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  • 特開-支援制御装置 図1
  • 特開-支援制御装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180955
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】支援制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094654
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 功一
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】方向指示器の構造を複雑化することなく、車両変更の危険度が高いことを、ユーザに容易に把握させることができるようにすること。
【解決手段】支援制御装置は、自車両において車線変更のために方向指示器が操作されたとき、変更先の車線に存在する他車両の検知結果に基づいて、車線変更の危険度を推定する危険度推定部と、危険度推定部によって危険度が高いと判定された場合、ユーザに報知するとともに、方向指示器の操作に応じた方向指示灯の点灯を抑制する支援制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両において車線変更のために方向指示器が操作されたとき、変更先の車線に存在する他車両の検知結果に基づいて、車線変更の危険度を推定する危険度推定部と、
前記危険度推定部によって前記危険度が高いと判定された場合、ユーザに報知するとともに、前記方向指示器の操作に応じた方向指示灯の点灯を抑制する支援制御部と
を備えることを特徴とする支援制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支援制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、自車両が車線を変更する動作を検出した後、自車両後側方に存在する後側方障害物を検出した場合に、該後側方障害物と自車両との間の距離および相対速度に応じて、方向指示器の操作レバーの動きを、該操作レバーの操作後直ちに中立位置に戻したり、操作レバーの操作力が重くなるように制御することにより運転者に報知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-132094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、方向指示器の操作レバーの構造が複雑化する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、一実施形態に係る支援制御装置は、自車両において車線変更のために方向指示器が操作されたとき、変更先の車線に存在する他車両の検知結果に基づいて、車線変更の危険度を推定する危険度推定部と、危険度推定部によって危険度が高いと判定された場合、ユーザに報知するとともに、方向指示器の操作に応じた方向指示灯の点灯を抑制する支援制御部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
一実施形態に係る支援制御装置によれば、方向指示器の構造を複雑化することなく、車両変更の危険度が高いことを、ユーザに容易に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る支援制御システムの構成を示す図
図2】一実施形態に係る支援制御装置による処理の手順の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0009】
(支援制御システム10の構成)
図1は、一実施形態に係る支援制御システム10の構成を示す図である。図1に示す支援制御システム10は、自動車等の自車両に搭載され、自車両の車線変更を支援するシステムである。
【0010】
図1に示すように、支援制御システム10は、方向指示器11、方向指示灯12、レーダ13、カメラ14、HUD(Head Up Display)15、スピーカ16、車車間通信装置17、および支援制御装置100を備える。
【0011】
方向指示器11は、車両の室内の運転席の近傍に設けられており、自車両の進路変更を行う際に、車両の運転者によって操作される。
【0012】
方向指示灯12は、自動車のボディの前部、後部、および側部に対し、左右一対に設けられており、方向指示器11の操作に応じて点滅することにより、自車両の進路変更方向を外部に指し示す。
【0013】
