(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181027
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】取付け金具および取付け方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/00 20060101AFI20231214BHJP
E04B 7/02 20060101ALI20231214BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
E04B1/00 502
E04B1/00 501A
E04B7/02 501D
E04F13/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094767
(22)【出願日】2022-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】522234541
【氏名又は名称】有限会社 翼
(74)【代理人】
【識別番号】100208454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 章夫
(72)【発明者】
【氏名】松谷敏男
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA48
2E110AA60
2E110CA04
2E110CA07
2E110CC04
2E110CC20
2E110CC24
2E110DC12
2E110GA33W
2E110GB01W
2E110GB01Z
2E110GB26W
2E110GB42W
2E110GB62W
(57)【要約】
【課題】サイディングボードが貼り付けられた建築物の外壁に、荷重物を取り付ける場合に、サイディングボードに外力が加わらない取付け金具、および取付け方法を提供する。
【解決手段】サイディングボードの厚さより大きい長さを有し、長さ方向の軸が互いに平行である複数個の柱状スペーサ12,14と、複数個の柱状スペーサ12,14の一端を固定して、長さ方向軸の間の間隔を設定するベースプレート16と、から構成され、柱状スペーサ12,14とベースプレート16とを、長さ方向軸に沿って貫通する貫通孔121,141が設けられている取付け金具10を用いることにより、荷重物20を取り付けるとき、および取り付けられたあとに、建築物の外壁に働く力を、取付け金具10で支持し、サイディングボードには加わらないようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイディングボードを貼り付けた建築物の外壁に、荷重物を取り付けるための取付け金具であって、
前記サイディングボードの厚さより大きい長さを有し、前記長さ方向の軸が互いに平行である、複数個の柱状スペーサと、
前記複数個の柱状スペーサの一端を固定して、前記長さ方向軸の間の間隔を設定するベースプレートと、から構成され、
前記柱状スペーサのそれぞれと前記ベースプレートとを、前記長さ方向軸に沿って貫通する貫通孔が設けられている取付け金具。
【請求項2】
前記柱状スペーサは、円筒形のスペーサであって、
前記貫通孔は、前記柱状スペーサの長さ方向軸である前記円筒の中心軸に沿って、前記柱状スペーサおよび前記ベースプレートを貫通する貫通孔である、請求項1に記載する取付け金具。
【請求項3】
サイディングボードの厚さより大きい長さを有する複数個の柱状スペーサと、前記複数個の柱状スペーサの配置を決めるベースプレートと、から構成され、前記柱状スペーサと前記ベースプレートとを貫通する複数個の貫通孔が設けられている取付け金具を用いて、サイディングボードが貼り付けられた建築物の外壁に荷重物を取り付ける取付け方法であって、
前記柱状スペーサの外径より大きな径を有し、前記サイディングボードの厚さ方向に貫通する複数個の穴を、前記サイディングボードに形成する第1の工程、
サイディングボードの前記複数個の穴の周囲に、防水封止材を塗布する第2の工程、
サイディングボードの前記複数個の穴に、前記柱状スペーサを挿入し、柱状スペーサの端部を建築物の骨格材に突き当てる第3の工程、
荷重物の一部である荷重物支持部分の開口、および、前記取付け金具の貫通孔を通して、前記荷重物および前記取付け金具を、建築物の骨格材に固定する第4の工程、
からなる取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイディングボードが貼り付けられた建築物の外壁に荷重物を取付ける、取付け金具および取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サイディングボードが貼り付けられた建築物の外壁に、物干し竿、日除けシート、屋外装飾物などの荷重物を取り付ける場合がある。これらの荷重物は、通常、ボルト等を通す開口が設けられた支持部分を有する支持金具を用いて、建築物の外壁に取り付けられる(例えば、非特許文献1)。
