(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181107
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材、磁気共鳴イメージング装置、および磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20231214BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20231214BHJP
G01R 33/385 20060101ALI20231214BHJP
G10K 11/168 20060101ALI20231214BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61B5/055 320
G01N24/00 100Z
G01R33/385
G10K11/168
F16F15/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086750
(22)【出願日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2022094450
(32)【優先日】2022-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中世古 拓己
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】逢坂 竜生
【テーマコード(参考)】
3J048
4C096
5D061
【Fターム(参考)】
3J048AB01
3J048BD04
3J048BD05
3J048EA07
4C096AB41
4C096AD08
4C096CA15
4C096CA17
4C096CA67
4C096CA70
5D061AA06
5D061AA22
5D061BB17
(57)【要約】
【課題】高剛性であって振動抑制及び騒音抑制を向上可能な、磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材を実現すること。
【解決手段】実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材は、繊維材と樹脂材とを含む複合材料により形成された磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材である。磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材において、前記繊維材は、織り込まれた織物構造を形成する。前記織物構造は、前記筒状防音材の側面の少なくとも一周に亘って連続して形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材と樹脂材とを含む複合材料により形成された磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材であって、
前記繊維材は、織り込まれた織物構造を形成し、
前記織物構造は、前記筒状防音材の側面の少なくとも一周に亘って連続して形成されている、
磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材。
【請求項2】
前記繊維材は、複数の組角によって織り込まれた前記織物構造を形成する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材。
【請求項3】
前記織物構造を構成する前記繊維材の前記組角は、当該筒状防音材の長軸方向に対して20°以上70°以下である、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材。
【請求項4】
前記筒状防音材は、前記複合材料を複数の層に亘って積層された積層構造を有し、
前記組角と前記複合材料の密度とは、前記複数の層ごとに設定される、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材。
【請求項5】
前記筒状防音材は、前記複合材料を複数の層に亘って積層された積層構造を有し、
前記複数の層の数は、傾斜磁場コイルによる振動と騒音を抑制可能な積層数である、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材。
【請求項6】
前記繊維材の比重は、前記樹脂材の比重より大きい、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材。
【請求項7】
静磁場を発生する静磁場磁石の内周側に設けられた傾斜磁場コイルと、
前記傾斜磁場コイルの内周側において、繊維材と樹脂材とを含む複合材料により形成された磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材と、
を備え、
前記繊維材は、織り込まれた織物構造を形成し、
前記織物構造は、前記筒状防音材の側面の少なくとも一周に亘って連続して形成されている、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
繊維材に樹脂材を含浸させ、
前記樹脂材を含浸した前記繊維材を、マンドレルの回転軸方向に対する複数の組角で織り込みながら、前記マンドレルの側面に亘って連続して巻き付け、
前記マンドレルに巻き付けられた前記繊維材に含浸された前記樹脂材を硬化し、
前記硬化された前記樹脂材と前記繊維材との複合材料を前記マンドレルから引き抜くこと、
により磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材を製造する磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材、磁気共鳴イメージング装置、および磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置には、傾斜磁場コイルの内周側に筒状の防音材(以下、ボアチューブと呼ぶ)が搭載されている。ボアチューブと称される筒状防音材は、繊維強化樹脂材で成形された構造体であり、MRI装置としての必要な強度を有すると共に傾斜磁場コイルから発生する振動および騒音を抑制する。これらの機能は、例えば、フィラメントワインディング法(以下、FW(Filament Winding)法と呼ぶ)を用いて繊維を連続で複数回積層する、またはあらかじめ織物構造を持ったシート形状の繊維強化樹脂材を筒状に成形することで発揮されている。