レーダ13は、自車両のボディ等において外部に向けて設けられており、レーダ波を用いて、自車両の周辺に存在する他車両等の物体を検知する。なお、支援制御システム10は、互いにレーダ波の照射方向が異なる、複数のレーダ13を備える。これにより、支援制御システム10は、複数のレーダ13によって、自車両の周囲の略全方向における物体を検知することができる。
【0014】
カメラ14は、自車両のボディ等において外部に向けて設けられており、自車両の周辺の画像を撮像する。なお、支援制御システム10は、互いに撮像方向が異なる、複数のカメラ14を備える。これにより、支援制御システム10は、複数のカメラ14によって、自車両の周囲の略全方向の画像を撮像することができる。
【0015】
HUD15は、「表示装置」の一例であり、自車両において運転者の前方に設けられた、フロントウィンドウ、投射板等に対し、各種情報を投影する装置である。なお、「表示装置」は、HUD15に限らず、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等を用いてもよい。
【0016】
スピーカ16は、自車両の車室内に向けて、各種音声を出力する装置である。
【0017】
車車間通信装置17は、自車両の周辺に存在する他車両との間で、無線通信を行うことにより、複数の車両の間で各種情報(例えば、位置情報、速度情報、車両制御情報等)を共有するための装置である。
【0018】
支援制御装置100は、支援制御システム10の制御を司る装置である。図1に示すように、支援制御装置100は、操作検知部101、渋滞検知部102、車両検知部103、危険度推定部104、および支援制御部105を備える。
【0019】
操作検知部101は、自車両において車線変更のために方向指示器11が操作されたことを検知する。例えば、操作検知部101は、方向指示器11の操作時に発生する操作信号を検知することによって、方向指示器11が操作されたことを検出する。この際、操作検知部101は、例えば、所定の判断方法により、車線変更のための方向指示器11の操作がなされたか否かを判断する。一例として、操作検知部101は、道路情報に基づいて、自車両が走行中の道路が複数車線を有すると判断した場合、車線変更のための方向指示器11の操作がなされたと判断する。また、他の一例として、操作検知部101は、カメラ14によって撮像された画像に基づいて、自車両が走行中の道路が複数車線を有すると判断した場合、車線変更のための方向指示器11の操作がなされたと判断してもよい。
【0020】
渋滞検知部102は、自車両が走行中の道路に発生した渋滞を検知する。一例として、渋滞検知部102は、自車両および他車両の車速が所定の閾値未満の低速である場合、自車両が走行中の道路に渋滞が発生したと検知する。また、他の一例として、渋滞検知部102は、外部との通信によって取得された渋滞情報(例えば、VICS(登録商標)情報)により、自車両が走行中の道路に発生した渋滞を検知してもい。また、他の一例として、渋滞検知部102は、カメラ14によって撮像された画像等に基づいて、自車両が走行中の道路に発生した渋滞を検知してもよい。
【0021】
車両検知部103は、自車両の周辺に存在する他車両を検知する。具体的には、車両検知部103は、操作検知部101によって車線変更のための方向指示器11の操作が検出されたとき、車線変更の変更先の車線において、自車両の側方に存在する他車両と、自車両の後方に存在する他車両とを検知する。
【0022】
例えば、車両検知部103は、レーダ13によって、自車両の周辺に存在する他車両を検知することができる。また、例えば、車両検知部103は、カメラ14によって撮像された画像に対する画像認識処理を行うことによって、自車両の周辺に存在する他車両を検知することができる。また、例えば、車両検知部103は、車車間通信装置17を用いて、自車両の周辺に存在する他車両との間で車車間通信を行うことによって、自車両の周辺に存在する他車両を検知することができる。
【0023】
危険度推定部104は、自車両において車線変更のために方向指示器11が操作されたとき、車両検知部103による、変更先の車線に存在する他車両の検知結果に基づいて、車線変更の危険度を推定する。
【0024】
例えば、危険度推定部104は、車両検知部103によって、自車両の側方に存在する他車両と、自車両の後方に存在する他車両との双方が検知された場合、危険度が高いと判定する。
【0025】
また、例えば、危険度推定部104は、車両検知部103によって、自車両の後方に存在する他車両が検知され、且つ、当該他車両の車速が所定の閾値以上である場合、危険度が高いと判定する。
【0026】
また、例えば、危険度推定部104は、車両検知部103によって、自車両の後方に存在する他車両が検知され、且つ、当該他車両の車速が所定の閾値未満である場合、危険度が中程度であると判定する。
【0027】