【0003】
しかし、サイディングボードが貼り付けられた建築物の外壁に、このような荷重物を取り付けようとすると、例えばボルト等を締め付けるときにサイディングボードに加わる力によって、サイディングボードにひび割れ等の破損が発生するという課題があった。また、荷重物を取り付けた後にも、荷重物からサイディングボードに加わる力によって、サイディングボードにひび割れ等の破損が発生するという課題があった。
【0004】
サイディングボードを貼り付ける前に、建築物の外壁に荷重物を取り付ける方法が知られている(例えば、特許文献1)。しかし、サイディングボードが貼り付けられている建築物の外壁に、後付けによって、荷重物を取り付けようとすると、サイディングボードを取り外したり、サイディングボードを大きく切断したりする必要があり、作業の工期やコストが増加するという課題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“窓壁用ホスクリーン”(令和4年6月3日検索)<https://www.kawaguchigiken.co.jp/products/monohoshi/window>
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、サイディングボードが貼り付けられた建築物の外壁に荷重物を取り付けるとき、および取り付けられたあとに、サイディングボードに外力が加わらないようにすることが可能であり、また、サイディングボードが貼り付けられた外壁に簡単な作業で取り付けることが可能な、取付け金具、および取付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的の達成のために、本発明に係る取付け金具は、サイディングボードの厚さより大きい長さを有し、長さ方向の軸が互いに平行である、複数個の柱状スペーサと、複数個の柱状スペーサの一端を固定して、長さ方向軸の間の間隔を設定するベースプレートと、から構成され、柱状スペーサのそれぞれとベースプレートとを、長さ方向軸に沿って貫通する貫通孔が設けられている。
【0009】
また、上記取付け金具を用いて、本発明に係る取付け方法は、柱状スペーサの外径より大きな径を有し、サイディングボードの厚さ方向に貫通する複数個の穴を、サイディングボードに形成する第1の工程、サイディングボードの複数個の穴の周囲に、防水封止材を塗布する第2の工程、サイディングボードの複数個の穴に、上記取付け金具の柱状スペーサを挿入し、柱状スペーサの端部を建築物の骨格材に突き当てる第3の工程、荷重物の一部である荷重物支持部分の開口、および上記取付け金具の貫通孔を通して、荷重物および取付け金具を、建築物の骨格材に固定する第4の工程を、この順に実施する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の取付け金具によって、サイディングボードが貼り付けられた建築物の外壁に荷重物を取付けるとき、および取り付けられた後に、サイディングボードにひび割れ等の破損が発生するのを防ぐことができる。
【0011】
本発明の取付け方法によって、サイディングボードを取り外したり切断したりすることなく、サイディングボードが貼り付けられた建築物の外壁に、後付けで、荷重物を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る取付け金具10の構成例を示す(A)斜視図、(B),(C)側面図である。
【
図2】実施形態に係る取付け金具10を含む部材の配置を説明する斜視図である。
【
図3】実施形態に係る取付け金具10を用いて、建築物の外壁に荷重物20を取り付けた状態を示す断面図である。
【
図4】実施形態に係る取付け金具10を用いて、建築物の外壁に荷重物20を取り付ける工程を示すフロー図である。
【
図5】取付け金具10の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施形態に係る取付け金具10の構成例を示す。
図1(A)は、実施形態に係る取付け金具10の斜視図を示す。
図1(B)は、+X方向から見た、取付け金具10の側面図を示す。
図1(C)は、+Y方向から見た、取付け金具10の側面図を示す。
図1(A)、(B)、および(C)に示す取付け金具10の同一部分には、同一の符号を付している。
【0014】
取付け金具10は、第1の柱状スペーサ12、第2の柱状スペーサ14、およびベースプレート16の3つの部分から構成されている。取付け金具10は、第1の柱状スペーサ12、第2の柱状スペーサ14、およびベースプレート16が、例えばステンレス材などからなる、金属製の金具である。
