(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181078
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】免疫力の有効性の検出方法及びリンパ球又はナチュラルキラー細胞の医学的用途
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/53 Y
【審査請求】有
【請求項の数】38
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033087
(22)【出願日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】111121739
(32)【優先日】2022-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】111141861
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】522312366
【氏名又は名称】何鈞軒
【氏名又は名称原語表記】HO,CHUN-HSUAN
【住所又は居所原語表記】5F.,NO.133,SEC.1,DA-AN RD.,DA-AN DIST.,TAIPEI CITY 10685,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】何鈞軒
(57)【要約】
【課題】本開示内容の幾つかの実施形態は、免疫力の有効性の検出方法を提供する。
【解決手段】上記の免疫力の有効性の検出方法は、リンパ球細胞に占める各T細胞サブセットの数の百分率及びリンパ球細胞に占める各ナチュラルキラー細胞サブセットの数の百分率を計算して、複数のT細胞サブセットの実際の百分率及び複数のナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率を獲得する工程と、T細胞サブセットの実際の百分率及びナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率に基づいて、免疫力の有効性が正常であるかを判断する工程と、を含む免疫力の有効性の検出方法を提供し、免疫システムの各方面の機能に対して、より全面的な検査を提供する。本開示内容の幾つかの実施形態は、個体の癌の治療用医薬組成物の調製への複数のリンパ球の用途を更に提供し、T細胞の実際の総数又はナチュラルキラー細胞の実際の総数を理論的範囲に制御することで、癌の治療効果を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンパ球細胞を含む個体のインビトロサンプルを提供する工程、
CD28を含む複数の第1の抗原の発現の有無に応じて前記リンパ球細胞を複数のT細胞サブセットに分類し、CD16を含む複数の第2の抗原の発現の有無に応じて前記リンパ球細胞を複数のナチュラルキラー細胞サブセットに分類する工程、
前記リンパ球細胞に占める前記各T細胞サブセットの数の百分率及び前記リンパ球細胞に占める前記ナチュラルキラー細胞サブセットの数の百分率を計算して、複数のT細胞サブセットの実際の百分率及び複数のナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率を獲得する工程、
各前記T細胞サブセットの実際の百分率がT細胞サブセットの基準範囲を満たすかを判断し、各前記ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率がナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲を満たすかを判断する工程、及び
前記T細胞サブセットの全ての各前記T細胞サブセットの実際の百分率が前記T細胞サブセットの基準範囲を満たし、前記ナチュラルキラー細胞サブセットの全ての各前記ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率が前記ナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲を満たす場合、前記個体の免疫力の有効性が正常であると判断する工程
を含むことを特徴とする免疫力の有効性の検出方法。
【請求項2】
前記T細胞サブセットは、初期ヘルパーT細胞、老化ヘルパーT細胞、制御性ヘルパーT細胞、初期キラーT細胞、老化キラーT細胞又はそれらの組合わせを含み、
前記初期ヘルパーT細胞はCD3+、CD4+、CD45RA+、CD62L+、及びCD28+であり、
前記老化ヘルパーT細胞はCD3+、CD4+、CD45RO+、及びCD62L+であり、
前記制御性ヘルパーT細胞はCD3+、CD4+、CD25+、FoxP3+、及びCD39+であり、
前記初期キラーT細胞はCD8+、CD27+、CD45RA+、CD62L+、及びCD127+であり、
前記老化キラーT細胞はCD8+、CD27+、CD45RO+、CD62L+、及びCD57+であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記T細胞サブセットの基準範囲は初期ヘルパーT細胞の基準範囲を含み、前記初期ヘルパーT細胞の基準範囲は20%~100%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記T細胞サブセットの基準範囲は制御性ヘルパーT細胞の基準範囲を含み、前記制御性ヘルパーT細胞の基準範囲は1%~15%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記T細胞サブセットの基準範囲は初期キラーT細胞の基準範囲を含み、前記初期キラーT細胞の基準範囲は15%~100%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記T細胞サブセットの基準範囲は老化キラーT細胞の基準範囲を含み、前記老化キラーT細胞の基準範囲は0%~50%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記T細胞サブセットの基準範囲は健常者群の生理的数値に由来し、前記健常者群は、免疫不全症候群及び免疫亢進症候群に罹患していない5歳~85歳のヒト個体であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記初期ヘルパーT細胞、前記老化ヘルパーT細胞及び前記制御性ヘルパーT細胞の数の百分率の合計を100%とし、前記初期ヘルパーT細胞、前記老化ヘルパーT細胞及び前記制御性ヘルパーT細胞におけるCD28陽性の数の百分率を計算して、ヘルパーT細胞におけるCD28陽性の実際の百分率を獲得する工程と、
前記ヘルパーT細胞におけるCD28陽性の実際の百分率がヘルパーT細胞におけるCD28陽性の基準範囲を満たすかを判断する工程と、
を更に含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ヘルパーT細胞におけるCD28陽性の基準範囲は80%~100%であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ヘルパーT細胞におけるCD28陽性の基準範囲は健常者群の生理的数値に由来し、前記健常者群は、免疫不全症候群及び免疫亢進症候群に罹患していない5歳~85歳のヒト個体である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ナチュラルキラー細胞サブセットはキラーナチュラルキラー細胞及び制御性ナチュラルキラー細胞を含み、前記キラーナチュラルキラー細胞はCD16+、CD34+、CD56+、CD94+、及びCD117+であり、前記制御性ナチュラルキラー細胞はCD34+、CD56+、CD94+、及びCD117+であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲は制御性ナチュラルキラー細胞の基準範囲を含み、前記制御性ナチュラルキラー細胞の基準範囲は0%~20%であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記制御性ナチュラルキラー細胞の基準範囲は健常者群の生理的数値に由来し、前記健常者群は、免疫不全症候群及び免疫亢進症候群に罹患していない5歳~85歳のヒト個体であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ナチュラルキラー細胞と複数の癌細胞とをある数の割合で共培養すること、
前記癌細胞の死亡数の百分率を計算して、前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を獲得すること、及び
前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値がナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲を満たすかを判断し、前記数の割合が6.25である場合、前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲は0%~58.8%であり、前記数の割合が12.5である場合、前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲は1.7%~88.7%であり、前記数の割合が25である場合、前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲は17.4%~100%であり、前記数の割合が50である場合、前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲は35.3%~100%であることにより前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を計算し、
前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を検出する工程を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
各前記T細胞サブセットの実際の百分率が前記T細胞サブセットの基準範囲を満たす場合、各前記T細胞サブセットを凍結保存する工程と、
各前記ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率が前記ナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲を満たす場合、各前記ナチュラルキラー細胞サブセットを凍結保存する工程と、
を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
各前記T細胞サブセットを凍結保存し、又は各前記ナチュラルキラー細胞サブセットを凍結保存する工程は、
免疫ビーズ細胞選別法によって各前記T細胞サブセット又は各前記ナチュラルキラー細胞サブセットを選別する工程と、
各前記T細胞サブセット又は各前記ナチュラルキラー細胞サブセットを凍結保存する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
プロセッサー及びメモリを含む免疫力の有効性の検出システムであって、
前記メモリに複数のコンピュータプログラム命令が記憶され、前記コンピュータプログラム命令が前記プロセッサーによって実行されると、前記プロセッサーに、
個体の複数のサンプル細胞表面の抗原データを含むインビトロサンプルデータにアクセスする工程と、
T細胞サブセットの分類情報及びナチュラルキラー細胞サブセットの分類情報を含む細胞サブセットデータベースを利用して、前記インビトロサンプルデータに基づいて、複数のT細胞サブセットの数のデータ及び複数のナチュラルキラー細胞サブセットの数のデータを生成し、前記T細胞サブセットの分類情報は、CD28を含む複数の第1の抗原の発現の有無に応じて分類指標とすることを含み、前記ナチュラルキラー細胞サブセットの分類情報は、CD16を含む複数の第2の抗原の発現の有無に応じて分類指標とすることを含む工程と、
複数のT細胞サブセットの基準範囲データと複数のナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲データとを含む免疫力の有効性評価データベースを利用して、前記T細胞サブセットの数のデータ及び前記ナチュラルキラー細胞サブセットの数のデータに基づいて、免疫力の有効性データを生成する工程と、
を実施させることを特徴とする、免疫力の有効性の検出システム。
【請求項18】
前記第1の抗原はCD3、CD4、CD8、CD25、CD27、CD39、CD45RO、CD45RA、CD57、CD62L、CD127、FoxP3、又はそれらの組合わせを更に含み、前記第2の抗原はCD34、CD56、CD94、CD117又はそれらの組合わせを更に含むことを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記プロセッサーに接続され、前記免疫力の有効性データを受信して、免疫力の有効性報告として出力する出力モジュールを更に含むことを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記免疫力の有効性報告は、免疫力の有効性フィールド及び複数の免疫分析指標フィールドを含むことを特徴とする、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
個体の癌の治療用医薬組成物の調製への複数のリンパ球の用途であって、
前記リンパ球は複数のT細胞、複数のナチュラルキラー細胞又はそれらの組合わせを含み、
前記治療は、
(a)T細胞の実際の総数とT細胞総数の理論的範囲とのT細胞の総数偏差値を生成し、ナチュラルキラー細胞の実際の総数とナチュラルキラー細胞総数の理論的範囲とのナチュラルキラー細胞の総数偏差値を生成する工程と、
(b)前記個体の前記T細胞の実際の総数が前記T細胞の総数理論的範囲を満たすように、前記T細胞の総数偏差値に基づいて、前記個体に前記T細胞を含む前記医薬組成物を投与し、
前記ナチュラルキラー細胞の総数偏差値に基づいて、前記個体の前記ナチュラルキラー細胞の実際の総数が前記ナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲を満たすように、前記個体に前記ナチュラルキラー細胞を含む前記医薬組成物を投与する工程と、
を含むことを特徴とする用途。
【請求項22】
前記T細胞の総数理論的範囲は700個/マイクロリットル~2500個/マイクロリットルであり、前記ナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲は100個/マイクロリットル~300個/マイクロリットルであることを特徴とする、請求項21に記載の用途。
【請求項23】
前記治療は、
(a)複数の第1の抗原の発現の有無に応じて前記リンパ球細胞を複数のT細胞サブセットに分類し、複数の第2の抗原の発現の有無に応じて前記リンパ球細胞を複数のナチュラルキラー細胞サブセットに分類する工程、
(b)T細胞サブセットの実際の百分率とT細胞サブセットの理論的範囲とのT細胞サブセットの偏差値を生成し、ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率とナチュラルキラー細胞サブセットの理論的範囲とのナチュラルキラー細胞サブセットの偏差値を生成し、前記T細胞サブセットの実際の百分率は前記リンパ球細胞に占める各前記T細胞サブセットの数の百分率であり、前記ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率は前記リンパ球細胞に占める各前記ナチュラルキラー細胞サブセットの数の百分率である工程、及び
(c)前記個体の前記T細胞サブセットの実際の百分率が前記T細胞サブセットの理論的範囲を満たすように、前記T細胞サブセットの偏差値に基づいて、前記個体に前記T細胞サブセットを含む前記医薬組成物を投与し、
前記ナチュラルキラー細胞サブセットの偏差値に基づいて、前記個体の前記ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率が前記ナチュラルキラー細胞サブセットの理論的範囲を満たすように、前記個体に前記ナチュラルキラー細胞サブセットを含む前記医薬組成物を投与する工程
を更に含む請求項21に記載の用途。
【請求項24】
前記T細胞サブセットは、初期ヘルパーT細胞、制御性ヘルパーT細胞、初期キラーT細胞又はそれらの組合わせを含み、
前記初期ヘルパーT細胞はCD3+、CD4+、CD45RA+、CD62L+、及びCD28+であり、
前記制御性ヘルパーT細胞はCD3+、CD4+、CD25+、FoxP3+、及びCD39+であり、
前記初期キラーT細胞はCD8+、CD27+、CD45RA+、CD62L+、及びCD127+であることを特徴とする、請求項23に記載の用途。
【請求項25】
前記T細胞サブセットの理論的範囲は、初期ヘルパーT細胞の理論的範囲、制御性ヘルパーT細胞の理論的範囲、初期キラーT細胞の理論的範囲又はそれらの組合わせを含み、前記初期ヘルパーT細胞の理論的範囲は35%~100%であり、前記制御性ヘルパーT細胞の理論的範囲は3%~10%であり、前記初期キラーT細胞の理論的範囲は20%~100%であることを特徴とする、請求項24に記載の用途。
【請求項26】
前記ナチュラルキラー細胞サブセットは制御性ナチュラルキラー細胞を含み、前記制御性ナチュラルキラー細胞はCD34+、CD56+、CD94+、及びCD117+であることを特徴とする、請求項23に記載の用途。
【請求項27】
前記ナチュラルキラー細胞サブセットの理論的範囲は、0%~10%である制御性ナチュラルキラー細胞の理論的範囲を含むことを特徴とする、請求項26に記載の用途。
【請求項28】
前記治療は、
(a)複数の第1の抗原の発現の有無に応じて前記リンパ球細胞を複数のT細胞サブセットに分類し、前記T細胞サブセットは第1のT細胞サブセット及び第2のT細胞サブセットを含む工程、
