(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180952
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】コンクリート製造方法及びコンクリート製造装置
(51)【国際特許分類】
C04B 40/02 20060101AFI20231214BHJP
B28B 11/24 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C04B40/02 ZAB
B28B11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094651
(22)【出願日】2022-06-10
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発 CO2有効利用拠点における技術開発 CO2有効利用コンクリートの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】河内 友一
(72)【発明者】
【氏名】井上 丈揮
(72)【発明者】
【氏名】関 健吾
(72)【発明者】
【氏名】取違 剛
(72)【発明者】
【氏名】向 俊成
(72)【発明者】
【氏名】田口 翔也
【テーマコード(参考)】
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G055AA01
4G055BA02
4G112RA02
4G112RC01
(57)【要約】
【課題】炭酸化養生されるコンクリートへの二酸化炭素の固定量をリアルタイムで把握可能なコンクリート製造方法及びコンクリート製造装置を提供すること。
【解決手段】コンクリート製造方法は、外部から密閉され炭酸化養生する養生コンクリートCが配置された密閉空間10aに対して二酸化炭素供給装置20が供給する二酸化炭素量を算出する供給二酸化炭素量算出ステップS11と、密閉空間10aから流出する二酸化炭素量を算出する流出二酸化炭素量算出ステップS12と、供給二酸化炭素量算出ステップS11で算出した二酸化炭素量と、流出二酸化炭素量算出ステップS12で算出した二酸化炭素量と、に基づいて養生コンクリートCへの二酸化炭素固定量を算出する二酸化炭素固定量算出ステップS13と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から密閉された密閉空間を有し、当該密閉空間内で炭酸化養生する養生コンクリートを配置可能な養生槽と、前記密閉空間内に二酸化炭素を供給可能な二酸化炭素供給手段と、を備えるコンクリート製造装置におけるコンクリート製造方法であって、
前記密閉空間に供給する二酸化炭素量を算出する供給二酸化炭素量算出ステップと、
前記密閉空間から流出する二酸化炭素量を算出する流出二酸化炭素量算出ステップと、
前記供給二酸化炭素量算出ステップで算出した二酸化炭素量と、前記流出二酸化炭素量算出ステップで算出した二酸化炭素量と、に基づいて前記養生コンクリートへの二酸化炭素固定量を算出する二酸化炭素固定量算出ステップと、を含む、コンクリート製造方法。
【請求項2】
前記二酸化炭素固定量算出ステップでは、前記供給二酸化炭素量算出ステップで算出した二酸化炭素量から前記流出二酸化炭素量算出ステップで算出した二酸化炭素量を減ずることで、前記養生コンクリートへの二酸化炭素固定量を算出する、請求項1に記載のコンクリート製造方法。
【請求項3】
前記二酸化炭素固定量算出ステップで算出された前記二酸化炭素固定量が所定の目標値に達したか否かを判定する二酸化炭素固定量判定ステップと、を含む、請求項1又は2に記載のコンクリート製造方法。
【請求項4】
前記二酸化炭素固定量判定ステップにおいて、前記二酸化炭素固定量算出ステップで算出された前記二酸化炭素固定量が所定の目標値に達したと判定された場合に、前記二酸化炭素供給手段による二酸化炭素の供給を停止させる炭酸化養生停止ステップを含む、請求項3に記載のコンクリート製造方法。
【請求項5】
前記二酸化炭素固定量算出ステップで算出された前記二酸化炭素固定量に基づいて養生される前記養生コンクリートの状態を判定する養生コンクリート状態判定ステップを含む、請求項1又は2に記載のコンクリート製造方法。
【請求項6】
前記密閉空間は、気体が流入する流入口と気体が流出する流出口とを有し、
前記供給二酸化炭素量算出ステップでは、前記流入口に流入する気体の二酸化炭素濃度及び流量に基づいて供給する二酸化炭素量を算出し、
前記流出二酸化炭素量算出ステップでは、前記流入口に流入する気体の流量及び前記密閉空間内の二酸化炭素濃度に基づいて前記流出口から流出する二酸化炭素量を算出する、請求項1又は2に記載のコンクリート製造方法。
【請求項7】
外部から密閉された密閉空間を有し、当該密閉空間内で炭酸化養生する養生コンクリートを配置可能な養生槽と、
前記密閉空間内に二酸化炭素を含む気体を供給可能な二酸化炭素供給手段と、
前記二酸化炭素供給手段により前記密閉空間に供給される気体の流量を調整する供給流量調整手段と、
前記密閉空間に供給する二酸化炭素量を算出する供給二酸化炭素量算出手段と、
前記密閉空間から流出する二酸化炭素量を算出する流出二酸化炭素量算出手段と、