【0015】
第1の柱状スペーサ12は、長さ方向軸L1方向に延伸した、柱状の部分に相当する。第2の柱状スペーサ14は、長さ方向軸L2方向に延伸した、柱状の部分に相当する。ベースプレート16は、長さ方向軸L1および長さ方向軸L2と直交する面を有し、第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14の延伸方向の一端がその表面に接合された、板状の部分である。ベースプレート16は、第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14の一端を固定することによって、第1の柱状スペーサ12の長さ方向軸L1と第2の柱状スペーサ14の長さ方向軸L2とを互いに略平行に設定している。
【0016】
図1(A)に示すように、第1の柱状スペーサ12は、長さ方向軸L1方向の一端122において、ベースプレート16に接合されている。第2の柱状スペーサ14は、長さ方向軸L2方向の一端142で、ベースプレート16に接合されている。これらによって、ベースプレート16は、第1の柱状スペーサ12と第2の柱状スペーサ14との間隔を設定する。
【0017】
第1の柱状スペーサ12とベースプレート16とは、溶接により接合してよい。第2の柱状スペーサ14とベースプレート16とは、溶接により接合してよい。また、第1の柱状スペーサ12の一端122、および第2の柱状スペーサ14の一端142を、ベースプレート16に設けたねじ穴にねじ込んで接合してもよい。あるいは、第1の柱状スペーサ12の一端122、および第2の柱状スペーサ14の一端142を、ベースプレート16に設けた穴に嵌め込むことによって接合してもよい。
【0018】
図1(B)に示すように、第1の柱状スペーサ12は、長さ方向軸L1方向の一端122の反対側に他端123を有し、一端122と他端123との間の距離が、第1の柱状スペーサ12の長さ方向軸L1方向の長さに相当する。第2の柱状スペーサ14は、長さ方向軸L2の一端142の反対側に他端143を有し、一端142と他端143との間の距離が、第2の柱状スペーサ14の長さ方向軸L2方向の長さに相当する。
【0019】
第1の柱状スペーサ12は、第1の柱状スペーサ12の長さ方向軸L1に沿って貫通孔121を有する。貫通孔121は、長さ方向軸L1に沿って、第1の柱状スペーサ12とベースプレート16とを貫通する貫通孔である。第2の柱状スペーサ14は、第2の柱状スペーサ14の長さ方向軸L2に沿って貫通孔141を有する。貫通孔141は、長さ方向軸L2に沿って、第2の柱状スペーサ14とベースプレート16とを貫通する貫通孔である。
【0020】
図1は、第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14が円筒形である例を示している。貫通孔121は、第1の柱状スペーサ12の円筒中心軸に沿って、第1の柱状スペーサ12およびベースプレート16を貫通している。貫通孔141は、第2の柱状スペーサ14の円筒中心軸に沿って、第2の柱状スペーサ14およびベースプレート16を貫通している。
【0021】
図1に示す第1の柱状スペーサ12は、外径が例えば15mmであり、一端122と他端123との間の長さが例えば40mmの円筒形の部材である。第2の柱状スペーサ14は、外径が例えば15mmであり、一端142と他端143との間の長さが例えば40mmの円筒形の部材である。また、貫通孔121の内径および貫通孔141の内径は、ともに例えば10mmである。
【0022】
図1に示すベースプレート16は、第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14を固定する面の大きさが例えば150mm×30mmであり、厚さが例えば5mmの板状部材である。第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14は、長さ方向軸L1と長さ方向軸L2との間の間隔が例えば110mmであり、ベースプレート16の板面に垂直に固定されている。
【0023】
図2は、実施形態に係る取付け金具10を含む部材の配置を説明する斜視図である。
図2は、サイディングボードが貼り付けられている建築物の外壁に、取付け金具10を用いて荷重物20を取り付ける場合において、例えば柱などの建築物の骨格材50、取付け金具10、および荷重物20の配置を説明する斜視図面である。
図2に示す取付け金具10は、
図1に示す取付け金具10と同一部分には同一の符号を付している。また、図の簡略化のために、
図2は、サイディングボードを記載していない。
【0024】
