイヤ断面画像の周囲にあった小さな白のノイズ等が除去される。このように、ノイズ処理部15は、膨張処理、収縮処理、収縮処理、膨張処理の順に処理を行う。
【0051】
本実施形態において、膨張収縮処理のカーネルの形状は例えば円又は菱形で、カーネルのサイズ(カーネルが円の場合は半径、菱形の場合は中心から頂点(中心から遠い方の頂点)までの長さ)は例えば10ピクセルである。
【0052】
以上の膨張収縮処理により、全体画像に存在したノイズが除去される。しかし、図4(b)において正方形の枠で囲われた保存範囲においては、膨張収縮処理後のリム付きタイヤ断面画像の輪郭が、膨張収縮処理前の輪郭から変形してしまう。
【0053】
そこで、ノイズ処理部15は、膨張収縮処理後の全体画像の中の上記保存範囲の画像データを、保存されていた膨張収縮処理前の画像データに置換する。それにより、保存範囲の各座標の信号値が、膨張収縮処理前の信号値に戻される。その結果、保存範囲の画像が膨張収縮処理前の画像となり、それ以外の場所の画像が膨張収縮処理後の画像となる。保存範囲においてはリム付きタイヤ断面画像の輪郭が正しく現れ、それ以外の場所においてはノイズが除去された上でリム付きタイヤ断面画像の輪郭が正しく現れる。なお、保存範囲は元々ノイズの少ない範囲であるため、このように保存範囲の画像データが膨張収縮処理前の画像データに置換されても問題ない。
【0054】
図1に示される輪郭線検出部16は、二値化されノイズ処理された後の全体画像から、リム付きタイヤ断面画像の輪郭線を検出する。検出は、エッジ関数を使用する等の周知の方法で行われる。検出される輪郭線は点群からなる。検出される輪郭線全体を「全体輪郭線」とする。
【0055】
図5は、検出された全体輪郭線を簡略化して示すものである(実際に検出される全体輪郭線は、図2等の画像から人が認識できるものと同等であり、図5の全体輪郭線よりも滑らかである)。図中の1マスが1点(ピクセル)を意味している。図中のグレーのマスが全体輪郭線を形成する点である。全体輪郭線の太さは、基本的には1ピクセルであるが、図中のBとN101が上下に連続しているように、2ピクセルになる場所もある。
【0056】
図1に示される輪郭線種別部17は、全体輪郭線を、図5及び図6に示される外側輪郭線30と内側輪郭線31とに分類する。外側輪郭線30はリム付きタイヤの外面を表す輪郭線である。また、内側輪郭線31はリム付きタイヤの内面を表す輪郭線である。外側輪郭線30と内側輪郭線31はそれぞれ環状の線である。内側輪郭線31は外側輪郭線30の内側にある。
【0057】
輪郭線種別部17は、全体輪郭線を表す点群から外側輪郭線30を抽出する。まず、輪郭線種別部17は、リム付きタイヤ断面画像にタイヤ軸方向中心線を引く。タイヤ軸方向中心線は、全体輪郭線(ただし、タイヤ軸方向がX座標軸と平行になったリム付きタイヤ画像の全体輪郭線)のX座標方向(タイヤ軸方向)の最大座標と最小座標の中央の座標を通り、Y座標方向(タイヤ径方向)に平行な直線である。図5において、タイヤ軸方向中心線が一点鎖線で示されている。
【0058】
次に、輪郭線種別部17は、タイヤ軸方向中心線と全体輪郭線との交点のうち最もタイヤ径方向外側にある点(すなわちY座標が最大の点)を、1番目の外側点とする。外側点とは外側輪郭線30を形成する点である。図5において、タイヤ軸方向中心線と全体輪郭線との交点のうち最もタイヤ径方向外側にある点は点Aである。
【0059】
次に、輪郭線種別部17は、全体輪郭線を形成する点群に含まれかつ未だ外側点として特定されていない点の中から、1番目の外側点に最も近い点(最近傍点)を探索し、見つかった最近傍点を2番目の外側点とする。図5において、そのような2番目の外側点は点N1である。
【0060】
次に、輪郭線種別部17は、全体輪郭線を形成する点群に含まれかつ未だ外側点として特定されていない点の中から、2番目の外側点に最も近い点(最近傍点)を探索し、見つかった最近傍点を3番目の外側点とする。図5において、そのような3番目の外側点は点N3である。このように、輪郭線種別部17は、先に特定した外側点の最近傍点(ただしその時点までに外側点として特定されていない点)を次の外側点とすることを繰り返す。
【0061】
なお、先に特定された外側点の座標を(x0、y0)、全体輪郭線を構成する他の点の座標を(xn、yn)(n=1、2、3、・・・)とすると、先に特定された外側点と他の点との距離Lnは次の式で計算される。この距離Lnが最も小さい点が、先に特定された外側点の最近傍点である。
【0062】
【数3】
外側点の特定過程において、先に特定された外側点から所定距離以上離れている点は、外側点として選択されない。従って、先に特定された外側点の最近傍点であっても、先に特定された外側点から所定距離以上離れている点は、次の外側点とされない。所定距離とは例えば2ピクセルである。この措置により、実際の外側輪郭線30から離れた点(例えば内側輪郭線31を形成する点)が外側点として選択されなくなる。また、この措置により、最近傍点が所定距離(例えば2ピクセル)以上離れていて次の外側点を特定できなくなった時点で、輪郭線種別部17は外側点の探索を終了することになる。
【0063】
図5において、次々と最近傍点N4、N5・・・が特定されていき、最後に点N99の最近傍点として点N100が特定される。点N100が特定された時までに外側点として特定されていない点の中で、点N100に最も近い点は点Bだが、点Bは点N100から2ピクセル以上離れており選択できないため、最後の最近傍点N100が特定された時点で外側点の探索が終了する。探索終了時点までに特定された外側点が、外側輪郭線30を形成する点として定義される。
【0064】
輪郭線種別部17は内側輪郭線31の抽出も行う。輪郭線種別部17は、タイヤ軸方向中心線と全体輪郭線との交点のうち、タイヤ径方向外側から2番目の点を、1番目の内側点とする。内側点とは内側輪郭線31を形成する点である。図5において、タイヤ軸方向中心線と全体輪郭線との交点のうちタイヤ径方向外側から2番目の点は点Bである。
【0065】
次に、輪郭線種別部17は、全体輪郭線を形成する点群に含まれかつ未だ内側点として特定されていない点の中から、1番目の内側点に最も近い点(最近傍点)を探索し、見つかった最近傍点を2番目の内側点とする。図5において、そのような2番目の内側点は点N101である。
【0066】
