(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181056
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】調理器用トッププレート
(51)【国際特許分類】
F24C 15/10 20060101AFI20231214BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20231214BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20231214BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20231214BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231214BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
F24C15/10 B
C08J5/18 CFH
C08J7/04 A
B32B17/10
B32B27/00 101
B32B27/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188048
(22)【出願日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2022093859
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 健史
【テーマコード(参考)】
4F006
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
4F006AA42
4F006AB39
4F006AB74
4F006AB76
4F006CA07
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4F100AA03B
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4F100CA13B
4F100CA13C
4F100CA13D
4F100GB48
4F100JJ03B
4F100JL10B
4F100JL10H
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】耐熱衝撃性に優れる調理器用トッププレートを提供する。
【解決手段】調理器具が載せられる調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、前記ガラス基板の前記裏面上に配置されている、耐熱樹脂層と、を備え、前記耐熱樹脂層が、シリコーン樹脂と、顔料とを含む第1の層を有し、前記第1の層が、前記ガラス基板の前記裏面と接しており、前記第1の層中の前記顔料が、針状結晶顔料と、第2の顔料とを含み、前記第1の層100質量%中、前記顔料の含有量が、51質量%以上、72質量%未満であり、前記第1の層中の前記顔料100質量%中、前記針状結晶顔料の含有量が、30質量%以上、70質量%以下である、調理器用トッププレート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器具が載せられる調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、
前記ガラス基板の前記裏面上に配置されている、耐熱樹脂層と、
を備え、
前記耐熱樹脂層が、シリコーン樹脂と、顔料とを含む第1の層を有し、
前記第1の層が、前記ガラス基板の前記裏面と接しており、
前記第1の層中の前記顔料が、針状結晶顔料と、第2の顔料とを含み、
前記第1の層100質量%中、前記顔料の含有量が、51質量%以上、72質量%未満であり、
前記第1の層中の前記顔料100質量%中、前記針状結晶顔料の含有量が、30質量%以上、70質量%以下である、調理器用トッププレート。
【請求項2】
前記第1の層中の前記シリコーン樹脂は、シロキサン結合の含有量が40質量%以上である、請求項1に記載の調理器用トッププレート。
【請求項3】
前記第1の層中の前記針状結晶顔料が、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の調理器用トッププレート。
【請求項4】
前記第1の層中の前記針状結晶顔料が、チタン酸カリウムを含む、請求項1又は2に記載の調理器用トッププレート。
【請求項5】
前記第1の層中の前記第2の顔料が、着色顔料を含む、請求項1又は2に記載の調理器用トッププレート。
【請求項6】
前記耐熱樹脂層が、前記第1の層のみの1層の構造を有する、請求項1又は2に記載の調理器用トッププレート。
【請求項7】
前記耐熱樹脂層が、
前記第1の層と、
シリコーン樹脂と、顔料とを含む第2の層と、
を有し、
前記第2の層が、前記耐熱樹脂層において、前記ガラス基板側とは反対側に位置している、請求項1又は2に記載の調理器用トッププレート。
【請求項8】
前記ガラス基板と前記耐熱樹脂層との間に配置されている、無機層をさらに備え、
前記無機層が、ガラスと顔料とを含む、請求項1又は2に記載の調理器用トッププレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器用トッププレートに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁調理器、ラジアントヒーター調理器及びガス調理器等の上部には、調理器用トッププレートが備えられている。上記調理器用トッププレートには、調理器具が載せられる調理面と、この調理面とは反対側の裏面とを有する透明のガラス基板が備えられている。また、上記ガラス基板の裏面上には、調理器内部の構造を隠蔽するために、シリコーン樹脂を含む耐熱樹脂層が備えられている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、ガラス板と、該ガラス板の裏面に接して設けられた耐熱樹脂層とを備え、上記耐熱樹脂層が、耐熱樹脂と、フレーク状のアルミニウム系フィラーとを含む調理器用トッププレートが開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、ガラス板と、該ガラス板の裏面に接して設けられた耐熱樹脂層とを備え、上記耐熱樹脂層が、耐熱樹脂と、モース硬度3以上のフレーク状の無機フィラーとを含む調理器用トッププレートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020-130064号
【特許文献2】特開2020-094799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
