(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181090
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】航行妨害ゾーン生成装置および方法
(51)【国際特許分類】
G08G 3/02 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
G08G3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076660
(22)【出願日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】22178158.6
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】魚下 成一
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA25
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF21
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】 既存の在来システムの問題点を克服し、対象船や障害物などとの衝突を回避して船舶航行要員が安全に自船を航行できるようなシステム・方法を提供する。
【解決手段】 移動体(1)の妨害ゾーン生成装置(3)は、1つ以上の情報取得装置(2) が取得したセンサ情報に基づいて計算情報を生成する計算情報生成部(31) と、1つ以上の対象船 (204a~204d) の航行妨害ゾーン (OZT) ごとに妨害ゾーンを計算してOZT情報を生成する妨害ゾーン計算部(32) と、1つ以上の対象船 (204a~204d) の対象船ごとに、それぞれの対象船のOZTを、それぞれの対象船の方向に基づいてOZT情報にマスクするかどうかを決定して出力情報を生成するマスク領域決定部(33) と、出力情報とOZT情報に基づいて1つ以上の対象船 (204a~204d) のOZTを表示するOZT表示情報を生成する表示情報生成部(34) とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の情報取得装置(2) が取得したセンサ情報に基づいて、1つ以上の対象船 (204a~204d) の対象船ごとに航行妨害ゾーン (OZT) を計算するために必要となる計算情報を生成する計算情報生成部(31) と、
1つ以上の対象船 (204a~204d) の航行妨害ゾーン (OZT) ごとに妨害ゾーンを計算し、
OZT情報を生成する妨害ゾーン計算部(32) と、
1つ以上の対象船 (204a~204d) の対象船ごとに、それぞれの対象船のOZTを、それぞれの対象船の方向に基づいてOZT情報にマスクするかどうかを決定して出力情報を生成するマスク領域決定部(33) と、
出力情報とOZT情報に基づいて1つ以上の対象船 (204a~204d) のOZTを表示するOZT表示情報を生成する表示情報生成部(34) とを備える、
ことを特徴とする妨害ゾーン生成装置 (3)。
【請求項2】
請求項1に記載の妨害ゾーン生成装置 (3) において、
計算情報には、自船 (1) および1隻以上の対象船 (204a-204d) の各対象船の速度情報、針路情報、方向情報、距離情報のうち少なくとも1つが含まれる、ことを特徴とする妨害ゾーン生成装置 (3)。
【請求項3】
請求項2に記載の妨害ゾーン生成装置(3) において、
妨害ゾーン計算部(32) はさらに、対応する対象船のコース、進行方向、速度、自船の速度 (1) 、自船 (1) と対応する対象船との距離に基づいて、各対象船のOZTを計算するように構成される、ことを特徴とする妨害ゾーン生成装置 (3)。
【請求項4】
請求項1に記載の妨害ゾーン生成装置(3) において、
計算情報生成部(31) は、さらに、一つ以上の情報取得装置(2) によって取得されたセンサ情報に基づいて表示情報を生成するように構成される、ことを特徴とする妨害ゾーン生成装置 (3)。
【請求項5】
請求項4に記載の妨害ゾーン生成装置 (3) において、
表示情報には、自船の位置 (1) 、自船の進行方向 (1) 、1隻以上の標的船の位置 (204a~204d) 、1隻以上の標的船の各標的船の進路 (204a~204d) が含まれる、ことを特徴とする妨害ゾーン生成装置 (3)。
【請求項6】
請求項4に記載の妨害ゾーン生成装置(3) において、
表示情報には、1つ以上の対象船 (204a~204d) 、自船舶を囲む領域の地形 (1) 、自船舶を囲む領域の1つ以上の対象物 (1) のうち、少なくとも1つに関連する情報が含まれる、ことを特徴とする妨害ゾーン生成装置 (3)。