次に、輪郭線種別部17は、全体輪郭線を形成する点群に含まれかつ未だ内側点として特定されていない点の中から、2番目の内側点に最も近い点(最近傍点)を探索し、見つかった最近傍点を3番目の内側点とする。図5において、そのような3番目の内側点は点N102である。このように、輪郭線種別部17は、先に特定した内側点の最近傍点(ただしその時点までに内側点として特定されていない点)を次の内側点とすることを繰り返す。なお、先に特定された内側点と他の点との距離の計算方法は、上記の数3の式と同じである。
【0067】
内側点の特定過程において、先に特定された内側点から所定距離以上離れている点は、内側点として選択されない。従って、先に特定された内側点の最近傍点であっても、先に特定された内側点から所定距離以上離れている点は、次の内側点とされない。所定距離とは例えば2ピクセルである。この措置により、実際の外側輪郭線30から離れた点(例えば内側輪郭線31を形成する点)が内側点として選択されなくなる。また、この措置により、最近傍点が所定距離(例えば2ピクセル)以上離れている等して次の内側点を特定できなくなった時点で、輪郭線種別部17は内側点の探索を終了する。
【0068】
図5において、次々と最近傍点N103、N104・・・が特定されていき、最後に点N199の最近傍点として点N200が特定される。ここまでに内側点として特定されていない点の中で、点N200に最も近い点は点N100だが、点N100は点N200から2ピクセル以上離れており選択できないため、最後の最近傍点N200が特定された時点で内側点の探索が終了する。探索終了時点までに特定された内側点が、内側輪郭線31を形成する点として定義される。探索終了時点までに特定された内側点が、内側輪郭線31を形成する点として定義される。
【0069】
図1に示される長さ測定用モデル作成部18は、所定位置でのタイヤの厚みを測定するためのモデル(以下「長さ測定用モデル」とする)を作成する。図6(a)からわかるように、元のタイヤ断面画像において、トレッドの部分の外側輪郭線30には複数の主溝34が現れている。元のタイヤ断面画像が縦1200ピクセル、横1800ピクセルの場合において、主溝34の幅は例えば200ピクセルで、主溝34の深さは例えば50ピクセルである。
【0070】
しかし、タイヤの厚みを測定しようとするときの測定位置は、タイヤ断面において、タイヤ外面上の所定の起点から、タイヤ外面に沿って所定距離だけ離れた位置とされるのが一般的である。そして、そのときの前記「所定距離」は、主溝34を無視して(つまり主溝34がないものとして)測定されるのが一般的である。そのため、タイヤの厚みを測定する測定位置を自動的に決定しようとするとき、タイヤ断面画像における主溝34の存在が邪魔である。そこで、その主溝34が長さ測定用モデル作成部18によって埋められ、長さ測定用モデルにおいてタイヤ外面を表す線が1本の平滑線35(図6(b)参照)に変更される。
【0071】
図1に示されるように、長さ測定用モデル作成部18は、平滑線作成部18aと、長さ計算部18bを含む。
【0072】
平滑線作成部18aは、全体画像の中の選択された領域の膨張収縮処理を行う。ここで、選択された領域とは、平滑線35に沿った長さを測定しようとする部分を含む十分広い領域であり、例えばタイヤのトレッド全体を含む領域である。この領域は手動又は自動で選択される。
【0073】
平滑線作成部18aによる膨張収縮処理のカーネルの形状は例えば円又は菱形である。また、膨張収縮処理のカーネルのサイズ(カーネルが円の場合は半径、菱形の場合は中心から頂点(中心から遠い方の頂点)までの長さ)は、それぞれ1回の膨張処理及び収縮処理でタイヤ断面画像における主溝34を埋めることのできるサイズである。また、タイヤの厚み以上に膨張や収縮される必要はないので、カーネルのサイズは、トレッドにおける外側輪郭線30から内側輪郭線31までの厚み以下である。ここで、厚みとは、内側輪郭線31の法線方向の長さのことである。また、ここで言う厚みは、例えば、タイヤ軸方向中心線上の厚みである。また、カーネルのサイズは、膨張処理における膨張量及び収縮処理における収縮量に相当する。
【0074】
本実施形態において、カーネルのサイズは例えば100ピクセルである。また、平滑線作成部18aは、膨張処理を1回行い、次に収縮処理を1回行う。
【0075】
このような膨張収縮処理により、タイヤ断面画像の外側輪郭線30に現れていた主溝34が埋まり、上記の選択された領域の外側輪郭線30が図6(b)に示されるような平滑線35となる。上記の選択された領域の外側においては、平滑線作成部18aによる膨張収縮処理が行われなくてもタイヤ断面画像における外側輪郭線30は平滑である。以下においては、タイヤ断面画像における外側輪郭線30全体を平滑線35とする。
【0076】
長さ計算部18bは、平滑線作成部18aにより作成された平滑線35とタイヤ軸方向中心線との交点を起点とする、平滑線35上の各位置(点)までの、平滑線35に沿った長さを決定する。
【0077】
まず、長さ計算部18bは、図5及び図6に示されるように平滑線35とタイヤ軸方向中心線(一点鎖線)との交点を起点Aとして設定する(なお、図5は、外側輪郭線30と内側輪郭線31の分類の説明において使用した図だが、便宜上ここでも図5を使用する)。次に、長さ計算部18bは、起点Aの最近傍点を探索し、点N1を最近傍点として特定する。次に、長さ計算部18bは、起点Aから点N1までの距離(「A-N1間距離」とする)を計算する。
【0078】
次に、長さ計算部18bは、点N1の最近傍点を探索し、点N2を最近傍点として特定する。なお、探索範囲には、既に特定された点(点A及び点N1)は含まれない。次に、長さ計算部18bは、点N1から点N2までの距離(「N1-N2間距離」とする)を計算する。次に、長さ計算部18bは、A-N1間距離にN1-N2間距離を足し、その値を起点Aから点N2までの平滑線35に沿った長さとする。
【0079】
このように、長さ計算部18bは、先に特定した点の最近傍点を特定しそれら2点間の距離を計算することを繰り返す。また、長さ計算部18bは、それまでに求まった2点間距離を積算し、その積算値を起点Aからの平滑線35に沿った長さとする。
【0080】
なお、最近傍点の探索範囲には、既に特定された点は含まれない。また、最近傍点の探索は、平滑線35に沿って一方向へ(つまり、環状の外側輪郭線30における右回り又は左回りの方向へ)行われる。また、平滑線35は基本的には連続する点(ピクセル)によって形成されているので、最近傍点の探索範囲は2ピクセル分以下の範囲である。そのため、上記の2点間距離は2ピクセル分以下の距離である。