図2は、鉛直方向をZ方向に、水平方向をXY方向に取った座標系において、建築物の骨格材50、取付け金具10、および荷重物20の一部の配置を示す。鉛直上方向が+Z方向、鉛直下方向が-Z方向に対応し、建築物の骨格材50の外表面51を、XZ面と略平行な面で表している。
【0025】
取付け金具10は、第1の柱状スペーサ12の長さ方向軸L1に沿って設けられた貫通孔121、および第2の柱状スペーサ14の長さ方向軸L2に沿って設けられた貫通孔141が、建築物の骨格材50の外表面51に垂直な、Y軸方向を向くように配置されている。
【0026】
取付け金具10の第1の柱状スペーサ12は、長さ方向の一端122から他端123までの長さが、建築物の外壁に貼り付けられたサイディングボードの厚さより大きい長さを有している。第1の柱状スペーサ12は、長さ方向の他端123が、建築物の骨格材50の外表面51に突き当たるように配置される。取付け金具10の第2の柱状スペーサ14は、長さ方向の一端142から他端143までの長さが、建築物の外壁に貼り付けられたサイディングボードの厚さより大きい長さを有している。第2の柱状スペーサ14は、長さ方向の他端143が、建築物の骨格材50の外表面51に突き当たるように配置される。
【0027】
サイディングボード(
図2に非表示)は、骨格材50の外表面51に沿って、外表面51より外側(+Y側)に貼り付けられている。第1の柱状スペーサ12の一端122から他端123までの長さは、サイディングボードを建築物外壁に貼り付けるために必要とされる隙間空間を含めて、建築物の骨格材50の外表面51からサイディングボードの+Y側表面までの厚さより大きい。第2の柱状スペーサ14の一端142から他端143まで長さは、サイディングボードを建築物外壁に貼り付けるために必要とされる隙間空間を含めて、建築物の骨格材50の外表面51からサイディングボードの+Y側表面までの厚さより大きい。
【0028】
以上により、サイディングボードは、+Y側である表面側、および-Y側である裏面側に適切な隙間を有する状態で、建築物の骨格材50の外表面51と取付け金具10のベースプレート16との間に挟まって設置される。第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14は、サイディングボードを、建築物の骨格材50の外表面51や取付け金具10のベースプレート16と接触することなく設置する空間(スペース)を形成する。
【0029】
一例では、第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14の長さは例えば40mmであり、サイディングボードを貼り付けるための隙間空間を含めた、建築物の骨格材50の外表面51からサイディングボードの+Y側表面までの厚さは例えば37mmである。これにより、サイディングボードは、+Y側である表面側に略3mmの隙間を持って、建築物の骨格材50の外表面51と取付け金具10のベースプレート16との間に挟まれている。
【0030】
第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14の長さは、サイディングボードの厚さに応じて変更してよい。第1の柱状スペーサ12および/または第2の柱状スペーサ14は、長さ方向の一部に、柱状スペーサの長さを示す目盛りを刻んでおいてよい。この目盛りは、サイディングボードの厚さに応じて、第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14の長さを決めるために用いてよい。
【0031】
建築物の外壁に取り付ける荷重物20は、支持部分21と荷重物本体部分24とから構成される。支持部分21は、荷重物20を建築物の外壁に取り付けるための複数個の開口を有している。支持部分21の開口は、建築物の外壁に荷重物20を取り付けるためのボルト等を通す穴として用いられる。荷重物20は、例えば、物干し竿と非特許文献1に示すような物干し竿支持金具、日除けシートと日除けシートの取付け支持金具、屋外装飾物と屋外装飾物の取付け支持金具など、用途に応じて様々なものが存在する。
図2は荷重物本体部分24の詳細は示していないが、荷重物本体部分24は、これら荷重物20の一部に相当する。
【0032】
図2は、支持部分21に2個の開口22,23が設けられている例を示す。荷重物20に働く重力は、荷重物20の支持部分21において、鉛直下方向(-Z方向)への荷重と、X軸回りのモーメントを発生する。このため、支持部分21の開口22,23は、通常、略鉛直方向に間隔をあけて配置した状態で使用される。
【0033】
