(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181138
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】セパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/489 20210101AFI20231214BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20231214BHJP
【FI】
H01M50/489
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/423
H01M50/403 A
H01M50/403 E
H01M50/403 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095022
(22)【出願日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2022-0070367
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ベ フン テク
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】クァク ウォン スブ
(72)【発明者】
【氏名】クォン テ ウク
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021BB15
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE17
5H021EE20
5H021EE22
5H021EE32
5H021EE34
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高温での寸法安定性を向上させながら、無機物粒子層の接着力/凝集力を改善し、高温での高い安全性を実現するセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態によるセパレータは、多孔質基材および多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層を含み、無機物粒子層は、無機物粒子と、極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーおよび水溶性高分子バインダーを含み、ΔP=P1/P2が1.1以上である。
(式中、P1はセパレータの剥離強度であり、P2は、多孔質基材および多孔質基材の少なくとも一面上に設けられ、ベーマイト粒子と(3-アミノプロピル)トリエトキシシランの加水分解縮合物からなる無機物粒子層を含むセパレータの剥離強度である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層を含むセパレータにおいて、
下記式(1)で表される剥離強度の変化量ΔPが1.1以上の、セパレータ。
(1)ΔP=P1/P2
(前記式(1)中、
前記P1は前記セパレータの剥離強度であり、
前記P2は、多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられ、無機物粒子と、極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーからなる無機物粒子層を含むセパレータの剥離強度であり、
前記剥離強度は、厚さ200μm、幅15mm、長さ100mm銅板の長さ方向の一端から両面テープを幅15mm、長さ60mmで接着した後、前記セパレータの無機物粒子層が対面するように積層および圧着して接着させた後、UTM装置を利用して180°フィルテストで速度300mm/min、変位100mm条件で測定される)。
【請求項2】
前記セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向とするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端を金属治具に噛ませてTMAチャンバーに設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張ったとき、MD方向およびTD方向ともに180℃以上の温度で試験片が破断する耐熱性を有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記セパレータを130℃で60分間放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記セパレータ上にエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)が体積比30:50:20で含まれる溶液に1Mのヘキサフロロリン酸リチウム(LiPF6)が溶解した電解液10μlをマイクロピペットで50mmの高さから1滴滴下し、1分間放置した後、電解液が広がった跡の長径が25mm以上である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
下記式(2)で表される通気度の変化量ΔGが50sec/100cc以下である、セパレータ。
(2)ΔG=G1-G2
(前記式(2)中、
前記G1は前記セパレータのギャリ透過率であり、
前記G2は前記多孔質基材のガリー透過率であり、
前記ガリー透過率はASTM D 726に従って測定される)
【請求項6】
前記無機物粒子層は、無機物粒子と、極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーおよび水溶性高分子バインダーを含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記水溶性高分子バインダーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(N-ビニルアセトアミド)(PNVA)、ポリ(メタ)アクリルアミド(PAM)およびポリアミド(PA)のいずれか1つまたは2つ以上を含むものである、請求項6に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーは、弱酸性の雰囲気で加水分解され、縮合が抑制された加水分解縮合物である、請求項6に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記極性シラン化合物は下記化学式1で表される化合物である、請求項6に記載のセパレータ。