【0081】
このようにして求まる起点Aから各点までの平滑線35に沿った長さを表1に示す。表1に記載のN1、N2・・・は、図5のN1、N2・・・のことである。
【0082】
【表1】
このような表を用いて、起点Aから平滑線35に沿って所定距離だけ離れた点を特定することができる。例えば、起点Aから平滑線35に沿って4ピクセル分離れた位置の点(ピクセル)を特定しようとする場合は、起点Aからの2点間距離の積算値が4に最も近い点が特定される。表1に基づけば、その点は点N4(図5参照)である。
【0083】
また、1ピクセルの実際のタイヤにおける長さが予め分かっていれば、実際のタイヤにおける起点Aから所定距離の位置が、平滑線35上のどの点に該当するのか、を特定することができる。例えば、1ピクセルが1mmに相当すると予め分かっており、起点Aから8mm離れた位置を特定しようとする場合は、起点Aからの2点間距離の積算値が8mm(=8ピクセル)に最も近い点が特定される。表1に基づけば、その点は点N7である。
【0084】
図1に示される長さ算出部19は、参照点決定部19aと、タイヤ厚み算出部19bを含む。参照点決定部19aにより、外側輪郭線30上の外側参照点と、内側輪郭線31上の内側参照点が決定される。そして、タイヤ厚み算出部19bにより、外側参照点から内側参照点までの長さが算出され、その長さに基づきタイヤの厚みが算出される。
【0085】
厚みを測定する場所により、外側参照点及び内側参照点の最適な決定方法が異なる。決定方法として第1~第3の方法がある。
【0086】
第1の方法は、主にタイヤ軸方向中心位置及びタイヤ最大幅位置の厚みを算出するときの方法である。第1の方法では、参照点決定部19aが、タイヤ断面画像に引かれる1本の直線と外側輪郭線30との交点を外側参照点とし、同じ1本の直線と内側輪郭線31との交点を内側参照点とする。
【0087】
タイヤ軸方向中心位置の厚みを算出するときは、参照点決定部19aが、タイヤ軸方向中心線と外側輪郭線30との交点を外側参照点(参考のため図5に符号32で示す)、タイヤ軸方向中心線と内側輪郭線31との交点を内側参照点(参考のため図5に符号33で示す)とする。なお、タイヤ軸方向中心線と全体輪郭線との交点のうちY座標の値が最大の点が外側参照点、Y座標の値が2番目に大きい点が内側参照点として特定されても良い。
【0088】
また、タイヤ最大幅位置(タイヤ軸方向の長さが最長となる位置)におけるタイヤの厚みを算出するときは、まず、タイヤ軸方向に平行な仮想線が想定される。ここでは、タイヤ軸方向がX座標軸に平行であるものとし、仮想線がX座標軸に平行でY座標値が一定の直線であるものとする。参照点決定部19aは、そのような仮想線のY座標値を変更しながら、仮想線と外側輪郭線30との交点のX座標値の最大値と最小値との差をそれぞれ求める。そして、参照点決定部19aは、その差が最大となるときの仮想線を、タイヤ最大幅位置を通る直線として特定する。
【0089】
次に、参照点決定部19aは、このように特定されたタイヤ最大幅位置を通る直線と外側輪郭線30との交点の座標を求め、さらに、同じタイヤ最大幅位置を通る直線と内側輪郭線31との交点の座標を求める。参照点決定部19aは、求まったこれらの座標から、タイヤ最大幅位置におけるタイヤの厚みを算出する。
【0090】
第2の方法は、タイヤのトレッドゴムの存在する部分やサイドウォールゴムの存在する部分等の厚みを算出するときの方法として適したものである。第2の方法では、まず、上記の平滑線35上の1点が外側参照点に対応する点として特定される。具体的には、利用者が、上記の起点Aから平滑線35に沿ってどれだけの距離離れた位置を外側参照点とするかを入力する。
【0091】
参照点決定部19aは、平滑線35を形成する点群の中から、入力された距離だけ起点Aから離れた位置に最も近い点(ピクセル)を、外側参照点に対応する点(「対応点」とする)として特定する。このとき、参照点決定部19aは、対応点の座標も特定する。ここで、入力された距離だけ起点Aから離れた位置に最も近い点は、表1に基づき特定される。例えば、入力された距離がピクセルにして4の場合は、起点Aからの2点間距離の積算値が4に最も近い点である点N4が、入力された距離(4ピクセル)だけ起点Aから離れた位置に最も近い点として特定される。
【0092】
次に、参照点決定部19aは、長さ測定用モデルとする前の画像(外側輪郭線30を平滑線35とする前の画像)において、上記の対応点と同じ座標の点を、外側参照点として特定する。ここで、外側参照点は、外側輪郭線30上の点となる場合が多いが、タイヤの主溝34の場所であり外側輪郭線30のない場所の点となる場合もある。
【0093】
なお、外側輪郭線30を平滑線35に変更する前と後の画像は、同じサイズであり、同じ座標を有する。そして、外側輪郭線30を平滑線35に変更する前と後の画像は、平滑線35の部分のみが異なる。
【0094】
次に、参照点決定部19aは、長さ測定用モデルとする前の画像において、外側参照点を通り内側輪郭線31に垂直な直線(垂線)を引き、内側輪郭線31を形成する点群の中でその垂線に最も近い点を内側参照点とする。具体的方法としては、まず、参照点決定部19aが、内側輪郭線31を形成する点群の中から、外側参照点に近い複数の点を抽出する。図7において、外側参照点が符号32で示され、外側参照点に近い複数の点がその他の黒い点で示されている。ただし図7において点の数や配置等は説明のため簡略化されて示されている。
【0095】
ここで、外側参照点に近い複数の点とは、外側参照点から所定範囲内にある複数の点のことである。外側参照点がトレッドの接地面にある場合の所定範囲は、例えばX座標で±10ピクセル以内である。また、外側参照点がサイドウォール面にある場合の所定範囲は、例えばY座標で±10ピクセル以内である。また、外側参照点がトレッドの接地端又はその近傍にある場合の所定範囲は、例えばX座標でタイヤ軸方向中心線方向へ30~50ピクセルである(つまり、この場合の「外側参照点に近い複数の点」は、全て、外側参照点よりもタイヤ軸方向中心線方向の場所にある)。
【0096】
