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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181052
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】経血量検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20231214BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20231214BHJP
   A61F 13/84 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G01N33/49 Z
A61B5/00 N
A61F13/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162874
(22)【出願日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2022093410
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】荻野 弘之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 歌奈女
(72)【発明者】
【氏名】越智 和弘
【テーマコード(参考)】
2G045
3B200
4C117
【Fターム(参考)】
2G045AA01
2G045CA30
2G045GA10
2G045GC07
3B200AA03
3B200DA25
4C117XA02
4C117XB01
4C117XB02
4C117XB06
4C117XE04
4C117XE43
4C117XG05
4C117XJ52
4C117XL01
(57)【要約】
【課題】月経期間中の総経血量の計測を簡便に行う実用的な経血量検出装置を提供する。
【解決手段】月経期間中に使用者が装着する少なくとも1つの生理用品に付着または貯留された経血量を計測する経血量計測手段1と、経血量計測手段1から出力される少なくとも1つの経血量計測値に基づき、月経期間中に前記使用者から排出される経血量の総量の推定値としての総経血量推定値を演算する総経血量推定手段2とを備える。使用者は総経血量推定値を求めるのに生理用品の交換の度に生理用品に付着または貯留した経血量の計測を行う必要がなく、少なくとも1つの経血量計測値に基づき総経血量推定値を取得できるので、総経血量の検出を簡便に行う実用的な経血量検出装置を提供することができる。また、これにより、自身の月経への気づきや過多月経などの評価が簡便に可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
月経期間中に使用者が装着する少なくとも1つの生理用品に付着または貯留された経血量を計測する経血量計測手段と、
前記経血量計測手段から出力される少なくとも1つの経血量計測値に基づき、前記月経期間中に前記使用者から排出される経血量の総量の推定値を総経血量推定値として演算する総経血量推定手段と
を備えた経血量検出装置。
【請求項2】
総経血量推定手段は、経血量計測値から総経血量推定値を演算する演算式を保有し、経血量計測手段から出力される少なくとも1つの経血量計測値と前記演算式に基づき総経血量推定値を演算する
請求項1記載の経血量検出装置。
【請求項3】
経血量計測手段は、使用者が就寝時を含んで装着した生理用品に付着または貯留された経血量を計測する
請求項1または2記載の経血量検出装置。
【請求項4】
生理用品の装着時間を入力可能な装着時間入力部を備え、
総経血量推定手段は経血量計測値と前記装着時間とに基づき、単位時間当たりの経血排出量を演算し、演算された前記単位時間当たりの経血排出量に基づき総経血量推定値を演算する
請求項1記載の経血量検出装置。
【請求項5】
総経血量推定値に予め設定された比率を乗じて総経血量中の血液量を演算する請求項1、2、4のいずれか1項に記載の経血量検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、月経期間中の総経血量を検出する経血量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、月経期間中の経血量検出技術については、特許文献1に示すように、吸収性物品が廃棄される専用の廃棄箱により、前記吸収性物品へ付着した経血の画像情報を取得して画像情報から経血量を計測する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-107798号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】茅島ら,“月経血量に関する研究 第2報-月経量・月経血量と基礎体温との関連”,母性衛生,公益社団法人日本母性衛生学会,平成5年6月,第34巻,第2号,p193-204
