(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181091
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】アクティブクランプフライバックコンバータ及び制御IC
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077680
(22)【出願日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2022093972
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】麻生 真司
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AA14
5H730AS01
5H730BB43
5H730BB66
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD24
5H730FG02
5H730VV01
(57)【要約】
【課題】トランスの二次側の同期整流化を容易かつ低損失にでき、トランスのコア損失が低減された高効率のアクティブクランプフライバックコンバータ及び制御IC。
【解決手段】本発明は、主スイッチQLのオフ期間中にクランプスイッチQHをオンオフさせる制御部2を備える。制御部2は、クランプスイッチのオンタイミングが、励磁電流がゼロになる時刻よりクランプスイッチがオンした時に形成されるクランプコンデンサCacとリーケージインダクタンスLlkの共振回路の共振周期の1/2から共振周期の1.22倍の手前で、且つ、オフタイミングが励磁電流がゼロになる時刻より手前で、且つ、オン期間をクランプコンデンサとリーケージインダクタンスとの共振周期の1/2以上に設定し、クランプスイッチをオンオフすることで、リーケージインダクタンスLlkに蓄積されたエネルギーを二次側に回生出力するとともに、二次側の電流が1つの電流波形となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の両端に、主スイッチと一次巻線とが直列に接続された第1直列回路が接続され、前記第1直列回路の接続点と前記直流電源のいずれか一端に、クランプスイッチとクランプコンデンサとが直列接続され、前記主スイッチと前記クランプスイッチをオンオフする制御部とを備え、
前記制御部は、前記主スイッチをオンオフする第1オン信号と、前記主スイッチがオフしている期間に、前記クランプスイッチをオンオフする第2オン信号を備え、
前記第2オン信号は、前記クランプスイッチがオンした時に形成される前記クランプコンデンサとリーケージインダクタンスの共振回路の共振周期の1/2周期時間経過後に反転して前記クランプコンデンサを充電する方向に流れる共振電流が前記一次巻線の励磁インダクタンスの励磁電流で制限されるオンタイミングに設定され、
前記クランプスイッチがオンした時に前記クランプコンデンサを放電する共振電流と反転した前記共振電流と前記励磁電流で制限される電流が前記クランプコンデンサの充放電を1回だけ行うように前記第2オン信号のオン期間を前記共振周期の1/2以上に設定し、
前記第2オン信号で前記クランプスイッチをオンオフするアクティブクランプフライバックコンバータ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2オン信号のオンタイミングを、
前記励磁電流がゼロになる時刻より前記共振周期の1/2から前記共振周期の1.22倍の手前で、且つ、オフタイミングが前記励磁電流がゼロになる時刻の手前で、且つ、前記第2オン信号のオン期間を前記クランプコンデンサと前記一次巻線のリーケージインダクタンスとの共振周期の1/2以上に設定する、請求項1のアクティブクランプフライバックコンバータ。
【請求項3】
前記制御部は、前記励磁インダクタンスの励磁電流がゼロになってから前記主スイッチの電圧振動のボトムを検出するボトム検出手段を備え、
前記ボトム検出手段により検出した主スイッチの電圧最小時刻で、前記主スイッチをオンさせる、請求項1又は2に記載のアクティブクランプフライバックコンバータ。
【請求項4】
前記制御部は、前記励磁電流を検出する励磁電流検出部と、しきい値を生成するしきい値生成部とを備え、
前記励磁電流検出部で検出された前記励磁電流が前記しきい値生成部で生成された前記しきい値になったときに前記第2オン信号のオンタイミングとして、前記第2オン信号を送出する、請求項1又は2に記載のアクティブクランプフライバックコンバータ。
【請求項5】
前記しきい値生成部は、出力電圧に応じて前記しきい値を変更する請求項4に記載のアクティブクランプフライバックコンバータ。
【請求項6】
直流電源の両端に、主スイッチと一次巻線とが直列に接続された第1直列回路が接続され、前記第1直列回路の接続点と前記直流電源のいずれか一端に、クランプスイッチとクランプコンデンサとが直列接続され、前記主スイッチと前記クランプスイッチをオンオフする制御部とを備え、
前記制御部は、前記主スイッチをオンオフする第1オン信号と、前記主スイッチがオフしている期間に、前記クランプスイッチをオンオフする第2オン信号を備え、
前記第2オン信号は、前記クランプスイッチがオンした時に形成される前記クランプコンデンサとリーケージインダクタンスの共振回路の共振周期の1/2周期時間経過後に反転して前記クランプコンデンサを充電する方向に流れる共振電流が前記一次巻線の励磁インダクタンスの励磁電流で制限されるオンタイミングに設定され、
前記クランプスイッチがオンした時に前記クランプコンデンサを放電する共振電流と反転した前記共振電流と前記励磁電流で制限される電流が前記クランプコンデンサの充放電を1回だけ行うように前記第2オン信号のオン期間を前記共振周期の1/2以上に設定し、
前記第2オン信号で前記クランプスイッチをオンオフするアクティブクランプフライバックコンバータの制御部を備える制御IC。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2オン信号のオンタイミングを、
前記励磁電流がゼロになる時刻より前記共振周期の1/2から前記共振周期の1.22倍の手前で、且つ、オフタイミングが前記励磁電流がゼロになる時刻の手前で、且つ、前記第2オン信号のオン期間を前記クランプコンデンサと前記一次巻線のリーケージインダクタンスとの共振周期の1/2以上に設定する、請求項6に記載の制御IC。
【請求項8】
前記制御部は、前記励磁インダクタンスの励磁電流がゼロになってから前記主スイッチの電圧振動のボトムを検出するボトム検出手段を備え、
前記ボトム検出手段により検出した主スイッチの電圧最小時刻で、前記主スイッチをオンさせる、請求項6又は7に記載の制御IC。
【請求項9】
前記制御部は、前記励磁電流を検出する励磁電流検出部と、しきい値を生成するしきい値生成部とを備え、
前記励磁電流検出部で検出された前記励磁電流が前記しきい値生成部で生成された前記しきい値になったときに前記第2オン信号のオンタイミングとして、前記第2オン信号を送出する、請求項6又は7に記載の制御IC。
【請求項10】
前記しきい値生成部は、出力電圧に応じて前記しきい値を変更する請求項9に記載の制御IC。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブクランプフライバックコンバータ及び制御IC(Integrated Circuit)に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブクランプフライバックコンバータの代表的な回路構成は特許文献1の
図1に記載され、アクティブクランプスイッチS2の制御方法により、相補的制御(complementary control)と非相補的制御(non-complementary control)が提案されている。
【0003】
相補的制御の動作波形は特許文献1の
図2Aから