【0003】
FW法ではその特性上、繊維を連続体で配置できるために、高剛性な円筒を作製できる。しかしながら、構造体の単位面積当たりの密度(面密度)の増加には限界があるため、遮音性能が不十分である。すなわち、遮音性能を向上させるためには、複数の層を積層させる必要があるため、ボアチューブが重くなるという問題がある。また、織物シートは、面密度を増加させることで遮音性能が向上するが、円筒を作製した際に継ぎ目ができるため、剛性が不十分である。これらのことから、従来の技術では、軽量・高剛性かつ遮音性能を発揮できる筒状防音材の作製は困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、高剛性であって振動抑制及び騒音抑制を向上可能な、磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材を実現することにある。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材は、繊維材と樹脂材とを含む複合材料により形成された磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材である。磁気共鳴イメージング装置用の筒状防音材において、前記繊維材は、織り込まれた織物構造を形成する。前記織物構造は、前記筒状防音材の側面の少なくとも一周に亘って連続して形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るMRI装置の一例を示す図。
【
図2】
図2は、実施形態に係り、ボアチューブにおいて一つの層における織物構造の外観の一例を示す外観図。
【
図3】
図3は、実施形態に係り、
図2に示すボアチューブの一部を拡大した拡大図の一例を示す図。
【
図4】
図4は、比較例に係るボアチューブにおいて一つの層の外観の一例を示す外観図。
【
図5】
図5は、
図4に示す比較例のボアチューブの一部を拡大した拡大図の一例を示す図。
【
図6】
図6は、比較例における複合材料においてガラス繊維とエポキシ樹脂との組成の一例と、実施形態における複合材料においてガラス繊維とエポキシ樹脂との組成の一例と、を示す図。
【
図7】
図7は、本実施形態の第1応用例に係り、第1の繊維材と第2の繊維材とに加えて、第3の繊維材が織り込まれたボアチューブの一部を拡大した拡大図の一例を示す図。
【
図8】
図8は、本実施形態の第2応用例に係り、第1の繊維材と第2の繊維材とに加えて、第3の繊維材が織り込まれたボアチューブの一部を拡大した拡大図の一例を示す図。
【
図9】
図9は、本実施形態に係るボアチューブ104の製造方法の工程の手順の一例を示す図。
【
図10】
図10は、実施形態の実施例に係り、試験片の上面(鉛直方向上向きの面)の一例を示す図。
【
図11】
図11は、実施形態の実施例に係り、試験片に対する試験系の概要の一例を示す図。
【
図12】
図12は、実施形態の実施例に係り、20°の組角を有する試験片と、45°の組角を有する試験片と、70°の組角を有する試験片とに対する試験の解析結果の一例を示す図。
【
図13】
図13は、実施形態の実施例に係り、45°の組角を有する試験片と、20°および70°の組角で織り込まれた試験片とに対する試験の解析結果ヤング率(GPa)の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:以下、MRIと呼ぶ)装置用の筒状防音材、MRI装置、およびMRI装置用の筒状防音材の製造方法について説明する。なお、本実施形態の技術的思想は、PET(Positron Emission Tomography:陽電子放出コンピュータ断層撮像)-MRI装置、SPECT(single photon emission computed tomography:単一光子放出コンピュータ断層撮像)-MRI装置などのMRI装置と複合的な各種モダリティに適用されてもよい。
【0009】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係るMRI装置100の一例を示す図である。
図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石101と、傾斜磁場コイル103と、ボアチューブ104と、傾斜磁場電源105と、寝台107と、寝台制御回路109と、送信回路113と、送信コイル115と、受信コイル117と、受信回路119と、シーケンス制御回路(撮像制御回路、撮像制御部などと呼称されてもよい)121と、システム制御回路(システム制御部)123と、メモリ125と、入力インターフェース127と、ディスプレイ129と、処理回路131と、を備える。
【0010】
静磁場磁石101は、中空の略円筒状に形成された磁石である。静磁場磁石101は、内部の空間に略一様な静磁場を発生する。静磁場磁石101としては、例えば、超伝導磁石等が使用される。
【0011】
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、円筒形の冷却容器の内面側に配置される。すなわち、傾斜磁場コイル103は、静磁場磁石101の内周側に設けられる。傾斜磁場コイル103としては、例えば、能動(自己)遮蔽型傾斜磁場コイル(ASGC:Actively Shielded Gradient Coil)が用いられる。
【0012】