【請求項7】
請求項1に記載の妨害ゾーン生成装置 (3) において、
1つ以上の情報取得装置(2) は、全地球航法衛星システム (GNSS) コンパス、角速度センサー、GNSS受信機、加速度センサー、カメラ、自動識別システム (AIS) 受信機、電子海図表示情報システム (ECDIS) 、プロッタ、無線検出測距装置 (RADAR) 、自動レーダープロット補助装置 (ARPA/TT) 、および音響航法測距 (SONAR) 装置の少なくとも1つを含む、ことを特徴とする妨害ゾーン生成装置 (3)。
【請求項8】
請求項1に記載の妨害ゾーン生成装置 (3) であって、
マスク領域決定部(33) は、さらに、各対象船の進行方向と各対象船の対応するOZTの方向の少なくとも一方が、自船 (1) からの各対象船の相対方向と同一である場合に、各対象船の対応するOZTをマスクするように構成される、ことを特徴とする妨害ゾーン生成装置 (3)。
【請求項9】
請求項8に記載の妨害ゾーン生成装置(3) において、
マスク領域決定部(33) は、さらに、各対象船の進行方向と各対象船の対応するOZTの方向の少なくとも1つが自船 (1) の進行方向と同じであり、かつ自船 (1) が各対象船と各対象船の対応するOZTの間にある場合に、各対象船の対応するOZTをマスク解除するように構成されている、ことを特徴とする妨害ゾーン生成装置 (3)。
【請求項10】
請求項8に記載の妨害ゾーン生成装置(3) において、
出力情報には、OZT情報でマスクされることが要求される各対象船のOZTに対応するマスクされた領域のセットが含まれる、ことを特徴とする妨害ゾーン生成装置 (3)。
【請求項11】
請求項10に記載の妨害ゾーン生成装置 (3) において、
マスクされた領域の集合の各マスクされた領域は、三角形、長方形、台形、扇形の少なくとも1つを有する、ことを特徴とする妨害ゾーン生成装置 (3)。
【請求項12】
請求項1に記載の妨害ゾーン生成装置(3) であって、
OZT表示情報を表示部 (4) の画面上に表示し、表示部 (4) の画面上で自船 (1) と対象船 (204b) のOZT (206) との位置関係の識別を容易にする、ことを特徴とする妨害ゾーン生成装置 (3)。
【請求項13】
1つ以上の情報取得装置(2) が取得したセンサ情報に基づいて、1つ以上の対象船 (204a~204d) の対象船ごとに航行妨害ゾーン (OZT) を計算するために必要となる計算情報を生成し、
1つ以上の対象船 (204a~204d) の航行妨害ゾーン (OZT) ごとに妨害ゾーンを計算してOZT情報を生成し、
1つ以上の対象船 (204a~204d) の対象船ごとに、それぞれの対象船のOZTを、それぞれの対象船の方向に基づいてOZT情報にマスクするかどうかを決定して出力情報を生成し、
出力情報とOZT情報に基づいて1つ以上の対象船 (204a~204d) のOZTを表示するOZT表示情報を生成する、
ことを特徴とする妨害ゾーン生成方法 (500) 。
【請求項14】
1つ以上の情報取得装置(2) が取得したセンサ情報に基づいて、1つ以上の対象船 (204a~204d) の対象船ごとに航行妨害ゾーン (OZT) を計算するために必要となる計算情報を生成し、
1つ以上の対象船 (204a~204d) の航行妨害ゾーン (OZT) ごとに妨害ゾーンを計算してOZT情報を生成し、
1つ以上の対象船 (204a~204d) の対象船ごとに、それぞれの対象船のOZTを、それぞれの対象船の方向に基づいてOZT情報にマスクするかどうかを決定して出力情報を生成し、
出力情報とOZT情報に基づいて1つ以上の対象船 (204a~204d) のOZTを表示するOZT表示情報を生成する、
ことを特徴とする妨害ゾーン生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に船舶を安全に航行させるための船舶航行システムに関するものであり、より具体的には、周囲の障害物との衝突を回避して船舶を安全に航行させるための航行妨害ゾーン生成装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海洋航法システムや航法装置は、自船をある地点から別の地点へ安全に航行させるために、近くにある目標物の障害物を検出する必要がある。これらの従来の航法システムや装置は、目標物や自船 (または船舶) を含む他の船舶の位置を追跡し、識別するために使用されてきた。また、これらの従来のシステムは、侵入する目標物に対応する距離を測定し、接近の最も近い地点での距離の測定を利用する。このようなシステムでは、目標物に対応する距離と接近の最も近い地点での距離を測定するために、レーダー指示器、反射プロッタ、およびプロットテーブルがしばしば使用される。しかし、プロットの小さな誤りでさえ、これらの従来のシステムの信頼性を著しく低下させ、衝突を引き起こす可能性がある。