図2Dに示されたように、クランプスイッチS2は、主スイッチS1のオフ期間を補うようにオン期間を設定した動作である。
【0004】
主スイッチS1がオフした後、クランプスイッチS2のオン期間では、クランプコンデンサC2とトランスのリーケージインダクタンスLsの共振周期(Tcalk)の共振動作となる。
【0005】
フライバックコンバータでは、主スイッチS1のオフ期間、つまり相補的制御におけるクランプスイッチS2のオン期間は、出力電流が減少すると短くなる。従って、クランプスイッチS2のオン期間がTcalk/2より短くなると、特許文献1の
図2Aから
図2Dに示されたように、共振電流の途中でクランプスイッチS2がオフすることになる。
【0006】
その結果、二次側電流Isecは急峻にオフする。この急峻な電流変化でスイッチS3のリカバリ電流と配線の寄生インダクタンスや浮遊容量により高周波の振動を発生させるという問題点が指摘されている。
【0007】
非相補的制御の動作波形は特許文献1の
図3Aから
図3E、および
図4で示されたように、クランプスイッチS2は、トランスの励磁電流ILmがゼロになる時点でオンする。
【0008】
非相補的制御でもクランプスイッチS2のオン期間で共振周期(Tcalk)の共振動作となる。従来の非相補的制御では、クランプスイッチS2のオン期間は共振電流が流れている期間にクランプスイッチS2をオフする。この場合、相補的制御と同様に二次側電流Isecは急峻にオフする。従って、この急峻な電流変化でスイッチS3のリカバリ電流と配線の寄生インダクタンスや浮遊容量により高周波の振動を発生させるという問題点が指摘されている。
【0009】
特許文献1では、非相補的制御で新たに
図6、
図7に示すような制御が提案されている。クランプスイッチS2のオン期間を共振周期(Tcalk)の半周期より長くする。
【0010】
このように制御することで二次側電流Isecが急峻にオフすることはなくなり、スイッチS3のリカバリ電流と配線の寄生インダクタンスや浮遊容量による高周波の振動を改善することができる。
【0011】
また、励磁電流ILmがゼロになってから、クランプスイッチS2を閉じるので、共振電流が流れている期間に励磁電流は負方向に電流が流れる。共振電流が流れ終わった後は、励磁電流のみを負方向に流すことができるので、コンデンサC1の電荷を引き抜くエネルギー以上に励磁電流ILmを負方向に電流を流すことで主スイッチS1のゼロボルトスイッチが可能となることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1は、トランスの励磁電流がゼロになった時点でクランプスイッチS2をターンオンするため、次のような問題点がある。
【0014】
第1の問題点としては、二次側の整流電流Isecは三角波の電流がゼロになってから共振電流が流れる。このような電流波形が一度ゼロになってから再び電流が流れる2つの電流波形では二次側の同期整流制御が困難となる。また、二次側の電流の実効値も増加するので、損失も悪化する。第2の問題点は、トランスの励磁電流を負方向に流すため、トランスの磁束変化量が増加しトランスのコア損失が増加する。
【0015】
本発明の課題は、トランスの二次側の同期整流化を容易かつ低損失にでき、トランスのコア損失を低減した高効率のアクティブクランプフライバックコンバータ及び制御ICを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るアクティブクランプフライバックコンバータは、直流電源(Vin)の両端に、主スイッチ(QL)と電圧共振コンデンサ(Cv)の第1並列回路と一次巻線(Np)とが直列に接続された第1直列回路が接続され、一次巻線(Np)の両端にはクランプスイッチ(QH)とクランプコンデンサ(Cac)とが直列接続された第2直列回路が接続され、一次巻線(Np)と電磁結合した二次巻線(NS)を有するトランス(T)を備え、トランス(T)は、一次巻線(Np)に励磁インダクタンス(Lm)を有し、一次巻線(Np)にリーケージインダクタンス(Llk)を有するように一次巻線と二次巻線の結合係数が1未満で構成され、二次巻線(Ns)の両端には、ダイオード(Ds)と出力コンデンサ(Co)とが直列接続された第3直列回路が接続される。
【0017】
コンバータは、主スイッチ(QL)をオンオフし、主スイッチ(QL)がオフ期間にクランプスイッチ(QH)をオンオフする制御部(2)を備え、制御部(2)は、主スイッチ(QL)がオフし、トランス(T)の励磁電流が減少しゼロになる時刻を(tz)とし、クランプコンデンサ(Cac)とリーケージインダクタンス(Llk)との共振周期をTcalkとして、クランプスイッチ(QH)の、ターンオン時刻を、時刻(tz)より、0.5×Tcalkから1.22×Tcalk手前で、且つ、ターンオフ時刻を、励磁電流がゼロになる時刻tzより手前で、且つ、オン幅を0.5×Tcalk以上とすることで、トランス(T)のリーケージインダクタンス(Llk)に蓄積されたリークエネルギーを二次側に回生出力するとともに、二次側の電流が1つの電流波形となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、トランスの二次側の同期整流化を容易かつ低損失にでき、且つクランプスイッチのオンによりトランスに負方向の励磁電流を流さないので、トランスのコア損失を低減した高効率のアクティブクランプフライバックコンバータ及び制御ICを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は本発明の第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの構成図である。
【
図2】
図2は本発明の第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの変形例を示す図である。
【
図3】
図3は本発明の第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの第1の動作波形を示す図である。
【
図4】
図4(a)~
図4(d)は本発明の第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの期間T1からT4の電流経路を示す図である。
【
図5】
図5(a)~
図5(c)は本発明の第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの期間T5からT8の電流経路を示す図である。
【
図6】
図6は本発明の第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの第2の動作波形を示す図である。
【
図7】
図7は本発明の第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの第3の動作波形を示す図である。
【
図8】
図8は本発明の第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの第4の動作波形を示す図である。
【
図9】
図9は本発明の第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの第5の動作波形を示す図である。
【
図10】
図10はクランプスイッチのオンタイミングについて説明する図である。
【
図11】
図11は本発明の第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの具体例を示す図である。
【
図16】
図16は本発明の第2の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの構成図である。
【
図17】
図17は本発明の第2の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの第1変形例を示す図である。
【
図18】
