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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180974
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
H05K3/46 Z
H05K3/46 N
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094683
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】足立 武馬
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA32
5E316BB03
5E316BB04
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC13
5E316CC32
5E316CC37
5E316DD17
5E316DD24
5E316EE31
5E316FF04
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH11
5E316HH33
(57)【要約】
【課題】配線基板の品質向上。
【解決手段】実施形態の配線基板100は、第一絶縁層21と、第一絶縁層21の上に形成され、上面1B1が研磨により平坦化されている配線パターン1Bと、上面1A1、1A2が配線パターン1Bの上面1B1よりも粗い導体パッド1Aと、を備えている第一導体層11と、第一導体層11の表面を覆っている被膜層5と、被膜層5に接触して第一導体層11を覆っている第二絶縁層22と、第二絶縁層22及び被膜層5を貫通し導体パッド1Aの上面1A1、1A2に接触している接続導体4と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一絶縁層と、
前記第一絶縁層の上に形成され、上面が研磨により平坦化されている配線パターンと、上面が前記配線パターンの上面よりも粗い導体パッドと、を備えている第一導体層と、
前記第一導体層の表面を覆っている被膜層と、
前記被膜層に接触して前記第一導体層を覆っている第二絶縁層と、
前記第二絶縁層及び前記被膜層を貫通し前記導体パッドの上面に接触している接続導体と、
を有する配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板であって、前記配線パターンの上面の算術平均粗さ(Ra)は0.05μm以上0.15μm以下である。
【請求項3】
請求項2に記載の配線基板であって、前記導体パッドの上面において、前記接続導体が接触している部分よりも前記第二絶縁層に覆われている部分が粗い。
【請求項4】
第一絶縁層の上に配線パターン及び導体パッドを備えた第一導体層を形成することと、
前記配線パターンの上面と、前記導体パッドの上面と、を研磨により平坦化することと、
前記導体パッドの上面を粗化することと、
前記第一導体層の表面を覆う被膜層を形成することと、
前記被膜層に接触させて前記第一導体層を覆う第二絶縁層を形成することと、
前記第二絶縁層及び前記被膜層を貫通し前記導体パッドの上面に達する貫通孔を形成することと、
前記導体パッドの上面に接触する接続導体を前記貫通孔に形成することと、
を含む配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の配線基板の製造方法であって、前記導体パッドの上面を粗化する場合に、前記配線パターンをレジスト膜で覆うことをさらに含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、絶縁基板上に絶縁層を積層する工程と、絶縁層上に無電解銅めっき層を被着させる工程と、無電解銅めっき層上に耐めっき樹脂層を被着させる工程と、耐めっき樹脂層に、無電解銅めっき層を部分的に露出させる開口部を形成する工程と、開口部内に露出した無電解銅めっき層上に電解銅めっき層を耐めっき樹脂層の厚みより厚く被着させる工程と、電解銅めっき層の上面と耐めっき樹脂の上面とが同一面をなすように機械的に研磨する工程と、耐めっき樹脂層を剥離した後、電解銅めっき層が被着している部位以外の無電解銅めっき層を除去する工程と、を順次行なう、配線基板の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-258410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絶縁層の上に形成された導体層をさらに絶縁層で覆う構造の配線基板では、導体層の上面が平坦化されていると、絶縁層との密着性が低下する。このため、導体層と絶縁層との密着性を向上させるために、導体層と絶縁層との間に被膜層を設けた構造を採り得る。そして、導体層の導体パッドが、その上層の絶縁層に形成された貫通孔の接続導体と接触する構造を採り得る。この場合、導体パッドの上面が平坦化されていると、貫通孔の形成時に、導体パッドを覆っている被膜層の一部が溶出することがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の配線基板は、第一絶縁層と、前記第一絶縁層の上に形成され、上面が研磨により平坦化されている配線パターンと、上面が前記配線パターンの上面よりも粗い導体パッドと、を備えている第一導体層と、前記第一導体層の表面を覆っている被膜層と、前記被膜層に接触して前記第一導体層を覆っている第二絶縁層と、前記第二絶縁層及び前記被膜層を貫通し前記導体パッドの上面に接触している接続導体と、を有する。
【0006】
本開示の配線基板の製造方法は、第一絶縁層の上に配線パターン及び導体パッドを備えた第一導体層を形成することと、前記配線パターンの上面と、前記導体パッドの上面と、を研磨により平坦化することと、前記導体パッドの上面を粗化することと、前記第一導体層の表面を覆う被膜層を形成することと、前記被膜層に接触させて前記第一導体層を覆う第二絶縁層を形成することと、前記第二絶縁層及び前記被膜層を貫通し前記導体パッドの上面に達する貫通孔を形成することと、前記導体パッドの上面に接触する接続導体を前記貫通孔に形成することと、を含む。