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術で、月経期間中の総経血量の計測を行うには、吸収性物品が廃棄されるすべての回数に対して経血量を計測して総和を演算する必要があるが、例えば、専用の廃棄箱を自宅に設置していると、専用の廃棄箱がない外出先で吸収性物品を交換する際には経血量の計測ができないので、月経期間中の総経血量の計測ができないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、月経期間中の総経血量の検出を簡便に行う実用的な経血量検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による経血量検出装置は、月経期間中に使用者が装着する少なくとも1つの生理用品に付着または貯留された経血量を計測し、計測された少なくとも1つの経血量計測値に基づき、前記月経期間中に前記使用者から排出される経血量の総量の推定値を総経血量推定値として演算する。
【0008】
総経血量推定手段は、経血量計測値から総経血量推定値を演算する演算式を保有し、経血量計測手段から出力される少なくとも1つの経血量計測値と前記演算式に基づき総経血量推定値を演算する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生理用品を交換する際の少なくとも一つの経血量計測値に基づき総経血量推定値を演算し、生理用品を交換する際の経血量計測を全回行わなくても総経血量推定値を取得できるので、総経血量の検出を簡便に行う実用的な経血量検出装置を提供することができる。
【0010】
また、これにより、自身の月経への気づきや過多月経などの評価が簡便に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1における経血量検出装置のブロック図
図2】同装置の動作を表す動作フロー図
図3】実験により収集した経血量計測値と総経血量データの回帰分析で得られた回帰式を表す特性グラフ
図4】実施の形態2における経血量検出装置のブロック図
図5】同装置の動作を表す動作フロー図
図6】経血排出速度の時系列グラフ
図7】実施の形態3における経血量検出装置のブロック図
図8】同装置の動作を表す動作フロー図
図9】経血量補間値を取得する手順を説明するための特性図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1の経血量検出装置のブロック図である。図1において、1は使用者が装着する生理用品に付着または貯留された経血量を計測する経血量計測手段、2は月経期間中に前記使用者から排出される経血量の総量の推定値としての総経血量推定値を演算する総経血量推定手段、3は演算された総経血量推定値を記憶するサーバー、4は使用者の情報端末で、例えばスマートフォンである。
【0014】
ここで、経血量計測手段1は、例えば、重量センサ付のサニタリーボックスで、月経期間中に経血が付着した使用済みナプキンやタンポン、生理用ショーツ等の生理用品を未使用の生理用品と交換する際に、使用者が使用済み生理用品を重量センサ付のサニタリーボックスに収納すると、重量センサ付のサニタリーボックス内に収納・蓄積された使用済み生理用品の重量を重量センサにより計測する。そして、今回の計測値から重量センサに記憶された前回の計測値を差し引き、さらに、予め重量センサに記憶された未使用の生理用品の重量を差し引くことにより、今回計測対象の生理用品に付着した正味の経血の重量を経血量計測値として計測する。尚、本発明での経血とは月経時に膣から排出される血性分泌物のことで、成分として血液と血液以外の分泌物(子宮内膜の崩壊した組織、膣液、頸管粘液等)を含んでいる。経血量計測手段1は内部に時計を保有し、上述したような経血量の計測を行うごとに、計測を行った時刻(年月日含む)と経血量計測値とのデータセットを総経血量推定手段2へ出力する。
【0015】
尚、経血量計測手段1は、例えば、液量センサ付の月経カップでもよく、月経カップに貯留された経血の体積を経血量として計測する。
【0016】