図18は本発明の第2の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの第2変形例を示す図である。
【
図19】
図19は本発明の第2の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの第3変形例を示す図である。
【
図20】
図20は本発明の第2の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの第4変形例を示す図である。
【
図21】
図21は本発明の第2の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの第5変形例を示す図である。
【
図22】
図22は本発明の第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータのクランプスイッチのボディダイオードBDHのリカバリ電流が大きい場合の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のいくつかの実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータ(ACF)及び制御ICを、図面を参照しながら詳細に説明する。各実施形態に係るACFの図中の同一または相当部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0021】
制御ICは、アクティブクランプフライバックコンバータの制御部を集積化した回路である。本発明は、いくつかの実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの制御部を備える制御ICにも適用可能である。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの構成図である。第1の実施に係るアクテイブクランプフライバックコンバータは、直流電源Vinの両端に主スイッチQLとトランスTの一次巻線Npとが直列に接続された第1直列回路を備え、一次巻線Npの両端にクランプスイッチQHとクランプコンデンサCacとが直列接続された第2直列回路を備える。
【0023】
主スイッチQLとクランプスイッチQHは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)からなり、それぞれドレインとソース間にボディダイオードBDL,BDHを有する。また、MOSFETはドレイン-ソース間に出力容量Cossを有し、その容量が共振動作に現れる。動作説明の便宜上、
図1では主スイッチQLの両端に電圧共振コンデンサ(Cv)を含めている。電圧共振コンデンサ(Cv)は、MOSFETの出力容量Cossでもよいし、別途コンデンサを追加してもよい。
【0024】
さらに、コンバータは一次巻線Npと電磁結合した二次巻線Ns有するトランスTを備え、トランスTは、一次巻線Npに励磁インダクタンスLmを有し、一次巻線NpにリーケージインダクタンスLlkを有するように一次巻線Npと二次巻線Nsの結合係数が1未満で構成されている。二次巻線Nsの両端には、ダイオードDsと出力コンデンサCoとが直列接続された第3直列回路が接続される。
【0025】
コンバータは、出力コンデンサCoの出力電圧を検出する出力電圧検出部1と、出力電圧検出部1で検出された出力電圧に基づき主スイッチQLをオンオフさせ、主スイッチQLのオフ期間中クランプスイッチQHをオンオフさせる制御部2を備える。
【0026】
制御部2は、主スイッチQLをオンオフする第1オン信号VgsLとクランプスイッチQHをオンオフする第2オン信号VgsHとを備える。
【0027】
第2オン信号VgsHは、クランプスイッチQHがオンした時に形成されるクランプコンデンサCacとリーケージインダクタンスLlkの共振回路の共振周期の1/2周期時間経過後に反転してクランプコンデンサCacを充電する方向に流れる共振電流が一次巻線の励磁インダクタンスの励磁電流で制限されるオンタイミングに設定される。クランプスイッチQHがオンした時にクランプコンデンサCacを放電する共振電流と反転した前記共振電流と励磁電流で制限される電流がクランプコンデンサCacの充放電を1回だけ行うように第2オン信号のオン期間を共振周期の1/2以上に設定する。
【0028】
制御部2は、第2オン信号でクランプスイッチQHがオンした時に形成されるクランプコンデンサCacとリーケージインダクタンスの共振回路の共振周期の1/2周期時間経過後に反転してクランプコンデンサCacを充電する方向に流れる共振電流が一次巻線の励磁インダクタンスの励磁電流で制限されるオンタイミングに設定され、クランプスイッチQHがオンした時にクランプコンデンサCacを放電する共振電流と反転した共振電流と励磁電流で制限される電流がクランプコンデンサCacの充放電を1回だけ行うように第2オン信号のオン期間を共振周期の1/2以上に設定し、第2オン信号でクランプスイッチQHをオンオフする。
【0029】
制御部2は、トランスTの励磁電流ILmが減少しゼロになる時刻をtzとし、クランプコンデンサCacとリーケージインダクタンスLlkとの共振周期をTcalkとして、第2オン信号VgsHのパルス信号のターンオン時刻を、時刻tzより1.22×Tcalk手前以降で、且つ、ターンオフ時刻を、励磁電流がゼロになる時刻tzより手前で、且つ、オン幅を0.5×Tcalk以上としたパルスを生成し、クランプスイッチQHを制御する。
【0030】
より具体的には、制御部2は、第2オン信号のオンタイミングを、励磁電流がゼロになる時刻tzより共振周期Tcalkの1/2から共振周期Tcalkの1.22倍の手前で、且つ、オフタイミングが励磁電流がゼロになる時刻tzより手前で、且つ、第2オン信号のオン期間(オン幅)をクランプコンデンサCacと一次巻線NpのリーケージインダクタンスLlkとの共振周期の1/2以上に設定する。
【0031】
これにより、クランプスイッチQHのオンにより励磁電流を負方向に流すことなく、主スイッチQLのオン期間にリーケージインダクタンスLlkに蓄積されたリークエネルギーを二次側に回生出力することを特徴とする。
【0032】
従来のアクティブクランプ回路を付加したフライバックコンバータは、DCRスナバ回路を付加したフライバックコンバータと比べ、トランスTのリーケージインダクタンスLlkに蓄積されたリークエネルギーを回収し、トランスTの励磁電流を負方向に流すことで主スイッチQLのゼロボルトスイッチを実現し高効率なコンバータが実現できる。
【0033】
そのため、クランプスイッチQHをオンした時にリーケージインダクタンスLlkとクランプコンデンサCacの共振動作による共振電流とトランスTの励磁電流を負方向に流すことを前提にスイッチのタイミングが設定されている。
【0034】
しかしながら、励磁電流を負方向に流すことで励磁電流も増加し、トランスTの磁束変化も増加するので、トランスTの銅損、鉄損が増加する。このトランスTの損失増加分が、主スイッチQLのターンオン時のZVS化によるスイッチング損失低減分より大きい場合は、励磁電流を負方向に流す必要はない。
【0035】
従って、従来のフライバックコンバータで用いられるような、主スイッチQLのターンオンタイミングは、トランスTの励磁電流がゼロになった時点から発生する電圧共振コンデンサCvとトランスTの励磁インダクタンス(Lm+Llk)との電圧共振の最小値で主スイッチQLをオンする(ボトムスイッチング制御)。これにより、従来のACFより安易に尚且つ高効率なコンバータを構成することが可能になる。
【0036】
なお、主スイッチQLのスイッチング損失は、出力容量Cossの小さなスイッチング素子を使用することで小さくできる。従ってGaN―FETなどの出力容量Cossが小さな素子を使用すればボトムスイッチ制御を行う必要がなくなるが、より高効率な制御とするにはボトムスイッチング制御が望ましい。
【0037】
(変形例)
図2は、
図1の本発明の第1の実施形態に係るACFの変形例を示す図である。