【0007】
本開示の実施形態によれば、配線パターンと第一絶縁層との密着性を確保し、且つ、被膜層の溶出を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第一実施形態の配線基板を示す断面図である。
図2】本開示の第一実施形態における第一導体層の導体パターンの一例を示す平面図である。
図3図1のIII部の拡大図である。
図4図3のIV部の拡大図である。
図5】本開示の第二実施形態の配線基板を示す断面図である。
図6A】本開示の第一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図である。
図6B】本開示の第一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図である。
図6C】本開示の第一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図である。
図6D】本開示の第一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図である。
図6E】本開示の第一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図である。
図6F】本開示の第一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図である。
図6G】本開示の第一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図である。
図6H】本開示の第一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図である。
図6I】本開示の第一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図である。
図6J】本開示の第一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図である。
図6K】本開示の第一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図である。
図6L】本開示の第一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図である。
図6M】本開示の第一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図である。
図6N】本開示の第一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図である。
図7】本開示の第一実施形態の配線基板の製造工程の途中の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0010】
図1は、本開示の第一実施形態の配線基板100を示す断面図であり、図2は、第一実施形態の配線基板100を示す平面図である。なお、図1図2におけるI-I線断面図である。配線基板100は、本開示の技術の配線基板の一例である。各図面における配線基板100の向きは、実際の配線基板100の使用状態を制限するものではない。
【0011】
図1に示すように、配線基板100は、コア基板3を備えている。コア基板3における2つの主面のうち、図1における上側の面は第一面3Aであり、下側の面は第二面3Bである。
【0012】
コア基板3は、絶縁層32と導体層31とを備えている。導体層31は、絶縁層32の両面に形成されている。以下では、配線基板100の厚さ方向において絶縁層32から遠い側は「上側」、「上方」、又は「上」、絶縁層32に近い側は「下側」、「下方」、又は「下」と称される。さらに、絶縁層32の両面に設けられた各層において、絶縁層32と反対側を向く面は「上面」、絶縁層32側を向く面は「下面」と称される。
【0013】
配線基板100は、さらに、第一絶縁層21、第一導体層11、第二絶縁層22、及び第二導体層12を備えている。第一絶縁層21、第一導体層11、第二絶縁層22、及び第二導体層12は、コア基板3の第一面3Aの上に、第一面3A側から順に積層されている。
【0014】
第一絶縁層21はコア基板3の第一面3Aを覆っている。第一導体層11は、第一絶縁層21の上に導体によって所定のパターンで形成されている。第二絶縁層22は、第一導体層11を覆うと共に、第一絶縁層21において第一導体層11に覆われていない部分を覆っている。第二導体層12は、第二絶縁層22の上に導体によって所定のパターンで形成されている。
【0015】
配線基板100は、さらに、コア基板3の第二面3Bの上に積層されている2つの絶縁層23及び2つの導体層13を備えている。2つの絶縁層23及び2つの導体層13は、第二面3B側から交互に積層されている。
【0016】
コア基板3の絶縁層32は接続導体33を含んでいる。接続導体33は、コア基板3の両面それぞれの導体層31どうしを接続している。接続導体33は、所謂スルーホール導体である。
【0017】
第一絶縁層21、第二絶縁層22、及び2つの絶縁層23は、それぞれ、接続導体4を含んでいる。第一絶縁層21に含まれる接続導体4は、導体層31と第一導体層11とを接続している。第二絶縁層22に含まれる接続導体4は、第一導体層11と第二導体層12とを接続している。2つの絶縁層23それぞれに含まれる接続導体4は、導体層31と導体層13とを、又は導体層13どうしを接続している。接続導体4は、各絶縁層(第一絶縁層21、第二絶縁層22、及び絶縁層23)内に形成されている所謂ビア導体である。
【0018】
第一絶縁層21、第二絶縁層22、絶縁層23、及び絶縁層32は、任意の絶縁性樹脂によって形成されている。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、又はフェノール樹脂などを挙げることができる。