調理器用トッププレートは、使用時に、急激に冷却されることがある。例えば、それまで高温のフライパンが置かれていたトッププレート上に、冷水が入った鍋を置くなど、1つの加熱調理が終了した直後に、次の調理を始める場合には、トッププレートが急速に冷却される。この際、トッププレートは500℃以上の温度差に晒されることがある。そのため、トッププレートには、高い耐熱衝撃性が求められている。しかしながら、従来のトッププレートでは、大きな温度差で急速に冷却された場合、異材種であるガラス基板とシリコーン樹脂を主体とした耐熱樹脂層との熱収縮差により、ガラス基板から耐熱樹脂層が剥離したり、耐熱樹脂層にひび又は割れが生じたりすることがある。
【0007】
本発明の目的は、耐熱衝撃性に優れる調理器用トッププレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様1に係る調理器用トッププレートは、調理器具が載せられる調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、前記ガラス基板の前記裏面上に配置されている、耐熱樹脂層と、を備え、前記耐熱樹脂層が、シリコーン樹脂と、顔料とを含む第1の層を有し、前記第1の層が、前記ガラス基板の前記裏面と接しており、前記第1の層中の前記顔料が、針状結晶顔料と、第2の顔料とを含み、前記第1の層100質量%中、前記顔料の含有量が、51質量%以上、72質量%未満であり、前記第1の層中の前記顔料100質量%中、前記針状結晶顔料の含有量が、30質量%以上、70質量%以下であることを特徴としている。
【0009】
態様2に係る調理器用トッププレートでは、態様1において、前記第1の層中の前記シリコーン樹脂は、シロキサン結合の含有量が40質量%以上であることが好ましい。
【0010】
態様3に係る調理器用トッププレートでは、態様1又は態様2において、前記第1の層中の前記針状結晶顔料が、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0011】
態様4に係る調理器用トッププレートでは、態様1~態様3のいずれか一つの態様において、前記第1の層中の前記針状結晶顔料が、チタン酸カリウムを含むことが好ましい。
【0012】
態様5に係る調理器用トッププレートでは、態様1~態様4のいずれか一つの態様において、前記第1の層中の前記第2の顔料が、着色顔料を含むことが好ましい。
【0013】
態様6に係る調理器用トッププレートでは、態様1~態様5のいずれか一つの態様において、前記耐熱樹脂層が、前記第1の層のみの1層の構造を有することが好ましい。
【0014】
態様7に係る調理器用トッププレートでは、態様1~態様5のいずれか一つの態様において、前記耐熱樹脂層が、前記第1の層と、シリコーン樹脂と、顔料とを含む第2の層と、を有し、前記第2の層が、前記耐熱樹脂層において、前記ガラス基板側とは反対側に位置していることが好ましい。
【0015】
態様8に係る調理器用トッププレートでは、態様1~態様7のいずれか一つの態様において、前記調理器用トッププレートが、前記ガラス基板と前記耐熱樹脂層との間に配置されている、無機層をさらに備え、前記無機層が、ガラスと顔料とを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐熱衝撃性に優れる調理器用トッププレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0019】
なお、本明細書において、「調理器用トッププレート」を「トッププレート」と略記することがある。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
【0021】
図1に示す調理器用トッププレート1は、ガラス基板2を備える。ガラス基板2は、調理面2a及び裏面2bを有する。調理面2aと裏面2bとは、互いに対向している面である。調理面2aは、鍋やフライパンなどの調理器具が載せられる側の面である。裏面2bは、調理器の内部側において光源や加熱装置と対向する面である。従って、調理面2a及び裏面2bは、表裏の関係にある。
【0022】
ガラス基板2の裏面2b上には、耐熱樹脂層3が配置されている。ガラス基板2の裏面2bと耐熱樹脂層3とは接している。本実施形態において、耐熱樹脂層3は、第1の層4及び第2の層5を有する。ガラス基板2の裏面2b上に、第1の層4が配置されており、第1の層4上に第2の層5が配置されている。第1の層4は、ガラス基板2の裏面2bと接している。第1の層4は、耐熱樹脂層3において、ガラス基板2側に位置している。第2の層5は、耐熱樹脂層3において、ガラス基板2側とは反対側に位置している。
【0023】
第1の層4は、シリコーン樹脂と、顔料とを含む。また、第2の層5は、シリコーン樹脂と、顔料とを含む。
【0024】
第1の層4中の上記顔料は、針状結晶顔料と、第2の顔料とを含む。第1の層4中の上記顔料の含有量(第1の層100質量%中、上記顔料の含有量)は、51質量%以上、72質量%未満である。第1の層4中の上記顔料100質量%中、上記針状結晶顔料の含有量は、30質量%以上、70質量%以下である。
【0025】
トッププレート1は、上記の構成を備えるので、耐熱衝撃性に優れる。
【0026】
従来のトッププレートでは、大きな温度差で急速に冷却された場合に、異種材であるガラス基板とシリコーン樹脂を主体とした耐熱樹脂層との熱収縮差により、ガラス基板から耐熱樹脂層が剥離したり、耐熱樹脂層にひび又は割れが生じたりすることがあった。
【0027】
これに対して、本発明者は、耐熱樹脂層におけるガラス基板と直接接触する層(第1の層)に着目し、第1の層中の顔料の含有量及び種類を特定の構成とすることにより、トッププレートの耐熱衝撃性を高めることができることを見出した。
【0028】
すなわち、トッププレート1では、トッププレート1が大きな温度差で急速に冷却された場合でも、第1の層4の熱収縮を抑制できるため、ガラス基板2からの耐熱樹脂層3の剥離が生じにくい。また、耐熱樹脂層3にひび及び割れが生じにくい。
【0029】
以下、トッププレート1を構成する部材及び各層の詳細について説明する。
【0030】
(ガラス基板)
ガラス基板2は、波長450nm~700nmにおける少なくとも一部の光を透過するガラス基板であることが好ましい。ガラス基板2は透明ガラス基板であることが好ましい。ガラス基板2は、有色透明であってもよいが、トッププレート1の美観性をより一層高める観点から、無色透明であることが好ましい。なお、本明細書において、ガラス基板における「透明」とは、波長450nm~700nmにおける可視波長域の光透過率が70%以上であることをいう。
【0031】
