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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181071
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】小臨界事故ソースターム確定方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/108 20060101AFI20231214BHJP
   G01T 1/167 20060101ALI20231214BHJP
   G01T 1/00 20060101ALI20231214BHJP
   G21C 17/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G21C17/108
G01T1/167 C
G01T1/167 D
G01T1/00 D
G21C17/00 200
G21C17/00 500
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023011985
(22)【出願日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】202210651739.3
(32)【優先日】2022-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521209591
【氏名又は名称】中国核電工程有限公司
【氏名又は名称原語表記】China Nuclear Power Engineering Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.117 West Third Ring Road,Haidian District,Beijing 100840,China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】李云龍
(72)【発明者】
【氏名】劉国明
(72)【発明者】
【氏名】霍小東
(72)【発明者】
【氏名】張浩然
(72)【発明者】
【氏名】邵増
(72)【発明者】
【氏名】易▲セン▼
(72)【発明者】
【氏名】胡小利
(72)【発明者】
【氏名】于▲ミョウ▼
(72)【発明者】
【氏名】陳添
【テーマコード(参考)】
2G075
2G188
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075BA12
2G075CA08
2G075DA08
2G075EA01
2G188AA19
2G188AA23
2G188JJ05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】最小臨界事故ソースタームの確定方法を提供する。
【解決手段】本発明は、最小分裂回数Vmin、最小平均分裂中性子数Nmin及び工場内の各設備の最小中性子または光子漏洩率Dminをそれぞれ確定することで、最小臨界事故下での対応する漏洩中性子または光子数DNを得、最小臨界事故下での対応する漏洩中性子または光子数DN及び前記最小臨界事故ソースタームのエネルギースペクトルを組み合わせて最小臨界事故下での対応する漏洩ソースタームを得るステップを含む、最小臨界事故ソースターム確定方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【請求項2】
前記工場内の設備の全体的な特徴は前記工場内の各設備の形状及び液体材料濃度の最大境界を含む
請求項1に記載の最小臨界事故ソースターム確定方法。
【請求項3】
工場内の設備の全体的な特徴を取得し、前記全体的な特徴に基づいて、前記規格に規定の最小臨界事故下での対応する最小分裂回数Vmin、最小平均分裂中性子数Nmin、及び前記工場内の各設備における中性子または光子の最小漏洩率Dminを確定する前記ステップは、
前記工場内の設備の形状特徴に基づいて液体材料U、Pu濃度境界の範囲内において、一連の臨界到達濃度値を計算するステップと、
前記一連の臨界到達濃度値に基づいて、前記最小臨界事故を満たす各臨界到達動作状態下での対応する分裂回数と平均分裂中性子数を計算して、最小分裂回数Vminと最小平均分裂中性子数Nminを統計により得るステップと、
前記工場内の各設備における中性子または光子漏洩率を分析して、最小漏洩率Dminを見出すステップと、を含む
請求項2に記載の最小臨界事故ソースターム確定方法。
【請求項4】
前記規格はGB/T15146.9規格である
請求項1に記載の最小臨界事故ソースターム確定方法。
【請求項5】