前記供給二酸化炭素量算出手段により算出された二酸化炭素量と、前記流出二酸化炭素量算出手段により算出された二酸化炭素量と、に基づいて前記養生コンクリートへの二酸化炭素固定量を算出する二酸化炭素固定量算出手段と、を備える、コンクリート製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製造方法及びコンクリート製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート製造において炭酸化養生する技術が知られている。この種の技術を示すものとして例えば特許文献1が挙げられる。特許文献1では、セメント硬化体を収容して外部の大気環境から遮蔽する遮蔽空間を有し、その遮蔽空間には、ガス流量調整機構を介して炭酸ガス供給源につながるガス導入口と、ガス流入防止機構を介して外部につながるガス排出口があり、ガス流量調整機構とガス流入防止機構は、内部雰囲気の制御モードを少なくとも「ガス置換モード」と「定常モード」のいずれかに設定するように切り替え操作が可能である炭酸化養生設備が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、炭酸化養生されるコンクリートへの二酸化炭素の固定量は、示差熱重量分析や無機炭素分析といった測定方法により評価される。しかし、いずれの測定方法も破壊検査であり、炭酸化養生されるコンクリートへの二酸化炭素の固定量をリアルタイムで把握することが難しかった。
【0005】
本発明は、炭酸化養生されるコンクリートへの二酸化炭素の固定量をリアルタイムで把握可能なコンクリート製造方法及びコンクリート製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係るコンクリート製造方法は、外部から密閉された密閉空間を有し、当該密閉空間内で炭酸化養生する養生コンクリートを配置可能な養生槽と、前記密閉空間内に二酸化炭素を供給可能な二酸化炭素供給手段と、を備えるコンクリート製造装置におけるコンクリート製造方法であって、前記密閉空間に供給する二酸化炭素量を算出する供給二酸化炭素量算出ステップと、前記密閉空間から流出する二酸化炭素量を算出する流出二酸化炭素量算出ステップと、前記供給二酸化炭素量算出ステップで算出した二酸化炭素量と、前記流出二酸化炭素量算出ステップで算出した二酸化炭素量と、に基づいて前記養生コンクリートへの二酸化炭素固定量を算出する二酸化炭素固定量算出ステップと、を含む。
【0007】
(1)のコンクリート製造方法は、測定した二酸化炭素量から順次二酸化炭素固定量を算出でき、炭酸化養生されるコンクリートへの二酸化炭素の固定量をリアルタイムで把握できる。
【0008】
(2) 本発明に係るコンクリート製造方法は、前記二酸化炭素固定量算出ステップでは、前記供給二酸化炭素量算出ステップで算出した二酸化炭素量から前記流出二酸化炭素量算出ステップで算出した二酸化炭素量を減ずることで、前記養生コンクリートへの二酸化炭素固定量を算出することが好ましい。
【0009】
(2)のコンクリート製造方法は、養生コンクリートへの二酸化炭素固定量の算出方法がシンプルで算出に要する時間が少なく済むため、より炭酸化養生されるコンクリートへの二酸化炭素の固定量をリアルタイムで把握できる。
【0010】
(3) 本発明に係るコンクリート製造方法は、前記二酸化炭素固定量算出ステップで算出された前記二酸化炭素固定量が所定の目標値に達したか否かを判定する二酸化炭素固定量判定ステップと、を含むことが好ましい。
【0011】
(3)のコンクリート製造方法は、算出した二酸化炭素固定量が所定の目標値に達したか否かで判定するため、容易かつ短時間で判定でき、より効率的に炭酸化養生可能である。
【0012】
(4) 本発明に係るコンクリート製造方法は、前記二酸化炭素固定量判定ステップにおいて、前記二酸化炭素固定量算出ステップで算出された前記二酸化炭素固定量が所定の目標値に達したと判定された場合に、前記二酸化炭素供給手段による二酸化炭素の供給を停止させる炭酸化養生停止ステップを含むことが好ましい。
【0013】
(4)のコンクリート製造方法は、算出した二酸化炭素固定量が所定の目標値に達した場合に炭酸化養生を停止するという明確な基準により停止を判定するため、炭酸化養生の停止を容易かつ短時間で行うことができ、より効率的に炭酸化養生可能である。
【0014】
(5) 本発明に係るコンクリート製造方法は、前記二酸化炭素固定量算出ステップで算出された前記二酸化炭素固定量に基づいて養生される前記養生コンクリートの状態を判定する養生コンクリート状態判定ステップを含むことが好ましい。
【0015】
(5)のコンクリート製造方法は、予め二酸化炭素固定量とコンクリートの強度との関係を明らかにすることで、算出した二酸化炭素固定量からコンクリートの強度等の状態を判定する等のより詳細な状況把握もでき、製造における的確な判断につながることから、より効率的にコンクリートを炭酸化養生可能である。
【0016】
(6) 本発明に係るコンクリート製造方法は、前記密閉空間は、気体が流入する流入口と気体が流出する流出口とを有し、前記供給二酸化炭素量算出ステップでは、前記流入口に流入する気体の二酸化炭素濃度及び流量に基づいて供給する二酸化炭素量を算出し、前記流出二酸化炭素量算出ステップでは、前記流入口に流入する気体の流量及び前記密閉空間内の二酸化炭素濃度に基づいて前記流出口から流出する二酸化炭素量を算出することが好ましい。
【0017】
(6)のコンクリート製造方法は、二酸化炭素濃度と流量とを測定するだけで、容易に二酸化炭素量を測定できるため、より効率的に炭酸化養生可能である。
【0018】