【0003】
さらに、既存の在来システムでは、自船を安全に航行させるための表示部の画面上に、目標となる船舶、地形、その他の目標物など、所定の範囲内に存在するすべての目標障害物を表示することで、前述の問題に対処しようとしている。既存の在来システムの1つでは、所定の範囲内にある各航行妨害ゾーン (Obstacle Zone by Target、以下OZT) によって、OZTが自船と目標船舶との衝突の可能性が高い潜在的な衝突領域であるように、OZTを計算している。各目標船舶のOZTは、対応する目標船舶の進路と速度、および自船の速度に基づいて計算され、計算されたOZTに基づいて、所定の範囲内にあるすべての目標障害物を表示部の画面に表示する。また、既存の従来システムは、複数の目標記号、アイコン、およびインデックスとの衝突の可能性のある領域を表示部の画面に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、船舶の航行要員、例えば、船長、乗組員、またはその他の船舶の航行士官は、画面を見落とし、画面に表示されたすべての目標障害物から回避すべき目標船舶を特定できず、船舶の安全な航行に問題が生じる可能性がある。特に、各目標船舶のOZTに加えて複数の目標記号が同じ画面に表示されるため、回避すべき重要な目標障害物の視認性が低下する。このため、船舶航行要員が安全に船舶を航行できない場合がある。以上の理由から、既存の在来システムの問題点を克服し、対象船や障害物などとの衝突を回避して船舶航行要員が安全に自船を航行できるようなシステム・方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例では、計算情報生成部、妨害ゾーン計算部、マスク領域決定部、表示情報生成部を含む妨害ゾーン生成装置を提供する。計算情報生成部は、1つ以上の情報取得装置が取得したセンサ情報に基づいて計算情報を生成するように構成されている。この計算情報は、1つ以上の対象船の対象船ごとに航行妨害ゾーン(OZT)を計算するために必要となる。妨害ゾーン計算部は、1つ以上の対象船の対象船ごとにOZTを計算し、OZT情報を生成するように構成されている。OZT情報には、1つ以上の対象船の対象船ごとに計算されたOZTが含まれる。マスク領域決定部は、1つ以上の対象船の対象船ごとに、対象船の方向に基づいて、OZT情報の対象船ごとのOZTをマスクするかどうかを決定し、出力情報を生成するように構成されている。表示情報生成部は、出力情報とOZT情報に基づいて、1つ以上の対象船のOZTを表示するためのOZT表示情報を生成するように構成されている。
【0007】
さらに、または任意で、計算情報には、1つ以上の対象船の自船と各対象船の速度情報、針路情報、方向情報、距離情報のうち少なくとも1つが含まれる。
【0008】
さらに、または任意で、妨害ゾーン計算部は、対応する対象船の針路、方位、速度、自船の速度、自船と対応する対象船との距離に基づいて、各対象船のOZTを計算する。
【0009】
さらに、または任意で、計算情報生成部は、1つ以上の情報取得装置によって取得されたセンサー情報に基づいて表示情報を生成するようにさらに構成される。
【0010】
さらに、または任意で、表示情報には、自船の位置、自船の進行方向、1つ以上の対象船の位置、および1つ以上の対象船のコースが含まれる。
【0011】
さらに、オプションで、表示情報には、少なくとも1つのターゲット船、自船を囲む領域の地形、自船を囲む領域の1つ以上のターゲットオブジェクトのうちの1つに関連付けられた情報が含まれます。
【0012】
さらに、またはオプションで、1つ以上の情報取得装置には、少なくとも1つの測位衛星システム(GNSS)コンパス、角速度センサー、GNSS受信機、加速度センサー、カメラ、自動識別システム(AIS)受信機、電子海図情報表示装置(ECDIS)、プロッタ、レーダー(RADAR)、自動レーダープロット補助 (ARPA/TT) 、およびソナー(SONAR)装置が含まれます。
【0013】
さらに、またはオプションで、マスク領域決定部は、少なくとも1つの:各対象船の進行方向と各対象船の対応するOZTの方向が自船からの各対象船の相対方向と同じ場合に、各対象船の対応するOZTをマスクするようにさらに構成されます。
【0014】
さらに、またはオプションで、マスク領域決定部は、少なくとも1つの:各対象船の進行方向と各対象船の対応するOZTの方向が自船の進行方向と同じであり、自船が各対象船と各対象船の対応するOZTの間にある場合に、各対象船の対応するOZTをマスク解除するようにさらに構成されます。
【0015】
さらに、またはオプションで、出力情報には、OZT情報でマスクする必要がある各対象船のOZTに対応するマスクされた領域のセットが含まれます。