【0019】
図1に示される例では、絶縁層32は、芯材32Aを含んでいる。芯材32Aは、たとえば、ガラス繊維及びアラミド繊維などで形成されている。芯材32Aは、絶縁層32を補強する補強材でもある。なお、図1では図示を省略しているが、絶縁層32以外の各絶縁層(第一絶縁層21、第二絶縁層22、及び絶縁層23)も、ガラス繊維等で形成された芯材を含んでいてもよい。第一絶縁層21、第二絶縁層22、絶縁層23、及び絶縁層32、さらに、シリカ(SiO)、アルミナ、又はムライトなどの微粒子によって形成される無機フィラーを含んでいてもよい。
【0020】
第一導体層11、第二導体層12、導体層13、導体層31、接続導体4、及び接続導体33は、たとえば銅又はニッケル等の任意の金属を用いて形成されている。導体層31は、金属箔31A、金属膜31B、及びめっき膜31Cを含んでいる。図1に示される例では、接続導体33は導体層31と一体的に形成されている。第一導体層11、第二導体層12、導体層13、及び接続導体4は、それぞれ、金属膜10B及びめっき膜10Cを含んでいる。接続導体4は、第一導体層11、第二導体層12、又は導体層13と一体的に形成されている。めっき膜31C及びめっき膜10Cは例えば電解めっき膜である。金属膜31B及び金属膜10Bは、例えば無電解めっき膜又はスパッタリング膜である。金属膜31B及び金属膜10Bはそれぞれ、めっき膜31C及びめっき膜10Cが電解めっきで形成される際の給電層として機能する。
【0021】
第二絶縁層22及び第二導体層12の上には、ソルダーレジスト6が形成されている。コア基板3の第二面3B側の表層の絶縁層23及び導体層13の上にもソルダーレジスト6が形成されている。ソルダーレジスト6には、第二導体層12又は導体層13の一部を露出させる開口6Aが設けられている。ソルダーレジスト6は、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などで形成されている。
【0022】
第一導体層11、第二導体層12、2つの導体層13、及び2つの導体層31は、それぞれ、所定の導体パターンを含んでいる。第一導体層11は、導体パッド1A、配線パターン1B、及び導体パターン1Cを含んでいる。
【0023】
導体パッド1Aは、第二絶縁層22を貫通する接続導体4と接している。すなわち、導体パッド1Aの上に接続導体4が形成されている。導体パッド1Aは、第二絶縁層22を貫通する接続導体4に対する、所謂受けパッドである。そのため、導体パッド1Aの第二絶縁層22側の表面の一部は、第二絶縁層22を貫通する接続導体4に覆われている。換言すると、導体パッド1Aの第二絶縁層22側の表面の一部は、第二絶縁層22を貫通する接続導体4の底面に対向している。図1に示される例では、第一絶縁層21を貫通する接続導体4と第二絶縁層22を貫通する接続導体4とが積み重なるように形成されており、所謂スタックビア導体が形成されている。導体パッド1Aは、第一絶縁層21を貫通する接続導体4(ビア導体)の所謂ビアパッドとして設けられている。
【0024】
配線パターン1Bは、第一絶縁層21を向く面以外の面を第二絶縁層22に覆われている。配線パターン1Bは、任意の電気信号の伝送や電力の供給に用いられる導電路として機能する配線パターンである。配線パターン1Bは、例えば電気信号の所定の送信元と送信先とを単独で又は他の導体パターンと連携して接続していてもよい。配線パターン1Bは、電力の所定の給電元と給電先とを接続していてもよい。配線パターン1Bは、例えば数GHzを超えるような高周波信号の伝送路であってもよい。
【0025】
図1には、2つの配線パターン1Bが現れている。これら2つの配線パターン1Bは、図2に示されるように、第一導体層11内の2つの導体パッド1Dどうしを接続している。なお、図2に示される導体パッド1A、1Dにおいて二点鎖線で囲まれている部分1A2、1D2は、導体パッド1A、1Dそれぞれの表面のうちで第二絶縁層22を貫通する接続導体4に覆われている部分である。部分1A2は、導体パッド1Aにおける接続導体4に覆われている表面1A2でもある。
【0026】
図1及び図2に示される例では、第一導体層11はさらに、導体パターン1Cを含んでいる。導体パターン1Cは、第一絶縁層21の上において、導体パッド1A及び配線パターン1Bが形成されていない領域の一部に広がっている。導体パターン1Cは、所謂ベタパターンであってもよい。導体パターン1Cは、例えば、グランド電位又は特定の電源の電位が印加されるグランドプレーン、又は電源プレーンとして用いられる。
【0027】
図3には、図1のIII部が拡大して示されている。図4には図3のIV部がさらに拡大して示されている。図3及び図4に示されるように、第一導体層11の表面には、被覆膜5が形成されている。すなわち、配線基板100は、第一導体層11と第二絶縁層22との間の被覆膜5を備えている。なお「第一導体層11の表面」は、第一導体層11の表面のうちの第二絶縁層22と向かい合っている領域である。
【0028】
なお、被覆膜5は、第一導体層11における第二絶縁層22と向かい合う表面の一部だけに形成されていてもよい。
【0029】
被覆膜5は、第一導体層11と第二絶縁層22との密着性を向上させる。被覆膜5は、例えば、第二絶縁層22を構成する樹脂などの有機材料、及び第一導体層11を構成する金属などの無機材料の両方と結合し得る材料によって形成される。被覆膜5は、例えば、有機材料と化学結合し得る反応基及び無機材料と化学結合し得る反応基の両方を含む材料によって形成される。被覆膜5の材料としては、トリアゾール化合物などのアゾールシラン化合物を含むシランカップリング剤が例示される。なお、被覆膜5の材料は、第一導体層11の上に第二絶縁層22が直接形成される場合と比べて、第一導体層11と第二絶縁層22との密着強度を高め得るものであればよく、シランカップリング剤に限定されない。被覆膜5により、第一導体層11と第二絶縁層22とが、第一導体層11の上に第二絶縁層22が直接形成される場合と比較して、高い強度で密着する。
