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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180979
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20231214BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C23C16/44 B
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094691
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】大丸 智弘
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA04
2G084AA05
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD04
2G084DD12
2G084DD37
2G084FF31
4K030FA01
4K030GA14
(57)【要約】
【課題】被処理基材に対する熱影響を抑止しつつ、製造品質を向上させることができるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置は、被処理基材を周面の一部に接触させた状態で当該被処理基材を搬送可能に設けられたメインロール6を有するガイド部と、ガイド部を冷却するための冷却機構(9)と、ガイド部と冷却機構(9)との間に設けられた伝熱部(10)と、を備えている。伝熱部(10)は、被処理基材と接触していないメインロール(6)の周面(6A)の部分に当接可能に構成されている。伝熱部(10)は、回転自在に設けられた回転伝熱体(10A)を有する。冷却機構(9)は、回転伝熱体(10A)を介してガイド部のメインロール(6)を冷却する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室を備え、前記処理室に連続して供給される被処理基材に対し、プラズマを用いた所定のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、
前記処理室に連続して供給される前記被処理基材をガイドするガイド部と、
前記ガイド部にガイドされた前記被処理基材に対し、前記プラズマ処理を行うプラズマ処理部と、
前記ガイド部を冷却するための冷却機構と、
前記ガイド部と前記冷却機構との間に設けられた伝熱部と、を備え、
前記ガイド部は、前記処理室に回転可能に軸支されるとともに、前記被処理基材を周面の一部に接触させた状態で当該被処理基材を搬送可能に設けられたメインロールを有し、
前記伝熱部は、前記被処理基材と接触していない前記メインロールの周面の部分に当接可能に構成され、
前記伝熱部は、回転自在に設けられた回転伝熱体を有し、
前記冷却機構は、前記回転伝熱体を介して前記ガイド部の前記メインロールを冷却する、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記冷却機構は、冷却媒体を収容した筐体と、前記冷却媒体を冷却する冷却部と、を備え、
前記筐体は、前記回転伝熱体を回転自在に支持するとともに、前記冷却媒体の熱を当該回転伝熱体に伝えるベアリング部を備えている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
複数の前記回転伝熱体が、前記メインロールの周方向に沿って設けられている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
複数の前記回転伝熱体が、前記メインロールの軸方向に沿って設けられている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
複数の前記回転伝熱体が、前記メインロールの周方向及び軸方向に沿って各々設けられるとともに、
前記メインロールの前記周方向に沿って設けられた2つの前記伝熱部では、一方の前記伝熱部の前記回転伝熱体の前記軸方向の一端部と、他方の前記伝熱部の前記回転伝熱体の前記軸方向の他端部とが、前記メインロールの回転方向で互いに重なりあっている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記回転伝熱体の表面は、弾性変形が可能な伝熱被覆材により、覆われている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記プラズマ処理部は、誘導結合性のプラズマを発生させるためのアンテナを備えている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