次に、参照点決定部19aが、内側輪郭線31を形成する点群の中から抽出された外側参照点に近い複数の点を、直線(「近似直線」とする)で近似する。図7において、近似直線はL1と示された一点鎖線である。次に、参照点決定部19aが、外側参照点を通り近似直線と垂直に交わる直線を求める。この直線は内側輪郭線31に対する垂線であるとみなせる。図7において、この垂線はL2と示された一点鎖線である。次に、参照点決定部19aが、内側輪郭線31に対する前記垂線と内側輪郭線31を形成する各点との距離をそれぞれ計算し、その距離が最短となる点を内側参照点とする。図7において、そのようにして特定される内側参照点が符号33で示されている。
【0097】
第3の方法は、タイヤのバットレスの存在する部分や、リムストリップの存在する部分の厚みを算出するときの方法として適したものである。第3の方法では、外側輪郭線30を形成する点群の中から、タイヤ断面画像上で指定された位置から最も近い点が外側参照点として特定される。
【0098】
具体的には、まず、利用者が、タイヤ断面画像上で外側参照点として選択したい点の付近の座標を特定する。具体例としては、外側輪郭線30のあるタイヤ断面画像上で、利用者がマウスを使用して外側参照点として選択したい点の付近をクリックする。すると、クリックされた位置の座標が特定される。次に、参照点決定部19aが、特定された座標と外側輪郭線30上の各点との距離を計算する。そして、参照点決定部19aが、その距離が最も短い外側輪郭線30上の点を外側参照点として特定する。
【0099】
第3の方法における内側参照点の特定方法は第2の方法と基本的には同じである。詳細には、まず参照点決定部19aが、内側輪郭線31を形成する点群の中から、外側参照点に近い複数の点を抽出する。外側参照点に近い複数の点とは、外側参照点を基準とする所定範囲内にある複数の点のことである。外側参照点がバットレスにある場合の所定範囲は、例えばX座標で外側参照点からタイヤ軸方向中心の方向へ20~60ピクセル離れた領域である。また、外側参照点がリムストリップにある場合の所定範囲は、例えばY座標で外側参照点からタイヤ回転軸のある方向(Y座標値が0の方向)へ20~50ピクセル離れた領域である。
【0100】
次に、参照点決定部19aが、内側輪郭線31を形成する点群の中から抽出された外側参照点に近い複数の点を、直線(近似直線)で近似する。次に、参照点決定部19aが、外側参照点を通り近似直線と垂直に交わる直線(垂線)を求める。次に、参照点決定部19aが、内側輪郭線31に対する前記垂線と内側輪郭線31を形成する各点との距離をそれぞれ計算し、その距離が最短となる点を内側参照点とする。
【0101】
以上のいずれかの方法で外側参照点及び内側参照点が決定された後、タイヤ厚み算出部19bが、外側参照点から内側参照点までの距離(この距離を「参照点間距離」とする)を計算する。この計算で求まる参照点間距離の単位はピクセルである。
【0102】
次に、タイヤ厚み算出部19bが、参照点間距離を実際のタイヤにおける厚みに換算する。換算には、全体画像におけるピクセル数と実際のタイヤにおける長さとの関係を示す係数が使用される。そのような係数は、基準となる物体の所定部分の長さと、その物体を撮影し画像処理装置10に取り込んだ画像における前記所定部分のピクセル数との関係から決定する等、公知の方法で予め決定されている。
【0103】
以上の画像処理装置10により、図8図14のフローチャートに基づきタイヤの厚みが算出される。
【0104】
まず、CT装置で撮影されたリム付きタイヤ断面画像が、画像処理装置10に取り込まれ、グレースケール変換部11によって256階調のグレースケールの画像に変換される(図8のS1)。なお、リム付きタイヤ断面画像が全体画像の中で占める割合は、上記のように5%以上15%以下が好ましい。
【0105】
次に、輝度調整部12により、全体画像に対する輝度調整が行われる(図8のS2)。詳細には、まず、タイヤ画像抽出ステップとして、全体画像の中からタイヤ断面画像のゴム製部分が抽出される(図9のS2-1)。ゴム製部分の抽出は、全体画像の中から輝度が所定範囲(例えば30以上150以下)の部分を抽出することにより行われる。次に、平均輝度算出ステップとして、ゴム製部分の平均輝度が算出される(図9のS2-2)。
【0106】
次に、輝度調整ステップとして、タイヤ断面画像のゴム製部分の平均輝度を使用して、タイヤ断面画像の輝度を、基準輝度に近づける処理が行われる。そのために、まず、基準輝度をゴム製部分の平均輝度で割ったスケーリング係数が算出される(図9のS2-3)。次に、タイヤ断面画像のゴム製部分の全ピクセルのそれぞれについて、ピクセルの輝度にスケーリング係数を掛けるスケーリング計算が行われる(図9のS2-4)。スケーリング計算により、タイヤ断面画像のゴム製部分の輝度が基準輝度に近づく。そのため、どのタイヤ断面画像も同程度の明るさになる。
【0107】
次に、画像回転部13により、タイヤ断面画像の軸方向がX座標軸に対して平行になるように、全体画像を回転させる処理が自動的に行われる(図8のS3)。詳細には、まず、全体画像の中から、輝度が所定の閾値以上の部分がタイヤ断面画像のビードコアとして検出される(図10のS3-1)。ビードコアは2つ検出される。次に、2つのビードコアのそれぞれの重心座標が計算され特定される(図10のS3-2)。次に、2つのビードコアの重心同士を結ぶ直線が特定され(図10のS3-3)、その直線の傾きが求められる(図10のS3-4)。
【0108】
次に、求まった傾きに基づき、ビードコアの重心同士を結ぶ直線とX座標軸とのなす角の角度が求められ、その角度に基づき回転角度θ’が決定される(図10のS3-5)。次に、決定した回転角度θ’だけ全体画像の回転が行われる(図10のS3-6)。この回転により、タイヤ断面画像のタイヤ軸方向がX座標方向となり、タイヤ断面画像のタイヤ径方向がY座標方向となる。また、タイヤ断面画像が上でリム断面画像が下となる。
【0109】
次に、二値化処理部14により、輝度調整及び回転後の全体画像に対して、二値化処理が行われる(図8のS4)。二値化処理により、タイヤ断面画像及びリム断面画像のピクセルが信号値1の白のピクセルとなり、背景のピクセルが信号値0の黒のピクセルとなる。
【0110】
次に、ノイズ処理部15により、二値化処理後のリム付きタイヤ断面画像からノイズが除去される(図8のS5)。詳細には、利用者が、二値化処理後の全体画像の中の、フランジとタイヤとの隙間を含む範囲を保存範囲として選択する(図11のS5-1)。そして、選択された保存範囲の各ピクセルの座標及び信号値が、膨張収縮処理前の画像データとして保存される(図11のS5-2)。