また、経血量計測手段1は、例えば、使用済み生理用品の経血付着面の画像を取得し、取得画像から経血付着面積を求め、予め実験等により求めた経血付着面積と付着経血重量との関係式を用いて、経血付着面積から付着経血重量を演算することにより、経血量を計測する構成としてもよい。
【0017】
また、経血量計測手段1は、経血付着面積から付着経血量を目視で確認して入力できるよう経血付着面に複数の等高線状の表示部とそれに対応した付着経血量の数値の表示部を設けたナプキンを用いた構成としてもよい。
【0018】
総経血量推定手段2は、推定式記憶部21と推定演算部22を備えている。総経血量推定手段2の例は、コンピュータである。推定式記憶部21の例は、半導体素子を含むメモリである。推定演算部22の例は、半導体素子を含む中央演算装置(一般にCPUと呼ばれる)である。ここでは、サーバー3に総経血量推定手段2が含まれる構成としている。
推定式記憶部21は、予め実験により収集した経血量計測値と総経血量のデータに基づき、経血量計測値から総経血量推定値を演算する演算式を保有している。演算式の導出方法の詳細については後述する。ここで、演算式で用いられる入力変数としては、月経期間の就寝時に装着された生理用品に付着または貯留された経血量の計測値を用いることが望ましい。その理由は、日常生活で体が動いている時や運動中は子宮の収縮がよくなり経血量が多くなり、計測値に影響があるが、就寝中は子宮が安定して経血の排出も安定する傾向があり、就寝中の経血の排出状態が、その月経期間中の身体の月経状態をよく反映できると考えられるためである。具体的には、月経1日目夜から2日目朝にかけての就寝時や月経2日目夜から3日目朝にかけての就寝時を少なくとも含んで装着された生理用品に付着または貯留された経血量の計測値を用いる。推定演算部22は、経血量計測手段1から出力される、上述の就寝時に装着された生理用品に付着または貯留された経血量の計測値を含み、少なくとも1つの経血量計測値と前記演算式に基づき総経血量推定値を演算する。
【0019】
上記構成による動作を図2に基づいて説明する。図2は実施の形態1の動作を表す動作フロー図である。尚、ここでは、使用者が生理用品としてナプキンを使用し、経血量計測手段1として上述した重量センサ付のサニタリーボックスを使用するものとする。
【0020】
使用者の月経が始まり、使用者がナプキンの装着を行った後、ステップST01で、使用者は情報端末4から月経開始の入力を行う。ステップST02で、総経血量推定手段2では入力された時刻を月経1日目の第1回目のナプキン装着時刻として記憶する。以降、ナプキンの交換があるごとに経血量計測手段1としての重量センサ付のサニタリーボックスにて、ナプキンに付着した正味の経血の重量を経血量計測値として計測し、経血量計測を行った時刻(年月日含む)と経血量計測値とのデータセットを総経血量推定手段2へ出力する。
【0021】
ステップST03で、総経血量推定手段2がデータセットを受信すると、ステップST04で、月経1日目の第1回目のナプキン装着時刻を基に、受信したデータセットの時刻が月経2日目の所定の時間帯であるか否かを調べる。ここで、月経2日目の所定の時間帯とは、使用者の日常的な起床時間帯を含んだ時間帯で設定されており、例えば、月経2日目の午前5時から午前9時の時間帯というように設定される。尚、月経2日目の所定の時間帯は、就寝時に装着されたナプキンに付着された経血量を起床後のナプキン交換の際に計測できるよう、使用者が自分の生活スタイルに応じて任意に設定が可能となっている。
【0022】
そして、データセットの時刻が月経2日目の所定の時間帯である場合、ステップST05で、データセットに含まれる経血量計測値と、推定式記憶部21に記憶された演算式に基づき、推定演算部22で総経血量推定値が演算される。演算された総経血量推定値は、ステップST06でサーバー3に記憶され、ステップST07でサーバー3に記憶された総経血量推定値が情報端末4に表示されて、使用者が情報端末4にて総経血量推定値を閲覧できる。
【0023】
経血量計測値W1を用いて、総経血量推定手段2により、月経期間中の総経血量推定値E1を演算する際に使用する演算式の導出方法と演算方法について、図3を用いて説明する。図3は、予め実験により収集した経血量計測値Wと総経血量Eの実測データに基づき、経血量計測値Wと総経血量Eとの回帰分析を行って得た回帰式R1を表す特性グラフである。この実験では、被験者女性として、民族(白人、黒人、アジア系など)、居住地域、年齢層、職業(就学生を含む)、身長、体重、健康状態の個人属性などを幅広く設定し、さらに季節変動や個人のトレンド変化なども含めて経血量計測値Wと総経血量Eのデータ収集を行う。そして、民族、居住地域、年齢層、職業、身長、体重、健康状態の個人属性、季節、個人のトレンド変化なども含めて、経血量計測値Wと総経血量Eとの回帰分析を行い、民族、居住地域、年齢層、職業、身長、体重、健康状態の個人属性や、季節、個人
