(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181038
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】アンテナ装置、および通信装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/30 20060101AFI20231214BHJP
H01Q 9/16 20060101ALI20231214BHJP
H01Q 15/14 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01Q19/30
H01Q9/16
H01Q15/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112541
(22)【出願日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2022094689
(32)【優先日】2022-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱邉 太一
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA06
5J020BC09
5J020BD03
5J020BD04
5J020DA03
(57)【要約】
【課題】背面方向の利得を抑制した、所定の指向性を有するアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置は、メタマテリアル層と、グランド層と、前記メタマテリアル層を挟んで前記グランド層とは反対側の第1の層とを少なくとも含む複数の層から構成される基板と、前記第1の層に設けられ、給電される第1の共振器と、前記第1の層において前記第1の共振器の短手方向の両側に、前記第1の共振器の長手方向に沿って設けられた2つの導体から構成される第2の共振器と、を備え、前記第2の共振器の2つの導体はそれぞれ、一方の端部が前記グランド層に接続される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタマテリアル層と、グランド層と、前記メタマテリアル層を挟んで前記グランド層とは反対側の第1の層とを少なくとも含む複数の層から構成される基板と、
前記第1の層に設けられ、給電される第1の共振器と、
前記第1の層において前記第1の共振器の短手方向の両側に、前記第1の共振器の長手方向に沿って設けられた2つの導体から構成される第2の共振器と、
を備え、
前記第2の共振器の2つの導体はそれぞれ、一方の端部が前記グランド層に接続される、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記グランド層に接続された側の前記2つの導体の端部は、前記長手方向において反対側に位置する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記グランド層に接続された側の前記2つの導体の端部は、前記長手方向において同じ側に位置する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の共振器は、2つの導体から構成され、
前記第1の共振器の2つの導体のうちの一方が給電され、他方が前記グランド層に接続される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第2の共振器の前記長手方向における長さは、前記アンテナ装置の出力電波の波長の半分の長さである、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置を有し、
前記第1の層が前面側に位置し、
前記グランド層が背面側に位置する、
通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置、および通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナ装置を備えた通信装置が、所定の空間に複数台設けられ、利用される環境がある。例えば、所定の空間としては航空機内の空間が該当し、通信装置としては航空機内の各座席に備えられた表示装置などが挙げられる。このような環境下では、通信装置それぞれの通信が互いに干渉することを抑制し、適切な指向性による信号を送受信することを実現することが求められている。