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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181029
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】写真測量・基準標・仮点法
(51)【国際特許分類】
   G06T 5/00 20060101AFI20231214BHJP
   G01C 11/36 20060101ALI20231214BHJP
   G01C 11/04 20060101ALI20231214BHJP
   G06T 7/593 20170101ALI20231214BHJP
【FI】
G06T5/00 725
G01C11/36
G01C11/04
G06T7/593
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094770
(22)【出願日】2022-06-11
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
2.TURBOSKETCH
(71)【出願人】
【識別番号】593133682
【氏名又は名称】中島 和雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 和雄
【テーマコード(参考)】
5B057
5L096
【Fターム(参考)】
5B057BA02
5B057BA23
5B057CD12
5B057DA07
5B057DC03
5B057DC05
5B057DC08
5L096EA07
5L096FA09
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スマートな空間測点の座標値の計算をする装置で処理する方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】方法は、基準標の既知の3点(01、02、03)の、映像歪を補正した座標値から、カメラ収点(04、05)の空間座標値を計算し、カメラ収点(04、05)と測点(14)を結ぶ直線上に、任意の距離で仮点(17、18)を指定し、仮点(17、18)の空間座標値を計算する。この直線は2本あり、それぞれ2点が決まっているので、2本の直線の最近接点中点(14)の空間座標値を計算する。遠距離対象の場合、例えば鉄塔の上下の2測点(30)は、映像面を上下左右に移動する微調整によって空間座標値のX値とZ値をほぼ一致するまで続けることで、Y値も共に微調整する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像歪の補正方法に関する。
図8は以下の参考図である。図5は関連図である。
貼られた糸で所定寸法の格子をなす歪補正標の、写真映像データを、CADに設定した矩形の中に、原点位置を決め、取込み拡大し、映像でのその格子点の座標値を人の眼で読取り、所定のフォームで、プログラムのデータ文として保存する。この矩形を歪補正標矩形とする。
RUN起動で、データ文を数値として変換し配列変数に保存する。
次に測定用のA映像を歪補正標矩形と同じ大きさの矩形に取り込み、座標の設定を揃える。
測点の番号を指定して、その測点が歪補正標のどの場所にあるかを、自動計算で調べ、上下左右の4ツのスプライン曲線のパラメータを計算し、測点の映像面座標値を参照して、4ツのスプライン曲線に占める点のY値またはX値を得る。(Y値は上と下、X値は左と右)
測点の存在する場所の、上の曲線のY値と下の曲線のY値の差で、測点のY値と下の曲線のY値の差を除したものを、縦割合とする。
測点の存在する場所の、右の曲線のX値と左の曲線のX値の差で、測点のX値と左の曲線のX値の差を除したものを、横割合とする。
歪補正標の実物でも場所の指定は、前出と同様である。
歪補正標実物に、計算済の点の場所を指定したと想像し、横割合と縦割合でその場所の中に点を想像する。これが、補正済座標値である。
B映像についても、A映像と同様に処理する。