(7) 本発明に係るコンクリート製造装置は、外部から密閉された密閉空間を有し、当該密閉空間内で炭酸化養生する養生コンクリートを配置可能な養生槽と、前記密閉空間内に二酸化炭素を含む気体を供給可能な二酸化炭素供給手段と、前記二酸化炭素供給手段により前記密閉空間に供給される気体の流量を調整する供給流量調整手段と、前記密閉空間に供給する二酸化炭素量を算出する供給二酸化炭素量算出手段と、前記密閉空間から流出する二酸化炭素量を算出する流出二酸化炭素量算出手段と、前記供給二酸化炭素量算出手段により算出された二酸化炭素量と、前記流出二酸化炭素量算出手段により算出された二酸化炭素量と、に基づいて前記養生コンクリートへの二酸化炭素固定量を算出する二酸化炭素固定量算出手段と、を備えることが好ましい。
【0019】
(7)のコンクリート製造装置は、測定した二酸化炭素量から順次二酸化炭素固定量を算出するため、二酸化炭素固定量の評価にコストや時間がかからず、より効率的に炭酸化養生可能できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、炭酸化養生されるコンクリートへの二酸化炭素の固定量をリアルタイムで把握可能なコンクリート製造方法及びコンクリート製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート製造装置の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコンクリート製造装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る炭酸化養生制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】変形例に係る炭酸化養生制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】その他の変形例に係るコンクリート製造装置の一例を示す模式図である。
【
図6】その他の変形例に係るコンクリート製造装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図7】実施例1~3に係る熱分析試験結果のDTG曲線を示す図である。
【
図8】実施例1~3に係る熱分析試験結果のTG曲線を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るコンクリート製造方法により算出した二酸化炭素固定量と熱分析試験により算出した二酸化炭素固定量とを比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<コンクリート製造装置>
以下、本発明の一実施形態に係るコンクリート製造装置1の一例について、
図1、2を用いて説明する。
【0023】
本実施形態に係るコンクリート製造装置1は、
図1に示すように、炭酸化養生する養生コンクリートCを炭酸化養生するための装置である。本実施形態に係る養生コンクリートCは、蒸気養生して脱型された後のコンクリートであり、炭酸化養生することで完成品のコンクリートとなる。コンクリート製造装置1は、養生槽10と、二酸化炭素供給手段としての二酸化炭素供給装置20と、測定部30と、流路F1と、流路F2と、制御装置40と、温湿度調整装置50と、を有する。
【0024】
養生槽10は、その内部に外部から密閉された密閉空間10aが形成される。当該密閉空間10aは、養生コンクリートCが配置可能である。また、養生槽10は、密閉空間10aに連通する流入口10a1と、流出口10a2と、が形成される。本実施形態に係る密閉空間10aは内圧上昇による破損を予防するために完全密閉構造としていない。流入口10a1は、密閉空間10aに二酸化炭素を供給するための開口である。流出口10a2は、密閉空間10aに二酸化炭素を供給した分の気体を排出させるための開口である。言い換えると、密閉空間10aは、気体が流入する流入口10a1と気体が流出する流出口10a2とを有する。
【0025】
二酸化炭素供給装置20は、後述する流路F1を介して、養生コンクリートCに固定化させるための二酸化炭素を密閉空間10a内に供給可能な装置である。二酸化炭素供給装置20は、供給流量調整部20aと、二酸化炭素ボンベ20bと、を有する。
【0026】
供給流量調整部20aは、内部に不図示のバルブを有し、バルブの開閉により後述する二酸化炭素ボンベ20bから密閉空間10aに供給する二酸化炭素の流量を調整可能な圧力調整器である。また、供給流量調整部20aは、
図2に示すように後述する制御部41と通信可能に接続されており、制御部41によりバルブの開閉動作が制御される。
【0027】
二酸化炭素ボンベ20bは、予め濃度が調整された二酸化炭素が貯蔵されたボンベである。このため、後述する制御装置40は、供給流量調整部20aで設定した供給流量と二酸化炭素ボンベ20bに貯蔵された二酸化炭素濃度とに基づいて供給する二酸化炭素量を算出している。なお、二酸化炭素供給装置20が供給する二酸化炭素は、予め濃度調整しておく必要はなく、例えば他の気体と混合して目的の濃度に調整してもよい。
【0028】
測定部30は、密閉空間10a内に設けられ、密閉空間10a内の二酸化炭素濃度や温度、湿度を測定するための構成である。測定部30は、二酸化炭素濃度センサ30aと、温度センサ30bと、湿度センサ30cと、を有する。
【0029】
二酸化炭素濃度センサ30aは、密閉空間10a内の二酸化炭素濃度を測定する。二酸化炭素濃度センサ30aは、例えばNDIR(Non-dispersive Infrared)式センサが用いられてもよい。本実施形態では、密閉空間10aに供給する気体の流量と、密閉空間10aから流出する気体の流量と、が等しいものと仮定し、後述する制御装置40は、供給する気体の流量と密閉空間10a内の気体の二酸化炭素濃度とに基づいて流出する二酸化炭素量を算出している。