例えば、特許文献1では、所定の方向に指向性が得られるアンテナの構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上述した従来の事情を鑑みて案出され、所定の指向性を有するアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、メタマテリアル層と、グランド層と、前記メタマテリアル層を挟んで前記グランド層とは反対側の第1の層とを少なくとも含む複数の層から構成される基板と、前記第1の層に設けられ、給電される第1の共振器と、前記第1の層において前記第1の共振器の短手方向の両側に、前記第1の共振器の長手方向に沿って設けられた2つの導体から構成される第2の共振器と、を備え、前記第2の共振器の2つの導体はそれぞれ、一方の端部が前記グランド層に接続される、アンテナ装置を提供する。
【0006】
また、本開示は、アンテナ装置を有し、前記アンテナ装置は、メタマテリアル層と、グランド層と、前記メタマテリアル層を挟んで前記グランド層とは反対側の第1の層とを少なくとも含む複数の層から構成される基板と、前記第1の層に設けられ、給電される第1の共振器と、前記第1の層において前記第1の共振器の短手方向の両側に、前記第1の共振器の長手方向に沿って設けられた2つの導体から構成される第2の共振器と、を備え、前記第2の共振器の2つの導体はそれぞれ、一方の端部が前記グランド層に接続され、前記第1の層が前面側に位置し、前記グランド層が背面側に位置する、通信装置を提供する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本開示の表現を装置やシステムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、背面方向の利得を抑制した、所定の指向性を有するアンテナ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係るアンテナ装置を備える通信装置の外観斜視図
【
図2】実施の形態1に係るアンテナ装置の基板外形を示す概略図
【
図3】実施の形態1に係るアンテナ装置の前面側から見た外観図
【
図4】実施の形態1に係るアンテナ装置の基板断面の例を示す図
【
図5】実施の形態1に係るアンテナ装置の基板断面の例を示す図
【
図6】実施の形態1に係るアンテナ装置の基板断面の例を示す図
【
図7】実施の形態1に係るアンテナ装置の層構造の例を示す図
【
図8】比較対象としての従来のアンテナ装置の前面側から見た外観図
【
図9】実施の形態1に係るアンテナ装置の電界分布を説明するための図
【
図10】実施の形態1に係るアンテナ装置の利得を説明するための図
【
図11】実施の形態1に係る通信装置の設置例を説明するための図
【
図12】実施の形態2に係るアンテナ装置の前面側から見た外観図
【
図13】実施の形態2に係るアンテナ装置の基板断面の例を示す図
【
図14】実施の形態2に係るアンテナ装置の電界分布を説明するための図
【
図15】実施の形態2に係るアンテナ装置の利得を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示に至る経緯)
従来、アンテナ装置を備えた通信装置が、狭い空間に複数台備えられるような環境がある。このような環境下では、各通信装置の通信が干渉しないように、所定の指向性を有するアンテナ装置が用いられることが望ましい。また、近年、通信装置の小型化やアンテナ装置の設置位置や取付構造の制限など、アンテナ装置の通信に影響を与える制約を考慮する必要がある。特に、狭い空間に複数台の通信装置が一定の規則性を有する配置にて備えられるような環境下においては、所定の方向、例えば、通信装置の背面側への利得を低減させて、通信の干渉を抑制することが求められる。例えば、特許文献1では、上記のような環境下でのアンテナ装置の利用については、十分に検討されてはいない。
【0011】
以下、添付図面を適宜参照しながら、本開示に係るアンテナ装置、および通信装置を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、あるいは、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されない。
【0012】
<実施の形態1>
以下に説明する実施の形態1では、2.4GHz帯(例えば、2400~2500MHz)の周波数を動作周波数とし、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)の規格に準拠した無線通信が可能なアンテナ装置を例に挙げて説明する。なお、上記の規格に限定するものではなく、他の規格に準拠した周波数帯の無線通信を対象として適用してもよい。
【0013】