また、例えば、危険度推定部104は、車両検知部103によって、自車両の側方に存在する他車両と、自車両の後方に存在する他車両とのいずれも検知されなかった場合、危険度が低いと判定する。
【0028】
支援制御部105は、危険度推定部104によって車線変更の危険度が高いと判定された場合(すなわち、衝突の危険性がある場合)、ユーザに報知するとともに、方向指示器11の操作に応じた方向指示灯12の点灯を抑制する。なお、ユーザに報知する方法としては、HUD15によって危険度を表示する方法と、スピーカ16から音声案内を出力する方法とを含む。
【0029】
なお、支援制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成されている。上記した支援制御装置100の各機能は、例えば、支援制御装置100において、ROMに記憶されているプログラムを、CPUが実行することによって実現される。
【0030】
(支援制御装置100による処理の手順の一例)
図2は、一実施形態に係る支援制御装置100による処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0031】
まず、操作検知部101が、自車両において車線変更のために方向指示器11が操作されたか否かを判断する(ステップS201)。
【0032】
ステップS201において、車線変更のために方向指示器11が操作されていないと判断された場合(ステップS201:NO)、操作検知部101が、ステップS201を再度実行する。
【0033】
一方、ステップS201において、車線変更のために方向指示器11が操作されたと判断された場合(ステップS201:YES)、渋滞検知部102が、自車両が走行中の道路に渋滞が発生しているか否かを判断する(ステップS202)。
【0034】
ステップS202において、渋滞が発生していると判断された場合(ステップS202:YES)、支援制御装置100は、図2に示す一連の処理を終了する。
【0035】
一方、ステップS202において、渋滞が発生していないと判断された場合(ステップS202:NO)、車両検知部103が、変更先の車線における他車両を検知したか否かを判断する(ステップS203)。
【0036】
ステップS203において、変更先の車線における他車両を検知していないと判断された場合(ステップS203:NO)、危険度推定部104は、車線変更の危険度が低いと推定する(ステップS204)。
【0037】
そして、支援制御部105が、方向指示器11の操作通りに、方向指示灯12を点灯させる(ステップS205)。また、支援制御部105が、HUD15に危険度が低いことを示す青色を表示させ、スピーカ16から車線変更の危険度が低い旨の音声案内を出力させる(ステップS206)。その後、支援制御装置100は、図2に示す一連の処理を終了する。
【0038】
一方、ステップS203において、変更先の車線における他車両を検知したと判断された場合(ステップS203:YES)、車両検知部103が、自車両の側方に存在する他車両と、自車両の後方に存在する他車両との双方を検知したか否かを判断する(ステップS207)。
【0039】
ステップS207において、自車両の側方に存在する他車両と、自車両の後方に存在する他車両との双方を検知したと判断された場合(ステップS207:YES)、危険度推定部104は、車線変更の危険度が高いと推定する(ステップS210)。
【0040】
そして、支援制御部105が、方向指示器11の操作を無効とし、方向指示灯12を点灯させない(ステップS211)。また、支援制御部105が、HUD15に危険度が高いことを示す赤色を表示させ、スピーカ16から車線変更の危険度が高い旨の音声案内を出力させる(ステップS212)。
【0041】
その後、支援制御装置100は、危険度が高い状態が解消したか否かを判断する(ステップS213)。例えば、支援制御装置100は、変更先の車線における自車両の側方および後方に他車両が存在しなくなった場合、危険度が高い状態が解消したと判断する。
【0042】
ステップS213において、危険度が高い状態が解消していないと判断された場合(ステップS213:NO)、支援制御装置100は、ステップS213を再度実行する。
【0043】
一方、ステップS213において、危険度が高い状態が解消したと判断された場合(ステップS213:YES)、支援制御装置100は、ステップS205へ処理を進める。そして、支援制御部105が、方向指示器11の操作通りに、方向指示灯12を点灯させる(ステップS205)。また、支援制御部105が、HUD15に危険度が低いことを示す青色を表示させ、スピーカ16から車線変更の危険度が低い旨の音声案内を出力させる(ステップS206)。その後、支援制御装置100は、図2に示す一連の処理を終了する。
【0044】