トッププレート1では、加熱及び冷却が繰り返しなされる。そのため、ガラス基板2は、高い耐熱衝撃性及び低い熱膨張係数を有することが好ましい。具体的には、ガラス基板2の軟化温度は、700℃以上であることが好ましく、750℃以上であることがより好ましい。また、ガラス基板2の30℃~750℃における平均線熱膨張係数は、-10×10-7/℃~+60×10-7/℃の範囲内であることが好ましく、-10×10-7/℃~+50×10-7/℃の範囲内であることがより好ましく、-10×10-7/℃~+40×10-7/℃の範囲内であることがさらに好ましい。従って、ガラス基板2は、ガラス転移温度が高く、低膨張なガラスや、結晶化ガラスからなるものであることが好ましい。低膨張な結晶化ガラスの具体例としては、例えば、LAS系結晶化ガラスである日本電気硝子社製「N-0」等が挙げられる。なお、ガラス基板2として、ホウケイ酸ガラス基板などを用いてもよい。
【0032】
ガラス基板2の厚みは、特に限定されない。ガラス基板2の厚みは、光透過率などに応じて適宜設定することができる。ガラス基板2の厚みは、例えば、2mm~6mm程度とすることができる。
【0033】
(耐熱樹脂層)
耐熱樹脂層3は、ガラス基板2の裏面2b上に配置されている。耐熱樹脂層3は、2層構造を有する。すなわち、耐熱樹脂層3は、第1の層4と、第1の層4のガラス基板2側とは反対側の表面上に配置された第2の層5とを有する。なお、第1の層4及び第2の層5は、互いに異なる色に着色されていることが好ましい。例えば、第1の層4を白色の層とし、第2の層5をグレー色の層とすることができる。もっとも、第1の層4及び第2の層5の色は、特に限定されず、意匠性や、調理器の内部構造の隠蔽性を考慮して、適宜、決定することができる。また、耐熱樹脂層3は、3層以上の構造を有していてもよい。
【0034】
<シリコーン樹脂>
以下の説明において、耐熱樹脂層又は耐熱樹脂層の各層に用いられるシリコーン樹脂の共通の構成については、単に「シリコーン樹脂」といい、第1の層4及び第2の層5に用いられるシリコーン樹脂の個別の構成については、「第1の層4中のシリコーン樹脂」及び「第2の層5中のシリコーン樹脂」という。
【0035】
耐熱樹脂層3は、シリコーン樹脂を含む。第1の層4は、シリコーン樹脂を含む。第2の層5は、シリコーン樹脂を含むことが好ましい。耐熱樹脂層3が2層以上の構造を有する場合に、耐熱樹脂層3の全ての層が、シリコーン樹脂を含むことが好ましい。上記シリコーン樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、耐熱樹脂層3の各層に含まれるシリコーン樹脂はそれぞれ、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0036】
第1の層4中のシリコーン樹脂は、シロキサン結合の含有量が40質量%以上であることが好ましい。上記シロキサン結合の含有量が40質量%以上であると、シリコーン樹脂において熱分解し難い無機構造部分の含有比率が高くなるので、トッププレート1を高温に加熱した場合でも第1の層4の熱収縮を小さくすることができる。このため、ガラス基板2から耐熱樹脂層3が剥離したり、耐熱樹脂層3にひび又は割れが生じたりすることを防ぐことができ、トッププレート1の耐熱衝撃性を高めることができる。
【0037】
第1の層4中のシリコーン樹脂は、シロキサン結合の含有量が、45質量%以上であることがより好ましく、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。上記シロキサン結合の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0038】
第2の層5中のシリコーン樹脂は、シロキサン結合の含有量が、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。上記シロキサン結合の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0039】
上記シリコーン樹脂におけるシロキサン結合の含有量は、上記シリコーン樹脂を構成する原子の総質量に対する、該シリコーン樹脂に含まれるシロキサン結合の合計質量の割合(質量%)である。上記シリコーン樹脂に含まれるシロキサン結合の合計質量は、より具体的には、上記シリコーン樹脂に含まれるシロキサン結合を構成するケイ素原子と酸素原子との合計質量である。
【0040】
上記シリコーン樹脂におけるシロキサン結合の含有量は、シリコーン樹脂の材料であるシリコーン樹脂成分の構造式から算出することができる。
【0041】
上記シリコーン樹脂として、高い耐熱性を有するシリコーン樹脂を用いることが好ましい。耐熱樹脂層3の耐熱性をより一層高め、トッププレート1が高温になったときの耐熱樹脂層3の変色を効果的に抑える観点からは、第1の層4中のシリコーン樹脂及び第2の層5中のシリコーン樹脂はいずれも、例えば、メチル基又はフェニル基を官能基として有するシリコーン樹脂であることが好ましい。この場合に、例えば、ケイ素原子にメチル基が直接結合していてもよく、ケイ素原子にフェニル基が直接結合していてもよく、同一のケイ素原子にメチル基とフェニル基とが直接結合していてもよい。
【0042】
シロキサン結合の含有量が40質量%以上であるシリコーン樹脂を良好に得ることが可能な上記シリコーン樹脂成分として、市販品を用いることもできる。上記シリコーン樹脂成分として使用可能な市販品としては、例えば、信越化学工業社製「ストレートシリコーンワニスKR282」、「ストレートシリコーンワニスKR271」、「ストレートシリコーンワニスKR311」、並びにモメンティブ社製「TSR-145」等が挙げられる。
【0043】
第1の層4中の上記シリコーン樹脂の含有量(第1の層100質量%中、シリコーン樹脂の含有量)は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは32質量%以上、好ましくは47質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。上記シリコーン樹脂の含有量が上記下限以上であると、耐熱樹脂層3の耐熱性、耐溶剤性、密着性及び機械的強度をより一層高めることができる。上記シリコーン樹脂の含有量が上記上限以下であると、耐熱樹脂層3の機械的強度をより一層高めることができる。
【0044】
第2の層5中の上記シリコーン樹脂の含有量(第2の層100質量%中、シリコーン樹脂の含有量)は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。上記シリコーン樹脂の含有量が上記下限以上であると、耐熱樹脂層3の耐熱性、耐溶剤性、密着性及び機械的強度をより一層高めることができる。上記シリコーン樹脂の含有量が上記上限以下であると、耐熱樹脂層3の機械的強度をより一層高めることができる。
【0045】
耐熱樹脂層3中の上記シリコーン樹脂の含有量(耐熱樹脂層100質量%中、シリコーン樹脂の含有量)は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。上記シリコーン樹脂の含有量が上記下限以上であると、耐熱樹脂層3の耐熱性、耐溶剤性、密着性及び機械的強度をより一層高めることができる。上記シリコーン樹脂の含有量が上記上限以下であると、耐熱樹脂層3の機械的強度をより一層高めることができる。