【0030】
図3に示されるように、本実施形態では、第一導体層11の配線パターン1Bにおいて第二絶縁層22と向かい合う表面1B1は、被覆膜5に覆われている。すなわち、被覆膜5がない場合と比べて配線パターン1Bと第二絶縁層22との密着性が高められている。従って、配線パターン1Bからの第二絶縁層22の浮きや剥離が生じ難いと考えられる。配線パターン1Bの表面1B1は、本開示の技術の「配線パターンの上面」の一例である。
【0031】
図3に示される例では、導体パッド1Aにおける第二絶縁層22と向かい合う表面1A1及び平板状の導体パターン1Cにおける第二絶縁層22と向かい合う表面1C1それぞれも、被覆膜5に覆われている。すなわち、被覆膜5がない場合と比べて導体パッド1A及び導体パターン1Cそれぞれと第二絶縁層22との密着性が高められている。従って、導体パッド1A及び導体パターン1Cそれぞれからの第二絶縁層22の浮きや剥離が生じ難いと考えられる。導体パッド1Aの表面1A1は、本開示の技術の「導体パッドの上面」の一例である。
【0032】
図3に示されるように、第一導体層11の各導体パターン(導体パッド1A、配線パターン1B、及び導体パターン1C)は、第一絶縁層21と接していない表面に、互いに程度の異なる凹凸を有している。換言すると、第一導体層11は、第二絶縁層22と向かい合う表面(表面1A1、表面1B1、及び表面1C1)及び接続導体4に覆われる表面1A2において互いに面粗度の異なる複数の領域を有している。
【0033】
本実施形態では、配線パターン1Bの表面1B1、及び導体パターン1Cの表面1C1は、後述されるように、研磨によって平坦化されている。これに対し、導体パッド1Aの表面1A1は、研磨後に例えばマイクロエッチングなどによって粗化されている。したがって、第一導体層11では、導体パッド1Aの表面1A1上の凹凸の高低差は、配線パターン1Bの表面1B1上の凹凸の高低差よりも大きい。以下、導体パッド1Aの表面1A1の面粗度は「第一面粗度」、配線パターン1Bの表面1B1の面粗度は「第二面粗度」、導体パターン1Cの表面1C1の面粗度は「第三面粗度」と称される。これらの面粗度は、たとえば、ISO 25178に規定される面粗さとして数値化可能である。面粗度を示すパラメータとしては、例えば、算術平均粗さ(Ra)を用いることが可能である。
【0034】
本実施形態の配線基板100では、導体パッド1Aの表面1A1の面粗度(第一面粗度)は、配線パターン1Bの表面1B1の面粗度(第二面粗度)よりも高い。そのため、導体パッド1Aと第二絶縁層22との剥離が抑制されることがある。具体的には、導体パッド1Aと第二絶縁層22との界面への意図せぬ液体の浸入が、比較的高い第一面粗度を有する導体パッド1Aの表面1A1の凹凸によって防がれる。その結果、そのような液体の浸入によって引き起こされ得る導体パッド1Aと第二絶縁層22との剥離が抑制されることがある。
【0035】
詳述すると、配線基板100の製造工程では、接続導体4の形成のために第二絶縁層22に設けられた貫通孔4Aの内壁が、各種の処理溶液やめっき液になどに晒されることがある。そしてそれらの液体が、貫通孔4Aの内壁から導体パッド1Aと第二絶縁層22との界面に侵入し、導体パッド1Aと第二絶縁層22との剥離を引き起こすことがある。しかし、本実施形態では、そのような剥離を引き起こし得る意図せぬ液体の浸入が、比較的高い面粗度を有する導体パッド1Aの表面1A1の凹凸によって防がれる。
【0036】
一方、配線パターン1Bの表面1B1は研磨によって平坦化されている。配線パターン1Bの表面1B1の面粗度(第二面粗度)は、導体パッド1Aの表面1A1が有する面粗度(第一面粗度)よりも低い。一例として、配線パターン1Bの表面1B1の算術平均粗さ(Ra)は、0.05μm以上0.15μm以下である。例えば粗化された表面を有する配線パターンでは、高周波信号の伝送において、表皮効果の影響を受けて実質的なインピーダンスが増加して伝送特性が低下することがある。また、例えば配線幅が10μm以下で、且つ配線間隔が10μm以下であるような微細な配線パターンでは、その表面が高度に粗化されると、設計上の配線幅や厚さに対して粗化後に所望の形状が得られないことがある。しかし本実施形態では、配線パターン1Bの表面1B1は研磨によって平坦化されており、研磨されない場合と比較して低い面粗度を有している。このため、配線パターン1Bの表面1B1が高い面粗度を有することに起因する高周波伝送特性の低下などの問題が生じ難いと考えられる。一例として、配線パターン1Bの表面1B1の算術平均粗さ(Ra)が0.15μm以下であれば、算術平均粗さ(Ra)が0.15μm超である場合と比較して、高周波伝送特性の低下などの問題が生じ難いと考えられる。また、一例として、配線パターン1Bの表面1B1の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上であれば、算術平均粗さ(Ra)が0.05μm未満である場合と比較して、配線パターン1Bの表面1B1を過度に研磨する必要がないと考えられる。
【0037】
そして配線パターン1Bの表面1B1は、配線パターン1Bと第二絶縁層22との密着性を向上させる被覆膜5に覆われている。このように、配線パターン1Bの表面1B1が被覆膜5に覆われていることにより、配線パターン1Bと第二絶縁層22との間の剥離が生じ難いと考えられる。
【0038】
このように、配線基板100では、配線パターン1Bにおいて良好な伝送特性及び第二絶縁層22との十分な密着性が得られ、しかも、接続導体4と接する導体パッド1Aと第二絶縁層22との剥離などによる品質劣化が抑制される。
【0039】
配線パターン1Bにおける高周波伝送特性を良好にし、且つ、導体パッド1Aと第二絶縁層22との界面への液体の浸入を防止するためには、導体パッド1Aの表面1A1と配線パターン1Bの表面1B1との面粗度の差は大きい方が好ましいと考えられる。例えば、導体パッド1Aの表面1A1の面粗度(第一面粗度)は、配線パターン1Bの表面1B1の面粗度(第二面粗度)よりも100%以上高い。その場合、導体パッド1Aと第二絶縁層22との界面への液体の浸入を略確実に防ぎながら、配線パターン1Bにおいて、数GHzオーダーの高周波信号に対する良好な伝送特性が得られると考えられる。