【0111】
次に、二値化処理後の全体画像に対して膨張収縮処理が行われる(図11のS5-3)。膨張収縮処理により、全体画像に存在したノイズが除去される。ただし、膨張収縮処理により、上記保存範囲に相当する部分の輪郭が変形してしまう。
【0112】
そこで次に、膨張収縮処理後の全体画像における保存範囲に相当する部分の画像データが、膨張収縮処理前の保存範囲の画像データに置換される(図11のS5-4)。それにより、保存範囲の画像が膨張収縮処理前の画像となり、それ以外の場所の画像が膨張収縮処理後の画像となる。その結果、リム付きタイヤ断面画像の輪郭の全体が正しく現れる。また、保存範囲においては膨張収縮処理前からノイズが少なく、保存範囲以外の場所においては膨張収縮処理によりノイズが除去されているため、全体画像がノイズの少ないものとなる。
【0113】
次に、輪郭線検出部16により、二値化されノイズ処理された後の全体画像から、リム付きタイヤ断面画像の輪郭線が検出される(図8のS6)。検出される全体輪郭線は点群からなる。
【0114】
次に、輪郭線種別部17により、全体輪郭線が、リム付きタイヤの外面を表す環状の外側輪郭線30と、リム付きタイヤの内面を表す環状の内側輪郭線31とに分類される(図8のS7)。
【0115】
詳細には、まず、全体輪郭線を表す点群から外側輪郭線30が抽出される(図12のS7-1~S7-4)。外側輪郭線30の抽出においては、まず、全体輪郭線とタイヤ軸方向中心線との交点のうち、最もタイヤ径方向外側にある点(例えば、図5の場合は点A)が、外側輪郭線30上にある1番目の外側点として特定される(図12のS7-1)。
【0116】
次に、1番目の外側点の所定距離(2ピクセル)内に、他に外側点として特定されてない点がないか確認される(図12のS7-2)。そして、所定距離内に外側点として特定されてない点がある場合(図12のS7-2のNo)は、1番目の外側点に最も近い点(最近傍点)が2番目の外側点として特定される(図12のS7-3)。
【0117】
次に、2番目の外側点の所定距離内に、他に外側点として特定されてない点がないか確認される(図12のS7-2)。そして、所定距離内に外側点として特定されてない点がある場合(図12のS7-2のNo)は、2番目の外側点に最も近い点(最近傍点)が3番目の外側点として特定される(図12のS7-3)。
【0118】
このように、所定距離内に外側点として特定されてない点がある限り(図12のS7-2のNo)、先に特定された外側点に最も近い点(最近傍点)が次の外側点として特定される(図12のS7-3)ことが繰り返される。
【0119】
そして、所定距離内に外側点として特定されてない点がなくなると(図12のS7-2のYes)、外側点の探索が終了し、その時までに外側点として特定された点からなる線が外側輪郭線30として抽出される(図12のS7-4)。
【0120】
次に、全体輪郭線を表す点群から内側輪郭線31が抽出される(図12のS7-5~S7-8)。内側輪郭線31の抽出においては、まず、全体輪郭線とタイヤ軸方向中心線との交点のうち、タイヤ径方向外側から2番目となる点(例えば、図5の場合は点B)が、1番目の内側点として特定される(図12のS7-5)。
【0121】
次に、1番目の内側点の所定距離(2ピクセル)内に、他に内側点として特定されてない点がないか確認される(図12のS7-6)。そして、所定距離内に内側点として特定されてない点がある場合(図12のS7-6のNo)は、1番目の内側点に最も近い点(最近傍点)が2番目の内側点として特定される(図12のS7-7)。
【0122】
次に、2番目の内側点の所定距離内に、他に内側点として特定されてない点がないか確認される(図12のS7-6)。そして、所定距離内に内側点として特定されてない点がある場合(図12のS7-6のNo)は、2番目の内側点に最も近い点(最近傍点)が3番目の内側点として特定される(図12のS7-7)。
【0123】
このように、所定距離内に内側点として特定されてない点がある限り(図12のS7-6のNo)、先に特定された内側点に最も近い点(最近傍点)が次の内側点として特定される(図12のS7-7)ことが繰り返される。
【0124】
そして、所定距離内に内側点として特定されてない点がなくなると(図12のS7-6のYes)、内側点の探索が終了し、その時までに内側点として特定された点からなる線が内側輪郭線31として抽出される(図12のS7-8)。
【0125】
以上のようにして外側輪郭線30と内側輪郭線31とがそれぞれ抽出されることにより、全体輪郭線が外側輪郭線30と内側輪郭線31とに分類される。
【0126】
次に、長さ測定用モデル作成部18により、タイヤ断面画像におけるトレッドの主溝34が埋められて、外側輪郭線30が平滑線35となった長さ測定用モデルが作成される。そして、表1に示されるような、起点Aから平滑線35上の各点までの、平滑線35に沿ったそれぞれの距離が求められる(図8のS8)。
【0127】
詳細には、まず、全体画像の中から、平滑線35に沿った長さを測定しようとする部分を含む十分広い領域(例えばトレッド全体を含む領域)が選択され、選択された領域に対し膨張収縮処理が行われる(図13のS8-1)。膨張収縮処理により、トレッドの主溝34が埋まり、タイヤ断面画像における外側輪郭線30が平滑線35となる。なお、膨張収縮処理における膨張量及び収縮量は、タイヤのトレッドにおける外側輪郭線30から内側輪郭線31までの厚み以下とされる。
【0128】
次に、平滑線35とタイヤ軸方向中心線との交点が起点Aとして設定される(図13のS8-2)。次に、平滑線35を形成する点群から、起点Aの最近傍点が特定される(図13のS8-3)。次に、起点Aからその最近傍点までの距離が算出される(図13のS8-4)。
【0129】
次に、平滑線35を形成する点群から、先に特定された最近傍点に最も近い点が、次の最近傍点として特定される(図13のS8-5)。次に、先に特定された最近傍点から次に先に特定された最近傍点までの距離(2点間距離)が算出される(図13のS8-6)。なお、2点間距離は2ピクセル分以下である。次に、それまでに求まった2点間の距離が積算される(図13のS8-7)。この積算値は、起点Aから直近で特定された最近傍点までの平滑線35に沿った距離に相当する。
【0130】