【0046】
<顔料>
以下の説明では、耐熱樹脂層又は耐熱樹脂層の各層に用いられる顔料の共通の構成については、単に「顔料」といい、第1の層4及び第2の層5に用いられる顔料の個別の構成については、「第1の層4中の顔料」及び「第2の層5中の顔料」という。針状結晶顔料及び第2の顔料の説明においても同様である。
【0047】
耐熱樹脂層3は、顔料を含む。第1の層4は、顔料を含む。第1の層4中の顔料は、針状結晶顔料と、第2の顔料とを含む。すなわち、第1の層4は、針状結晶顔料と、第2の顔料とを含む。上記第2の顔料は、針状結晶顔料以外の顔料である。第2の層5は、顔料を含むことが好ましい。第2の層5は、針状結晶顔料を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。第2の層5は、針状結晶顔料以外の顔料を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。ただし、第2の層5は、針状結晶顔料と、針状結晶顔料以外の顔料(第2の顔料)とを含むことが好ましい。なお、耐熱樹脂層3の各層に含まれる顔料はそれぞれ、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0048】
針状結晶顔料:
針状結晶顔料は、針形状を有する顔料である。顔料が針状であるか否かは、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡などを用いて、その形状を観察することにより確認することができる。上記針状結晶顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
第1の層4中の上記顔料100質量%中、上記針状結晶顔料の含有量は、30質量%以上、70質量%以下であり、好ましくは31質量%以上、より好ましくは33質量%以上、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。上記針状結晶顔料の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、第1の層4中で針状結晶顔料同士が良好に絡み合うことによって骨材として機能し、トッププレート1が大きな温度差で急速に冷却された場合でも、第1の層4の熱収縮を抑制できる。そのため、トッププレート1の耐熱衝撃性を高めることができ、ガラス基板2から耐熱樹脂層3が剥離したり、耐熱樹脂層3にひび又は割れが生じたりすることを防ぐことができる。さらに、第1の層4中に第2の顔料として着色顔料を比較的多く含ませることもできるため、トッププレート1の外観を所望の色調に調整しやすくなる。
【0050】
第2の層5中の上記顔料100質量%中、上記針状結晶顔料の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記針状結晶顔料の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、第2の層5中で針状結晶顔料同士が良好に絡み合うことによって骨材として機能し、トッププレート1が大きな温度差で急速に冷却された場合でも、第2の層5の熱収縮を抑制できる。そのため、トッププレート1の耐熱衝撃性を高めることができ、耐熱樹脂層3が剥離したり、耐熱樹脂層3にひび又は割れが生じたりすることを防ぐことができる。さらに、第2の層5中に第2の顔料として着色顔料を比較的多く含ませることもできるため、トッププレート1の外観を所望の色調に調整しやすくなる。
【0051】
上記針状結晶顔料の平均長さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上、好ましくは60μm以下、より好ましくは40μm以下である。針状結晶顔料の平均長さが上記下限より小さいと、針状結晶顔料同士が良好に絡み合うことができず、トッププレート1が大きな温度差で急速に冷却された場合において、第1の層4及び第2の層5の熱収縮を抑制しにくくなる。そのため、トッププレート1の耐熱衝撃性を高めにくくなる。一方、針状結晶顔料の平均長さが上記上限より大きいと、所望とする外観を得にくくなるとともに、塗付性が低下する。
【0052】
上記針状結晶顔料の平均径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下である。針状結晶顔料の平均径が上記下限より小さいと、第1の層形成用ペーストまたは第2の層形成用ペーストを作製する工程において、針状結晶顔料が折れやすくなり、結果的に、針状結晶顔料同士が良好に絡み合うことができず、トッププレート1が大きな温度差で急速に冷却された場合において、第1の層4または第2の層5の熱収縮を抑制しにくくなる。そのため、トッププレート1の耐熱衝撃性を高めにくくなる。また、針状結晶顔料の平均径が上記上限より大きい場合も、針状結晶顔料同士が良好に絡み合うことができず、上記のようにトッププレート1の耐熱衝撃性を高めにくくなる。
【0053】
上記針状結晶顔料の平均アスペクト比は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である。針状結晶顔料の平均アスペクト比が上記下限より小さいと、針状結晶顔料同士が良好に絡み合うことができず、トッププレート1が大きな温度差で急速に冷却された場合において、第1の層4または第2の層5の熱収縮を抑制しにくくなる。そのため、トッププレート1の耐熱衝撃性を高めにくくなる。また、針状結晶顔料の平均アスペクト比が上記上限より大きいと、所望とする外観を得にくくなるとともに、塗付性が低下しやすくなるほか、第1の層または第2の層形成用ペーストを作製する工程において、針状結晶顔料が折れやすくなり、上記のようにトッププレート1の耐熱衝撃性を高めにくくなる。
【0054】
上記針状結晶顔料の平均長さ及び平均径は、走査型電子顕微鏡を用いて任意の50個の針状結晶顔料の長さ及び径を測定し、これらを平均することで求められる。また、上記針状結晶顔料の平均アスペクト比は、針状結晶顔料の平均長さの平均径に対する比(平均長さ/平均径)を意味する。
【0055】
上記針状結晶顔料のモース硬度は、好ましくは2.5以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上である。上記モース硬度が上記下限以上であると、耐熱樹脂層3の耐傷性をより一層高めることができる。
【0056】
上記針状結晶顔料としては、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、及び酸化チタン等が挙げられる。
【0057】
第1の層4中の上記針状結晶顔料は、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、チタン酸カリウムを含むことがより好ましい。この場合には、トッププレート1の耐熱衝撃性をより一層高めることができる。