(b)2種のT細胞サブセット割合の実際値と2種のT細胞サブセット割合の理論的範囲とのT細胞サブセット割合の偏差値を生成し、前記2種のT細胞サブセット割合の実際値は前記第1のT細胞サブセットと前記第2のT細胞サブセットとの間の数の割合である工程、及び
(c)前記T細胞サブセット割合の偏差値に基づいて、前記個体の前記2種のT細胞サブセット割合の実際値が前記2種のT細胞サブセット割合の理論的範囲を満たすように、前記個体に前記第1のT細胞サブセット又は前記第2のT細胞サブセットを含む前記医薬組成物を投与する工程
を更に含むことを特徴とする、請求項21に記載の用途。
【請求項29】
前記第1のT細胞サブセットがCD4陽性T細胞であり、前記第2のT細胞サブセットがCD8陽性T細胞である場合、前記2種のT細胞サブセット割合の理論的範囲は1:1~5:1であることを特徴とする、請求項28に記載の用途。
【請求項30】
前記治療は、前記個体に前記T細胞を含む前記医薬組成物又は前記個体に前記ナチュラルキラー細胞を含む前記医薬組成物を投与する工程の後に、前記個体に対して免疫細胞療法を実行する工程を更に含むことを特徴とする、請求項21に記載の用途。
【請求項31】
前記免疫細胞療法は、ナチュラルキラー細胞療法、サイトカイン誘導キラー細胞免疫療法、γδT細胞療法、樹状細胞療法、腫瘍浸潤リンパ球療法、キメラ抗原受容体T細胞療法又はそれらの組合わせを含むことを特徴とする、請求項30に記載の用途。
【請求項32】
前記リンパ球は前記個体に由来し、インビトロ培養によって得られることを特徴とする、請求項21に記載の用途。
【請求項33】
前記癌は、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、脳癌、子宮頸癌、膀胱癌、肛門癌、子宮癌、結腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、子宮内膜癌、骨癌、精巣癌、皮膚癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、唾液腺癌、肝細胞癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、基底細胞癌、皮膚扁平上皮癌、胆管癌、メルケル細胞癌又はそれらの組合わせを含むことを特徴とする、請求項21に記載の用途。
【請求項34】
個体の癌の治療用医薬組成物を調製するための複数のナチュラルキラー細胞の用途であって、
前記治療は、
(a)前記ナチュラルキラー細胞と複数の癌細胞とをある数の割合で共培養すること、前記癌細胞の死亡数の百分率を生成し、前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を獲得することにより、前記ナチュラルキラー細胞のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を測定する工程、
(b)前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値とナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲に基づいて、前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値及び前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲の間のナチュラルキラー細胞の殺傷能の偏差値を生成する工程、及び
(c)前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の偏差値に基づいて、前記個体の前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値が前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲を満たすように、前記個体に前記ナチュラルキラー細胞を含む前記医薬組成物を投与する工程
を含むことを特徴とする用途。
【請求項35】
前記数の割合が6.25である場合、前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は0%~58.8%であり、前記数の割合が12.5である場合、前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は1.7%~88.7%であり、前記数の割合が25である場合、前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は17.4%~100%であり、前記数の割合が50である場合、前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は35.3%~100%であることを特徴とする、請求項34に記載の用途。
【請求項36】
工程(a)では、前記数の割合が50であり、作用濃度が100国際単位/ミリリットルの白血球インターロイキン2を同時に添加して前記ナチュラルキラー細胞及び前記癌細胞と共培養する場合、前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は57.4%~100%であることを特徴とする、請求項35に記載の用途。
【請求項37】
前記治療は、
ナチュラルキラー細胞の実際の総数とナチュラルキラー細胞総数の理論的範囲とのナチュラルキラー細胞の総数偏差値を生成する工程と、
前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の偏差値及び前記ナチュラルキラー細胞の総数偏差値に基づいて、前記個体の前記ナチュラルキラー細胞の実際の総数が前記ナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲を満たすように、前記個体に前記ナチュラルキラー細胞を含む前記医薬組成物を投与することで、前記個体の前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値が前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲を満たす工程と
を更に含む請求項35に記載の用途。
【請求項38】
前記治療は、
複数の抗原の発現の有無に応じて前記ナチュラルキラー細胞を複数のナチュラルキラー細胞サブセットに分類し、前記ナチュラルキラー細胞サブセットは制御性ナチュラルキラー細胞を含み、前記制御性ナチュラルキラー細胞はCD34+、CD56+、CD94+、及びCD117+である工程、
制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率と制御性ナチュラルキラー細胞の理論的範囲との制御性ナチュラルキラー細胞の偏差値を生成し、前記制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率はリンパ球細胞に占める前記制御性ナチュラルキラー細胞の数の百分率である工程、及び
前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の偏差値及び前記制御性ナチュラルキラー細胞の偏差値に基づいて、前記個体の前記制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率が前記制御性ナチュラルキラー細胞の理論的範囲を満たすように、前記個体に前記制御性ナチュラルキラー細胞を含む前記医薬組成物を投与することで、前記個体の前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値が前記ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲を満たす工程
を更に含む請求項35に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、免疫力の有効性の検出方法及びそのシステム、及び個体の癌の治療用医薬組成物を調製するためのリンパ球又はナチュラルキラー細胞の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの血液は、体重の約13分の1を占める(つまり、体重65kgの体に約5リットルの血液があり、リンパ球が約35億~100億/リットルを占める)。異なるリンパ球細胞は、異なる活性や機能を有し、外来病原体又は内部病変(例えば、癌)に抵抗するために互いに協調して、体内の生理学的バランスを維持する。しかしながら、免疫力の有効性を評価する従来の分析指標は、限られており、免疫システムの状態を全面的に示すことが困難である。
【0003】
なお、現在、臨床的には、免疫細胞療法における細胞数の選択が一般的に医師の経験と細胞の種類によって決められるが、異なる人体の間の免疫効能に常に大きな差別があるため、免疫細胞療法の有効性に非常に大きなばらつきがあることは、既存の免疫細胞療法の臨床治療への適用のボトルネックにもなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、より完全な免疫力の有効性の検出方法を提供すること、及び免疫治療の前に、異なるヒト個体免疫効能を同などの程度に制御することは、解決すべき問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示内容における幾つかの実施形態において、複数のT細胞及び複数のナチュラルキラー細胞を含む複数のリンパ球細胞を含む個体のインビトロサンプルを提供する工程、CD28を含む複数の第1の抗原の発現の有無に応じてT細胞を複数のT細胞サブセットに分類し、CD16を含む複数の第2の抗原の発現の有無に応じてナチュラルキラー細胞を複数のナチュラルキラー細胞サブセットに分類する工程、前記リンパ球細胞に占める前記各T細胞サブセットの数の百分率及び前記リンパ球細胞に占める前記各ナチュラルキラー細胞サブセットの数の百分率を計算して、複数のT細胞サブセットの実際の百分率及び複数のナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率を獲得する工程、及び各T細胞サブセットの実際の百分率がT細胞サブセットの基準範囲を満たすかを判断し、各ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率がナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲を満たすかを判断し、前記T細胞サブセットのすべての各T細胞サブセットの実際の百分率がT細胞サブセットの基準範囲を満たし、前記ナチュラルキラー細胞サブセットのすべての各ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率がナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲を満たす場合、個体の免疫力の有効性が正常であると判断する工程を含む免疫力の有効性の検出方法を提供する。
【0006】
幾つかの実施形態において、前記T細胞サブセットは、初期ヘルパーT細胞、老化ヘルパーT細胞、制御性ヘルパーT細胞、初期キラーT細胞、老化キラーT細胞又はそれらの組合わせを含み、初期ヘルパーT細胞はCD3+、CD4+、CD45RA+、CD62L+、及びCD28+であり、老化ヘルパーT細胞はCD3+、CD4+、CD45RO+、及びCD62L+であり、制御性ヘルパーT細胞はCD3+、CD4+、CD25+、FoxP3+、及びCD39+であり、初期キラーT細胞はCD8+、CD27+、CD45RA+、CD62L+、及びCD127+であり、老化キラーT細胞はCD8+、CD27+、CD45RO+、CD62L+、及びCD57+である。
【0007】
幾つかの実施形態において、T細胞サブセットの基準範囲は初期ヘルパーT細胞の基準範囲を含み、初期ヘルパーT細胞の基準範囲は20%~100%である。
【0008】
幾つかの実施形態において、T細胞サブセットの基準範囲は制御性ヘルパーT細胞の基準範囲を含み、制御性ヘルパーT細胞の基準範囲は1%~15%である。
【0009】
幾つかの実施形態において、T細胞サブセットの基準範囲は初期キラーT細胞の基準範囲を含み、初期キラーT細胞の基準範囲は15%~100%である。
【0010】
幾つかの実施形態において、T細胞サブセットの基準範囲は老化キラーT細胞の基準範囲を含み、老化キラーT細胞の基準範囲は0%~50%である。
【0011】
幾つかの実施形態において、T細胞サブセットの基準範囲は健常者群の生理的数値に由来し、健常者群は、免疫不全症候群及び免疫亢進症候群に罹患していない5歳~85歳のヒト個体である。
【0012】
幾つかの実施形態において、この方法は、初期ヘルパーT細胞、老化ヘルパーT細胞及び制御性ヘルパーT細胞の数の百分率の合計を100%として、初期ヘルパーT細胞、老化ヘルパーT細胞及び制御性ヘルパーT細胞におけるCD28陽性の数の百分率を計算して、ヘルパーT細胞におけるCD28陽性の実際の百分率を獲得する工程と、ヘルパーT細胞におけるCD28陽性の実際の百分率がヘルパーT細胞におけるCD28陽性の基準範囲を満たすかを判断する工程とを更に含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、ヘルパーT細胞におけるCD28陽性の基準範囲は80%~100%である。
【0014】
幾つかの実施形態において、ヘルパーT細胞におけるCD28陽性の基準範囲は健常者群の生理的数値に由来し、健常者群は、免疫不全症候群及び免疫亢進症候群に罹患していない5歳~85歳のヒト個体である。
【0015】
幾つかの実施形態において、前記ナチュラルキラー細胞サブセットはキラーナチュラルキラー細胞及び制御性ナチュラルキラー細胞を含み、キラーナチュラルキラー細胞はCD16+、CD34+、CD56+、CD94+、及びCD117+であり、制御性ナチュラルキラー細胞はCD34+、CD56+、CD94+、及びCD117+である。
【0016】
幾つかの実施形態において、ナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲は制御性ナチュラルキラー細胞の基準範囲を含み、制御性ナチュラルキラー細胞の基準範囲は0%~20%である。
【0017】
幾つかの実施形態において、制御性ナチュラルキラー細胞の基準範囲は健常者群の生理的数値に由来し、健常者群は、免疫不全症候群及び免疫亢進症候群に罹患していない5歳~85歳のヒト個体である。
【0018】
幾つかの実施形態において、この方法は、前記ナチュラルキラー細胞と複数の癌細胞とを特定の割合で共培養すること、前記癌細胞の死亡数の百分率を計算して、ナチュラルキラー細胞のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を獲得することにより、ナチュラルキラー細胞のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を測定する工程、及びナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値がナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲を満たすかを判断し、数の割合が6.25である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲は0%~58.8%であり、数の割合が12.5である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲は1.7%~88.7%であり、数の割合が25である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲は17.4%~100%であり、数の割合は50である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲は35.3%~100%である工程を更に含む。
【0019】
幾つかの実施形態において、この方法は、各T細胞サブセットの実際の百分率がT細胞サブセットの基準範囲を満たす場合、各T細胞サブセットを凍結保存する工程と、各ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率がナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲を満たす場合、各ナチュラルキラー細胞サブセットを凍結保存する工程とを更に含む。
【0020】
幾つかの実施形態において、各T細胞サブセットを凍結保存し、又は各ナチュラルキラー細胞サブセットを凍結保存する工程は、免疫ビーズ細胞選別法によりT細胞サブセット又はナチュラルキラー細胞サブセットを選別する工程と、T細胞サブセット又はナチュラルキラー細胞サブセットを凍結保存する工程とを含む。
【0021】
本開示内容による幾つかの実施形態において、プロセッサー及びメモリを含む免疫力の有効性の検出システムであって、前記メモリに複数のコンピュータプログラム命令が記憶され、前記コンピュータプログラム命令がプロセッサーによって実行される場合、プロセッサーに、個体の複数のサンプル細胞表面の抗原データを含むインビトロサンプルデータにアクセスする工程と、T細胞サブセットの分類情報及びナチュラルキラー細胞サブセットの分類情報を含む細胞サブセットデータベースを利用して、インビトロサンプルデータに基づいて、複数のT細胞サブセットの数のデータ及び複数のナチュラルキラー細胞サブセットの数のデータを生成し、T細胞サブセットの分類情報は、CD28を含む複数の第1の抗原の発現の有無に応じて分類指標とすることを含み、ナチュラルキラー細胞サブセットの分類情報は、CD16を含む複数の第2の抗原の発現の有無に応じて分類指標とすることを含む工程と、複数のT細胞サブセットの基準範囲データと複数のナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲データを含む免疫力の有効性評価データベースを利用して、前記T細胞サブセットの数のデータ及び前記ナチュラルキラー細胞サブセットの数のデータに基づいて、免疫力の有効性データを生成する工程とを実施させる免疫力の有効性の検出システムを提供する。
