(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181032
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】金属溶湯の逆流防止方法及び鋳造方法
(51)【国際特許分類】
B22C 9/08 20060101AFI20231214BHJP
B22D 18/04 20060101ALI20231214BHJP
B22D 17/22 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B22C9/08 B
B22C9/08 E
B22D18/04 W
B22D17/22 S
B22D17/22 T
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022104072
(22)【出願日】2022-06-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】309010896
【氏名又は名称】有限会社ファンドリーテック・コンサルティング
(72)【発明者】
【氏名】五家 政人
(72)【発明者】
【氏名】森田 茂隆
(72)【発明者】
【氏名】矢野 健太郎
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093PA02
(57)【要約】
【課題】加圧、減圧、差圧、重力のいずれか一つ以上を用いて溶湯を鋳型に注湯する鋳造方法において、簡単な方案構成の溶湯逆流防止方法及びこれを用いた鋳造方法を提供する。
【解決手段】湯道または湯口の一部に、錐台の小径側を注湯時の上流側に向けて配設したゲートを設けるとともに、該ゲートの中に、これと嵌合する錐面を有する錐台でその大径側に突起を設けた形状の耐火性材料からなるゲート中子を設置する方案構成とすることで、溶湯の逆流を防止する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯を鋳型に注湯する鋳造方法において、湯道又は湯口の一部に、錐台形状でその小径側を注湯流の上流側に向けて配設したゲートを設けるとともに、該ゲートの中に、ゲートの錐面と嵌合する錐面を有する錐台形状で、その大径側に溶湯が流れる流路を形成するための突起を設けた耐火性鋳型からなるゲート中子を設置することによって、注湯時の上流側からの溶湯の流れによってゲ-ト中子がゲートの大径側に移動し、ゲート中子の突起がゲートの大径側に当接して溶湯の流路を形成することで溶湯の流れを許容し、注湯後の下流側からの溶湯の流れに対してゲート中子がゲートの小径側に移動してゲートの錐面に嵌合して溶湯の流れを止めることを特徴とする金属溶湯の逆流防止方法。
【請求項2】
請求項1記載の溶湯の逆流防止方法を用いて溶湯を鋳型に注湯するにあたり、該鋳型の全鋳型キャビティーの一部である溶湯を充填させたい所望のキャビティー部分とほぼ等しい体積の溶湯を注湯し、その後速やかに湯口から圧縮ガスを送気して前記ゲートの中のゲート中子をゲートの大径側に移動させ、注湯された溶湯を所望のキャビティー部分に充填するとともに逆流を防止することを特徴とする鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属溶湯を鋳型に注湯する鋳造方法において、注湯した溶湯が逆流しないようにする溶湯の逆流防止方法及びこれを用いた鋳造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
重力を用いて溶湯を鋳型に注湯する鋳造方法においては、本願発明者らは特願2005-268163において、重力を用いた注湯(以下、重力注湯という)と加圧を組み合わせた鋳造方法として、全鋳型キャビティーの一部である所望のキャビティー部分とほぼ等しい体積の注湯後、湯口から圧縮ガスを送気して所望のキャビティー部分のみに溶湯を充填して凝固させる鋳造方法を出願している。この方法では、充填された溶湯の最後部が凝固して逆流が生じないようになるまで加圧を保持しなくてはならないという問題点があった。
【0003】
