(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180961
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】回転式のコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 35/04 20060101AFI20231214BHJP
H01R 13/504 20060101ALI20231214BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01R35/04 C
H01R13/504
H01R13/52 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094661
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 章一
(72)【発明者】
【氏名】久保 考広
(72)【発明者】
【氏名】数馬 圭一
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE07
5E087FF07
5E087FF12
5E087LL04
5E087LL13
5E087LL26
5E087LL33
5E087MM05
5E087RR07
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】パッキンによる防水性能を保ちながら、アッシー同士の相対回転が可能な回転式のコネクタを提供すること。
【解決手段】回転式のコネクタ1は、第1端子10と第1ハウジング20とを有する第1アッシー2と、第2端子30と第2ハウジング40と電線50とを有する第2アッシー3と、第1,第2ハウジング20,40に挟まれるパッキン60と、を備える。第1ハウジング20は仮係止溝21と本係止溝22とを有し、第2ハウジング40は係止爪42aを有し、仮係止溝21への係止爪42aの係止時、パッキン60が第1ハウジング20及び第2ハウジング40の少なくとも一方に接触せず且つ第1,第2アッシー2,3の相対回転が可能であり、本係止溝22への係止爪42aの係止時、パッキン60が第1ハウジング20及び第2ハウジング40の双方に接触し且つ上記相対回転が不能である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側端子と接続可能な第1端子と、前記第1端子を収容する筒状の第1ハウジングと、を有する第1アッシーと、
前記第1端子に電気的に接続される第2端子と、前記第2端子を収容する第2ハウジングと、前記第2端子に電気的に接続される電線と、を有する第2アッシーと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとに挟まれるパッキンと、を備え、
前記第1端子と前記第2端子とが電気的に接続された状態で、前記第1ハウジングの筒軸周りに前記第1アッシーと前記第2アッシーとの相対回転が可能な、回転式のコネクタであって、
前記第1ハウジングは、仮係止溝と、本係止溝と、を有し、
前記第2ハウジングは、係止爪を有し、
前記仮係止溝に前記係止爪が係止されているとき、
前記パッキンが前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングの少なくとも一方に接触せず、且つ、前記相対回転が可能であり、
前記本係止溝に前記係止爪が係止されているとき、
前記パッキンが前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングの双方に接触し、且つ、前記相対回転が不能である、
回転式のコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転式のコネクタにおいて、
前記仮係止溝は、
前記第1ハウジングの外周壁に設けられて周方向に延びる凹状溝であり、
前記本係止溝は、
前記第1ハウジングの外周壁に設けられて周方向に所定間隔をあけて並ぶように配置される複数の窪みである、
回転式のコネクタ。
【請求項3】
請求項1に記載の回転式のコネクタにおいて、
前記第1ハウジングは、
当該第1ハウジングの外周壁から突出する第1突起を有し、
前記第2ハウジングは、
前記第1ハウジングに向けて延びる第2突起を有し、
前記仮係止溝に前記係止爪が係止されているとき、