【0016】
さらに、またはオプションで、マスクされた領域のセットの各マスクされた領域には、三角形、長方形、台形、扇形の少なくとも1つが含まれます。
【0017】
さらに、またはオプションで、OZT表示情報が表示部の画面に表示されるため、操船者は、表示部の画面上で自船と注目する対象船のOZTとの位置関係を識別することが容易になります。
【0018】
本発明の別の側面では、妨害ゾーン生成方法が提供されます。閉塞帯生成方法は、1つ以上の情報取得装置が取得したセンサ情報に基づいて計算情報を生成すること、1つ以上の対象船の各対象船のOZTを計算してOZT情報を生成すること、1つ以上の対象船の各対象船のOZTを計算してOZT情報を生成すること、1つ以上の対象船の各対象船について、各対象船の方位に基づいてOZT情報に各対象船のOZTをマスクするかどうかを決定して出力情報を生成すること、出力情報とOZT情報に基づいて1つ以上の対象船のOZTを表示するOZT表示情報を生成すること、を含む。本発明のさらに別の側面では、コンピュータによって実行されると、コンピュータに1つ以上の情報取得装置によって取得されたセンサー情報に基づいて計算情報を生成させるコンピュータ実行可能な命令を格納した非遷移コンピュータ可読媒体が提供され、ここで、計算情報は、1つ以上の対象船の各対象船のOZTを計算するために必要とされ、1つ以上の対象船の各対象船のOZTを計算してOZT情報を生成するために必要とされ、ここで、OZT情報は、1つ以上の対象船の各対象船の計算されたOZTを含み、1つ以上の対象船の各対象船について、それぞれの対象船のOZTをOZT情報にマスクして出力情報を生成するかどうかを決定する、出力情報とOZT情報に基づいて、1隻以上の対象船のOZTを表示するためのOZT表示情報を生成する。
【発明の効果】
【0019】
船舶航行要員が計画航路上を安全に航行するために直感的に使用できる視覚情報を表示できないという問題は、1隻以上の対象船の対象船ごとに、それぞれの対象船の方位に基づいて、それぞれの対象船のOZTをマスクするかどうかを決定し、計画航路上で回避すべき潜在的に危険な対象船を選択的に表示する妨害ゾーン生成装置を用いることで解決される。従って、本発明の妨害ゾーン生成装置は、船舶航行要員、すなわち、自船を操作するユーザが、表示部の画面上で、自船と対象船との位置関係および注目する対象船のOZTを識別することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
主題の例示された実施形態は、図面を参照することによって最もよく理解されるであろう。ここで、類似の部分は、全体を通して同様の数字で示される。以下の説明は、例としてのみ意図されており、ここで主張されている主題と一致するデバイス、システム、およびプロセスの特定の選択された実施形態を単純に例示している。
【
図1】本発明の一実施形態による、移動体を安全にナビゲートするための航法装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】それぞれの対象船のOZTを含む対象船の航行妨害ゾーン(OZT)情報の例示を示している;
【
図4】マスクする必要がある対象船のOZTのマスクの例示を示している;そして
【
図5】本発明の一実施形態による妨害ゾーン生成方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここでは、装置例について説明する。ここに提示された主題の精神または範囲から逸脱することなく、他の例の実施形態または特徴をさらに利用し、他の変更を加えることができる。以下の詳細な説明では、その一部を構成する添付図面を参照する。
【0022】
ここに記載されている例示的な実施形態は、限定するものではない。ここに一般的に記載され、図面に示されている本発明の側面は、ここで明示的に企図されている多種多様な異なる構成で、配置、置換、結合、分離、および設計することができることは容易に理解されるであろう。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態による、移動体1 (以下「自船1」ともいう) を安全に航行するための航法装置10の構成を示すブロック図である。
図2は、自船1を囲む領域の画像200を示す。
【0024】
次に、主に
図1を参照すると、自船1に航法装置10を搭載して、自船1を出発地から目的地まで航法することができる。航海が開始されたら、出発地と目的地の間で自船1がたどるべき経路である計画航路に沿った自船1の航法を監視しなければならない。航法装置10は、標的となる船舶、地形、その他の目標物などの周囲の障害物との衝突を回避し、安全に自船1を航行するために使用されるように構成されている。船舶運航者、すなわち、自船1を運航する利用者は、航法装置10の補助を受けて計画航路に沿って自船1を航行する。一実施例では、