制御部と、
前記メインロールの表面の温度を検出する温度センサーと、を備え、
前記制御部は、前記温度センサーの検出結果を基に、前記冷却機構を制御する、請求項1から7のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
処理室に連続して供給される長尺樹脂フィルム(被処理基材)に対してプラズマ処理を行うために、巻出ロール及び巻取ロールを使用してフィルムを搬送しつつ、回転ロールの周面で支持された搬送中のフィルムに対して、プラズマ処理を実施するプラズマ処理装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-118607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来のプラズマ処理装置では、被処理基材に対する熱影響を抑止することができずに、被処理基材の製造品質を向上させることが困難であるという問題点を生じることがあった。
【0005】
具体的にいえば、従来のプラズマ処理装置では、例えば、プラズマ処理を行う処理室の内部に、回転ロールに対向して配置された冷却パネルを有する冷却ボックスを設けるとともに、回転ロールと冷却パネルとの間の空間に所定の冷却ガスを導入する冷却機構を設置していた。そして、従来のプラズマ処理装置では、冷却ガスによって回転ロールを冷却することにより、被処理基材に対する熱影響を抑止可能としていた。
【0006】
しかしながら、従来のプラズマ処理装置では、被処理基材の材質、冷却ガスの種類等によっては、冷却ガスが被処理基材内に混入することがあった。このため、従来のプラズマ処理装置では、そのプラズマ処理での処理精度が低下することがあり、被処理基材の製造品質を向上させることが難しいことがあった。
【0007】
本開示は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、被処理基材に対する熱影響を抑止しつつ、製造品質を向上させることができるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の一側面に係るプラズマ処理装置は、処理室を備え、前記処理室に連続して供給される被処理基材に対し、プラズマを用いた所定のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、前記処理室の内部に、前記処理室に連続して供給される前記被処理基材をガイドするガイド部と、前記ガイド部にガイドされた前記被処理基材に対し、前記プラズマ処理を行うプラズマ処理部と、前記ガイド部を冷却するための冷却機構と、前記ガイド部と前記冷却機構との間に設けられた伝熱部と、を備え、前記ガイド部は、前記処理室に回転可能に軸支されるとともに、前記被処理基材を周面の一部に接触させた状態で当該被処理基材を搬送可能に設けられたメインロールを有し、前記伝熱部は、前記被処理基材と接触していない前記メインロールの周面の部分に当接可能に構成され、前記伝熱部は、回転自在に設けられた回転伝熱体を有し、前記冷却機構は、前記回転伝熱体を介して前記ガイド部の前記メインロールを冷却する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、被処理基材に対する熱影響を抑止しつつ、製造品質を向上させることができるプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態1に係るプラズマ処理装置の構成を説明する図である。
図2図1に示した冷却機構及び伝熱部の要部構成を説明する図である。
図3】上記冷却機構及び伝熱部の具体的な構成例を説明する図である。
図4】本開示の実施形態2に係るプラズマ処理装置の要部構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本開示の実施形態1について、図1から図3を用いて詳細に説明する。図1は、本開示の実施形態1に係るプラズマ処理装置1の構成を説明する図である。図2は、図1に示した冷却機構9及び伝熱部10の要部構成を説明する図である。図3は、上記冷却機構9及び伝熱部10の具体的な構成例を説明する図である。
【0012】
なお、以下の説明では、所定のプラズマ処理として、誘導結合性のプラズマを使用したプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相堆積)法によって被処理基材H1の表面に所定の皮膜を成膜する成膜処理を行うプラズマ装置を例示して説明する。
【0013】