【0040】
第一面粗度は、第二面粗度の200%以上、1200%以下であってもよい。その場合、導体パッド1Aの表面1A1の粗化工程が過剰な時間を必要とせず、また、粗化工程中の第一絶縁層21などへのダメージも少ないと考えられる。
【0041】
導体パッド1Aの表面1A1の算術平均粗さ(Ra)は、例えば0.3μm以上、0.6μm以下である。また、配線パターン1Bの表面1B1の算術平均粗さ(Ra)は、例えば0.05μm以上、0.15μm以下である。すなわち、導体パッド1Aの表面1A1の算術平均粗さ(Ra)は、配線パターン1Bの表面1B1の算術平均粗さ(Ra)の2倍以上12倍以下である。
【0042】
図3に示される例では、導体パッド1Aの表面1A1を覆う被覆膜5において第二絶縁層22と向かい合う表面は、表面1A1の凹凸に基づく起伏を有している。被覆膜5の表面が平坦な場合と比べて、被覆膜5と第二絶縁層22との接触面積が増大していると考えられる。被覆膜5による密着性向上作用に加えて、接触面積の増大による密着性向上作用が得られることがある。
【0043】
一方、導体パッド1Aにおいて接続導体4が接触している表面1A2と接続導体4との間には被覆膜5は介在していない。すなわち、導体パッド1Aと接続導体4とが直接接している。例えばシランカップリング剤のような有機材料を介さずに、導体パッド1Aを構成する銅などの金属と接続導体4を構成する銅などの金属とが導体パッド1Aと接続導体4との界面において接触している。従って、導体パッド1Aと接続導体4との界面において金属同士による機械的に強固で電気的抵抗の小さい接合が得られていると考えられる。
【0044】
図3に示される例では、導体パターン1Cにおいて第二絶縁層22と向かい合う表面1C1は、研磨により平坦化されている。導体パターン1Cの表面1C1は、導体パッド1Aの表面1A1が有する第一面粗度よりも低い面粗度(第三面粗度)を有している。
【0045】
図3に示される導体パターン1Cの表面1C1は、配線パターン1Bの表面1B1の面粗度(第二面粗度)と略同じ(±10%以内の)面粗度(第三面粗度)を有している。従って、導体パターン1Cにおいても、良好な高周波伝送特性が得られると考えられる。また、導体パターン1Cの表面1C1は、前述したように被覆膜5に覆われている。被覆膜5によって密着性を高められている導体パターン1Cと第二絶縁層22との間の界面剥離は生じ難いと考えられる。
【0046】
配線基板100では、図4に示されるように、導体パッド1Aにおいて接続導体4に覆われている表面1A2は、導体パッド1Aの表面1A1が有する第一面粗度よりも低い面粗度を有している。以下、表面1A2の面粗度は「第四面粗度」と称される。第四面粗度は、図3に示される配線パターン1Bの表面1B1が有する面粗度(第二面粗度)よりも高い。
【0047】
具体的には、導体パッド1Aの表面1A1の算術平均粗さ(Ra)は、例えば、0.3μm以上、0.6μm以下である。これに対し、配線基板100の製造工程では、接続導体4の形成のために第二絶縁層22に貫通孔4Aを形成する場合に、導体パッド1Aの表面1A2は、面粗度が低くなることがある。たとえば、導体パッド1Aの表面1A2の算術平均粗さ(Ra)は、例えば、0.1μm以上、0.3μm以下である。
【0048】
表面1A2は、第二絶縁層22と接しておらず、また、表皮効果によって電流の集中が生じる「伝送路の表面」でもない。従って、表面1A2には、大きな凹凸及び平坦性のいずれも特に求められない。このため、図3及び図4に示されるように、導体パッド1Aの表面1A2は、導体パッド1Aの表面1A1が有する第一面粗度と配線パターン1Bの表面1B1が有する第二面粗度との間の任意の面粗度(第四面粗度)を有し得る。
【0049】
図5には、第二実施形態の配線基板200が示されている。図5は、図1のIII部に相当する部分の拡大図である。第二実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については第一実施形態と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0050】
第二実施形態では、被覆膜5は、第一絶縁層21の表面も覆っている。詳細には、被覆膜5は、導体パッド1Aの表面1A1、配線パターン1Bの表面1B1及び導体パターン1Cの表面1C1に加えて、第一導体層11に覆われていない第一絶縁層21の表面21Aも覆っている。被覆膜5は、このように第一絶縁層21の露出面を覆っていてもよい。
【0051】
また、第一実施形態及び第二実施形態において、被覆膜5は、第一絶縁層21全体にわたってその露出面の全面を覆っていてもよい。被覆膜5は、第一導体層11の露出面の全面、及び、第一導体層11における第二絶縁層22と向かい合う表面の全面を覆っていてもよい。その場合、第一絶縁層21上に被覆膜5の端面が存在しないので、例えば端面を起点とする被覆膜5の剥離が生じ難いと考えられる。また、導体パッド1Aにおける第二絶縁層22と向かい合う表面1A1は、被覆膜5に覆われていてもよく、覆われていなくてもよい。また、導体パターン1Cの表面1C1も、被覆膜5に覆われていてもよく、覆われていなくてもよい。
【0052】
次に、本開示の技術の配線基板の製造方法を、図1に示される第一実施形態の配線基板100を例に用い、図6A図6Nを参照しつつ説明する。
【0053】
図6Aに示されるように、コア基板3の絶縁層32となる絶縁層と、この絶縁層の両表面にそれぞれ積層された金属箔31Aと、を含む出発基板(例えば両面銅張積層板)が準備される。この出発基板に、例えばドリル加工又は炭酸ガスレーザ光の照射がなされ、接続導体33の形成位置に貫通孔が形成される。貫通孔内及び金属箔31A上には、無電解めっき又はスパッタリングなどによって金属膜31Bが形成される。そして金属膜31Bを給電層として用いる電解めっきによって、めっき膜31Cが形成される。その結果、3層構造の導体層31、及び2層構造の接続導体33が形成される。その後、サブトラクティブ法によって導体層31をパターニングすることによって、導体層31及び接続導体33を備えるコア基板3が得られる。