傾斜磁場コイル103は、傾斜磁場電源105から個別に電流供給を受けて、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場コイル103によって発生されるX、Y、Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場および周波数エンコード傾斜磁場を形成する。スライス選択傾斜磁場は、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード傾斜磁場は、空間的位置に応じて磁気共鳴信号(以下、MR(Magnetic Resonance)信号と呼ぶ)の位相を変化させるために利用される。周波数エンコード傾斜磁場は、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。
【0013】
ボアチューブ104は、被検体Pが置かれる空間(ボア111)を形成する。ボアチューブ104は、傾斜磁場コイル103の内部の空間に配置される。ボアチューブ104は、傾斜磁場コイル103の内周側において、繊維材と樹脂材とを含む複合材料により形成された磁気共鳴イメージング装置100用の筒状防音材に相当する。ボアチューブ104には、送信コイル115及び寝台レールが設置される。寝台レールは、被検体Pを載置した天板1071をボア111に挿入するためのレールである。ボアチューブ104の詳細については、後ほど説明する。
【0014】
傾斜磁場電源105は、シーケンス制御回路121の制御により、傾斜磁場コイル103に電流を供給する電源装置である。
【0015】
寝台107は、被検体Pが載置される天板1071を備えた装置である。寝台107は、寝台制御回路109による制御のもと、被検体Pが載置された天板1071を、ボア111内へ挿入する。
【0016】
寝台制御回路109は、寝台107を制御する回路である。寝台制御回路109は、入出力インターフェース17を介した操作者の指示により寝台107を駆動することで、天板1071を長手方向および上下方向へ移動させる。
【0017】
送信回路113は、シーケンス制御回路121の制御により、ラーモア周波数で変調された高周波パルスを送信コイル115に供給する。例えば、送信回路113は、発振部や位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、RF(Radio Frequency)アンプなどを有する。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数のRFパルスを発生する。位相選択部は、発振部によって発生したRFパルスの位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力されたRFパルスの周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変換部から出力されたRFパルスの振幅を例えばsinc関数に従って変調する。RFアンプは、振幅変調部から出力されたRFパルスを増幅して送信コイル115に供給する。
【0018】
送信コイル115は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRFコイルである。送信コイル115は、送信回路113からの出力に応じて、高周波磁場に相当するRFパルスを発生する。送信コイル115は、WB(Whole Body)コイルとも称される。送信コイル115は、例えば、ボアチューブ104に支持される。
【0019】
受信コイル117は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRFコイルである。受信コイル117は、高周波磁場によって被検体Pから放射されるMR信号を受信する。受信コイル117は、受信されたMR信号を受信回路119へ出力する。受信コイル117は、例えば、1以上、典型的には複数のコイルエレメント(以下、複数のコイルと呼ぶ)を有するコイルアレイである。
【0020】
なお、
図1において送信コイル115と受信コイル117とは別個のRFコイルとして記載されているが、送信コイル115と受信コイル117とは、一体化された送受信コイルとして実施されてもよい。送受信コイルは、被検体Pの撮像部位に対応し、例えば、頭部コイルのような局所的な送受信RFコイルである。
【0021】
受信回路119は、シーケンス制御回路121の制御により、受信コイル117から出力されたMR信号に基づいて、デジタルのMR信号(以下、MRデータと呼ぶ)を生成する。具体的には、受信回路119は、受信コイル117から出力されたMR信号に対して、検波、フィルタリングなどの信号処理を施した後、当該信号処理が施されたデータに対してアナログ/デジタル(A/D(Analog to Digital))変換(以下、A/D変換と呼ぶ)して、MRデータを生成する。受信回路119は、生成されたMRデータを、シーケンス制御回路121に出力する。例えば、MRデータは、複数のコイル各々において生成され、複数のコイル各々を識別するタグとともに、シーケンス制御回路121に出力される。
【0022】
シーケンス制御回路121は、処理回路131から出力された撮像プロトコルに従って、傾斜磁場電源105、送信回路113及び受信回路119等を制御し、被検体Pに対する撮像を行う。撮像プロトコルは、検査の種類に応じたパルスシーケンスを有する。撮像プロトコルには、傾斜磁場電源105により傾斜磁場コイル103に供給される電流の大きさ、傾斜磁場電源105により電流が傾斜磁場コイル103に供給されるタイミング、送信回路113により送信コイル115に供給される高周波パルスの大きさや時間幅、送信回路113により送信コイル115に高周波パルスが供給されるタイミング、受信コイル117によりMR信号が受信されるタイミング等が定義されている。シーケンス制御回路121は、傾斜磁場電源105、送信回路113及び受信回路119等を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路119からMRデータを受信すると、受信したMRデータを処理回路131へ転送する。
【0023】
シーケンス制御回路121は、ハードウェア資源として、プロセッサ、ROM(Read-Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ等を有する。「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。シーケンス制御回路121は、シーケンス制御部に相当する。