のトレンド変化それぞれに対して回帰式を求めたり、それらの少なくとも2つの組み合わせについて回帰式を求める。また、民族、居住地域、年齢層、職業、身長、体重、健康状態の個人属性や、季節、個人のトレンド変化などの組み合わせごとに経血量計測値と総経血量推定値とのデータテーブルを作成して、使用者の民族、居住地域、年齢層、職業、身長、体重、健康状態の個人属性や、季節、個人のトレンド変化などに応じて、前記データテーブルに基づき、経血量計測値から総経血量推定値を求める構成としてもよい。尚、本装置の使用者が限定される場合は、それに応じて前記個人属性等を絞ってデータ収集を行って回帰式を求めたり、データテーブルを設定してもよい。
【0024】
経血量計測値Wは、上記実験における月経1日目夜から2日目朝にかけての就寝時を少なくとも含んで装着されたナプキンに付着した経血量の計測値である。この実測データは、月経のある上述の被験者それぞれの少なくとも月経一期間以上にわたって計測して取得する。
【0025】
推定式記憶部21には演算式として回帰式R1が保有されていて、推定演算部22では回帰式R1に基づき、実際の月経期間中に経血量計測手段1で計測された経血量計測値W1を入力変数として総経血量推定値E1が演算され出力される。
【0026】
発明者らは、10歳代~40歳代の日本人女性を対象として生理用品交換時の正味経血量と総経血量の実測を行い、実測データに基づき月経1日目夜から2日目朝にかけての経血量計測値Wと総経血量Eとの回帰分析を行い、回帰式R1を得た。回帰式R1の相関係数は0.93であった。この回帰式R1用いて総経血量推定値を演算する一事例を以下に記載する。使用者が10歳代~40歳代の女性であって、ある月経期間中の月経1日目夜から2日目朝にかけての経血量計測値W1が仮に10gである場合、総経血量推定値E1は53gと演算される。尚、この回帰式R1は、過去の実測データに加えて、新たな使用者のデータが蓄積されるごとに回帰分析を行って、回帰式R1を更新していってもよい。
【0027】
総経血量の推定値E1はサーバー3に記憶され、使用者は情報端末4によりサーバー3に記憶された総経血量の推定値E1を閲覧できる。この際、情報端末4に総経血量の推定値E1とともに、総経血量中に含まれる血液量(以下、総出血量とする)を表示してもよい。総出血量は総経血量に予め設定された比率を乗じて求めることができる。この比率は実験的に求めることができ、例えば、以下の示す非特許文献1では、75名の2回の月経の平均値として0.518とされている。また、総出血量とともに、日本産科婦人科学会や国際産婦人科連合が定めた総出血量の正常範囲を示すようにしてもよく、自分の総出血量の値が正常範囲にあるかどうかを確認して、自分の月経状態や体調を把握することができる。
【0028】
また、サーバー3に過去の月経期間中の総経血量推定値を記憶可能として、情報端末4によりサーバー3に記憶された過去からの総経血量推定値のトレンドを閲覧可能としてもよく、総経血量推定値がいつものレベルから変化していないかを確認して、月経状態や体調の変化を把握することができる。
【0029】
上記動作により、使用者は総経血量を求めるのに、生理用品の交換の度に生理用品に付着または貯留した経血量の計測を行う必要がなく、少なくとも1つの経血量計測値に基づき総経血量推定値を演算するので、総経血量の検出を簡便に行う実用的な経血量検出装置を提供することができる。また、これにより、自身の月経への気づきや過多月経などの評価が簡便に可能となる。
【0030】
また、本装置によれば、月経期間の比較的初期に総経血量推定値の演算を行い、当該月経期間中の月経が軽いか重たいかなどを予測できる可能性があるので、例えば、総経血量
推定値が上述した正常範囲より多い場合は、情報端末4に「今回は経血量が多くなる傾向があります。今回は『特に多い昼用のナプキン』を使い、こまめにトイレに行って取り換えるようにしましょう」といった表示を行い、今回の月経に適したナプキンの使い方の提案を行う構成を情報端末4に設けてもよい。これにより、ナプキンからの経血の漏れなどが予防でき、月経状態に応じたナプキンの適切な使用が可能となる。
【0031】
また、総経血量推定値が上述した正常範囲より多い場合は、情報端末4に「今回は経血量が多くなる傾向があります。貧血気味になりやすいので、レバーなどの食品を取りましょう」といった食事の提案や、「今回は運動を少し控えましょう」といった生活提案などを行う構成を情報端末4に設けてもよい。これにより、総経血量の予測を行う事で、使用種に対して、当該月経期間の過ごし方に関する、きめ細かな生活支援を行う事が可能となる。