また、同じく本願発明者らは特願2009-123998において、重力注湯と加圧及び耐火性粒状物の送り込みを組み合わせた鋳造方法として、全鋳型キャビティーの一部である所望のキャビティー部分とほぼ等しい体積の注湯後、湯口から圧縮ガスと耐火性粒状物の送り込みによって所望のキャビティー部分のみに溶湯を充填する鋳造方法を出願している。この方法では、溶湯の充填後すぐに圧縮ガスと耐火性粒状物の送り込みを止めることができるようになった。しかし、この方法では、耐火性粒状物を貯留するタンクが必要、送り込み量の計量が必要、耐火性粒状物の補充が必要などの問題点があった。
【0004】
また、加圧、減圧、差圧などを用いて溶湯を鋳型に注湯する鋳造方法は広く鋳造全般に実施されている。しかし、その工程上加圧、減圧、差圧などの作用圧を用いて注湯が行われるので、注湯後に溶湯が凝固するまでその作用圧を保持するか、作用圧とは別の強制的外力によって鋳型キャビティー内に充填された溶湯の逆流を止めることが行われている。つまり、鋳造工程が溶湯充填工程と逆流防止工程の2つから構成されている。そのため、工程時間が延びる、あるいは強制的逆流防止装置が必要などの問題がある。
【先行技術文献】
【0005】
その他に、溶湯の逆流を防止する特許出願は幾つかあり、その主要なものを下記に示す。
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-206785号公報
【特許文献2】特開2015-193016号公報
【特許文献1】特開2008-093729号公報
【特許文献2】特開平11-320071号公報
【特許文献3】特開平10-052737号公報
【特許文献4】特開平10-015656号公報
【特許文献5】特開平07-124695号公報
【特許文献6】特開平06-238417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の従来技術の問題点に鑑み、金属溶湯を鋳型に注湯する鋳造方法において、注湯した溶湯が逆流しないようにする新規な溶湯の逆流防止方法及びこれを用いた鋳造方法を提供するものである。これによって、鋳造工程が溶湯充填工程のみで完了するようになるので、工程時間が短縮される、及び複雑な強制的逆流防止装置あるいは手段を用いなくてよいなどの効果が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(手段1)
金属溶湯を鋳型に注湯する鋳造方法において、湯道又は湯口の一部に、錐台形状でその小径側を注湯流の上流側に向けて配設したゲートを設けるとともに、該ゲートの中に、ゲートの錐面と嵌合する錐面を有する錐台形状で、その大径側に溶湯が流れる流路を形成するための突起を設けた耐火性鋳型からなるゲート中子を設置することによって、注湯時の上流側からの溶湯の流れによってゲ-ト中子がゲートの大径側に移動し、ゲート中子の突起がゲートの大径側に当接して溶湯の流路を形成することで溶湯の流れを許容し、注湯後の下流側からの溶湯の流れに対してゲート中子がゲートの小径側に移動してゲートの錐面に嵌合して溶湯の流れを止めることを特徴とする溶湯の逆流防止方法である。
【0009】
以下、本手段の構成、作用、効果について詳細に説明する。通常、鋳型の鋳造方案は、製品部、押湯、湯道、湯口から構成されており、これらの空洞部分をキャビティーと称している。しかし、鋳造方法や材質によっては、押湯がない場合や、湯道と湯口が兼用になって単に湯道又は湯口と呼ばれる場合もある。
【0010】
本手段では、構成要件の1つとして、湯道または湯口の一部に、錐台形状(円錐台又は角錐台など)であって、その小径部を注湯時の上流側に向けて配設したゲートを設ける。湯口または湯道の一部にとしたのは、上記のように、湯道と湯口が兼用になって単に湯道又は湯口と呼ばれる場合があるためで、いずれも溶湯を流す流路の一部に配置するという意味である。
【0011】
ゲートの形状である錐台は錐面(テーパ面)を有しており、後述する2つ目の構成要件であるゲート中子と嵌合する機能を有するものである。ゲートは注湯時の上流側(湯口側あるいは鋳込み口側)及び下流側(製品部側あるいは押湯側)の湯道あるいは湯口とつなぐのに容易な形状であれば適宜に変形したものを用いることができる。