しかしながら、本開示は、所定のプラズマ処理として、例えば、スパッタ法によって被処理基材H1に所定の皮膜を成膜する成膜処理を行うプラズマ処理装置1に適用することができる。また、本開示は、所定のプラズマ処理として、プラズマを用いて、被処理基材H1の表面に対して、所定の加工を行う表面加工処理、例えば、エッチング処理あるいはアッシング処理を行うプラズマ処理装置1に適用することができる。尚、スパッタ法を行うプラズマ処理装置1においては、ターゲットは、例えば、後述するプラズマ生成領域の内部に設置される。
【0014】
<プラズマ処理装置1>
図1に示すように、本実施形態1のプラズマ処理装置1は、被処理基材H1に対して所定のプラズマ処理を行う処理室2を備えている。プラズマ処理装置1では、長尺の被処理基材H1に対して連続的にプラズマ処理を行うようになっており、被処理基材H1は処理室2の内部に形成されたプラズマ生成領域PAに順次搬送される。そして、プラズマ処理装置1では、被処理基材H1に対するプラズマ処理がプラズマ生成領域PAで行われるように構成されている。なお、ここでいう長尺の被処理基材H1とは、処理室2に連続して供給される、フレキシブルな可撓性を有するフィルムの一例である。
【0015】
具体的にいえば、プラズマ処理装置1は、支持体3Aに巻回されたプラズマ処理前の被処理基材H1を外部から搬入するための第1のロードロック室3を備えている。また、プラズマ処理装置1は、支持体4Aに巻回されたプラズマ処理後の被処理基材H1を外部に搬出するための第2のロードロック室4を備えている。これら第1のロードロック室3及び第2のロードロック室4は、処理室2に対して気密に接続されている。また、これらの処理室2、第1のロードロック室3、及び第2のロードロック室4のそれぞれは、所定の真空環境下とされた真空チャンバーである。
【0016】
尚、支持体3A及び支持体4Aの少なくとも一方には、図示しない駆動機構が接続されている。そして、プラズマ処理装置1では、上記駆動機構が対応する支持体3Aまたは支持体4Aを回転させることにより、被処理基材H1は、第1のロードロック室3、処理室2、及び第2のロードロック室4に順番に移送される。
【0017】
また、処理室2の内部には、第1の内部ロール5、メインロール6、及び第2の内部ロール7が当該処理室2に回転可能に設けられている。これらの第1の内部ロール5、メインロール6、及び第2の内部ロール7は、処理室2に連続して供給される被処理基材H1をガイドするガイド部として機能する。
【0018】
具体的には、第1の内部ロール5は、第1のロードロック室3からの被処理基材H1をメインロール6に送出する。メインロール6は、図1にRにて示す方向に回転するように構成されており、被処理基材H1を周面の一部に接触させた状態で当該被処理基材H1を搬送可能に設けられている。また、メインロール6は、搬送中の被処理基材H1がプラズマ生成領域PAの内部を通過するように構成されている。更に、メインロール6の近傍には、図示しない温度センサーが設けられており、メインロール6の表面の温度が検出されるようになっている。なお、温度センサーは、メインロール6の表面と接触する接触型または当該表面と接触しない非接触型を適用し得る。
【0019】
また、メインロール6は、後述の冷却機構9によって、所定温度(例えば、100℃)以下に冷却されるように構成されている。そして、プラズマ処理装置1は、メインロール6を冷却することにより、被処理基材H1に対する熱影響(熱負荷)を抑止して、プラズマ処理を実施し得る。また、メインロール6には、例えば、銅合金などの熱伝導性に優れた金属材料が用いられており、冷却機構9からの例えば、所定温度(例えば、-100℃)以下に冷却された後述の冷却媒体が有する熱である冷熱を効率よく被処理基材H1に伝達して、当該被処理基材H1を効率よく冷却することができるようになっている。
【0020】
第2の内部ロール7は、メインロール6から被処理基材H1を第2のロードロック室4に搬出する。そして、プラズマ処理装置1では、図1に示すように、被処理基材H1が支持体3Aから、第1の内部ロール5、及びメインロール6の各外周面上を順次搬送される。すなわち、プラズマ処理装置1では、被処理基材H1が処理室2に連続して供給されてプラズマ処理が行われる。
【0021】
また、プラズマ処理装置1では、メインロール6の周面の一部分は、図1に示すように、処理室2に設けられたプラズマ処理部8との間に形成される、プラズマ生成領域PAの内部に位置するように設けられている。そして、プラズマ処理装置1では、メインロール6によってプラズマ生成領域PAに運ばれた、メインロール6上の被処理基材H1の部分に対して、プラズマ処理部8による、所定のプラズマ処理が行われて、当該部分の表面上に所定物(皮膜)が成膜される。
【0022】
また、プラズマ処理装置1では、図1に示すように、所定の皮膜が成膜された被処理基材H1がメインロール6から第2の内部ロール7を介して第2のロードロック室4に搬送されて、支持体4Aに巻回される。
【0023】