【0030】
温度センサ30bは、密閉空間10a内の温度を測定する。湿度センサ30cは、密閉空間10a内の湿度を測定する。本実施形態では、後述する温湿度調整装置50は、温度センサ30bによる測定結果と、湿度センサ30cによる測定結果とに基づいて、密閉空間10a内の温度及び湿度の調整を行う。
【0031】
なお、本実施形態に係る測定部30は、流出する二酸化炭素量の測定と、密閉空間10a内の温湿度制御のために用いられ、供給する二酸化炭素量の測定を行う構成としていない。しかし、上述のように二酸化炭素供給装置20が供給する二酸化炭素濃度が変化する場合は、測定部30は、供給する二酸化炭素量を測定可能な構成とすることが好ましい。例えば、測定部30は、供給する二酸化炭素濃度を測定可能な二酸化炭素濃度センサを後述する二酸化炭素の流路F1の途中に設けることが好ましい。この場合、後述する制御装置40は、当該二酸化炭素濃度センサにより測定された流路F1の二酸化炭素濃度と、供給流量調整部20aにより調整される気体流量と、に基づいて供給される二酸化炭素量を測定できる。
【0032】
流路F1は、二酸化炭素供給装置20から密閉空間10aに二酸化炭素を供給するための流路である。流路F1は、上流側で二酸化炭素供給装置20が接続され、下流側で密閉空間10aの流入口10a1に連通している。流路F1は、例えばホース等により構成される。
【0033】
流路F2は、密閉空間10aに二酸化炭素を供給するために内部の気体を排出するための流路である。流路F2は、上流側で密閉空間10aの流出口10a2に連通し、下流側端部で外部に向けて気体を排出可能に開放されている。流路F2は、例えばホース等により構成される。
【0034】
制御装置40は、コンクリート製造装置1の動作を制御するための構成である。例えば、制御装置40は、二酸化炭素供給処理や、供給二酸化炭素量算出ステップとしての供給二酸化炭素量算出処理や、流出二酸化炭素量算出ステップとしての流出二酸化炭素量算出処理や、二酸化炭素固定量算出ステップとしての二酸化炭素固定量算出処理や、温湿度調整処理を実行する。
【0035】
二酸化炭素供給処理は、コンクリート製造装置1が有する二酸化炭素供給装置20の二酸化炭素の供給動作を制御する処理である。
【0036】
供給二酸化炭素量算出処理は、供給流量調整部20aにより調整された気体の流量と測定部30の二酸化炭素濃度センサ30aにより検出された二酸化炭素濃度とに基づいて供給二酸化炭素量を算出する処理である。当該処理を実行する制御装置40は、供給二酸化炭素量算出手段として機能する。
【0037】
流出二酸化炭素量算出処理は、供給流量調整部20aにより調整された気体の流量と測定部30の二酸化炭素濃度センサ30aにより検出された二酸化炭素濃度とに基づいて流出二酸化炭素量を算出する処理である。当該処理を実行する制御装置40は、流出二酸化炭素量算出手段として機能する。
【0038】
二酸化炭素固定量算出処理は、供給二酸化炭素量算出処理により算出された二酸化炭素量と、流出二酸化炭素量算出処理により算出された二酸化炭素量と、に基づいて養生コンクリートCへの二酸化炭素固定量を算出する処理である。具体的には、二酸化炭素固定量算出処理は、流出二酸化炭素量算出処理により算出された二酸化炭素量から供給二酸化炭素量算出処理により算出された二酸化炭素量を減ずることで養生コンクリートCへの二酸化炭素固定量を算出する。なお、二酸化炭素固定量算出処理では、特定の時点における供給二酸化炭素量及び流出二酸化炭素量が算出に用いられる。当該処理を実行する制御装置40は、二酸化炭素固定量算出手段として機能する。具体的な実施例については、後述する。
【0039】
温湿度調整処理は、測定部30の温度センサ30b及び湿度センサ30cの信号に基づいて、後述する温湿度調整装置50に密閉空間10a内の温度及び湿度を調整させる処理である。例えば、制御装置40は、温湿度調整処理実行時に、予め設定された温度及び湿度となるように測定部30の温度センサ30b及び湿度センサ30cの信号に基づいて温湿度調整装置50の動作を制御する。
【0040】
制御装置40は、
図2に示されるように、制御部41と、入力部42と、出力部43と、記憶部44と、電源部45と、を有する。
【0041】
制御部41は、プロセッサ等を有し、プロセッサが演算処理を実行することにより各種の動作の制御が実現される。なお、制御部41は、
図2の構成に限らない。
【0042】
入力部42及び出力部43は、有線又は無線により電気的に不図示の入出力インターフェースに接続されるユーザインタフェースである。入力部42は例えば制御装置40の操作ボタンやキーボード等によって構成され、出力部43は、制御装置40の操作のための画像を表示するモニタ43aや警告音等の音声を拡声するブザー43b等によって構成される。なお、入力部42及び出力部43は、タッチパネルのように表示機能と入力機能が一体的な構成であってもよい。
【0043】
記憶部44は、例えば、揮発性メモリであるROM(Read Only Memory)や、揮発性メモリであるRAM(Random Access Memory)等によって構成される主記憶装置と、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等で構成される補助記憶装置と、によって構成される。
【0044】
本実施形態に係る記憶部44には、例えば養生コンクリートCの二酸化炭素固定量の所定の目標値としての目標値や、二酸化炭素固定量とコンクリートの強度との間の関係情報等が記憶されている。
【0045】