【0032】
尚、上記実施の形態では、経血量計測値として月経1日目夜から2日目朝にかけての就寝中に装着されたナプキンに付着した経血量の計測値W1を用いた。これに代えて、上述した被験者を対象として予め実験により収集した月経2日目夜から3日目朝にかけての就寝中に装着されたナプキンに付着した経血量の計測値と総経血量データとを回帰分析し、得られた回帰式R2を用いて、実際の月経期間中の月経2日目夜から3日目朝にかけての就寝中に装着されたナプキンに付着した経血量計測値W2と回帰式R2を用いて総経血量推定値E2を演算してもよい。
【0033】
例えば、発明者らは10歳代~40歳代の日本人女性を対象として生理用品交換時の正味経血量と総経血量の実測を行い、実測データに基づき、月経2日目夜から3日目朝にかけての経血量計測値Wと総経血量Eとの回帰分析によって、回帰式R2を得た。回帰式R2の相関係数は0.97であった。この回帰式R2を用いて総経血量推定値を演算する一事例を以下に記載する。使用者が10歳代~40歳代の女性であって、ある月経期間中の月経2日目夜から3日目朝にかけての経血量計測値W2が仮に15gである場合、総経血量推定値E2は70gと演算される。尚、この回帰式R2は、過去の実測データに加えて、新たな使用者のデータが蓄積されるごとに回帰分析を行って、回帰式R2を更新していってもよい。
【0034】
また、同様の実験に基づき、3日目以降の就寝中に装着されたナプキンに付着した経血量の計測値と総経血量との回帰分析を行って回帰式R3を求め、実際の月経期間中の3日目以降の就寝中に装着されたナプキンに付着された経血量の計測値と回帰式R3を用いて総経血量推定値を演算してもよい。また、同様の実験に基づき、W1とW2を加算した計測値と総経血量との回帰分析を行って回帰式R4を求め、実際の月経期間中のW1とW2を加算した計測値と回帰式R4を用いて総経血量推定値を演算してもよい。また、同様の実験に基づき、W1とW2の2変数を用いて総経血量との重回帰分析を行って重回帰式R5を求め、実際の月経期間中のW1とW2の2変数と重回帰式R5に基づき総経血量推定値の演算をしてもよく、経血量推定値の推定精度が向上する。また、同様の実験に基づき、3つ以上の経血量の計測値を用いて総月経量との重回帰分析を行って重回帰式R6を求め、実際の月経期間中の3つ以上の経血量の計測値を用いて重回帰式R6に基づき総経血量推定値の演算を行ってもよい。
【0035】
さらに、情報端末4から月経開始の入力を行う構成をなくし、前回の月経が終了してから一定時間経過後に、経血量計測手段1としての重量センサ付のサニタリーボックスで、使用済み生理用品の収納による重量計測が行われた時刻Tsを月経第1日目の時刻と見做し、時刻Tsに基づいて、その後の経血量計測の時刻が月経2日目の所定の時間帯であるか否かを調べる構成としてもよい。この構成によれば、情報端末4から月経開始の入力をする必要がないので、使い勝手が向上する。ここで、時刻Tsが使用者の日常的な起床時
間帯を含んだ時間帯、例えば、午前5時から午前9時の時間帯である場合は、情報端末4から「今回の計測は月経2日目ですか?」等の表示を行って使用者に確認を行い、情報端末4から月経2日目との入力があった場合は、上述の今回の計測値に基づき総経血量推定手段2で総経血量推定値を演算すればよい。また、前回の月経の終了の判定については、重量センサ付のサニタリーボックスでの重量計測が予め設定された時間内、例えば24時間以内に重量計測が行われない場合に、最後の重量計測の時刻をその月経期間での月経終了時刻とすればよい。また、このように、前回の月経終了時刻を求めてから、一定時間経過後に次回の月経開始による時刻Tsを求めるが、この際の「一定時間」としては、正常月経の周期が25~38日とされていることから、例えば、10日~20日の間で設定すればよい。
【0036】
(実施の形態2)
図4は本実施の形態2の経血量検出装置のブロック図である。図4において、5は使用者が装着する生理用品に付着または貯留された経血量を計測する経血量計測手段、6は生理用品の装着時間を入力可能な装着時間入力部、7は経血量計測手段5で計測された経血量計測値と装着時間入力部6で入力された装着時間とに基づき、単位時間当たりの経血排出量(以下、経血排出速度という)を演算し、演算された経血排出速度に基づき総経血量推定値を演算する総経血量推定手段である。
【0037】
ここで、経血量計測手段5は実施の形態1で述べたものと同様な構成である。装着時間入力部6は使用者の情報端末と兼用していて、情報端末としては例えばスマートフォンである。総経血量推定手段7は例えばサーバーである。