【0012】
ゲートの錐台の小径部を注湯時の上流側に向けて配設したのは、ゲート中子が注湯時に上流側からの溶湯の流れによって下流側に移動し、注湯後の逆流作用によって上流側に移動することに対応するためである。
【0013】
構成要件の2つ目として、上記ゲートの中に、これと嵌合する錐面を有する錐台形状あって、その大径側に溶湯が流れる流路を形成するための突起を設けた形状の耐火性材料からなるゲート中子を設置する。このゲート中子は、注湯時に上流側からの溶湯の流れによって下流側に移動し、注湯後の下流側からの逆流作用によって上流側に移動する作用をするものである。当然、ゲート中子は、ゲートと錐面を同一方向に向けて設置する。
【0014】
ゲート中子は、ゲートの中で注湯時の上流側からの溶湯の流れ及び注湯後の下流側からの逆流作用で移動するものであるから、基本的にはゲートよりもその長さは短く、ゲートに嵌合する錐面を有する錐台である。ただし、ゲート中子が注湯時に上流側からの溶湯の流れによって下流側に移動し、注湯後の下流側からの逆流作用によって上流側に移動する作用に支障がない範囲で、ゲート中子の長さは調節することは可能である。
【0015】
ゲート中子は、錐台の大径側に突起を設けた形状としたのは次の理由による。つまり、注湯時の上流側からの流れにたいしてゲート中子が下流側に移動したときに、ゲート中子の大径側はゲートの大径側に当接しその部分に溶湯が流れる流路を形成させるようにしたものである。この突起の形状、個数、配置などは、必要量の溶湯が流れる流路を形成できるものであればよい。詳細は実施例において説明する。
【0016】
ゲート中子は、溶湯の熱に耐えうる耐火性材料を成型して用いる。耐火性材料としては、シェル鋳型、自硬性鋳型などの砂で成型したものが最も安価で、かつ鋳型に混入しても無害であるので利用が容易である。また、場合によっては、耐火材あるいはセラミックスなども必要に応じて使うことができる。
【0017】
上記2つの構成要件によって、溶湯の逆流防止作用を発生させることができる。すなわち、注湯時の上流側からの溶湯の流れによってゲ-ト中子がゲートの大径側に移動してゲート中子の突起がゲートの大径部に当接する。この状態で、ゲート錐面とゲート中子錐面の間には隙間が確保されて溶湯が流れる流路が形成されており、またゲートの大径側はゲート中子の突起と当接しており、ここにも溶湯が流れる流路が形成されているので、溶湯は上流側から下流側へ流れることが許容される。
【0018】
次に注湯後の下流側からの溶湯の流れすなわち逆流にたいして、逆流しようとする溶湯に押されてゲート中子がゲート部の小径側に移動してゲート中子の錐面がゲートの錐面に嵌合して溶湯の流れを止める。すなわち、本手段では、溶湯の逆流しようとする流れそのものによって逆流防止作用がなされることになる。
【0019】
この結果、重力鋳造では、先行技術に示した2件の鋳造方法において、注湯後に圧縮ガスによって加圧又は圧縮ガスと耐火性粒状物を送り込むなどの溶湯充填方法における加圧保持時間や、耐火性粒状物の送り込みなどは不要になり、圧縮ガスの加圧工程だけで溶湯の充填が完了する。すなわち、大幅な工程短縮と装置の簡素化が得られる。
【0020】
また、加圧、減圧、差圧などの作用圧によって溶湯を鋳型キャビティーに充填した後に、溶湯が凝固するまで作用圧を保持するので工程時間が延びる、あるいは強制的な逆流防止装置による遮断などが必要という問題があった。つまり、溶湯の充填工程と逆流防止工程の2工程で鋳造工程が構成されていた。本手段では溶湯の流れそのものによって逆流防止作用がなされるので、作用圧で溶湯を鋳型キャビティーへ充填する工程だけで鋳造工程は完了する。
【0021】
以上のように、重力、加圧、減圧、差圧、のひとつ以上を用いて溶湯を鋳型に注湯する鋳造方法において、従来、鋳造工程は溶湯の充填工程と逆流防止工程の2段階の工程で構成されていた。これにたいし本手段を用いることによって、溶湯の充填工程と同時に逆流防止がなされるので、鋳造工程は溶湯の充填工程のみで完了することができる。つまり、逆流防止のための保持時間も、強制的逆流防止装置も不要になり、大幅な工程短縮と工程単純化が得られることになる。