目標値は、養生コンクリートCに固定させたい二酸化炭素量である。目標値は、1個当たりの二酸化炭素の重量で規定してもよいし、所定の体積当たりの二酸化炭素量の重量で規定してもよい。
【0046】
また、目標値は、品質管理上のばらつきを考慮して、必要な強度を満足する固定量よりも多くの二酸化炭素固定量で規定してもよい。このような目標値を用いることにより、製造上の不良率の低減を図る等ができる。また、コンクリート製造装置1において、複数の養生コンクリートCの養生を行う場合、養生コンクリートCの量を設定することで、制御部41は、記憶部44に記憶された目標値と設定された養生コンクリートCの量を乗じるだけで適切な目標値を設定することができる。
【0047】
また、上述の関係情報は、コンクリートの配合ごとに予め試験を行い、明らかにされた二酸化炭素固定量とコンクリートの強度との関係性の情報であり、養生コンクリートCの二酸化炭素固定量から養生コンクリートCの強度を算出するために用いられる。
【0048】
電源部45は、不図示の電源回路を介して、制御装置40に電力を供給可能である。
【0049】
温湿度調整装置50は、密閉空間10a内の温度や湿度を調整するための装置である。例えば、温湿度調整装置50は、温度センサ30bや湿度センサ30cの測定結果に基づいた制御部41の指令により密閉空間10a内を加熱若しくは冷却、又は加湿若しくは除湿可能に構成される。
【0050】
<コンクリート製造方法>
次に、本実施形態に係るコンクリート製造方法が適用されるコンクリート製造装置1における炭酸化養生制御について、
図3を用いて説明する。当該制御は、制御装置40の入力部42に炭酸化養生制御の開始操作が入力されたタイミングで制御部41により実行される。
【0051】
まずは、制御装置40の制御部41は、二酸化炭素供給装置20の供給流量調整部20aが有するバルブを開放し、密閉空間10a内に二酸化炭素を含む気体の供給を開始する(ステップS10)。
【0052】
次に、制御部41は、供給流量調整部20aから密閉空間10aに供給する気体の流量の情報を取得することで、取得した供給する気体の流量と、二酸化炭素ボンベ20bの供給する気体の二酸化炭素濃度とに基づいて、供給する二酸化炭素量を算出する(ステップS11)。即ち、制御部41は、ステップS11では、密閉空間10aに供給する二酸化炭素量を算出する。
【0053】
次に、制御部41は、測定部30の二酸化炭素濃度センサ30aから密閉空間10a内の気体の二酸化炭素濃度の情報を取得することで、供給された気体の流量と、取得した密閉空間10a内の気体の二酸化炭素濃度と、に基づいて、流出する二酸化炭素量を算出する(ステップS12)。即ち、制御部41は、ステップS12では、密閉空間10aから流出する二酸化炭素量を算出する。
【0054】
なお、上述のように供給二酸化炭素量と流出二酸化炭素量は特定の時点のものであるが、供給二酸化炭素量の算出のタイミングと流出二酸化炭素の算出のタイミングとが同じである必要はないため、ステップS11とステップS12とに分けて行われる。また、ステップS11の供給二酸化炭素量算出とステップS12の流出二酸化炭素算出との間で順序はなく、同時に行うこともできる。
【0055】
次に、制御部41は、ステップS11において算出された密閉空間10aに流入する二酸化炭素量と、ステップS12において算出された密閉空間10aから流出する二酸化炭素量と、に基づいて、養生コンクリートCに固定された二酸化炭素固定量を算出する(ステップS13)。
【0056】
次に、制御部41は、ステップS13において算出された二酸化炭素固定量と記憶部44に記憶された目標値とを比較する(ステップS14)。言い換えると、制御部41は、ステップS13で算出された二酸化炭素固定量が所定の目標値に達したか否かを判定する。ステップS13において算出された二酸化炭素固定量が目標値以上ではない場合(ステップS14:NO)、制御部41は、処理をステップS11に移行させ、二酸化炭素固定量が目標値以上になるまで測定と算出と比較を繰り返す。
【0057】
一方、ステップS13において算出された二酸化炭素固定量が目標値以上の場合(ステップS14:YES)、制御部41は、炭酸化養生が完了したことを示す完了情報を出力部43のモニタ43aに出力し、出力部43のブザー43bに通知音を発報させ作業者に知らせつつ、二酸化炭素供給装置20の供給流量調整部20aが有するバルブを閉じ二酸化炭素の供給を停止させ(ステップS15)、処理を終了させる。
【0058】
以上説明した本実施形態に係るコンクリート製造方法によれば、以下の効果が得られる。近年では、カーボンニュートラル目標達成に向けて、コンクリート中への二酸化炭素の固定という技術に注目が集まっている。このようなコンクリート内に固定された二酸化炭素固定量の測定方法として、示差熱重量分析において炭酸カルシウムを測定しモル比から二酸化炭素量に換算する方法やクーロメーター等による無機炭素分析により二酸化炭素量を測定する方法がある。
【0059】
示差熱重量分析や無機炭素分析による方法は、破壊試験であり時間と労力を要する専用の分析装置が必要である。このため、当該方法は、例えばプレキャストコンクリート製品や現場コンクリート打設時の日常的な品質管理としては、かかる労力及びコストが大きいため、活用が難しい。また、当該方法では、破壊試験用のコンクリートが必要となってしまう。
【0060】
また、いずれの測定方法も製造後のサンプル検査であり、製造中の製品についてリアルタイムの二酸化炭素固定量の把握ができない。また、コンクリート製造において仮に二酸化炭素固定量が十分であったとしても結果を見るまでは養生コンクリートの炭酸化養生をやめることができず、待ち時間が発生する。更に、サンプル検査であるため、製造時のコンクリート全体としての二酸化炭素固定量を把握できない。