図2に示すように、自船1の現在の速度ベクトル202 (またはコース・オーバー・グラウンドCOG) が、自船1が通過する速度と方向を示す。計画ルートは、自船1が航行して目的地に安全に到達するためにたどる経路である。
【0025】
航法装置10は、1つ以上の情報取得装置2、妨害ゾーン生成装置3、表示部4を含む。1つ以上の情報取得装置2は、1つ以上の従来の海上電子機器に対応してもよい。1つ以上の情報取得装置2は、全地球航法衛星システム (GNSS) コンパス、角速度センサ、GNSS受信機、加速度センサ、カメラ、自動識別システム (AIS) 受信機、電子チャート表示・情報システム (ECDIS) 、プロッタ、レーダー(RADAR)装置、自動衝突予防援助装置 (ARPA/TT) 、ソナー (SONAR) 装置等のうち少なくとも1つを含む。1つ以上の情報取得装置2は、自船1の位置、速度、進路、角速度、進行方向のうち少なくとも1つを含むセンサ情報と、自船1を取り囲む1つ以上の障害物に関する情報を取得する。1つの実施形態では、自船1を囲む1つ以上の障害物は、1つ以上の標的船204a~204d、地形、または1つ以上の標的物体のうち少なくとも1つであってもよい。
【0026】
引き続き
図1を参照すると、妨害ゾーン生成装置3は、計算情報生成部31、妨害ゾーン計算部32、マスク領域決定部33、表示情報生成部34を含む。
【0027】
ここでは、図を参照する。計算情報生成部31は、1つ以上の情報取得装置2によって取得されたセンサ情報に基づいて計算情報を生成するように構成することができる。計算情報生成部31は、取得したセンサ情報に基づいて、自船1および1つ以上の対象船204a~204dの各対象船の計算情報を生成する。一実施形態では、計算情報生成部31は、自船1の1つ以上の情報取得装置2に含まれている可能性のある方向センサ、速度指示器などの1つ以上のセンサおよび/または指示器と操作可能に結合され、通信することができる。計算情報は、
図2に示すように、1つ以上の対象船204a~204dの対象船ごとに、航行妨害ゾーン (OZT) を計算するために必要である。OZTは、対応する対象船のコース上で、近くの船、すなわち自船1と衝突する可能性のある衝突水域を示す。計算情報には、自船1と1隻以上の対象船204a~204dの各対象船の速度情報、針路情報、方向情報、距離情報のうち少なくとも1つが含まれる。
【0028】
速度情報は、自船1の速度と1隻以上の対象船204a~204dの各対象船の速度を示す。一実施形態では、速度情報は、自船1と1隻以上の対象船204a~204dの各対象船の速度をリアルタイムに示す。別の実施形態では、速度情報は、事前に定義された時間間隔で、自船1と1隻以上の対象船204a~204dの各対象船の速度を示す。コース情報は、1隻以上の対象船204a~204dの自船1と各対象船のコースを示す。方向情報は、1隻以上の対象船204a~204dの自船1の進行方向と各対象船の進行方向を示す。距離情報は、1隻以上の対象船204a~204dの自船1と各対象船との距離を示す。
【0029】
演算情報生成部31は、1つ以上の情報取得装置2が取得したセンサ情報に基づいて表示情報を生成する。表示情報には、自船1の位置、予定航路における自船1の進行方向、現在の速度ベクトル202、1つ以上の対象船204a~204dの位置、1つ以上の対象船204a~204dの進路などが含まれる。また、表示情報には、1つ以上の対象船204a~204d、自船1を囲む領域の地形、自船1を囲む領域の1つ以上の対象物のうち、少なくとも1つに関連する情報が含まれる場合もある。
【0030】
一実施例では、計算情報生成部31は、一つ以上の情報取得装置2から計算情報と表示情報を直接取得してもよい。他の実施例では、計算情報生成部31は、一つ以上の情報取得装置2が取得したセンサ情報に基づいて、測定、計算、推定などの計算を処理して、計算情報と表示情報を生成してもよい。
【0031】
妨害ゾーン計算部32は、計算情報生成部と操作可能に結合されていてもよく、そのため、計算情報生成部31と通信している。妨害ゾーン計算部32は、計算情報生成部31から計算情報を受け取り、一つ以上の対象船204a~204dの各対象船のOZTを計算する。妨害ゾーン計算部32は、一つ以上の対象船204a~204dの各対象船のOZTとOZT情報を計算するように構成されている。各対象船204a~204dのOZTは、計算情報に基づいて計算される。OZT情報には、1隻以上の対象船204a~204dの各対象船のOZT計算値が含まれる。OZTは、自船1が最も高い確率で対象船と同時刻に同じ場所に到達する領域を示す。OZTは、自船1の速度情報と距離情報、および各対象船204a~204dの速度情報、針路情報、方向情報、距離情報を用いて算出される。一実施例では、閉塞区域算出部32は、対応する対象船の針路、進行方向、速度、自船1の速度、および自船1と対応する対象船との距離に基づいて、各対象船のOZTを算出する。
