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特開2023-181135セパレータ、その製造方法および前記セパレータセパレータを含む電気化学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181135
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】セパレータ、その製造方法および前記セパレータセパレータを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/451 20210101AFI20231214BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20231214BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20231214BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20231214BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20231214BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20231214BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/489
H01M50/403 D
H01M50/403 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094940
(22)【出願日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2022-0070383
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ボン
(72)【発明者】
【氏名】チョ キュ ユン
(72)【発明者】
【氏名】クォン テ ウク
(72)【発明者】
【氏名】ベ フン テク
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE21
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱安定性を著しく改善しながら、簡単な工程だけで無機物粒子層がよく脱離してリサイクルが容易なセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子を提供する。
【解決手段】多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面上に形成された無機物粒子層を含むセパレータであって、前記セパレータを常温の水槽に浸漬した後、周波数40kHz、出力1000W、印加時間60秒の条件で超音波処理する際に、下記式(1)で表される無機物粒子層の脱離率が70%以上である、セパレータを提供することができる。
(1)(w-w)/w*100
前記式(1)中、wは超音波処理前のセパレータの重量であり、wは超音波処理後のセパレータの重量であり、wは超音波処理前の無機物粒子層の重量である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一面上に形成された無機物粒子層を含むセパレータとして、
前記セパレータを常温の水槽に浸漬した後、周波数40kHz、出力1000W、印加時間60秒の条件で超音波処理したとき、下記式(1)で表される無機物粒子層の脱離率が70%以上のセパレータ。
(1)(w-w)/w*100
(前記式(1)中、
は超音波処理前のセパレータの重量であり、
は超音波処理後のセパレータの重量であり、
は超音波処理前の無機物粒子層の重量である)
【請求項2】
前記無機物粒子層の脱離率が80%以上であるものである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記無機物粒子層は、無機物粒子の粒度分布において、
(D80-D20)/D50値が0.01~2.0の、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向とするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端を金属治具に噛ませてTMAチャンバーに設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張ったとき、MD方向およびTD方向ともに180℃以上の温度で試験片が破断する耐熱性を有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記セパレータを150℃で60分放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記無機物粒子層は、無機物粒子とシラン化合物の加水分解縮合物を含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記シラン化合物の加水分解縮合物は、弱酸性の雰囲気で加水分解され、縮合が抑制された加水分解縮合物であることを特徴とする、請求項6に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記シラン化合物は下記化学式1で表される化合物である、請求項6に記載のセパレータ。
[化学式1]
Si(OR)
(前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である)
【請求項9】
前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含むものである、請求項8に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むものである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項11】
(a)下記化学式1で表されるシラン化合物、無機物粒子、酸の成分および水を撹拌してコーティングスラリーを製造するステップと、
(b)前記製造されたコーティングスラリーを多孔質基材の少なくとも一面上に塗布し、乾燥させて無機物粒子層を設けるステップと、を含む、セパレータの製造方法。[化学式1]
Si(OR)
(前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である)
【請求項12】
(a)コーティングスラリーは、下記(a1)~(a3)ステップを含めて製造されるものである、請求項11に記載のセパレータの製造方法。
(a1)前記化学式1で表されるシラン化合物および酸の成分を含む酸の水溶液を設けるステップと、
(a2)無機物粒子、酸の成分および水を撹拌して無機物スラリーを調製するステップと、
(a3)前記設けられた無機スラリーおよび酸の水溶液を撹拌してコーティングスラリーを製造するステップと、
【請求項13】
前記(a3)ステップは、pH4超過pH7以下の弱酸性の雰囲気で行われるものである、請求項12に記載のセパレータの製造方法。
【請求項14】
前記(a2)ステップで調製した無機スラリーのpHと前記(a1)ステップで設けられた酸の水溶液のpHの差の絶対値が1以下である、請求項12に記載のセパレータの製造方法。
【請求項15】
前記(a2)ステップにおいて、無機物粒子、酸の成分および水を50~500rpmで1時間以上撹拌して無機スラリーを設けることである、請求項12に記載のセパレータの製造方法。
【請求項16】
前記(a)ステップは、pH4超過pH7以下の弱酸性の雰囲気で行われるものである、請求項11に記載のセパレータの製造方法。
【請求項17】
前記シラン化合物の極性官能基が、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基から選ばれるいずれか1つまたは2つ以上を含むものである、請求項11に記載のセパレータの製造方法。
【請求項18】