【0022】
(手段2)
手段1記載の溶湯の逆流防止方法を用いて溶湯を鋳型に注湯するにあたり、該鋳型の全鋳型キャビティーの一部である溶湯を充填させたい所望のキャビティー部分とほぼ等しい体積の溶湯を注湯し、その後速やかに湯口から圧縮ガスを送気して前期ゲートの中のゲート中子をゲートの大径側に移動させ、注湯された溶湯を所望のキャビティー部分に充填するとともに逆流を防止することを特徴とする鋳造方法である。
【0023】
本手段の目的は、手段1の逆流防止方法を用いて、全鋳型キャビティーのうち、溶湯を充填させたい所望のキャビティー部分のみに溶湯を充填して凝固させることである。
【0024】
本手段の構成要件は次の3つである。手段1の逆流防止方法を用いること、全キャビティーの体積よりも小さい溶湯を充填させたい所望のキャビティー部分の体積とほぼ等しい体積の溶湯を注湯すること、及び注湯後、湯口から圧縮ガスを送気して溶湯を所望のキャビティー部分に充填して逆流を防止することである。
【0025】
本手段の作用効果を先行技術の重力注湯の例に記した所望のキャビティー部分のみの溶湯を充填する鋳造法について説明する。先ず手段1のゲート及びゲート中子を用いた鋳型に、溶湯を充填させたい所望のキャビティー部分の体積とほぼ等しい体積の溶湯を注湯する。溶湯は手段1で説明したように、ゲートとゲート中子の作用によって上流側から下流側へ流れる。しかし、注湯する溶湯量は全鋳型キャビティーの体積よりも小さいので、溶湯は所望のキャビティー部分を完全に充填することはできず、キャビティー全体に分散して滞留する。そこで、注湯後、速やかに湯口から圧縮ガスを送気して溶湯を所望のキャビティー部分に充填する工程を行う。この場合も、ゲートとゲート中子の作用によって上流側から下流側へ流れ、溶湯は所望のキャビティー部分に充填される。その後、すぐに圧縮ガスの送気を止めても、溶湯は手段1で説明した溶湯の逆流防止作用によって、溶湯の逆流は止められることになる。
【0026】
つまり、本手段の効果によって、圧縮ガスの送気による溶湯充填工程のみで鋳造工程が完了する。したがって、圧縮ガスを送気する保持時間、あるいは逆流防止のための特別な溶湯遮断などの複雑な工程は不要になり、大幅な工程短縮と単純化が得られる。
【0027】
その結果、注湯された全鋳型キャビティーよりも体積の小さい溶湯は、所望のキャビティー部分のみに充填された状態で鋳造工程が完了することになる。例えば所望のキャビティー部分としては製品部と押湯などとし、湯道と湯口の部分がない鋳造品が得られるので、大幅に鋳造歩留りが向上する。場合によっては、製品部のみ、あるいは製品部と押湯と湯道の一部を所望のキャビティー部分として選択することも可能である。所望のキャビティー部分は任意に選択できる。詳細は実施例にて説明する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によって従来の鋳造法に比べ次のような効果が得られた。(1)重力注湯と加圧を組合せ、全鋳型キャビティーのうちの所望のキャビティー部分のみに溶湯を圧縮ガスによって充填する鋳造方法において、鋳造工程の大幅な工程短縮と単純化ができた。その結果、鋳造歩留りの大幅な向上が容易に得られるようになった。(2)加圧、減圧、差圧などの作用圧を用いて溶湯を鋳型に注湯する鋳造方法において、従来の鋳造工程が溶湯充填工程と逆流防止工程の2工程から構成されていたものが、溶湯の充填工程のみで鋳造工程が完了することができるようになり、大幅な工程短縮と工程単純化ができた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】 本発明の手段1を用いた実施例1のゲートとゲート中子を示す図である。
【
図2】 本発明の手段1を用いた実施例1のゲート中子の大径側の形状を示す図である。
【
図3】 本発明の手段1を用いた実施例2の水平流れの場合の作用を示す図である。
【
図4】 本発明の手段1を用いた実施例3の重力方向垂直流れの場合の作用を示す図である。
【
図5】 本発明の手段1を用いた実施例4の反重力方向垂直流れの場合の作用を示す図である。