【0061】
ここで、本発明の一実施形態に係るコンクリート製造方法は、外部から密閉された密閉空間10aを有し、密閉空間10a内で炭酸化養生する養生コンクリートCを配置可能な養生槽10と、密閉空間10a内に二酸化炭素を供給可能な二酸化炭素供給装置20と、を備えるコンクリート製造装置1におけるコンクリート製造方法であって、密閉空間10aに供給する二酸化炭素量を算出する供給二酸化炭素量算出ステップS11と、密閉空間10aから流出する二酸化炭素量を算出する流出二酸化炭素量算出ステップS12と、供給二酸化炭素量算出ステップで算出した二酸化炭素量と、流出二酸化炭素量算出ステップで算出した二酸化炭素量と、に基づいて養生コンクリートCへの二酸化炭素固定量を算出する二酸化炭素固定量算出ステップS13と、を含む。
【0062】
これにより、本発明の一実施形態に係るコンクリート製造方法では、製造中のコンクリート製品を破壊する必要がなく、また専用の分析器も不要である。また、本発明に係るコンクリート製造方法では、サンプル調査と異なり製造中のコンクリート全体の二酸化炭素固定量を算出することができ、製品や構造物全体の評価を行うことができる。また、測定した二酸化炭素量から順次二酸化炭素固定量を算出でき、炭酸化養生されるコンクリートへの二酸化炭素の固定量をリアルタイムで把握できる。
【0063】
[変形例]
なお、上述の実施形態に係るコンクリート製造方法では、算出された二酸化炭素固定量が所定の目標値に達したか否かを判定していたが、これに限らない。例えば二酸化炭素を固定させることによる養生コンクリートCの強度増進を目的とする場合等では、予め試験等を行い明らかにした二酸化炭素固定量とコンクリートの強度との関係と算出された二酸化炭素固定量に基づいて養生される養生コンクリートの状態としての炭酸化養生の進捗状況を判定してもよい。
【0064】
炭酸化養生の進捗状況は、目標値と現状の二酸化炭素固定量とに基づいて判定される。変形例に係るコンクリート製造装置1Bは、炭酸化養生途中に作業者より養生コンクリートの状態判定出力操作が行われると、現状の二酸化炭素固定量を算出し、目標値と現状の二酸化炭素固定量とに基づいて養生コンクリートの炭酸化養生の進捗状況を判定し出力できる。これにより、炭酸化養生の進行の遅れ等を早めに把握して計画を見直す等の柔軟な対応を行うことができる。詳細を以下に説明する。
【0065】
本変形例に係るコンクリート製造装置1Bの構成は、上述の実施形態と同様の構成の為、同じ名称をつけて詳細な説明を省略する。本変形例に係るコンクリート製造方法が適用されるコンクリート製造装置1Bにおけるコンクリート製造方法について、
図4を用いて説明する。当該制御は、制御装置40の入力部42に炭酸化養生制御の開始操作が入力されたタイミングで制御部41により実行される。
【0066】
まずは、制御装置40の制御部41は、二酸化炭素供給装置20の供給流量調整部20aが有するバルブを開放し、密閉空間10a内に二酸化炭素を含む気体の供給を開始する(ステップS20)。
【0067】
次に、制御部41は、供給流量調整部20aから密閉空間10aに供給する気体の流量の情報を取得することで、取得した供給する気体の流量と、二酸化炭素ボンベ20bの供給する気体の二酸化炭素濃度とに基づいて、供給する二酸化炭素量を算出する(ステップS21)。次に、制御部41は、測定部30の二酸化炭素濃度センサ30aから密閉空間10a内の二酸化炭素濃度の情報を取得することで、供給された気体の流量と、取得した密閉空間10a内の気体の二酸化炭素濃度と、に基づいて、流出する二酸化炭素量を算出する(ステップS22)。
【0068】
次に、制御部41は、ステップS21において算出された密閉空間10aに流入する二酸化炭素量と、ステップS22において算出された密閉空間10aから流出する二酸化炭素量と、に基づいて、養生コンクリートCに固定された二酸化炭素固定量を算出する(ステップS23)。
【0069】
次に、制御部41は、入力部42に炭酸化養生の進捗状況の確認の操作が入力されたか否かを確認する(ステップS24)。入力部42に炭酸化養生の進捗状況の確認の操作が入力されていない場合(ステップS24:NO)、制御部41は、処理をステップS27に移行させる。
【0070】
一方、入力部42に炭酸化養生の進捗状況の確認の操作が入力された場合(ステップS24:YES)、制御部41は、ステップS23で算出された二酸化炭素固定量と、記憶部44に記憶された関係情報とに基づいて炭酸化養生の進捗状況の情報を生成する(ステップS25)。炭酸化養生の進捗状況の情報は、例えば現状のコンクリートの強度情報や目標値に対する養生コンクリートCの炭酸化養生の進捗の割合の情報、炭酸化養生の完了までの残り時間等の情報を含んでもよい。
【0071】
次に、制御部41は、ステップS25で生成した炭酸化養生状況情報を出力部43のモニタ43aに出力しつつ、出力部43のブザー43bに通知音を発報させ作業者に知らせ(ステップS26)、処理をステップS27に移行させる。
【0072】
次に、制御部41は、ステップS23において算出された二酸化炭素固定量と記憶部44に記憶された目標値とを比較する(ステップS27)。言い換えると、制御部41は、ステップS23で算出された二酸化炭素固定量が所定の目標値に達したか否かを判定する。ステップS23において算出された二酸化炭素固定量が目標値以上ではない場合(ステップS27:NO)、制御部41は、処理をステップS21に移行させ、二酸化炭素固定量が目標値以上になるまで測定と算出と比較を繰り返す。