前記規格に規定の線量率は、設備表面から2mの箇所に生じる線量率が0.2Gy/minである
請求項1に記載の最小臨界事故ソースターム確定方法。
【請求項6】
前記規格に規定の時間tは60sである
請求項4または5に記載の最小臨界事故ソースターム確定方法。
【請求項7】
前記工場内の設備の形状は円柱体、球体及び直方体を含む
請求項2に記載の最小臨界事故ソースターム確定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は臨界事故ソースターム設置分野に属し、具体的に最小臨界事故ソースターム確定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
GB/T15146.9等のプルトニウム(Pu)、ウラン(U)及びその他の核分裂性材料に関する核臨界安全法規基準によれば、1つの独立した領域において、総量が700gを超えるウラン235、520gを超えるウラン233、450gを超えるプルトニウムの核分裂性同位元素または450gを超えるこれらの同位元素の任意の組成物の操作活動は、臨界事故警報システム設置の必要性が評価されなければならない。臨界事故警報の網羅が要求される領域内には、過剰な累積放射線量または線量率を検出して(つまり、累積した放射線量または線量率が閾値を超えたことを検出して)人員退避信号を発する手段が提供されていなければならない。
【0003】
臨界警報システムを設計するにあたって、臨界警報システムは最小の臨界事故を検出可能である必要があるため、重要な課題は、最小臨界事故がどれほどの大きさであるか、言い換えれば、最小臨界事故のソースタームがどれだけであるかというものである。臨界事故の発生メカニズムは複雑で、動作状態が多様であることから、何をして最小臨界事故とするのかは予てから定説がなく、GB/T15146.9では、対象の最小臨界事故を、無遮蔽条件下で、60s内に反応物体表面から2m離れた自由空気中に生じる中性子とγ放射線の総吸収線量が0.2Gyであると定義している。このことから分かるように、この定義は、一定時間内に生じる事故結果によって事故の大きさを評価するものである。
【0004】
研究によると、一部の挿入反応性が小さく、パワー増長が緩慢な臨界事故は規格GB/T15146.9における最小臨界事故に関する定義に網羅されていないが、長時間の照射は依然として人体にダメージを与えるため、実際の分析時において、最小臨界事故の定義はより厳格になると考えられ、つまりGB/T15146.9での吸収線量はより低く設定される。
【0005】
臨界事故は異なる動作状態下で異なる分裂回数、異なる平均分裂中性子数、異なる漏洩率、異なるエネルギースペクトルを有するため、これらパラメータの異なる組み合わせはみな同様の事故結果を招く可能性があるが、検出器での線量率は異なる。
【0006】
従って、相対エンベロープ(enveloped)の最小臨界事故ソースタームの確定は臨界事故の識別及び警報を正確に行うための先決条件であり、臨界事故の申告漏れ率を下げ、従業員の健康と安全防護に有利な保証を提供することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術に存在する不備に対して、本発明の目的は最小臨界事故ソースタームの確定方法を提供することであって、相対エンベロープの最小臨界事故ソースタームを確定可能であって、各種動作状態下での臨界事故ソースタームを網羅でき、臨界識別の申告漏れ率を下げており、このことは臨界事故識別及び警報を正確に行うための先決条件であり、従業員の健康と安全防護に有利な保証を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
【0009】
任意で、工場内の設備の全体的な特徴を取得し、前記全体的な特徴に基づいて、前記規格に規定の最小臨界事故下での対応する最小分裂回数Vmin、最小平均分裂中性子数Nmin、及び前記工場内の各設備における中性子または光子の最小漏洩率Dminを確定する前記ステップは、
前記工場内の設備の形状特徴に基づいて液体材料U、Pu濃度境界の範囲内において、一連の臨界到達濃度(臨界濃度ともいう)値を計算するステップと、
前記一連の臨界到達濃度値に基づいて、規格に規定の最小臨界事故を満たす各臨界到達動作状態下での対応する分裂回数と平均分裂中性子数を計算して、最小分裂回数Vminと最小平均分裂中性子数Nminを統計により得るステップと、
前記工場内の各設備における中性子または光子漏洩率を分析して、最小漏洩率Dminを見出すステップと、を含む。
【0010】
任意で、前記規格はGB/T15146.9規格であり、前記GB/T15146.9規格に規定の線量率は、設備表面から2mの箇所に生じる線量率が0.2Gy/minである。