ステップS207において、自車両の側方に存在する他車両と、自車両の後方に存在する他車両との双方を検知していないと判断された場合(ステップS207:NO)、車両検知部103が、自車両の後方に存在する他車両を検知したか否かを判断する(ステップS208)。
【0045】
ステップS208において、自車両の後方に存在する他車両を検知していないと判断された場合(ステップS208:NO)、支援制御装置100は、図2に示す一連の処理を終了する。
【0046】
一方、ステップS208において、自車両の後方に存在する他車両を検知したと判断された場合(ステップS208:YES)、検知された他車両の車速が所定の閾値以上であるか否かを判断する(ステップS209)。例えば、車両検知部103は、レーダ13、カメラ14、車車間通信装置17等を用いることによって、他車両の車速を検知することができる。
【0047】
ステップS209において、検知された他車両の車速が所定の閾値以上であると判断された場合(ステップS209:YES)、支援制御装置100は、ステップS210へ処理を進め、上記したステップS210以降の処理(すなわち、車線変更の危険度が高い場合の処理)を実行する。
【0048】
一方、ステップS209において、検知された他車両の車速が所定の閾値以上ではないと判断された場合(ステップS209:NO)、危険度推定部104は、車線変更の危険度が中程度と推定する(ステップS214)。そして、支援制御部105が、方向指示器11の操作通りに、方向指示灯12を点灯させる(ステップS215)。また、支援制御部105が、HUD15に危険度が中程度であることを示す黄色を表示させ、スピーカ16から車線変更の危険度が中程度である旨の音声案内を出力させる(ステップS216)。その後、支援制御装置100は、図2に示す一連の処理を終了する。
【0049】
以上説明したように、一実施形態に係る支援制御装置100は、自車両において車線変更のために方向指示器11が操作されたとき、変更先の車線に存在する他車両の検知結果に基づいて、車線変更の危険度を推定する危険度推定部104と、危険度推定部104によって危険度が高いと判定された場合、ユーザに報知するとともに、方向指示器11の操作に応じた方向指示灯12の点灯を抑制する支援制御部105とを備える。
【0050】
これにより、一実施形態に係る支援制御装置100は、方向指示器11の操作力を変更することなく、ユーザへの報知と、方向指示灯12の点灯の抑制とによって、車線変更の危険度が高いことをユーザに把握させることができる。したがって、一実施形態に係る支援制御装置100によれば、方向指示器11の構造を複雑化することなく、車両変更の危険度が高いことを、ユーザに容易に把握させることができる。
【0051】
また、一実施形態に係る支援制御装置100は、自車両が走行中の道路に発生した渋滞を検知する渋滞検知部102を備え、支援制御部105は、渋滞検知部102によって自車両が走行中の道路に発生した渋滞が検知された場合、方向指示器11の操作に応じた方向指示灯12の点灯を抑制しない(すなわち、通常通りに方向指示灯12を点灯させる)。
【0052】
これにより、一実施形態に係る支援制御装置100は、自車両が渋滞中に車線変更を行おうとした場合(すなわち、変更先の車線に他車両が存在するが、それでも車線変更しなければならない場合)に、危険度推定部104によって誤って危険度が高いと判定されてしまい、方向指示灯12の点灯が抑制されてしまうことを防止することができる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0054】
例えば、支援制御装置100は、危険度推定部104によって車線変更の危険度が高いと推定され、方向指示灯12の点灯が抑制された場合であっても、方向指示器11の再操作がなされた場合、方向指示灯12を点灯させるようにしてもよい。これにより、自車両は、緊急的な割り込みを行うことが可能となる。この場合、支援制御装置100は、車車間通信装置17を用いた車車間通信により、自車両の後方に存在する他車両に対して、緊急的な割り込みを行う旨を通知してもよい。
【0055】
また、例えば、支援制御装置100は、自車両が車線変更を行った際に、車車間通信装置17を用いた車車間通信により、後方の他車両がブレーキを掛けたことを検知した場合、自車両の運転者に対し、HUD15およびスピーカ16を用いて、注意喚起および安全運転指示を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 支援制御システム
11 方向指示器
12 方向指示灯
13 レーダ
14 カメラ
15 HUD
16 スピーカ
17 車車間通信装置
100 支援制御装置
101 操作検知部
102 渋滞検知部
103 車両検知部
104 危険度推定部
105 支援制御部
図1
図2