荷重物20の支持部分21に設けられた開口22,23に応じて、取付け金具10の第1の柱状スペーサ12および貫通孔121、ならびに第2の柱状スペーサ14および貫通孔141などを設定する。即ち、第1の柱状スペーサ12の長さ方向軸L1に沿って設けられた貫通孔121は、開口22と同一のL1軸上にあるように構成されている。第2の柱状スペーサ14の長さ方向軸L2に沿って設けられた貫通孔141は、開口23と同一のL2軸上にあるように構成されている。これにより、取付け金具10の第1の柱状スペーサ12および貫通孔121、ならびに第2の柱状スペーサ14および貫通孔141なども、通常、略鉛直方向に間隔をあけて配置される。
【0034】
図3は、実施形態に係る取付け金具10を用いて、建築物の外壁に荷重物20を取り付けた状態を示す断面図である。
図3は、荷重物20を取り付けた状態において、例えば柱などの建築物の骨格材50、サイディングボード40、取付け金具10、および、荷重物20の支持部分21を含む荷重物20の一部の配置を示す。
図3に示す断面図において、
図1および
図2に示す各部分と同一部分には同一の符号を付して、同じ説明を繰り返さないことにする。
【0035】
図3に示す断面図は、鉛直方向をZ方向に、水平方向をXY方向に取った座標系において、第1の柱状スペーサ12の長さ方向軸L1および第2の柱状スペーサ14の長さ方向軸L2を含むYZ面に平行な面で、骨格材50、サイディングボード40、取付け金具10、および、荷重物20の一部を切り取った断面図である。
【0036】
サイディングボード40は、骨格材50の外表面51を含む、建築物の外壁に沿って貼付けられた仕上げ用の板材である。サイディングボード40は、材質によって窯業系、金属系、木質系、樹脂系等のものがある。サイディングボード40はデザインが豊富で、品質が安定し、軽量であり、また、サイディングボード40を用いることによって外壁の仕上げ工期を短縮できる等のメリットがある。サイディングボード40は、仕上げ用外壁材として、数多くの建築物に使用されている。
【0037】
図3に示されているように、サイディングボード40は、建築物の外壁の大きさや形状に応じて切断したボード41,42を、留め具61などによって建築物の外壁に貼り付けて用いる。ボード41とボード42との継ぎ目は、防水封止材62で埋められる(シーリングまたはコーキングと呼ばれる)。
【0038】
図3に示す断面図において、柱などの建築物の骨格材50を覆っているサイディングボード40の部分に、サイディングボード40を厚さ方向に貫通する複数個の穴が設けられている。この複数個の穴は、取付け金具10を設置するための穴である。取付け金具10を設置するためのサイディングボード40の複数個の穴は、それぞれ、第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14の外径より大きい内径を有し、第1の柱状スペーサ12の長さ方向軸L1と第2の柱状スペーサ14の長さ方向軸L2との間隔に応じた距離を隔てて、略鉛直方向に並んで配置されている。
【0039】
一例では、第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14の外径は、例えば15mmであり、サイディングボード40の複数個の穴の内径は、例えば20mmである。サイディングボード40の複数個の穴は、第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14と同じく、例えば110mmの中心軸間の間隔を隔てて、略鉛直方向に並んで配置されている。
【0040】
取付け金具10は、サイディングボード40に設けた上記の複数個の穴に、骨格材50の外表面51に垂直な方向(Y軸方向)から、ベースプレート16に固定された第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14を差し込んで設置されている。取付け金具10は、第1の柱状スペーサ12の長さ方向の他端123が、骨格材50の外表面51に突き当たるまで差し込んで設置されている。取付け金具10は、第2の柱状スペーサ14の長さ方向の他端143が、骨格材50の外表面51に突き当たるまで差し込んで設置されている。
【0041】
上記のように、サイディングボード40に設けた複数個の穴は、取付け金具10の柱状スペーサの外径より大きい内径を有している。また、取付け金具10の柱状スペーサは、サイディングボードを貼り付けるための隙間空間を含めた、建築物の骨格材50の外表面51からサイディングボード表面までの厚さより大きい長さを有している。これらによって、取付け金具10の第1の柱状スペーサ12の他端123および第2の柱状スペーサ14の他端143が骨格材50の外表面51に突き当たるまで差し込まれているとき、取付け金具10の第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14、並びにベースプレート16は、サイディングボード40に接触しない状態にある。
【0042】