[化学式1]
AaSi(OR)b
(前記化学式1中、Aは、独立して極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、1~2、bは、2~3であり、a+bは、4である)
【請求項10】
前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含む、請求項9に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーの重量B1対前記水溶性高分子バインダー重量B2の重量比B2/B1が0.01~1.0である、請求項6に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むものである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項13】
(a)下記化学式1で表される極性シラン化合物、無機物粒子、酸の成分、水溶性高分子バインダーおよび水を撹拌してコーティングスラリーを製造するステップと、
(b)前記製造されたコーティングスラリーを多孔質基材の少なくとも一面上に塗布し、乾燥させて無機物粒子層を設けるステップと、を含む、セパレータの製造方法。
[化学式1]
AaSi(OR)b
(前記化学式1中、Aは、独立して極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、1~2、bは、2~3であり、a+bは、4である)
【請求項14】
(a)コーティングスラリーは、下記(a1)~(a3)ステップを含めて製造されるものである、セパレータの製造方法。
(a1)前記化学式1で表される極性シラン化合物および酸の成分を含む酸の水溶液を設けるステップと、
(a2)無機物粒子、酸の成分および水を撹拌して無機物スラリーを調製するステップと、
(a3)前記設けられた無機物スラリー、酸の水溶液および水溶性高分子バインダーを撹拌してコーティングスラリーを製造するステップと、
【請求項15】
前記(a3)コーティングスラリーを製造するステップは、
pH4超過pH6以下の弱酸性の雰囲気下で行われるものである、請求項14に記載のセパレータの製造方法。
【請求項16】
前記(a2)ステップで調製した無機スラリーのpHと前記(a1)ステップで調製した酸の水溶液のpHの差の絶対値が1以下である、請求項14に記載のセパレータの製造方法。
【請求項17】
前記(a1)ステップにおいて、前記極性シラン化合物は、前記酸の水溶液全体の重量に対して10重量%以下含まれるものである、請求項14に記載のセパレータの製造方法。
【請求項18】
前記(a)ステップにおいて、前記極性シラン化合物は、前記コーティングスラリー全体の重量に対して5重量%以下含まれるものである、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項19】
前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含む、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項20】
(a)コーティングスラリーを製造するステップは、
pH4超過pH6以下の弱酸性の雰囲気下で行われるものである、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項21】
前記酸の成分は、二酸化炭素、または酢酸および乳酸から選ばれるいずれか1つまたは2つを含む有機酸、である、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項22】
前記(b)ステップ以後、
(c)前記無機物粒子層が設けられた多孔質基材をエージングするステップと、をさらに含む、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項23】
前記多孔質基材は、表面を親水性表面処理して設けられたものである、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項24】
前記親水性表面処理は、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうちいずれか一つ以上を含んで行うものである、請求項23に記載のセパレータの製造方法。
【請求項25】
請求項1~12のいずれか一項に記載のセパレータを含む、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子に関するものであり、特に一実施形態において高温での寸法安定性が著しく向上したセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電気化学素子に適用されるセパレータは、高温で収縮して内部短絡を引き起こす可能性があり、前記内部の短絡により火災発生の恐れがあるため、ユーザーの安全のためにセパレータの高温での寸法安定性は必ず改善しなければならない問題である。セパレータの高温での寸法安定性を確保するために、無機物粒子層を多孔質基材表面に積層した形態の有機・無機複合多孔質セパレータが開発され、前記無機物粒子層のバインダーとして接合特性および熱安定性に優れたシラン化合物を使用する技術が開発された。
【0003】
しかし、前記シラン化合物は熱収縮率など熱安定性をある程度改善しているが、接合特性および熱安定性がまだ不足している問題がある。また、特にシラン化合物を単独で使用する場合、接合特性が不足してセル組立中に無機物粒子が無機物粒子層から脱離する可能性があり、脱離した無機物粒子により欠陥が発生する恐れがある。このような現象により、今後のセル動作時にユーザーの安全のために必要な高温での寸法安定性が担保されない可能性が存在する。これにより、セパレータの高温での寸法安定性をさらに向上させるための新しいセパレータが切実に必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の問題点を解決するために、本発明は、高温での寸法安定性をさらに向上させながら、同時に無機物粒子層の接着力/凝集力(adhesion/cohesion)を改善し、セル組立中に無機物粒子の脱離防止および脱離した無機物粒子による欠陥を抑制することにより、高温での高い電池安全性を提供するセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するための一手段として、本発明の一実施形態によれば、多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層を含むセパレータにおいて、下記式(1)で表される剥離強度の変化量ΔPが1.1以上である、セパレータを提供することができる。