前記第1突起と前記第2突起とが、前記相対回転の回転方向において干渉せず、
前記本係止溝に前記係止爪が係止されているとき、
前記第1突起と前記第2突起とが、前記相対回転の回転方向において干渉する、
回転式のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手側端子に接続可能な第1端子を内蔵する第1アッシーと、第1端子に接続される第2端子を内蔵して電線が延びる第2アッシーと、を備え、第1アッシーと第2アッシーとが相対回転可能に構成される回転式のコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フロントアッシーとリアアッシーとが相対回転可能に組み付けられ、フロントアッシー内の端子を相手側端子に電気的に接続した状態を維持しながら、リアアッシーから延びる電線の延出向きを回転方向において調整可能に構成されるコネクタ(いわゆる、回転コネクタ)が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した種類の回転コネクタでは、フロントアッシーとリアアッシーとの間の隙間を塞ぐように、防水用のパッキンが設けられる場合がある。ところが、フロントアッシーとリアアッシーとに挟まれてパッキンが押し潰された状態で、フロントアッシーとリアアッシーとが相対回転すると、それらアッシーとパッキンとの間の摺動に起因して、パッキンに摩耗等の変形が生じる可能性がある。パッキンの摩耗等の変形は、パッキンによる防水性能を損なう原因となり得るため、出来る限り避けることが望ましい。
【0005】
本発明の目的の一つは、パッキンによる防水性能を保ちながら、アッシー同士の相対回転が可能な回転式のコネクタの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明に係る回転式のコネクタは、下記を特徴としている。
【0007】
相手側端子と接続可能な第1端子と、前記第1端子を収容する筒状の第1ハウジングと、を有する第1アッシーと、
前記第1端子に電気的に接続される第2端子と、前記第2端子を収容する第2ハウジングと、前記第2端子に電気的に接続される電線と、を有する第2アッシーと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとに挟まれるパッキンと、を備え、
前記第1端子と前記第2端子とが電気的に接続された状態で、前記第1ハウジングの筒軸周りに前記第1アッシーと前記第2アッシーとの相対回転が可能な、回転式のコネクタであって、
前記第1ハウジングは、仮係止溝と、本係止溝と、を有し、
前記第2ハウジングは、係止爪を有し、
前記仮係止溝に前記係止爪が係止されているとき、
前記パッキンが前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングの少なくとも一方に接触せず、且つ、前記相対回転が可能であり、
前記本係止溝に前記係止爪が係止されているとき、
前記パッキンが前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングの双方に接触し、且つ、前記相対回転が不能である、
回転式のコネクタであること。
【発明の効果】
【0008】
本発明の回転式のコネクタによれば、第1アッシーの第1ハウジングが仮係止溝と本係止溝とを有し、第2アッシーの第2ハウジングが係止爪を有する。仮係止溝に係止爪が係止されている(即ち、仮係止状態である)とき、パッキンが少なくとも一方のアッシーに接触しない(即ち、押し潰されない)状態で、第1アッシーと第2アッシーとの相対回転が可能である。一方、本係止溝に係止爪が係止されている(即ち、本係止状態である)とき、パッキンが双方のアッシーに接触する(即ち、押し潰された)状態で、第1アッシーと第2アッシーとの相対回転が不能である。これにより、係止爪が仮係止溝に係止された状態と、係止爪が本係止溝に係止された状態と、を必要に応じて切り替えることで、パッキンの摩耗等の変形を抑制しながら、第1アッシーと第2アッシーとの相対回転を行うことができる。したがって、本構成の回転式のコネクタは、パッキンによる防水性能を保ちながら、アッシー同士の相対回転が可能である。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る回転式のコネクタの斜視図である。
【