このように、撮影された歪補正標の映像データをもとにして、測定点の映像歪補正値が処理計算装置で生成する方法と、それを実現させることができる部分プログラム。
【請求項2】
カメラ収点の空間座標値の計算に関する。
図9は参考図である。
Aカメラの測定用の映像をCADに、請求項1の歪補正標矩形と同じサイズの矩形に取込み、原点を合わせ、基準標の3ツの標識点の映像面座標値の補正値を、請求項1の方法で得る。
Bカメラの測定用の映像をCADに、請求項1の歪補正標矩形と同じサイズの矩形に取込み、基準標の3ツの標識点の映像座面標値の補正値を、請求項1の方法で得る。
Aカメラ収点と基準標の3ツの標識と距離の長さ順、Bカメラ収点と基準標の3ツの標識と距離の長さ順をプログラムのある行で書換えする。
以下の処理をAカメラ映像とBカメラ映像にてそれぞれ行う。
基準標標識の3点からできる三角形を底面とする三角錐から、三角錐の頂点と3ツの稜線の長さと、その稜線同士の実角を想像する。その内、稜線同士の実角は前出の標識の歪補正した座標値から、余弦定理を利用して得られる。
空間座標の原点は01標識とし、02標識と03標識と共にZ=0面にあるとし、01、02標識はY=0面にあるとする。X=0平面は当然原点を通り、3ツの面は当然互いに垂直である。第2標識は正側。左手系とする。
01標識を通る稜線と同じものとして、第4の稜線を想像する。
01標識を通る稜線の長さを任意に決め、02標識を通る稜線との実角を使って正弦定理を使うと、2ツの、02標識を通る稜線上の長さを計算できる。
同様の計算を続けて、03の稜線、そして第4の稜線の長さまで2ツずつ計算できる。この長さの内の1ツが01標識を通る稜線の長さに一致したなら、その計算途中の経路の稜線長さも特定できる。この状態は任意長さを乱数で決めてトライ&エラーで、長さ比較での差の許容値を考え、稜線の長さ順判別をし、処理の進行を決め、更なる指定長さと差の許容値を決め、差が十分小さくなった時に、3稜線の長さの確定とする。
そしてその3稜線の長さを基に三角形の特性を利用して、三角錐の頂点の座標値を計算する。
2ツの三角錐頂点の座標値はこのようにして、計算される。即ちカメラ収点の座標値である。
以上の方法と、請求項1の方法と基準標を使って、カメラ収点の座標値を処理計算することを特徴とする部分プログラム。
【請求項3】
基準標の標識と測点の、映像面座標値からの、基準標をもとにした空間座標値の計算に関する。
図3は以下の参考図である。
フィールドにおいて、図のようにカメラと基準標を設置し、撮影し、請求項1の歪補正を既にしてあるとする。そうすると角度や計算された長さは現実として、更なる計算を進めることができる。
基準標三角形の標識の左の鋭角点を01点、右に寄って02点、上に寄って03点とする。
稜線については、01点を通るものを01陵線、他も同様とする。
Aカメラにおける01稜線長さと、カメラ収点とA仮点を結ぶ線分長さと、01稜線と、01カメラ収点と測点を結ぶ線分との、なす角度を使って余弦定理で、01点とA仮点を結ぶ線分の長さを計算する。(自動計算の流れの説明である。以下同様である)03点とA仮点を結ぶ線分の長さの計算も同様である。
Bカメラにおける01稜線長さと、カメラ収点とB仮点を結ぶ線分の長さと、01稜線と、カメラ収点と測点を結ぶ線分との、なす角度を使って余弦定理で、01点とB仮点を結ぶ線分の長さを計算する。03点とB仮点を結ぶ線分の長さの計算も同様である。
カメラ収点とA仮点の距離、01点とA仮点の距離、03点とA仮点の距離で、A仮点の空間座標値を計算します。(Aカメラ収点、01点、03点は既知なので、3球面の共有点である)
カメラ収点とB仮点の距離、01点とB仮点の距離、03点とB仮点の距離で、B仮点の空間座標値を計算します。(Bカメラ収点、01点、03点は既知なので、3球面の共有点である)
A仮点、B仮点の座標値はそれぞれ2ツ存在する。
2ツの点は、測定点が映像面において、基準標01点と03点を通る直線の上側に見えるか、そうでないかで判別して採用する。上側ならY値の大きい方の点を採用する。下側なら逆である。(自動で判別)
Aカメラ収点とA仮点を通る直線と、Bカメラ収点とB仮点を通る直線の、最近接中点は請求項4の複数の数式で自動計算し、ディスプレイに表示する。