【0054】
次に、図6Bにも示されるように、第一絶縁層21が、コア基板3の導体層31を覆うように第一面3A(図1参照)上に形成される。さらに、絶縁層23が、コア基板3の第二面3B上に形成される(図1参照)。第一絶縁層21及び絶縁層23の形成では、例えばフィルム状のエポキシ樹脂が、ラミネート加工によってコア基板3上へ積層され、加熱及び加圧される。その結果、第一絶縁層21及び絶縁層23が形成される。第一絶縁層21及び絶縁層23は、フィルム状のエポキシ樹脂に限らず、BT樹脂、又はフェノール樹脂などの任意の樹脂によって形成され得る。
【0055】
次に、図6Cに示されるように、第一絶縁層21には、接続導体4を形成するための貫通孔4Aが、例えば炭酸ガスレーザ光の照射などによって形成される。また、絶縁層23にも、接続導体4を形成するための貫通孔4Aが、例えば炭酸ガスレーザ光の照射などによって形成される。貫通孔4Aを形成する際に生じた残渣は、アルカリ性過マンガン酸溶液を用いた湿式デスミア処理、又は、プラズマ等の気体を用いたドライデスミア等によって除去される。
【0056】
次に、図6Dに示されるように、第一絶縁層21上及び貫通孔4A内に、金属膜10Bが形成される。金属膜10Bは、例えば、銅ニッケル合金等により、スパッタリング法等によって形成される。金属膜10Bは、配線基板の製造方法において、電解めっきを行う際のシード層として作用する。
【0057】
次に、図6Eに示されるように、金属膜10Bの上に、レジスト膜R1が形成される。レジスト膜R1には、露光及び現像などのフォトリソグラフィ技術を用いて、導体パッド1A、配線パターン1B、及び導体パターン1Cを形成する部分に開口R1Aが設けられている。また、レジスト膜R1は、前述した第一導体層11の形成に用いられるめっきレジスト(図示せず)と同様の材料で形成されてもよい。本実施形態では、レジスト膜R1の厚みは、一例として7μm以上25μm以下である。
【0058】
そして、図6Fに示されるように、金属膜10Bを給電層として用いる電解めっきによって、レジスト膜R1の開口内にめっき膜10Cが形成される。その結果、金属膜10B及びめっき膜層10Cを含む第一導体層11及び導体層13(図1参照)がそれぞれ形成される。また、貫通孔4A内には、金属膜10B及びめっき膜層10Cを含む接続導体4が形成される。この段階では、めっき膜10Cの上面が、レジスト膜R1の上面よりも上側に湾曲した形状で膨出するようにめっきする。
【0059】
次に、図6Gに示されるように、めっき膜層10Cの上部が研磨される。研磨により、めっき膜層10Cの上面は、レジスト膜R1の上面と同一面に位置する。そして、研磨により、めっき膜10Cの上面は平坦化される。研磨により、レジスト膜R1の上部が研磨されてもよい。一例として図7に示されるように、めっき膜層10Cの厚みT1は、7μmとなり得る。本実施形態におけるめっき膜10Cの厚みは、たとえば、めっき膜10Cを形成する際にレジスト膜R1の厚みよりも薄くめっきした場合と比較して、厚い。めっき膜10Cの厚みが確保されていることで、めっき膜10Cにより形成される配線パターン1B、及び導体パターン1C(図1参照)では、電流の流れ方向と直交する断面積が広くなり、電気抵抗が低減され得る。めっき膜10Cの厚みT1は、一例として、7μm以上であれば、7μm未満の場合と比較して、電気抵抗を低減させる効果が高いと考えられる。また、めっき膜層10Cの厚みT1は、一例として、20μm以下であれば、20μm超の場合と比較して、めっき膜10Cの形成が容易である。
【0060】
このように、研磨により平坦化されためっき膜10Cの上面の算術平均粗さ(Ra)は、一例として、0.03μm以上0.1μm以下となっている。研磨の方法は特に制限されないが、一例として、CMP(Chemical Mechanical Polishing)を挙げることができる。
【0061】
次に、図6Hに示されるように、レジスト膜R1が、例えば水酸化ナトリウムなどのアルカリ性剥離剤を用いて除去される。その後、金属膜10Bにおいてめっき膜10Cに覆われずに露出している部分がエッチングなどによって除去される。この段階で、コア基板3の第一面3A側には、導体パッド1A、配線パターン1B、及び導体パターン1Cを有する第一導体層11が形成されている。
【0062】
めっき膜10Cが平坦化されることなくレジスト膜R1が除去された場合は、図7に二点鎖線で示されるように、めっき膜10Cの上面が上側に湾曲した形状となっている。すなわち、めっき膜10Cの上部が研磨によって上部が平坦化されていることは、めっき膜10Cを視認することにより確認可能である。
【0063】
なお、コア基板3の第二面3B側には導体層13が形成される。第一絶縁層21及び絶縁層23それぞれには接続導体4が形成される。
【0064】
第一導体層11、導体層13、及び接続導体4は、例えばセミアディティブ法を用いて形成される。すなわち、貫通孔4A内、並びに、第一絶縁層21及び絶縁層23の表面上に、例えば無電解めっき又はスパッタリングによって金属膜10Bが形成される。
【0065】
次に、図6Iに示されるように、配線パターン1B及び導体パターン1Cを覆うレジスト膜R2が形成される。レジスト膜R2は、導体パッド1Aは覆わない形状である。このため、導体パッド1Aにおいて下面以外は露出している。そして、導体パッド1Aに対し粗化処理を行う。この粗化処理により、導体パッド1Aにおける露出面は粗化される。これに対し、配線パターン1B及び導体パターン1Cは粗化されない。
【0066】
導体パッド1Aの露出面の粗化は任意の方法で行われ得る。例えば、黒化処理又はブラウン処理と呼ばれる表面酸化処理や、酸性の溶剤を用いたマイクロエッチング処理によって、導体パッド1Aの露出面、すなわち導体パッド1Aにおいて下面以外の部分が粗化される。