【0058】
第2の層5中の上記針状結晶顔料は、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、チタン酸カリウムを含むことがより好ましい。この場合には、トッププレート1の耐熱衝撃性をより一層高めることができる。
【0059】
第2の顔料(針状結晶顔料以外の顔料):
上記第2の顔料としては、着色顔料及び鱗片状顔料等が挙げられる。上記第2の顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
トッププレート1の意匠性を高める観点から、第1の層4中の上記第2の顔料は、着色顔料を含むことが好ましい。第1の層4は、上記針状結晶顔料と、着色顔料とを含むことが好ましい。
【0061】
トッププレート1の意匠性及び調理器内部の隠蔽性を高める観点から、第2の層5中の上記第2の顔料は、着色顔料を含むことが好ましい。第2の層5は、上記針状結晶顔料と、着色顔料とを含むことが好ましい。
【0062】
第1の層4及び第2の層5がそれぞれ着色顔料を含む場合に、第1の層4が、第1の着色顔料を含んでおり、第2の層5が、第1の着色顔料とは異なる第2の着色顔料を含んでいてもよい。この場合、意匠性や、調理器内部の隠蔽性を考慮して、適宜の着色顔料の組み合わせを選定することができる。上記着色顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
上記着色顔料としては、球状着色顔料等が挙げられる。
【0064】
上記着色顔料としては、TiO2粉末、ZrO2粉末及びZrSiO4粉末等の白色の顔料粉末;Coを含む青色の無機顔料粉末;Coを含む緑色の無機顔料粉末;Ti-Sb-Cr系及びTi-Ni系の黄色の無機顔料粉末;Co-Si系の赤色の無機顔料粉末;Feを含む茶色の無機顔料粉末;Cuを含む黒色の無機顔料粉末等が挙げられる。
【0065】
Coを含む青色の無機顔料粉末としては、Co-Al系及びCo-Al-Ti系の無機顔料粉末等が挙げられる。Co-Al系の無機顔料粉末としては、CoAl2O4粉末等が挙げられる。Co-Al-Ti系の無機顔料粉末としては、CoAl2O4-TiO2-Li2O粉末等が挙げられる。
【0066】
Coを含む緑色の無機顔料粉末としては、Co-Al-Cr系及びCo-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末等が挙げられる。Co-Al-Cr系の無機顔料粉末としては、Co(Al,Cr)2O4粉末等が挙げられる。Co-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末としては、(Co,Ni,Zn)2TiO4粉末等が挙げられる。
【0067】
Feを含む茶色の無機顔料粉末としては、Fe-Zn系の無機顔料粉末等が挙げられる。Fe-Zn系の無機顔料粉末としては、(Zn,Fe)Fe2O4粉末等が挙げられる。
【0068】
Cuを含む黒色の無機顔料粉末としては、Cu-Cr系の無機顔料粉末、及びCu-Fe系の無機顔料粉末等が挙げられる。Cu-Cr系の無機顔料粉末としては、Cu(Cr,Mn)2O4粉末、及びCu-Cr-Mn粉末等が挙げられる。Cu-Fe系の無機顔料粉末としては、Cu-Fe-Mn粉末等が挙げられる。
【0069】
第1の層4中の上記顔料100質量%中、着色顔料の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記着色顔料の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層高めることができる。特に、上記着色顔料が黒色の無機顔料粉末である場合には、トッププレート1の外観を所望の黒色の外観にすることができる。
【0070】
第2の層5中の上記顔料100質量%中、着色顔料の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記着色顔料の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層高めることができる。特に、上記着色顔料が黒色の無機顔料粉末である場合には、トッププレート1の外観を所望の黒色の外観にすることができる。
【0071】
トッププレート1の外観を黒色の外観としやすくする観点からは、第1の層4中の上記着色顔料及び第2の層5中の上記着色顔料の内の少なくとも一方は、Cuを含む黒色の無機顔料粉末を含むことが好ましい。第1の層4及び第2の層5の内の少なくとも一方は、Cuを含む黒色の無機顔料粉末を含むことが好ましい。この場合には、比較的少ない含有量の着色顔料でトッププレート1の外観を所望の黒色の外観にすることができる。そのため、第1の層4又は第2の層5において、針状結晶顔料を比較的多く含有させることができ、黒色の外観かつ高い耐熱衝撃性を有するトッププレート1を実現しやすくなる。
【0072】
トッププレート1の機械的強度を向上させる観点からは、第1の層4中の上記着色顔料及び第2の層5中の上記着色顔料の内の少なくとも一方は、上記第2の顔料として、鱗片状顔料を含むことが好ましく、タルクを含むことがより好ましい。第1の層4中の上記第2の顔料及び第2の層5中の上記第2の顔料の内の少なくとも一方は、鱗片状顔料を含むことが好ましく、タルクを含むことがより好ましい。特に、上記第2の顔料がタルクを含む場合、比較的低コストでトッププレート1の機械的強度を向上させることができる。
【0073】
顔料の他の詳細:
第1の層4中の上記顔料の含有量(第1の層100質量%中、顔料の含有量)は、51質量%以上、72質量%未満であり、好ましくは53質量%以上、より好ましくは54質量%以上、更に好ましくは55質量%以上、好ましくは71質量%以下、より好ましくは70質量%以下、より一層好ましくは68質量%以下、更に好ましくは65質量%以下、更により一層好ましくは63質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。上記顔料の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、トッププレート1が高温から低温まで大きな温度差で急激に冷却された場合でも、第1の層4の熱収縮率を小さくすることができる。そのため、トッププレート1の耐熱衝撃性を高めることができ、ガラス基板2から耐熱樹脂層3が剥離したり、耐熱樹脂層3にひび又は割れが生じたりすることを防ぐことができる。また、上記顔料の含有量が上記上限以下であると、第1の層4とガラス基板2との密着性が効果的に高められ、本発明の効果が効果的に発揮される。なお、第1の層4中の上記顔料の含有量が72質量%以上であると、第1の層4とガラス基板2との密着性が低下して、連続膜とすることができないことがある。
【0074】