前記酸の成分は、二酸化炭素、または酢酸および乳酸から選ばれるいずれか1つまたは2つを含む有機酸、である、請求項11に記載のセパレータの製造方法。
【請求項19】
前記コーティングスラリー中の化学式1のシラン化合物と無機物粒子の重量比が0.1~30:99.9~70である、請求項11に記載のセパレータの製造方法。
【請求項20】
前記(b)ステップ以後、
(c)前記無機物粒子層が設けられた多孔質基材をエージングするステップと、をさらに含む、請求項11に記載のセパレータの製造方法。
【請求項21】
前記多孔質基材は、表面を親水性表面処理して設けられたものである、請求項11に記載のセパレータの製造方法。
【請求項22】
前記親水性表面処理は、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含んで行われたものである、請求項21に記載のセパレータの製造方法。
【請求項23】
請求項1~10のいずれか一項に記載のセパレータを含む、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、著しく改善された高耐熱性を確保できるとともに、無機物粒子層がよく脱離してリサイクルが容易なセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
セパレータ(separator)の熱安定性を改善するために、無機物粒子とバインダー高分子のスラリー組成物を前記ポリオレフィン多孔質基材にコーティングし、多孔質基材の一面または両面に無機物粒子が互いに連結して形成され、無機物粒子間に気孔が形成される多孔質無機物粒子層を設けた有機-無機複合多孔質セパレータが提案された。
【0003】
最近、環境にやさしい技術に対する関心が急速に高まっており、様々な産業分野で廃製品を活用したリサイクル技術に対する開発も継続的に行われている。前記有機・無機複合多孔質セパレータの場合、チッピング(chipping)および/またはペレット化(pelletizing)してリサイクルする際、ポリオレフィン多孔質基材の表面に設けられた無機物粒子層により、最終リサイクル製品での物性を予測することが難しく、新材ポリオレフィン材料に比べて物性が低下し、樹脂混合物の高粘度性により押出機内の高負荷が発生するという問題が存在する。
【0004】
したがって、前記有機・無機複合多孔質セパレータは、リサイクル時に表面の無機物粒子層を脱離させることが望ましいが、現在開発された無機物粒子層を脱離させる工程は複雑で、費用と時間がかかる。特に、有機溶媒などで満たされた処理槽で無機物粒子層を脱離させる場合、有機溶媒が残留して後日リサイクルされた製品の物性に悪影響を及ぼす可能性があり、人体損傷および環境汚染などの問題もある。
【0005】
これにより、熱安定性を大幅に改善しながら、簡単な工程だけで無機物粒子層がよく脱離してリサイクルが容易なセパレータの開発が急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の問題点を解決するために、本発明は、熱安定性を著しく改善しながら、簡単な工程だけで無機物粒子層がよく脱離してリサイクルが容易なセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための一手段として、一実施形態によれば、多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一面上に形成された無機物粒子層を含むセパレータであって、前記セパレータを常温の水槽に浸漬した後、周波数40kHz、出力1000W、印加時間60秒の条件で超音波処理すると、下記式(1)で表される無機物粒子層の脱離率が70%以上である、セパレータを提供することができる。
【0008】
(1)(w-w)/w*100
前記式(1)中、
は超音波処理前のセパレータの重量であり、
は超音波処理後のセパレータの重量であり、
は超音波処理前の鉱物粒子層の重量である。
【0009】
また、一実施形態では、前記無機物粒子層の脱離率が80%以上であることができる。
【0010】
また、一実施形態において、前記無機物粒子層は、無機物粒子の粒度分布において、(D80-D20)/D50の値が0.01~2.0であることができる。
【0011】
また、一実施形態において、前記セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグに噛ませてTMAチャンバーに設置し、毎分5℃に昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張ったとき、MD方向およびTD方向ともに180℃以上の温度で試験片が破断する耐熱性を有する、セパレータを提供することができる。
【0012】
また、一実施形態で前記セパレータを150℃で60分放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下である場合がある。
【0013】
また、一実施形態において、前記無機物粒子層は、無機物粒子とシラン化合物の加水分解縮合物を含むことができる。
【0014】
また、一実施形態において、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、弱酸性の雰囲気で加水分解され、縮合が抑制された加水分解縮合物であることができる。
【0015】
また、一実施形態において、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、数平均分子量4000g/mol以下であることができる。
【0016】
また、一実施形態において、前記シラン化合物は、下記化学式1で表される化合物であることができる。
【0017】
[化学式1]
Si(OR)
【0018】
前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。
【0019】
また、一実施形態において、前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0020】
また、一実施形態において、前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むことができる。
【0021】
また、上述の課題を達成するための他の一手段として、一実施形態によれば、(a)下記式1で表されるシラン化合物、無機物粒子、酸の成分および水を撹拌してコーティングスラリーを製造するステップと、(b)前記製造されたコーティングスラリーを多孔質基材の少なくとも一面上に塗布し、乾燥して無機物粒子層を設けるステップと、を含む、セパレータの製造方法を提供することができる。
【0022】
[化学式1]
Si(OR)
【0023】
前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。
【0024】
また、一実施形態において、前記(a)コーティングスラリーは、下記(a1)~(a3)ステップを含めて製造することができる。
【0025】
(a1)前記化学式1で表されるシラン化合物および酸の成分を含む酸の水溶液を設けるステップと、
(a2)無機物粒子、酸の成分および水を撹拌して無機物スラリーを調製するステップと、
(a3)前記設けられた無機スラリーおよび酸の水溶液を撹拌してコーティングスラリーを製造するステップと、
また、一実施形態において、前記(a3)ステップは、pH4超過pH7以下の弱酸性の雰囲気で行うことができる。
【0026】
また、一実施形態では、前記(a2)ステップで調製した無機スラリーのpHと前記(a1)ステップで調製した酸の水溶液のpHの差の絶対値が1以下であってもよい。
【0027】
また、一実施形態では、前記(a2)ステップで無機物粒子、酸の成分および水を50~500rpmで1時間以上撹拌して無機スラリーを調製することができる。
【0028】
また、一実施形態において、前記(a)ステップは、pH4超過pH7以下の弱酸性の雰囲気で行うことができる。
【0029】
また、一実施形態において、前記シラン化合物の極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0030】
また、一実施形態において、前記酸の成分は、二酸化炭素、または、酢酸および乳酸から選択されるいずれか1つまたは2つを含む有機酸、であってもよい。