【0006】
(1)ΔP=P1/P2
前記式(1)中、
前記P1は前記セパレータの剥離強度であり、
前記P2は、多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられ、無機物粒子と、極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーからなる無機物粒子層を含むセパレータの剥離強度であり、
前記剥離強度は、厚さ200μm、幅15mm、長さ100mm銅板の長さ方向の一端から両面テープを幅15mm、長さ60mmで接着後、前記セパレータの無機物粒子層が対面するように積層および圧着して接着させた後、UTM装置を利用して180°フィルテストで速度300mm/min、変位100mm条件で測定する。
【0007】
一例として、前記無機物粒子層は、ベーマイト粒子と(3-アミノプロピル)トリエトキシシランの加水分解縮合物で構成されることができる。
【0008】
また、一実施形態で前記セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD(machine direction)方向およびTD(transverse direction)方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグに噛ませてTMAチャンバーに設置し、毎分5℃に昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張るとき、MD方向およびTD方向ともに180℃以上の温度で試験片が破断する耐熱性を有するセパレータを提供することができる。
【0009】
また、一実施形態で前記セパレータを130℃で60分放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下である場合がある。
【0010】
また、一実施形態では、前記セパレータ上にエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)が体積比30:50:20で含まれる溶液に1Mのリチウムヘキサフロロホスフェート(LiPF6)が溶解した電解液10μlをマイクロピペットで50mmの高さから1滴滴下し、1分間放置した後、電解液が広がった跡の長径が25mm以上であることができる。
【0011】
また、一実施形態において、下記式(2)で表される通気度の変化量ΔGが50sec/100cc以下である、セパレータを提供することができる。
【0012】
(2)ΔG=G1-G2
前記式(2)中、
前記G1は前記セパレータのギャリ透過率であり、
前記G2は前記多孔質基材のガリー透過率であり、
前記ガリー透過率は、ASTM D 726に従って測定される。
【0013】
また、一実施形態において、前記無機物粒子層は、無機物粒子と、極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーおよび水溶性高分子バインダーを含むことができる。
【0014】
また、一実施形態において、前記水溶性高分子バインダーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(N-ビニルアセトアミド)(PNVA)、ポリ(メタ)アクリルアミド(PAM)、およびポリアミド(PA)のいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0015】
また、一実施形態において、前記極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーは、弱酸性の雰囲気で加水分解され、縮合が抑制された加水分解縮合物であってもよい。
【0016】
また、一実施形態において、前記極性シラン化合物は、下記化学式1で表される化合物であることができる。
【0017】
[化学式1]
AaSi(OR)b
【0018】
前記化学式1中、Aは、独立して極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、1~2、bは、2~3であり、a+bは、4である。
【0019】
また、一実施形態において、前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0020】
また、一実施形態において、前記極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーの重量B1対前記水溶性高分子バインダーの重量B2の重量比B2/B1が0.01~1.0であることができる。
【0021】
また、一実施形態において、前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むことができる。
【0022】
また、前記課題を達成するための他の一手段として、本発明の一実施形態によれば、(a)下記式1で表される極性シラン化合物、無機物粒子、酸の成分、水溶性高分子バインダーおよび水を撹拌してコーティングスラリーを製造するステップと、(b)前記製造されたコーティングスラリーを多孔質基材の少なくとも一面上に塗布し、乾燥して無機物粒子層を設けるステップと、を含む、セパレータの製造方法を提供することができる。
【0023】
[化学式1]
AaSi(OR)b
【0024】
前記化学式1中、Aは、独立して極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、1~2、bは、2~3であり、a+bは、4である。
【0025】
また、一実施形態において、前記(a)コーティングスラリーは、下記(a1)~(a3)ステップを含めて製造することができる。
【0026】
(a1)前記化学式1で表される極性シラン化合物および酸の成分を含む酸の水溶液を設けるステップと、
(a2)無機物粒子、酸の成分および水を撹拌して無機物スラリーを調製するステップと、
(a3)前記設けられた無機物スラリー、酸の水溶液および水溶性高分子バインダーを撹拌してコーティングスラリーを製造するステップ。