第2の層5中の上記顔料の含有量(第2の層100質量%中、顔料の含有量)は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、好ましくは72質量%未満、より好ましくは71質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。上記顔料の含有量が上記下限以上及び上記上限以下(又は上記上限未満)であると、第2の層5に所望の色調を付与しやすくなり、また、耐熱樹脂層3の強度を高めることができる。
【0075】
<耐熱樹脂層の他の詳細>
第1の層4及び第2の層5はそれぞれ、シリコーン樹脂と顔料との双方とは異なる他の成分を含んでいてもよい。
【0076】
第1の層4の組成と第2の層5の組成とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1の層4及び第2の層5の厚みは、いずれも、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。各層の厚みが上記下限より小さいと、意匠性や調理器内部の隠蔽性を向上しにくくなる。一方、各層の厚みが上記上限より大きいと、乾燥または焼成工程において、各層からの有機溶媒の蒸発量が増加して、各層において空隙が多くなり、結果的に、トッププレート1が大きな温度差で急速に冷却された場合の熱収縮が大きくなる。そのため、トッププレート1の耐熱衝撃性を高めにくくなる。
【0077】
また、耐熱樹脂層3全体の厚み(第1の層4と第2の層5との合計厚み)も、特に限定されず、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、好ましくは70μm以下、より好ましくは30μm以下である。耐熱樹脂層3全体の厚みが上記範囲内にある場合、繰り返しなされる加熱及び冷却によって耐熱樹脂層3がガラス基板2から剥離することを効果的に防止できるとともに、意匠性や調理器内部の隠蔽性をより一層向上させることができる。
【0078】
トッププレート1の外観として黒色を所望とする場合、ガラス基板2側(調理面側)から測定したときのトッププレート1のL*a*b*表色系におけるL*値は、好ましくは35以下、より好ましくは33.5以下、更に好ましくは32以下である。
【0079】
上記L*値は、色差計(例えば、コニカミノルタ社製「CM600d」)を用いて、25℃にて、測定することができる。
【0080】
以下、調理器用トッププレート1の製造方法の一例について説明する。
【0081】
(製造方法)
調理器用トッププレート1の製造方法の一例では、まず、シリコーン樹脂成分と、顔料とを含むペーストを用意する。上記シリコーン樹脂は、シリコーン樹脂成分を硬化させることにより得ることができる。上記シリコーン樹脂成分は、シリコーン樹脂を含んでいてもよく、モノマー(単量体)を含んでいてもよく、シリコーンオリゴマーを含んでいてもよい。上記シリコーン樹脂成分として、モノマーまたはシリコーンオリゴマーを含むことにより、シリコーン樹脂成分同士の架橋反応の反応点が多くなり、反応が促進されて、耐熱樹脂層3の機械的強度を高めやすくなる。結果的に、耐傷性を向上させやすくなり、トッププレート1を調理器に組み込む際の搬送工程や、周辺部品と接触した場合などにおいて、傷を生じさせにくくなる。また、上記ペーストは、硬化触媒、架橋剤、溶媒、粘性調整剤、レベリング剤及び消泡剤等の他の成分を含んでいてもよい。本実施形態では、第1の層形成用ペースト及び第2の層形成用ペーストをそれぞれ別々に用意する。なお、溶媒としては、特に限定されないが、例えば、キシレンを用いることができる。
【0082】
次に、ガラス基板2の裏面2b上に、第1の層形成用ペーストを塗布する。続いて、第1の層形成用ペーストが塗布されたガラス基板2を加熱することにより、第1の層形成用ペーストを乾燥させるとともに、シリコーン樹脂成分を硬化させ、第1の層4を形成する。なお、第1の層4の組成によっては、乾燥後にさらに焼成を行ってもよい。
【0083】
次に、第1の層4上に、第2の層形成用ペーストを塗布する。続いて、第1の層4上に第2の層形成用ペーストが塗布されたガラス基板2を加熱することにより、第2の層形成用ペーストを乾燥させるとともに、シリコーン樹脂成分を硬化させ、第2の層5を形成する。これによって、耐熱樹脂層3を形成することができる。なお、第2の層5の組成によっては、乾燥後にさらに焼成を行ってもよい。
【0084】
ペーストの塗布スピード及び粘度は、耐熱樹脂層3に含まれる顔料の含有量に応じて適宜設定することができる。例えば、耐熱樹脂層3における顔料の含有量が多い場合は、溶媒の量を多くしたりしてシリコーン樹脂成分の粘度を低くし、ペーストの塗布スピードを遅くすることが好ましい。
【0085】
ペーストの乾燥温度としては、例えば、60℃以上、200℃以下とすることができる。ペーストの乾燥時間としては、例えば、1分以上、30分以下とすることができる。
【0086】
また、焼成温度としては、例えば、200℃以上、450℃以下とすることができる。焼成時間としては、例えば、10分以上、1時間以下とすることができる。
【0087】
なお、第1の層形成用ペーストを乾燥または焼成する前に、第1の層形成用ペーストの上に、第2の層形成用ペーストを塗付して、2層同時に乾燥または焼成を行ってもよい。
【0088】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
【0089】
図2に示す調理器用トッププレート1Aは、ガラス基板2と耐熱樹脂層3Aとを備える。
図2に示すトッププレート1Aと、
図1に示すトッププレート1とでは、耐熱樹脂層の構成が異なる。すなわち、
図1に示すトッププレート1では、2層の構造を有する耐熱樹脂層3が設けられているのに対して、
図2に示すトッププレート1Aでは、1層の構造を有する耐熱樹脂層3Aが設けられている。
【0090】
耐熱樹脂層3Aは、ガラス基板2の裏面2b上に配置されている。耐熱樹脂層3Aは、第1の層4Aのみの1層の構造を有する。したがって、耐熱樹脂層3Aは、第1の層4Aである。耐熱樹脂層3A(第1の層4A)は、ガラス基板2の裏面2bと接している。
【0091】
第1の層4Aは、シリコーン樹脂と、顔料とを含む。
【0092】
第1の層4A中の上記顔料は、針状結晶顔料と、第2の顔料とを含む。第1の層4A中の上記顔料の含有量(第1の層100質量%中、上記顔料の含有量)は、51質量%以上、72質量%未満である。第1の層4A中の上記顔料100質量%中、上記針状結晶顔料の含有量は、30質量%以上、70質量%以下である。
【0093】
トッププレート1Aは、上記の構成を備えるので、耐熱衝撃性に優れる。トッププレート1Aでは、トッププレート1Aが大きな温度差で急速に冷却された場合でも、ガラス基板2からの耐熱樹脂層3A(第1の層4A)の剥離が生じにくい。また、耐熱樹脂層3Aにひび及び割れが生じにくい。
【0094】