[装置構成]
図1は、本実施の形態に係るアンテナ装置100が搭載された通信装置1の外観を示す外観斜視図である。以下の説明において、各図に示すXYZ軸は対応しているものとして説明する。X軸は、通信装置1の厚み方向、すなわち、前後方向に対応する。Y軸は、通信装置1の幅方向、すなわち、アンテナ装置100の長手方向に対応する。Z軸は、通信装置1の高さ方向、すなわち、アンテナ装置100の短手方向に対応する。
【0014】
通信装置1は、例えば、Bluetooth(登録商標)の無線通信が利用可能な航空機内の乗客用座席の背面部に取り付けられたシートモニタである。なお、本実施の形態に係るアンテナ装置100が配置される通信装置1は、シートモニタに限定するものではない。通信装置1には、例えば、ガラス等のパネルを用いた表示部(例えば、タッチパネル)が前面側に設けられる。ユーザである乗客が、表示部に対向するように乗客用座席に着席した状態で、通信装置1が利用される。例えば、通信装置1は、画像などのデータを表示部に表示させたり、ユーザによる操作を、表示部を介して受け付けたりする。また、通信装置1は、アンテナ装置100を介して、ユーザが保持しているスマートフォンやタブレット端末などの通信機器(不図示)との間でBluetooth(登録商標)による無線通信を行うことが可能である。
【0015】
アンテナ装置100は、各部位が実装されたプリント配線基板が保護用のカバー(不図示)に包囲され、通信装置1の筐体の所定の位置に固定的に配置される。
図1の例では、アンテナ装置100は、通信装置1の表示部周りのフレームの下方中央部付近に配置されている。アンテナ装置100は、通信装置1の前面(例えば、タッチパネル側)から航空機後方側の乗客用座席の正面方向、すなわち、通信装置1を利用するユーザの方向に向けて、Bluetooth(登録商標)の2.4GHz帯の偏波(電磁波)を放射する。破線10は、アンテナ装置100による利得の範囲を概念的に示している。アンテナ装置100の詳細な構成例および利得については後述する。
【0016】
図2は、本実施の形態に係るアンテナ装置100の基板外形を示す概略図である。本実施の形態に係るアンテナ装置100の基板は、矩形形状である。基板の長手方向(Y軸方向)の長さをLとし、短手方向(Z軸方向)の長さをWとして示す。基板の形状やサイズは特に限定するものではないが、後述する基板背面の利得を低減することを想定した場合、2GHz帯では、例えば、Wが30mm以上必要となる。
【0017】
アンテナ装置100が通信装置1に設置される場合、その周辺には、通信装置1の金属フレームなどの金属構造体が位置する。更には、通信装置1は乗客用座席に設置され、その設置のための金属片がアンテナ装置100の周囲に位置することとなる。つまり、アンテナ装置100は、通信装置1に設置されることに伴って、金属構造体に囲まれることとなり、周辺にある金属の影響を受けやすく、アンテナとしての性能(例えば、利得あるいはVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)の周波数特性)の低下も懸念される。
【0018】
本実施の形態では、アンテナ装置としての性能の低下を抑制しつつ、通信装置1の後方への利得を抑制して、所望の指向性を実現する構成例について説明する。
【0019】
図3は、本実施の形態に係るアンテナ装置100を通信装置1の前面側からX軸に沿って見た外観図である。アンテナ装置100は、複数の層を含む層構造の積層基板にて構成される。
図3では、一部の構成が透過した状態を示している。
【0020】
本実施の形態に係るアンテナ装置100では、ダイポールアンテナを例に挙げて説明する。ダイポールアンテナは、複数の層を有する積層基板であるプリント配線基板上に形成され、表面の金属箔をエッチング等することによってダイポールアンテナのパターンを形成している。複数の層のそれぞれは、例えば、銅箔或いはガラスエポキシ等で構成される。本実施の形態に係るアンテナ装置100は、第1の層の一例としてのアンテナ層110、AMC(Artificial Magnetic Conductor)層120、およびグランド層130を少なくとも備える。
【0021】
アンテナ層110には、給電アンテナの一例としてのストリップ導体であるアンテナ導体111、および、非給電アンテナの一例としてのストリップ導体であるアンテナ導体112を備える。アンテナ導体111には、給電するためのビア導体113が接続される。アンテナ導体112には、グランド(GND)に接続するためのビア導体114が接続される。アンテナ導体111、112は、第1の共振器として機能する。本実施の形態において、アンテナ導体111、112はそれぞれ、長手方向の長さがλ/4となるように構成される。ここで、λは、周波数を示す。