【0022】
幾つかの実施形態において、前記第1の抗原はCD3、CD4、CD8、CD25、CD27、CD39、CD45RO、CD45RA、CD57、CD62L、CD127、FoxP3、又はそれらの組合わせを更に含み、前記第2の抗原はCD34、CD56、CD94、CD117又はそれらの組合わせを更に含む。
【0023】
幾つかの実施形態において、前記システムは、プロセッサーに接続され、免疫力の有効性データを受信して、免疫力の有効性報告として出力する出力モジュールを更に含む。
【0024】
幾つかの実施形態において、免疫力の有効性報告は、免疫力の有効性フィールド及び複数の免疫分析指標フィールドを含む。
【0025】
本開示内容の幾つかの実施形態は、個体の癌の治療用医薬組成物の調製への複数のリンパ球の用途であって、前記リンパ球は複数のT細胞、複数のナチュラルキラー細胞又はそれらの組合わせを含み、治療は、(a)T細胞の実際の総数とT細胞総数の理論的範囲とのT細胞の総数偏差値を生成し、ナチュラルキラー細胞の実際の総数とナチュラルキラー細胞総数の理論的範囲とのナチュラルキラー細胞の総数偏差値を生成する工程と、(b)T細胞の総数偏差値に基づいて、個体のT細胞の実際の総数がT細胞の総数理論的範囲を満たすように、個体に前記T細胞を含む医薬組成物を投与し、ナチュラルキラー細胞の総数偏差値に基づいて、個体のナチュラルキラー細胞の実際の総数はナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲を満たすように、個体に前記ナチュラルキラー細胞を含む医薬組成物を投与する工程とを含む用途を提供する。
【0026】
幾つかの実施形態において、T細胞の総数理論的範囲及びナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲は健常者群の生理的数値に由来し、健常者群は、免疫不全症候群及び免疫亢進症候群に罹患していない5歳~85歳のヒト個体である。
【0027】
幾つかの実施形態において、T細胞の総数理論的範囲は700個/マイクロリットル~2500個/マイクロリットルであり、前記ナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲は100個/マイクロリットル~300個/マイクロリットルである。
【0028】
幾つかの実施形態において、治療は、(a)複数の第1の抗原の発現の有無に応じて前記リンパ球細胞を複数のT細胞サブセットに分類し、複数の第2の抗原の発現の有無に応じて前記リンパ球細胞を複数のナチュラルキラー細胞サブセットに分類する工程、(b)T細胞サブセットの実際の百分率とT細胞サブセットの理論的範囲とのT細胞サブセットの偏差値を生成し、ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率とナチュラルキラー細胞サブセットの理論的範囲とのナチュラルキラー細胞サブセットの偏差値を生成し、T細胞サブセットの実際の百分率は前記リンパ球細胞に占める各T細胞サブセットの数の百分率であり、ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率は前記リンパ球細胞に占める各ナチュラルキラー細胞サブセットの数の百分率である工程、及び(c)T細胞サブセットの偏差値に基づいて、個体のT細胞サブセットの実際の百分率がT細胞サブセットの理論的範囲を満たすように、個体に前記T細胞サブセットを含む医薬組成物を投与し、ナチュラルキラー細胞サブセットの偏差値に基づいて、個体のナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率がナチュラルキラー細胞サブセットの理論的範囲を満たすように、個体に前記ナチュラルキラー細胞サブセットを含む医薬組成物を投与する工程を含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、T細胞サブセットの理論的範囲及びナチュラルキラー細胞サブセットの理論的範囲は健常者群の生理的数値に由来し、健常者群は、免疫不全症候群及び免疫亢進症候群に罹患していない5歳~85歳のヒト個体である。
【0030】
幾つかの実施形態において、前記T細胞サブセットは、初期ヘルパーT細胞、制御性ヘルパーT細胞、初期キラーT細胞又はそれらの組合わせを含み、初期ヘルパーT細胞はCD3+、CD4+、CD45RA+、CD62L+、及びCD28+であり、制御性ヘルパーT細胞はCD3+、CD4+、CD25+、FoxP3+、及びCD39+であり、初期キラーT細胞はCD8+、CD27+、CD45RA+、CD62L+、及びCD127+である。
【0031】
幾つかの実施形態において、T細胞サブセットの理論的範囲は、初期ヘルパーT細胞の理論的範囲、制御性ヘルパーT細胞の理論的範囲、初期キラーT細胞の理論的範囲又はそれらの組合わせを含み、初期ヘルパーT細胞の理論的範囲は35%~100%であり、制御性ヘルパーT細胞の理論的範囲は3%~10%であり、初期キラーT細胞の理論的範囲は20%~100%である。
【0032】
幾つかの実施形態において、前記ナチュラルキラー細胞サブセットは制御性ナチュラルキラー細胞を含み、制御性ナチュラルキラー細胞はCD34+、CD56+、CD94+、及びCD117+である。
【0033】
幾つかの実施形態において、ナチュラルキラー細胞サブセットの理論的範囲は、0%~10%である制御性ナチュラルキラー細胞の理論的範囲を含む。
【0034】
幾つかの実施形態において、治療は、(a)複数の第1の抗原の発現の有無に応じて前記リンパ球細胞を複数のT細胞サブセットに分類し、前記T細胞サブセットは第1のT細胞サブセット及び第2のT細胞サブセットを含む工程、(b)2種のT細胞サブセット割合の実際値と2種のT細胞サブセット割合の理論的範囲とのT細胞サブセット割合の偏差値を生成し、2種のT細胞サブセット割合の実際値は第1のT細胞サブセットと第2のT細胞サブセットとの間の数の割合である工程、及び(c)T細胞サブセット割合の偏差値に基づいて、個体の2種のT細胞サブセット割合の実際値が2種のT細胞サブセット割合の理論的範囲を満たすように、個体に第1のT細胞サブセット又は第2のT細胞サブセットを含む前記医薬組成物を投与する工程を含む。
【0035】
幾つかの実施形態において、2種のT細胞サブセット割合の理論的範囲は健常者群の生理的数値に由来し、健常者群は、免疫不全症候群及び免疫亢進症候群に罹患していない5歳~85歳のヒト個体である。
【0036】
幾つかの実施形態において、第1のT細胞サブセットがCD4陽性T細胞であり、第2のT細胞サブセットがCD8陽性T細胞である時、2種のT細胞サブセット割合の理論的範囲は1:1~5:1である。
【0037】
幾つかの実施形態において、治療は、個体に前記T細胞を含む医薬組成物又は個体に前記ナチュラルキラー細胞を含む医薬組成物を投与する工程の後に、個体に免疫細胞療法を実行する工程を更に含む。
【0038】
幾つかの実施形態において、免疫細胞療法は、ナチュラルキラー細胞療法、サイトカイン誘導キラー細胞免疫療法、γδT細胞療法、樹状細胞療法、腫瘍浸潤リンパ球療法、キメラ抗原受容体T細胞療法又はそれらの組合わせを含む。
【0039】
幾つかの実施形態において、前記リンパ球は個体に由来し、インビトロ培養によって得られる。
【0040】
幾つかの実施形態において、癌は、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、脳癌、子宮頸癌、膀胱癌、肛門癌、子宮癌、結腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、子宮内膜癌、骨癌、精巣癌、皮膚癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、唾液腺癌、肝細胞癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、基底細胞癌、皮膚扁平上皮癌、胆管癌、メルケル細胞癌又はそれらの組合わせを含む。
【0041】
本開示内容の幾つかの実施形態は、個体の癌の治療用医薬組成物を調製するための複数のナチュラルキラー細胞の用途であって、治療は、(a)前記ナチュラルキラー細胞と複数の癌細胞とをある数の割合で共培養する工程、及び前記癌細胞の死亡数の百分率を生成し、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を獲得する工程によって獲得される、前記ナチュラルキラー細胞のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を測定する工程、(b)ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値とナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲に基づいて、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値及びナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲の間のナチュラルキラー細胞の殺傷能の偏差値を生成する工程、及び(c)ナチュラルキラー細胞の殺傷能の偏差値に基づいて、個体のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値がナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲を満たすように、個体に前記ナチュラルキラー細胞を含む医薬組成物を投与する工程を含む用途を提供する。
【0042】
幾つかの実施形態において、数の割合が6.25である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は0%~58.8%であり、数の割合が12.5である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は1.7%~88.7%であり、数の割合が25である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は17.4%~100%であり、数の割合は50である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は35.3%~100%である。
【0043】
幾つかの実施形態において、工程(a)では、数の割合が50であり、作用濃度が100国際単位/ミリリットルの白血球インターロイキン2を同時に添加して前記ナチュラルキラー細胞及び前記癌細胞と共培養する場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は57.4%~100%である。
【0044】
幾つかの実施形態において、上記治療は、ナチュラルキラー細胞の実際の総数とナチュラルキラー細胞総数の理論的範囲とのナチュラルキラー細胞の総数偏差値を生成する工程と、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の偏差値及びナチュラルキラー細胞の総数偏差値に基づいて、個体のナチュラルキラー細胞の実際の総数がナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲を満たすように、個体に前記ナチュラルキラー細胞を含む医薬組成物を投与することで、個体のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値がナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲を満たす工程とを含む。
【0045】
幾つかの実施形態において、上記治療は、複数の特定抗原の発現の有無に応じて前記ナチュラルキラー細胞を複数のナチュラルキラー細胞サブセットに分類し、前記ナチュラルキラー細胞サブセットは制御性ナチュラルキラー細胞を含み、制御性ナチュラルキラー細胞はCD34+、CD56+、CD94+、及びCD117+である工程、制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率と制御性ナチュラルキラー細胞の理論的範囲との制御性ナチュラルキラー細胞の偏差値を生成し、制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率はリンパ球細胞に占める制御性ナチュラルキラー細胞の数の百分率である工程、及びナチュラルキラー細胞の殺傷能の偏差値及び制御性ナチュラルキラー細胞の偏差値に基づいて、個体の制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率が制御性ナチュラルキラー細胞の理論的範囲を満たすように、個体に前記制御性ナチュラルキラー細胞を含む医薬組成物を投与することによって、個体のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値がナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲を満たす工程を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0046】
下記図面の説明は、本発明の前記と他の目的、特徴、メリット及び実施例をより分かりやすくするためのものである。
【
図1】本開示内容の幾つかの実施形態における免疫力の有効性の検出方法のフローチャートである。
【
図2】本開示内容の幾つかの実施形態における免疫力の有効性の検出システムのプロセッサーによって実施される工程のフローチャートである。
【
図3】本開示内容の幾つかの実施形態における免疫力の有効性の検出システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の叙述を詳しく完備にさせるために、以下、本発明の実施形態と具体的な実施例を詳しく説明するが、本発明の具体的な実施例を実施又は適用する唯一な形態ではない。以下、開示される各実施例は、有益な場合では組合せ又は取り替えることができ、更なる記載又は説明を必要せずに、一つの実施例に他の実施例を付加することができる。以下の説明では、読者が以下の実施例を十分に理解できるように数多くの特定の詳細を記述する。しかしながら、前記特定の詳細がない場合は、本発明の実施例を実施してもよい。
【0048】
本文では、特に限定されていない限り、「一つの」及び「上記」は一般に一つとそれ以上を指す。本明細書で使用される用語「含む」、「含まれ」、「有する」及び同様の言葉は、記載される特徴、領域、整数、工程、操作、素子及び/又は構成要素を示すが、他の特徴、領域、整数、工程、操作、素子、構成要素、及び/又はそれらの群を除外することではないと理解されるべきである。
【0049】
本文では、偏差値は2つの数を減算して得られた差のことである。例えば、T細胞の実際の総数とT細胞総数の理論的範囲とのT細胞の総数偏差値は、T細胞の実際の総数からT細胞の総数理論的範囲を引いた差を示す。
【0050】
以下で一連の操作又は工程を利用してここで開示した方法を説明したが、前記操作又は工程に示される順序は本発明を制限するものとして解釈すべきではない。例えば、ある操作又は工程は異なる順序に応じて実行し、/又は他の工程と同時に実行することができる。なお、本発明の実施形態を実現するために、全ての操作、工程及び/又は特徴を実行する必要がない。更に、ここに記載の各操作又は工程は複数のサブ工程又は動作を含んでもよい。
【0051】
図1を参照されたい。本開示内容の幾つかの実施形態による免疫力の有効性の検出方法100は、工程S110~工程S140を含む。
【0052】
まず、工程S110は、個体のインビトロサンプルを提供し、インビトロサンプルは複数のリンパ球細胞を含み、リンパ球細胞はT細胞及びナチュラルキラー細胞を含む。
【0053】
幾つかの実施形態において、インビトロサンプルはヒトの血液である。
【0054】
次に、工程S120は、CD28を含む複数の第1の抗原の発現の有無に応じてリンパ球細胞を複数のT細胞サブセットに分類し、CD16を含む複数の第2の抗原の発現の有無に応じてリンパ球細胞を複数のナチュラルキラー細胞サブセットに分類する。
【0055】
幾つかの実施形態において、第1の抗原はCD3、CD4、CD8、CD25、CD27、CD39、CD45RO、CD45RA、CD57、CD62L、CD127、FoxP3又はそれらの組合わせを更に含む。幾つかの実施形態において、第2の抗原はCD34、CD56、CD94、CD117又はそれらの組合わせを更に含む。
【0056】
なお、CD28はT細胞サブセットにおける初期ヘルパー細胞の表面抗原であり、CD16はキラーナチュラルキラー細胞の表面抗原であるため、工程S120によれば、少なくともT細胞サブセットを初期ヘルパー細胞及び非初期ヘルパー細胞に分類し、ナチュラルキラー細胞サブセットをキラーナチュラルキラー細胞及び非キラーナチュラルキラー細胞に分類することができる。
【0057】
幾つかの実施形態において、T細胞を複数のT細胞サブセットに分類する工程は、T細胞を初期ヘルパーT細胞(CD3+CD4+CD45RA+CD62L+CD28+)、老化ヘルパーT細胞(CD3+CD4+CD45RO+CD62L+)、制御性ヘルパーT細胞(CD3+CD4+CD25+FoxP3+CD39+)、初期キラーT細胞(CD8+CD27+CD45RA+CD62L+CD127+)、老化キラーT細胞(CD8+CD27+CD45RO+CD62L+CD57+)又はそれらの組合わせに分類する工程を含む。
【0058】
幾つかの実施形態において、ナチュラルキラー細胞サブセットはキラーナチュラルキラー細胞(CD16+CD34+CD56+CD94+CD117+)及び制御性ナチュラルキラー細胞(CD34+CD56+CD94+CD117+)を含む。
【0059】