なお、第1の層4Aは、第1の実施形態と同様に、上記第2の顔料として、着色顔料等を含んでいてもよい。
【0095】
ガラス基板2、シリコーン樹脂、顔料(針状結晶顔料及び第2の顔料)及び他の成分の詳細は、第1の実施形態で説明したとおりであるので、記載を省略する。また、耐熱樹脂層3A及び第1の層4A中のシリコーン樹脂、顔料(針状結晶顔料及び第2の顔料)の各含有量の好ましい範囲などの耐熱樹脂層3A及び第1の層4Aの好ましい形態は、第1の実施形態で説明した耐熱樹脂層3及び第1の層4の好ましい形態と同様である。さらに、ガラス基板2側(調理面2a側)から測定したときのトッププレート1AのL*a*b*表色系におけるL*値の好ましい形態は、第1の実施形態で説明したトッププレート1のL*a*b*表色系におけるL*値の好ましい形態の詳細と同様である。
【0096】
耐熱樹脂層3Aの厚み(第1の層4Aの厚み)は、特に限定されず、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、好ましくは70μm以下、より好ましくは50μm以下である。耐熱樹脂層3Aの厚みが上記下限より小さいと、意匠性や調理器内部の隠蔽性を向上しにくくなる。一方、耐熱樹脂層3Aの厚みが上記上限より大きいと、乾燥または焼成工程において、耐熱樹脂層3Aからの有機溶媒の蒸発量が増加して、耐熱樹脂層3Aにおける空隙が多くなり、結果的に、トッププレート1Aが大きな温度差で急速に冷却された場合の熱収縮が大きくなる。そのため、トッププレート1Aの耐熱衝撃性を高めにくくなる。
【0097】
耐熱樹脂層3Aの形成方法についても、特に限定されず、第1の実施形態と同様の方法により形成することができる。具体的には、まず、シリコーン樹脂成分と、顔料とを含むペーストを用意する。上記ペーストは、硬化触媒、架橋剤、溶媒、粘性調整剤、レベリング剤及び消泡剤等の他の成分を含んでいてもよい。次に、ガラス基板2の裏面2b上に、用意したペーストを塗布する。続いて、ペーストが塗布されたガラス基板2を加熱することによりペーストを乾燥させるとともに、シリコーン樹脂成分を硬化させ、耐熱樹脂層3Aを形成することができる。なお、耐熱樹脂層3Aの組成によっては、乾燥後に焼成を行ってもよい。
【0098】
[第3の実施形態]
図3は、本発明の第3の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
【0099】
図3に示す調理器用トッププレート1Bは、ガラス基板2と耐熱樹脂層3Bと無機層7Bとを備える。
図3に示すトッププレート1Bと、
図1に示すトッププレート1とでは、無機層の有無が異なる。
【0100】
無機層7Bは、ガラス基板2の裏面2b上に配置されている。無機層7Bは、ガラス基板2の裏面2b上に、部分的に配置されている。すなわち、ガラス基板2の裏面2bは、無機層7Bが配置されている部分と、無機層7Bが配置されていない部分とを有する。無機層7Bは、ガラス基板2の裏面2b上に、ドット状に配置されている。耐熱樹脂層3Bは、ガラス基板2の裏面2b上に配置されている。耐熱樹脂層3Bは、無機層7Bを覆うように、ガラス基板2の裏面2b上に配置されている。したがって、無機層7Bは、ガラス基板2と耐熱樹脂層3Bとの間に配置されている。
【0101】
耐熱樹脂層3Bは、第1の層4B及び第2の層5Bを有する。ガラス基板2の裏面2b上及び無機層7Bの表面上に、第1の層4Bが配置されており、第1の層4B上に第2の層5Bが配置されている。第1の層4Bは、ガラス基板2の裏面2bと接している。第1の層4Bは、ガラス基板2の裏面2bのうち、無機層7Bが配置されていない部分において、ガラス基板2の裏面2bと接している。また、第1の層4Bは、無機層7Bと接している。第1の層4Bは、無機層7Bを覆うように、ガラス基板2の裏面2b上に配置されている。第1の層4Bは、耐熱樹脂層3Bにおいて、ガラス基板2側に位置している。第2の層5Bは、耐熱樹脂層3Bにおいて、ガラス基板2側とは反対側に位置している。
【0102】
第1の層4Bは、シリコーン樹脂と、顔料とを含む。また、第2の層5Bは、シリコーン樹脂と、顔料とを含む。
【0103】
第1の層4B中の上記顔料は、針状結晶顔料と、第2の顔料とを含む。第1の層4B中の上記顔料の含有量(第1の層100質量%中、上記顔料の含有量)は、51質量%以上、72質量%未満である。第1の層4B中の上記顔料100質量%中、上記針状結晶顔料の含有量は、30質量%以上、70質量%以下である。
【0104】
トッププレート1Bは、上記の構成を備えるので、耐熱衝撃性に優れる。トッププレート1Bでは、トッププレート1Bが大きな温度差で急速に冷却された場合でも、ガラス基板2と耐熱樹脂層3B(第1の層4B)の間で剥離が生じにくく、耐熱樹脂層3Bで覆われている無機層7Bと耐熱樹脂層3B(第1の層4B)との間で剥離が生じにくい。また、耐熱樹脂層3Bにひび及び割れが生じにくい。
【0105】
なお、第1の層4Bは、第1の実施形態と同様に、上記第2の顔料として、着色顔料等を含んでいてもよい。また、第2の層5Bは、顔料として、針状結晶顔料を含んでいてもよく、針状結晶顔料以外の顔料を含んでいてもよく、針状結晶顔料と針状結晶顔料以外の顔料(第2の顔料)とを含んでいてもよい。
【0106】
ガラス基板2、シリコーン樹脂、顔料(針状結晶顔料及び第2の顔料)及び他の成分の詳細は、第1の実施形態で説明したとおりであるので、記載を省略する。また、耐熱樹脂層3B、第1の層4B及び第2の層5B中のシリコーン樹脂、顔料(針状結晶顔料及び第2の顔料)の各含有量の好ましい範囲などの耐熱樹脂層3B、第1の層4B及び第2の層5Bの好ましい形態は、第1の実施形態で説明した耐熱樹脂層3、第1の層4及び第2の層5の好ましい形態と同様である。さらに、ガラス基板2側(調理面2a側)から測定したときのトッププレート1BのL*a*b*表色系におけるL*値の好ましい形態は、第1の実施形態で説明したトッププレート1のL*a*b*表色系におけるL*値の好ましい形態の詳細と同様である。
【0107】
本実施形態では、無機層7Bは、トッププレート1Bの意匠性を高めるために、ガラス基板2の裏面2b上においてドット状に配置されている。トッププレート1Bでは、ガラス基板2の調理面2a側から視た平面視にて、無機層7Bに由来して、ドット状の模様が観察される。もっとも、ガラス基板2の裏面2b上に部分的に配置されている無機層7Bの形状は、ガラス基板2の調理面2a側から視た平面視にて、ドット状以外の形状、例えば、線状(直線状、折線状及び波線状等)であってもよく、文字及び記号等の形状であってもよい。ガラス基板2の裏面2b上に部分的に配置されている無機層7Bの位置及び形状は、トッププレート1Bを、ガラス基板2の調理面2a側から視たときの意匠性の観点から適宜選択可能である。
【0108】
無機層7Bは、無機物を含む層である。無機層7Bは、例えば、ガラスと顔料とを含む層である。無機層7Bは、ガラスと着色顔料とを含む層であることが好ましい。この場合、無機層7B中の着色顔料として、例えば、上述した着色顔料を用いることができる。また、無機層7B中のガラスとしては、例えば、B2O3-SiO2系ガラスを用いることができる。