図3】
図3は、仮係止状態において、フロントアッシーとリアアッシーとが相対回転する際の様子を示す正面図である。
【
図4】
図4は、仮係止状態における、フロントハウジングが有する仮係止溝、本係止溝及びフロント突起と、リアハウジングが有する係止片(係止爪)及びリア突起との位置関係を示す上面図である。
【
図5】
図5は、本係止状態における、フロントハウジングが有する仮係止溝、本係止溝及びフロント突起と、リアハウジングが有する係止片(係止爪)及びリア突起との位置関係を示す上面図である。
【
図6】
図6は、本係止状態における、
図3のA-A断面に相当する断面を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、仮係止状態における、
図6のB部の拡大図である。
【
図8】
図8は、本係止状態における、
図6のB部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタ1について説明する。
図1及び
図2に示すように、コネクタ1は、相手側端子(図示省略)に接続可能なフロント端子10を内蔵するフロントアッシー2と、フロント端子10に接続されるリア端子30を内蔵して電線50が延びるリアアッシー3と、を備え、フロントアッシー2とリアアッシー3とが相対回転可能な回転式のコネクタである。フロントアッシー2に属するフロントハウジング20と、相手側コネクタに属する相手側ハウジング(図示省略)とが嵌合することで、コネクタ1は、相手側ハウジングに内蔵された相手側端子に接続された電線(図示省略)と電線50とを、フロント端子10及びリア端子30を介して電気的に接続するように機能する。
【0012】
以下、説明の便宜上、
図1~
図8に示すように、「前」、「後」、「上」、「下」、「左」及び「右」を定義する。「前後方向」、「上下方向」、及び「左右方向」は、互いに直交している。前後方向は、フロントハウジング20と相手側ハウジングとの嵌合方向、及び、フロント端子10とリア端子30との接続方向と一致している。
【0013】
以下、まず、フロントアッシー2について説明する。フロントアッシー2は、
図2等に示すように、相手側端子と接続可能なフロント端子10と、フロント端子10を収容する筒状のフロントハウジング20と、を有する。
【0014】
フロントハウジング20は、
図2等に示すように、前後方向に延びる略円筒状の形状を有する樹脂成形体である。フロントハウジング20は、詳細な説明は省略するが、実際には、複数の樹脂部品が組み合わされて構成されている(
図6参照)。
【0015】
フロントハウジング20には、左右一対のフロント端子10が、左右方向に間隔を空けて並ぶように収容されている(
図2及び
図6参照)。各フロント端子10は、
図6に示すように、相手側端子(オス端子)に接続されることになる前後方向に延びる円筒状部(メス端子部)11と、円筒状部11の後側に位置してリア端子30と接続されることになる接続部12と、を一体に有する。接続部12は、フロントハウジング20の後端側に露出している。以下、左右一対のフロント端子10を区別する必要がある場合には、左側のフロント端子10及び右側のフロント端子10を、それぞれ、「フロント端子10A」及び「フロント端子10B」と呼ぶ。
【0016】
フロント端子10Aの接続部12(以下、「接続部12A」と呼ぶ)は、後述するリア端子30Aの円筒状の接続部31A(
図2参照)に対応して、フロントハウジング20と同軸的に配置され且つ前後方向に延びる円筒状の形状を有している(
図6参照)。フロント端子10Bの接続部12(以下、「接続部12B」と呼ぶ)は、後述するリア端子30Bの円柱状の接続部31B(
図2参照)に対応して、接続部12Aの中空部にて接続部12Aと同軸的に配置され且つ接続部12Aより小径の前後方向に延びる円筒状の形状を有している(
図6参照)。
【0017】
略円筒状のフロントハウジング20の外周面には、
図2及び
図4等に示すように、仮係止溝21と、本係止溝22と、フロント突起23と、が設けられている。仮係止溝21は、
図4等に示すように、フロントハウジング20の外周面の後端部にて周方向の全周に亘って連続するように設けられた、円環状の凹状溝である。仮係止溝21は、リアアッシー3に属する後述する係止片42(係止爪42a)との協働によって、フロントアッシー2及びリアアッシー3を「仮係止状態」に維持する機能を果たす(
図4及び
図7参照)。