図2では、クランプスイッチQHがPチャネルMOSFETであり、クランプスイッチQHのソースが主スイッチQLのソースに接続され、クランプスイッチQHのドレインがクランプコンデンサCacの一端に接続され、クランプコンデンサCacの他端が主スイッチQLのドレインに接続されている。本説明では
図1の構成図で説明を行うが、本発明の適用範囲は
図2のように変形したACFにも適用される。
【0038】
図3は本発明の第1の実施形態に係るACFの第1の動作波形を示す図である。
図3において、Tminは最小スイッチング周期である。VgsLは、主スイッチQLのゲート信号である。VgsHは、クランプスイッチQHのゲート信号である。VQLは主スイッチQLのドレインとソース間の電圧である。IQLは主スイッチQLのドレイン電流である。ILmは励磁インダクタンスLmの励磁電流である。VQHはクランプスイッチQHのドレインとソース間の電圧である。IQHはクランプスイッチQHのドレイン電流である。
【0039】
ICacは、クランプコンデンサCacの電流である。IDsはダイオードDsの電流である。主スイッチQLのオン期間にトランスTの励磁インダクタンスLmに蓄積した励磁電流ILmが、主スイッチQLがオフした後減少しゼロになる時刻を時刻tzとし、クランプコンデンサCacとリーケージインダクタンスLlkとの共振周期はTcalkとする。
【0040】
励磁電流ILmが減少しゼロになる時刻tzは、
図3に示すように時刻t7である。本発明ではVgsHのパルスP2は、ターンオン時刻を励磁電流がゼロになる時刻tzより1.22Tcalk手前以降で、且つターンオフ時刻を励磁電流がゼロになる時刻tzより手前で、且つオン幅0.5Tcalk以上としたパルスを生成することを特徴としている。
【0041】
このため、
図3では、オン時刻をトランスTの励磁電流ILmがゼロになる時刻t7よりTcalk以前の時刻とし、オン期間を0.75Tcalkとすることで、パルスP2のオフがトランスTの励磁電流ILmがゼロになる時刻t7より0.25Tcalk以前になるように設定される。
【0042】
また、パルスP2の生成方法は、励磁電流ILmを検出して、検出した励磁電流ILmが減少中にパルスP2がトランスTの励磁電流ILmがゼロになる時刻t7よりTcalk以前の前記タイミングでターンオンするように予め設定したしきい値ON-thと一致した時点でパスルP2をターンオンさせる。Tcalkはコンバータを設計した段階で決まるので、パスルP2のパルス幅は、励磁電流がゼロになる前で且つ0.5Tcalk以上に設定することで容易に設定できる。
【0043】
また、励磁電流の減少中の傾きの絶対値は出力電圧に比例するので、しきい値ON-thを出力電圧に比例させることで出力電圧が変化してもパルスP2のオンタイミングはトランスTの励磁電流ILmがゼロになる時刻t7よりTcalk以前の前記タイミングで生成できる。
【0044】
次に、
図4(a)~
図4(d)、
図5(a)~
図5(c)を参照しながら、
図3に示す第1の動作波形の期間T1~T8の動作を説明する。
【0045】
まず、
図4(a)を参照して期間T1の動作を説明する。期間T1では、時刻t0において、主スイッチQLがターンオンすることで、Vin正極→Llk→Lm→QL→Vin負極の経路で電流が流れる。
【0046】
このとき、トランスTの励磁インダクタンスLmに励磁電流ILmが流れ、励磁電流ILmは直線的に増加し、励磁インダクタンスLmにエネルギーが蓄積される。リーケージインダクタンスLlkにも励磁インダクタンスLmに流れる励磁電流と同じ電流が流れるため、リーケージインダクタンスLlkにもリークエネルギーが蓄積される。時刻t1において、主スイッチQLがオフする。
【0047】
次に、
図4(b)を参照して期間T2の動作を説明する。期間T2では、時刻t1において、主スイッチQLがオフとなり、トランスTのリーケージインダクタンスLlkに蓄積されたリークエネルギーは、二次側には流れることはできない。このため、リークエネルギーは、Llk→Lm→QH(BDH)→Cac→Llkの経路で電流が流れる。
【0048】
すなわち、クランプスイッチQHのボディダイオードBDHを通してW1の電流が流れ、クランプコンデンサCacをW4の電流で充電する。この時、クランプコンデンサCacの電圧がN・Vo以下であるため、トランスTの励磁インダクタンスLmに蓄積されたエネルギーがクランプコンデンサCacを充電する。
【0049】
次に、
図4(c)を参照して期間T3の動作を説明する。時刻t2はクランプコンデンサCacの電圧がN・Voになった時点であるが、期間T3でも期間T2同様に、リーケージインダクタンスLlkに蓄積されたリークエネルギーが、Llk→Lm→QH(BDH)→Cac→Llkの経路で電流が流れ、クランプスイッチQHのボディダイオードBDHを通してW1の電流が流れ、クランプコンデンサCacをW4の電流で充電する。
【0050】
しかし、時刻t2でクランプコンデンサCacの電圧がN・Voになったことで、トランスTの励磁インダクタンスLmに蓄積されたエネルギーはLm→Npと流れ始め、トランスTの二次巻線からNs→Ds→Co→Nsの経路で電流が流れ始める。
【0051】
従って、励磁インダクタンスLmの電圧はN・Voとなり、Llk→Lm→QH(BDH)→Cac→Llkの経路で流れる電流はTcalkを共振周期とする共振電流となり、時刻t2から0.25Tcalk経過後の時刻t3でゼロとなる。リーケージインダクタンスLlkに蓄積されたリークエネルギーは放電を終了する。このとき、クランプコンデンサCacの電圧は、リーケージインダクタンスLlkに蓄積されたリークエネルギー分だけ、N・Voより高くなり、N・Vo+αとなる。Nは、Np/Nsの巻数比である。
【0052】
次に、
図4(d)を参照して期間T4の動作を説明する。期間T4の動作は通常のフライバックコンバータと同じ動作で、励磁インダクタンスLmに蓄積されたエネルギーはLm→Np→Lmと流れ、二次側ではNs→Ds→Co→Nsと流れ、ダイオード電流IDsに電流W7が流れる。
【0053】
期間T4では、時刻t3において、リーケージインダクタンスLlkに蓄積されたリークエネルギーは、クランプコンデンサCacにすべて充電された状態であり、期間T4ではクランプコンデンサCacの電圧はN・Vo+αのままである。また、一次巻線Np間の電圧はダイオードDsの順方向電圧を無視するとN・Voであるため、主スイッチQLの電圧は、Vin+N・Voとなる。
【0054】
次に、
図5(a)を参照して期間T5の動作を説明する。時刻t4では励磁電流ILmは二次側に電流を放電している。従って、一次巻線Npの逆起電力はN・Voである。時刻t4でクランプスイッチQHをターンオンする。クランプコンデンサCacの電圧はN・Vo+αであり、α分の電位差がLlkに印加される。このため、期間T5では、クランプコンデンサCacとリーケージインダクタンスLlkとの共振動作となり、Cac→QH→Np→Llk→Cacの経路で共振電流W2が流れる。また、励磁インダクタンスLmの励磁電流ILmはLm→Np→Lmと流れている。
【0055】
従って、Npには励磁インダクタンスLmの励磁電流ILmと共振電流が同一方向に流れるので、二次巻線Ns側には励磁インダクタンスLmの放電電流となる二次側電流W7に共振電流が重畳した電流W8がNs→Ds→Co→Nsと流れる。時刻t5において、共振周期Tcalkの半周期経過し、共振電流W2がゼロになる。このとき、クランプコンデンサCacの電圧は、共振動作のため、N・Vo-αとなる。
【0056】
次に、
図5(b)を参照して期間T6,T7の動作を説明する。期間T6では、時刻t5において、共振電流が0から負になり、共振電流はLlk→Np→QH→Cac→Llkと共振電流が期間T4とは逆方向に流れる。励磁インダクタンスLmの電流は期間T5と同じ方向でLm→Np→Lmで流れている。共振電流と励磁電流ILmは逆向きに流れるため、励磁電流が共振電流よりも大きいときは、二次側に励磁電流と共振電流の差に相当する電流が流れる。