【0109】
なお、無機層7Bは、チタン等の金属層であってもよい。
【0110】
無機層7Bの厚みは、特に限定されない。無機層7Bの厚みは、例えば、無機層7Bの光透過率や、機械的強度、あるいは熱膨張係数などに応じて適宜設定することができる。なお、無機層7Bは、通常、ガラス基板2と異なる熱膨張係数を有する。このため、繰り返しの加熱及び冷却により無機層7Bが損傷する場合がある。
【0111】
この損傷をより一層抑制する観点から、無機層7Bの厚みは、薄い方が好ましい。無機層7Bの厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。
【0112】
トッププレート1Bの製造方法についても、特に限定されず、無機層7Bを形成すること以外は、第1の実施形態と同様の方法により製造することができる。
【0113】
無機層7Bの形成方法は、特に限定されない。無機層7Bは、例えば、下記の方法により形成することができる。
【0114】
まず、着色顔料とガラス粉末との混合粉末に溶媒を加えてペースト化する。得られたペーストをガラス基板2の裏面2b上に、スクリーン印刷法などにより塗布し、乾燥させる。その後、焼成することにより無機層7Bを形成することができる。なお、焼成温度及び焼成時間は、使用するガラス粉末の組成などに応じて適宜設定することができる。焼成温度は、例えば、200℃~900℃程度とすることができる。焼成時間は、例えば、10分~1時間程度とすることができる。
【0115】
なお、無機層7Bが金属層である場合は、スパッタリング法及びCVD法等により無機層7Bを形成させることができる。
【0116】
本実施形態では、トッププレート1Bが、2層の構造を有する耐熱樹脂層3Bを備えるが、トッププレート1Bは、1層の構造を有する耐熱樹脂層を備えていてもよく、3層以上の構造を有する耐熱樹脂層を備えていてもよい。
【0117】
上述した各実施形態に示すように、本発明において、耐熱樹脂層は、1層又は2層以上、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。上記耐熱樹脂層が1層の構造を有する場合には、該耐熱樹脂層は第1の層である。上記耐熱樹脂層が2層以上の構造を有する場合に、該耐熱樹脂層の第1の層は、通常、耐熱樹脂層において、ガラス基板側に位置している。
【0118】
本発明において、耐熱樹脂層の第1の層は、ガラス基板の裏面と直接接する部分を有する。本発明においては、第1,第2の実施形態に示されているように、上記第1の層におけるガラス基板側の表面の全体が、該ガラス基板の裏面と接していてもよく、第3の実施形態に示されているように、上記第1の層におけるガラス基板側の表面の一部が、該ガラス基板の裏面と接していてもよい。
【0119】
以下、本発明について、実施例に基づいてさらに詳細を説明する。但し、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0120】
以下のガラス基板を用意した。
【0121】
透明結晶化ガラス板(日本電気硝子社製「N-0」、30℃~750℃における平均線熱膨張係数:0.5×10-7/℃、厚み:4mm)
【0122】
以下の耐熱樹脂層の材料を用意した。
【0123】
<シリコーン樹脂成分>
メチルフェニルシリコーン樹脂(モメンティブ社製「TSR-145」、本市販品は、溶剤(キシレン及びトルエン)及びシリコーン樹脂の混合物であり、シリコーン樹脂60質量%、溶剤40質量%を含む)
変性メチルフェニルシリコーン樹脂
多官能シリコーンオリゴマー
【0124】
<針状結晶顔料>
チタン酸カリウム(モース硬度4、大塚化学社製「ティスモD」)
【0125】
<第2の顔料>
タルク(モース硬度1、鱗片状顔料)
黒顔料(球状顔料)
【0126】
<溶剤>
キシレン
【0127】
<ペーストX1~X3,Y1~Y4の作製>
下記の表1,2に記載の成分を混合することにより、ペーストX1~X3,Y1~Y4を作製した。各ペーストにおける溶剤を除く成分100質量%中の各成分の含有量を下記の表1,2に示す。
【0128】
【0129】
【0130】
(実施例1)
耐熱樹脂層における第1の層形成用ペーストとして、ペーストX1を用い、第2の層形成用ペーストとして、ペーストX1を用いた。第1の層形成用ペーストを、ガラス基板の裏面上に厚みが15μmとなるように、スクリーン印刷した。次いで、300℃で10分間の条件で加熱乾燥を行い、第1の層を形成した。次いで、第2の層形成用ペーストを、第1の層の表面上に厚みが15μmとなるように、スクリーン印刷した。次いで、300℃で10分間の条件で加熱乾燥を行い、第2の層を形成した。このようにして、ガラス基板の裏面上に2層構造の耐熱樹脂層を備えるトッププレート(調理器用トッププレート)を作製した。
【0131】
(実施例2~4及び比較例1~5)
ペーストの種類を下記の表3,4のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、トッププレートを作製した。
【0132】
[評価]
(1)トッププレートの耐熱衝撃性
得られたトッププレートをオーブンに入れ、540℃で30分間加熱した。次いで、トッププレートをオーブンから取り出し、取り出したトッププレートを直ちに水温10℃の水中に投入した。水中に投入してから5分後にトッププレートを取り出し、トッププレートの状態を目視にて観察した。
【0133】
[評価基準]
A:耐熱樹脂層がガラス基板から剥離しておらず、かつ、耐熱樹脂層にひび又は割れが生じていない
B:耐熱樹脂層がガラス基板から剥離していないものの、耐熱樹脂層にひび又は割れが生じている
C:耐熱樹脂層の一部がガラス基板から剥離している
D:耐熱樹脂層の全体がガラス基板から剥離している
【0134】
(2)トッププレートの外観(L*値)
得られたトッププレートのL*a*b*表色系におけるL*値を、色差計(コニカミノルタ社製「CM600d」)を用いて、トッププレートのガラス基板の調理面側から評価した。
【0135】
詳細及び結果を下記の表3,4に示す。
【0136】
【0137】
【0138】
表3,4から明らかなように、ペーストX1~X3(表1)を第1の層に用いた本発明の構成を満たす実施例1~4では、耐熱樹脂層がガラス基板から剥離しておらず、かつ、耐熱樹脂層にひび又は割れが生じていなかったことから、耐熱衝撃性が効果的に高められていることが分かる。一方、ペーストY1~Y4(表2)を第1の層に用いた本発明の構成を満たさない比較例1~5では、耐熱衝撃性が十分に高められていなかった。
【符号の説明】
【0139】
1,1A,1B…調理器用トッププレート
2…ガラス基板
2a…調理面
2b…裏面
3,3A,3B…耐熱樹脂層
4,4A,4B…第1の層
5,5B…第2の層
7B…無機層