【0018】
本係止溝22は、
図2及び
図4等に示すように、仮係止溝21の前側に隣接するフロントハウジング20の外周面にて周方向に所定の回転角度(本例では、45度)ごとに並ぶように設けられた、複数(本例では、8つ)の窪みである。本係止溝22は、リアアッシー3の係止片42(係止爪42a)との協働によって、フロントアッシー2及びリアアッシー3を「本係止状態」に維持する機能を果たす(
図5及び
図8参照)。
【0019】
フロント突起23は、
図2及び
図4等に示すように、仮係止溝21の前側に隣接するフロントハウジング20の外周面にて、周方向に隣接する本係止溝22同士の間の周方向位置にて周方向に所定の回転角度(本例では、45度)ごとに並ぶように設けられた、複数(本例では、8つ)の突起である。各フロント突起23は、フロントハウジング20の外周面から径方向外側に突出している。フロント突起23は、リアアッシー3に属する後述するリア突起43との協働によって、フロントアッシー2とリアアッシー3との回転位置を規制する機能を果たす(
図5参照)。以上、フロントアッシー2について説明した。
【0020】
次いで、リアアッシー3について説明する。リアアッシー3は、フロント端子10に接続されるリア端子30と、リア端子30を収容するリアハウジング40と、リア端子30に接続される電線50と、を有する。
【0021】
リアハウジング40は、
図2等に示すように、上下方向及び左右方向に延びる略矩形平板状の形状を有する樹脂成形体である。リアハウジング40は、詳細な説明は省略するが、実際には、複数の樹脂部品が組み合わされて構成されている(
図6~
図8参照)。
【0022】
リアハウジング40には、左右一対のフロント端子10に対応して、左右一対のリア端子30が、左右方向に間隔を空けて並ぶように収容されている(
図2及び
図6参照)。各リア端子30は、フロント端子10の接続部12に接続されることになる前後方向に延びる接続部31と、接続部31の後端部から下方に延びて電線50の端末に接続される電線接続部32と、を一体に有する。接続部31は、リアハウジング40の前面側に露出している(
図2参照)。電線50は、電線接続部32から下方に向けてリアハウジング40の外部へと延出している(
図1~
図3参照)。以下、左右一対のリア端子30を区別する必要がある場合には、左側のリア端子30及び右側のリア端子30を、それぞれ、「リア端子30A」及び「リア端子30B」と呼ぶ。
【0023】
リア端子30Aの接続部31(以下、「接続部31A」と呼ぶ)は、フロント端子10Aの円筒状の接続部12A(
図6参照)に対応して、リアハウジング40の前面の中央部に配置され且つリアハウジング40の前面から前方に向けて突出する円筒状の形状を有している(
図2参照)。接続部31Aの外周面には周方向に延びる凹状溝(凹条)が設けられており、この凹状溝に、環状のコイルスプリング71が嵌め込まれている。コイルスプリング71は、接続部31Aと、フロント端子10Aの接続部12Aと、に挟まれて、接続部31Aと接続部12Aとを電気的に接続する機能を発揮する。リア端子30Bの接続部31(以下、「接続部31B」と呼ぶ)は、フロント端子10Bの円筒状の接続部12B(
図6参照)に対応して、接続部31Aの中空部にて接続部31Aと同軸的に配置され且つリアハウジング40の前面から前方に向けて突出する円柱状の形状を有している(
図2参照)。接続部31Bの外周面には周方向に延びる凹状溝(凹条)が設けられており、この凹状溝に、環状のコイルスプリング72が嵌め込まれている。コイルスプリング72は、接続部31Bと、フロント端子10Bの接続部12Bと、に挟まれて、接続部31Bと接続部12Bとを電気的に接続する機能を発揮する。
【0024】
リアハウジング40の前面には、
図2に示すように、リア端子30Aの円筒状の接続部31Aより径方向外側にて接続部31Aと同軸的に配置された円環状のパッキン用溝部41が設けられている。パッキン用溝部41には、ゴム製の円環状のパッキン60(
図2参照)が収容される(
図6~
図8参照)。パッキン60は、本係止状態にて、フロントハウジング20とリアハウジング40との間の隙間を封止する防水機能を果たす(
図6及び
図8参照)。
【0025】
リアハウジング40の前面には、
図2に示すように、更に、係止片42と、リア突起43と、が設けられている。係止片42は、
図2及び