【0011】
任意で、前記規格に規定の時間tは60sである。
【0012】
任意で、工場内の設備の形状は円柱体、球体及び直方体を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明が開示する最小臨界事故ソースターム確定方法は、最小分裂回数Vmin、最小平均分裂中性子数Nmin及び工場内の各設備における中性子または光子の最小漏洩率Dminをそれぞれ確定することで、最小臨界事故下での対応する漏洩中性子または光子数DNを得、最小臨界事故下での対応する漏洩中性子または光子数DN及び前記最小臨界事故ソースタームのエネルギースペクトルを組み合わせて、最小臨界事故下での対応する漏洩ソースタームを得る。このことから分かるように、本発明における最小分裂回数、最小平均分裂中性子数、最小漏洩率は異なる設備及び動作状態からのものである可能性があるため、本発明が開示する最小臨界事故ソースターム確定方法を用いて、相対エンベロープの最小臨界事故ソースタームを確定することができ、各種動作状態での臨界事故ソースタームを網羅することができ、臨界識別の申告漏れ率を下げており、このことは臨界事故識別と警報を正確に行うための先決条件であり、従業員の健康と安全防護に有利な保証を提供し、応用範囲が広く、各種動作状態での臨界事故を網羅することができ、申告漏れ率が低く、臨界事故の識別能力が高いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明実施例が示す最小臨界事故ソースターム確定方法の方法フロー図である。
図2図2は濃度境界範囲内での球体の臨界到達濃度について分析し、得られた、直径の大きさが異なる球体の臨界到達濃度分布図である。
図3図3はGB/T15146.9における規定を満たす場合、計算して得た、異なる臨界到達濃度に対応する分裂回数分布図である。
図4図4はGB/T15146.9における規定を満たす場合、計算して得た、異なる臨界到達濃度に対応する平均分裂中性子数分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では図面と具体的な実施の形態を組み合わせて本発明についてさらに説明する。
【0016】
【0017】
従って、最小分裂回数Vmin、最小平均分裂中性子数Nmin及び工場内の各設備における中性子または光子の最小漏洩率Dminを確定することで、漏洩中性子数DNを算出することができ、一連の中性子エネルギースペクトルをさらに組み合わせれば、最小臨界事故を引き起こすソースタームを確定できる。以下では、この原理に基づいて本発明実施例で開示する技術案について論述する。
【0018】
図1を参照されたい。本発明実施例1では最小臨界事故ソースターム確定方法を開示しており、前記方法は以下のステップS1~S6を含む。
【0019】
ステップS1では、工場内の設備の全体的な特徴を取得する。
【0020】
本発明における工場とは、核分裂性材料が置かれているか、核分裂性材料を収容または含有する設備が置かれている場所または建物を指す。本発明の工場は、核付属工場、核燃料工場(例えば、燃料使用後の後処理工場の建物)、原子炉燃料貯蔵工場等を含むがこれらに限らない。本実施例において、工場には液体材料を収納する設備(例えば、容器)が置かれており、液体材料には核分裂性材料が含まれている。
【0021】
本実施例において、工場内の設備の全体的な特徴は工場内の各設備の形状及び液体材料濃度の最大(または最小)境界を含む。
【0022】
工場内の設備の形状は主に円柱体、球体または直方体等である。工場内の液体材料U、Pu濃度の最大境界は設計要求に応じて確定し、設計インプットに属する。
【0023】
仮に、ある工場内に8つの設備があり、いずれも大きさの異なる球体であって、当該工場には異なる濃度のU、Pu溶液が主に配置されているとすると、そのU、Pu濃度の比率は制御できないが、設計インプットを照会することで分かるように、U濃度は最高1000g/L、Pu濃度は最高150g/Lである。
【0024】
ステップS2では、工場内の各設備の形状特徴について、液体材料のU、Pu濃度境界の範囲内において、一連の臨界到達濃度値を計算する。計算時には、濃度臨界範囲内にできるだけ広い範囲を含んでもよい。
【0025】
図2に示すように、直径の大きさが異なる球体の臨界到達濃度分布状況を得られるまで、濃度境界範囲内において球体の臨界到達濃度について分析する。ここで、各線は1つの設備(球体)に対応する一連の臨界到達濃度を表し、各点は臨界動作状態に対応する1組のU、Pu濃度を表し、各U濃度とPu濃度はそれぞれの濃度境界範囲内にある。
【0026】