【0031】
また、一実施形態では、前記コーティングスラリー中の化学式1のシラン化合物と無機物粒子の重量比が0.1~30:99.9~70であってもよい。
【0032】
また、一実施形態において、前記(b)ステップの後、(c)前記無機物粒子層が設けられた多孔質基材をエージングするステップと、をさらに含むセパレータの製造方法を提供することができる。
【0033】
また、一実施形態において、前記多孔質基材は、表面を親水性表面処理して設けることができる。
【0034】
また、一実施形態において、前記親水性表面処理は、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち、一つ以上を含んで実施することができる。
【0035】
また、上述の課題を達成するための他の一手段として、一実施形態によれば、前述の実施形態のセパレータを含む電気化学素子を提供することができる。
【発明の効果】
【0036】
一実施形態によると、シラン化合物を弱酸性の雰囲気で加水分解し、縮合させて得られた縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物を無機物粒子層のバインダーとして活用することで、熱安定性を著しく改善しながらも、簡単な超音波処理ステップだけでも無機物粒子層がよく脱離してリサイクルが容易なセパレータを提供することができる。一実施形態におけるシラン化合物の加水分解縮合物は、特定のpH範囲および精密なpH制御ステップを通じて得られるもので、加水分解反応に比べて縮合反応が極端に抑制され、低分子量を有する。
【0037】
一実施形態において、本発明のセパレータは、前記セパレータを常温の水槽に浸漬させた後、周波数40kHz、出力1000W、印加時間60秒の条件で超音波(sonication)処理時、下記式(1)で表される無機物粒子層の脱離率が70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、100%以下、または前記数値の間の値であることができる。
【0038】
(1)(w-w)/w*100
前記式(1)中、
は超音波処理前のセパレータの重量であり、
は超音波処理後のセパレータの重量であり、
は超音波処理前の無機物粒子層の重量である。
【0039】
具体的には、前記無機物粒子層の脱離率は、無機物粒子層の厚さ、無機物粒子の粒径、多孔質基材の気孔率および厚さ、無機物粒子層に使用されたバインダーの種類、分子量、比率などによって複合的に影響を受けると理解され、特に超音波処理で水分子の振動と回転によって無機物粒子層を極微細加工する場合、無機物粒子層が水槽内で脱離する程度は、無機物粒子層を連結して固定するバインダーの種類、分子量によって大きな影響を受けると推測される。
【0040】
本発明の一実施形態によると、特定のpH範囲および精密なpH制御ステップを通じて、加水分解反応に比べて縮合反応が極端に抑制され、低分子量を持ち、極性基の分率が高いシラン化合物の加水分解縮合物を無機物粒子層のバインダーとして提供することができ、これにより、著しく改善された高耐熱性を確保できるとともに、簡単なステップでも無機物粒子層がよく脱離してリサイクルが著しく容易な効果を付与することができる。
【0041】
一実施形態としては、前記セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグ(metal jig)に噛ませてTMAチャンバー(Thermomechanical Analyzer、Model: SDTA840(Mettler Toledo))に設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張るとき、MD方向およびTD方向ともに180℃以上、190℃以上、200℃以上、または210℃以上の温度で試験片が破断する耐熱性を持つセパレータを提供することができる。
【0042】
一実施形態で前記セパレータを150℃で60分放置した後、測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下である場合がある。
【0043】
一実施形態において、前記無機物粒子層の脱離率値の範囲を満足する場合であれば、前記物性を提供するための手段は特に限定されない。しかし、前記物性を付与する一手段として、例えば、下記化学式1で表されるシラン化合物を加水分解されるが縮合は抑制される条件で縮合し、これを無機物粒子と混合したコーティングスラリーをポリエチレンなどの多孔質基材の少なくとも一面に塗布して、無機物粒子が互いに連結して気孔が形成される無機物粒子層を有するセパレータを製造することによって達成することができる。
【0044】
[化学式1]
Si(OR)
【0045】
前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。
【0046】
一実施形態として、前記物性を有するセパレータを提供できる手段としては、予めpHが調整された酸の水溶液および無機物スラリーを撹拌して、前記化学式1のシラン化合物が加水分解されるが、縮合が抑制される条件で安定的に縮合するように維持し、制御したコーティングスラリーを前記多孔質基材の少なくとも一面上にコーティングして乾燥することが挙げられ、これにより、前記物性を満足するセパレータを製造することができる。
【0047】
また、本発明の一実施形態によれば、前記実施形態から得られたセパレータを含む電気化学素子を提供することができる。
【0048】
好ましい一実施形態としては、特定の粒度分布を有する無機物粒子を前記縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物と共に無機物粒子層に適用する場合、無機物粒子層内の無機物粒子がシラン化合物の加水分解縮合物によって均一に充填されることにより、後日超音波処理時に無機物粒子層の脱離率を著しく向上させることができる。一実施形態として、前記無機物粒子の粒度分布において、(D80-D20)/D50の値は、0.01以上、0.03以上、0.05以上、0.1以上、0.2以上、2.0以下、1.8以下、1.5以下、1.3以下、1.2以下、または前記数値の間の値であることができる。非限定的な例として、前記(D80-D20)/D50の値は0.01~2.0、または好ましくは0.01~1.8、またはさらに好ましくは0.01~1.5である。無機物粒子が前記範囲の粒度分布を満足する場合、前記縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物と均等に連結され、固定されて均一に充填され、超音波処理時に無機物粒子層の脱離率がさらに向上するので好ましい。
【0049】
好ましい一実施形態では、前記多孔質基材の表面をコロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含む表面処理で、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基などの極性官能基を持つように改質することができる。これにより、無機物粒子層を連結して、固定する前記シラン化合物の加水分解縮合物により、前記表面処理された多孔質基材の表面の官能基と水素結合または化学結合が可能であるため、従来の有機高分子系バインダーを使用しなくても、多孔質基材と無機物粒子層の結合力が著しく優れ、高温でも熱収縮率を著しく低減し、耐熱性が著しく向上する効果を付与することができる。
【0050】
好ましい一実施形態では、無機物粒子層を形成した後、エージングステップを行うことにより、多孔質基材と無機物粒子層との間の接着力を増加させ、高温での熱収縮率を低減することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、添付された図面を含む具体的な実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下の具体例は一つの参考であるだけで、本発明がこれに限定されるものではなく、複数の形態で実施することができる。
【0052】