図4等に示すように、パッキン用溝部41の径方向外側に隣接するリアハウジング40の前面にて周方向に所定の回転角度(本例では、90度)ごとに並ぶように設けられた、複数(本例では、4つ)の片である。各係止片42は、リアハウジング40の前面から前方に向けて延びる片持ち梁状の形状を有しており、その先端部には径方向内側に突出する係止爪42aが設けられている(
図7及び
図8参照)。
【0026】
リア突起43は、
図2及び
図4等に示すように、パッキン用溝部41の径方向外側に隣接するリアハウジング40の前面にて、周方向に隣接する係止片42同士の間の周方向位置にて周方向に所定の回転角度(本例では、90度)ごとに並ぶように設けられた、複数(本例では、4つ)の突起である。各リア突起43は、リアハウジング40の前面から前方に突出している。リア突起43の突出端(前端)の前後方向位置と、係止片42の突出端(前端)の前後方向位置とは、略一致している(
図4及び
図5参照)。以上、リアアッシー3について説明した。
【0027】
次いで、コネクタ1の組み付けについて説明する。コネクタ1では、フロントアッシー2及びリアアッシー3の「仮係止状態」(
図4及び
図7参照)と「本係止状態」(
図5及び
図8参照)とを、必要に応じて切り替え可能となっている。
【0028】
フロントアッシー2と、パッキン60がパッキン用溝部41に収容されているリアアッシー3とを、前後方向に互いに分離した状態から前後方向に互いに近づけけると、フロントハウジング20の外周面の後端部20a(
図7参照)からの押圧による各係止片42の一時的な径方向外側への弾性変形を経て、各係止片42の係止爪42aがフロントハウジング20の仮係止溝21に進入して係止される(
図4及び
図7参照)。これにより、フロントアッシー2及びリアアッシー3の「仮係止状態」が得られる。仮係止状態では、フロント端子10Aの円筒状の接続部12Aがリア端子30Aの円筒状の接続部31Aに外挿され、且つ、フロント端子10Bの円筒状の接続部12Bがリア端子30Bの円柱状の接続部31Bに外挿されている(
図6参照)。これにより、フロント端子10A,10Bと、リア端子30A,30Bと、がそれぞれ電気的に接続されている。
【0029】
仮係止状態では、係止片42及びリア突起43の前端が、フロント突起23の後端より後方に位置することで(
図4参照)、係止片42及びリア突起43とフロント突起23とが周方向において係合しない。加えて、係止爪42aと係合している仮係止溝21が周方向の全周に亘って連続している。このため、フロントアッシー2とリアアッシー3との任意の相対回転が可能である(
図3の矢印を参照)。更に、
図7に示すように、フロントハウジング20の後端面(平面)とパッキン60とが前後方向に分離しているため、パッキン60がフロントハウジング20及びリアハウジング40によって押し潰されていない。よって、パッキン60の摩耗等の変形を生じさせることなく、フロントアッシー2とリアアッシー3との相対回転が可能である。
【0030】
仮係止状態において、何れかの係止爪42aと何れかの本係止溝22との周方向の位置を一致させた状態から、フロントアッシー2及びリアアッシー3を前後方向に互いに更に近づけけると、仮係止溝21と本係止溝22の間のフロントハウジング20の外周面からの押圧による各係止片42の一時的な径方向外側への弾性変形を経て、各係止片42の係止爪42aがフロントハウジング20の対応する本係止溝22に進入して係止される(
図5及び
図8参照)。これにより、フロントアッシー2及びリアアッシー3の「本係止状態」が得られる。本係止状態においても、仮係止状態と同様、フロント端子10A,10Bと、リア端子30A,30Bと、がそれぞれ電気的に接続されている。
【0031】
本係止状態では、各係止片42の係止爪42aがフロントハウジング20の対応する本係止溝22にそれぞれ係止されている。加えて、リア突起43とフロント突起23とが前後方向に部分的に重なっていることで(
図5参照)、リア突起43とフロント突起23とが周方向において係合する。このため、フロントアッシー2とリアアッシー3との相対回転が不能である。更に、
図8に示すように、フロントハウジング20の後端面(平面)がパッキン60を押圧して、パッキン60がフロントハウジング20及びリアハウジング40に押圧挟持されて押し潰されている。これにより、パッキン60の上述した防水機能が発揮される。本係止状態では、フロントアッシー2とリアアッシー3との相対回転が不能であるため、フロントアッシー2とリアアッシー3とでパッキン60が押し潰された状態でフロントアッシー2とリアアッシー3とが相対回転することがない。