【0067】
導体パッド1Aの表面1A1は、配線パターン1Bの表面1B1が有する面粗度(第二面粗度)よりも高い面粗度を有するように粗化される。導体パッド1Aの表面1A1は、例えば、算術平均粗さ(Ra)で、0.3μm以上、0.6μm以下の面粗度を有するように粗化される。その後、レジスト膜R2は除去される。
【0068】
次に、図6Jに示されるように、第一絶縁層21の露出面及び第一導体層11の露出面に被覆膜5が設けられる。具体的には、第一導体層11の露出面とは、導体パッド1Aの露出面、配線パターン1Bの露出面、及び導体パターン1Cの露出面を含む。また、第一絶縁層21の露出面とは、第一絶縁層21において、第一導体層11が設けられていない部分である。すなわち、被覆膜5は、導体パッド1Aの露出面、配線パターン1Bの露出面、及び導体パターン1Cの露出面を含む、第一導体層11の露出面の全部に設けられる。なお、本実施形態において被覆膜5は、後述されるように第一導体層11の露出面の一部、及び第一絶縁層21の露出面の一部に設けられてもよい。
【0069】
被覆膜5は、第一導体層11と、後工程で形成される第二絶縁層22(図6K参照)との密着性を向上させる。被覆膜5は、例えば、シランカップリング剤などの、有機材料及び無機材料の両方と結合し得る材料を含む液体への第一導体層11の浸漬や、そのような液体の噴霧(スプレーイング)によって形成される。しかし、被覆膜5の形成方法は任意であり、被覆膜5を構成する材料への浸漬や、そのような材料の噴霧に限定されない。
【0070】
次に、図6Kに示されるように、さらに、第一導体層11を覆う第二絶縁層22が、被覆膜5の上に形成される。第二絶縁層22は、被覆膜5も覆っている。第二絶縁層22の形成では、例えばフィルム状のエポキシ樹脂が、ラミネート加工によって第一導体層11の上に積層され、加熱及び加圧される。その結果、第二絶縁層22が形成される。第二絶縁層22は、フィルム状のエポキシ樹脂に限らず、BT樹脂、又はフェノール樹脂などの任意の樹脂によって形成され得る。
【0071】
さらに、コア基板3の第二面3B側には、絶縁層23(図1参照)が形成される。
【0072】
次に、図6Lに示されるように、第二絶縁層22及び絶縁層23には、後工程で第二絶縁層22に接続導体4を形成するための貫通孔4Aが、例えば炭酸ガスレーザ光の照射などによって形成される。第二絶縁層22における貫通孔4Aは、導体パッド1A上の領域に形成される。貫通孔4Aは導体パッド1Aの表面の一部(表面1A2)に達する。貫通孔4Aによって導体パッド1Aの表面の一部(表面1A2)が露出する。また、絶縁層23にも、後工程で絶縁層23に接続導体4(図1参照)を形成するための貫通孔が形成される。
【0073】
図6Lに示される例では、貫通孔4A内に露出する導体パッド1Aの表面1A2上に形成されていた被覆膜5が、貫通孔4Aの形成によって除去されている。表面1A2上に形成されていた被覆膜5は、例えば、貫通孔4Aの形成時のレーザ光の照射を受けて、溶解及び気化するか、又は昇華する。その結果、表面1A2上に形成されていた被覆膜5が除去され得る。表面1A2から被覆膜5を除去することによって、後工程で導体パッド1A上に形成される接続導体4と導体パッド1Aとを、金属同士で強固に、且つ小さな電気抵抗で接合させることができる。
【0074】
被覆膜5の除去時の被覆膜5の溶解液による導体パッド1Aと第二絶縁層22との界面への浸透が、粗化されている導体パッド1Aの表面1A1の凹凸によって妨げられる。また、導体パッド1Aと第二絶縁層22との界面剥離が防止されるとも考えられる。
【0075】
また、貫通孔4Aの形成時のレーザ光の照射によって、導体パッド1Aの表面1A2の凹凸の凸部の高さが、貫通孔4Aの形成前と比べて低くなっている。例えば、貫通孔4Aの形成時のレーザ光の照射によって、表面1A2の凹凸の凸部が丸められるか、又は溶解している。その結果、表面1A2の面粗度が、貫通孔4Aの形成前と比べて低下している。表面1A2は、導体パッド1Aの表面のうちの、後述する接続導体4に接続される部分である。
【0076】
貫通孔4Aの形成後、好ましくは、貫通孔4Aの形成によって生じた樹脂残渣(スミア)を除去するデスミア処理が行われる。例えばアルカリ性過マンガン酸溶液などの処理液に貫通孔4Aの内壁を晒すことによって貫通孔4A内のスミアが除去される。
【0077】
このデスミア処理のための処理液が導体パッド1Aと第二絶縁層22との界面へ浸入することは、導体パッド1Aの粗化された表面1A1の凹凸によって妨げられる。処理液による表面1A1上の被覆膜5の溶解や、導体パッド1Aと第二絶縁層22との界面剥離などの不具合が防止されると考えられる。
【0078】
貫通孔4Aは、導体パッド1Aの上面に対応する位置に形成される。導体パッド1Aの上面において、貫通孔4Aが形成された表面1A2は、貫通孔4Aが形成されていない表面1A1よりも平滑化され、低い面粗度となる。貫通孔4Aが形成された表面1A2の算術平均粗さ(Ra)は、一例として、0.1μm以上0.3μm以下である。
【0079】
次に、図6Mに示されるように、第二絶縁層22の貫通孔4A及び第二絶縁層22の上面の全面に第二導体層12の金属膜10Bが形成される。
【0080】
次に、図6Nに示されるように、第二絶縁層22の貫通孔4Aに接続導体4を形成する。この接続導体4は、第二絶縁層22を貫通して導体パッド1Aと第二導体層12とを接続する。なお、図6M及び図6Nでは図示を省略しているが、第二絶縁層22の上面には、第二導体層12の形状に対応した開口部を有するレジスト膜が形成される。このレジスト膜は、第二導体層12の形成後に除去される。
【0081】
第二導体層12は、例えば、前述した第一導体層11の形成方法と同様の方法、例えばセミアディティブ法によって形成される。第二導体層12の上面は、第一導体層11の上面、すなわちめっき層膜10Cの上部と同様に研磨されてもよい。第二絶縁層22を貫通する接続導体4は、例えば、前述した第一絶縁層21を貫通する接続導体4の形成方法と同様の方法、例えばセミアディティブ法によって形成される。コア基板3の第二面3B側にさらに形成される導体層13及び接続導体4は、例えばセミアディティブ法によって形成される。