また、特に定義されていない限り、すべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明において説明に使用される用語は、特定の実施形態を効果的に説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0053】
また、明細書および添付された特許請求の範囲に使用される単数形は、文脈から特別な指示がない限り、複数形も含むことを意図することができる。
【0054】
また、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含めることができることを意味する。
【0055】
本明細書で「D50」とは、体積基準の積算分率で50%に相当する無機物粒子の粒径を意味する。「D80」とは、体積基準の積算分率で80%に相当する無機物粒子の粒径を意味する。「D20」とは、体積基準の積算分率で20%に相当する無機物粒子の粒径を意味する。前記D50、D80、D20は、測定対象の無機物粒子に対してKS A ISO 13320-1規格に基づいて試験片を採取し、Beckman coulter社のMultisizer 4e Coulter counterを利用して分析された粒度分布結果から導き出すことができる。
【0056】
本明細書で「常温」とは、20±5℃の温度を意味することができる。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層を含むセパレータであって、前記セパレータを常温の水槽に浸漬した後、周波数40kHz、出力1000W、印加時間60秒の条件で超音波処理時、下記式(1)で表される無機物粒子層の脱離率値が70%以上のセパレータを提供することができる。
【0058】
(1)(w-w)/w*100
前記式(1)中、
は超音波処理前のセパレータの重量であり、超音波処理を行わないセパレータの重量を測定して得られる。
【0059】
は超音波処理後のセパレータの重量であり、超音波処理を行ったセパレータの重量を測定して得られる。
【0060】
は超音波処理前の無機物粒子層の重量で、超音波処理前のセパレータの重量wから多孔質基材の重量を引いたものから得られる。前記多孔質基材の重量は、多孔質基材の単位面積当たりの重量が分かる場合は、前記試験片の面積100cmと多孔質基材の単位面積当たりの重量を乗じて導出し、分からない場合は、前記超音波処理前のセパレータを一辺が10cmの正方形に切断した後、80℃以上の高温水槽に浸漬した後、超音波処理とスクラブ処理を同時に5分以上行い、水槽内の水が濁らない程度まで洗浄し、アセトンなどの有機溶媒で満たされた処理槽に30分以上浸漬して洗浄し、無機物コーティング層を脱脂した後、多孔質基材を80℃のオーブンで1時間以上十分に乾燥させた後、重量を測定する。
【0061】
一実施形態で前記超音波処理は、(株)韓国超音波社の超音波工具(sonication horn)を使用して行うことができる。
【0062】
具体的には、前記無機物粒子層の脱離率値は、無機物粒子層の厚さ、無機物粒子の粒径、多孔質基材の気孔率および厚さ、無機物粒子層に使用されたバインダーの種類、分子量、比率などによって複合的に影響を受けると理解され、特に超音波処理で水分子の振動と回転によって無機物粒子層を極微細加工する場合、無機物粒子層が水槽内で脱離される程度は、無機物粒子層を連結して固定するバインダーの種類、分子量によって大きな影響を受けると推測される。
【0063】
従来の無機物粒子層のバインダーとして通常使用されるポリビニルアルコールなどの水溶性高分子バインダーの場合、水に対する溶解度が比較的高いが、分子量が高いか、極性基の分率が少ない理由などで無機物粒子層を脱離させるためには、スクラビング(scrubbing)ステップや、他の脱離ステップが付加されるなど、複雑なステップが必要であり、費用および時間が無駄になるという欠点がある。すなわち、従来の水溶性高分子バインダーで採用した無機物粒子層に超音波処理を行う場合、前記無機物粒子層の脱離がうまく行われず、脱離率の値が低くなると予想される。
【0064】
本発明の一実施形態によると、特定のpH範囲および精密なpH制御ステップを通じて、加水分解反応に比べて縮合反応が極端に抑制されて低分子量を持ち、比較的極性基の分率が高いシラン化合物の加水分解縮合物を無機物粒子層のバインダーとして提供することができ、これにより、著しく改善された高耐熱性と同時にリサイクルが容易な効果を付与することができる。
【0065】
具体的な一実施形態として、前記無機物粒子層の脱離率値は、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、100%以下、または前記数値の間の値であることができる。より具体的な一実施形態として、前記無機物粒子層の脱離率値は70~100%、好ましくは80~100%、さらに好ましくは90~100%または95~100%であることができる。
【0066】
一実施形態としては、前記セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグ(metal jig)に噛ませてTMAチャンバー(Thermomechanical Analyzer,Model: SDTA840(Mettler Toledo))に設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張る時、MD方向およびTD方向ともに180℃以上、190℃以上、200℃以上、または210℃以上の温度で試験片が破断する耐熱性を持つセパレータを提供することができる。
【0067】
一実施形態で前記セパレータを150℃で60分放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下、2.5%以下または2%以下であることができる。
【0068】
一実施形態において、前記無機物粒子層の脱離率値の範囲を満足する場合であれば、前記物性を付与するための手段は特に限定されない。しかし、前記物性を付与する一手段として、例えば、下記化学式1で表されるシラン化合物を加水分解されるが、縮合が抑制される条件で縮合し、これを無機物粒子と混合したスラリーをポリエチレンなどの多孔質基材の少なくとも一面に塗布して、無機物粒子が互いに連結して気孔が形成される無機物粒子層を有するセパレータを製造することによって達成することができる。
【0069】
[化学式1]
Si(OR)
【0070】
前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0071】
一実施形態としては、前記物性を有するセパレータを提供できる手段としては、予めpHが調整された酸の水溶液および無機物スラリーを撹拌して、前記化学式1のシラン化合物が加水分解されるが、縮合が抑制される条件で安定的に縮合するように維持し、制御したコーティングスラリーを前記多孔質基材の少なくとも一面上にコーティングして乾燥することを挙げることができ、これにより、前記物性を満足するセパレータを製造することができる。
【0072】
以下、本発明の実施形態によるセパレータの各構成について説明する。
【0073】
一実施形態によれば、前記多孔質基材としてポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの共重合体を主成分とするポリオレフィン系多孔質基材を使用することができ、これらからなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の樹脂からなるフィルムまたはシートであることができる。
【0074】
前記多孔質基材の厚さは特に限定しないが、例えば、1μm以上、3μm以上、5μm以上、100μm以下、50μm以下、30μm以下、20μm以下、または前記数値の間の値であることができる。多孔質基材の厚さは、非限定的な例として1~100μm、好ましくは5~50μm、さらに好ましくは5~30μmであることができる。前記多孔質基材は、一例によれば、延伸して製造された多孔質高分子基材であることができる。
【0075】