被処理基材H1は、例えば、液晶パネルディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)パネルディスプレイなどに用いられる各種フィルムや、合成樹脂基板(フレキシブル基板)であり得る。プラズマ処理装置1は、上記所定のプラズマ処理によって上記所定の皮膜としてバリア(防湿)膜などを被処理基材H1上に成膜する。また、支持体4Aに巻回された被処理基材H1は、用途などに応じて、所望のサイズに適宜カットされて使用される。
【0024】
また、プラズマ処理装置1は、プラズマ処理装置1の各部を制御する制御部(図示せず)を備えている。この制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う機能ブロックである。
【0025】
また、プラズマ処理装置1は、上記ガイド部を冷却するための冷却機構9と、上記ガイド部と冷却機構9との間に設けられた伝熱部10と、を備えている。プラズマ処理装置1では、制御部が温度センサーの検出結果を基に冷却機構9を制御することにより、メインロール6及び被処理基材H1が十分に冷却された状態で、当該被処理基材H1に対するプラズマ処理が実施されるように構成されている。
【0026】
<処理室2>
処理室2は、接地された真空容器を用いて構成されており、当該真空容器の内部が所定の真空度に保たれた状態で、プラズマ処理部8に対する上記制御部の制御によって、所定のプラズマ処理が被処理基材H1に施されるようになっている。
【0027】
また、処理室2には、上記所定のプラズマ処理に対応した、上記皮膜の成膜用ガスを含んだ処理ガスを処理室2の内部に導入する処理ガス供給部が設けられており(図示せず)、処理ガスの雰囲気化で当該プラズマ処理が行われるようになっている。処理ガスは、例えば、アルゴン、水素、窒素、シラン、または酸素である。また、上記処理ガス供給部のガス供給口は、プラズマ生成領域PAに対応して、処理室2の壁面に設けられている(図示せず)。また、処理ガスを外部に排気する不図示の排気口が適宜設けられている。
【0028】
<プラズマ処理部8>
プラズマ処理部8は、誘導結合性のプラズマを処理室2の内部に発生させるためのアンテナ8aを備えている。具体的には、アンテナ8aは直線状のアンテナであり、メインロール6と同軸となるように設けられている。つまり、本実施形態1のプラズマ処理装置1は、アンテナ8aに高周波電流を流してアンテナ8aの近傍に高周波誘導電界を発生させ、誘導結合性のプラズマを生成させる。そして、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、メインロール6とプラズマ処理部8との間にプラズマ生成領域PAを形成する。
【0029】
なお、上記の説明以外に、例えば、プラズマ処理部8において、上記プラズマに含まれた荷電粒子を制御する制御電極としての内部電極を設ける構成でもよい。このように内部電極を設けた場合では、上記荷電粒子の極性に応じて、選択的に運動エネルギーを荷電粒子に与えたり、被処理基材H1への荷電粒子の到達量を低減させたりすることができ、高精度なプラズマ処理を容易に行うことができる。
【0030】
<冷却機構9>
冷却機構9は、冷却媒体9Cを収容した筐体9Aと、冷却媒体9Cを冷却する冷却部9Bと、を備えている。冷却機構9は、例えば、冷却部9Bにコンプレッサー(圧縮機)を用いたコンプレッサー型である。筐体9Aには、後述するように、伝熱部10の回転伝熱体10Aが連結されており、冷却媒体9Cから上記冷熱を回転伝熱体10Aに伝達するようになっている。冷却媒体9Cは、例えば、冷却水などの液状媒体、またはアルゴンガス、ヘリウムガス、水素ガス、あるいは酸素ガスなどの冷却ガスである。
【0031】
<伝熱部10>
本実施形態1のプラズマ処理装置1は、複数、例えば、3つの伝熱部10を備えている。各伝熱部10は、被処理基材H1と接触していないメインロール6の周面の部分に当接可能に構成されている。また、各伝熱部10は、回転自在に設けられた回転伝熱体10Aを有している。図2に例示するように、3つの回転伝熱体10Aが、メインロール6の周方向に沿って設けられている。回転伝熱体10Aは、冷却機構9の筐体9Aに回転自在に設けられている。
【0032】
具体的にいえば、図3に示すように、回転伝熱体10Aの端部には、回転軸10Bが一体的に設けられている。この回転軸10Bは、冷却機構9の筐体9Aに設けられたベアリング部9ABを介して筐体9Aに取り付けられており、回転伝熱体10Aは、ベアリング部9ABを介して筐体9Aに回転自在に設けられている。
【0033】
また、筐体9A、ベアリング部9AB、回転軸10Bを含んだ回転伝熱体10Aは、例えば、銅合金などの熱伝導性に優れた金属材料を用いて構成されており、上記冷熱が冷却媒体9Cから筐体9A、ベアリング部9AB、回転軸10B、及び回転伝熱体10Aに順次伝達されるようになっている。そして、回転伝熱体10Aでは、冷却機構9によって冷却される。