【0057】
共振電流が励磁電流と等しくなると一次側には波形W3のようにLlk→Lm→QH→Cac→Llkと励磁電流ILmで制限された電流が流れる。そのため、二次側には電流は流れなくなる。時刻t6でクランプスイッチQHはターンオフするが、W3の電流はクランプスイッチQHのボディダイオードBDHを導通する方向に流れているため、電流経路は変化しない。つまり、クランプスイッチQHのターンオフは励磁電流ILmがゼロになる前にオフすればよい。
【0058】
クランプスイッチQHのターンオン時刻を励磁電流がゼロになる時刻tzより1.22Tcalk手前以降で、且つターンオフ時刻を励磁電流がゼロになる時刻tzより手前で、且つオン幅を0.5Tcalk以上とすれば、期間T6、T7で流れるクランプコンデンサCacを充電する充電電流W6の電荷量Qcは、期間T5で流れるクランプコンデンサCacを放電する電荷量Qdの1/2以下となる。
【0059】
このため、時刻t7におけるクランコンデンサCacの電圧は、N・Vo-αからN・Voの間の電圧N・Vo-α’となる。従って、期間T6、T7で一次巻線Npの電圧は、N・Vo以上にはならないので、励磁電流ILmが二次側へ放電することはなく、二次側の電流が1つの電流波形となる。
【0060】
次に、
図5(c)を参照して期間T8の動作を説明する。時刻t7では、主スイッチQLとクランプスイッチQHはともにオフである。時刻t7で励磁電流ILmはゼロになると、電圧共振コンデンサCvの電圧は、Vin+N・Vo-α´であるため、電圧共振コンデンサCvと直流電源Vin間にあるLm+LlkはN・Vo-α´の電位差がある。
【0061】
このため、電圧共振コンデンサCvとトランス一次巻線のインダクタンスLm+Llkの直列共振動作となり、Cv→Lm→Llk→Vin→Cvの経路で電流が流れ、電圧共振コンデンサCvの電圧を降下させる。電圧共振コンデンサCvとトランス一次巻線のインダクタンスLm+Llkとの共振周期をTcvlmとすると、時刻t7からTcvlm/2経過した時刻t8で電圧共振コンデンサCvの電圧はVin-N・Vo+α´まで降下する。
【0062】
従って、主スイッチQLの電圧はW9の電圧共振波形となる。主スイッチQLのターンオンは、Tminであらかじめ決められた最小スイッチング周期tmin0以降で、主スイッチQLの電圧が最小値となる時刻t8で再び主スイッチQLがターンオンすることでボトムスイッチとなり、スイッチング損失が最小となる。
【0063】
以上、クランプスイッチQHの、ターンオン時刻を励磁電流がゼロになる時刻tzより1.22Tcalk手前以降で、且つターンオフ時刻を励磁電流がゼロになる時刻tzより手前で、且つオン幅を0.5Tcalk以上とすれば、期間T6、T7で流れるクランプコンデンサCacを充電する充電電流W6の電荷量Qcは、期間T5で流れるクランプコンデンサを放電する電荷量Qdの1/2以下となるので、時刻t7におけるクランコンデンサの電圧はN・Vo-αからN・Voの間の電圧N・Vo-α’となる。
【0064】
従って、期間T6、T7で一次巻線Npの電圧はN・Vo以上にはならないので、励磁電流ILmが二次側へ放電することはなく、二次側の電流が1つの電流波形となる。このため、二次側の同期整流化を容易かつ低損失にでき、トランスTのリーケージインダクタンスLlkに蓄積されたリークエネルギーを二次側に回生出力するとともに、尚且つクランプスイッチQHのオンによりトランス(T)に負方向の励磁電流を流さないので、トランスTのコア損失を低減した高効率のACFが実現できる。
【0065】
図6は本発明の第1の実施形態に係るACFの第2の動作波形を示す図である。
図3に示す第1の動作波形とは負荷電流が少なくなった場合の動作波形を示す。負荷電流が小さくなったことで主スイッチQLのオン時間が短くなり、励磁電流ILmの波高値も小さくなることから、主スイッチQLがオフしてから励磁電流がゼロになるまでの時間が短くなる。
【0066】
しかし、クランプスイッチQHのオンタイミングは
図3の説明と同じタイミングでオンオフする。
図3に示す第1の動作波形とは期間T8の部分が異なり、他の対応する期間は
図3に示す第1動作波形の説明と同じ動作となるためで各期間の詳細説明は割愛し、期間T8の期間のみ説明する。
図6に示すように、時刻t7では主スイッチQLとクランプスイッチQHはともにオフである。
【0067】
時刻t7で励磁電流ILmはゼロになると、電圧共振コンデンサCvの電圧は、Vin+N・Vo-α´であるため、電圧共振コンデンサCvと直流電源Vin間にあるLm+LlkはN・Vo-α´の電位差がある。このため、電圧共振コンデンサCvとトランスTの一次巻線NpのインダクタンスLm+Llkの直列共振動作となり、Cv→Lm→Llk→Vin→Cvの経路で電流が流れ、電圧共振コンデンサCvの電圧を降下させる。
【0068】
ここで電圧共振コンデンサCvとトランスTの一次巻線NpのインダクタンスLm+Llkとの共振周期をTcvlmとすると、時刻t5からTcvlm/2経過した時刻で電圧共振コンデンサCvの電圧はVin-N・Vo+α´まで降下する。
【0069】
図6では、主スイッチQLの1回目の最小電圧がt0からtmin0経過していないので、Tminの信号は“L”である。従って1回目の最小電圧では主スイッチQLはターンオンしない。従って、主スイッチQL、クランプスイッチQHがオフのままであるので、共振動作を継続し、主スイッチQLの電圧VQLはW9のように電圧共振波形となる。時刻t7から1.5×Tcvlm経過後の時刻t8で主スイッチQLの電圧VQLは再び最小電圧になる。この時刻ではTminはtmin0経過しているので“H”となっており、主スイッチQLのゲート信号Vgslは、“H”となって、時刻t8で主スイッチQLはターンオンする。
【0070】
図7は本発明の第1の実施形態に係るACFの第3の動作波形を示す図である。
図6に示す第2の動作波形から更に負荷電流が少なくなった場合の動作波形を示す。主スイッチQLのオン時間が更に短くなり、励磁電流ILmの波高値も更に小さくなり、主スイッチQLがオフしてから励磁電流がゼロになるまでの時間が更に短くなる。
【0071】
クランプスイッチQHのオンタイミングは
図3の説明と同じタイミングでオンオフするが、リーケージインダクタンスLlkに蓄積されたリークエネルギーをクランプコンデンサCacに移動する期間T3にクランプスイッチQHがターンオンする。
【0072】
従って、
図6とは期間T3、T4の部分が異なるので、他の対応する期間は
図6に示す第2動作波形の説明と同じ動作となるためで各期間の詳細説明は割愛し、期間T3、T4の期間のみ説明する。
【0073】
図7の動作波形では、リーケージインダクタンスLlkに蓄えられたリークエネルギーがクランプスイッチQHのボディダイオードBDHを通してクランプコンデンサCacへ電流が流れている期間は期間T3となり、クランプスイッチQHのオンタイミングは時刻t3となる。
【0074】
図3、
図6、
図7は、クランプスイッチQHのオン時刻をトランスTの励磁電流ILmがゼロになる時刻t7よりTcalk以前の時刻とし、オン期間を0.75Tcalkとすることで、パルスP2のオフがトランスTの励磁電流ILmがゼロになる時刻t7より0.25Tcalk以前になるように設定される。クランプスイッチのオフ時刻は、共振電流が流れ始める時刻t4から0.5Tcalk後で且つ励磁電流がゼロになるまでの期間T6、T7であればよい。従って、オン時刻は共振電流が流れ始める時刻t4より0.25Tcalk前まで早まっても動作波形は変わらない。
【0075】
以上、
図7においてもクランプスイッチQHの、ターンオン時刻を励磁電流がゼロになる時刻tzより1.22Tcalk手前以降で、且つターンオフ時刻を励磁電流がゼロになる時刻tzより手前で、且つオン幅を0.5Tcalk以上にする。このようにすれば、期間T6、T7で流れるクランプコンデンサCacを充電する充電電流W6の電荷量Qcは、期間T5で流れるクランプコンデンサを放電する電荷量Qdの1/2以下となるので、時刻t7におけるクランコンデンサの電圧はN・Vo-αからN・Voの間の電圧N・Vo-α’となる。