【0022】
さらに、アンテナ導体111、112をZ軸方向の両側にて挟むように、非給電アンテナの一例としてのストリップ導体であるアンテナ導体115、117を備える。アンテナ導体115には、グランドに接続する(短絡する)ためのビア導体116が接続される。アンテナ導体117には、グランドに接続する(短絡する)ためのビア導体118が接続される。ビア導体116とビア導体118はそれぞれアンテナ導体115、117の端部に接続され、その配置がY軸方向において逆側となるように構成される。アンテナ導体115、117は、第2の共振器として機能する。本実施の形態において、アンテナ導体115、117はそれぞれ、長手方向の長さがλ/2となるように構成される。
【0023】
AMC層120は、PMC(Perfect Magnetic Conductor)特性を有するメタマテリアルにて構成されるメタマテリアル層であり、所定の金属パターンにより形成される。グランド層130は、例えば、導電性を有する銅箔を用いて形成される。
【0024】
図4~
図7を用いて、アンテナ装置100の層構造について説明する。
図4は、
図3にて示したアンテナ装置100の第1の共振器(アンテナ導体111、112)の位置において、Z軸に沿って見た場合の断面形状を示す。アンテナ導体111は、給電アンテナとして機能するため、X軸方向に沿って設けられたビア導体113を介して、不図示の給電端子に接続される。このとき、AMC層120には、ビア導体113が貫通するための貫通孔が設けられる。アンテナ導体112は、非給電アンテナとして機能するため、X軸方向に沿って設けられたビア導体114を介して、GND層130に接続される。したがって、給電アンテナであるアンテナ導体111は給電端子に接続され、AMC(AMC層120)およびGND(GND層130)に非接続となる。一方、非給電アンテナであるアンテナ導体112はAMC(AMC層120)およびGND(GND層130)に接続され、給電端子には非接続となる。
【0025】
ビア導体113は、例えば、導電性を有する銅箔を用いて形成され、アンテナ導体111の給電点と、不図示の無線通信回路との間の給電線を構成する。無線通信回路は、例えば、通信装置1内部に設けられ、通信のための各種信号を処理するための回路である。ビア導体114は、例えば、導電性を有する銅箔を用いて形成され、アンテナ導体112の給電点と不図示の無線通信回路との間の接地線を構成する。
【0026】
アンテナ導体111、112はそれぞれ、例えば、ダイポールアンテナを構成するように長方形状または略長方形状を有し、それらの長手方向が一直線上でY軸方向に沿って延在している。また、アンテナ導体111、112それぞれから放射される電磁波の相殺を極力少なくするために、アンテナ導体111、112の対向する給電点側の端部が所定間隔だけ隔離するように配置される。
【0027】
図5は、
図3にて示したアンテナ装置100の第2の共振部(アンテナ導体115)の位置において、Z軸に沿って見た場合の断面形状を示す。アンテナ導体115は、非給電アンテナとして機能するため、X軸方向に沿って設けられたビア導体116を介して、GND層130に接続される。したがって、非給電アンテナであるアンテナ導体115はGND(GND層130)に接続され、給電端子およびAMC(AMC層120)には非接続となる。
【0028】
図6は、
図3にて示したアンテナ装置100の第2の共振部(アンテナ導体117)の位置において、Z軸に沿って見た場合の断面形状を示す。アンテナ導体117は、非給電アンテナとして機能するため、X軸方向に沿って設けられたビア導体118を介して、GND層130に接続される。したがって、非給電アンテナであるアンテナ導体117はGND(GND層130)に接続され、給電端子およびAMC(AMC層120)には非接続となる。
【0029】
図7は、アンテナ装置100の層構造と、各層の構成例を示す図である。なお、この層構造は、本実施の形態に係る箇所のみに着目して示しており、更なる層を含んで構成されてよい。
図7(a)に示すように、アンテナ装置100は、X軸方向の前面側から順に、アンテナ層110、誘電体基板140、AMC層120、誘電体基板150、グランド層130が設けられる。更に、アンテナ装置100は、コの字状のフレーム1100にて周囲を囲まれるように設置される。言い換えると、通信装置1の前面側のみがフレーム1100にて囲まれていない状態となる。
【0030】
図7(b)には、X軸に沿ってアンテナ装置100の前面側から見たアンテナ層110、AMC層120、およびグランド層130それぞれの概略構成が示されている。