【0038】
上記構成による動作を図5図6を用いて説明する。図5は実施の形態2の動作を表す動作フロー図、図6は使用者が重量センサ付のサニタリーボックスに使用済みのナプキンを収納する毎に得られる経血排出速度Qの時系列グラフで、横軸は時間、縦軸が経血排出速度Qである。
【0039】
尚、ここでは、使用者が生理用品としてナプキンを使用し、経血量計測手段5として上述した重量センサ付のサニタリーボックスを自宅で使用するものとする。また、ここで、使用者は月経期間中に少なくとも就寝前と翌日の起床後にナプキンを交換し、その際、経血量計測手段5としての使用済みナプキンは重量センサ付のサニタリーボックスに収納するものとし、日中は外出先でナプキン交換が必要であれば、経血量計測を行わずナプキン交換を行うものとする。
【0040】
図6で、T0は月経期間中の初回のナプキン装着開始時刻、T1~T7はその後のナプキン交換時刻とする。T1、T3、T5、T7はそれぞれ月経初日~4日目の就寝前のナプキン交換時刻、T2、T4、T6はそれぞれ月経2日目~4日目の朝、起床後のナプキン交換時刻とする。
【0041】
図5において、使用者の月経が始まり、使用者がナプキンの初回の装着を行った後、ステップST11で、使用者は装着時間入力部6からナプキン装着時刻の入力を行う。ステップST12で、総経血量推定手段7では入力された時刻をT0として記憶する。
【0042】
次に、ステップST13で、使用者が時刻T1~T7でナプキン交換を行う場合、使用済みナプキンを経血量計測手段5としての重量センサ付のサニタリーボックスに収納すると、経血量計測手段5が、実施の形態1と同様の動作で生理用品に付着した正味の経血の重量としての経血量計測値を取得する。ここで、T1~T7に対応した経血量計測値をY1~Y7とする。また、ナプキン交換時に、使用者は装着時間入力部6よりナプキンの装着時間を入力する。ここで、T1~T7に対応した装着時間をD1~D7とする。
【0043】
そして、ステップST14で、計測された経血量計測値Y1~Y7は時刻T1~T7、装着時間をD1~D7とともに総経血量推定手段7としてのサーバーに送信され記憶される。尚、図6ではD1はT0~T1間の時間と同じとしている。
【0044】
次に、ステップ15で、総経血量推定手段7としてのサーバーでは、記憶された経血量計測値Y1~Y7と装着時間D1~D7を用いて時刻T1~T7における経血の単位時間当たりの経血排出重量としての経血排出速度Q1~Q7を演算する。例えば、時刻T1における経血排出速度Q1は、経血量計測値Y1を装着時間D1で割ることにより、Q1=Y1/D1として求められる。同様にして、経血排出速度Q2~Q7についても経血量計測値Y2~Y7をそれぞれ装着時間D2~D7で割ることにより、Q2=Y2/D2、Q3=Y3/D3、Q4=Y4/D4、Q5=Y5/D5、Q6=Y6/D6、Q7=Y7/D7として求められる。
【0045】
次に、ステップ16で、総経血量推定手段7としてのサーバーでは、経血排出速度Q1~Q7を用いて総経血量推定値を演算する。演算方法としては、経血排出速度の時間積分、すなわち、図6のT0、Q1~Q7、T7で囲まれる面積を演算する。すなわち、三角形T0、Q1、Q2、台形T1、Q1、Q2、T2、台形T2、Q2、Q3、T3、台形T3、Q3、Q4、T4、台形T4、Q4、Q5、T5、台形T5、Q5、Q6、T6、台形T6、Q6、Q7、T7のそれぞれの面積の総和を演算し、演算された総和を総経血量推定値とする。
【0046】
次に、ステップST17で、演算された総経血量推定値は、総経血量推定手段7としてのサーバーに記憶される。そして、ステップST18で、記憶された総経血量推定値は、装着時間入力部6と兼用される使用者の情報端末に表示されて、使用者が総経血量推定値を閲覧できる。この際、総経血量の推定値とともに日本産科婦人科学会や国際産婦人科連合が定めた総経血量の正常範囲を示すようにしてもよい。また、サーバーに過去の総経血量推定値を記憶可能として、情報端末によりサーバーに記憶された過去からの総経血量推定値のトレンドを閲覧可能としてもよい。
【0047】
上記動作により、例えば、使用者が本装置のない外出先でナプキン交換を行ったり、使用者が本装置の使用を忘れてナプキン交換を行ったりして、時刻T1~T7以外に経血量計測にデータ欠損があっても、その前後で得られる経血排出速度を用いることにより、総経血量の真値に近い総経血量推定値を演算する事ができるので、総経血量の検出を簡便に行う実用的な経血量検出装置を提供することができる。また、これにより、自身の月経への気づきや過多月経などの評価が簡便に可能となる。
【0048】