【0073】
一方、ステップS23において算出された二酸化炭素固定量が目標値以上の場合(ステップS27:YES)、制御部41は、炭酸化養生が完了したことを示す完了情報を出力部43のモニタ43aに出力し、出力部43のブザー43bに通知音を発報させ作業者に知らせつつ、二酸化炭素供給装置20の供給流量調整部20aが有するバルブを閉じ二酸化炭素の供給を停止させ(ステップS28)、処理を終了させる。
【0074】
以上により、変形例に係るコンクリート製造方法では、二酸化炭素固定量に基づく炭酸化養生の進捗状況の情報を得ることができ、炭酸化養生に予期せぬ遅れがある場合でも当該情報に基づいて生産計画を変更する等の柔軟な対応をとることができる。
【0075】
[その他の変形例]
なお、上述の実施形態では、密閉空間10a内に供給された気体は、流路F2から排出される構成となっていたが、これに限らない。例えば、密閉空間10aに対して気体が循環する流路を設け、密閉空間10aから出ていく気体を再度密閉空間10a内に入れて、気体に残存する二酸化炭素を再度炭酸化養生に利用できるようにしてもよい。本実施形態では、流出した二酸化炭素を回収していないが、流出した二酸化炭素を回収して再利用する、又は電磁弁を用いて密閉空間内の二酸化炭素濃度が低下してから再供給してもよい。この場合、二酸化炭素の大気放出を抑制することができる。
【0076】
また、上述の実施形態に係る二酸化炭素供給装置20は、供給する二酸化炭素の濃度を調整できなかったが、供給する二酸化炭素の濃度を調整できてもよい。
【0077】
また、上述の実施形態に係るコンクリート製造装置1では、密閉空間10aから外部に流出する気体の流量及び二酸化炭素濃度を測定していなかったが、これに限らず、例えば、
図5に示すように密閉空間10aの外部に流出する気体の量及び二酸化炭素濃度を測定可能な流出二酸化炭素量測定装置30Bが設けられてもよい。
【0078】
この場合、流出二酸化炭素量測定装置30Bは、
図5に示すように流路F2上に設けられる。具体的には、流出二酸化炭素量測定装置30Bは、流路F2のうち流出口10a2と下流側端部との間に設けられる。流出二酸化炭素量測定装置30Bは、
図6に示すように二酸化炭素濃度センサ30Baと、流量計30Bbと、を有してもよい。二酸化炭素濃度センサ30Baは、例えばNDIR式センサが用いられてもよい。流量計30Bbは、例えば羽根式流量計が用いられてもよい。なお、流出二酸化炭素量測定装置30Bは、常時計測を行ってもよい。
【0079】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0080】
以下、条件を変えて行った1~3の実施例に基づいて本発明の内容を更に詳細に説明する。本発明の内容は以下の実施例の記載に限定されない。
【0081】
リファレンス測定では、上述のコンクリート製造装置1の密閉空間10a内に供試体を入れていない状態での二酸化炭素濃度測定を行った。具体的には、50℃・40%R.H.で一定とした密閉空間10a内に、予め濃度調整した二酸化炭素ボンベ20bを用いて二酸化炭素を供給し、その際の密閉空間10aの二酸化炭素濃度を測定することで行った。
【0082】
次に、実施例1~3に係る炭酸化養生中の二酸化炭素量測定を行った。、具体的には、所定量の供試体を密閉空間10aに入れ、密閉空間10aに供給された二酸化炭素及び密閉空間10a内から流出した二酸化炭素量の測定を行った。
【0083】
実施例1~3に係る二酸化炭素量測定においては、供試体に固定されることによって生じる二酸化炭素流量の減少を無視し、密閉空間10a内に供給される気体の流量と密閉空間10a外に流出する流量が等しいものとした。また、密閉空間10aから流出する二酸化炭素濃度を測定する代わりに密閉空間10a内の二酸化炭素濃度を連続測定して代替した。そして、養生期間中に供給した二酸化炭素濃度及び流量から二酸化炭素供給総量を、密閉空間10a内の二酸化炭素濃度及び流量から二酸化炭素流量総量を算出し、両者の差分から供試体中に固定された二酸化炭素量の試算値を算出した。
【0084】
次に、供試体の分析では、供試体の炭酸化深さを測定するとともに、供試体の炭酸化した部分である炭酸化部から試料を採取して示差熱重量分析を行い、炭酸カルシウム量を定量した。これら炭酸化深さ及び炭酸カルシウムの定量結果を用いて供試体の炭酸化部に固定された二酸化炭素量を算出した。なお、炭酸化部に固定された二酸化炭素量を算出する際は、封緘養生を行って二酸化炭素と接触していない供試体における炭酸カルシウム量との差分を取得した。
【0085】
次に、二酸化炭素量測定結果に基づく二酸化炭素固定量試算値の妥当性評価では、実施例1~3により算出した二酸化炭素固定量の試算値と、示差熱重量分析により測定した二酸化炭素固定量を比較・評価し、実施例1~3に係る二酸化炭素量測定結果に基づく二酸化炭素の固定量の評価についての妥当性を検証した。
【0086】
実施例1~3では、密閉空間10a内の環境変化に伴って二酸化炭素の状態が変化しないよう、いずれの実施例も密閉空間10a内を50℃・40%R.H.一定とした。養生槽10は、温湿度が調整可能なエスペック社製SH-642に計測孔を増設し、炭酸ガスを供給可能な仕様とした。養生槽10の内寸は400mm×400mm×394mm(容量63.04L)であり、炭酸ガスの供給流量は、供給流量調整部20aを用いて測定した。
【0087】
各実施例における二酸化炭素濃度及び試験条件を表1に示す。
【0088】
【0089】