【0032】
図3 Aは、本発明の一実施形態による、対象船302のOZT 304を含む対象船302のOZT情報の例を示す。妨害ゾーン計算部32は、自船1と対象船302に関連する方位角306を決定することができる。方位角306は、自船1の進行方向と、自船1と対象船302との間の直線との間の角度測定である。一例では、
図3 (a) に示すように、対象船302が予測される将来の進路308に沿って航行しており、自船1が現在の進行方向に航行し続けると、衝突の危険性が高くなる。妨害ゾーン算出部32は、自船1の速度情報と距離情報、および対象船302の速度情報、進路情報、方向情報、距離情報を基に、対象船302のOZT 304を算出する。一実施例では、妨害ゾーン算出部32は、方位角306に基づいて、さらに対象船302のOZT 304を算出する。妨害ゾーン算出部32は、算出されたOZT 304に基づいて、自船1と対象船302との衝突の危険性が高い進路である危険進路310を決定する。自船1が危険進路310を航行し続けると、衝突の危険性が高まる。一実施例では、対象船302に関連するOZT情報には、計算されたOZT 304、方位角306、予測未来進路308、危険進路310が含まれる。
【0033】
図3 Bは、本発明の一実施例による、対象船312のOZT 314を含む対象船312のOZT情報の例を示す。一例では、
図3 Bに示すように、目標船312が予測された将来の進路316に沿って航行し、自船1が現在の方向に航行し続けると、衝突の危険性が高くなる。妨害ゾーン算出部32は、自船1の速度情報と距離情報、目標船312の速度情報、進路情報、方向情報、距離情報を基に、目標船312のOZT 314を算出する。妨害ゾーン算出部32は、算出したOZT 314を基に、衝突の危険性が高い進路である危険な進路318を決定する。自船1が危険な進路318を航行し続けると、衝突の危険性が高まる。一実施例では、標的船312に関連するOZT情報は、計算されたOZT 314、予測された将来の進路316、危険な進路318を含む。
【0034】
図3 Cは、本発明の一実施例による、標的船320のOZT 322を含む標的船320のOZT情報の例を示す。一例では、標的船320が予測された将来の経路324に沿って航行しており、
図3 Cに示すように自船1が現在の方向に航行し続けると、衝突のリスクが高くなる。妨害ゾーン算出部32は、自船1の速度情報と距離情報、および標的船320の速度情報、進路情報、方向情報、距離情報を基に、標的船320のOZT 322を算出する。妨害ゾーン算出部32は、算出されたOZT 322を基に、衝突の危険性が高い経路である危険な進路326を決定する。自船1が危険な進路324を航行し続けると、標的船320が自船1に後方から衝突する可能性があるため、衝突の危険性が高くなる。一実施例では、対象船320に関連するOZT情報には、計算されたOZT 322、予測未来経路324、危険進路326が含まれる。
【0035】
妨害ゾーン計算部32が、FIGsに記述されているOZT情報の生成と同様の方法で、一つ以上の対象船204a~204dの各対象船のOZT情報を生成することは、当業者には明らかであろう。3 Aから3 C。
【0036】
ここで
図1を参照すると、マスク領域決定部33は、一つ以上の対象船204aから204dの各対象船について、OZT情報の各対象船の方向に基づいて、各対象船のOZTをマスクするかどうかを決定し、出力情報を生成するように構成されている。例えば、マスク領域決定部33は、各対象船の進行方向と各対象船の対応するOZTの方向の少なくとも一つが、自船1からの各対象船の相対方向と同じである場合に、対応する対象船のOZTをマスクするように構成されている。また、マスク領域決定部33は、各対象船の進行方向と各対象船の対応するOZTの方向の少なくとも一つが、自船1からの各対象船の相対方向と反対または異なる場合に、対応する対象船のOZTをマスクしない。さらに、マスク領域決定部33は、各対象船の進行方向と各対象船の対応するOZTの方向の少なくとも一つが自船1の進行方向と同じであり、かつ、自船1が各対象船と各対象船の対応するOZTの間にある場合に、各対象船の対応するOZTをマスク解除するように構成されている。
【0037】