尚、実施の形態2において、ナプキン交換時に使用者は装着時間入力部6よりナプキンの装着時間を入力していたが、装着時間入力部6をなくして、実施の形態1と同様に、経血量の計測を行うごとに、計測を行った時刻(年月日含む)と経血量計測値とのデータセットを総経血量推定手段2へ出力し、計測時刻間隔を装着時間と見做して経血排出速度を演算する構成としてもよい。ここで、上記の計測時刻間隔と装着時間と関係は、例えば、図6においては、D1=T1-T0、D2=T2-T1、D3=T3-T2、D4=T4-T3、D5=T5-T4、D6=T6-T5、D7=T7-T6である。この構成によれば、装着時間入力部6よりナプキンの装着時間を入力する必要がないので、使い勝手が向上する。
【0049】
(実施の形態3)
図7は本実施の形態3の経血量検出装置のブロック図である。図7において、8は使用者が装着する生理用品に付着または貯留された経血量を計測する経血量計測手段、9は使
用者の年齢、体重や身長などの身体的特性といった個人属性を入力する個人属性入力部、10は経血量計測手段8で計測された経血量計測値と個人属性入力部9で入力された個人属性とに基づき総経血量を推定する総経血量推定手段である。
【0050】
ここで、経血量計測手段8は実施の形態1で述べたものと同様な構成である。個人属性入力部9は使用者の情報端末と兼用していて、情報端末としては例えばスマートフォンである。総経血量推定手段10は例えばサーバーである。
【0051】
上記構成による動作を図8図9を用いて説明する。図8は実施の形態3の動作を表す動作フロー図、図9は後述する経血量補間値を取得する手順を説明するための特性図である。
【0052】
図8において、ステップ21で、使用者は本装置を使用する際に、年齢、体重や身長などの身体的特性といった個人属性を個人属性入力部9より入力する。そして、月経が始まると、先ず、ステップ22でナプキン装着開始時刻を入力する。その後、ステップ23で、使用者が装着したナプキンに付着した経血の経血量計測値、計測した時刻が経血量計測手段8により取得される。
【0053】
そして、ステップST24で、取得されたナプキン装着開始時刻、経血量計測値、計測時刻のデータは、個人属性と紐づけて総経血量推定手段10にデータベースとして記憶される。尚、上記のデータは、データ収集に同意を得た複数の使用者から取得される。
【0054】
次に、ステップST25で、総経血量推定手段10では各使用者から取得されたデータに基づき、年齢、体重や身長などの身体的特性、経血量計測値をグループ化して上記データベースにグループ化データとして保持する。また、ステップST26で、グループ化データに保持された各グループごとの月経期間中の月経開始からの経過時間ごとの月経量計測値の平均値もグループ化データに記憶しておく。
【0055】
そして、ステップST27で、総経血量推定手段10では、ある使用者Fが本装置を使用して月経期間中の経血量を計測した場合、使用者Fの年齢、体重や身長などの身体的特性、経血量計測値の経時パターンとのいずれか一つ以上と上記グループ化データとをマッチングして、その使用者の経血量計測値にデータ欠損があった場合、グループ化データに記憶された月経量計測値の平均値を用いて経血量補間値として取得する。
【0056】
そして、ステップST28で、実際に計測した経血量計測値と経血量補間値との総和を演算して総経血量推定値を取得する。
【0057】
図8を使って、上記の経血量補間値を取得する手順を説明する。図8において横軸は月経開始時点からの経過時間、縦軸は計測された経血量である。図8で、曲線Wavは、グループ化データに記憶されたあるグループの月経量計測値の平均値の経時データで、例えば、「年齢:30代、身長160cm、体重50kg、経血量のパターン:多い」というグループの事例とする。
【0058】
使用者Fが個人属性として、上記と同じ「年齢:30代、身長160cm、体重50kg、経血量のパターン:多い」という属性を保有していて、個人属性入力部から上記の個人属性を入力し経血量を計測した場合を想定する。
【0059】
総経血量推定手段10では、入力された属性と各グループ化データとをマッチングし、「年齢:30代、身長160cm、体重50kg、経血量のパターン:多い」に該当すると判定する。そして、マッチングしたグループに該当した平均経血量Wavの経時パター
ンを抽出し、使用者Fが計測した経血量計測値でのデータ欠損の有無を判定する。この場合、連続した2つの経血量計測値の計測時間の時間間隔が例えば半日以上ある場合はデータ欠損有りと判定する。ここで、上記時間間隔は任意に変更して設定できる。
【0060】