【0024】
システム制御回路123は、ハードウェア資源としてプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ等を有し、システム制御機能によりMRI装置100を制御する。具体的には、システム制御回路123は、メモリに記憶されたシステム制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開されたシステム制御プログラムに従って本MRI装置100の各回路を制御する。すなわち、システム制御回路123は、MRI装置100の全体制御を行う。
【0025】
例えば、システム制御回路123は、入力インターフェース127を介して操作者から入力された撮像条件に基づいて、撮像プロトコルをメモリ125から読み出す。システム制御回路123は、撮像プロトコルをシーケンス制御回路121に送信し、被検体Pに対する撮像を制御する。システム制御回路123は、例えばプロセッサにより実現される。なお、システム制御回路123は、処理回路131に組み込まれてもよい。このとき、システム制御機能は処理回路131により実行され、処理回路131は、システム制御回路123の代替として機能する。システム制御回路123を実現するプロセッサは、上述と同様な内容なため、説明は省略する。
【0026】
メモリ125は、システム制御回路123において実行されるシステム制御機能に関する各種プログラム、各種撮像プロトコル、撮像プロトコルを規定する複数の撮像パラメータを含む撮像条件等を記憶する。また、メモリ125は、処理回路131により実現される画像生成機能35を、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶する。
【0027】
また、メモリ125は、シーケンス制御回路121により取得された各種データ、画像生成機能35により実施される処理に用いられる各種データ、画像生成機能35により生成されたMR画像などを記憶する。また、メモリ125は、被検体Pに対するスキャンにより取得されたMRデータおよび当該MRデータに基づいてMR画像を再構成するアルゴリズムを記憶する。
【0028】
なお、メモリ125は、不図示の通信インターフェースを介して受信された各種データを記憶してもよい。例えば、メモリ125は、放射線情報システム(RIS:Radiology Information System)等の医療機関内の情報処理システムから受信した被検体Pの検査オーダに関する情報(撮像対象部位、検査目的等)を記憶する。
【0029】
メモリ125は、例えば、ROM、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、HDD(Hard disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、光ディスク等により実現される。また、メモリ125は、CD(Compact Disc)-ROMドライブやDVD(Digital Versatile Disc)ドライブ、フラッシュメモリ等の可搬型記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等で実現されてもよい。
【0030】
入力インターフェース127は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力インターフェース127は、例えば、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース127は、処理回路131に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路131へと出力する。
【0031】
なお、本明細書において入力インターフェース127は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、MRI装置100とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース127の例に含まれる。
【0032】
入力インターフェース127は、ディスプレイ129に表示されたプリスキャン画像に対して、ユーザの指示によりFOVを入力する。具体的には、入力インターフェース127は、ディスプレイ129に表示されたロケータ画像において、ユーザによる範囲の設定指示によりFOVを入力する。また、入力インターフェース127は、検査オーダに基づくユーザの指示により、スキャンに関する各種撮像パラメータやパルスシーケンスの選択指示を入力する。
【0033】
ディスプレイ129は、処理回路131またはシステム制御回路123による制御のもとで、各種のGUI(Graphical User Interface)や、処理回路131によって生成されたMR画像等を表示する。また、ディスプレイ129は、スキャンに関する撮像パラメータ、および画像処理に関する各種情報などを表示する。ディスプレイ129は、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイ、モニタ等の表示デバイスにより実現される。
【0034】
処理回路131は、例えば、上述のプロセッサなどにより実現される。処理回路131は、画像生成機能35などを備える。画像生成機能35を実現する処理回路131は、画像生成部に相当する。画像生成機能35などの各機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ125に記憶されている。例えば、処理回路131は、プログラムをメモリ125から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路131は、画像生成機能35などの各機能を有することとなる。処理回路131は、画像生成機能35により、シーケンス制御回路121から送信されたMRデータに基づいて、MR画像を再構成する。処理回路131は、再構成されたMR画像をメモリ125に格納したり、ディスプレイ129に表示させたりする。
【0035】