【0034】
また、回転伝熱体10Aでは、その表面が伝熱被覆材11により、覆われている。具体的には、伝熱被覆材11は、例えば、カーボンシート等の弾性変形が可能であって熱伝導性に優れた材料を用いて構成されている。伝熱被覆材11は、メインロール6の周面と接触したときに、当該周面によって弾性変形するとともに、回転伝熱体10Aからメインロール6側に冷却機構9からの上記冷熱を確実に伝達するようになっている。これにより、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、メインロール6が、例えば、軸方向の長さ寸法(つまり、被処理基材H1の幅寸法)が1m程度に構成されている場合でも、その両端部の回転軸10Bから上記冷熱を伝達することにより、メインロール6及び当該メインロール6で搬送中の被処理基材H1を十分に冷却することができる。
【0035】
以上のように構成された本実施形態1のプラズマ処理装置1は、伝熱部10が被処理基材H1をガイドする上記ガイド部と当該ガイド部を冷却するための冷却機構9との間に設けられている。上記ガイド部は、被処理基材H1を周面の一部に接触させた状態で当該被処理基材H1を搬送可能に設けられたメインロール6を有する。伝熱部10は、被処理基材H1と接触していないメインロール6の周面の部分に当接可能に構成されている。また、伝熱部10は、回転自在に設けられた回転伝熱体10Aを有する。冷却機構9は、回転伝熱体10Aを介して上記ガイド部のメインロール6を冷却する。
【0036】
以上のように構成された本実施形態1のプラズマ処理装置1では、被処理基材H1に対して、プラズマ処理を行う場合でも、当該被処理基材H1に対する熱影響を抑止することができる。また、冷却機構9が、回転伝熱体10Aを介してメインロール6を冷却することにより、被処理基材H1に対する熱影響を抑止することができることから、上記従来例と異なり、冷却ガスなどの冷却媒体9Cが当該被処理基材H1内に混入することがない。この結果、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、被処理基材H1の製造品質を向上させることができる。
【0037】
具体的にいえば、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、被処理基材H1において、熱影響を抑止した状態で、プラズマ処理を実施することができることから、熱影響による皺などの問題点の発生を確実に抑えることができる。この結果、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、被処理基材H1の製造品質を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態1のプラズマ処理装置1は、伝熱部10を介在させてメインロール6及び被処理基材H1を冷却機構9によって冷却している。従って、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、メインロール内部に冷却媒体を流すことによって冷却を実施していた従来例と異なり、被処理基材H1の幅寸法などを大きく変更した場合でも、この変更に対応して、メインロール6及び被処理基材H1に対する冷却能力を容易に高めることができる。
【0039】
また、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、温度センサーの検出結果を基に、制御部が冷却機構9を制御するので、メインロール6及び被処理基材H1をより適切に冷却することができる。この結果、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、被処理基材H1に対する熱影響をより抑止しつつ、被処理基材H1の製造品質を容易に向上できる。
【0040】
また、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、ベアリング部9ABを介して回転伝熱体10Aを冷却するので、ベアリング部9ABは熱伝導構造と回転伝熱体10Aの支持構造とを兼用することができる。これにより、本実施形態1では、コンパクトでコストが安価なプラズマ処理装置1を容易に構成することができる。また、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、冷却媒体9Cは筐体9Aに収容されているので、被処理基材H1に冷却媒体9Cが直接的に触れることを確実に抑制することができ、被処理基材H1の製造品質を容易に向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、3つの回転伝熱体10Aが、メインロール6の周方向に沿って設けられているので、冷却機構9は、メインロール6を確実に冷却することができる。これにより、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、被処理基材H1に対する熱影響を確実に抑止することができる。