図8の例では、月経が始まり、ナプキン装着開始T0以降、月経終了T16までの時刻T8~T16が経血量計測時刻で、それぞれ、W8~W16の経血計測値が取得される。T11とT12の間が半日以上あり、データ欠損があったと判定される。
【0061】
データ欠損が判定されると、総経血量推定手段10では、データ欠損区間において平均経血量Wavの経時パターンに基づき、少なくとも一つ以上の経血量補間値を取得する。ここで、取得する経血量補間値は任意に設定可能である。図6の事例では、T11とT12の間に2回、経血量補間値を取得していて、時刻T17、T18でそれぞれW17、W18が経血量補間値である。そして、総経血量推定手段10では、W8~W18の値の総和を演算して、総経血量の推定値を取得する。
【0062】
総経血量推定手段10で取得した総経血量推定値は、図8のステップST29で、総経血量推定手段10と通信可能な情報端末としてのスマートフォンに表示され、使用者Fが閲覧することができる。
【0063】
グループ化データは、経血量計測手段8により使用者が経血量が計測されるごと、または本装置の新たな使用者が追加されて経血量計測手段8により経血量が計測されるごとに更新されていく。
【0064】
上記動作により、経血量計測値のデータ欠損があっても、個人属性のグループごとに取得された平均経血量を用いて経血量計測値のデータ欠損を補う経血量補間値を取得して総経血量の推定値を演算するので、総経血量の推定の精度が向上する。
【0065】
また、経血量値が蓄積されるごとにグループ化データが更新されるので、例えば、個人による経血量排出のさまざまなパターンがあっても、そのパターンごとにグループ化してデータ蓄積することにより、きめの細かいデータ補間が可能となり、総経血量の推定の精度がさらに向上する。
【0066】
尚、上記実施の形態3では、経血量計測値の経時パターンの平均値を使用者のデータ補間に使用したが、使用者のそれまでの計測値とグループの平均値との比率を係数として補正してもよい。また、グループごとに経血量計測値のパターンを学習して、学習結果に基づいてデータ補間を行ってもよい。
【0067】
また、実施の形態2及び3において、経血量計測値の計測回数に基づき、総経血量推定値の信頼度や想定誤差の大きさを演算して情報端末に表示する構成としてもよい。この場合、例えば、計測回数が少ないと信頼度は低く、計測回数が多いと信頼度は高いといったように、予め計測回数と信頼度との関係のデータを計測して、信頼度を設定するデータベースや関係式を保持しておけばよい。また、例えば、計測回数が少ないと想定誤差は大きく、計測回数が多いと想定誤差は小さいといったように、予め計測回数と想定誤差との関係のデータを計測して、想定誤差を設定するデータベースや関係式を保持しておけばよい。
【0068】
また、実施の形態1~3では、経血量計測手段として重量センサ付のサニタリーボックスを使用した構成であった。しかし、例えば、使用者が所有するはかりを使用して、手動で未使用の生理用品の重量と使用済み生理用品の重量を計測し、計測した結果を手動で入力する手動入力部と、前記手動入力部で入力された計測結果に基づき、生理用品に付着ま
たは貯留した正味の経血量を経血量計測値として演算する演算部とを経血量計測手段に備えた構成としてもよい。
【0069】
また、実施の形態1~3において、生理用品の装着時間に基づき生理用品からの水分蒸発量を推定して経血量計測値や経血量推定値を補正してもよい。また、水分蒸発量の推定には、さらに、体温や気温を計測して推定してもよい。この場合、例えば、装着時間が長いと蒸発量が多いので補正値を多くするよう、予め装着時間と蒸発量との関係のデータを計測して、補正値を設定するデータベースや関係式を保持しておけばよい。また、事前に体温や気温と蒸発量との関係データを計測して、補正値を設定しておくデータベースや関係式を保持しておけばよい。上記の補正により、総経血量推定値の精度が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、家庭用のヘルスケアの分野や、スポーツの分野、会員制ジム・フィットネス・スポーツクラブ分野、企業・大学・高校・中学などの健康管理センター、介護施設、産婦人科等に適応可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 経血量計測手段
2 総経血量推定手段
3 サーバー
4 情報端末
5 経血量計測手段
6 装着時間入力部
7 総経血量推定手段
8 経血量計測手段
9 個人属性入力部
10 総経血量推定手段
21 推定式記憶部
22 推定演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9