予め定められた範囲の計算が終わるまで(図13のS8-8のNo)、次の最近傍点の特定、2点間距離の算出及び2点間距離の積算値の算出が繰り返される(図13のS8-5~S8-7)。そして、予め定められた範囲の計算が終わると(図13のS8-8のYes)、長さ測定用モデルの作成が終了する。これにより、表1に示されるような、起点Aから平滑線35を形成する各点までのそれぞれの距離が求まる。
【0131】
次に、長さ算出部19により、任意の位置でのタイヤの厚みが算出される(図8のS9)。詳細には、利用者が、厚みを求めたい場所を決め、その場所に適した外側参照点及び内側参照点の決定方法を、上記の第1~第3の方法の中から選択する。なお、利用者が厚みを求めたい場所を入力部から入力すると、自動的に第1~第3の方法のいずれかが選択されるように構成されていても良い。ここでは、長さ測定用モデルを利用する第2の方法が選択されたものとする。
【0132】
まず、利用者によって、起点Aから平滑線35に沿ってどれだけの距離離れた位置を外側参照点とするかが入力される(図14のS9-1)。ここで、S8のステップにおいて、起点Aから平滑線35を形成する各点までのそれぞれの距離が求まっている。そこで、平滑線35上において、起点Aからの距離が、ステップS9-1において入力された距離に最も近い点が、外側参照点に対応する点(対応点)として特定される(図14のS9-2)。このとき、対応点の座標も特定される。
【0133】
次に、外側輪郭線30を平滑線35とする前の画像において、上記の対応点と同じ座標の点が、外側参照点として特定される(図14のS9-3)。
【0134】
次に、外側参照点を通り内側輪郭線31に垂直な直線(垂線、例えば図7のL2)が特定される。そして、内側輪郭線31を形成する点群の中から、前記垂線に最も近い点(例えば図7の符号31の点)が、内側参照点として特定される(図14のS9-4)。
【0135】
なお、第1の方法が選択された場合は、全体画像の中に、タイヤ軸方向中心線等の直線が引かれる。そして、その直線と外側輪郭線30との交点が外側参照点として特定され、その直線と内側輪郭線31との交点が内側参照点として特定される。外側参照点と内側参照点の特定は同時に行われる。
【0136】
また、第3の方法が選択された場合は、利用者によって、タイヤ断面画像上で外側参照点として選択したい点の付近の座標が特定される。すると、特定された座標に最も近い外側輪郭線30上の点が、外側参照点として特定される。次に、内側輪郭線31を形成する点群の中から、外側参照点を通り内側輪郭線31に垂直な直線(垂線)に最も近い点が、内側参照点として特定される。
【0137】
外側参照点及び内側参照点が決定された後、外側参照点から内側参照点までの距離(参照点間距離)が算出される(図14のS9-5)。次に、参照点間距離が実際のタイヤにおける厚みに換算される(図14のS9-6)。以上の方法で算出されたタイヤの各部分の厚みに基づき、そのタイヤの評価が行われる。
【0138】
複数のタイヤについて評価が行われる場合、それら複数のタイヤのそれぞれに対して以上のステップ(図8のS1~S9)が実行される。
【0139】
以上の実施形態において多くの効果が生じる。まず、輝度調整ステップ(図8のS2)によりタイヤ断面画像の輝度が基準輝度に近付くので、その後の画像処理において不具合が生じにくくなる。そのため、輝度の異なる複数のタイヤ断面画像が取得された場合でも、それらのタイヤ断面画像の処理を同一の自動的な方法で不具合なく実行することが可能となる。
【0140】
また上記の通り、タイヤ断面画像の輝度を基準輝度に近付けるにあたり、タイヤによって輝度が特に変わりやすいゴム製部分の平均輝度を使用する(具体的には、基準輝度をゴム製部分の平均輝度で割った値をスケーリング係数とし、画像の各ピクセルの輝度にスケーリング係数を掛ける)。そのため、いずれのタイヤ断面画像についても、その輝度を基準輝度に近付けることができる。
【0141】
また、タイヤには様々なサイズのものがあるが、タイヤ断面画像及びリム断面画像の、全体画像の中で占める割合を5%以上15%以下とすることにより、いずれのタイヤ断面画像の画像処理も適切に行うことができる。
【0142】
また、輝度調整のためにタイヤ断面画像のゴム製部分を抽出するステップ(図9のS2-1)において、全体画像の中から輝度が所定範囲の部分を抽出することにより、自動的にゴム製部分を抽出することができる。また、このときの所定範囲を30以上150以下とすることにより、タイヤ断面画像の中からゴム製部分を的確に抽出することができる。
【0143】
このような輝度調整の後に全体画像の二値化処理が実行されることにより、リム付き断面画像と背景とを正確に分離することができる。
【0144】
以上の実施形態に対して様々な変更を行うことができる。以下で説明する変更例のいずれか1つを上記実施形態に適用しても良いし、いずれか2つ以上を選択して組み合わせて上記実施形態に適用しても良い。
【0145】
<変更例1>
タイヤ断面画像として、X線CT装置で撮影されたものだけでなく、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の様々な非破壊検査装置で撮影されたものが利用可能である。
【0146】
また、タイヤ断面画像として、タイヤを実際にカッターで切断してその断面をカメラで撮影することにより得られた画像も利用可能である。
【0147】
<変更例2>
輝度調整部12による輝度の調整において、上記実施形態のようなゴム製部分だけでなく、リム付きタイヤ断面画像全体(すなわち、タイヤ断面画像の全体及びリム断面画像の全体)の平均輝度に基づき輝度の調整が行われても良い。
【0148】
その場合、まず、全体画像の中から、リム付きタイヤ断面画像が抽出される。全体画像の中で、タイヤ断面画像の中のゴム製部分は輝度が大きく、タイヤ断面画像の中の金属部分(ビードコア等)及びリム断面画像は輝度がさらに大きい。そこで、全体画像の中から輝度が閾値以上の部分を抽出することにより、リム付きタイヤ断面画像の全体が抽出される。閾値として、例えば、全体画像が256階調で表されるときの階調の数値で30が採用される。
【0149】
次に、リム付きタイヤ断面画像全体の平均輝度が算出される。次に、基準輝度を平均輝度で割った値がスケーリング係数として設定される。次に、全体画像又はその一部(例えばリム付きタイヤ断面画像)の全ピクセルのそれぞれについて、ピクセルの輝度にスケーリング係数を掛ける計算が行われる。この計算により、リム付きタイヤ断面画像の輝度が基準輝度に近づく。
【0150】
<変更例3>