上記説明では、「プロセッサ」が各機能に対応するプログラムをメモリ125から読み出して実行する例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサはメモリ125に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、メモリ125にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。また、単一の記憶回路が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路131は個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0036】
以上、MRI装置100の概要について説明した。以下、本実施形態におけるボアチューブ104について説明する。ボアチューブ104は、繊維材と樹脂材とを含む複合材料により形成されたMRI装置100用の筒状の防音材(以下、筒状防音材と呼ぶ)である。当該筒状防音材104において、繊維材は、複数の方向に沿って織り込まれた織物構造を形成する。織物構造は、筒状防音材104の側面の少なくとも一周に亘って連続して形成されている。ここで、複数の方向各々は、ボアチューブ104の長軸方向(すなわちZ方向とも言う)に対する繊維材の角度(組角)の沿った方向である。
【0037】
図2は、ボアチューブ104の製造過程において、1回の積層回数でのマンドレルにおける織物構造の外観の一例を示す外観図である。
図3は、
図2に示すボアチューブ104の一部を拡大した拡大
図EBTの一例を示す図である。
図2および
図3において、左上から右下に至る第1の繊維材FM1は、第1の組角θ1を有する。また、
図2および
図3において、左下から右上に至る第2の繊維材FM2は、第2の組角θ2を有する。第1の繊維材FM1と第2の繊維材FM2とは、比重が異なるガラス繊維であってもよいし、比重が同一のガラス繊維であってもよい。また、第1の繊維材FM1と第2の繊維材FM2とは、異なるガラス繊維であってもよいし、異なる材質(例えば、ガラス繊維と炭素繊維などの各種繊維または樹脂繊維)であってもよい。
【0038】
図2および
図3において、第1の繊維材FM1と第2の繊維材FM2との間には、樹脂材が充填される。樹脂材は、繊維に含浸し、硬化させることが可能な樹脂であれば利用できる。例えば、加熱することにより硬化する熱硬化性樹脂、あるいは加熱することにより軟化する熱可塑性樹脂が利用可能である。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂が好適であるが、エポキシ樹脂やフェノール樹脂なども利用可能である。繊維材(第1の繊維材FM1および第2の繊維材FM2)と樹脂材とを含む複合材料は、例えば、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)である。繊維材がガラス繊維である場合、複合材料は、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastic)に相当する。
【0039】
図2および
図3に示す織物構造を構成する繊維材の組角は、例えば、傾斜磁場コイル103による振動と騒音とを抑制可能な所定の角度である。発明者は、繊維材における繊維方向と振動の伝播方向とが平行に近いほうが、振動及び騒音の抑制効果が高いことを見出した。設計者は、かかる知見に基づき、
図2および
図3に示す第1の組角θ1と第2の組角θ2とは、傾斜磁場コイル103による振動及び騒音の抑制に適するように、任意に設定可能である。組角(例えば、第1の組角θ1および第2の組角θ2)は、例えば、20°以上70°以下の範囲で、ボアチューブ104の製造過程で任意に設定可能である。すなわち、織物構造を構成する繊維材の組角は、当該筒状防音材104の長軸方向に対して20°以上70°以下である。
【0040】
また、複合材料の密度は、傾斜磁場コイル103による振動と騒音とを抑制可能な所定の密度である。すなわち、
図2および
図3に示す第1の繊維材FM1と第2の繊維材FM2と樹脂材とによる複合材料の比重は、傾斜磁場コイル103による振動と騒音とを抑制する程度に対し、設計者が任意に設定可能である。
【0041】
図2および
図3では、1回の積層回数でのマンドレルにおける織物構造が示されているが、ボアチューブ104は、上記複合材料で形成された複数の層を積層する構造を有していてもよい。すなわち、ボアチューブ104に相当する筒状防音材は、複合材料を複数の層に亘って積層された積層構造を有する。このとき、織物構造を構成する繊維材の組角と、複合材料の密度とは、積層構造における複数の層ごとに設定されてもよい。繊維材の含有量の差によって充填される樹脂の含有量が変化する為、結果として、複合材料としての密度を調整することができる。また、積層構造における複数の層の数は、傾斜磁場コイル103による振動と騒音とを抑制可能な積層数であって、任意に設定可能である。
【0042】
また、ボアチューブ104に相当する筒状防音材を軽量化するためには、繊維材の比重は、樹脂材の比重より大きい必要がある。すなわち、第1の繊維材FM1の比重と第2の繊維材FM2の比重とは、ともに樹脂材の比重より大きい。
【0043】
ボアチューブ104の成形(製造方法)としては、例えば、既知の製紐方法が適用可能である。すなわち、繊維材を円筒状かつ織物構造に製作するための手段として、例えば、製紐方法が用いられる。
【0044】
以上に述べた実施形態に係るMRI装置100によれば、静磁場を発生する静磁場磁石101の内周側に設けられた傾斜磁場コイル103の内周側において、繊維材と樹脂材とを含む複合材料により形成された磁気共鳴イメージング装置100用の筒状防音材104において、織物構造は、当該筒状防音材104の側面の少なくとも一周に亘って連続して形成されている。また、本実施形態に係る繊維材と樹脂材とを含む複合材料により形成された磁気共鳴イメージング装置100用の筒状防音材(ボアチューブ)104によれば、織物構造は、当該繊維材が複数の方向に沿って織り込まれ、筒状防音材104の側面の少なくとも一周に亘って連続して形成されている。
【0045】