次に、工程S130は、リンパ球細胞に占める各T細胞サブセットの数の百分率及びリンパ球細胞に占める各ナチュラルキラー細胞サブセットの数の百分率を計算して、複数のT細胞サブセットの実際の百分率及び複数のナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率を獲得する。幾つかの実施形態において、複数のT細胞サブセットの実際の百分率は初期ヘルパーT細胞の実際の百分率、老化ヘルパーT細胞の実際の百分率、制御性ヘルパーT細胞の実際の百分率、初期キラーT細胞の実際の百分率、老化キラーT細胞の実際の百分率又はそれらの組合わせを含む。幾つかの実施形態において、複数のナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率はキラーナチュラルキラー細胞の実際の百分率、制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率又はそれらの組合わせを含む。
【0060】
次に、工程S140は、各T細胞サブセットの実際の百分率が各T細胞サブセットの基準範囲を満たすかを判断し、各ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率が各ナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲を満たすかを判断する。
【0061】
幾つかの実施形態において、T細胞サブセットの基準範囲及びナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲は健常者群の生理的数値に由来し、健常者群は5歳~85歳のヒト個体であり、免疫不全症候群(例えば後天性免疫不全症候群)及び免疫亢進症候群(例えば自己免疫疾患)に罹患していない。
【0062】
幾つかの実施形態において、各T細胞サブセットの基準範囲又は各ナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲は対応する許容範囲及び理論的範囲を含み、即ち、T細胞サブセットの基準範囲はT細胞サブセットの許容範囲及びT細胞サブセットの理論的範囲を含み、ナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲はナチュラルキラー細胞サブセットの許容範囲及びナチュラルキラーサブセットの理論的範囲を含む。
【0063】
全てのT細胞サブセットの実際の百分率はいずれも対応するT細胞サブセットの基準範囲を満たし、全てのナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率はいずれも対応するナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲を満たす場合(例えば全てのT細胞サブセットの実際の百分率及び全てのナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率はいずれもそれぞれの許容範囲又は理論的範囲を満たす)、免疫力の有効性が正常であると判断する。幾つかの実施形態において、全てのT細胞サブセットの実際の百分率はいずれも対応するT細胞サブセットの理論的範囲を満たし、全てのナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率はいずれも対応するナチュラルキラー細胞サブセットの理論的範囲を満たす場合、免疫力の有効性が良好であると更に判断する。
【0064】
いずれかのT細胞サブセットの実際の百分率は対応するT細胞サブセットの基準範囲を満たさなく、又はナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率はナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲を満たさない場合、免疫力の有効性が低いと判断する。
【0065】
幾つかの実施形態において、T細胞サブセットの基準範囲は初期ヘルパーT細胞の基準範囲、制御性ヘルパーT細胞の基準範囲、初期キラーT細胞の基準範囲又は老化キラーT細胞の基準範囲を含む。初期ヘルパーT細胞の基準範囲は20%~100%であり、20%≦許容範囲<35%であり、理論的範囲は35%~100%である。制御性ヘルパーT細胞の基準範囲は1%~15%であり、1%≦許容範囲<3%及び10%<許容範囲≦15%であり、理論的範囲は3%~10%である。初期キラーT細胞の基準範囲は15%~100%であり、15%≦許容範囲<20%であり、理論的範囲は20%~100%である。老化キラーT細胞の基準範囲は0%~50%であり、30%<許容範囲≦50%であり、理論的範囲は0%~30%である。
【0066】
幾つかの実施形態において、ナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲は制御性ナチュラルキラー細胞の基準範囲を含む。制御性ナチュラルキラー細胞の基準範囲は0%~20%であり、10%<許容範囲≦20%であり、理論的範囲は0%~10%である。
【0067】
なお、更に、それぞれのT細胞サブセットの実際の百分率及びそれぞれのナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率が対応するT細胞サブセットの基準範囲及びナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲を満たすかに応じて、各疾患に対する免疫システムの防御力や特定の疾患に罹患するリスクを更に分析する。
【0068】
例えば、初期ヘルパーT細胞及び初期キラーT細胞の実際の百分率はそれぞれの基準範囲(初期ヘルパーT細胞の基準範囲又は初期キラーT細胞の基準範囲)に入ることは、新型病原体に対して良好な保護力を持っていることを示す。初期キラーT細胞の実際の百分率は初期キラーT細胞の基準範囲に入ることは、癌に対して優れた阻害能力を持っていることを示す。制御性ヘルパーT細胞の実際の百分率は制御性ヘルパーT細胞の基準範囲よりも高いと、他の免疫細胞を過度に阻害して、癌に罹患している場合、死亡率が高くなる。老化キラーT細胞の実際の百分率は老化キラーT細胞の基準範囲よりも高いと、免疫システムの老化又は不全を示す。制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率は制御性ナチュラルキラー細胞の基準範囲よりも高いと、キラーナチュラルキラー細胞の活性を過度に阻害し、個体が慢性ウイルスに感染する確率が高い。
【0069】
幾つかの実施形態において、方法100は、老化ヘルパーT細胞及び制御性ヘルパーT細胞の数の百分率の合計を100%として、初期ヘルパーT細胞、老化ヘルパーT細胞及び制御性ヘルパーT細胞におけるCD28陽性の数の百分率(ヘルパーT細胞におけるCD28陽性(CD28+)の割合、即ち、ヘルパーT細胞に占める初期ヘルパーT細胞の数の百分率)を計算し、ヘルパーT細胞におけるCD28陽性の実際の百分率を獲得する工程と、ヘルパーT細胞におけるCD28陽性の実際の百分率がヘルパーT細胞におけるCD28陽性の基準範囲を満たすかを判断し、個人が自己免疫疾患に罹患するリスクを把握する。
【0070】
幾つかの実施形態において、ヘルパーT細胞におけるCD28陽性の基準範囲は健常者群の生理的数値に由来し、健常者群は、免疫不全症候群及び免疫亢進症候群に罹患していない5歳~85歳のヒト個体である。
【0071】
幾つかの実施形態において、ヘルパーT細胞におけるCD28陽性(CD28+)の基準範囲は80%~100%より大きく、80%≦許容範囲<90%であり、理論的範囲は90%~100%である。従って、ヘルパーT細胞におけるCD28陽性(CD28+)の実際の百分率は80%よりも小さい場合、自己免疫疾患に罹患する確率が高い。
【0072】
幾つかの実施形態において、方法100は、ナチュラルキラー細胞のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値(ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値は、計算されるナチュラルキラー細胞と癌細胞とを特定の割合で共培養する工程、及び癌細胞の死亡数の百分率を計算して、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を獲得する工程によって計算される)を測定する工程と、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値がナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲を満たすかを判断する工程であって、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値がナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲に入ると、癌に対して優れた阻害能力を持っていることを示す。例えば、数の割合が6.25である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲は0%~58.8%であり、数の割合が12.5である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲は1.7%~88.7%であり、数の割合が25である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲は17.4%~100%であり、数の割合は50である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲は35.3%~100%である。幾つかの実施形態において、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲は健常者群の生理的数値に由来し、健常者群は、免疫不全症候群及び免疫亢進症候群に罹患していない5歳~85歳のヒト個体である。
【0073】
幾つかの実施形態において、異なる数の割合のナチュラルキラー細胞及びヒト不死化骨髄性白血病細胞(K-562細胞)を共培養し、K-562細胞が死亡する割合を測定し、ナチュラルキラー細胞の殺傷能を評価し、IL-2とK-562細胞の数の割合は6.25、12.5、25又は50であってもよい。
【0074】
なお、白血球インターロイキン2(Interleukin 2、IL-2)を添加することで、制御性ナチュラルキラー細胞の活性(制御性ナチュラルキラー細胞がキラーナチュラルキラー細胞の活性を阻害することになる)を完全に阻害し、キラーナチュラルキラー細胞の活性を獲得し、ナチュラルキラー細胞の最大活性を更に分析する。
【0075】
幾つかの実施形態において、方法100は、免疫システムの概況を分析するために、インビトロサンプルにおけるT細胞及びナチュラルキラー細胞の含有量(例えば血液1ミリリットル当たり何個のT細胞数とナチュラルキラー細胞の数があるか)を計算する工程を更に含む。例えば、ナチュラルキラー細胞の総数(マイクロリットル当たりの全血サンプルに含まれるナチュラルキラー細胞数)が50個未満(50個未満)であると、癌に罹患するリスクは高い。
【0076】
幾つかの実施形態において、方法100は、それぞれのT細胞サブセットの実際の百分率は各T細胞サブセットの基準範囲を満たす場合、それぞれのT細胞サブセットを凍結保存する工程と、それぞれのナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率は各ナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲を満たす場合、それぞれのナチュラルキラー細胞サブセットを凍結保存する工程とを更に含む。
【0077】
幾つかの実施形態において、ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率及びナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値はいずれも対応する基準範囲に入る場合、ナチュラルキラー細胞サブセット(例えばキラーナチュラルキラー細胞及び制御性ナチュラルキラー細胞)を凍結保存する。
【0078】
幾つかの実施形態において、免疫ビーズ細胞選別法によってT細胞サブセット又はナチュラルキラー細胞サブセット(例えば初期ヘルパーT細胞、老化ヘルパーT細胞、制御性ヘルパーT細胞、初期キラーT細胞又は老化キラーT細胞等T細胞サブセット、又はキラーナチュラルキラー細胞又は制御性ナチュラルキラー細胞などのナチュラルキラー細胞サブセット)を選別することができ、T細胞サブセット又はナチュラルキラー細胞サブセットを凍結保存する。なお、従来の免疫沈殿法や遠心分離法などの方法は、細胞が損傷しやすく、継代培養や凍結保存が持続できない。これに対して、免疫ビーズ細胞選別法で分離された細胞は、複数回選別した後も、細胞に活性を持たせることができ、増幅や保存に有利である。
【0079】
幾つかの実施形態において、陽性選別システム、陰性選別システム又はそれらの組合わせを使用してT細胞サブセット又はナチュラルキラー細胞サブセットを選別することができる。幾つかの実施形態において、CD3、CD4、CD8、CD25、CD27、CD28、CD39、CD45、CD45RO、CD45RA、CD57、CD62L、CD127、FoxP3又はそれらの組合わせを使用して、初期ヘルパーT細胞、老化ヘルパーT細胞、制御性ヘルパーT細胞、初期キラーT細胞、及び老化キラーT細胞を選別することができる。幾つかの実施形態において、CD16、CD34、CD56、CD94、CD117又はそれらの組合わせを使用して、キラーナチュラルキラー細胞及び制御性ナチュラルキラー細胞を選別することができる。
【0080】
本開示内容の幾つかの実施形態は免疫力の有効性の検出システムを更に提供し、プロセッサー及びメモリを含み、メモリに複数のコンピュータプログラム命令が記憶され、コンピュータプログラム命令はプロセッサーによって実行される場合、プロセッサーに、工程S210~工程S230を含むフロー200を実施し、
図2を参照されたい。
【0081】
まず、工程S210は、個体の複数のサンプル細胞表面の抗原データを含むインビトロサンプルデータにアクセスする。幾つかの実施形態において、サンプル細胞表面の抗原データはフローサイトメーターで分析したものである。
【0082】
次に、工程S220を参照されたい。細胞サブセットデータベースを利用して、インビトロサンプルデータに基づいて、複数のT細胞サブセットの数のデータ及び複数のナチュラルキラー細胞サブセットの数のデータを生成する。細胞サブセットデータベースはT細胞サブセットの分類情報及びナチュラルキラー細胞サブセットの分類情報を含み、T細胞サブセットの分類情報は、CD28を含む複数の第1の抗原の発現の有無に応じて分類指標とすることを含み、ナチュラルキラー細胞サブセットの分類情報は、CD16を含む複数の第2の抗原の発現の有無に応じて分類指標とすることを含む。
【0083】
幾つかの実施形態において、第1の抗原はCD3、CD4、CD8、CD25、CD27、CD39、CD45RO、CD45RA、CD57、CD62L、CD127、FoxP3、又はそれらの組合わせを更に含み、第2の抗原はCD34、CD56、CD94、CD117又はそれらの組合わせを更に含む。
【0084】
幾つかの実施形態において、T細胞サブセットの分類情報はそれぞれのT細胞サブセットの抗原発現情報を含み、例えば初期ヘルパーT細胞はCD3+CD4+CD45RA+CD62L+CD28+である。ナチュラルキラー細胞サブセットの分類情報は各ナチュラルキラー細胞サブセットの抗原発現情報を含み、例えば制御性ナチュラルキラー細胞はCD34+CD56+CD94+CD117+である。
【0085】
幾つかの実施形態において、T細胞サブセットの数のデータ及びナチュラルキラー細胞サブセットの数のデータはリンパ球に占める各T細胞サブセット又はそれぞれのナチュラルキラー細胞サブセットの数の百分率、例えばリンパ球に占める初期ヘルパーT細胞の数の百分率を含む。
【0086】
次に、工程S230を参照されたい。免疫力の有効性評価データベースを利用して、T細胞サブセットの数のデータ及びナチュラルキラー細胞サブセットの数のデータに基づいて、免疫力の有効性データを生成する。免疫力の有効性評価データベースは複数のT細胞サブセットの基準範囲データ(例えば上記方法100に示されるT細胞サブセットの基準範囲を含む)及び複数のナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲データ(例えば上記方法100に示されるナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲)を含む。
【0087】
幾つかの実施形態において、システムは、免疫力の有効性データを受信して、免疫力の有効性報告(例えばディスプレイ画面に表示される)として出力するプロセッサーに接続される出力モジュールを更に含み、個体の免疫力の有効性を評価し、細胞の凍結保存を行うかを判断するようにし、免疫力の有効性報告は、免疫力の有効性フィールド(免疫力の有効性の優劣程度を記載する)及び複数の免疫分析指標フィールド(それぞれの細胞サブセットの割合を含む)を含む。
【0088】
幾つかの実施形態において、各T細胞サブセットの基準範囲データ又は各ナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲データは対応する許容範囲データ及び理論的範囲データを含み、即ち、T細胞サブセットの基準範囲データはT細胞サブセットの許容範囲データ及びT細胞サブセットの理論的範囲データを含み、ナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲データはナチュラルキラー細胞サブセットの許容範囲データ及びナチュラルキラーサブセットの理論的範囲データを含む。
【0089】
全てのT細胞サブセットの数のデータはいずれも対応するT細胞サブセットの基準範囲データを満たし、全てのナチュラルキラー細胞サブセットの数のデータがいずれも対応するナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲データを満たす場合(例えば全てのT細胞サブセットの数のデータ及び全てのナチュラルキラー細胞サブセットの数のデータはいずれもそれぞれの許容範囲データ又は理論的範囲データを満たす)、免疫力の有効性フィールドに免疫力の有効性が正常であることが記載される。幾つかの実施形態において、全てのT細胞サブセットの数のデータは対応するT細胞サブセットの理論的範囲データを満たし、全てのナチュラルキラー細胞サブセットの数のデータは対応するナチュラルキラー細胞サブセットの理論的範囲の数のデータを満たす場合、免疫力の有効性が良好であると更に判断する。