輝度調整部12による輝度の調整において、全体画像の全体の平均輝度が算出され、その平均輝度と基準輝度からスケーリング係数が決定されても良い。
【0151】
この場合、リム付きタイヤ断面画像の全体画像の中で占める割合(面積比)が平均輝度に影響する。そのため、前記面積比が所定範囲になるように撮影が行われる。前記所定範囲は、5%以上15%以下が好ましく、8%以上12%以下がさらに好ましい。
【0152】
また、この場合、全体画像の中で白くなっている部分(例えば階調が白と黒の中間階調以上の部分)のピクセル数が、全体画像の全ピクセル数の5%以上10%以上であることが好ましい。この条件を満たせば、平均輝度が適度になる。
【0153】
<変更例4>
リム付きタイヤ断面画像を回転させるためにビードコアを利用する場合において、ビードコアの選択方法及びビードコアの重心の特定方法は、上記実施形態の方法に限定されない。
【0154】
例えば、利用者が手作業でリム付きタイヤ断面画像の中からビードコアを選択しても良い。また、利用者が手作業でビードコアの重心を特定しても良い。
【0155】
<変更例5>
リム付きタイヤ断面画像を基準線(X座標軸)に対して平行になるように回転させる際、タイヤ軸方向両側のビードコアを結ぶ直線の代わりに、リムの傾きを示す直線が利用されても良い。
【0156】
具体的には、まず、リムのうちタイヤ軸方向両側のフランジが特定され、さらに、それぞれのフランジのタイヤ径方向外側の頂点が特定される。それら2つの頂点が特定された後、それらの頂点を結ぶ直線が求められる。ここで、2点から直線を求める方法は、上記実施形態において2つのビードコアのそれぞれの重心から直線を求めた方法と同じである。
【0157】
このようにして求まった直線が、リムの傾きを示す直線である。そして、リムの傾きを示す直線と基準線とのなす角度に基づき、タイヤ断面画像の回転角度が決定される。ここで、直線から回転角度を求める方法は、上記実施形態において行った方法と同じである。
【0158】
この変更例において、フランジ及びそのタイヤ径方向外側の頂点の特定方法は限定されない。例えば、利用者が手作業で、フランジ及びそのタイヤ径方向外側の頂点を特定しても良い。また、輝度に基づきリムを自動で検出したり、リム形状からフランジのタイヤ径方向外側の頂点を自動で特定したりしても良い。
【0159】
また、リム付きタイヤ断面画像においてリム断面画像の輝度が大きいことを利用して、輝度の大きい(例えば輝度が180以上250以下といった所定範囲に入る)ピクセルが多数並ぶ方向を特定し、その方向に延びる直線をリムの傾きを示す直線としても良い。
【0160】
タイヤが取り付けられるリムの基本的形状は、タイヤの種類によらず同じである。そのため、この変更例のようにリムの傾きを示す直線を利用してリム付きタイヤ断面画像を回転させることにより、どのタイヤも同じ向きにすることができる。
【0161】
<変更例6>
この変更例は、リム付きタイヤ断面画像を基準線(X座標軸)に対して平行になるように回転させる際の回転角度の決定方法の変更例である。
【0162】
この変更例では、リム断面画像(リム付きタイヤ断面画像でも良い)を任意の小さな角度だけ回転させる小回転が、複数回行われる。小回転の回転中心はリム断面画像のいずれかの点で、全体画像の面上で回転する。小回転の回転軸は、平面状の全体画像に直交する方向に延びる軸である。任意の角度とは、例えば1°である。
【0163】
前記の任意の角度だけ小回転する毎に、リムのタイヤ軸方向一方の部分と他方の部分のそれぞれの、基準線に直交する方向(Y座標方向)の最大座標が求められる。そのような最大座標は、多くの場合、タイヤ軸方向一方と他方のリムフランジ端の座標である。さらに、前記の任意の角度だけ小回転する毎に、タイヤ軸方向一方と他方の前記最大座標の差の絶対値が求められる。
【0164】
小回転を繰り返していると、タイヤ軸方向一方と他方の前記最大座標の差の絶対値が最小値となるときがある。前記絶対値が最小値となったときは、リム断面画像の軸方向(なお、リム断面画像の軸方向はタイヤ断面画像の軸方向と一致する)が基準線に対して平行になったとき、又は平行に最も近くなったときである。そのとき、前記絶対値が最小値となるまでの小回転の実施回数が明らかになる。また、小回転を開始したときから前記絶対値が最小値となるときまでの累積の回転角度(小回転の累積の角度)が明らかになる。
【0165】
このようにして明らかになった累積の回転角度が、リム付きタイヤ断面画像を回転させる回転角度として設定される。そして、その回転角度だけ、リム付きタイヤ断面画像を回転させる処理が行われる。
【0166】
この処理により、リム断面画像の軸方向が基準線に対して平行又は略平行になり、さらにタイヤ断面画像の軸方向が基準線に対して平行又は略平行になる。
【0167】
なお、以上の方法は、回転前のリム付きタイヤ断面画像において、タイヤ断面画像が上(すなわち、Y座標値が大きい方)でリム断面画像が下になっている場合に実施できる。回転前のリム付きタイヤ断面画像において、タイヤ断面画像が下でリム断面画像が上になっている場合は、以上の方法を実施する前に、リム付きタイヤ断面画像を180°回転させる処理が必要である。
【0168】
<変更例7>
この変更例は、リム付きタイヤ断面画像を基準線(X座標軸)に対して平行になるように回転させる方法の変更例である。
【0169】
この変更例では、リム断面画像(リム付きタイヤ断面画像でも良い)を任意の小さな角度だけ回転させる小回転が、複数回行われる。小回転の回転中心はリム付きタイヤ断面画像のいずれかの点で、全体画像の面上で回転する。小回転の回転軸は、平面状の全体画像に直交する方向に延びる軸である。任意の角度とは、例えば1°である。
【0170】
前記の任意の角度だけ小回転する毎に、リムの、タイヤ軸方向一方の部分と他方の部分のそれぞれの、基準線に直交する方向(Y座標方向)の最大座標が求められる。そのような最大座標は、多くの場合、タイヤ軸方向一方と他方のリムフランジ端の座標である。さらに、前記の任意の角度だけ小回転する毎に、タイヤ軸方向一方と他方の前記最大座標の差の絶対値が求められる。
【0171】
小回転を繰り返していると、タイヤ軸方向一方と他方の前記最大座標の差の絶対値が最小値となるときがある。前記絶対値が最小値となったときは、リム断面画像の軸方向が基準線に対して平行になったとき、又は平行に最も近くなったときである。またこのとき、タイヤ断面画像の軸方向も、基準線に対して平行になっているか、平行に最も近くなっている。そこで、前記絶対値が最小値となるときの状態で、小回転を終了する。