【0031】
図8は、本実施の形態のアンテナ装置100との比較するための従来のアンテナ装置200の構成例を示す。
図8に示すアンテナ装置200は、
図3に示した本実施の形態のアンテナ装置100との差分として、第2の共振部(アンテナ導体115、117)が無い構成である。したがって、従来構成におけるアンテナ装置200のアンテナ導体211、212、ビア導体213、214はそれぞれ、本実施の形態のアンテナ装置100のアンテナ導体111、112、ビア導体113、114と同等である。
【0032】
図9は、本実施の形態に係るアンテナ装置100の電界分布の例を示す。ここでは、電界の強度に応じて、異なる色にて示している。
図9に示すように、λ/2の長さを有する第2の共振部(アンテナ導体115、117)にて電界が生じるように構成される。
【0033】
[利得]
図10は、本実施の形態に係るアンテナ装置100と、従来の構成に係るアンテナ装置200との利得の比較結果を示す図である。範囲1001は、本実施の形態に係るアンテナ装置100の利得を示し、範囲1002は、従来の構成に係るアンテナ装置200の利得を示す。これらを比較すると、差分1003に示すように、アンテナ装置100では、後方側(つまり、通信装置1の背面側)の利得を、従来のアンテナ装置200の利得に比べて低減することが可能となっている。つまり、新たに設けられた2つの第2の共振器により、AMC層120の下部に配置されたグランド層130の共振を低減させている。
【0034】
図11は、本実施の形態に係るアンテナ装置100と、従来構成のアンテナ装置200を航空機内に設置した場合の利得を説明するための概念図である。範囲1001は、
図10にて示したアンテナ装置100の利得に対応し、範囲1002は、
図10にて示したアンテナ装置200の利得に対応する。このような環境下では、通信装置1の背面側の利得を低減することで信号の干渉を抑制することができる。一方、通信装置1の前面側の利得は極力低減させないようにすることで、例えば、ユーザが所持する機器との通信を妨げることを抑制することができる。
【0035】
以上、本実施の形態により、アンテナ装置100は、AMC層120と、グランド層130と、AMC層120を挟んでグランド層130とは反対側のアンテナ層110とを少なくとも含む複数の層から構成される基板と、アンテナ層110に設けられ、給電される第1の共振器(アンテナ導体111、112)と、アンテナ層110において第1の共振器の短手方向の両側に、第1の共振器の長手方向に沿って設けられた2つの導体から構成される第2の共振器(アンテナ導体115、117)と、を備え、第2の共振器の2つの導体はそれぞれ、一方の端部がグランド層130に接続される。
【0036】
これにより、背面方向の利得を抑制した、所定の指向性を有するアンテナ装置を提供することが可能となる。特に、AMC層の下部に配置されたグランド層の共振を低減させ、アンテナ装置100の背面側の利得を低減することが可能となる。
【0037】
また、グランド層130に接続された側の2つの導体(アンテナ導体115、117)の端部は、長手方向(例えば、Y軸方向)において反対側に位置する。
【0038】
これにより、背面方向の利得を抑制した、所定の指向性を有するアンテナ装置を構成する際に、2つのアンテナ導体それぞれと、グランド層との接続において、基板の長手方向にて反対となるような設計が可能となる。
【0039】
また、アンテナ装置100の第1の共振器は、2つの導体(アンテナ導体111、112)から構成され、第1の共振器の2つの導体のうちの一方(アンテナ導体111)が給電され、他方(アンテナ導体112)がグランド層130に接続される。
【0040】
これにより、ダイポールアンテナを用いた、所定の指向性を有するアンテナ装置を提供することが可能となる。
【0041】
また、アンテナ装置100の第2の共振器の長手方向における長さは、アンテナ装置100の出力電波の着目周波数λの半分の長さである。
【0042】
これにより、着目する周波数λに対応して、所定の指向性を有するアンテナ装置を提供することが可能となる。
【0043】
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2について、説明する。なお、実施の形態1と重複する箇所については説明を省略し、差分に着目して説明する。
【0044】
図12は、本実施の形態に係るアンテナ装置300を通信装置1の前面側からX軸に沿って見た外観図である。実施の形態1の