【0090】
いずれかのT細胞サブセットの数のデータは対応するT細胞サブセットの基準範囲データを満たさなく、又はナチュラルキラー細胞サブセットの数のデータはナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲データを満たさない場合、免疫力の有効性が低いと判断する。
【0091】
他の幾つかの実施形態において、各T細胞サブセットの基準範囲データ又は各ナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲データは理論的範囲データである。
【0092】
本開示内容の幾つかの実施形態は個体の癌の治療用医薬組成物の調製への複数のリンパ球の用途を提供し、前記リンパ球は複数のT細胞、複数のナチュラルキラー細胞又はそれらの組合わせを含み、治療は、(a)T細胞の実際の総数とT細胞総数の理論的範囲とのT細胞の総数偏差値及びナチュラルキラー細胞の実際の総数とナチュラルキラー細胞総数の理論的範囲とのナチュラルキラー細胞の総数偏差値を生成する工程と、(b)T細胞の総数偏差値に基づいて、個体のT細胞の実際の総数をT細胞の総数理論的範囲に満たすように、個体に前記T細胞を含む前記医薬組成物を投与し、ナチュラルキラー細胞の総数偏差値に基づいて、個体のナチュラルキラー細胞の実際の総数がナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲を満たすように、個体に前記ナチュラルキラー細胞を含む医薬組成物を投与する工程とを含む。
【0093】
癌に罹患している個体は、T細胞の実際の総数、ナチュラルキラー細胞の実際の総数又はその両方の数が不足しているため、免疫力の有効性が低いことが多いということが分かる。本開示内容は、T細胞の実際の総数及びナチュラルキラー細胞の実際の総数を理論的範囲に制御することによって、個体の免疫システムの効能を健康な状態に調整し、癌に対する個体の免疫システムの抵抗能力を向上させ、癌の治療効果を向上させる。従来の放射線治療や化学治療に対して、本開示内容の使用は自己細胞に損傷を与えることはない。なお、本開示内容の使用は他の免疫細胞療法と合わせて使用することができ、T細胞の実際の総数及びナチュラルキラー細胞の実際の総数を正確に制御することによって、免疫細胞療法の効果を高め、T細胞の実際の総数又はナチュラルキラー細胞の実際の総数に対する推定誤差による過剰反応(例えばサイトカインストーム)などの副作用を避ける。
【0094】
幾つかの実施形態において、T細胞の総数理論的範囲及びナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲は健常者群の生理的数値に由来し、健常者群は、免疫不全症候群及び免疫亢進症候群に罹患していない5歳~85歳のヒト個体である。
【0095】
幾つかの実施形態において、T細胞の総数理論的範囲は700個/マイクロリットル~2500個/マイクロリットル(例えば700個/マイクロリットル、800個/マイクロリットル、900個/マイクロリットル、1000個/マイクロリットル、1100個/マイクロリットル、1200個/マイクロリットル、1300個/マイクロリットル、1400個/マイクロリットル、1500個/マイクロリットル、1600個/マイクロリットル、1700個/マイクロリットル、1800個/マイクロリットル、1900個/マイクロリットル、2000個/マイクロリットル、2100個/マイクロリットル、2200個/マイクロリットル、2300個/マイクロリットル、2400個/マイクロリットル、2500個/マイクロリットル又は上記範囲の間の数値)であり、ナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲は100個/マイクロリットル~300個/マイクロリットル(例えば100個/マイクロリットル、200個/マイクロリットル、300個/マイクロリットル又は上記範囲の間の数値)である。T細胞の実際の総数がT細胞の総数理論的範囲よりも小さく、ナチュラルキラー細胞の実際の総数がナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲よりも小さく、又は2種の状況が同時に存在する場合、個体の免疫効能は低下する場合がある。逆に、T細胞の実際の総数がT細胞の総数理論的範囲より大きく、ナチュラルキラー細胞の実際の総数がナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲より大きく、又は2種の状況が同時に存在する場合、自己免疫が過剰になる場合がある。
【0096】
幾つかの実施形態において、個体の血液含有量(例えば65キロの個体で、血液量が約5リットルである)に応じてT細胞の総数偏差値又はナチュラルキラー細胞の総数偏差値を組み合わせ、T細胞又はナチュラルキラー細胞を投与すべき適切な投与量を生成する。
【0097】
幾つかの実施形態において、上記治療は、(a)複数の第1の抗原の発現の有無に応じて前記リンパ球細胞を複数のT細胞サブセットに分類し、複数の第2の抗原の発現の有無に応じて前記リンパ球細胞を複数のナチュラルキラー細胞サブセットに分類する工程、(b)T細胞サブセットの実際の百分率とT細胞サブセットの理論的範囲とのT細胞サブセットの偏差値を生成し、ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率とナチュラルキラー細胞サブセットの理論的範囲とのナチュラルキラー細胞サブセットの偏差値を生成し、T細胞サブセットの実際の百分率は前記リンパ球細胞に占める各T細胞サブセットの数の百分率であり、ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率は前記リンパ球細胞に占める各ナチュラルキラー細胞サブセットの数の百分率である工程、及び(c)T細胞サブセットの偏差値に基づいて、個体のT細胞サブセットの実際の百分率がT細胞サブセットの理論的範囲を満たすように、個体に前記T細胞サブセットを含む医薬組成物を投与し、ナチュラルキラー細胞サブセットの偏差値に基づいて、個体のナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率がナチュラルキラー細胞サブセットの理論的範囲を満たすように、個体に前記ナチュラルキラー細胞サブセットを含む医薬組成物を投与する工程を含む。
【0098】
なお、T細胞サブセットの偏差値又はナチュラルキラー細胞サブセットの偏差値に基づいて、個体に前記T細胞サブセット又はナチュラルキラー細胞サブセットを含む医薬組成物を投与し、T細胞の実際の総数又はナチュラルキラー細胞の実際の総数を調整するのに対して、免疫システムにおける抗癌と殺傷を支配するT細胞サブセット及びナチュラルキラー細胞サブセットを更に調整することで、免疫効能に対してより正確な制御を実現することができる。
【0099】
幾つかの実施形態において、T細胞サブセットの理論的範囲及びナチュラルキラー細胞サブセットの理論的範囲は健常者群の生理的数値に由来し、健常者群は、免疫不全症候群及び免疫亢進症候群に罹患していない5歳~85歳のヒト個体である。
【0100】
幾つかの実施形態において、個体の血液含有量(例えば65キロの個体で、血液量が約5リットルである)に応じて、T細胞サブセットの偏差値及びT細胞の実際の総数又はナチュラルキラー細胞サブセットの偏差値及びナチュラルキラー細胞の実際の総数を組み合わせ、それぞれのT細胞サブセット又はナチュラルキラーサブセットを投与すべき適切な投与量を生成する。
【0101】
幾つかの実施形態において、第1の抗原はCD3、CD4、CD8、CD25、CD27、CD28、CD39、CD45RO、CD45RA、CD57、CD62L、CD127、FoxP3又はそれらの組合わせを含む。幾つかの実施形態において、第2の抗原はCD16、CD34、CD56、CD94、CD117又はそれらの組合わせを含む。幾つかの実施形態において、T細胞を複数のT細胞サブセットに分類する工程は、T細胞を初期ヘルパーT細胞(CD3+CD4+CD45RA+CD62L+CD28+)、老化ヘルパーT細胞(CD3+CD4+CD45RO+CD62L+)、制御性ヘルパーT細胞(CD3+CD4+CD25+FoxP3+CD39+)、初期キラーT細胞(CD8+CD27+CD45RA+CD62L+CD127+)、老化キラーT細胞(CD8+CD27+CD45RO+CD62L+CD57+)又はそれらの組合わせに分類する工程を含む。
【0102】
幾つかの実施形態において、ナチュラルキラー細胞サブセットはキラーナチュラルキラー細胞(CD16+CD34+CD56+CD94+CD117+)及び制御性ナチュラルキラー細胞(CD34+CD56+CD94+CD117+)を含む。
【0103】
幾つかの実施形態において、T細胞サブセットの実際の百分率は初期ヘルパーT細胞の実際の百分率、老化ヘルパーT細胞の実際の百分率、制御性ヘルパーT細胞の実際の百分率、初期キラーT細胞の実際の百分率、老化キラーT細胞の実際の百分率又はそれらの組合わせを含む。幾つかの実施形態において、ナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率はキラーナチュラルキラー細胞の実際の百分率、制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率又はそれらの組合わせを含む。
【0104】
幾つかの実施形態において、T細胞サブセットの理論的範囲は初期ヘルパーT細胞の理論的範囲、制御性ヘルパーT細胞の理論的範囲、初期キラーT細胞の理論的範囲又は老化キラーT細胞の理論的範囲を含む。初期ヘルパーT細胞の理論的範囲は35%~100%であり、制御性ヘルパーT細胞の理論的範囲は3%~10%であり、初期キラーT細胞の理論的範囲は20%~100%である。老化キラーT細胞の理論的範囲は0%~30%である。
【0105】
幾つかの実施形態において、ナチュラルキラー細胞サブセットの理論的範囲は0%~10%である制御性ナチュラルキラー細胞の理論的範囲を含む。
【0106】
幾つかの実施形態において、初期ヘルパーT細胞及び初期キラーT細胞は免疫システムの癌細胞に対する防護を提供することができるため、初期ヘルパーT細胞の実際の百分率又は初期キラーT細胞の実際の百分率が各理論的範囲よりも低くなると、個体の免疫システムの癌細胞に対する殺傷効果は低くなる。個体に欠けた初期ヘルパーT細胞又は初期キラーT細胞を投与することで、個体の免疫効能を健康状態に回復させ、免疫システムの抗癌に対する効果を高めることができる。
【0107】
幾つかの実施形態において、制御性ヘルパーT細胞は他のリンパ球(例えば他のT細胞サブセット)を阻害し、免疫システムの効能バランスをとるために用いられる。このため、制御性ヘルパーT細胞の実際の百分率が制御性ヘルパーT細胞の理論的範囲よりも高いと、他のリンパ球を過度に阻害し、免疫効能が低下し、個体が癌に罹患した時の死亡率が上昇する。個体内の過剰な制御性ヘルパーT細胞を除去することで、個体の免疫効能を健康状態に回復させ、免疫システムの抗癌に対する効能を高めることができる。
【0108】
幾つかの実施形態において、老化キラーT細胞が個体の免疫システムの老化状態を呈しているため、老化キラーT細胞の実際の百分率が老化キラーT細胞の理論的範囲よりも高いと、免疫システムの老化又は不全を示す。個体内の過剰な老化キラーT細胞を除去することで、個体の免疫効能を健康状態に回復させ、免疫システムの抗癌に対する効能を高めることができる。
【0109】
幾つかの実施形態において、制御性ナチュラルキラー細胞は他のリンパ球(例えばキラーナチュラルキラー細胞)を阻害し、免疫システムの効能バランスをとるために用いられる。このため、制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率が制御性ナチュラルキラー細胞の理論的範囲よりも高いと、他のリンパ球を過度に阻害し、免疫効能が低下し、個体が癌に罹患した時の死亡率が上昇する。個体内の過剰な制御性ナチュラルキラー細胞を除去することで、個体の免疫効能を健康状態に回復させ、免疫システムの抗癌に対する効能を高めることができる。
【0110】
幾つかの実施形態において、上記治療は、(a)複数の第1の抗原の発現の有無に応じて前記リンパ球細胞を複数のT細胞サブセットに分類し、前記T細胞サブセットは第1のT細胞サブセット及び第2のT細胞サブセットを含む工程、(b)2種のT細胞サブセット割合の実際値と2種のT細胞サブセット割合の理論的範囲とのT細胞サブセット割合の偏差値を生成し、2種のT細胞サブセット割合の実際値は第1のT細胞サブセットと第2のT細胞サブセットとの間の数の割合である工程、及び(c)T細胞サブセット割合の偏差値に基づいて、個体の2種のT細胞サブセット割合の実際値が2種のT細胞サブセット割合の理論的範囲を満たすように、個体に第1のT細胞サブセット又は第2のT細胞サブセットを含む医薬組成物を投与する工程を含む。
【0111】
幾つかの実施形態において、2種のT細胞サブセット割合の理論的範囲は健常者群の生理的数値に由来し、健常者群は、免疫不全症候群及び免疫亢進症候群に罹患していない5歳~85歳のヒト個体である。
【0112】
幾つかの実施形態において、第1のT細胞サブセットがCD4陽性T細胞(CD4+T細胞)であり、第2のT細胞サブセットがCD8陽性T細胞(CD8+T細胞)である場合、2種のT細胞サブセット割合の理論的範囲(CD4/CD8割合の理論的範囲)は1:1~5:1である。CD4陽性T細胞が初期キラーT細胞を活性化することができるため、CD4/CD8割合の実際値が1:1よりも低い時、個体は免疫力が低下する状態を呈することが分かる。個体にCD4陽性T細胞を含む医薬組成物を投与し、個体の血液含有量、CD4陽性T細胞の数(血液内のCD4陽性T細胞の含有量)の実際値及び対応する理論的範囲に応じて、CD4陽性T細胞を投与すべき適切な投与量を生成する。
【0113】
幾つかの実施形態において、上記治療は、個体に前記T細胞を含む医薬組成物又は個体に前記ナチュラルキラー細胞を含む医薬組成物を投与する工程の後に、個体に免疫細胞療法を実行する工程を更に含む。幾つかの実施形態において、免疫細胞療法は、ナチュラルキラー細胞療法、サイトカイン誘導によるキラー細胞(cytokine-induced killer cells)療法、γδT細胞療法、樹状細胞療法、腫瘍浸潤型リンパ球細胞(tumor infiltrating lymphocytes;TIL)療法、キメラ抗原受容体T細胞(chimeric antigen receptor T cell)療法又はそれらの組合わせを含む。
【0114】
なお、従来の免疫細胞療法は、いずれもT細胞の総数、ナチュラルキラー細胞の総数、T細胞サブセットのパーセント、ナチュラルキラー細胞サブセットのパーセント、CD4/CD8割合などの免疫分析指標の実際値と対応する理論的範囲との偏差値を事前に比較する工程がなく、上記免疫分析指標の偏差値に基づいて、T細胞、ナチュラルキラー細胞、特定のT細胞サブセット又は特定のナチュラルキラー細胞サブセットなどのリンパ球をインビトロ培養してから個体に戻し、又は個体内のT細胞、ナチュラルキラー細胞、特定のT細胞サブセット又は特定のナチュラルキラー細胞サブセットなどのリンパ球を除去することで、免疫分析指標の実際値を理論的範囲に調整する工程もない。このため、既存の免疫細胞療法は個体の免疫システム効能の違い(例えば免疫力の低下又は自己免疫疾患)によって、効能に巨大な違いがある。
【0115】
これに対して、本開示内容の使用により、個体の免疫効能が良好な状態に戻った後、免疫細胞療法を実行するのを確保し、免疫細胞療法の成功率を高めることができる。
【0116】
例えば、T細胞に関連するγδT細胞療法、樹状細胞療法、腫瘍浸潤リンパ球療法又はキメラ抗原受容体T細胞療法を実行する前に、T細胞の総数偏差値及びT細胞サブセットの偏差値に基づいて、T細胞の実際の総数をT細胞の総数理論的範囲に調整し、T細胞サブセット割合の実際値をT細胞サブセット割合の理論的範囲に調整することができ、これにより、T細胞免疫効能を健康状態に回復させ、免疫細胞の治療効果を高める。
【0117】
他の実施例において、ナチュラルキラー細胞に関連するナチュラルキラー細胞療法又はサイトカイン誘導キラー細胞免疫療法を実行する前に、ナチュラルキラー細胞の総数偏差値及びナチュラルキラー細胞サブセットの偏差値に基づいて、ナチュラルキラー細胞の実際の総数をナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲に調整し、ナチュラルキラー細胞サブセット割合の実際値をナチュラルキラー細胞サブセット割合の理論的範囲に調整することができ、ナチュラルキラー細胞が免疫効能を健康状態に回復させ、免疫細胞の治療効果を高める。
【0118】
幾つかの実施形態において、前記リンパ球は治療を必要とする個体に由来し、インビトロ培養によって得られる。例えば個体が治療を受ける前に、予め自己血液からスクリーニングし、特定のリンパ球を凍結保存しておくので、将来、癌を治療する場合に、直接解凍してスクリーニングし、増幅培養して個体に戻すことができる。特定のリンパ球を予め凍結保存することによって、治療時に必要なリンパ球の獲得フローを減少するだけでなく、異なる個体の間の免疫拒絶状況を避けることができる。
【0119】
幾つかの実施形態において、癌は、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、脳癌、子宮頸癌、膀胱癌、肛門癌、子宮癌、結腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、子宮内膜癌、骨癌、精巣癌、皮膚癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、唾液腺癌、肝細胞癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、基底細胞癌、皮膚扁平上皮癌、胆管癌、メルケル細胞癌又はそれらの組合わせを含む。