マスク領域決定部33は、自船1と一つ以上の対象船204a~204dの各対象船との衝突の危険性を決定することができる。衝突の危険性は、自船1と一つ以上の対象船204a~204dの各対象船の位置情報、方向情報、速度情報に基づいて決定される。一例として、自船、対象船、各対象船のOZTが日食/月食同様の位置関係を取る場合など、一つ以上の対象船204a~204dの各対象船の進行方向と、各対象船の対応するOZTの方向のうち少なくとも一つが、自船1からの各対象船の相対方向と同一である場合、衝突の危険性は低い。上記の配置と同様に自船1は各標的船を見ることができ、衝突の危険性が低いと判断されるため、各標的船のOZTはマスクされる。このように、一実施例では、マスク領域決定部33は、上記のように自船1に対して同じく日食/月食同様の位置関係を取る標的船204a、204c、204dよりも遠くに位置する標的船204a、204c、204dのOZTなど、各標的船のOZTをマスクする。マスク領域決定部33は、自船1が、標的船204bのような最も近い前方の標的船と衝突する危険性があるかどうかを決定するが、これには、予測される進行方向と、それに対応するOZTの方向が、自船1からの標的船204bの相対方向と反対または異なる少なくとも1つが含まれる。マスク領域決定部33が、予測される進行方向とそれに対応する標的船204bのOZTの方向のうち少なくとも1つに基づいて、自船1が標的船204bと衝突する危険性があると判断した場合、標的船204bのOZTはマスクされない。1つ以上の情報取得装置2が取得したセンサー情報に基づいて、自船1の進行方向を推定してもよい。このように、出力情報には、OZT情報でマスクする必要がある各対象船204a、204c、204dのOZTに対応するマスクされた領域のセットが含まれる。
【0038】
例えば、対象船204a、204c、204dが自船1と比較的近い方向に航行していて、対象船204a、204c、204dの進行方向と自船1の進行方向との偏差が所定のしきい値(例えば鋭角の場合)以内であり、かつ、対象船204bが自船の進行方向と逆方向に航行していて、対象船204bの進行方向と自船1の進行方向との偏差が所定のしきい値を超える場合、マスクエリア決定部33は、対象船204a、204c、204dのOZTに対応するメイキングエリアのセットを含む出力情報を生成する。
【0039】
図3 A~3 Bを参照すると、マスクエリア決定部33は、対象船312のOZT 314を対象船312の進行方向としてマスクし、対象船312のOZT 314の方向は、対象船312の自船1からの相対方向と同じである。対象船312のOZT 314がマスクされていても、船舶運航者は対象船312を見ることができるため、OZT 314は船舶運航者の決定に影響を与えない。また、マスク領域決定部33は、対象船302のOZT 304を対象船302の進行方向としてマスクしておらず、対象船312のOZT 304の方向は、自船1からの対象船302の相対方向とは反対または異なる。さらに、マスク領域決定部33は、対象船320のOZT 322を対象船320の進行方向としてマスクしておらず、対象船312のOZT 322の方向は自船1の進行方向と同じであり、自船1は対象船320とOZT 322の間にある。
【0040】
図4は、マスクする必要がある対象船402のOZT 404のマスクの例を示している。マスク領域決定部33は、OZT情報の対象船402の方向に基づいて、対象船402に対して、対象船402のOZT 404をマスクするかどうかを決定し、出力情報を生成する。一実施例では、マスク領域決定部33は、対象船402のOZT 404をマスクするかどうかを決定する。出力情報には、OZT情報でマスクする必要がある対象船402のOZT 404など、各対象船のOZTに対応するマスク領域のセットが含まれる。一実施形態では、マスク領域のセットの各マスク領域は、三角形、長方形、台形、扇形の少なくとも一つを有するが、これらに限定されない。例えば、マスク領域決定部33は、三角形のマスク領域406、長方形のマスク領域408、台形のマスク領域410、扇形のマスク領域412のいずれかを使用して、対象船402のOZT 404をマスクすることができる。
【0041】
マスク領域決定部33は、三角形、長方形、台形、扇形のマスク領域のいずれかであり得る、対象船204a、204c、および204dの対応するマスク領域を含む出力情報を生成することは、当業者には理解されるであろう。さらに、本発明は、海上を航行する船舶に適用されるだけでなく、例えば湖や川を航行することができる任意の水面移動体にも適用され得る。
【0042】
FIGを参照。表示情報生成部34は、出力情報とOZT情報を基にOZT表示情報を生成して、自船1の安全な航行に必要な表示部4の画面にOZT表示情報を表示し、自船1の周囲の障害物との衝突を回避するように構成されている。表示情報生成部34は、マスク領域決定部33からの出力情報を受信する。例えば、対象船204a、204c、204dは、標的204船204 204a、204c、204dの進行方向と自船1の進行方向との偏差が所定のしきい値内となるように自船1と相対的に近い方向に遠出しており、また、注目する対象船204a、204c、204dのOZTは、自204船1から相対的に同じ方向の対象船204a、204c、204dの前方に位置しているため、それぞれの対象船204a、204c、204dのOZTはOZT情報でマスクされ、表示部4の画面には表示されない。