好ましい一実施形態では、前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むものとすることができる。前記極性官能基の非限定的な例としては、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基などを挙げることができる。前記極性官能基は、一実施形態では、親水性表面処理で導入されたものであってもよく、前記親水性表面処理は、一実施形態では、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含んで実施することができる。前記多孔質基材の表面に設けられた極性官能基は、後述するシラン化合物の加水分解縮合物の極性官能基と水素結合または化学結合して、多孔質基材と無機物粒子層の接着力をより向上させることができ、高温での熱収縮率をより低減させて熱安定性を向上させることができるので好ましい。
【0076】
一実施形態において、無機物粒子層は、無機物粒子とシラン化合物の加水分解縮合物を含むことができ、無機物粒子がシラン化合物の加水分解縮合物によって連結、固定されて気孔を形成した多孔質無機物粒子層であることができる。一実施形態において、前記無機物粒子層は、多孔質基材の少なくとも一面に設けられ、多孔質基材の全体表面を基準にして面積分率60%以上、70%以上、80%以上または90%以上を占めることができる。
【0077】
一実施形態において、前記無機物粒子層は、多孔質基材の一面、好ましくは両面にコーティングすることができ、前記多孔質基材の両面に無機物粒子層がコーティングされる場合、一面と他の一面にコーティングされた無機物粒子層の厚さは、互いに同じか、異なることができる。特に限定されるものではないが、一実施形態で一面にコーティングされる無機物粒子層の厚さは、0μm超過、0.3μm以上、0.5μm以上、3μm以下、2.5μm以下、2μm以下、1.5μm以下、1μm以下、または前記数値の間の値であることができる。具体的な一実施形態において、前記無機物粒子層の厚さは、0μm超過2.5μm以下、または0μm超過2μm以下、好ましくは0μm超過1.5μm以下、より好ましくは0μm超過1μm以下であることができる。
【0078】
一実施形態として、前記無機物粒子は、この技術分野に使用する無機物粒子であれば限定しない。非限定的な例として、前記無機物粒子は、金属水酸化物、金属酸化物、金属窒化物および金属炭化物のうちの一つまたは二つ以上を含むことができ、より具体的には、SiO、SiC、MgO、Y、Al、CeO、CaO、ZnO、SrTiO、ZrO、TiOおよびAlO(OH)のうちの一つまたは二つ以上を含むことができる。電池の安定性などの観点から、無機物粒子は、好ましくはベーマイト(bohemite)のような金属水酸化物粒子であることができる。
【0079】
前記金属水酸化物は特に限定しないが、非限定的な例として、ベーマイト(boehmite)、水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)および水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)のいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。
【0080】
一実施形態として、前記ベーマイトを使用する場合、例えば比表面積(BET)は10m/g以上または15m/g以上とすることができる。
【0081】
好ましい一実施形態としては、特定の粒度分布を有する無機物粒子と後述する縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物を無機物粒子層に一緒に適用する場合、無機物粒子層内の無機物粒子がシラン化合物の加水分解縮合物によって均一に充填されることにより、後日超音波処理時に無機物粒子層の脱離率を著しく向上させることができる。一実施形態として前記無機物粒子の粒度分布において、(D80-D20)/D50の値は、0.01以上、0.03以上、0.05以上、0.1以上、0.2以上、2.0以下、1.8以下、1.5以下、1.3以下、1.2以下、または前記数値の間の値であることができる。非限定的な例として、前記(D80-D20)/D50の値は0.01~2.0、または好ましくは0.01~1.8、またはさらに好ましくは0.01~1.5である。無機物粒子が前記範囲の粒度分布を満足する場合、前記縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物と均等に連結、固定されて均一に充填され、超音波処理時に無機物粒子層の脱離率がさらに向上するので好ましい。
【0082】
前記粒度分布を満足する限り特に限定されないが、前記無機物粒子のD50値の非限定的な例としては、0μm超過、0.1μm以上、5μm以下、3μm以下、1μm以下、または前記数値の間の値であることができる。具体的な実施形態として、前記無機物粒子のD50値は0.1~5μm、好ましくは0.1~3μm、さらに好ましくは0.1~1μmであることができる。
【0083】
次の一実施形態として、前記無機物粒子を連結し、固定して気孔が形成された無機物粒子層を形成するバインダーを説明する。一実施形態として前記バインダーは、下記化学式1で表されるシラン化合物を加水分解・縮合し、分子量が非常に抑制された低分子量の加水分解縮合物であることができる。
【0084】
[化学式1]
Si(OR)
【0085】
前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。好ましい一実施形態では、前記化学式1のシラン化合物において、bが3であることを利用して縮合した低分子量の縮合物を使用することが、結合力などの点で好ましい場合がある。
【0086】
前記シラン化合物の極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基の中から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含む、またはこれらと反応する反応性基であることができる。本発明の一実施形態によれば、前記極性官能基は、アミノ基(amino group)であることができる。
【0087】
前記化学式1を満たすシラン化合物の非限定的な例としては、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)および(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン((3-Glycidyloxypropyl)trimethoxysilane)から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の混合物であってもよいが、特に限定されない。
【0088】
一実施形態において、シラン化合物の加水分解縮合物は、シラン化合物が加水分解されると同時に縮合が抑制された条件で調製されるため、低分子量を有する。一実施形態において、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、弱酸性の雰囲気で加水分解され、縮合が抑制された加水分解縮合物であることができ、弱酸性の雰囲気で縮合反応が抑制され、非常に小さな分子量で調製することができる。一実施形態において、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、例えば、数平均分子量4000g/mol以下、2000g/mol以下または1000g/mol以下の低分子量を有することができる。
【0089】
一方、通常、前記化学式1のシラン化合物を無機酸等の強酸により縮合する場合、4000g/molを超える数平均分子量を有するポリシロキサン縮合物が生成するが、本発明の一実施形態の縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解物は、それ自体の加水分解物、モノマー形態の未反応物および二量体加水分解縮合物を主成分として、微量の三量体加水分解縮合物または四量体加水分解縮合物を含む加水分解縮合物であることに違いがある。
【0090】
すなわち、一実施形態において、シラン化合物の加水分解縮合物は、前記シラン化合物の加水分解物、モノマー、加水分解され縮合された二量体、三量体、四量体および五量体などの多量体から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0091】