【0120】
本開示内容は個体の癌の治療用医薬組成物を調製するための複数のナチュラルキラー細胞の用途を更に提供し、治療は、(a)前記ナチュラルキラー細胞のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を測定する工程であって、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値は、前記ナチュラルキラー細胞と複数の癌細胞を特定の割合で共培養する工程、及び前記癌細胞の死亡数の百分率を生成し、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を獲得する工程によって生成される工程、(b)ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値とナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲に基づいて、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値及びナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲の間のナチュラルキラー細胞の殺傷能の偏差値を生成する工程、及び(c)ナチュラルキラー細胞の殺傷能の偏差値に基づいて、個体のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値がナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲を満たすように、個体に前記ナチュラルキラー細胞を含む医薬組成物を投与する工程を含む。
【0121】
個体が癌患者である時、ナチュラルキラー細胞の殺傷能はナチュラルキラー細胞の実際の総数の不足、過剰又はナチュラルキラー細胞の活性不足により、効能の低下又は自己免疫過度になることがあることが分かる。本開示内容はナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を理論的範囲(例えばナチュラルキラー細胞の実際の総数を理論的範囲に制御したり、個体内のナチュラルキラー細胞を活性化する)に制御することで、個体の免疫システムの効能を健康状態に調整し、個体の自己免疫システムの癌に対する抵抗能力を高めて、癌に対する治療効果を向上させる。従来の放射線治療又は化学的治療と比べて、本開示内容の使用は自己細胞に損傷を与えない。なお、本開示内容の使用は他の免疫細胞療法と組み合わせて使用してもよく、ナチュラルキラー細胞の殺傷能を正確に制御することで、免疫細胞療法の効果を向上させる。
【0122】
幾つかの実施形態において、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は健常者群の生理的数値に由来し、健常者群は、免疫不全症候群及び免疫亢進症候群に罹患していない5歳~85歳のヒト個体である。
【0123】
幾つかの実施形態において、数の割合が6.25である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は0%~58.8%であり、数の割合が12.5である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は1.7%~88.7%であり、数の割合が25である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は17.4%~100%であり、数の割合は50である場合、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は35.3%~100%である。
【0124】
幾つかの実施形態において、工程(a)では、数の割合が50であり、作用濃度が100国際単位(International Unit)/ミリリットル(IU/ミリリットル)である白血球インターロイキン2(Interleukin 2、IL-2)を同時に添加してナチュラルキラー細胞及び癌細胞と共培養する時(ナチュラルキラー細胞の最大活性群として、又はIL-2対照群という)、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲は57.4%~100%である。なお、この作用濃度では、IL-2は制御性ナチュラルキラー細胞の活性(制御性ナチュラルキラー細胞がキラーナチュラルキラー細胞の活性を阻害する)を完全に阻害するため、この条件で得られたナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値は、個体のキラーナチュラルキラー細胞の活性、即ち、ナチュラルキラー細胞の最大活性を反映する。
【0125】
幾つかの実施形態において、上記治療は、ナチュラルキラー細胞の実際の総数とナチュラルキラー細胞総数の理論的範囲とのナチュラルキラー細胞の総数偏差値を生成する工程と、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の偏差値及びナチュラルキラー細胞の総数偏差値に基づいて、個体のナチュラルキラー細胞の実際の総数がナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲を満たすように、個体に前記ナチュラルキラー細胞を含む医薬組成物を投与することによって、個体のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値がナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲を満たす工程とを含む。
【0126】
幾つかの実施形態において、上記治療は、複数の特定の抗原の発現の有無に応じて前記ナチュラルキラー細胞を複数のナチュラルキラー細胞サブセットに分類し、前記ナチュラルキラー細胞サブセットは制御性ナチュラルキラー細胞を含み、制御性ナチュラルキラー細胞はCD34+、CD56+、CD94+、及びCD117+である工程と、制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率と制御性ナチュラルキラー細胞の理論的範囲との制御性ナチュラルキラー細胞の偏差値を生成し、制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率はリンパ球細胞に占める制御性ナチュラルキラー細胞の数の百分率である工程、及びナチュラルキラー細胞の殺傷能の偏差値及び制御性ナチュラルキラー細胞の偏差値に基づいて、個体の制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率は制御性ナチュラルキラー細胞の理論的範囲を満たすように、個体に前記制御性ナチュラルキラー細胞を含む医薬組成物を投与して、個体のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値がナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲を満たす工程を更に含む。
【0127】
なお、異なる数の割合のナチュラルキラー細胞殺傷能の傾向を分析して、数の割合が50である場合に組み合わせると、IL-2を添加するときに測定されたナチュラルキラー細胞殺傷能(ナチュラルキラー細胞の最大活性)と組み合わせ、ナチュラルキラー細胞の免疫効能の概況を示すことができる。
【0128】
例えば、癌細胞と共培養するナチュラルキラー細胞の数の割合が高くなるが、各群のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値が理論的範囲よりも低く、ナチュラルキラー細胞の最大活性群(IL-2対照群)のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値も理論的範囲よりも低いと、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値及びナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲の間にはナチュラルキラー細胞の殺傷能の偏差値がある。
【0129】
次に、ナチュラルキラー細胞の実際の総数を更に分析することができ、ナチュラルキラー細胞の実際の総数が対応する理論的範囲よりも低い場合、ナチュラルキラー細胞の実際の総数がナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲を満たすように、ナチュラルキラー細胞を個体に投与することができ、個体のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値がナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲を満たす。他方で、制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率を同時に分析することもでき、制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率が対応する理論的範囲よりも高いと、ナチュラルキラー細胞の効能が過度に阻害されることを示し、制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率が対応する理論的範囲を満たすように、割合が高過ぎる制御性ナチュラルキラー細胞を除去することで、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値をナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲に戻る。
【0130】
他の実施例において、数の割合が高くなり、各群のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値が理論的範囲よりも低いが、ナチュラルキラー細胞の最大活性群(IL-2対照群)のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値が理論的範囲に入る場合、ナチュラルキラー細胞の活性不足を示す。先に個体からナチュラルキラー細胞を選別し、IL-2の活性化培養を経て、活性化されたナチュラルキラー細胞のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値が対応する理論的範囲に戻ったことを確認した後、個体に戻して、免疫効能を向上させることができる。
【0131】
幾つかの実施形態において、上記治療は、個体に前記ナチュラルキラー細胞を含む医薬組成物を投与する工程の後に、個体に免疫細胞療法を実行する工程を更に含む。幾つかの実施形態において、免疫細胞療法は、ナチュラルキラー細胞療法、サイトカイン誘導キラー細胞免疫療法、γδT細胞療法、樹状細胞療法、腫瘍浸潤リンパ球療法、キメラ抗原受容体T細胞療法又はそれらの組合わせを含む。
【0132】
なお、既存の免疫細胞療法は個体の免疫システム効能の違い(例えば免疫力の低下又は自己免疫疾患)によって、効能に巨大な違いがある。これに対して、本開示内容の使用により、個体のナチュラルキラー細胞の殺傷能が良好な状態に戻った後、免疫細胞療法を実行するのを確保し、免疫細胞療法の成功率を高めることができる。
【0133】
例えば、ナチュラルキラー細胞療法を実行する前に、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値に基づいて、及びナチュラルキラー細胞の総数偏差値、制御性ナチュラルキラー細胞の偏差値又は両方に基づいて、ナチュラルキラー細胞の実際の総数をナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲に調整し、ナチュラルキラー細胞サブセット割合の実際値をナチュラルキラー細胞サブセットの割合の理論的範囲に調整し、又は両方を同時に実行することができ、その結果、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値がナチュラルキラー細胞の殺傷能の理論的範囲に入る。
【0134】
幾つかの実施形態において、ナチュラルキラー細胞は治療を必要とする個体に由来し、インビトロ培養によって得られる。例えば個体が治療を受ける前に、予め自己血液からスクリーニングし、特定のリンパ球を凍結保存しておくので、将来、癌を治療する場合に、直接解凍してスクリーニングし、増幅培養して個体に戻すことができ、治療時に必要なナチュラルキラー細胞の獲得フローを減少するだけでなく、異なる個体の間の免疫拒絶状況を避けることができる。
【0135】
幾つかの実施形態において、癌は、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、脳癌、子宮頸癌、膀胱癌、肛門癌、子宮癌、結腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、子宮内膜癌、骨癌、精巣癌、皮膚癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、唾液腺癌、肝細胞癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、基底細胞癌、皮膚扁平上皮癌、胆管癌、メルケル細胞癌又はそれらの組合わせを含む。
【0136】
本開示内容の各種の実施形態による免疫力の有効性の検出方法及びシステム及び個体の癌の治療用医薬組成物を調製するためのリンパ球の使用(リンパ球の含有量を制御することで癌を治療する方法)を更に説明するために、以下のように実施する。なお、以下の実施例は例示の目的としてのみ提供され、本発明を限定するものではない。
【0137】
一、免疫力の有効性の検出方法及びシステム
【0138】
1.免疫細胞の種類及び抗原発現状態(T細胞及びナチュラルキラー細胞の免疫分析指標実際値の検出)の検出
【0139】
まず、ヒト由来の100マイクロリットルの全血サンプルを適切な濃度の抗凝固剤を含む試験管に入れ、抗凝固剤はヘパリン(heparin)又はエチレンジアミン四酢酸(Ethylenediaminetetraacetic acid、略語EDTA)であってもよく、EDTAを加えると、EDTA作用の重量パーセントは0.1%である。
【0140】
表1に示される抗原(分類マーカー)に基づいて、蛍光基(例えばイソチオシアン酸基(Fluorescein Isothiocyanate;FITC))を有する特定抗体を選択し、抗原分布位置(例えば細胞表面抗原や細胞内抗原)に応じて、適切な方法と組み合わせて免疫染色を行い、特定の細胞を標識し、細胞を複数の細胞サブセットに分類する。
【0141】
【0142】
選択された抗原は細胞表面抗原(例えばCD3、CD4、CD8、CD25、CD27、CD34、CD39、CD45RO、CD45RA、CD56、CD57、CD62L、CD94、CD117及びCD127)であると、以下の表面抗原染色工程を実行する。
【0143】
100マイクロリットルの蛍光基標識を持つ抗体(例えばInvitrogenのFlow Cytometry Antibodies)を100マイクロリットルの全血サンプルを含む試験管に入れ、全血サンプル:抗体の体積比が1:1になり、及び抗体希釈倍率が50倍~100倍になるようにする。次に、2℃~8℃の温度で、遮光回転により30分間~1時間作用する。次に、フローサイトメーター染色液(Invitrogen eBioscience Flow Cytometry Staining Buffer、商品番号00-4222-26)を使用して、全血サンプル中の細胞を洗浄し、第1の細胞染色液を獲得する。
【0144】
選択された抗原は表面抗原及び細胞内抗原(intracellular antigen、例えばFoxP3)を含むと、上記表面抗原染色工程を実行した後、続いて以下の工程を実行する。
【0145】
室温で2ミリリットルの固定液/溶解液(Invitrogen eBioscience 1-Step Fix/Lyse Solution(10X)、商品番号00-5333-54)を100マイクロリットルの第1の細胞染色液に入れ、赤血球が後続のフローサイトメトリーの分析を妨げないように、赤血球が溶解するように反転して混合する。次に、室温で15分間~60分間遮光培養し、処理液を獲得する。
【0146】
室温で、処理液を500xgで5分間遠心分離し、細胞を沈殿させ、上清を除去した。
【0147】
遮光の条件で、2ミリリットルの穿孔液(Invitrogen eBioscience Permeabilization Buffer(10X)(商品番号00-8333-56)から10倍に希釈して調製された)細胞を懸濁させる。次に、室温で、500xgで5分間遠心分離し、上清液を除去し、穿孔液の添加及び遠心分離による上清液の除去工程を再度繰り返す。
【0148】
100マイクロリットルのフローサイトメーター染色液で細胞を懸濁させて、100マイクロリットルの表蛍光基標識を持つ抗体(例えばInvitrogen Flow Cytometry Antibodies)を添加することによって、抗体の希釈倍率が50倍~100倍になるようにする。次に、室温で、遮光回転して20分間~60分間作用する。更に2ミリリットルのフローサイトメーター染色液を使用して細胞を洗浄し、遠心分離により上清液を除去した後、500マイクロリットルのフローサイトメーター染色液で細胞を懸濁させ、第2の細胞染色液を獲得する。
【0149】
フローサイトメーターを使用し、細胞の分類マーカー(表1を参照されたい)の発現の有無に応じてサンプル細胞表面の抗原データを獲得して、T細胞サブセット及びナチュラルキラー細胞サブセットを分類し、全血サンプル中のT細胞及びナチュラルキラー細胞の含有量(T細胞の実際の総数及びナチュラルキラー細胞の実際の総数)、リンパ球中のT細胞サブセット及び各ナチュラルキラー細胞サブセットの割合(T細胞サブセットの実際の百分率及びナチュラルキラー細胞サブセットの実際の百分率)及びCD4陽性T細胞/CD8陽性T細胞の割合を生成する。また、必要に応じて、全てのT細胞中の特定マーカー抗原(例えばCD28)を有するT細胞の割合を分析する。