【0027】
また、一実施形態において、前記(a3)コーティングスラリーを製造するステップは、pH4超過pH6以下の弱酸性の雰囲気下で行うことができる。
【0028】
また、一実施形態では、前記(a2)ステップで調製した無機スラリーのpHと前記(a1)ステップで調製した酸の水溶液のpHの差の絶対値が1以下であってもよい。
【0029】
また、一実施形態では、前記(a1)ステップにおいて、前記極性シラン化合物は、前記酸の水溶液の全重量に対して10重量%以下で含有することができる。
【0030】
また、一実施形態では、前記(a)ステップにおいて、前記極性シラン化合物は、前記コーティングスラリーの全重量に対して5重量%以下で含有することができる。
【0031】
また、一実施形態において、前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0032】
また、一実施形態において、前記(a)コーティングスラリーを製造するステップは、pH4超過pH6以下の弱酸性の雰囲気下で行うものであってもよい。
【0033】
また、一実施形態において、前記酸の成分は、二酸化炭素、または、酢酸および乳酸から選択されるいずれか一方または両方を含む有機酸、であってもよい。
【0034】
また、一実施形態によるセパレータの製造方法は、前記(b)ステップの後、(c)前記無機物粒子層が設けられた多孔質基材をエージングするステップをさらに含むことができる。
【0035】
また、一実施形態において、前記多孔質基材は、表面を親水性表面処理して設けられたものであってもよい。
【0036】
また、一実施形態において、前記親水性表面処理は、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち、一つ以上を含んで行うことができる。
【0037】
また、前述の課題を達成するための他の一手段として、本発明の一実施形態によれば、前述の実施例のうち一実施形態によるセパレータを含む電気化学素子を提供することができる。
【発明の効果】
【0038】
一実施形態によると、多孔質基材の少なくとも一面上に無機物粒子が互いに接続されて気孔が形成される無機物粒子層が設けられた二次電池セパレータで、シラノールまたはアルコキシシラン系化合物を加水分解すると同時に縮合を抑制する特定の条件で製造した極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーおよび水溶性高分子バインダーを一緒に無機物粒子層のバインダーとして使用して、セパレータの熱安定性を大幅に向上させることができる。
【0039】
また、同時に、前記一実施形態によれば、前記縮合が抑制された極性シラン化化合物の加水分解縮合物バインダーおよび水溶性高分子バインダーを無機物粒子層のバインダーとして一緒に適用することにより、無機物粒子層内の無機物粒子を水素結合または他の極性引力でより強く連結、固定することができると推測される、このような効果でセパレータの高温熱収縮率を下げて熱安定性を大幅に向上させることができると同時に、無機物粒子層の接着力/凝集力(adhesion/cohesion)を改善してセル組立中に無機物粒子の脱離防止および脱離した無機物粒子による欠陥を抑制することで、高温での電池の安全性を大幅に向上させることができる。
【0040】
一実施形態によるセパレータは、著しく高い熱安定性を確保できるとともに、剥離強度を向上させることができる。一実施形態のセパレータは、下記式(1)で表される剥離強度の変化量ΔPが1.1以上、1.2以上、1.3以上または1.5以上であることができる。
【0041】
(1)ΔP=P1/P2
前記式(1)中、
前記P1は前記セパレータの剥離強度であり、
前記P2は、多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられ、ベーマイト粒子と(3-アミノプロピル)トリエトキシシランの加水分解縮合物からなる無機物粒子層を含むセパレータの剥離強度であり、
前記剥離強度は、厚さ200μm、幅15mm、長さ100mm銅板の長さ方向の一端から3M社の両面テープ(Model:665)を幅15mm、長さ60mmで接着後、前記セパレータの無機物粒子層が対面するように積層および圧着して接着させた後、Instron社のUTM装置を利用して180°ピール(peel)テストで速度300mm/min、変位100mm条件で測定される。
【0042】
一実施形態としては、セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグ(metal jig)に噛ませてTMAチャンバー(Thermomechanical Analyzer、Model:SDTA840(Mettler Toledo))に設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張るとき、前記MD方向およびTD方向ともに180℃以上、190℃以上、200℃以上、または210℃以上の温度で試験片が破断するより優れた熱安定性を持つセパレータを提供することができる。
【0043】
一実施形態では、セパレータを130℃で60分間放置した後のMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下または2.5%以下であることができる。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーと水溶性高分子バインダーを一緒に使用することにより、電解液含浸性を著しく改善することができる。一実施形態において、前記セパレータ上にエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)が体積比30:50:20で含まれる溶液に1Mのリチウムヘキサフロロホスフェート(LiPF6)が溶解された電解液10μlをマイクロピペットで50mmの高さから1滴滴下し、1分間放置した後、電解液が広がった跡の長径が25mm以上であることができる。
【0045】
また、一実施形態によるセパレータは、無機物粒子層がない多孔質基材に比べて通気度変化量が50秒/100cc以下に改善された通気度を持つことができる。
【0046】