図3に示したアンテナ装置100との差分は、ビア導体318の位置である。アンテナ装置300では、ビア導体316とビア導体318がY軸方向において同じ位置に配置されている。すなわち、2つのアンテナ導体315、317とGND層330との接続構成が、実施の形態1の構成とは異なる。このような構成において、アンテナ導体315、317は、第2の共振器として機能する。上記以外の構成については、実施の形態1のアンテナ装置100と同様である。
【0045】
図13は、本実施の形態に係るアンテナ装置300の層構造を説明するための図である。
図13(a)は、
図12にて示したアンテナ装置300の第2の共振器の1つであるアンテナ導体315の位置において、Z軸に沿って見た場合の断面形状を示す。アンテナ導体315は、非給電アンテナとして機能するため、X軸方向に沿って設けられたビア導体316を介して、GND層330に接続される。したがって、非給電アンテナであるアンテナ導体315はGND(GND層330)に接続され、給電端子およびAMC(AMC層320)には非接続となる。
【0046】
図13(b)は、
図12にて示したアンテナ装置300の第2の共振部の1つであるアンテナ導体317の位置において、Z軸に沿って見た場合の断面形状を示す。アンテナ導体317は、非給電アンテナとして機能するため、X軸方向に沿って設けられたビア導体318を介して、GND層330に接続される。したがって、非給電アンテナであるアンテナ導体317はGND(GND層330)に接続され、給電端子およびAMC(AMC層320)には非接続となる。
【0047】
図14は、本実施の形態に係るアンテナ装置300の電界分布の例を示す。ここでは、電界の強度に応じて、異なる色にて示している。
図14に示すように、λ/2の長さを有する第2の共振部(アンテナ導体315、317)にて電界が生じるように構成される。
【0048】
[利得]
図15は、本実施の形態に係るアンテナ装置の利得を示す図である。範囲1501は、本実施の形態に係るアンテナ装置300の利得を示す。図の上側が前方方向である。
図15を参照すると、アンテナ装置300では、後方側(つまり、通信装置1の背面側)の利得を、前方側の利得に比べて低減することが可能となっている。つまり、実施の形態1にて
図10を用いて示したアンテナ装置100の利得と同様の効果を生じさせることができる。つまり、Y軸方向において同じ位置でGND層330に接続される構成の2つの第2の共振器(アンテナ導体315、317)であっても、AMC層320の下部に配置されたグランド層330の共振を低減させることが可能である。
【0049】
以上、本実施の形態により、グランド層130に接続された側の2つの導体(アンテナ導体315、317)の端部は、長手方向(例えば、Y軸方向)において同じ側に位置する。
【0050】
これにより、背面方向の利得を抑制した、所定の指向性を有するアンテナ装置を構成する際に、2つのアンテナ導体それぞれと、グランド層との接続において、基板の長手方向にて同じ側となるような設計が可能となる。
【0051】
<その他の実施形態>
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に相当し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0052】
上記の実施の形態では、アンテナ装置100は、後期内に設置されるシートモニタ内に搭載される例を示した。しかし、シートモニタに限らず、本発明は、例えば、コードレス電話機の親機あるいは子機、電子棚札(例えば、小売店の陳列棚に貼り付けされる、商品の売価が表示されたカード型の電子機器)、スマートスピーカ、車載機器、電子レンジ、冷蔵庫等の多くのIoT(Internet of Things)機器などに搭載されてもよい。
【0053】
また、上述した実施の形態に係るアンテナ装置100は、電磁波の送受信がともに可能なアンテナ装置の例を用いて説明したが、本発明は、例えば、送信専用あるいは受信専用のアンテナ装置に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示は、所定の空間に複数台が設置されるアンテナ装置、および通信装置として有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 通信装置
100、300 アンテナ装置
110、310 アンテナ層
111、112、311、312 アンテナ導体(第1の共振部)
113、114、116、118、313、314、316、318 ビア導体
115、117、315、317 アンテナ導体(第2の共振部)
120、320 AMC層(メタマテリアル層)
130、330 グランド層