【0032】
本例では、4つの係止片42(係止爪42a)が周方向に90度ごとに並ぶように配置され、且つ、8つの本係止溝22が周方向に45度ごとに並ぶように配置されている。このため、本係止状態において各係止爪42aを係止する対象となる本係止溝22を変更することで、本係止状態が実現するフロントアッシー2とリアアッシー3との周方向の相対位置を、45度ごとに変更可能である。本係止状態において、各係止爪42aを係止する対象となる本係止溝22を現在のものから変更する場合には、まず、本係止状態から仮係止状態へと一時的に移行し、次いで、仮係止状態にてフロントアッシー2とリアアッシー3とを相対回転させて各係止爪42aと新たな本係止溝22との周方向の位置を一致させ、次いで、仮係止状態から本係止状態へと戻す。これにより、パッキン60の摩耗等の変形を抑制しながら、フロントアッシー2とリアアッシー3との相対回転を行うことができる。
【0033】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係る回転式のコネクタ1によれば、フロントアッシー2のフロントハウジング20が仮係止溝21と本係止溝22とを有し、リアアッシー3のリアハウジング40が係止爪42aを有する。仮係止溝21に係止爪42aが係止されているとき、パッキン60が押し潰されない状態(即ち、仮係止状態)で、フロントアッシー2とリアアッシー3との相対回転が可能である。一方、本係止溝22に係止爪42aが係止されているとき、パッキン60が押し潰された状態(即ち、本係止状態)で、フロントアッシー2とリアアッシー3との相対回転が不能である。これにより、係止爪42aが仮係止溝21に係止された状態と、係止爪42aが本係止溝22に係止された状態と、を必要に応じて切り替えることで、パッキン60の摩耗等の変形を抑制しながら、フロントアッシー2とリアアッシー3との相対回転を行うことができる。したがって、本実施形態に係る回転式のコネクタ1は、パッキン60による防水性能を保ちながら、フロントアッシー2及びリアアッシー3同士の相対回転が可能である。
【0034】
更に、仮係止溝21がフロントハウジング20の外周壁上において周方向に延びる凹状溝である。よって、仮係止溝21に係止爪42aを係止した状態で、フロントアッシー2とリアアッシー3との相対回転が可能となる。更に、本係止溝22がフロントハウジング20の外周壁上において周方向に所定間隔をあけて(本例では、45度ごとに)並んで配置される複数の窪みである。よって、何れの本係止溝22に係止爪42aを係止するかを選択することで、フロントアッシー2とリアアッシー3との相対回転位置を、適宜(本例では、45度ごとに)規制することができる。
【0035】
更に、本係止溝22に係止爪42aが係止されているとき、フロント突起23とリア突起43とが、回転方向において係合する。これにより、本係止溝22と係止爪42aとの係合に加え、フロント突起23とリア突起43との係合により、フロントアッシー2とリアアッシー3との回転位置を更に強固に規制することができる。
【0036】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0037】
例えば、上記実施形態では、フロントハウジング20において仮係止溝21、本係止溝22及びフロント突起23が設けられ、且つ、リアハウジング40において係止片42(係止爪42a)及びリア突起43が設けられている。これに対し、フロントハウジング20においてフロント突起23が省略され、且つ、リアハウジング40においてリア突起43が省略されてもよい。
【0038】
ここで、上述した本発明に係る回転式のコネクタ1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
【0039】
[1]
相手側端子と接続可能な第1端子(10)と、前記第1端子(10)を収容する筒状の第1ハウジング(20)と、を有する第1アッシー(2)と、
前記第1端子(10)に電気的に接続される第2端子(30)と、前記第2端子(30)を収容する第2ハウジング(40)と、前記第2端子(30)に電気的に接続される電線(50)と、を有する第2アッシー(3)と、
前記第1ハウジング(20)と前記第2ハウジング(40)とに挟まれるパッキン(60)と、を備え、