以上の方法で、基準標と測定対象が写った2ツの映像データと、処理計算装置とを使って、測定点の空間座標値を算出する方法と、それを実現させる部分プログラム。
【請求項4】
2直線の最近接中点の空間座標値の計算に関する。
図10は以下の参考図である。
8000 '2直線交差中点
8002 '直線A座標 AA1,AA2,AA3,BB1,BB2,BB3 (Aカメラ収点、A仮点)
8003 '直線B座標 CC1,CC2,CC3,DD1,DD2,DD3(Bカメラ収点、B仮点)
8020 S1=BB1-AA1:S2=BB2-AA2:S3=BB3-AA3 :T1=DD1-CC1:T2=DD2-CC2:T3=DD3-CC3 '直線のベクトル
8029 GVX=S2*T3-S3*T2 :GVY=S3*T1-S1*T3 :GVZ=S1*T2-S2*T1 '(直線Aと直線B)の外積方向比
8066 XS1=((GVZ*T2-T3*GVY)*(T3*(S1*AA1+S2*AA2+S3*AA3)-S3*(T1*CC1+T2*CC2+T3*CC3))-(T3*S2-S3*T2)*(GVZ*(T1*CC1+T2*CC2+T3*CC3)-T3*(GVX*AA1+GVY*AA2+GVZ*AA3)))/((GVZ*T2-T3*GVY)*(T3*S1-S3*T1)-(T3*S2-S3*T2)*(GVZ*T1-T3*GVX))
8067 YS1=(T3*(S1*AA1+S2*AA2+S3*AA3)-S3*(T1*CC1+T2*CC2+T3*CC3)-(T3*S1-S3*T1)*XS1)/(T3*S2-S3*T2)
8068 ZS1=((S1*AA1+S2*AA2+S3*AA3)-(S1*XS1+S2*YS1))/S3
8088 XS2=((GVZ*T2-T3*GVY)*(T3*(S1*AA1+S2*AA2+S3*AA3)-S3*(T1*CC1+T2*CC2+T3*CC3))-(T3*S2-S3*T2)*(GVZ*(T1*CC1+T2*CC2+T3*CC3)-T3*(GVX*CC1+GVY*CC2+GVZ*CC3)))/((GVZ*T2-T3*GVY)*(T3*S1-S3*T1)-(T3*S2-S3*T2)*(GVZ*T1-T3*GVX))
8090 YS2=(T3*(S1*AA1+S2*AA2+S3*AA3)-S3*(T1*CC1+T2*CC2+T3*CC3)-(T3*S1-S3*T1)*XS2)/(T3*S2-S3*T2)
8092 ZS2=((T1*CC1+T2*CC2+T3*CC3)-T1*XS2-T2*YS2)/T3
8096 '離れ距離
8098 KYORI1=((XS2-XS1)^2+(YS2-YS1)^2+(ZS2-ZS1)^2)^.5#
8102 U1=XS1-AA1:U2=YS1-AA2:U3=ZS1-AA3
8138 ZS0=((U1*AA1+U2*AA2+U3*AA3)+U1*CC3*(DD1-CC1)/(DD3-CC3)-U1*CC1+U2*CC3*(DD2-CC2)/(DD3-CC3)-U2*CC2)/(U3+U1*(DD1-CC1)/(DD3-CC3)+U2*(DD2-CC2)/(DD3-CC3))
8140 XS0=(ZS0-CC3)*(DD1-CC1)/(DD3-CC3)+CC1:XS00=XS0+(XS1-XS2)
8142 YS0=(ZS0-CC3)*(DD2-CC2)/(DD3-CC3)+CC2:YS00=YS0+(YS1-YS2):ZS00=ZS0+(ZS1-ZS2)
8150 '目的座標
8152 MODORIX=(XS1-XS2)/2 :MODORIY=(YS1-YS2)/2 :MODORIZ=(ZS1-ZS2)/2
8154 MOKUTEKIX=XS0+MODORIX :MOKUTEKIY=YS0+MODORIY :MOKUTEKIZ=ZS0+MODORIZ
8156 PRINT"目的 X Y Z ";MOKUTEKIX;MOKUTEKIY;MOKUTEKIZ
左先頭の4桁の数字はプログラムの行毎に付けています。整理番号以外の意味は持たない。
最終行でディスプレイに2直線の最近接点中点を表示している。この行は式ではない。
' の後に続く内容は注釈で、計算には影響しない。
4ツの数値を決めると自動計算するものである。