【0042】
また、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、回転伝熱体10Aの表面は弾性変形が可能な伝熱被覆材11により覆われている。これにより、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、伝熱被覆材11により、メインロール6の周面に対する回転伝熱体10Aの密着性を確実に向上させることができる。この結果、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、冷却機構9による回転伝熱体10Aを介したメインロール6及び被処理基材の冷却を効率よく行うことができる。
【0043】
〔実施形態2〕
本開示の実施形態2について、図4を用いて具体的に説明する。図4は、本開示の実施形態2に係るプラズマ処理装置1の要部構成を説明する図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0044】
本実施形態2と上記実施形態1との主な相違点は、メインロール6の周方向及び軸方向に沿って各々複数の回転伝熱体を設けた点である。
【0045】
本実施形態2のプラズマ処理装置1では、図4に示すように、冷却機構19は、メインロール6の軸方向(図4にJにて示す方向)に沿って配置された複数、例えば、4つの冷却機構19A、19B、19C、及び19Dを備えている。また、複数、例えば、3つの伝熱部21、22、及び23がメインロール6の周方向(図4にRにて示す方向)に沿って設けられている。
【0046】
伝熱部21は、メインロール6の軸方向に沿って設けられた回転伝熱体21A、21B、21C、及び21Dを備えている。同様に、伝熱部22は、メインロール6の軸方向に沿って設けられた回転伝熱体22A、22B、22C、及び22Dを備えている。同様に、伝熱部23は、メインロール6の軸方向に沿って設けられた回転伝熱体23A、23B、23C、及び23Dを備えている。
【0047】
回転伝熱体21A、22A、及び23Aは、冷却機構19Aによって冷却され、回転伝熱体21B、22B、及び23Bは、冷却機構19Bによって冷却される。また、回転伝熱体21C、22C、及び23CAは、冷却機構19Cによって冷却され、回転伝熱体21D、22D、及び23Dは、冷却機構19Dによって冷却される。
【0048】
また、メインロール6の周方向に沿って設けられた、例えば、2つの伝熱部21及び23では、一方の伝熱部の回転伝熱体の軸方向の一端部と、他方の伝熱部の回転伝熱体の軸方向の他端部とが、メインロール6の回転方向(つまり、上記周方向)で互いに重なりあっている。具体的にいえば、2つの伝熱部21及び23では、例えば、一方の伝熱部23の回転伝熱体23Aの軸方向の一端部と、他方の伝熱部21の回転伝熱体21Bの軸方向の他端部とが、メインロール6の回転方向で互いに重なりあっている。
【0049】
以上の構成により、本実施形態2のプラズマ処理装置1では、上記実施形態1のものと同様な効果を奏する。また、本実施形態2のプラズマ処理装置1では、例えば、回転伝熱体23Aの軸方向の一端部と、回転伝熱体21Bの軸方向の他端部とが、メインロール6の回転方向で互いに重なりあっている。これにより、本実施形態2のプラズマ処理装置1では、冷却機構19は、軸方向において、均一な冷却をより確実に行うことができ、製造品質が向上された被処理基材H1を容易に製造することができる。
【0050】
なお、上記の説明以外に、メインロール6の軸方向のみに沿って複数の回転伝熱体10Aを設ける構成でもよい。このように構成した場合では、メインロール6の軸方向の寸法が大きい場合でも、冷却機構9は軸方向に分割して設けられた複数の回転伝熱体10Aを介してメインロール6を冷却することができる。この結果、上記軸方向において、メインロール6を均一に冷却することができ、被処理基材H1の製造品質をより容易に向上させることができる点で好ましい。
【0051】
〔まとめ〕
上記の課題を解決するために、本開示の一側面に係るプラズマ処理装置は、処理室を備え、前記処理室に連続して供給される被処理基材に対し、プラズマを用いた所定のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、前記処理室に連続して供給される前記被処理基材をガイドするガイド部と、前記ガイド部にガイドされた前記被処理基材に対し、前記プラズマ処理を行うプラズマ処理部と、前記ガイド部を冷却するための冷却機構と、前記ガイド部と前記冷却機構との間に設けられた伝熱部と、を備え、前記ガイド部は、前記処理室に回転可能に軸支されるとともに、前記被処理基材を周面の一部に接触させた状態で当該被処理基材を搬送可能に設けられたメインロールを有し、前記伝熱部は、前記被処理基材と接触していない前記メインロールの周面の部分に当接可能に構成され、前記伝熱部は、回転自在に設けられた回転伝熱体を有し、前記冷却機構は、前記回転伝熱体を介して前記ガイド部の前記メインロールを冷却する。