【0076】
従って、期間T6、T7で一次巻線Npの電圧はN・Vo以上にはならないので、励磁電流ILmが二次側へ放電することはなく、二次側の電流が1つの電流波形となり、二次側の同期整流化を容易かつ低損失にでき、トランス(T)のリーケージインダクタンス(Llk)に蓄積されたリークエネルギーを二次側に回生出力するとともに、尚且つクランプスイッチ(QH)のオンによりトランス(T)に負方向の励磁電流を流さないので、トランス(T)のコア損失が低減された高効率のACFが実現できる。
【0077】
クランプスイッチQHのターンオン時刻を励磁電流がゼロになる時刻tzより1.22Tcalk手前以降にすることで、期間T6、T7で流れるクランプコンデンサCacを充電する充電電流W6の電荷量Qcが、期間T5で流れるクランプコンデンサを放電する電荷量Qdの1/2以下となる説明をする。まず、電荷量Qcが電荷量Qdの1/2とすると、時刻t7のクランプコンデンサCacの電圧はN・Voとなる。従って、
図3、
図6、
図7、
図8で期間T2は無くなる。
【0078】
また、共振電流の波高値は主スイッチQLがオフした時の励磁電流ILmと等しいことから、クランプスイッチQHを本発明の範囲で設定した場合、
図7、
図8の動作波形の時がQd/Qcが大きくなる。従って、
図7、
図8の動作波形において電荷量Qcが電荷量Qdの1/2となるクランプスイッチQHのオンタイミングを設定することで、
図3、
図6、
図7、
図8のすべての動作波形で電荷量Qcが電荷量Qdの1/2となる。
【0079】
図8は本発明の第1の実施形態に係るACFの第4の動作波形を示す図である。
図7に示す第3の動作波形から更に負荷電流が少なくなった場合の動作波形を示す。クランプスイッチQHのオンタイミングは、励磁電流がゼロになる手前のTcalk手前に設定されるため、励磁電流ILmの減少する期間は少なくともクランプスイッチQHがオンする期間は必要となる。
【0080】
従って主スイッチQLの最小オン幅を設定し、主スイッチQLのオン幅が最小オン幅以下になる条件では、最小スイッチング周期Tminの周期を長くし、期間T8を長くすることで、主スイッチQLのオンデューティを小さくすることで出力電圧を制御する。
【0081】
クランプスイッチQHのオン時刻は、リークエネルギーがクランプコンデンサCacへ移動する期間T3となっても、クランプスイッチQHのオフ時刻が共振電流が放電を始める時刻t4より0.5Tcalk後の時刻t5から励磁電流がゼロの時刻t7で設定されていればよい。また、オン時刻は共振電流が流れ始める時刻t4より0.25Tcalk前まで早まっても動作波形は変わらない。
【0082】
従って、パルスP2の生成方法は、励磁電流ILmを検出して、検出した励磁電流ILmが減少中にパルスP2が前記タイミングでターンオンするように予め設定したしきい値ON-thと一致した時点でパスルP2をターンオンさせる。パルス幅は、Tcalkがコンバータを設計した段階で決まるので、励磁電流がゼロになる前で且つ0.5Tcalk以上にすればよい。
【0083】
また主スイッチQLの最小オン幅は、パルスP2のオンタイミングがパルスP1のオフから0.25Tcalkまでのデットタイムが取れるように、しきい値ON-thより大きな検出ILm-minに達するまでのON幅で制限すればよい。
【0084】
図9は本発明の第1の実施形態に係るACFの第5の動作波形を示す図である。
図8に示す第4の動作波形から更に負荷電流が少なくなった場合の動作波形でほぼ無負荷状態の動作波形を示す。最小スイッチング周期Tminが予め定められた周期Tmax0に達すると、主スイッチQL、クランプスイッチQHを駆動するパルスP1、パルスP2の出力を停止し、いわゆるバースト制御となる。
【0085】
以上、述べたように、
図3、
図6~
図8のすべての動作モードで、クランプスイッチQHの、ターンオン時刻を励磁電流がゼロになる時刻tzより1.22Tcalk手前以降で、且つターンオフ時刻を励磁電流がゼロになる時刻tzより手前で、且つオン幅を0.5Tcalk以上とすれば、期間T6、T7で流れるクランプコンデンサCacを充電する充電電流W6の電荷量Qcは、期間5で流れるクランプコンデンサを放電する電荷量Qdの1/2以下となる。
【0086】
これにより、時刻t7におけるクランコンデンサの電圧はN・Vo-αからN・Voの間の電圧N・Vo-α’となる。従って、期間T6、T7で一次巻線Npの電圧はN・Vo以上にはならないので、励磁電流ILmが二次側へ放電することはなく、二次側の電流が1つの電流波形となる。従って、二次側の同期整流化を容易かつ低損失にでき、トランスTのリーケージインダクタンスLlkに蓄積されたリークエネルギーを二次側に回生出力するとともに、尚且つクランプスイッチQHのオンによりトランスTに負方向の励磁電流を流さないので、トランスTのコア損失が低減された高効率のACFが実現できる。
【0087】
図10はクランプスイッチQHのオン期間に、Cacを放電する電荷量QdとCacを充電する励磁電流で制限された共振電流の電荷量Qcが2:1になる波形である。
図10の縦軸をI、横軸をtとする。
【0088】
主スイッチQLがオフした時をt=0とし、励磁電流ILmがゼロになる時刻をtzとし、LlkとCacとの共振電流Ireと励磁電流ILmを示す。説明を容易にするために、主スイッチQLがオフする前に流れていた電流は、共振電流の波高値と等しくなるので縦軸は正規化し、横軸の時間軸もTcalk=2πとして正規化してある。
【0089】
従って、共振電流ILmはcos(t)、励磁電流ILmは1-(1/tz)tと表せる。0≦t≦π/2の期間はリーケージインダクタンスに蓄えられたリークエネルギーがクランプスイッチQHのボディダイオードを通してCacを充電する期間である。時刻π/2でクランプスイッチQHがターンオンし、π/2≦t≦3π/2はクランプコンデンサCacに移されたリークエネルギーが共振動作で電流の向きが変わりクランプコンデンサCacを放電する期間である。3π/2≦t≦tzは、再び共振電流が反転し、その後励磁電流ILmで制限された電流とでクランプコンデンサCacを再び充電する期間である。
【0090】
π/2≦t≦3π/2の範囲で、共振電流cos(t)の面積Qdは2である。3π/2≦t≦tzの範囲で共振電流cos(t)と励磁電流ILm(t)とI=0で囲まれた面積Qcは共振電流Ireの近似式Ire’=t-3π/2とILm(t)とI=0で囲まれた面積より僅かに小さい。
【0091】
後者の面積が1になる時刻tzは3π/2+1+√(3π+3)である。従って、アクティブクランプスイッチQHのターンオン時刻がπ+1+√(3π+3)、すなわちtz-1.22Tcalk以降であれば、クランプコンデンサCacの充電電荷量は放電電荷量の1/2以下となる。
【0092】
また、放電方向はクランプスイッチQHをオンする必要があるが、充電方向に電流が流れる期間はクランプスイッチQHのボディダイオードを流れることになるので、クランプスイッチQHのオン幅は1/2以上で且つ、オフタイミングが時刻tz以前であればよい。従って、クランプスイッチQHは、ターンオン時刻を励磁電流がゼロになる時刻tzより1.22Tcalk手前以降で、且つターンオフ時刻を励磁電流がゼロになる時刻tzより手前で、且つオン幅を0.5Tcalk以上とすれはよい。
【0093】
(第1の実施形態の具体例)
図11は本発明の第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータ(ACF)の具体例を示す図である。
図12は、
図3に示す第1の動作波形における
図11の制御部2aの動作波形を示した図である。
図13は、
図6に示す第2の動作波形における
図11の制御部2aの動作波形を示した図である。
図14は、
図7に示す第3の動作波形における