直方体の対辺同士のような直線は計算の対象外である。
以上ように、空間2直線の最近接点中点を計算するところの、計算装置で処理をする部分プログラム。
【請求項5】
測量緯度向上のための微調整に関する。
図11は以下の参考図である。
測定点の空間座標値を計算し、表示させて、違和感があれば、微調整をする。
これは主に、遠い測定点の座標値に関するものであるが、これを行うと近くの観測点の座標値も更に好ましいものになる。
実際には、プムグラム中のある行の5ツのパラメータを書換える。カメラ収点と微調整前の映像面の原点の距離、微調整前の映像面の原点から、映像面を左右に移動する距離と上下に移動する距離と、移動した映像面をその原点を基に、映像面座標X軸に関する回転、映像面座標Y軸に関する回転の値である。単位とその限度は順に正負 5mm,2mm,2mm,0.7度,0.7度である。値の例を示す。
L0=1101.237 : AD06=0 : AD07=0 : AD08=0 : AD09=0
パラメータの書換え後にGOTO 113 等で復帰させ、測定番号入力で計算処理させる。
例えばZ値として-1800m付近と予想している時、その値から外れていれば、測点番号に9を入力して、自動計算を中止し、主にAD08を0.1程度変えて、GOTO 113 等で復帰させ、測点番号を入力する。約1秒で結果が出るので、測定値の変化を見て、紙に書き止める。予想値に近づくなら調整値を増やし、逆なら減らす。ほぼ近づいたら、次にAD09を同様に調整する。後はAD06、AD07、L0も必要に応じて調整する。
判定要領として、Z値とX値の差が200mm以下でOKとする。Y値はその時の値とする。更に鉛直状の構造物の上の測点と、下の測点の、X値とY値の差がそれぞれ200mm以下なら更に信頼性が向上する。
この部分プログラムは自動計算を実現させることができる。
以上のとおり、プムグラム中のある行の、5ツのパラメータを書換えて、処理計算装置を動作させて、測点の空間座標値の精度を向上させる、部分プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、写真測量に関するものである。
【背景技術】
【0002】
写真測量は各方面で進化しているが、手軽なハードで、ターゲットを使わず、200m~2000m程度の遠方の対象物も計測できるものがあれば好ましいと考えた。
【0003】
測量、位置測定できるシステムとして、最新のものに、高精度GPS、高精度航空測量、CT・MRIの断層撮像・3Dモデリング、多方向からの撮像からの自動3Dモデリング、レーザー照射・反射での3Dデータの取得、自動車搭載の沿道連続計測システム、ドローン撮影と測定処理、クラボウのKuraves-MD、測器メーカーの統合システム等がある。
【0004】
これらの内で、比較的になじみ易いものに、クラボウのシステムがある。測量のロジックについては、エピポーラ幾何での解法である。このエピポーラ幾何で三角法をどのように進めるかであるが、いろいろ調べても難解で、行列を使った説明に入り、短くて容易に理解できるものではない。
【0005】
学習のための資料、日本測量協会の冊子”デジタル写真測量の基礎”の19~24ページにも相対標定として、カメラ姿勢についての5箇の未知数を持つ方程式は、最小5箇の測定点から解けるとあり、絶対標定としてのバンドル調整には、難解な方程式もコンピュータのソフトが迅速に解いてくれるとある。なかなか具体的に例題から入って行くことは困難である。
【0006】
こうしたなかで、容易に簡潔な計算を示すことには、意義があると思う。
当考案の”写真測量・基準標・仮点法”は、2011年にできていたが、精度不足があり、そしてすでに多数のソフトが存在していたので、出願は断念していた。
しかし、2000m程度離れた測点の測定と、精度の確保を実現できるようになった。
そこですっきりした方式の公開で、長きにわたって多くの人に見てもらえればと、出願に至ったものである。
ただ精度を更に上げる手法については、ノウハウとすることにして、出願はしない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】財団法人 日本測量協会発行 デジタル写真測量の基礎