予め二酸化炭素濃度を10%、20%及び50%に調整した二酸化炭素及びN2の混合ガスを用い、表1に示す実施例1~3の条件とした。密閉空間10a内の二酸化炭素濃度は、二酸化炭素濃度センサ30aを用いて、30分に1回の頻度で測定した。二酸化炭素濃度センサ30aには、新コスモス電機社製二酸化炭素センサ(XP-3140)を用いた。
【0090】
モルタルの使用材料及び配合を表2及び表3にそれぞれ示す。
【0091】
【0092】
【0093】
表2、3により配合された供試体はΦ50mm×h100mmのブリキ製円柱型枠を用いて各実施例につき17本ずつ採取し、20℃で24時間封緘養生を行い脱型した。その後3時間20℃・60%R.H.で静置したのち、密閉空間10a内に移して二酸化炭素の供給と温湿度の調整を開始した。その後、材齢46時間(炭酸化時間19時間)の時点で供試体を取り出し、中性化深さ測定(JISA1152)及び示差熱重量分析を行った。分析用の資料は1%フェノールフタレイン溶液を噴霧し、呈色しなかった範囲から採取した。
【0094】
採取後は、アセトンを用いて水和停止したのちに乳鉢を用いて粉砕したものを測定試料とし、熱重量/示差熱同時分析装置(リガク製、ThermoplusEVO2)を用いて、N2ガスをフローした環境下で20℃/分にて1000℃まで昇温することでポルトランダイト及びカルサイトの定量を行った。
【0095】
本実施形態においては、405~515℃間の重量変化をポルトランダイト、600~800℃間の重量変化を炭酸カルシウムの熱分解によるものとして二酸化炭素量に換算した。なお、供試体中に固定された二酸化炭素量を算出するには、供試体の密度を把握する必要がある。そこで、供試体の密度は、別途実施した水銀圧入ポロシメータ(Micrometritics製、AutoPoreIV)にて測定した密度を採用した。
【0096】
次に、二酸化炭素濃度測定結果から供試体に固定されたと思われる二酸化炭素量を試算した結果を表4に示す。
【0097】
【0098】
試算にあたっては炭酸化0~19時間までの測定結果を用いた。実施例1~3における二酸化炭素固定量の試算値は、それぞれ271g、302g及び371gとなり、二酸化炭素濃度が高くなるにつれて、試算値は大きくなった。なお、表4より二酸化炭素供給総量に対して二酸化炭素固定量の試算値が小さく、その差は二酸化炭素濃度が高くなるほど大きくなった。
【0099】
次に、1%フェノールフタレイン溶液を噴霧した際に呈色しなかった範囲が炭酸化した箇所と判断して試料を採取し、示差熱重量分析を実施した。各二酸化炭素濃度における結果を
図7、8に示す。
図7、8に示すように、多少の差異は認められるものの、二酸化炭素濃度によらずDTG(熱重量微分)曲線は700℃程度までほぼ一致した。200℃程度までにみられるピークはモノカーボネートやヘミカーボネート又はエトリンガイト等の分解によるものと考えられる。また、500~600℃程度には僅かにピークらしきものがみられるが、これはバテライトやMgCO
3等を含む可能性がある。また、500~600℃程度のピークは、二酸化炭素濃度が低い方がごく僅かながら大きくなる傾向もみられる。
【0100】
一方で、カルサイトのピークの一部と思われる700~750℃程度においては、二酸化炭素濃度が高くなるにつれて、DTG曲線のピークが明確に大きくなる傾向であった。DTG曲線から明らかなように、二酸化炭素濃度が高くなるにつれて炭酸カルシウムが増加したことがわかる。また、ポルトランダイトのピークは400~500℃程度とされるが、明確なピークは確認されなかった。フェノールフタレイン溶液が呈色していない範囲から試料採取していることと併せて、いずれの炭酸化期間においてもポルトランダイトは二酸化炭素濃度によらず大部分が炭酸化し、炭酸カルシウムになったものと考えられる。
【0101】
示差熱重量分析によるCO
2固定量の算出では、炭酸カルシウムの熱分解範囲を600~800℃として、二酸化炭素固定量を算出した。
図7、8に示すように、カルサイトのピークの一部とみられる700~750℃程度においては、二酸化炭素濃度が高くなるにつれて、DTG曲線のピークが明確に大きくなる傾向であることから熱分解範囲の上限を800℃とした。また、500~600℃程度のピークは、バテライトやMgCO
3等を含む可能性があり、二酸化炭素濃度の低い方が僅かながら大きくなる傾向がみられることから熱分解範囲の下限を600℃とした。
【0102】
炭酸化1日における炭酸化深さと炭酸カルシウムの定量結果及び封緘養生した供試体における炭酸カルシウムの定量結果から、示差熱重量分析による、密閉空間10a内の供試体に固定化された二酸化炭素量(g)を算出した。供試体中に固定された二酸化炭素量は10%、20%及び50%のそれぞれで205g、298g及び532gとなり、前述した二酸化炭素濃度測定結果から試算した二酸化炭素固定量(表4)と同様に、二酸化炭素濃度が高くなるにつれて増加する傾向であった。
【0103】
次に、実施例1~3に係る二酸化炭素量測定結果から試算した二酸化炭素固定量と、示差熱重量分析試験結果から算出した二酸化炭素固定量の比較を
図9に示す。二酸化炭素濃度20%では試算値と示差熱重量分析試験結果から算出した二酸化炭素固定量はほぼ同等であったものの、二酸化炭素濃度10%では試算値が上回り、二酸化炭素濃度50%では示差熱重量分析結果から算出した二酸化炭素固定量が上回る結果であった。
【0104】
しかし、密閉空間10a内の二酸化炭素濃度が10%、20%及び50%と大きくなるにつれて、試算値及び示差熱重量分析試験結果の固定量はともに増加する傾向であり、本発明のコンクリート製造方法による試算値は、示差熱重量分析による結果と同等であるといえる。