【0150】
なお、本願に使用される分類マーカーは、各T細胞サブセット及び各ナチュラルキラー細胞サブセットの専用抗原を使用して多重確認を行い、分類の正確さを更に向上させる。
【0151】
具体的には、
【0152】
初期ヘルパーT細胞に関して、ヘルパーT細胞に対して、CD45RA(初期型T細胞のマーカー)、CD28(初期ヘルパーT細胞のマーカー)の二重マーカーを採用して検証したほか、CD62L(T細胞中の非制御性ヘルパーT細胞のマーカー)を介して、制御性ヘルパーT細胞を排除し、制御性ヘルパーT細胞が混入する確率を低下させる。
【0153】
老化ヘルパーT細胞に関しては、ヘルパーT細胞に対して、CD45RO(老化型T細胞のマーカー)を採用して検証したほか、CD62Lを介して、制御性ヘルパーT細胞が混入する確率を低下させる。
【0154】
制御性ヘルパーT細胞に関して、ヘルパーT細胞に対して、CD25、FoxP3、CD39の三重制御性ヘルパーT細胞の専用抗原を採用して検証することで、制御性ヘルパーT細胞の分群の正確率を向上させることができる。
【0155】
初期キラーT細胞に関して、キラーT細胞に対して、初期型細胞のマーカーCD45RAを採用し、キラーT細胞(CD8)から初期型T細胞を分類したほか、更に初期キラーT細胞の専用マーカーCD127を採用して二重検証を行い、初期キラーT細胞の分群正確率を向上させることができる。
【0156】
老化キラーT細胞に関して、キラーT細胞に対して、老化型細胞のマーカーCD45ROを採用し、キラーT細胞(CD8)から老化型T細胞を分類したほか、更に老化キラーT細胞の専用マーカーCD57を採用して二重の検証を行い、老化キラーT細胞の分群正確率を向上させる。
【0157】
キラーナチュラルキラー細胞及び制御性ナチュラルキラー細胞に関しては、CD16(キラーナチュラルキラー細胞のマーカー)で両方を区切り、いずれもナチュラルキラー細胞の専用マーカーCD34、CD56、CD94、及びCD117を介して多重検証を行う。
【0158】
2.ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値の検出
【0159】
ナチュラルキラー細胞はウイルスや癌に抵抗する最初の防御線であるため、ナチュラルキラー細胞の殺傷能を検出することは、ウイルスと癌に抵抗する先天性免疫力を評価するのに用いることができ、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の検出は以下の工程を含む。
【0160】
まず、ナチュラルキラー細胞(例えば上記1の表1に応じて、適切な抗体を選別し、全血サンプルから分離して得られる)及びK-562細胞を異なる数の割合(Effector cell/Target cell=ET比、例えば、ナチュラルキラー細胞/K-562=6.25、12.5、25、50)で共培養し、更にフローサイトメーターによりK-562細胞が死亡する割合を分析することによって、ナチュラルキラー細胞の殺傷能を評価し、ナチュラルキラー細胞の健康度と抗癌能力を判断する。
【0161】
なお、制御性ナチュラルキラー細胞がキラーナチュラルキラー細胞の活性を阻害するため、E:T比が50である条件で、IL-2(作用濃度が100国際単位(International Unit)/ミリリットル=100 IU/ミリリットル)を更に添加し、制御性ナチュラルキラー細胞の活性を阻害し、IL-2を加えない群と比較することによって、キラーナチュラルキラー細胞活性を評価し、ナチュラルキラー細胞の最大活性を分析し、ナチュラルキラー細胞が免疫阻害の状態にあるかを判断するようにする。
【0162】
具体的に、ET比が6.25から等比で50に上昇すると、K-562細胞の死亡数の百分率(又はK-562細胞の死亡数)は等差数列の増加を示し、ナチュラルキラー細胞が健康で活力を有することを表し、癌細胞を除去して保護する能力を有する。逆に、ET比が上昇し続けるが、K-562細胞の死亡数の百分率(又はK-562細胞の死亡数)が基準範囲よりも低く、等差数列の上昇傾向を示さない場合、ナチュラルキラー細胞(特にキラーナチュラルキラー細胞)の健康度が悪く、殺毒抗癌能力に欠けることを表す。
【0163】
ナチュラルキラー細胞の状況を更に明確にするために、IL-2対照群のK-562細胞の死亡数の百分率及び制御性ナチュラルキラー細胞の数を同時に参照することができる。
【0164】
IL-2対照群では、K-562細胞の死亡数の百分率が基準範囲よりも低く、制御性ナチュラルキラー細胞の割合が高いと、自己免疫阻害の状態(一般的な原因は癌の罹患や慢性ウイルス感染を含む)にあることを表す。逆に、制御性ナチュラルキラー細胞の割合が正常であると、免疫低下の状態(一般的な原因は老化(特に65歳以上)、薬物作用(例えば免疫阻害剤又は化学的治療等を含む)、放射線治療又は高過ぎる放射線損傷)にあることを表す。
【0165】
また、IL-2対照群のK-562細胞の死亡数の百分率が基準範囲に入ると、ナチュラルキラー細胞は刺激されて活性化し、抗癌殺毒力を生成することを示し、つまり、ナチュラルキラー細胞の原始活性が普通の人よりも低いが、体の健康状況に影響を与えない。
【0166】
このため、ナチュラルキラー細胞の殺傷能をテストすることによって、ナチュラルキラー細胞の抗癌殺毒能力と健康度を効果的に定量的に評価することができ、臨床の疾患診断に対して、より正確な分析を提供することができる。
【0167】
3.分析免疫力の有効性
【0168】
上記1により、全血サンプル中の免疫細胞の種類(T細胞サブセット及びナチュラルキラー細胞サブセット)、抗原発現状態を獲得し、リンパ球における各細胞サブセット(T細胞サブセット及びナチュラルキラー細胞サブセット)の実際の百分率を算出し、上記1、2により、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を獲得した後、以下の表2~表4に応じて、免疫力の有効性を判断する。全ての実際値が基準範囲(例えば理論的範囲又は許容範囲に入る)に入ると、免疫力の有効性が正常であると判断する。更に、各細胞サブセットの実際値(例えば実際の百分率)は理論的範囲を満たすと、免疫力の有効性が良好であるのを判断する。しかしながら、いずれかの実際値(例えば実際の百分率)は基準範囲(即ち、理論的範囲及び許容範囲)を満たさないと、免疫力の有効性が低いのを判断する。
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
なお、免疫力の有効性を分析する方法は、特定のシステム300に構築することもできる。
図3を参照されたい。システム300はメモリ310、プロセッサー320、及び出力モジュール330を含む。
【0173】
まず、パソコン、スマートフォン、サーバーなどの電子装置を使用して、上記1の「免疫細胞の種類及び抗原発現状態の検出」におけるフローサイトメーター分析によって獲得されたサンプル細胞表面の抗原データ(全血サンプル中の細胞の抗原発現の場合)をファイルで伝送し、上記2の「ナチュラルキラー細胞の殺傷能の検出」によって獲得されるナチュラルキラー細胞の殺傷能データをメモリ310(例えば読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ、ディスク、又はクラウドデータベースなど)に伝送して記憶する。
【0174】
システム300はメモリ310に接続されるプロセッサー320を更に含み、プロセッサー320は中央プロセッサー、画像プロセッサー、マイクロプロセッサなどを含み、例えばマルチコアを含む処理ユニット又は複数の処理ユニットの組合わせを含み、プロセッサー320はメモリ310におけるサンプル細胞表面の抗原データ及びナチュラルキラー細胞殺傷能データにアクセスして以下の分析を行う。
【0175】
まず、プロセッサー320は細胞サブセットデータベース312(表1のT細胞サブセットの分類情報及びナチュラルキラー細胞サブセットの分類情報を含む)に基づいて、サンプル細胞表面の抗原データを分析し、全血サンプル中の細胞を複数の細胞サブセット(複数のT細胞サブセット及び複数のナチュラルキラー細胞サブセットを含む)を分類し、リンパ球細胞に占める各細胞サブセットの数の百分率を算出し、T細胞サブセットの数のデータ及びナチュラルキラー細胞サブセットの数のデータを獲得する。
【0176】
次に、プロセッサー320は免疫力の有効性評価データベース314(表2~表4のT細胞サブセットの基準範囲データ、ナチュラルキラー細胞サブセットの基準範囲データ及びナチュラルキラー細胞の殺傷能の基準範囲データを含む)に基づいて、T細胞サブセットの数のデータ、ナチュラルキラー細胞サブセットの数のデータ、及びナチュラルキラー細胞殺傷能データを分析し、免疫力の有効性データを生成する。
【0177】
システム300はプロセッサー320に接続される出力モジュール330を更に含み、出力モジュール330は免疫力の有効性データを免疫力の有効性報告として出力して表示スクリーン(図示せず)に表示し、又は他の電子装置に伝送し、特定のT細胞サブセット又は特定のナチュラルキラー細胞サブセットを凍結保存するかを評価する。
【0178】
二、標的細胞の分離及び凍結保存
【0179】
上記1、3の分析結果に基づいて、特定のT細胞サブセット又は特定のナチュラルキラー細胞サブセットを凍結保存しようとするかを判断し、例えば初期ヘルパーT細胞の実際の百分率が初期ヘルパーT細胞の基準範囲を満たすと、初期ヘルパーT細胞を凍結保存する。
【0180】
1.標的細胞の分離
【0181】
免疫ビーズ細胞選別法によって標的細胞(特定のT細胞サブセット又は特定のナチュラルキラー細胞サブセット)を分離し、免疫ビーズ細胞選別法は陽性選別システム及び陰性選別システムを含む。
【0182】
陽性選別システムに(invitrogenのDynal(R) positive isolation kits及びFlowCompTM kitsシリーズ製品)を採用し、選別フローは、特殊に修飾されたビオチン(Biotin)を持つ抗体(FlowCompTM kitシリーズ製品におけるAntibody Mix)で標的細胞をマーカーする工程と、ストレプトアビジン(Streptavidin)を持つ陽性選別磁気ビーズ(FlowCompTM kitシリーズ製品におけるFlowCompTM DynabeadsTM)を加え、陽性選別磁気ビーズ上のストレプトアビジンとビオチンを結合させる工程と、磁力で陽性選別磁気ビーズと結合する細胞を選別し、細胞に結合する陽性選別磁気ビーズを除去し、標的細胞を獲得する工程とを含む。
【0183】
陰性選別システムに(invitrogenのNegative isolation(UntouchedTM)kits)を採用し、選別フローは、ビオチン(Biotin)を持つ複数の抗体混合物(Negative isolation(UntouchedTM)kitsにおけるAntibody mix)で除去対象細胞をマーカーする工程と、ストレプトアビジン(Streptavidin)を持つ陰性選別磁気ビーズ(Negative isolation(UntouchedTM)kitsにおけるDepletion MyOneTM SA Dynabeads(R))を加え、陰性選別磁気ビーズ上のストレプトアビジンとビオチンを結合させ、磁力で除去対象細胞をふるいにかけ、陰性選別磁気ビーズに結合していない標的細胞を選別する。
【0184】
以下、各T細胞サブセット及びナチュラルキラー細胞サブセットを選別する方式を例示する。
【0185】
(1)制御性ヘルパーT細胞(CD3+CD4+CD25+FoxP3+CD39+)
【0186】
CD3+CD4+を使用してヘルパーT細胞(初期ヘルパーT細胞、老化ヘルパーT細胞及び制御性ヘルパーT細胞を含む)をスクリーニングして、CD25+CD45-で、制御性ヘルパーT細胞をスクリーニングする。
【0187】
CD3+細胞の選別プロセスは具体的に次の通りである(陽性選別システムを例とする)。
【0188】
まず、全血サンプルから末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)を分離し、分離液を使用し、PBMCを細胞密度が5x106個/ミリリットルのPBMC被分離液に調製し、分離液は0.1%のウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin、BSA)及び2mMのエチレンジアミン四酢酸(Ethylenediaminetetraacetic acid;EDTA)を添加したカルシウムイオン及びマグネシウムイオンを持たないリン酸緩衝液(Gibcoから購入、商品番号14190)である。
【0189】
次に、invitrogenのDynabeads(R) FlowCompTM Human CD3キット(商品番号113-65D)を使用してCD3を発現する細胞を分離し、具体的に以下の工程を含む。
【0190】
25マイクロリットルの特殊に修飾されたビオチンを持つCD3抗体(キットにおけるAntibody Mix)及び500マイクロリットルのPBMC被分離液を混合し、2℃~8℃で10分作用し、CD3抗体をCD3を発現する細胞に結合した後、2ミリリットルの分離液でPBMCを洗浄し、350xgで8分間遠心分離した後に、上清を除去する。
【0191】
次に、1ミリリットルの分離液でPBMCを懸濁した後、75マイクロリットルの陽性選別磁気ビーズ(キットにおけるFlowCompTM DynabeadsTM)を加え、室温(約25℃)で15分間回転培養し、陽性混合液を獲得する。
【0192】
次に、陽性混合液を磁石の上に少なくとも1分間置き、上清を除去し、磁気ビーズ標識細胞を残す。磁気ビーズ標識細胞を磁石から分離した後、1ミリリットルの分離液を加え、磁気ビーズ標識細胞を懸濁させる。磁気ビーズ標識細胞を磁石の上に少なくとも1分間置き、上清液を除去する。
【0193】
次に、1ミリリットルの磁気ビーズ除去液(セットにおけるFlowCompTM Release Buffer)を加え、室温で10分間回転作用する。磁気ビーズ標識細胞を含む磁気ビーズ除去液を磁石の上に1分置いた後、上清(CD3を発現する細胞)を新しい遠心分離管に移り、350xgで8分間遠心分離して細胞を沈殿した後、上清を除去し、CD3を発現する細胞を獲得する。
【0194】
次に、対応するセットを選択し、上記と類似する工程によって、更にCD3+細胞からCD4+細胞(CD3+CD4+細胞)を選別し、続いてCD3+CD4+細胞からCD25+細胞(CD3+CD4+CD25+細胞)を更に選別し、CD3+CD4+CD25+細胞から、CD45+細胞を選別して除去し、CD45-細胞(CD3+CD4+CD25+CD45-細胞)を獲得し、制御性ヘルパーT細胞を獲得する。
【0195】
(2)初期ヘルパーT細胞(CD3+CD4+ CD45RA+CD62L+CD28+)又は老化ヘルパーT細胞(CD3+CD4+CD45RO+CD62L+CD28-)
【0196】
上記CD3+細胞の具体的な選別プロセスを参照し、CD3+CD4+でヘルパーT細胞(初期ヘルパーT細胞、老化ヘルパーT細胞及び制御性ヘルパーT細胞を含む)をスクリーニングして、CD25-CD45+(ここでのCD45+は、CD45RA又はCD45ROを発現する細胞を少なくともスクリーニングし、CD45RA及びCD45ROはCD45の異なる異性体である)で、初期ヘルパーT細胞及び老化ヘルパーT細胞をスクリーニングし、最後、CD28+又はCD28-で、初期ヘルパーT細胞(CD28+)又は老化ヘルパーT細胞(CD28-)をスクリーニングする。
【0197】
(3)初期キラーT細胞又は老化キラーT細胞
【0198】
上記CD3+細胞の具体的な選別プロセスを参照し、CD3+CD8+でキラーT細胞(初期キラーT細胞及び老化キラーT細胞を含む)をスクリーニングして、CD57-又はCD57+で、初期キラーT細胞(CD57-)又は老化キラーT細胞(CD57+)をスクリーニングする。
【0199】
(4)キラーナチュラルキラー細胞又は制御性ナチュラルキラー細胞
【0200】
上記CD3+細胞の具体的な選別プロセスを参照し、CD34+CD56+でナチュラルキラー細胞サブセット(キラーナチュラルキラー細胞及び制御性ナチュラルキラー細胞を含む)をスクリーニングして、CD16+又はCD16-で、キラーナチュラルキラー細胞(CD16+)又は制御性ナチュラルキラー細胞(CD16-)をスクリーニングする。
【0201】
(5)単一の血液サンプルから各T細胞サブセット及びナチュラルキラー細胞サブセットを同時に分離する
【0202】
本願に選択される分類マーカーは、同一の血液サンプルから各T細胞サブセット及びナチュラルキラー細胞サブセットを順次に分離することができ、複数の血液サンプルに分けて各細胞サブセットをスクリーニングする必要がなく、スクリーニング時間及び消耗品を節約し、スクリーニング効率を高めるだけでなく、定量化の誤差を低減することができる。なお、本発明のマーカーの選択により、血液サンプルは一度に2種の抗原をスクリーニングすることができ、分離回数を細胞の許容範囲内(2~3回の選別工程)に制御し、細胞を損傷しないようにすることができる。
【0203】
このため、本願に選択されるマーカーは、臨床検出の適用性及び精度を高めることができ、具体的に以下のフローを参照されたい。
【0204】
T細胞については
【0205】
(1)ヘルパーT細胞:
【0206】
まず、CD3、CD4を採用し、ヘルパーT細胞(CD3がT細胞マーカーであり、CD4がヘルパーT細胞マーカーである)を分離して、スクリーニングされた細胞に対して、それぞれCD45RA(初期型T細胞マーカー)及びCD62L(T細胞における非制御性ヘルパーT細胞のマーカー)、CD45RO(老化型T細胞マーカー)及びCD62L、CD25及びFoxP3(両方は制御性ヘルパーT細胞マーカーである)を採用し、それぞれ初期ヘルパーT細胞、老化ヘルパーT細胞、制御性ヘルパーT細胞を初歩的に分離し、最後、それぞれCD45RA及びCD62L又はCD25及びFoxP3を発現してスクリーニングした細胞に対して、更に、CD28(初期ヘルパーT細胞マーカー)及びCD39(制御性ヘルパーT細胞マーカー)をそれぞれ採用して、初期ヘルパーT細胞及び制御性ヘルパーT細胞に対して再度検証を行い、これにより、初期ヘルパーT細胞、老化ヘルパーT細胞、制御性ヘルパーT細胞を獲得する。