【
図6】 本発明の手段2を用いた実施例5の平込め鋳造における注湯前の状態を示す図である。
【
図7】 本発明の手段2を用いた実施例5の注湯後の状態を示す図である。
【
図8】 本発明の手段2を用いた実施例5の圧縮ガスによる加圧充填の状態を示す図である。
【
図9】 本発明の手段2を用いた実施例5の圧縮ガスによる加圧充填を停止した状態を示す図である。
【
図10】 本発明の手段2を用いた実施例6の縦型鋳造における注湯後の状態を示す図である。
【
図11】 本発明の手段2を用いた実施例6の注湯後に圧縮ガスによる加圧充填の状態を示す図である。
【
図12】 本発明の手段2を用いた実施例6の圧縮ガスによる加圧充填を停止した状態を示す図である。
【
図13】 本発明の手段1を用いた実施例7の加圧鋳造における注湯前のゲート中子の設置状態を示す図である。
【
図14】 本発明の手段1を用いた実施例7の加圧注湯中のゲート中子の作用を示す図である。
【
図15】 本発明の手段1を用いた実施例7の注湯後に加圧を停止した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を実施する最良の形態は、手段1に示した溶湯逆流防止方法を重力鋳造、加圧鋳造、減圧鋳造、差圧鋳造、及び所望のキャビティー部分のみに溶湯を充填する鋳造方法などの湯道又は湯口に用いることである。
【0031】
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例0032】
手段1を用いた実施例1について
図1、2で説明する。本実施例では、先ず本願の溶湯の逆流防止方法に用いるゲート及びゲート中子について説明する。
図1(a)は、ゲート1が上流側湯道2と下流側湯道3の間に配設されている状態を示している。溶湯の流れ4は矢印で示している。ゲート1は錐台形状で錐面5を有しており、その小径側6を溶湯の流れ4の上流側2に向け、大径側7を下流側3に向けて配設されている。
図1(b)は、ゲート1の中に設置する耐火性鋳型からなるゲート中子8を示す。ゲート中子8はゲート1の錐面5に嵌合する錐面9を有する錐台形状で、小径側10と大径側11及び大径側11の端面に設けた突起12から構成されている。錐台形状としては、円錐台が簡便であるが、四角錐台及び多角形錐台でもよい。
【0033】
図2(a)、(b)、(c)はゲート中子8の大径側11から見た図である。(a)は円錐台の場合の上記突起12として3カ所に円柱状の突起12を設けたもので、溶湯の流れによってこの突起12がゲート1の大径側7に当接して溶湯の流れ4の流路を形成する。(b)は同じく円錐台の場合の突起12の別の形状例で、突起12を略長方形として2か所設けたものである。(c)は四角錐台の場合の突起12の形状例で、4ヵ所に突起12を設けたものである。このように、この突起12の形状、個数、長さ、配置などは、溶湯の流れによって突起12がゲート1の大径側7に当接して、この部分に溶湯の流れ4の流路が確保されるものであれば適宜に決めることができる。以上が本願に用いる溶湯の逆流防止のための基本の方案要素である。この作用、効果については実施例2において説明する。
ゲート中子8は、溶湯の熱に耐えうる耐火性材料を成型して用いる。耐火性材料としては、シェル鋳型、自硬性鋳型などの砂で成型したものが最も安価で、かつ鋳型に混入しても無害であるので利用が容易である。また、場合によっては、耐火材あるいはセラミックスなども必要に応じて使うことができる。本例では、シェル鋳型を用いた。
(c)次に注湯後の下流側3からの溶湯の流れにたいして逆流しようとする溶湯13に押されてゲート中子8がゲート1の小径側6に移動してゲート中子8の錐面9がゲート1の錐面5に嵌合して溶湯の流れを止める。すなわち、本手段では、溶湯の流れそのものによって逆流防止作用がなされることになる。
このように、湯道の一部にゲート1を配設し、このゲート1の中に溶湯が流れる流路を形成するための突起8を設けたゲート中子8を設置するという簡単な構成で、溶湯の上流側からの流れを許容し、下流側からの溶湯の流れすなわち逆流を溶湯の流れ自体によって止めて逆流防止することができる。