ステップS3では、ステップS2から得た一連の臨界到達濃度値に基づいて、規格に規定の最小臨界事故を満たす各臨界到達動作状態下での対応する分裂回数と平均分裂中性子数を計算して、最小分裂回数Vminと最小平均分裂中性子数Nminを統計により得る。
【0027】
なお、臨界事故には一定の範囲があるため、本発明でいう臨界到達濃度とは、濃度が増加した時に容器をまさに臨界状態へ至らせる対応濃度を指し、対応する臨界状態を臨界到達動作状態と言う。
【0028】
このほか、ステップS3における各臨界到達動作状態は、設備毎に計算されるものである。
【0029】
図3に示すように、GB15146.9を基準とした例では、GB15146.9で規定されている状況において、異なる臨界到達濃度に対応する平均分裂中性子数を計算して得る。これに基づいて統計により得られる最小分裂回数は6.97E+13回の分裂/s(図3の右下点)である。また、図4に示すように、GB15146.9における規定を満たした状況において、異なる臨界到達濃度に対応する平均分裂中性子数を計算して得る。これに基づいて、最小平均分裂中性子数は2.52個の中性子/回分裂であると統計により得ることができる。
【0030】
ステップS4では、ステップS2から得た一連の臨界到達濃度値に基づいて、各臨界到達動作状態において対応する中性子、光子のエネルギースペクトルを計算し、単一の中性子または光子が対応エネルギースペクトルで引き起こす線量を計算し、最小線量を引き起こすのに対応する中性子または光子のエネルギースペクトルを最小臨界事故ソースタームのエネルギースペクトルとする。
【0031】
ステップS2から得た一連の臨界到達濃度値に基づいて、各臨界到達動作状態において対応する中性子、光子のエネルギースペクトルを計算し、表1に示す最小臨界事故中性子エネルギースペクトル表を得、単一の中性子が引き起こす最小線量が同時に計算される。
【0032】
【0033】
ステップS5では、工場内の各設備の中性子または光子漏洩率を分析し、最小漏洩率Dminを見出す。
【0034】
本実施例においては、仮に8つの設備における最小漏洩率が25%であるとする。
【0035】
【0036】
ステップS3とステップS5によれば、得られた最小臨界事故の漏洩中性子数は、
6.97E+13回の分裂/s×2.52個の中性子/回分裂×25%=4.39E+13個の中性子/sであり、表1を組み合わせて最小臨界事故の漏洩ソースタームを得ることができる。
【0037】
特筆すべきは、研究によると、一部の挿入反応性が小さく、パワー増長が緩慢な臨界事故は、規格GB/T15146.9における最小臨界事故に関する定義に網羅されていないが、長時間の照射は依然として人体にダメージを与えるという点である。従って、実際の分析時において、最小臨界事故の定義はより厳格になると考えられ、つまりGB/T15146.9における吸収線量をより低く設定して、当該より低く設定された吸収線量を「規格に規定の最小臨界事故」の根拠とする。
【0038】
最小臨界事故を評価する吸収線量の基準が変化すると、分析においては最小臨界事故の分裂回数計算結果に影響を与え、残りの分析に影響はないため、これらの変動も本発明の範囲に含まれるべきであり、本発明を逸脱したと考えるべきではない。
【0039】
上記実施例から分かるように、本発明が開示する最小臨界事故ソースターム確定方法は、相対エンベロープの最小臨界事故ソースタームを確定することができ、各種動作状態での臨界事故ソースタームを網羅することができ、臨界識別の申告漏れ率を下げており、このことは臨界事故識別と警報を正確に行うための先決条件であり、従業員の健康と安全防護に有利な保証を提供し、応用範囲が広く、各種動作状態での臨界事故を網羅することができ、申告漏れ率が低く、臨界事故の識別能力が高いという利点がある。
【0040】
また、本発明の実施例は、上記実施例が提供する最小臨界事故ソースターム確定方法を実行するためのコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ記憶媒体をさらに提供する。
【0041】
本発明に記載の方法は具体的な実施の形態に記載の実施例に限らず、当業者が本発明の技術案から得たその他の実施の形態も同様に本発明の技術革新の範囲内に属する。
【0042】
例えば、上記実施例では液体材料を収容する設備を例として説明したが、本発明はこれに限らなず、固体形式の核分裂性材料を含有する設備(固体を溶液とする特例であってもよい)にも適用することができる。このほか、上記実施例ではGB15146.9における最小臨界事故についての判断根拠を例としているが、本発明の方法はその他の国、機関、または企業の核臨界安全基準にも適用できる。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】