固定用ボルト32は、サイディングボード40の穴に取付け金具10の第1の柱状スペーサ12を差し込んだ状態で、荷重物20の支持部分21の開口22および取付け金具10の貫通孔121を通して、荷重物20および取付け金具10を、建築物の骨格材50に固定する。固定用ボルト34は、サイディングボード40の穴に取付け金具10の第2の柱状スペーサ14を差し込んだ状態で、荷重物20の支持部分21の開口23および取付け金具10の貫通孔141を通して、荷重物20および取付け金具10を、建築物の骨格材50に固定する。
【0043】
取付け金具10の第1の柱状スペーサ12の他端123および第2の柱状スペーサ14の他端143は、建築物の骨格材50の外表面51に突き当たっており、取付け金具10の第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14、並びにベースプレート16は、サイディングボード40と接触しない状態にある。このため、固定用ボルト32,34を締め付けても、サイディングボード40は、固定用ボルト32,34からの力を受けない。即ち、建築物の外壁に荷重物20を取り付けるときに、サイディングボード40には、固定用ボルト32,34からの外力は加わらない。
【0044】
また、建築物の外壁に荷重物20が取り付けられた後には、荷重物20に働く重力に起因する荷重およびモーメントは、建築物の骨格材50、骨格材50に固定した固定用ボルト32,34、および荷重物20の支持部分21、ならびに骨格材50に他端123,143が突き当たっている取付け金具10によって支えられる。即ち、建築物の外壁に荷重物20が取り付けられた後も、サイディングボード40には、荷重物20からの外力は加わらない。
【0045】
即ち、本実施形態に係る取付け金具10を用いることによって、サイディングボード40を貼った外壁に荷重物20を取り付けるときに外壁に加わる力、および、荷重物20が取り付けられた後に荷重物20から外壁に加わる力は、サイディングボード40には伝わらない。これらの力によって、サイディングボード40にひび割れ等の破損が発生するのを防ぐことができる。
【0046】
図3は、防水封止材63が、取付け金具10の柱状スペーサ12,14の外側とサイディングボード40に設けた穴の内側との間を埋めている場合を示している。防水封止材63は、柱状スペーサとサイディングボードとの間の隙間を通して、雨水などが建築物側に侵入するのを防止する。防水封止材63は固化したあとも弾性を有しているため、防水封止材63で埋めても、荷重物20を取り付けるときに外壁に加わる力、および、荷重物20が取り付けられた後に外壁に加わる力は、サイディングボード40に直接には伝わらず、サイディングボード40にひび割れ等の破損が発生するのを防ぐことができる。
【0047】
尚、これと関連して、固定用ボルト32,34が挿入されている取付け金具10の貫通孔121,141は、ベースプレート16、荷重物20の支持部分21、および固定用ボルト32,34などで封止されている。これにより、貫通孔121,141を通して雨水などが侵入するのが防止されている。より確実に防水するために、ベースプレート16とサイディングボード40の間の隙間、ベースプレート16と荷重物20の支持部分21との接触部、荷重物20の支持部分21と固定用ボルト頭部との接触部などに防水封止材63を施してもよい。
【0048】
図4は、実施形態に係る取付け金具10を用いて、建築物の外壁に荷重物20を取り付ける方法の工程を示すフロー図である。
図4に示す工程は、サイディングボードが既に貼られている建築物の外壁に、後付けで、荷重物20を取り付ける工程である。
【0049】
最初に、建築物の骨格材50を覆っているサイディングボード40に、サイディングボード40を厚さ方向に貫通する複数個の穴を開ける(ステップ202)。サイディングボード40を貫通する穴は、電動ドリル等の適切な工具によって容易に開けることができる。それぞれの穴径は、例えば20mmである。開ける穴の位置は、骨格材50に相当する位置であって、荷重物20の支持部分21に設けられている固定用ボルト等を通す開口の間隔に応じて決定する。
【0050】
サイディングボード40に開けた穴の入り口の周囲に防水封止材63を塗布する(ステップ204)。防水封止材63は塗布時に十分な可塑性を有しており、サイディングボード40に開けた穴の外側(+Y側、
図3参照)から、穴の入り口の周囲に防水封止材63を塗布する。
【0051】
取付け金具10の柱状スペーサ12,14を、サイディングボード40の穴に挿入し、柱状スペーサの他端123,143を骨格材50の外表面51に突き当てる(ステップ206)。取付け金具10の第1の柱状スペーサ12および第2の柱状スペーサ14を、長さ方向軸L1および長さ方向軸L2に沿って、サイディングボード40に開けた穴に挿入する。穴の入り口周囲に塗布された防水封止材63は、柱状スペーサ12,14の外側とサイディングボード40に開けた穴の内側との間を埋めるように広がる。柱状スペーサ12,14は、それぞれの長さ方向の他端123、143が、骨格材50の外表面51に突き当たるまで挿入する。