前記第1端子(10)と前記第2端子(30)とが電気的に接続された状態で、前記第1ハウジング(20)の筒軸周りに前記第1アッシー(2)と前記第2アッシー(3)との相対回転が可能な、回転式のコネクタ(1)であって、
前記第1ハウジング(20)は、仮係止溝(21)と、本係止溝(22)と、を有し、
前記第2ハウジング(40)は、係止爪(42a)を有し、
前記仮係止溝(21)に前記係止爪(42a)が係止されているとき、
前記パッキン(60)が前記第1ハウジング(20)及び前記第2ハウジング(40)の少なくとも一方に接触せず、且つ、前記相対回転が可能であり、
前記本係止溝(22)に前記係止爪(42a)が係止されているとき、
前記パッキン(60)が前記第1ハウジング(20)及び前記第2ハウジング(40)の双方に接触し、且つ、前記相対回転が不能である、
回転式のコネクタ(1)。
【0040】
上記[1]の構成の回転式のコネクタによれば、第1アッシーの第1ハウジングが仮係止溝と本係止溝とを有し、第2アッシーの第2ハウジングが係止爪を有する。仮係止溝に係止爪が係止されている(即ち、仮係止状態である)とき、パッキンが少なくとも一方のアッシーに接触しない(即ち、押し潰されない)状態で、第1アッシーと第2アッシーとの相対回転が可能である。一方、本係止溝に係止爪が係止されている(即ち、本係止状態である)とき、パッキンが双方のアッシーに接触する(即ち、押し潰された)状態で、第1アッシーと第2アッシーとの相対回転が不能である。これにより、係止爪が仮係止溝に係止された状態と、係止爪が本係止溝に係止された状態と、を必要に応じて切り替えることで、パッキンの摩耗等の変形を抑制しながら、第1アッシーと第2アッシーとの相対回転を行うことができる。したがって、本構成の回転式のコネクタは、パッキンによる防水性能を保ちながら、アッシー同士の相対回転が可能である。
【0041】
[2]
上記[1]に記載の回転式のコネクタ(1)において、
前記仮係止溝(21)は、
前記第1ハウジング(20)の外周壁に設けられて周方向に延びる凹状溝であり、
前記本係止溝(22)は、
前記第1ハウジング(20)の外周壁に設けられて周方向に所定間隔をあけて並ぶように配置される複数の窪みである、
回転式のコネクタ(1)。
【0042】
上記[2]の構成の回転式のコネクタによれば、仮係止溝が第1ハウジングの外周壁上において周方向に延びる凹状溝である。よって、仮係止溝に係止爪を係止した状態で、第1アッシーと第2アッシーとの相対回転が可能となる。更に、本係止溝が第1ハウジングの外周壁上において周方向に所定間隔で(例えば、所定の回転角度ごとに)並んで配置される複数の窪みである。よって、何れの本係止溝に係止爪を係止するかを選択することで、第1アッシーと第2アッシーとの回転位置を、適宜(例えば、所定の回転角度ごとに)規制することができる。
【0043】
[3]
上記[1]に記載の回転式のコネクタ(1)において、
前記第1ハウジング(20)は、
当該第1ハウジング(20)の外周壁から突出する第1突起(23)を有し、
前記第2ハウジング(40)は、
前記第1ハウジング(20)に向けて延びる第2突起(43)を有し、
前記仮係止溝(21)に前記係止爪(42a)が係止されているとき、
前記第1突起(23)と前記第2突起(43)とが、前記相対回転の回転方向において干渉せず、
前記本係止溝(22)に前記係止爪(42a)が係止されているとき、
前記第1突起(23)と前記第2突起(43)とが、前記相対回転の回転方向において干渉する、
回転式のコネクタ(1)。
【0044】
上記[3]の構成の回転式のコネクタによれば、本係止溝に係止爪が係止されているとき、第1突起と第2突起とが、回転方向において係合する。これにより、本係止溝と係止爪との係合に加え、第1突起と第2突起との係合により、第1アッシーと第2アッシーとの回転位置を更に強固に規制することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 コネクタ
2 フロントアッシー(第1アッシー)
3 リアアッシー(第2アッシー)
10 フロント端子(第1端子)
20 フロントハウジング(第1ハウジング)
21 仮係止溝
22 本係止溝
23 フロント突起(第1突起)
30 リア端子(第2端子)
40 リアハウジング(第2ハウジング)
42a 係止爪
43 リア突起(第2突起)
50 電線
60 パッキン