これらのことから、実施形態に係るMRI装置100およびボアチューブ104によれば、複数の繊維材を連続体かつ任意の組角に配置した織物構造とすることで、ボアチューブ104の厚みを増加させることなく面密度を維持・向上させることができる。すなわち、実施形態に係るMRI装置100およびボアチューブ104によれば、一層あたりで繊維材が織り込まれている織物構造とすることで、一層当たりの繊維材の含有量を増加させることができる。
【0046】
また、実施形態に係るMRI装置100用の筒状防音材104によれば、上記織物構造を構成する繊維材の組角は、傾斜磁場コイル103による振動と騒音とを抑制可能な所定の角度に、任意に調整することができる。これにより、実施形態に係るMRI装置100用の筒状防音材104によれば、厚みを増加させる事なく、必要な強度、騒音抑制機能、および振動抑制機能などを有することができる。
【0047】
また、実施形態に係るMRI装置100用の筒状防音材104によれば、当該複合材料の密度は、当該振動と当該騒音とを抑制可能な所定の密度を有する。また、実施形態に係るMRI装置100用の筒状防音材104によれば、複合材料を複数の層に亘って積層された積層構造を有し、上記組角と上記密度とは、複数の層ごとに予め設定され、複数の層の数は上記振動と上記騒音とを抑制可能な積層数である。また、実施形態に係るMRI装置100用の筒状防音材104によれば、繊維材の比重は、樹脂材の比重より大きい。
【0048】
これらのことから、実施形態に係るMRI装置100用の筒状防音材104によれば、例えば、積層する層ごとに繊維材の含有量や織り込む角度(組角)を変更することが可能となり、MRI装置100およびMRI装置100用の筒状防音材104の仕様に応じて、必要とされる強度、騒音抑制機能、および振動抑制機能などを発揮する新たなボアチューブ104を成形することができる。
【0049】
以上のことから、実施形態に係るボアチューブ104によれば、織物構造を有することにより、厚みを増すことなく、繊維材の含有量を向上させることができる。加えて、実施形態に係るMRI装置100およびボアチューブ104によれば、織物構造において連続体の繊維材を用いることで、従来よりも少ない積層数で目的の騒音抑制機能、および振動抑制機能などを維持しつつ、構造体(ボアチューブ104)を薄肉化することが可能となる。これにより、実施形態に係るMRI装置100用の筒状防音材104によれば、軽量および高剛性化と、振動抑制および騒音抑制とを同時に実現することができる。もっとも、従来技術によるボアチューブ104よりも必ずしも厚みを減らさなければならないものではなく、従来技術よりも厚みを増加させて更なる振動抑制及び騒音抑制を実現することを排除するものではない。
【0050】
以下、本実施形態における効果について、
図4乃至
図6を用いて具体的に説明する。まず、本実施形態と比較される比較例について説明し、当該比較例と対比させて、本実施形態の効果について説明する。
【0051】
図4は、比較例に係るボアチューブCBTにおいて、1回の積層回数でのマンドレルにおける外観の一例を示す外観図である。比較例のボアチューブでは、繊維材(強化繊維)を任意の角度(巻き角)で巻き付けられた構造を有している。
図5は、
図4に示す比較例のボアチューブCBTの一部を拡大した拡大
図ECBTの一例を示す図である。
図4および
図5に示すように、1回の積層回数でのマンドレルにおけるボアチューブCBTにおいて、一定幅の繊維材は、等間隔に配置される。すなわち、1回の積層回数において、繊維材は、
図4に示すように、同一の方向に一定の間隔をあけて、マンドレルに巻き付けられる。換言すれば、マンドレルに巻き付ける繊維の幅には制限があり、隙間なく繊維材をマンドレルに巻き付けるのは困難である。このため、
図4および
図5に示すように、1回の積層回数において、繊維材をマンドレル全体に巻き付けることはできず、繊維材がある部分とない部分が現れる。一方、本実施形態によれば、
図2および
図3に示すように、1回の積層回数でのマンドレルにおいて、繊維材を織物構造に巻くため、1回の積層回数でマンドレル全体に繊維材を配置できる。
【0052】
これらのことから、
図4および
図5に示すように、ボアチューブCBTは、1回の積層回数でのマンドレルにおいて繊維材がある部分(密)と繊維材がない部分(疎)とが混在する構造を有する。このため、比較例としてのボアチューブCBTは、
図4および
図5に示す疎密をなくし、強度、振動抑制機能、および騒音抑制機能を得るために、繊維材を一定数積層する。すなわち、
図4および
図5における粗密をなくすためには、マンドレル全体に繊維が配置されるようにするために、一定数、繊維材を積層する(マンドリルに巻き付ける)必要がある。一定数積層することは、比較例のボアチューブCBTにおいて、重量化に寄与することとなる。
【0053】
図6は、比較例における複合材料においてガラス繊維とエポキシ樹脂との組成CEの一例と、実施形態における複合材料においてガラス繊維とエポキシ樹脂との組成EMの一例と、を示す図である。
図6に示すように、複合材料は、ガラス繊維強化プラスチック(以下、GFRPと呼ぶ)として説明する。
【0054】
図6に示すように、比較例CEにおけるGFRPの密度(g/cm
3)は、2.6×50/100+1.4×50/100=2.0(g/cm
3)となる。一方、本実施形態における織物構造を適用することにより、ガラス繊維の組成が80%となり、エポキシ樹脂の組成が20%になったとすると、実施形態EMにおけるGFRPの密度(g/cm
3)は、2.6×80/100+1.4×20/100=2.36(g/cm
3)となる。これは、織物構造によりガラス繊維の組成の増大に伴って、GFRPの密度が向上することを示している。
【0055】
次に、比較例と本実施形態とにおいて、GFRPを積層した場合について説明する。比較例におけるGFRPを5cm積層した場合の面密度は、10(g/cm2)となる。5cm積層後の比較例におけるガラス繊維とエポキシ樹脂との組成は、厚みが5倍となるため、ガラス繊維:250%、エポキシ樹脂:250%となる。このため、5cm積層後の比較例におけるGFRPの密度は、10.0(g/cm3)となる。
【0056】