【0207】
(2)キラーT細胞:
【0208】
ヘルパーT細胞をスクリーニングした後、次に、残った細胞に対して、CD8及びCD27(両方がキラーT細胞マーカーである)を採用して、キラーT細胞を分離して、CD45RA(初期型T細胞マーカー)及びCD62L(T細胞における非制御性ヘルパーT細胞のマーカー)、CD45RO(老化型T細胞マーカー)及びCD62Lをそれぞれ採用してそれぞれ初期キラーT細胞及び老化キラーT細胞を初歩的に分離し、最後、CD127(初期キラーT細胞マーカー)及びCD57(老化キラーT細胞マーカー)をそれぞれ採用して、それぞれ初期キラーT細胞及び老化キラーT細胞に対して再度検証を行うことにより、初期キラーT細胞及び老化キラーT細胞を獲得する。
【0209】
ナチュラルキラー細胞については、
【0210】
T細胞サブセットを分離した後、分離されていない細胞に対して、CD16(キラーナチュラルキラー細胞マーカー)及びCD34(ナチュラルキラー細胞マーカー)を更に採用して、キラーナチュラルキラー細胞を初歩的に分離し、順次にCD56及びCD94、CD117(三方がいずれもナチュラルキラー細胞マーカーである)で、キラーT細胞に対して複数回の検証を行うことにより、キラーナチュラルキラー細胞を獲得する。次に、残った細胞に対して、順次にCD34及びCD56、CD94及びCD117を採用し、調節型T細胞をスクリーニングする。
【0211】
2.標的細胞の凍結保存
【0212】
上記4.1「標的細胞の分離」によって選別された標的細胞を継代培養し、標的細胞を含む培養液(異なる細胞に応じて、対応する培養液を選択する)を遠心分離し、細胞を沈殿させた後、上清液を除去し、更に、重量パーセントが5%のジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide、DMSO)を含む培養液で標的細胞を懸濁し、標的細胞密度を1x106/ミリリットル~5x106/ミリリットルにした後、冷凍保存管に分けて保存し、順次に4℃で10分間~30分間保存し、-20℃で30分間保存し、-80℃で16時間~18時間保存し、最後に液体窒素中に移して長期凍結保存に供し、又はプログラムを設定した降温機に入れ(例えば毎分間1℃から3℃下がる)、-80℃に下がった後、液体窒素中に置いて長期凍結保存に供する。
【0213】
なお、-20℃で1時間以上保存すると、氷晶が大き過ぎて、細胞の生存率が低下する。なお、前の4℃及び-20℃の工程をスキップして、-80℃に直接入れ、しかしながら、これは細胞の生存率を低下させる。
【0214】
それぞれのT細胞サブセット及びナチュラルキラー細胞サブセットは異なる機能を持ち、免疫システムにおいて異なる役割(例えば初期ヘルパーT細胞は新型病原菌への抵抗に役に立ち、キラーナチュラルキラー細胞は癌を阻害することができる)を果たすため、本開示内容による免疫力の有効性の検出方法及びシステムは、CD28を含む第1の抗原で、T細胞サブセット(例えばCD28を発現する初期ヘルパーT細胞を分類する)を分類し、CD16を含む第2の抗原で、ナチュラルキラー細胞サブセット(例えばCD16を発現するキラーナチュラルキラー細胞を分類する)を分類し、リンパ球細胞における実際の百分率を計算して、免疫力の有効性を分析し、免疫システムの各方面の機能に対して、より全面的な検査を提供する。
【0215】
三、リンパ球含有量を制御して癌を治療する方法
【0216】
1.各免疫分析指標の実際値の検出
【0217】
上記1の方法によって、T細胞及びナチュラルキラー細胞の免疫分析指標実際値を検出し、上記1、2の方法により、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を検出する。
【0218】
2.個体の免疫分析指標実際値を理論的範囲に調整する
【0219】
2.1.T細胞の免疫分析指標実際値を理論的範囲に調整する
【0220】
上記表2に応じて、上記3、1によって獲得された各免疫分析指標の実際値と対応する理論的範囲との偏差値を生成し、次に個体の血液量又は他の関連する免疫分析指標実際値に基づいて、T細胞又は特定のT細胞サブセットが個体に補充されるか、個体から除去されるべき適切な投与量を生成する。
【0221】
具体的に、以下、体重65キロの癌患者を個体とし、総血液量は5リットルであると推定する場合を例とする。
【0222】
T細胞の実際の総数が500個/マイクロリットル(T細胞の総数理論的範囲は700個/マイクロリットル~2500個/マイクロリットルである)であると検出すると、T細胞の補充されるべき適切な投与量の範囲は1x109~1x1010個[(700-500)個/マイクロリットル)x5リットル=1x109、(2500-500)個/マイクロリットル)x5リットル=1x1010]である。T細胞の実際の総数を理論的範囲に調整することで、個体の免疫力を向上させることができ、更にその後に組み合わせる免疫細胞療法の安全性と効果を高める。
【0223】
CD4陽性T細胞の数が200個/マイクロリットルであり、CD8陽性T細胞の数が250個/マイクロリットルであると検出すると、CD4/CD8割合の実際値は0.8:1(CD4/CD8割合の理論的範囲が1:1~5:1である)である。CD4陽性T細胞が初期キラーT細胞を活性化することができるので、CD4陽性T細胞の割合が低すぎると、個体は免疫力が低下する状態を呈し、免疫細胞療法(例えば樹状細胞療法又はキメラ抗原受容体T細胞療法)を直接受ける場合、抗癌効果が低い。免疫効能を向上させるために、まず、個体内のCD4陽性T細胞の正のスクリーニングを行い、更に増幅培養し、個体内のCD4陽性T細胞を2.5x108個[(250-200)個/マイクロリットルx5リットル=2.5x108)]を少なくとも増加し、CD4/CD8割合の実際値を1:1まで少なくとも戻る。CD4/CD8割合の実際値を理論的範囲まで調整させることで、CD4陽性T細胞の数を向上させ、初期キラーT細胞を活性化させ、個体の抗癌殺傷能を向上させる。
【0224】
初期ヘルパーT細胞の実際の百分率が25%(初期ヘルパーT細胞の理論的範囲が≧35%であり、T細胞の総数理論的範囲は700個/マイクロリットル~2500個/マイクロリットルである)であると検出すると、個体は免疫力が低下する状態を呈する。免疫力の有効性を向上させるために、個体から分離して獲得した初期ヘルパーT細胞を3.5x108個~1.25x109個[(35-25)%x5リットルx700個/マイクロリットル=3.5x108、(35-25)%x5リットルx2500個/マイクロリットル=1.25x109]まで増幅し、更に個体に戻して、初期ヘルパーT細胞の実際の百分率を35%以上まで少なくとも回復させる必要がある。初期ヘルパーT細胞の実際の百分率を理論的範囲に調整することで、個体の免疫抗癌機構を再起動させることができ、個体の抗癌殺傷能を向上させ、更にその後の他の免疫細胞療法との組み合わせ時の成功率を高めることができる。
【0225】
制御性ヘルパーT細胞の実際の百分率が15%(制御性ヘルパーT細胞の理論的範囲が3%~10%である)であり、T細胞の実際の総数が2000個/マイクロリットルであると検出すると、他のリンパ球を阻害するための制御性ヘルパーT細胞が過剰になることを示し、個体の免疫抗癌効能を阻害する。個体から5x108個の制御性ヘルパーT細胞[(15-10)%x5リットルx2000個/マイクロリットル=5x108個]を除去する必要があり、これにより免疫効能が過度に阻害されている状態を改善する。具体的には、血液分離機(Hemapheresis)を介して個体から末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell;PBMC)を先に抽出し、更にリンパ球分離術(Lymphopheresis)により少なくとも3.33x109個(5x108個/15%)のCD4陽性T細胞の正の選別を行い、次に、負の選別によりCD25陽性の制御性ヘルパーT細胞を除去した後、残りのPBMCを個体に戻す。
【0226】
逆に、制御性ヘルパーT細胞の実際の百分率が2%(制御性ヘルパーT細胞の理論的範囲が3%~10%である)であり、T細胞の実際の総数が2000個/マイクロリットルであると検出すると、他のリンパ球を阻害するための制御性ヘルパーT細胞が少なすぎることを示し、自己免疫過剰の状態を引き起こす可能性がある。このとき、1x108個~8x108個の制御性ヘルパーT細胞を個体[(3-2)%x5リットルx2000個/マイクロリットル=1x108、(10-2)%x5リットルx2000個/マイクロリットル=8x108]に補充する必要があり、これにより自己免疫の状態を改善し、免疫阻害薬への依存性を下げる。具体的に、血液分離機を介して個体からPBMCを先に抽出し、更にリンパ球分離術により制御性ヘルパーT細胞の正の選別を行い、次に、制御性ヘルパーT細胞を1x108個~8x108個まで増幅培養した後、個体に戻す。
【0227】
初期キラーT細胞の実際の百分率が15%(初期キラーT細胞の理論的範囲が>20%である)であり、T細胞の実際の総数が2000個/マイクロリットルであると検出すると、免疫システムの癌細胞に対する殺傷効能が不足していることを示し、個体から初期キラーT細胞を分離して、少なくとも5x108個の初期キラーT細胞[(20-15)%x5リットルx2000個/マイクロリットル=5x108個]を増幅培養する必要があり、個体に戻して、個体の免疫抗癌機構を再起動することができ、個体の抗癌殺傷能を向上させ、更にその後の他の免疫細胞療法との組み合わせ時の成功率を高めることができる。
【0228】
2.2.ナチュラルキラー細胞の免疫分析指標実際値を理論的範囲に調整する
【0229】
上記表3に応じて、上記3、1によって獲得された各免疫分析指標の実際値と対応する理論的範囲との偏差値を生成し、次に個体の血液量に応じて、ナチュラルキラー細胞又はナチュラルキラー細胞サブセットの補充されるか、又は除去されるべき適切な投与量を生成する。
【0230】
まず、上記3、1によって獲得されたナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値と上記表4の理論的範囲とを比較して、各数の割合及びIL-2添加時のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値の傾向及び理論的範囲との偏差値を初歩的に判断する。ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値が理論的範囲にないと、更に、上記3、1によって獲得されたナチュラルキラー細胞に関する各免疫分析指標の実際値と上記表3に対応する理論的範囲との偏差値を生成し、次に個体の血液量によって、ナチュラルキラー細胞又は特定のナチュラルキラー細胞サブセットの補充されるか又は除去されるべき適切な投与量を生成し、ナチュラルキラー細胞の殺傷能を最適な条件に調整して、更にその後の他の免疫細胞療法との組み合わせ時の成功率を高めることができる。
【0231】
理論的には、E:T比が6.25などの割合から50に上昇するとき、ナチュラルキラー細胞による殺傷の癌細胞の数が等差数列的に増加し、個体のナチュラルキラー細胞が正常に癌細胞を殺傷することができることを示す。なお、IL-2を介してナチュラルキラー細胞を刺激して最大の活性を生成し、対照群として、E:T比50と比較して、これにより個体が免疫阻害の状態にあるかを判断することができる。
【0232】
具体的に、以下、個体が体重65キロの癌患者で、総血液量が5リットルであると推定することを例として、説明するために以下の3種の可能の状況を提供する。
【0233】
1.E:T比が上昇しているが、4群のE:T比のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値が理論的範囲よりも低いと、等差上昇の傾向を呈していない。同時に、ナチュラルキラー細胞の最大活性群(IL-2対照群)のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値が理論的範囲よりも低く、更に上記3、1によって獲得された制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率と表3に対応する理論的範囲とを比較することによって、制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率が高い場合、
【0234】
通常に制御性ナチュラルキラー細胞が過剰で、キラーナチュラルキラー細胞の癌細胞殺傷能を過度に阻害することを示す。このとき、制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率と表3に対応する理論的範囲によって、割合が高すぎる制御性ナチュラルキラー細胞を除去する。
【0235】
例えば、制御性ナチュラルキラーの実際の百分率が15%(制御性ナチュラルキラーの理論的範囲が≦10%である)で、ナチュラルキラー細胞の実際の総数が5x108個であるとき、制御性ナチュラルキラー細胞が過剰であることを示す。免疫システムの癌細胞殺傷能を向上させるために、個体から2.5x107個(5x108個の5%)の制御性ナチュラルキラー細胞を除去する必要がある。具体的に、血液分離機によって個体からPBMCを先に抽出し、更にリンパ球分離術によりCD56陽性及びCD3陰性を有するナチュラルキラー細胞の正の選別を行い、細胞の数が1.67x108個(2.5x107/0.15=1.67x108)に達する必要があり、次に、更に負の選別によりCD16陰性の制御性ナチュラルキラー細胞を除去した後、残りのナチュラルキラー細胞(主にキラーナチュラルキラー細胞である)を個体に戻す。
【0236】
2.以上のように、同様にE:T比が上昇しているが、4群のE:T比のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値が理論的範囲よりも低いと、等差上昇の傾向を呈していない。同時に、ナチュラルキラー細胞の最大活性群(IL-2対照群)のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値が理論的範囲よりも低く、更に上記3、1によって獲得された制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率と表3に対応する理論的範囲を比較することで、制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率が理論的範囲にある場合、
【0237】
通常に個体は重度の免疫低下状態にあることを示し、一般的な原因は(1)老化(特に65歳以上のヒト個体)、(2)薬物作用(例えば免疫阻害剤又は化学的治療)(3)放射線治療又は過剰な放射線傷害である。通常、このような個体はナチュラルキラー細胞の実際の総数が低過ぎる状況があり、ナチュラルキラー細胞の増幅培養を経て、個体内に戻すことができ、ナチュラルキラー細胞の実際の総数を増加し、個体の免疫力を向上させる。他のいくつかの実施例において、上記3、1によって獲得された制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率と表3の対応する理論的範囲を比較する場合と同時に、ナチュラルキラー細胞の実際の総数と対応する理論的範囲を比較することができ、ナチュラルキラー細胞の戻し工程を実行する前に、ナチュラルキラー細胞の実際の総数が理論的範囲に入るかを確認する。
【0238】
例えば、検出後のナチュラルキラー細胞の実際の総数は80個/マイクロリットル(ナチュラルキラー細胞の総数理論的範囲は100個/マイクロリットル)であると、ナチュラルキラー細胞の殺傷能が不足していることを示し、癌細胞に対する個体の殺傷能を向上させるために、少なくともナチュラルキラー細胞の実際の総数を1x108個[(100-80)個/マイクロリットルx5リットル=1x108個]に増幅培養する必要があり、次に、個体内に戻す。
【0239】
3.同様に、E:T比が上昇するが、4群のE:T比のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値が理論的範囲よりも低く、等差上昇傾向を呈しなく、同時にナチュラルキラー細胞の最大活性群(IL-2対照群)のナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値は理論的範囲に入る場合、
【0240】
個体のナチュラルキラー細胞の活性が普通の人よりも低いことを示すが、刺激して活性化されて、癌細胞の殺傷能を向上させることができる。このため、まず個体からナチュラルキラー細胞を選別し、IL-2の活性化培養を経て、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値を理論的範囲に戻ったことを確認した後、個体内に戻すことができる。
【0241】
このため、ナチュラルキラー細胞の殺傷能の実際値、ナチュラルキラー細胞の実際の総数、及び制御性ナチュラルキラー細胞の実際の百分率及び対応する理論的範囲を分析することで、ナチュラルキラー細胞の抗癌殺毒能力の状態に対してより全面的な分析を提供することができる。なお、分析結果に基づいて、個体内のナチュラルキラー細胞又は制御性ナチュラルキラー細胞の含有量を対応的に調整し、又はIL-2によって活性化されたナチュラルキラー細胞を添加することができ、ナチュラルキラー細胞の殺傷能を理論的範囲に戻され、後続で他の免疫細胞療法(例えばナチュラルキラー細胞療法)と組み合わせる際の成功率を向上させる。
【0242】
実施形態を上記の通りに開示したが、これは本開示内容を限定するものではなく、当業者なら誰でも、本開示内容の精神と領域から逸脱しない限り、多様の変更や修正を加えることができる。従って、本開示内容の保護範囲は、後の特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0243】
100 方法
200 フロー
S110、S120、S130、S140、S210、S220、S230 工程
300 システム
310 メモリ
312 細胞サブセットデータベース
314 免疫力の有効性評価データベース
320 プロセッサー
330 出力モジュール