【0172】
この処理により、リム断面画像の軸方向が基準線に対して平行又は略平行になり、さらにタイヤ断面画像の軸方向が基準線に対して平行又は略平行になる。
【0173】
<変更例8>
図15に示されるように、画像処理装置10に取り込まれた時点での全体画像において、リム付きタイヤ断面画像が上下逆になっていない(すなわち、タイヤ断面画像が上、リム断面画像が下になっている)場合がある。このような場合は、画像を回転させるステップ(図8のS3)において、リム付きタイヤ断面画像の回転角度が、ビードコアの重心同士を結ぶ直線(又は上記変更例で説明されたリムの傾きを示す直線)と基準線とのなす角度θとされる。
【0174】
リム付きタイヤ断面画像が上下逆になっているか否かは次の方法で自動的に判断される。まず、全体画像が上下2つの領域に分割される。このとき、上下2つの領域の面積は等しい。次に、上下それぞれにおいて、領域内の平均輝度が算出される。次に、平均輝度が大きい方の領域にリム断面画像が存在すると判断される(リム及びその近くのビードコアは特に明るく映る部分だからである)。そして、リム断面画像が存在する領域が上の領域の場合は、リム付きタイヤ断面画像が上下逆になっていると判断される。
【0175】
<変更例9>
ノイズ処理のステップ(図8のS5)における、膨張収縮処理後に膨張収縮処理前の画像データに戻す保存範囲は、上記実施形態のようなフランジとタイヤとの隙間を含む範囲(図4(b)の枠内)に限定されない。
【0176】
保存範囲には、膨張収縮処理により元の輪郭線が崩れてしまいやすい場所、又は、元の画像において欠け等のノイズが少ない場所が含まれることが好ましい。そのような場所として、例えば、リムのいずれかの場所が挙げられる。
【0177】
<変更例10>
上記実施形態のノイズ処理のステップ(図8のS5)において、膨張処理、収縮処理、収縮処理、膨張処理の順に処理が行われたが、処理の順序はこれに限定されない。例えば、リム付きタイヤ断面画像に欠けが少なく、最初に収縮処理を行ってもリム付きタイヤ断面画像の細い部分が途切れてしまうおそれがない場合は、収縮処理、膨張処理、膨張処理、収縮処理の順に処理が行われても良い。
【0178】
<変更例11>
全体輪郭線を外側輪郭線30と内側輪郭線31とに分類する方法として、外側輪郭線30を抽出した後に残った点群からなる線が、内側輪郭線31として抽出されても良い。
【0179】
具体的方法としては、まず、上記実施形態の方法で外側輪郭線30が抽出される。そして、全体輪郭線を形成する点群のうち、外側輪郭線30を形成する点群に含まれないものが、内側輪郭線31を形成する点群として特定される。
【0180】
<変更例12>
全体輪郭線を外側輪郭線30と内側輪郭線31とに分類する方法において、上記実施形態ではタイヤ軸方向中心線と全体輪郭線との交点が1番目の外側点及び1番目の内側点と特定された。しかし前記交点を特定する際に使用される直線は、タイヤ軸方向中心線に限定されない。
【0181】
Y座標軸に平行な直線(すなわち、タイヤ径方向に延びる直線)であって、外側輪郭線30及び内側輪郭線31の両方と交わることが可能な直線であれば、その直線と全体輪郭線との交点を1番目の外側点及び1番目の内側点と特定することが可能である。Y座標軸に平行な直線であって、外側輪郭線30及び内側輪郭線31の両方と交わることが可能な直線は、タイヤ内部の空洞を通りY座標軸に平行な直線である。タイヤ軸方向中心線も、タイヤ内部の空洞を通りY座標軸に平行な直線である。
【0182】
<変更例13>
上記実施形態において、平滑線作成部18aにより作成された平滑線35とタイヤ軸方向中心線との交点を起点Aとして、その起点Aから各点までの長さを求めて表1が作成されたが、起点の位置は限定されない。平滑線35上の任意の点を起点として、その起点から各点までの長さを求めて表1と同様の表を作成することができる。
【0183】
また、上記実施形態では、外側参照点及び内側参照点を特定する第2の方法において、平滑線35とタイヤ軸方向中心線との交点を起点Aとし、その起点Aからの平滑線35に沿った距離に基づき外側参照点が特定された。しかし、外側参照点を特定するための起点となる点は平滑線35とタイヤ軸方向中心線との交点である起点Aに限定されない。起点は平滑線35上のいずれの点でも良い。
【0184】
<変更例14>
上記実施形態におけるタイヤの厚みは、内側輪郭線31に対する垂線の延長方向の長さであった。しかし、外側輪郭線30に対する垂線の延長方向の長さがタイヤの厚みとされても良い。
【0185】
<変更例15>
上記実施形態の工程順を変更することが可能である。例えば、全体画像に対する輝度調整の工程(図8のS2)と、リム付きタイヤ断面画像を回転させる工程(図8のS3)とは、順序を入れ替えることができる。また、全体輪郭線を外側輪郭線30と内側輪郭線31に分類する工程(図8のS7)と、主溝34を埋めてタイヤ外面を表す線を1本の平滑線35とし長さ測定用モデルを作成する工程(図8のS8)とは、順序を入れ替えることができる。
【0186】
また、全体輪郭線を外側輪郭線30と内側輪郭線31に分類する工程(図8のS7)において、内側輪郭線31が抽出された後に外側輪郭線30が抽出されても良い。また、外側輪郭線30の抽出と内側輪郭線31の抽出が同時に行われても良い。
【0187】
<変更例16>
スケーリング計算が、タイヤ断面画像全体のみ(つまり、ゴム製部分だけでなくビードコア等の金属部分等を含むが、リム断面画像及び背景を含まない部分)に対して行われても良い。また、スケーリング計算が、全体画像に対して行われても良い。
【符号の説明】
【0188】
10…画像処理装置、11…グレースケール変換部、12…輝度調整部、12a…タイヤ画像抽出部、12b…輝度変更部、13…画像回転部、13a…ビードコア検出部、13b…回転部、14…二値化処理部、15…ノイズ処理部、16…輪郭線検出部、17…輪郭線種別部、18…長さ測定用モデル作成部、18a…平滑線作成部、18b…長さ計算部、19…長さ算出部、19a…参照点決定部、19b…タイヤ厚み算出部、30…外側輪郭線、31…内側輪郭線、32…外側参照点、33…内側参照点、34…主溝、35…平滑線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15