【0082】
次に、第二絶縁層22の露出部分及び第二導体層12の露出部分を覆うように、ソルダーレジスト6(図1参照)が形成される。ソルダーレジスト6には第二導体層12又は導体層13の一部を露出させる開口6Aが設けられる。ソルダーレジスト6及び開口6Aは、例えば感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを含む樹脂層の形成と、適切な開口パターンを有するマスクを用いた露光及び現像と、によって形成される。
【0083】
セミアディティブ法による第二絶縁層22への接続導体4の形成では、貫通孔4A内に例えば無電解めっきによって金属膜10Bが形成され、さらに電解めっきによってめっき膜10Cが形成される。本実施形態の配線基板の製造方法では、金属膜10Bの形成時の導体パッド1Aと第二絶縁層22との界面へのめっき液の浸入が、導体パッド1Aの粗化された表面1A1の凹凸によって妨げられる。表面1A1上の被覆膜5のめっき液による溶解や、溶解に伴う界面剥離などの不具合が防止されると考えられる。
【0084】
以上の工程を経る事によって、図1に示される例の配線基板100が完成する。ソルダーレジスト6の開口6A内に露出する第二導体層12又は導体層13の一部の表面上には、無電解めっき、半田レベラ、又はスプレーコーティングなどによって表面保護膜(図示せず)が形成されてもよい。
【0085】
なお、本開示の各実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、第二絶縁層22の形成(図6K参照)の前に、導体パッド1Aを覆っている被覆膜5を除去することを含んでいてもよい。第二絶縁層22の形成の前に導体パッド1A上の被覆膜5を除去することによって、貫通孔4A(図6L参照)の形成時における被覆膜5の溶解液による導体パッド1Aと第二絶縁層22との界面への浸入を防ぐことができる。
【0086】
被覆膜5の除去に用いるレーザ光としては、炭酸ガスレーザ光、YAGレーザ光などが例示されるが、これらに限定されない。また、導体パッド1A上の被覆膜5を除去する方法はレーザ光の照射に限定されず、例えばプラズマ処理でもよい。なお、導体パッド1A上の被覆膜5が除去される際には、導体パッド1A以外の第一導体層11の導体パターン(配線パターン1B及び導体パターン1C)を覆うレジスト膜が設けられてもよい。
【0087】
本実施形態の配線基板の製造方法によれば、配線パターン1Bの表面1B1は研磨により平坦化され、導体パッド1Aの表面は粗化される。そのため、導体パッド1Aに接する接続導体4の形成用の貫通孔4Aの内壁から導体パッド1Aと第二絶縁層22との界面への各種の液体の浸入が、導体パッド1Aの表面の凹凸によって防がれる。従って、導体パッド1Aと第二絶縁層22との界面剥離が防がれることがある。一方、配線パターン1Bの表面1B1は平坦化されており、良好な高周波伝送特性などを有し得る。配線パターン1Bの表面1B1には、第一導体層11と第二絶縁層22との密着性を向上させる被覆膜5が形成される。従って、配線パターン1Bでは、例えば、良好な高周波伝送特性と共に、第二絶縁層22との間の十分な密着性が得られる。このように本実施形態の配線基板の製造方法によれば、配線パターンに所望される特性及び配線パターンと絶縁層との密着性を確保し、しかも、導体層同士を接続する接続導体と接する導体パッドと絶縁層との剥離などによる配線基板の品質劣化を抑制し得ることがある。
【0088】
本開示の技術の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態の配線基板は任意の積層構造を有し得る。例えば実施形態の配線基板はコア基板を含まないコアレス基板であってもよい。実施形態の配線基板は、任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。第一導体層11は、配線基板の積層構造上の任意の階層に存在し得る。第一導体層11は、電解めっき膜で構成されためっき膜10Cを含まなくてもよく、例えば無電解めっき膜で構成された金属膜10Bだけを含んでいてもよい。また、配線基板に含まれる複数の導体層の全部又は一部の複数の導体層が、第一導体層11に含まれているような導体パッド1A、配線パターン1B、及び導体パターン1Cを含んでいてもよい。また、導体パッド1Aは、第一導体層11の下層の絶縁層(配線基板100における第一絶縁層21)を貫通する接続導体のビアパッドでなくてもよい。
【0089】
本開示の技術の配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。例えば第一導体層11及び第二導体層12はフルアディティブ法によって形成されてもよい。また、第一絶縁層21及び第二絶縁層22は、フィルム状の樹脂に限らず、任意の形態の樹脂を用いて形成され得る。また、第二絶縁層22以外の絶縁層には、接続導体が形成されなくてもよい。実施形態の配線基板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0090】
11 第一導体層
1A 導体パッド
1A1 表面(導体パッドの表面、第二絶縁層に覆われている部分)
1A2 表面(導体パッドの表面、接続導体が接触している部分)
1B 配線パターン
1B1 表面(配線パターンの上面)
1C 導体パターン
3 コア基板
3A 第一面
3B 第二面
4 接続導体
4A 貫通孔
5 被覆膜
6 ソルダーレジスト
6A 開口
10B 金属膜
10C めっき膜
12 第二導体層
13 導体層
21 第一絶縁層
21A 表面
22 第二絶縁層
23 絶縁層
31 導体層
31A 金属箔
31B 金属膜
31C めっき膜
32 絶縁層
32A 芯材
33 接続導体
100 配線基板
200 配線基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図6K
図6L
図6M
図6N
図7