【非特許文献2】クラボウのWEBページ 三次元写真応用計測システム Kurabo.co.jp/el/3d/kuraves_md_01
【非特許文献3】魚眼レンズおよび全方位映像の歪除去のための装置および方法 特表2020-50879
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
簡潔で理解が容易な空間測量の論理から、経済的なハード・ソフトで、納得できる精度、便利さを実現させる。
測量でターゲットを使うことを省ける、使う困難を避けるような場面を得意分野と想定する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
市販のカメラ、高価でない装置、市販CADの活用、新しいアイデアでの空間測量の計算法を整え、市販プログラミング言語でコーディングし、動作・処理させる。
【発明の効果】
【0010】
本考案は、経済的面で測量目的に沿うことができると思う。また難解な測量の説明を平易な論理でも十分果たせることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は当考案の概要図である。
図2図2は処理計算のフロー図である。
図3図3はフィールド撮影状況と測量計算の論理の説明図である。
図4図4は基準標の説明図である。
図5図5は歪補正標とカメラ収点の説明図である。
図6図6は映像面の説明と撮影についての説明の図である。
図7図7は映像面での角度の測り方、他の説明図である。
図8図8は歪補正の説明図である。
図9図9は三角錐の稜線計算の説明図である
図10図10は2直線の最近接点とその中点の説明図である。
図11図11は映像面調整とパラメータの説明図である。
図12図12はプログラムコードの部分の例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
計算に必要なものとして以下に示す。
測定対象物と基準標が写っている2ツの写真のJPGデータのメモリーカード
パソコン CPUはi5程度
OS Windows 8程度
CAD Turbo Sketch 19 程度
プログラム言語 Basic/98 Ver5
プログラム 自作
【0013】
フィールド撮影に向う前の準備として以下に示す。
歪補正標の製作と設置
歪補正標の撮影
歪補正標の映像データのCADへの取込、格子点座標値の読取り、メモ書き、プログラムにデータ文として、書込み。
基準標の製作。
【0014】
フィールド撮影前の準備を以下に示す。
基準標の設置。 台を地表に、近辺の建物等とほぼ平行に、楔を使って水平に設置する。風で動かないように、重しを乗せる。それに図のように、基準標を嵌めて、木ねじで締付け固定する。なお水平器で水平部の水平と鉛直部の鉛直を確かめながら微調整する。基準標のねじれは、左右の縦材の鉛直確認で解消できている。
三脚にカメラの設置。基準標が測定対象のほぼ右下に写るようにAカメラ三脚を、同様にほぼ左下に写るようにBカメラ三脚を設置する。カメラの高さは任意である。風で揺れないように要注意である。
【0015】
計算処理に先立っての準備。 早速、細かい説明に入る。
2組の映像における映像データが保存されているメモリーカードをパソコンにセットする。パソコンでCADを起動させ、歪補正標映像サイズに合わせた矩形内に映像を挿入する。以降この映像は想像上のものだが、映像面と称する。カメラの前に掲げられたスクリーンに、測定対象が投影されていると想像できるからである。
この段階でCAD上の図形・画面すべては拡大・縮小が自在である。
CADのスナップのモードは、端点、円中心を指定する。(スナップモードはONに)
そして、歪補正標の原点にあたる位置に直径10mm程度の円を描く。CADの機能でその円を選択して座標値を得る。(選択した時に円の中心に十字マークが出れば画面下に座標値が表示される)。
次にCADの移動機能で、その座標値の正負の負号を逆にして左右に移動する。直前の図は削除する。ここで円を選択し十字マークになったら座標値が画面下部に表示される。X座標0、Y座標0になっていればOKである。以降この映像面での測定点の円を選択して十字マークを表示させれば平面座標値を読める。図面の設定機能で座標の読取り精度は指定できる。(小数点以下3桁とする。0.001mmの差を認識する。)