一方、本実施形態におけるGFRPの組成で、比較例と同じ面密度を得るためには、すなわち比較例と同様な振動抑制機能および騒音抑制機能を得るためには、積層の厚みは、約4.24cm(10/2.36≒4.24)となる。4.24cm積層後の本実施形態におけるガラス繊維とエポキシ樹脂との組成は、厚みが4.24倍となるため、おおよそガラス繊維:340%、エポキシ樹脂:85%となる。このため、4.24cm積層後の本実施形態におけるGFRPの密度は、7.2(g/cm3)となる。これらのことから、本実施形態によれば、従来のボアチューブに比べて、軽量・高剛性化と振動抑制および騒音抑制とを同時に達成可能な磁気共鳴イメージング装置100用の筒状防音材104を実現することができる。
【0057】
(第1応用例)
図7は、本実施形態の第1応用例として、
図2及び
図3に示す第1の繊維材FM1と第2の繊維材FM2とに加えて、第3の繊維材FM3が織り込まれたボアチューブ104の一部を拡大した拡大
図EABT1の一例を示す図である。
図7に示すように、第3の繊維材FM3に関する第3の組角θ3は、第1の組角θ1と第2の組角θ2と異なる角度となっている。
【0058】
これにより、第1応用例では、径方向に角度の違う第3の繊維材FM3をさらに織り込んだボアチューブ104を成形することができる。すなわち、第1応用例では、実施形態に比べて剛性を向上させ、かつ、傾斜磁場コイル103による振動と騒音とをさらに抑制することができる。本応用例における効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0059】
(第2応用例)
図8は、本実施形態の第2応用例として、
図2及び
図3に示す第1の繊維材FM1と第2の繊維材FM2とに加えて、第3の繊維材FM3が織り込まれたボアチューブ104の一部を拡大した拡大
図EABT2の一例を示す図である。
図8に示すように、第3の繊維材FM3に関する第3の組角θ3は、第1の組角θ1と同様であるが、第3の繊維材FM3の位相は、第1の繊維材FM1の位相および第2の繊維材FM2の位相に対してずらされている。
【0060】
これにより、第2応用例では、径方向に位相が異なる第3の繊維材FM3をさらに織り込んだボアチューブ104を成形することができる。すなわち、第2応用例では、実施形態に比べて剛性を向上させ、かつ、傾斜磁場コイル103による振動と騒音とをさらに抑制することができる。本応用例における効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0061】
(磁気共鳴イメージング装置100用の筒状防音材104の製造方法)
以下、
図9を用いて本実施形態におけるボアチューブ104の製造方法について説明する。
図9は、本実施形態に係るボアチューブ104の製造方法の工程の手順の一例を示す図である。ボアチューブ104に用いる織物構造の製造方法は、製紐方法などを用いて繊維材を織り込みながら、当該繊維材を円筒状に形成(成形(成型))することにある。製紐方法は既知の方法であるため、詳細な説明は省略する。
【0062】
また、以下で説明する樹脂含浸から加熱硬化および脱型までのフローチャートは、一例であり、別の成形方法、手段によって成形することも可能である。すなわち、1.織物構造を持つ繊維材をマンドレルに配置すること、2.樹脂を繊維材に含浸すること、3.樹脂を硬化して形状を成形し、脱型すること、の3つの工程があれば、フローチャートに示す処理過程の手段を問わず本実施形態に示すボアチューブ104は、成形可能である。
【0063】
(ステップS901)
繊維材には、樹脂材を含浸する。樹脂材は、接着剤に相当し、例えば、熱硬化樹脂などが用いられる。樹脂材を含浸した繊維材は、マンドレルと呼ばれる芯金に供給するキャリアに供給される。
【0064】
(ステップS902)
樹脂材を含浸した繊維材は、キャリアにより、マンドレルの回転軸方向に対する複数の組角で織り込みながら、所定の張力でマンドレルの側面の少なくとも一周に亘って連続して巻き付けられる。例えば、マンドレルに対するマンドレル周りのキャリアの相対的な円周方向移動と、マンドレルの軸方向へのマンドレルに対するキャリアの相対的な移動とにより、繊維材は、マンドレルの回転軸方向に対する複数の組角で織り込まれる。このとき、円周方向移動(マンドレルまたはキャリアの回転)の速度と、マンドレルまたはキャリアによるマンドレルの軸方向への移動速度との比、加えてキャリアの数と供給する繊維材の幅により、組角度が決定される。
【0065】
(ステップS903)
マンドレルの回転軸方向に沿った所定の距離に亘って、繊維材の巻き付けが完了すれば(ステップS903のYes)、ステップS904の工程が実行される。マンドレルの回転軸方向に沿った所定の距離に亘って、繊維材の巻き付けが完了しなければ(ステップS903のNo)、ステップS901以降の工程が繰り返される。
【0066】
(ステップS904)
繊維材による層の厚みが所定の厚みに到達すれば(ステップS904のYes)、ステップS905の工程が実行される。繊維材による層の厚みが所定の厚みに到達していなければ(ステップS904のNo)、ステップS901以降の工程が繰り返される。
【0067】
(ステップS905)
マンドレルに巻き付けられた繊維材に含浸した樹脂材が、加熱され、硬化される。これにより、ボアチューブ104の成形が完了する。なお、樹脂材の硬化は、加熱に限定されず、時間経過による硬化など、他の硬化手法が適宜利用可能である。
【0068】
(ステップS906)
加熱硬化された樹脂材と繊維材との複合材料がマンドレルから引き抜かれる。以上の工程によりボアチューブ104が製造される。
【0069】
以上により、実施形態における磁気共鳴イメージング装置100用の筒状防音材104の製造方法によれば、一例として、繊維材に樹脂材を含浸させ、樹脂材を含浸した繊維材を、マンドレルの回転軸方向に対する複数の組角で織り込みながら、所定の張力でマンドレルの側面の少なくとも一周に亘って連続して巻き付け、マンドレルに巻き付けられた繊維材に含浸した樹脂材を加熱硬化し、加熱硬化された樹脂材と繊維材との複合材料をマンドレルから引き抜くこと、により磁気共鳴イメージング装置100用の筒状防音材を製造する。なお、磁気共鳴イメージング装置100用の筒状防音材104の製造方法において樹脂含浸や加熱硬化に関する順序や方法は各製造方法によって任意に選択可能である。