【0052】
固定用ボルトによって、取付け金具10とともに荷重物20の支持部分21を骨格材50に固定する(ステップ208)。荷重物20の支持部分21の開口22,23は、それぞれ、取付け金具10の貫通孔121,141と同一の軸L1,L2上にあり、固定用ボルト32,34を通すことができる。これにより、固定用ボルト32,34は、取付け金具10とともに、荷重物20を骨格材50に固定する。
【0053】
図4に示す取付け方法により、建築物の外壁にサイディングボードが既に貼り付けられた状態にあっても、荷重物20を後付けで取り付けることができる。サイディングボード40に対する作業は、例えば径20mmの穴を複数個開けて、防水封止材を塗布するだけである。サイディングボードを取り外したり、ボードの広い範囲を切断したりする作業は必要ではない。
図4に示す取付け方法は、サイディングボードが貼られた建築物の外壁に荷重物20を取り付ける作業の工期やコストの削減に寄与する。
(変形例)
【0054】
図5は取付け金具10の変形例を示す斜視図である。
図5(A)は4個の柱状スペーサを有する例であり、
図5(B),(C)は円筒形ではない柱状スペーサを有する例である。
【0055】
建築物の外壁に取り付ける荷重物20は、支持部分21に2個以上の開口を有する場合もある。取付け金具10の柱状スペーサおよび貫通孔は、荷重物20の支持部分21に設けられた開口の数および配置に応じて設定してよい。
【0056】
図5(A)は、取付け金具10が4個の柱状スペーサ152,154,156,158とベースプレート16とから構成される例を示す。柱状スペーサ152,154,156,158は、サイディングボードの厚さより大きい長さを有し、長さ方向の軸が互いに平行である。また、
図5(A)に示す取付け金具10は、それぞれの柱状スペーサとベースプレート16とを貫通する貫通孔を有し、柱状スペーサ152,154,156,158および、それぞれの貫通孔は、荷重物20の支持部分21に設けられている4個の開口と同一の軸上にある。
【0057】
図5(A)に示す取付け金具10は、サイディングボード40に4個の穴を開けて、骨格材50に突き当てるまで柱状スペーサを差し込むことにより、取付け金具10がサイディングボード40に接触しない状態で、荷重物20を骨格材50に固定することができる。
【0058】
図5(B)は、取付け金具10が角柱状スペーサ162,164とベースプレート16とから構成される場合を示す。
図5(C)は、取付け金具10が、断面が樋状の柱状スペーサ172,174とベースプレート16とから構成される場合を示す。
図5(B)および
図5(C)に示す柱状スペーサ162,164および柱状スペーサ172,174は、それぞれ、サイディングボードの厚さより大きい長さを有し、長さ方向の軸が互いに平行である。また、
図5(B)および
図5(C)に示す取付け金具10は、それぞれの柱状スペーサとベースプレート16とを貫通する貫通孔を有し、柱状スペーサ162,164および柱状スペーサ172,174、ならびに、それぞれの貫通孔は、荷重物20の支持部分21に設けられている開口と同一の軸上にある。
【0059】
図5(B)および
図5(C)示す取付け金具10は、サイディングボード40に適切な大きさの2個の穴を開けて、骨格材50に突き当てるまで柱状スペーサを差し込むことにより、取付け金具10がサイディングボード40に接触しない状態で、荷重物20を格材50に固定することができる。
【0060】
以上、本発明のサイディング外壁への荷重物の取付け金具、および取付け方法について、実施形態例、およびその変形例によって説明した。本発明は説明した実施形態や変形例に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種の変形を行うことが可能である。このような変形を行った形態も本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
10…取付け金具、12…第1の柱状スペーサ、121…貫通孔、122…一端、123…他端、14…第2の柱状スペーサ、141…貫通孔、142…一端、143…他端、16…ベースプレート、20…荷重物、21…支持部分、22,23…開口、24…荷重物本体部分、32,34…固定用ボルト、40…サイディングボード、41,42…ボード、50…骨格材、51…外表面、61…留め具、62,63…防水封止材、152,154,156,158,162,164,172,174…柱状スペーサ、L1,L2…長さ方向軸