【0043】
また、標的船204bは自船1と同じ方向に進んでおり、衝突の危険性が高いため、
図2に示すように、標的船204bのOZT 206が表示部4の画面に表示される。これにより、表示部4の画面上で、自船1と標的船204bの位置関係や、それぞれの標的船204bのOZT 206を容易に特定することができる。また、自船1を別の航路で航行させ、標的船204bのOZT 206を回避することで、標的船204bとの衝突を回避することができる。
【0044】
このように、OZT情報のうち、衝突のおそれのない標的船に対応するOZTの一部はマスクされており、自船1と衝突のおそれのある標的船に対応するOZT情報の他のOZTはマスクされていないため、OZT表示情報に含まれていることが当業者には明らかとなり、必要な情報だけが衝突回避のために表示部4の画面に表示される。
【0045】
表示部4は、後述する目的のために、自船1の船上に設置され、自船1の妨害ゾーン生成装置3を備えているか、または電気的に接続されていてもよい。表示部4は、衝突の危険を避けるために回避すべき1隻以上の標的船を表示するように構成されている。表示部4は、例えば、自船1を運航する船舶運航者、すなわち利用者が参照する航海補助装置の一部を構成する表示画面として構成されていてもよい。ただし、表示部4は上記の構成に限定されるものではなく、例えば、自船1から周囲の状況を監視する船舶運航者助手が携行する携帯型コンピュータ用の表示画面、乗客が自船1の船室内で視聴するための表示画面、乗客が装着するウェアラブルガラスなどのヘッドマウントディスプレイ用の表示部などである。
【0046】
図5は、本発明の一実施形態による妨害ゾーン生成方法500を示すフローチャートである。
【0047】
ステップ502で、演算情報生成部31は、一つ以上の情報取得装置2が取得したセンサ情報に基づいて、演算情報を生成する。演算情報は、一つ以上の対象船204a~204dの対象船ごとのOZTを計算するために必要となる。
【0048】
ステップ504で、妨害ゾーン計算部32は、一つ以上の対象船204a~204dの対象船ごとのOZTを計算し、OZT情報を生成する。OZT情報には、一つ以上の対象船204a~204dの対象船ごとに計算されたOZTが含まれる。また、計算情報生成部31は、一つ以上の情報取得装置2が取得したセンサ情報に基づいて表示情報を生成するように構成されている。
【0049】
ステップ506において、マスク領域決定部33は、一つ以上の対象船204a~204dの対象船ごとに、OZT情報の対象船の方向に基づいて、対象船204a~204dのOZTをマスクするかどうかを決定し、出力情報を生成する。マスク領域決定部33は、対象船の進行方向と対応する対象船のOZTの方向の少なくとも一方が、自船1からの対象船の相対方向と一致する場合に、対象船のOZTをマスクする。出力情報には、OZT情報でマスクする必要がある対象船のOZTに対応するマスク領域のセットが含まれる。
【0050】
ステップ508で、表示情報生成部34は、出力情報とOZT情報を基にOZT表示情報を生成し、自船1の安全な航行に必要な表示部4の画面にOZT表示情報を表示し、自船1の周囲の障害物との衝突を回避する。表示情報生成部34は、マスク領域決定部33から出力情報とOZT情報を受け取る。
【0051】
ステップ510で、表示部4の画面にOZT表示情報を表示するように表示部4を構成する。これにより、自船1を操作する船舶操作者、すなわちユーザは、表示部4の画面上で自船1と対象船との位置関係や各対象船のOZTを容易に識別することができる。船舶操作者は、回避すべき各対象船のOZTを回避するために別のコースで自船1を操作することで、対象船204bとの衝突を回避することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 移動体 (自船)
2 情報取得装置
3 航行妨害ゾーン生成装置
4 表示部
10 航法装置
31 計算情報生成部
32 妨害ゾーン計算部
33 マスク領域決定部
34 表示情報生成部
200 イメージ
202 現在の速度ベクトル
204a~204d 対象船
206 対象船204bのOZT
300 表示画面
302、312、320 対象船
304、314、322 対象船302、312、320のOZT
306 方位角
308、316、324 予測される将来航路
310、318、326 危険なコース
400 表示画面
402 対象船
404 対象船402のOZT
406 三角形のマスク領域
408 長方形のマスク領域
410 台形のマスク領域
412 扇形のマスク領域