前記のような低分子量のシラン化合物の加水分解縮合物は、posESI FT-ICRMS(メーカー:Bruker、モデル名:Solarix 2XR)を使用してpositive ESI-MS分析時に検出される検出ピークから確認することができる。すなわち、前記positive ESI-MS分析の結果、加水分解物であるシランオール、縮合物である二量体が主に観測され、微量の三量体および四量体ピークが観測され、五量体以上のピークは通常のスラリーを製造する期間である1日または2日以内にはほとんど検出されません。しかし、無機酸である塩酸を使用して24時間加水分解・縮合する場合、別途添付はしないが、高分子量のピークが複雑に観測される。すなわち、これらの結果から、前記一実施形態の弱酸性の雰囲気で設けられたシラン化合物の加水分解縮合物と、通常の無機酸などで製造した加水分解縮合物とは異なる形態の物質が得られることが確認できる。
【0092】
一実施形態によるシラン化合物の加水分解縮合物は、特定のpH範囲および精密なpH制御ステップを通じて加水分解反応に比べて縮合反応が極端に抑制された条件で得られ、低分子量を持ち、通常無機酸などによって高分子量に縮合されて設けられるポリシロキサン縮合物に比べて同一な重量で多くの極性官能基の分率を確保することができる。これにより、著しく向上した高耐熱性と同時にリサイクルが容易な効果を付与することができる。
【0093】
次に、前記セパレータの製造方法の実施形態を説明する。
【0094】
前記物性を付与するための手段としては、前記物性を有するセパレータを提供することであれば限定されないが、一実施形態として、(a)下記化学式1で表されるシラン化合物、無機物粒子、酸の成分および水を撹拌してコーティングスラリーを製造するステップと、(b)前記製造されたコーティングスラリーを多孔質基材の少なくとも一面上に塗布し、乾燥して無機物粒子層を設けるステップと、を含むセパレータの製造方法を提供することができる。
【0095】
[化学式1]
Si(OR)
【0096】
前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。
【0097】
前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか一つまたは二つ以上を含む、またはこれらと反応する反応性基であることができる。
【0098】
以下、前記一実施形態によるセパレータの製造方法の各ステップについて説明する。前記各シラン化合物、無機物粒子、多孔質基材についての説明は前述と同様であるため、便宜上省略する。
【0099】
加水分解反応に対して縮合反応を抑制するための一手段として、一実施形態によれば、前記(a)ステップは、pH4超過pH7以下の弱酸性の雰囲気で行うことができる。
【0100】
前記(a)コーティングスラリーを製造するステップにおいて、コーティングスラリーを構成する成分を投入する方法や、順序については特に限定されないが、ベーマイトのような無機物粒子は水と撹拌すると塩基性を帯びるので、本発明で目的とするシラン化合物の加水分解縮合物を得るためには、pH制御ステップをより精密に行うことが好ましい。好ましい一実施形態において、前記(a)コーティングスラリーは、下記(a1)~(a3)ステップを含めて製造されるものとすることができる。
【0101】
(a1)前記化学式1で表されるシラン化合物および酸の成分を含む酸の水溶液を設けるステップと、
(a2)無機物粒子、酸の成分および水を撹拌して無機物スラリーを設けるステップと、
(a3)前記設けられた無機スラリーおよび酸の水溶液を撹拌してコーティングスラリーを製造するステップと、
前記(a1)ステップで酸の成分および前記化学式1で表されるシラン化合物を含む酸の水溶液を設け、(a2)ステップで酸の成分を含む無機物スラリーをそれぞれ設けて、pHを予め調整することにより、以下の効果が期待でき、好ましい。無機物粒子は水と撹拌すると塩基性を帯びるので、シラン化合物、無機物粒子および酸の成分を同時に撹拌する場合、前記シラン化合物が弱酸性の雰囲気で加水分解・縮合する間にpHが変動する恐れがある。pHの変動により、目的とする低分子量のシラン化合物の加水分解縮合物を確保できない恐れがあり、無機物粒子間に凝集が発生する恐れがあるので好ましくない。前記一実施形態によれば、無機物スラリーのpHとシラン化合物を含む酸の水溶液のpHを予め調整することにより、その後の(a3)ステップで前記無機物スラリーと酸の水溶液撹拌時に急激なpHの変動を防止し、シラン化合物が縮合反応を抑制することができる。これにより、低分子量を持ち、比較的極性基の分率が高いシラン化合物の加水分解縮合物を無機物粒子層のバインダーとして提供することができ、著しく向上した高耐熱性を確保できるとともに、リサイクルが容易な効果を付与することができる。
【0102】
一実施形態として、前記(a2)ステップで設けられた無機物スラリーのpHと前記(a1)ステップで設けられた酸の水溶液のpHの差の絶対値が1以下であることができる。前記の観点から好ましい一実施形態として、前記pHの差の絶対値は、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下または0.1以下であることができ、より好ましい一実施形態として、前記pHの差の絶対値は0であることができる。
【0103】
一実施形態として、前記(a1)酸の水溶液を設けるステップは、pH4超過pH7以下の弱酸性の雰囲気で行うことができる。pH4以下の場合や、塩基性の雰囲気(pH7超過)である場合や、硫酸または塩酸などの無機酸を用いる場合、加水分解・縮合反応時には、目的とする低分子量のシラン化合物の加水分解縮合物を確保できない恐れがあり、これはセパレータの耐熱性やリサイクル性が低下する問題を引き起こす可能性があるため好ましくない。一実施形態において、前記弱酸性の雰囲気は、pH4超過、pH4.5以上、pH7以下、pH6.5以下、pH6以下、pH5.5以下、pH5以下、pH5以下、または前記数値の間の値であることができる。具体的な一実施形態において、前記弱酸性の雰囲気は、pH4超過pH7以下またはpH4.5以上pH7以下であることができ、好ましくは、前記弱酸性の雰囲気は、pH4.5以上pH6.5以下またはpH4.5以上pH5.5以下であることができる。
【0104】
一実施形態として前記(a2)無機物スラリーを設けるステップは、前記(a1)ステップで設けられた酸の水溶液のpHの差の絶対値が1以下であれば十分であるが、その後の製造される(a3)コーティングスラリーを製造するステップでのpHを目的とする加水分解されつつも縮合が抑制された条件を満たすために、以下のpH条件が好ましい場合がある。好ましい一実施形態として、前記(a2)無機物スラリーを設けるステップは、pH4超過pH7以下の弱酸性の雰囲気で行うことができる。前記(a2)無機物スラリーを設ける際にpH4以下であったり、pH7を超えると、その後の(a3)コーティングスラリーを製造するステップで目的とするシラン化合物が加水分解されつつも縮合が抑制された条件を満たさない恐れがある。
【0105】
一実施形態によると、前記(a2)ステップで無機物粒子を水に投入すると、塩基性を帯びてpH変化を引き起こすことができ、固形分含量が高くスラリー流動性が比較的低く、酸の成分を投入しても無機物スラリーのpHが不均一になることがある。これを考慮して、好ましい一実施形態として前記(a2)ステップで設けられる無機物スラリーは、前記(a2)ステップで無機物粒子、酸の成分および水を50~500rpmまたは50~300rpmで1時間以上撹拌することでpHが均一になるように調製することができる。前記好ましい一実施形態によれば、pHが均一に制御された無機物スラリーを後日(a3)コーティングスラリーの製造時に提供し、本発明の実施形態によるシラン化合物の加水分解縮合物を確保するためのpH条件をより精密に維持、制御することができるので好ましい。すなわち、前記一実施形態で設けられた(a2)無機物スラリーは、均一な酸性度を持つことができる。
【0106】