測点のマークに円を使っている理由は、図形の中心を指定し易いからである。(測点とは空間での現実の点、そして映像面では現実の点の映像点である)
最初に測点をマークするのは、基準標の5点である。左上の標識は使わない。(参考図は図4)
それぞれ5点の座標値X とYを読取って、紙に記入する。番号は左下から反時計回りに、1~5とする。拡大し過ぎると像がぼやけるので適度にし、標識が円に偏りなく収まるように注意する。(デフォルトで1,2,3を採用)
ここでの精緻さが計算成果の精度につながる。
以降は任意に、一般の測点を選び円でマークし、円の近くに番号数字をテキストとして描く。
適度なところで、座標を読取って紙に記入する。
このメモを見ながら、自作ソフトのマルチ代入の行の該当番号の箇所を書換える。以前のデータを残してあるのは、書換えは手間が掛からず、ワルサも生じないからである。(マルチ代入とは、変数への代入を1行の内に多数行わせるもので、通常は255文字程度の記述まで可能)
もし以前のデータを指定して使っても、誤用であることははっきり感じられる問題なしである。
紙のメモは、その時書き変えた番号を残す意味もある。
測点データにはAカメラ分とBカメラ分がある。基準点のデータも測点データと同じ扱いであるが、1~6基準標の標識用で特に1~3は特別で、自動で最初に使われるようにしてある。
初期のデータの書換えは後2ツある。基準標の3辺の長さの指定はA測点座標データの行の後部です。それとある行の LMS$の書換えである。例 “312”なら基準標で第3点、第1点、第2点の順がカメラから遠さの順である。(LMS$は文字列を格納する変数である)
【0016】
ここから、計算処理である。
RUNで開始である。即、変数他の初期化をする。続いて自動で2ツのカメラ収点の空間座標値の計算になる。Aカメラ、Bカメラの順である。(カメラ収点とは図5参照、空間座標の原点は基準標の01点、図3参照。)
処理時間は1~数秒である。(入力データに誤りがある場合は処理が終わらない場合があり、Ctrl+Breakで強制終了させ、訂正し、RUNから始める。)
続いて、自動で測点の番号入力の促しがあるので、2桁の数を入力すると、約1秒後に結果が、即ち測点の空間座標値が表示され、次の処理の番号入力の促しも出るので必要なだけ繰り返す。
終了したい時は、1桁で9を入力すると終了する。
測点データは追加できる。すでに使った番号と重ならないように書換えする。(測点の数は99までとしているが、拡張は容易にできる。)
【0017】
ここからはプログラムのことについての説明である。
図1は概要図である。
図2は計算処理のフロー図である。
変数の初期設定、分岐条件フラグ用の変数の初期設定、歪補正のデータを数値変数へ変換し保存をする。
2ツのカメラ収点と基準標の標識との、3ツの距離の計算とを経て、2ツのカメラ収点の空間座標値の計算をする。図9参照。(自動 以降入力の記載が無ければ自動)
Aカメラでの映像面における、基準標標識3点の映像面座標値の歪補正計算と、各3点同士の角度計算をする。(測点同士の角度とは、カメラ収点と各測点を結ぶ線分同士の角度を示す。他でも同様である。)
カメラ収点を頂点とする三角錘の01稜線長さを乱数を利用して指定すると、頂点の角度で02稜線長さ2通りが正弦定理の利用で決まる。同様の繰り返しで第4長さが、01長さにほぼ一致するものが出れば採用。条件を変化させて繰り返し、稜線の長さ順判定をし、0.00000001mm程度の誤差になるまで続ける。
3稜線の長さと角度から、頂点の空間座標値を自動計算し、ディスプレイに表示となる。
Bカメラも同様。ディスプレイに表示となる。
Aカメラ分、Bカメラ分の処理時間は合わせて1~数秒。
ここからが測点の空間座標値の計算である。図3参照。
Aカメラでの映像面における、測点の座標値の歪補正計算をする。図8参照。
測点と基準標の標識の角度と、三角錐稜線の長さと、測定線上のカメラ収点から任意の距離で、仮点の空間座標値を計算する。図3参照。
Aカメラ収点と測線上の仮点の空間座標値で空間での直線が決定する。
B カメラでも同様。
これら2本の直線の最近接中点を計算する。図10参照。