【0070】
本実施形態に係るボアチューブ104の製造方法によれば、繊維材を織り込みながらボアチューブ104が製造されるため、薄肉化することでボアチューブ104の製造時間を短縮することができる。製造されたボアチューブ104の効果については、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0071】
(実施例)
本実施例では、上記実施形態における技術的特徴を有するMRI装置用の筒状防音材に関する試験片の材料、当該試験片の製造手順、当該試験片に対する試験内容、および当該試験片に対する試験の結果について説明する。
【0072】
当該試験片の材料としては、繊維材と樹脂とが用いられる。繊維材は、例えば、ガラス繊維(例えばEガラス(E-glass)繊維)である。また、樹脂は、例えば、エポキシ樹脂である。
【0073】
当該試験片の製造手順は、以下の通りである。ガラス繊維が織物構造に成形される。すなわち、ガラス繊維が平板状に織り込まれることで、平板状の織物構造が成形される。次いで、例えば、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法を用いて、織物構造にエポキシ樹脂を流し込む。具体的には、85kPa程度の真空引きで、成形法の一種であるRTM(Resin Transfer Molding)法を用いて、平板状の織物構造にエポキシ樹脂を含侵する。続いて、エポキシ樹脂を含浸した織物構造が、加熱硬化されて成形される。
【0074】
含浸温度(加熱温度)は、例えば、130℃である。また加熱時間(硬化時間)は、例えば、2時間である。なお、エポキシ樹脂に対する上記真空含浸に関する気圧(85kPa)、含浸温度(130℃)、および加熱時間(2時間)は、一例であって、これに限定されず、試験片の材料に応じて、適宜変更可能である。以上により成形された成形物を、例えば長さ80mmに亘って切り出すことで試験片が製造される。
【0075】
以下、試験片に対する試験内容について説明する。
図10は、試験片TPの上面(鉛直方向上向きの面)の一例を示す図である。
図10に示すように、試験片TPにおける長軸方向の長さは、80mmである。
図10に示すように、試験片TPにおいて長軸方向の一端は、固定端として支持器により、床面から離れて支持される。支持器により試験片TPを支持する位置は、
図10における支持点SPに相当する。試験片TPにおいて長軸方向の他端は、自由端である。試験片TPにおいて、当該他端(自由端)から5mm離れた位置(換言すれば固定端から75mm離れた位置)において、例えば、フォースゲージにより荷重される。試験片TPにおいて荷重される位置は、加振点(荷重点)LPに相当する。試験片TPにおいて固定端から30mmの位置には、試験片TPの加速度の計測に用いられるピックPPPが貼り付けられる。試験片TPにおけるピックPPPの位置は、加速度ピックアップに対応する。なお、
図10における寸法は、一例であって、これに限定されない。
【0076】
図11は、試験片TPに対する試験系の概要の一例を示す図である。
図11に示すように、試験片TPは、フォースゲージFGにより荷重点LPにおいて鉛直下向きに5mm押し下げられる。フォースゲージFGによる鉛直下向き5mmの押し下げは、試験片TPの初期変位に相当する。これにより、
図11に示すように、試験片TPは、水平方向から鉛直方向下向きに撓ませられる。
【0077】
加振点LPにおける初期変位5mmにより試験片TPが撓んだ状態から、当該撓みが解放されると、加速度ピックアップPPPを介して試験片TPの加速度が計測される。計測された加速度およびフォースゲージFGにより測定される押し下げ時の荷重に基づいて、試験片TPのヤング率(GPa)、減衰比ζなどが既知の解析処理により算出される。ヤング率は、試験片TPの剛性の大きさを表す指標である。ヤング率が大きいほど高い剛性を示す。また、減衰比は、振動に対する振動させにくさを表す指標である。減衰比が大きいほど、振動しにくくなる。すなわち、減衰比が大きいほど、伝わった振動に起因する音をより打ち消せることとなる。換言すれば、減衰比が大きいほど、静音性が高い材料というとなる。
【0078】
図12は、20°の組角を有する試験片と、45°の組角を有する試験片と、70°の組角を有する試験片とに対する試験の解析結果の一例を示す図である。
図12に示すように、ヤング率は、組角の角度が大きくなるほど、大きくなっている。このため、
図12に示すように、組角が大きいほど、筒状防音材の剛性は高くなる。また、
図12に示すように、減衰比も、組角の角度が大きくなるほど、大きくなっている。このため、
図12に示すように、組角が大きいほど、筒状防音材の静音性は高くなる。
【0079】
図13は、45°の組角を有する試験片と、20°および70°の組角で織り込まれた試験片とに対する試験の解析結果ヤング率(GPa)の一例を示す図である。20°および70°の組角で織り込まれた試験片における組角の平均は45°である。
図13に示すように、ヤング率は、45°の単一の組角の試験片では10.2GPaであるのに対して、20°および70°の組角で織り込まれた試験片では18.4GPaであって。このため、
図13に示すように、20°および70°の組角で織り込まれた試験片は、45°の単一の組角の試験片より剛性が高くなる。
【0080】
以上説明した少なくとも1つの実施形態等によれば、高剛性であって振動抑制及び騒音抑制を向上可能な、磁気共鳴イメージング装置100用の筒状防音材104を実現することができる。
【0081】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
35 画像生成機能
100 磁気共鳴イメージング装置
101 静磁場磁石
103 傾斜磁場コイル
104 ボアチューブ
105 傾斜磁場電源
107 寝台
109 寝台制御回路
111 ボア
113 送信回路
115 送信コイル
117 受信コイル
119 受信回路
121 シーケンス制御回路
123 システム制御回路
125 メモリ
127 入力インターフェース
129 ディスプレイ
131 処理回路