図11の制御部2aの動作波形を示した図である。
図15は、
図8に示す第4の動作波形における
図11の制御部2aの動作波形を示した図である。
【0094】
ここで、
図11の構成について、
図12から
図15を併用して説明する。
図12から
図15において、Vfbは、出力電圧検出部1で出力される誤差信号で、基準電圧と検出した出力電圧の差分(基準電圧―出力電圧)を増幅して電圧である。
【0095】
Tonは、Ton制御でVfbに基づいて生成された信号である。Vnaは、補助巻線Naの電圧を抵抗Ra1、Ra2で分圧した電圧である。Tbtは、ボトム検出部30で、検出した信号である。VLmは、励磁電流検出部33で検出した電圧である。Vth1は、第1しきい値生成部31で生成した電圧である。
【0096】
Vth2は、第2しきい値生成部32で生成した電圧である。ONminは、最小オン時間生成部22で生成した信号である。Tminは、B/S制御部21で生成した信号である。PS1は、L/Sオン信号生成部23で生成した信号である。PS2は、H/Sオン信号生成部34で生成した信号である。その他の符号は、
図3に示す符号と同じであるので、その説明は省略する。
【0097】
図11は、
図1に示す構成に対して、トランスTに補助巻線Naを設けるとともに、制御部2aが異なる。補助巻線Naは、一次巻線Npと二次巻線Nsとに電磁結合している。補助巻線Naの一端には抵抗Ra1の一端とダイオードDaのアノードが接続され、ダイオードDaのカソードとコンデンサCaの一端が接続され、補助巻線Naの他端には抵抗Ra2の一端とコンデンサCaの他端が接続され、コンデンサCaの他端は接地されている。
【0098】
制御部2aは、Ton制御部20、B/S制御部21、最小オン時間生成部22、L/Sオン信号生成部23、第1駆動回路24、ボトム検出部30、第1しきい値生成部31、第2しきい値生成部32、励磁電流検出部33、H/Sオン信号生成部34、第2駆動回路35を備える。
【0099】
抵抗Ra1の他端と抵抗Ra2の他端とは、補助巻線Naの電圧を抵抗分圧した電圧Vnaを検出し、検出された電圧Vnaは、制御部2aのボトム検出部30、第1しきい値生成部31、第2しきい値生成部32、励磁電流検出部33に出力される。
【0100】
Ton制御部20は、出力電圧検出部1で検出された信号Vfbとボトム検出部30の信号Tbtの立ち下がりエッジをトリガとして発生する三角波信号Trにより、主スイッチのオン時間Tonを生成し、L/Sオン信号生成部23とB/S制御部21に、Ton信号を出力する。
【0101】
ボトム検出部30は、出力パルスの立ち下がりエッジがクランプスイッチQHの電圧最小値(ボトム)を検出するように、B/S制御部21の信号がHで、且つ電圧Vnaが立ち下がりゼロクロスとなった時点で、トランスTのインダクタンス(Lm+Llk)と電圧共振コンデンサの共振周期Tcvlmの1/4周期のパルスを出力し、Ton制御部20と最小オン時間生成部22に、Tbt信号を出力する。
【0102】
励磁電流検出部33は、電圧Vnaをもとに励磁電流ILmに比例した励磁電圧VLmを生成し、励磁電圧VLmを最小オン時間生成部22とH/Sオン信号生成部34に出力する。
【0103】
励磁電流検出部33は、以下の動作に基づき一次巻線Npの励磁インダクタンスLmの励磁電流を検出する。インダクタンスに流れる電流Iは、インダクタンスの両端電圧V、インダクタンス値LとするとI=V/L×t(tは時間)で電流が増加する。
【0104】
電圧Vnaは、補助巻線Naの両端電圧に比例した電圧であり、補助巻線Naは一次巻線Npと二次巻線Nsと電磁結合しているので、補助巻線Naの両端電圧は、一次巻線Npの両端電圧と比例関係であり、励磁インダクタンスLmの両端電圧と比例関係である。従って電圧Vnaを積分器で積分することで励磁電流ILmに比例した励磁電圧VLmを検出し、励磁電圧VLmを最小オン時間生成部22とH/Sオン信号生成部へ出力する。
【0105】
第2しきい値生成部32は、電圧Vnaの正電圧をもとに出力電圧に比例した電圧で、且つH/Sオン信号生成部34で生成するオン信号PS2のオンタイミングt4が、励磁電圧VLmがゼロになる時刻tzから0.5Tcalk~1.22Tcalkの手前で検出するように第2しきい値Vth2を出力し、第2しきい値Vth2をH/Sオン信号生成部34に出力する。
【0106】
図12、
図13ではPS2のオン時刻t4、
図14、
図15ではPS2のオン時刻t3が、トランスTの励磁電流ILmがゼロになる時刻t7(tz)よりTcalk以前の時刻によるようにVth2を設定した時の動作波形を示す。
【0107】
第1しきい値生成部31は、電圧Vnaの正電圧をもとに出力電圧に比例した電圧で、且つH/Sオン信号生成部34で生成するオン信号PS2と主スイッチQLを駆動するオン信号Vgsのデットタイムが確保できるように第2しきい値Vth2より高い第1しきい値Vth1を生成する。
【0108】
第1しきい値生成部31、第2しきい値生成部32の各々は、出力電圧に応じてしきい値を変更することができる。
【0109】
デットタイムは0.1Tcalkから0.25Tcalkが望ましいが、0.25Tcalk以上でも、
図12、
図13、
図14の動作時に
図4(D)の期間T4の通常のフライバックコンバータの動作期間が加わるがバースト動作に入る負荷電流値が上昇するが、バースト動作としては問題が無い。従って、第1しきい値生成部31ではデットタイムが確保できる程度にVth2より高い電圧のVth1を生成すればよい。
【0110】
図12から
図15ではデットタイムが0.25TcalkとなるようにVth2を設定した波形となっている。
【0111】
最小オン時間生成部22は、ボトム検出部30で検出された信号Tbtの立ち下がりエッジをトリガとして、励磁電流検出部33で検出された励磁電圧VLmの正の傾きで、励磁電圧VLmが第1しきい値Vth1に達するまでの時間を検出し、ONmin信号をL/Sオン信号生成部23とB/S制御部21へ出力する。
【0112】
B/S制御部21は、Ton制御部20のTon信号と最小オン時間生成部22のONmin信号を比較し、Ton信号がONmin信号より大きい場合は、予め設定された第1時間幅(tmin0)を出力し、Ton信号がONmin信号より小さい場合は、その差分により、予め設定された第1時間幅(tmin0)以上、且つ、予め設定された第2時間幅(tmax0)以下の信号(tminx)を、L/Sオン信号生成部23とボトム検出部30へ出力する。
【0113】
L/Sオン信号生成部23は、Ton制御部20のTon信号と、最小オン時間生成部22のONmin信号と、B/S制御部21のTmin信号を元に、Tmin信号がtmax0より短い場合で且つTon信号がONmin信号より長い時はTon信号をPS1信号として、Tmin信号がtmax0より短い場合で且つTon信号がONmin信号より短い場合はTmin信号をPS1信号として、第1駆動回路24へ出力する。また、Tmin信号がtmax0以上の時はPS1信号を出力しない。
【0114】
第1駆動回路24は、L/Sオン信号生成部23のPS1信号を主スイッチQLへ出力し、主スイッチQLをオンさせる。即ち、ボトム検出部30が励磁インダクタンスの励磁電流がゼロになってから主スイッチQLの電圧振動のボトムを検出し、ボトム検出により検出した主スイッチQLの電圧最小時刻で、主スイッチQLをオンさせる。
【0115】
H/Sオン信号生成部34は、励磁電流検出部33で検出された励磁電圧VLmの傾きが負の時で、励磁電圧VLmが、第2しきい値生成部32の第2しきい値Vth2と一致した時を起点に、予め設定されたパルス幅を第2駆動回路35へ出力する。即ち、励磁電圧VLmが、第2しきい値生成部32の第2しきい値Vth2と一致した時に第2オン信号PS2のオンタイミング信号として、第2オン信号PS2を第2駆動回路35に出力する。
【0116】
予め設定されるパルス幅は0.5Tcalk以上で且つ、オフタイミングがトランスTの励磁電流ILmがゼロになる時刻tz以前になるように設定する。