計算結果がディスプレイに表示となる。
以上で処理完了である。
【0018】
歪補正標の製作例について
糸を縦横に50mm間隔に張ったもので、映像面での糸の交点の座標値の取得が目的である。
アルミ角パイプで長方形の枠を作り、その枠内はハレパネで裏地とする。
枠の外周部に糸を張って固定するための爪楊枝に合う穴を明ける。
糸の両端に輪を作り爪楊枝を通して強めに引張って、穴に差し込んでしっかり張る。
枠の表面には、巻き尺1級品をカットしたものを精度良く予め貼り付けておく。
糸を張る時には、50mm間隔に目盛に合わせて張る。
外枠の外寸は横縦1250mm×850mmである。
糸格子点の数は横25、縦17である。
ガラス鏡横470mm、縦815mmを枠の中央部になるように、枠に固定する。
この目的は、撮影時にカメラレンズが鏡に写って、中央の糸格子と合うようにする為である。
枠もこの鏡もネジレがないように入念に組み、壁に固定する。
ネジレのチェックは枠の左右に、下げ振りを上で固定して吊り、メジャーを読んで調整を確認する。
尚中央点の上下と左右の端から外に向け、60mmずつの目盛付の定木を精度良く固定しておく。
撮影直後に保存映像を拡大して目盛を読んで、上と下、左と右同じだけの余白幅とする。
正対への寄与と、映像のサイズ取得のためである。
糸は鏡部分では映像が識別しづらいので、レンズが写る箇所を除いて、鏡に白紙を貼る。
カメラ収点取得のためのメジャーとその支持ビームも備える。
【0019】
“歪補正・精度”について
スプライン曲線を使っているが、これは過度な曲がり方をせず、直線の映像歪を十分カバーできていると思う。
曲線の端の通過点2点をピアノ線が通るように、針で平板にピンで位置決めし、以降の通過点を針で押して、位置決めして行くことで得られるこの滑らかな曲線が、スプライン曲線である。次の点によって前の点が浮くようなら、押えの針を追加する。ピアノ線の曲がりは弾性限度内であることが条件です。
【0020】
歪補正標を測定対象として扱い、3m程度離れて、2方向から撮影し、2ツの映像中の格子点に、基準標の3点を設定し、他の格子点を測点として、計算処理をする例の精度を示す。
それらの点の映像内での2次元座標値の測定については図7に示すように、点間角度の取得は容易で、空間座標値はすぐに出せて、精度の評価をできる。(実物の寸法が空間座標値に対応する。Z値はゼロ。)
しかし、良い値は出にくいものである。誤差X・誤差Y・誤差Zの実長相当が10mmなら良とする。
歪補正処理を日本測量協会に依頼して得た、カメラキャリブレーションの7ツの値を使っての歪補正での絶対値は7mm程度なので、比較にならない程ではない。
【0021】
歪補正標の水平の糸のわずかな下がりも精度に影響する。この改善には歪補正データの上半分のY値と下半分のY値をそれぞれ対称に入れ替え、元の値に加えて2で割ることで解消につながると思う。
【0022】
歪補正標映像の範囲は歪補正標より広いので、映像面の4周部に歪補正を出来ない範囲がある。また歪補正標の外周1マスの列は、スプライン曲線の反曲点が無い特性があるので、いくらか精度は劣ると思われる。
当考案では歪補正標の格子のサイズは50mmとしているが、100mmでも十分だと思う。
【0023】
歪補正標の撮影では、カメラは歪補正標に正対させることが必要である。まず考えるのは左右、上下の余長メジャーの読みが合うことである。しかし糸格子の原点をもとにしての読みと合わせることはとても困難である。鏡に写ったカメラレンズの中心を糸格子原点と合わせたものでも同様である。
正対とは?を考えさせられる。比較的、的を外していないと思うのは、線分を見た時に、最も長く見えることが、線分に対しての正対状態だということである。
従って、映像面のX座標の両端同士、Y座標の両端同士の長さを最も長くなるように、カメラの向きの調整を繰返して、整ってから、左右・上下を調整する。前後については、ほぼ映像面いっぱいに糸格子と枠が写るように調整する。20回程の繰り返しになる。その都度CADで拡大した映像での確認になるので、カメラに入れてあるカードメモリーのデータを直に扱えるように、USBケーブルでパソコンとつないで操作する。
【0024】
“基準標”について。図4は参考である。