一実施形態において前記(a3)コーティングスラリーを製造するステップは、pH4超過pH7以下の弱酸性の雰囲気で行うことができる。pH4以下の場合や、塩基性の雰囲気(pH7超過)である場合や、硫酸または塩酸などの無機酸を用いる場合、加水分解・縮合反応時には、製造されたコーティングスラリーの分散性が低下し、無機物粒子間に凝集が発生して平均粒径が増加する恐れがあり、目的とする低分子量のシラン化合物の加水分解縮合物を確保できない恐れがあり、これはセパレータの耐熱性やリサイクル性が低下する問題を引き起こす可能性があるため、好ましくない。一実施形態において、前記弱酸性の雰囲気は、pH4超過、pH4.5以上、pH7以下、pH6.5以下、pH6以下、pH5.5以下、pH5以下、pH5以下、または前記数値の間の値であることができる。具体的な一実施形態において、前記弱酸性の雰囲気は、pH4超過pH7以下またはpH4.5以上pH7以下であることができ、好ましくは、前記弱酸性の雰囲気は、pH4.5以上pH6.5以下またはpH4.5以上pH5.5以下であることができる。
【0107】
前記実施形態におけるシラン化合物の加水分解縮合物は、特定のpH範囲および精密なpH制御ステップを通じて得られるものであり、加水分解反応に比べて縮合反応が極端に抑制されて低分子量を持ち、これにより、シラン化合物を弱酸性の雰囲気で加水分解し、縮合して得られた縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物を無機物粒子層のバインダーとして活用することで、熱安定性を著しく改善しながらも、簡単な超音波処理ステップだけでリサイクルが容易なセパレータを提供することができる。
【0108】
一実施形態では、前記酸の成分は、二酸化炭素、または酢酸および乳酸から選択される1つまたは2つを含む有機酸、であってもよい。二酸化炭素は、無機スラリーまたは酸の水溶液に投入され、撹拌またはバブリングされた場合、炭酸になることができる。前記酸の成分を使用する場合、本発明の効果をよりよく達成することができ、縮合反応を前記pH範囲で容易に抑制することができるので、より好ましいが、本発明の物性を有するセパレータが提供される限り、これに限定されるものではない。
【0109】
一実施形態では、前記コーティングスラリー中の化学式1のシラン化合物と無機物粒子の重量比が0.1~30:99.9~70、または1~20:99~80、または5~20:95~80であってもよいが、特に限定されるものではない。
【0110】
前記(a1)で設けられる酸の水溶液、前記(a2)で設けられる無機物スラリーおよび(a3)で製造されるコーティングスラリーは、当該技術分野で通用する他の成分または添加剤をさらに含むことができ、組成において特に限定されない。
【0111】
本発明の一実施形態によれば、(b)ステップにより、多孔質基材の少なくとも一面上に無機物粒子層を設けることができる。一実施形態において前記コーティングスラリーを塗布する方法としては、当該技術分野で公知の通常の方法を制限なく全て適用することができ、前記無機物粒子層を形成するための乾燥は特に制限されないが、100℃以下、または30~60℃で乾燥することができる。
【0112】
好ましい一実施形態では、前記(b)ステップの後、(c)前記無機物粒子層が設けられた多孔質基材をエージングするステップをさらに含むことができる。具体的には、前記エージングは、50~150℃、好ましくは65℃~120℃で行うことができ、エージング時間は2時間~24時間、好ましくは10~20時間行うことができる。より好ましくは70~120℃の温度範囲で10~15時間行うことができる。前記エージングを通じて、多孔質基材と無機物粒子層間の接着力を増加させ、高温収縮特性を向上させることができる。
【0113】
すなわち、本発明の一実施形態による二次電池セパレータの製造方法は、前記エージングステップをさらに含むことにより、多孔質基材および無機物粒子層間の安定的で強い化学結合を通じて高温収縮特性がさらに改善され、熱安定性が向上したセパレータの製造方法を提供することができる。また、多孔質基材および無機物粒子層間の接着力がさらに向上することができる。
【0114】
また、他の一実施形態としては、前記セパレータを含む二次電池を提供することができ、前記二次電池の非限定的な一例としては、リチウム二次電池を挙げることができる。前記リチウム二次電池は公知であり、その構成も公知であるため、本発明では具体的に説明しない。一実施形態において、リチウム二次電池は、正極と負極の間に前記セパレータを含むものであることができる。このとき、前記正極および負極は、通常リチウム二次電池に使用されるものであれば、限定されることなく使用することができる。
【0115】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下の実施例および比較例は、本発明をより詳細に説明するための一例であって、本発明が以下の実施例および比較例によって限定されるものではない。
【0116】
まず、セパレータの物性測定、評価方法について説明する。
【0117】
[無機物粒子層の脱離率]
無機物粒子層の脱離率は、一辺が10cmの正方形に切断されたセパレータ試験片を常温の水槽に浸漬した後、超音波処理前、後の結果から求め、次の式(1)で求める。
【0118】
(1)(w-w)/w*100
前記式(1)のwは超音波処理前のセパレータの重量であり、超音波処理が行われていないセパレータの重量を測定して求める。
【0119】
は超音波処理後のセパレータの重量であり、超音波処理を行ったセパレータの重量を測定して求める。
【0120】
は超音波処理前の無機物粒子層の重量で、超音波処理前のセパレータの重量wから多孔質基材の重量を引いたものから得られる。前記多孔質基材の重量は、多孔質基材の単位面積当たりの重量が分かる場合は、前記試験片の面積100cmと多孔質基材の単位面積当たりの重量を乗じて導出し、分からない場合は、前記超音波処理前のセパレータを一辺が10cmの正方形に切断した後、80℃以上の高温水槽に浸漬した後、超音波処理とスクラブ処理を同時に5分以上行い、水槽内の水が濁らない程度まで洗浄し、アセトンなどの有機溶媒で満たされた処理槽に30分以上浸漬して洗浄し、無機物コーティング層を完全に脱離した後、多孔質基材を80℃のオーブンで1時間以上十分に乾燥させた後、重量を測定する。
【0121】
超音波処理は、セパレータの試験片を常温の水槽に浸漬した後、周波数40kHz、出力1000W、印加時間60秒の条件で行い、(株)韓国超音波社の超音波工具(sonication horn)を使用する。
【0122】
[熱収縮率]
セパレータの熱収縮率はASTM D 1204に基づいて測定するが、次の方法で測定することができる。セパレータに一辺が10cmの正方形に2cm間隔で格子点を表示する。この正方形の一辺は幅方向(TD,Transverse Direction)、もう一辺は機械方向(MD,Machine Direction)である。試験片を正中に位置させ、試験片の上下に紙を5枚ずつ置き、紙の四辺をテープで包む。紙で包んだ試験片を150℃、熱風乾燥オーブンに60分間放置する。その後、試験片を取り出し、セパレータをカメラで観察し、下記数学式1の縦方向収縮率および下記数学式2の横方向収縮率を計算する。
【0123】
数学式1
長さ方向収縮率(%)=(加熱前の長さ方向長さ-加熱後の長さ方向長さ)×100/加熱前の長さ方向長さ
【0124】
数学式2
幅方向収縮率(%)=(加熱前の幅方向の長さ-加熱後の幅方向の長さ)×100/加熱前の幅方向の長さ
【0125】
[TMA溶融破断温度]
セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグ(metal jig)に噛ませてTMAチャンバー(Thermomechanical Analyzer、Model: SDTA840(Mettler Toledo)に設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張ったとき、それぞれのMD方向およびTD方向で試験片が破断する温度、TMA溶融破断温度を導出する。
【0126】
[電池抵抗]
下記の条件で電池を製造し、J-pulse法で放電抵抗を測定する。
【0127】
電池の製造