【0052】
上記構成によれば、被処理基材に対して、プラズマ処理を行う場合でも、当該被処理基材に対する熱影響を抑止することができる。また、冷却機構が、回転伝熱体を介してガイド部のメインロールを冷却することにより、被処理基材に対する熱影響を抑止することができることから、上記従来例と異なり、冷却ガスなどの冷却媒体が当該被処理基材内に混入することがない。この結果、被処理基材の製造品質を向上させることができる。
【0053】
上記一側面に係るプラズマ処理装置において、前記冷却機構は、冷却媒体を収容した筐体と、前記冷却媒体を冷却する冷却部と、を備え、前記筐体は、前記回転伝熱体を回転自在に支持するとともに、前記冷却媒体の熱を当該回転伝熱体に伝えるベアリング部を備えてもよい。
【0054】
上記構成によれば、ベアリング部は、熱伝導構造と回転伝熱体の支持構造とを兼用することができる。これにより、コンパクトでコストが安価なプラズマ処理装置を容易に構成することができる。また、冷却媒体は筐体に収容されているので、被処理基材に冷却媒体が直接的に触れることを確実に抑制することができ、被処理基材の製造品質を容易に向上させることができる。
【0055】
上記一側面に係るプラズマ処理装置において、複数の前記回転伝熱体が、前記メインロールの周方向に沿って設けられてもよい。
【0056】
上記構成によれば、冷却機構は、ガイド部のメインロールを確実に冷却することができ、被処理基材に対する熱影響を確実に抑止することができる。
【0057】
上記一側面に係るプラズマ処理装置において、複数の前記回転伝熱体が、前記メインロールの軸方向に沿って設けられてもよい。
【0058】
上記構成によれば、冷却機構は、軸方向に分割して設けられた複数の回転伝熱体を介してメインロールを冷却することとなり、軸方向において、均一に冷却することができる。これにより、被処理基材の製造品質をより容易に向上させることができる。
【0059】
上記一側面に係るプラズマ処理装置において、複数の前記回転伝熱体が、前記メインロールの周方向及び軸方向に沿って各々設けられるとともに、前記メインロールの前記周方向に沿って設けられた2つの前記伝熱部では、一方の前記伝熱部の前記回転伝熱体の前記軸方向の一端部と、他方の前記伝熱部の前記回転伝熱体の前記軸方向の他端部とが、前記メインロールの回転方向で互いに重なりあってもよい。
【0060】
上記構成によれば、冷却機構は、軸方向において、均一な冷却をより確実に行うことができ、製造品質が向上された被処理基材を容易に製造することができる。
【0061】
上記一側面に係るプラズマ処理装置において、前記回転伝熱体の表面は、弾性変形が可能な伝熱被覆材により、覆われてもよい。
【0062】
上記構成によれば、伝熱被覆材により、メインロールの周面に対する回転伝熱体の密着性を確実に向上させることができる。これにより、冷却機構による回転伝熱体を介したメインロール及び被処理基材の冷却を効率よく行うことができる。
【0063】
上記一側面に係るプラズマ処理装置において、前記プラズマ処理部は、誘導結合性のプラズマを発生させるためのアンテナを備えてもよい。
【0064】
上記構成によれば、プラズマ処理部は、アンテナからのプラズマを用いて、被処理基材に対し、所定のプラズマ処理を行うことができる。
【0065】
上記一側面に係るプラズマ処理装置において、制御部と、前記メインロールの表面の温度を検出する温度センサーと、を備え、前記制御部は、前記温度センサーの検出結果を基に、前記冷却機構を制御してもよい。
【0066】
上記構成によれば、制御部は、冷却機構により、メインロール及び被処理基材をより適切に冷却することができる。この結果、被処理基材に対する熱影響をより抑止しつつ、被処理基材の製造品質を容易に向上できる。
【0067】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 プラズマ処理装置
2 処理室
5 第1の内部ロール(ガイド部)
6 メインロール(ガイド部)
7 第2の内部ロール(ガイド部)
8 プラズマ処理部
8a アンテナ
9、19、19A~19D 冷却機構
9A 筐体
9B 冷却部
9C 冷却媒体
9AB ベアリング部
10、21、22、23 伝熱部
10A、21A~21D、22A~22D、23A~23D 回転伝熱体
11 伝熱被覆材
H1 被処理基材(フィルム)
図1
図2
図3
図4