基準標は長方形に6点の標識を付している。これは左下を原点とする三角形を3種類から選べるよう考えたものである。
【0025】
基準標は前出のように、直角三角形のものを例として示しているが、直角三角形に限らないし、3ツの点の3次元座標値が、決まっていれば、基準標の標識がほぼ水平でも、それらの3点はZ=0平面にあるとすると、上側をZ軸正側として設定でし順次進められる。
3点は既知なので3辺の長さは、即計算できまる。そして第1辺から順に、プログラムのマルチ代入文を書換えるだけで、上空測量ができる。ただし測定成果としては座標変換が最後に必要である。
【0026】
当考案によって計測・計算した成果が、空間座標値の真の値と1/300程度の誤差を持っていても、その測定点の近辺の測定点とで連続性、ムラの無さ等が認められるなら、有用なものと考えられると思う。
【0027】
当考案では、カメラで撮影と計算処理の間に、CADが入っている。一般的な測量アプリケーションでは、このCADの働きも含みもっているので、CADを使っている当考案は非力なものと思われそうであるが、測点部の映像の思い通りの拡大、座標値の取得にとても便利に使えて重宝である。
【0028】
カメラ撮影と計算処理が一体となったシステムは、リアルタイムでのフィードバックを要する、自動走行自動車や自動移動ロボットでは必要であるが、使用目的によっては、当考案の処理環境でさしたる不足は無いと思う。
【0029】
三角法の計算をこまめにすれば、当考案そして最新の方法にも頼らず、写真測量を行うことができる。しかしカメラの姿勢角度が6ツあるので、とても複雑な計算になる。角度を設定しながらの計算では、誤差は収拾がつかず、相互関係決定から進める場合も、関係式を解くことも困難である。
これに比べると当考案は、カメラの3軸の回転角度を全く必要とせず、簡潔さは明白である。
【0030】
計算処理のプログラムを動作させる言語として、BASIC/98 Ver5を使っている。この言語は、BASICとしては最速で、エラーもほとんど出ない。しかも、ユーザーに寛容である。
変数の容量は十分である。
1行の記述長さは、半角文字で1600文字はOKである。画面の80%である。多く入力してコントロールできなくなったら、テキストセーブして、1600文字以下にしてから、再ファイルオープンして動作させることができる。
当考案でのマルチ代入文はこの特徴に助けられている。
もう1件。プログラムの書換えをしても、他の変数の内容や、プログラムの処理状態への影響は無い。ほとんどの言語では停止になってしまうが、BASIC/98は行の削除をしない限りは問題無しである。
当考案では、書換えを何度かしているが、この特徴を利用している。
しかし当考案では、RUNさせ変数クリアしての再計算も速いので問題はないし、データは代入文の再実行なので、関わりは少ないので必ずしも必要ではない。
これら2件はメーカーでのマニュアルには記されてはいない。
【0031】
カメラについては、マニュアル撮影ができるもの。絞りは光量ほぼ最小にして、シャッター速度を0.5~10秒で撮影できるものとする。手ブレ防止のためのシャッターについては、タイマーまたはリモコン使用になる。歪補正標の撮影では、USB接続してパソコンCADで撮影の都度映像での座標値を読取って評価しながら進める。
例として、カメラはCANON EosKissX4 ピクセル数5134*3456である。映像面矩形の横縦の比はこの比と同じにしないと、歪んでしまう。
【0032】
測定データの保存については、件名毎にプログラム名を書換えてセーブすることで対応する。計算が速いので、測点の空間座標値は保存せず、測点のA映像面座標値とB映像面座標値からその都度計算します。
【産業上の利用可能性】
【0033】
製造工場での製品形状の検証、地形・構造物の測量、天体測量、更にカメラキャリブレーションをピント範囲について連続性を持たせることで、シャッター高速化に対応させての、移動体搭載連続撮影映像を扱う写真測量等に活用できる。
【符号の説明】
【0034】
各図中において、対応しているので、割愛する。
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