アノード活物質としてLiCoOを94重量%、融着剤としてポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene fluoride)を2.5重量%、導電剤としてカーボンブラック(Carbon-black)を3.5重量%、溶媒であるNMP(N-methyl-2-pyrrolidone)に添加し、撹拌して均一なアノードスラリーを製造する。前記製造されたアノードスラリーを30μm厚のアルミニウム箔の上にコーティング、乾燥および圧着して合計150μm厚のアノードを製造する。負極活物質として人工黒鉛を95重量%、融着剤としてTgが-52℃のアクリル系ラテックス(Acrylic latex)を3重量%、増粘剤としてCMC(Carboxymethyl cellulose)を2重量%、溶媒である水に添加して撹拌して均一な負極スラリーを製造する。前記製造された負極スラリーを20 μm厚の銅箔の上にコーティング、乾燥および圧着して合計 150 μm厚の負極を製造する。前記製造された正極、負極およびセパレータを前記正極および負極の間に積層(stacking)する方式でポーチ型電池を組み立てた後、正極、負極およびセパレータを互いに融着させるために組み立てられた電池を熱プレス機で80℃、1MPaで熱融着する。その後、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)が体積比30:50:20で含まれる溶液に1Mのリチウムヘキサフロロホスフェート(LiPF)が溶解された電解液を注入した後、密封して容量2Ahの二次電池を製造する。
【0128】
{実施例}
[実施例1]
コーティングスラリーの製造
蒸留水100重量部に(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane、APTMS)3.2重量部を添加し、乳酸(lactic acid)を投入し、4時間撹拌してpH4超過pH5以下の酸の水溶液を製造した。ベーマイト(γ-AlO(OH) 、boehmite)(D20:0.13μm、D50:0.15μm、D80:0.22μm、(D80-D20)/D50:0.6)を水に分散し、乳酸を投入した後、300rpmで6時間撹拌してpH4超過pH5以下の酸性度が均一な固形分37wt%の無機物スラリーを製造した。前記調製した無機物スラリーおよび酸の水溶液を4時間撹拌し、濃度を調整してAPTMSとベーマイトの重量比が10:90になるように調整した固形分24wt%(APTMSとベーマイト含有量基準)のpH4超過pH5以下のコーティングスラリーを製造した。
【0129】
多孔質基材の前処理
多孔質基材として9μm厚のポリエチレン多孔質フィルム(気孔率:52%、ガリー透過率:82sec./100cc、引張強度MD:2040kgf/cm/TD:1860kgf/cm)の両面をコロナ放電処理(電力密度2W/mm)して表面極性基を導入し、この時、コロナ放電処理は速度3~20mpm(meter per minute)とした。
【0130】
セパレータの製造
前記前処理された多孔質基材の両面に製造されたコーティングスラリーを塗布し、乾燥して両面にそれぞれ1.5μmの平均厚さで無機物粒子層を形成した。無機物粒子層が設けられた多孔質基材を100℃で10時間エージングするステップを経てセパレータを製造した。
【0131】
[実施例2]
酸の水溶液および無機スラリーの製造時に乳酸の代わりに酢酸を使用した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0132】
[実施例3]
無機スラリーの製造時に実施例1のベーマイトの代わりにベーマイト(D20:0.15μm、D50:0.24μm、D80:0.4μm、(D80-D20)/D50:0.06)を同一含有量で添加して無機スラリーを製造した以外は、実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0133】
[実施例4]
無機スラリー製造時に実施例1のベーマイトの代わりにベーマイト(D20:0.21μm、D50:0.5μm、D80:1.22μm、(D80-D20)/D50:2.02)を同一含有量で添加して無機スラリーを製造した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0134】
[実施例5]
コーティングスラリーを製造する際、蒸留水に(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane、APTMS)とベーマイト(γ-AlO(OH)、boehmite)(D20:0.13μm、D50:0.15μm、D80:0.22μm、(D80-D20)/D50:0.6)の重量比が10:90となるように一度に投入し、続いて乳酸を投入して固形分24wt%(APTMSとベーマイト含有量基準)であるpH4超過pH5以下のコーティングスラリーを製造した。
【0135】
[比較例1]
コーティングスラリーの製造時に、APTMSの代わりに同じ含有量で溶融温度が220℃で、鹸化度が99%のポリビニルアルコール(PVA、固形分の含量6重量%)とTが-52℃のアクリルラテックス(ZEON、BM900B、固形分含量20重量%)を1:5重量比で添加した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0136】
[比較例2]
酸の水溶液または無機スラリーの製造時に酸の成分として硫酸を使用し、pH3.5で加水分解・縮合した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0137】
[比較例3]
スラリー製造時に別途酸の成分を投入せず、pH8.2でスラリーを製造した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0138】
[評価例] セパレータの評価
前記各実施例と比較例のセパレータの物性評価結果を下記表1に示した。
【0139】
【表1】
【0140】
前記表1で、本発明の実施例は、無機物粒子層の脱離率値が高く、高温での熱収縮率が低く、TMA溶融破断温度が高く、耐熱性が著しく改善されるとともに、簡単な超音波処理で無機物粒子層の脱離がよく行われ、リサイクルが容易であった。一方、本発明に属さない比較例は、無機物粒子層の脱離がうまく行われず、耐熱性も比較的劣っていた。
【0141】
一方、実施例4は、比較例に比べて耐熱性およびリサイクル性が共に優れていた。ただし、実施例4は実施例1、3と耐熱性は類似していたが、(D80-D20)/D50の値が2.02で本発明で好ましい実施例に限定している無機物粒子の粒度分布を満足せず、実施例1、3に比べて比較的無機物粒子層の脱離がうまく行われなかった。
【0142】
実施例5の場合、無機物粒子とシラン化合物を水に一度に投入した後、撹拌してpHを安定的に維持できなかった結果、比較例に比べて耐熱性およびリサイクル性が共に優れていたが、実施例1~3と比較して比較的無機物粒子層の脱離がうまく行われなかった。
【0143】
比較例1は親水性基を保有するポリビニルアルコールを使用したが、無機物粒子層の脱離がうまく行われないだけでなく、高温での熱収縮率が高く、TMA溶融破断温度が低く、耐熱性が劣っていた。
【0144】
比較例2、3は、pH範囲が過度に低かったり、高くて目的の低分子量のシラン化合物の加水分解縮合物が得られず、無機物粒子層の脱離がうまくできないだけでなく、高温での熱収縮率が高く、TMA溶融破断温度が低く、耐熱性が劣った。
【0145】
以上のように、本発明では特定の事項と限定された実施例および図面によって説明したが、これは本発明のより全体的な理解を助けるために提供されたものであり、本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば、これらの記載から様々な修正および変形が可能である。
【0146】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して定められるものではなく、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価な変形があるすべてのものは、本発明の思想の範疇に属するといえる。