【0117】
図12、
図13ではPS2のオン時刻t4、
図14、
図15ではPS2のオン時刻t3が、トランスTの励磁電流ILmがゼロになる時刻t7(tz)よりTcalk以前の時刻によるようにVth2を設定したので、パルス幅は、0.5TcalkからTcalkの幅で良いが、0.75Tcalkの時の動作波形を示す。
【0118】
第2駆動回路35は、H/Sオン信号生成部34のPS2信号をクランプスイッチQHへ出力し、クランプスイッチQHをオンさせる。
【0119】
以上、説明したように
図11に示す制御部2aを構成することで、本発明の第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータ(ACF)を実現することが可能である。
【0120】
(第2の実施形態)
図1に示す第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータでは、クランプスイッチQHのボディダイオードBDHのリカバリ電流が大きく、ノイズを悪化させるという問題がある。この問題については、後で
図22を用いて説明する。
【0121】
この問題を解決するために、
図16に示す第2の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータは、第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの構成に、さらに、クランプスイッチQHのボディダイオードBDHのリカバリ電流の影響を抑制する回路を設けた。
【0122】
クランプスイッチQHのソースにはクランプスイッチQHのボディダイオードBDHよりリカバリ特性の良い高速なダイオードD1のアノードが接続され、ダイオードD1のカソードには、クランプコンデンCacサの一端とダイオードD2のアノードが接続される。ダイオードD2のカソードは、クランプスイッチQHのドレインが接続される。
【0123】
このように構成されたアクティブクランプフライバックコンバータによれば、ダイオードD2によりリカバリ電流を阻止し、ダイオードD1によりリカバリ電流を高速に流す。これにより、クランプスイッチQHのボディダイオードBDHのリカバリ電流の影響を抑制することができる。
【0124】
(第1変形例)
図17は本発明の第2の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの第1変形例を示す図である。
図17に示すアクティブクランプフライバックコンバータの第1変形例は、
図16に示すアクティブクランプフライバックコンバータのダイオードD2の代わりに抵抗R2を接続している。
【0125】
このような構成によれば、クランプスイッチQHのボディダイオードBDHのリカバリ電流を抵抗R2に流して低減させる。抵抗R2を用いることで、安価にボディダイオードBDHに流れるリカバリ電流を抑制することができる。
【0126】
(第2変形例)
図18は本発明の第2の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの第2変形例を示す図である。第2変形例のアクティブクランプフライバックコンバータは、クランプスイッチのドレインとクランプコンデンサとの間に抵抗Racを接続している。
【0127】
このような構成によれば、抵抗Racにより、より安価にボディダイオードBDHに流れるリカバリ電流を抑制することができる。
【0128】
(第3変形例)
図19は本発明の第2の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの第3変形例を示す図である。第3変形例のアクティブクランプフライバックコンバータは、
図21に示す構成に対して、さらに、ダイオードD2のカソードとクランプスイッチQHのドレインとの間に抵抗R2を接続している。
【0129】
このような構成によれば、ダイオードD2の少ないリカバリ電流に対しても抵抗R2を入れることで、その小さなリカバリ電流をも抑制し、より低ノイズなコンバータを提供することができる。
【0130】
(第4変形例)
図20は本発明の第2の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの第4変形例を示す図である。
図20は、
図19に示す構成に対して、さらに、ダイオードD1のカソードとダイオードD2のアノードとの間に抵抗R1を接続している。
【0131】
このような構成によれば、ダイオードD1、D2の少ないリカバリ電流に対しても抵抗R1、R2を入れることでダイオードD1,D1の少ないリカバリ電流をも抑制し、より低ノイズなコンバータを提供することができる。
【0132】
(第5変形例)
図21は本発明の第2の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータの第5変形例を示す図である。第5変形例のアクティブクランプフライバックコンバータは、
図16に示す構成に対して、さらに、ダイオードD1のカソードとクランプコンデンサCacとの間に抵抗Racを接続している。
【0133】
このような構成によれば、ダイオードD1、D2の少ないリカバリ電流に対しても抵抗Racを入れることでダイオードD1,D2のリカバリ電流をも抑制し、より低ノイズなコンバータを提供することができる。
【0134】
なお、
図2に示すアクティブクランプフライバックコンバータについても、
図16~
図21に示すリカバリ電流を抑制する回路を適用可能であることは勿論である。
【0135】
図22に本発明の第1の実施形態に係るアクティブクランプフライバックコンバータのクランプスイッチのボディダイオードBDHのリカバリ電流が大きい場合の動作波形図を示す。
図22では、ボディダイオードBDHのリカバリ電流が大きい場合の動作波形を示している。
【0136】
ボディダイオードBDHのリカバリ電流が大きいと、W1の電流がゼロになった後、リカバリ電流W1aが流れる。リカバリ電流W1aはトランスTの2次巻線Nsを介して2次側電流W7にW7aを重畳させるとともに、リーケージインダクタンスLlkにエネルギーを移動する。
【0137】
リカバリ電流W1aがゼロになると、リーケージインダクタンスLlkに移されたエネルギーは、リーケージインダクタンスLlkと電圧共振コンデンサCvとの共振動作によりコンデンサCvを放電させ、その後、電圧共振コンデンサCvを充電する。この充電電流によりリーケージインダクタンスLlkには、クランプコンデンサCacを充電する方向にW1bの電流が流れる。W1bの電流は2次側の電流に重畳され、2次側電流W7にW7bの電流が重畳される。この時、主スイッチQLの電圧に負のサージW10が発生する。サージW10はリーケージインダクタンスLlkと電圧共振コンデンサCvの共振動作であり、高周波の負のサージ電圧を発生させ、ノイズを悪化させる。
【0138】
また、リカバリ電流W1aの影響で流れる、W1aとW1bの電流はクランプコンデンサCac、クランプスイッチQH、トランス1次巻線Np、リーケージインダクタンスLlkのクランプ回路に流れ、その影響で2次側整流電流もW7a、W7bの電流が流れる。この電流もノイズ悪化の原因となる。
【符号の説明】
【0139】
Vin 直流電源
QL 主スイッチ
QH クランプスイッチ
T トランス
Np 一次巻線
Ns 二次巻線
Na 補助巻線
Lm 励磁インダクタンス
Llk リーケージインダクタンス
Cac クランプコンデンサ
Cv 電圧共振コンデンサ
BDL、BDH ボディダイオード
Ds ダイオード
Co 出力コンデンサ
Ca コンデンサ
Ra1、Ra2 抵抗
D1、D2 ダイオード
1 出力電圧検出部
2、2a 制御部
20 Ton制御部
21 B/S制御部
22 最小オン時間生成部
23 L/Sオン信号生成部
24 第1駆動回路
30 ボトム検出部
31 第1しきい値生成部
32 第2しきい値生成部
33 励磁電流検出部
34 H/Sオン信号生成部
35 第2駆動回路