また、好ましい一実施形態で前記多孔質基材にコロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含む表面処理でカルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシル基などの極性官能基を持つように改質される場合、無機物粒子層の表面を固定する前記バインダーによって前記多孔質基材の表面の官能基と水素結合または化学結合が可能であるため、従来の有機高分子系バインダーを使用しなくても、多孔質基材と無機物粒子層の結合力が格段に優れ、高温でも熱収縮率を格段に低減し、熱安定性が格段に向上する効果を付与することができる。
【0047】
また、好ましい一実施形態では、無機物粒子層を形成した後、エージングステップを行うことにより、多孔質基材と無機物粒子層間の接着力を増加させ、高温での熱収縮率を下げることができる。
【0048】
最も好ましい一実施形態では、前記物性を全て満足する新しいセパレータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、添付された図面を含む具体的な実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下の具体例は一つの参考であるだけで、本発明がこれに限定されるものではなく、複数の形態で実施することができる。
【0050】
また、特に定義されていない限り、すべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明において説明に使用される用語は、特定の実施形態を効果的に説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0051】
また、明細書および添付された特許請求の範囲に使用される単数形は、文脈から特別な指示がない限り、複数形も含むことを意図することができる。
【0052】
また、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含めることができることを意味する。
【0053】
また、「水溶性」物質とは、25℃で前記物質0.5gを100gの水に溶解したとき、溶解していない不溶分が0.5重量%未満であることを意味する。一方、「非水溶性」物質とは、25℃で前記物質0.5gを100gの水に溶解したとき、溶解しない不溶分が90重量%以上であることを意味する。
【0054】
本発明の一実施形態によると、多孔質基材の少なくとも一面上に無機物粒子が互いに連結して気孔が形成される無機物粒子層が設けられた二次電池セパレータであって、シラノールまたはアルコキシシラン系化合物を加水分解すると同時に縮合を抑制する特定の条件で製造した極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーおよび水溶性高分子バインダーを一緒に無機物粒子層のバインダーとして使用することで、セパレータの熱安定性を大幅に向上させることができる。また、無機物粒子層の接着力/凝集力(adhesion/cohesion)を改善してセル組立中に無機物粒子の脱離防止および脱離した無機物粒子による欠陥を抑制することで、高温での電池安定性を大幅に向上させることができる。
【0055】
これは、縮合が抑制された極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーおよび水溶性高分子バインダーを無機物粒子層のバインダーとして一緒に適用して、無機物粒子層内の無機物粒子を水素結合または他の極性引力でより強く連結、固定することができ、前記の効果を達成することができると推測される。
【0056】
本発明の実施例によるセパレータは、高温での寸法安定性がさらに向上すると同時に、無機物粒子層の接着力/凝集力(adhesion/cohesion)が改善され、セル組立中に無機物粒子の脱離防止および脱離した無機物粒子による欠陥を抑制することにより、高温での高い電池安全性を提供することができる。
【0057】
一実施形態によれば、セパレータは、著しく高い熱安定性を確保できるとともに、剥離強度を向上させることができる。一実施形態のセパレータは、下記式(1)で表される剥離強度の変化量ΔPが1.1以上、1.2以上、1.3以上、または1.5以上であることができる。
【0058】
(1)ΔP=P1/P2
前記式(1)中、
前記P1は、前記セパレータの剥離強度である。
【0059】
前記P2は、多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられ、ベーマイト粒子と(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane、APTES)の加水分解縮合物からなる無機物粒子層を含むセパレータの剥離強度である。
【0060】
前記剥離強度は、厚さ200μm、幅15mm、長さ100mm銅板の長さ方向の一端から3M社の両面テープ(Model:665)を幅15mm、長さ60mmで接着後、前記セパレータの無機物粒子層が対面するように積層および圧着して接着させた後、Instron社のUTM装置を利用して180°ピール(peel)テストで速度300mm/min、変位100mm条件で測定される。
【0061】
一実施形態でセパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグ(metal jig)に噛ませてTMAチャンバー(Thermomechanical Analyzer、Model:SDTA840(Mettler Toledo))に設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張る時、前記MD方向およびTD方向ともに180℃以上、190℃以上、200℃以上または210℃以上の温度で試験片が破断するより優れた熱安定性を持つことができる。
【0062】
一実施形態では、セパレータを130℃で60分間放置した後のMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下または2.5%以下であることができる。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーと水溶性高分子バインダーを一緒に使用することにより、電解液含浸性を著しく改善することができる。一実施形態で、前記セパレータ上にエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)が体積比30:50:20で含まれる溶液に1Mのリチウムヘキサフロロホスフェート(LiPF6)が溶解された電解液10μlをマイクロピペットで50mmの高さから1滴滴下し、1分間放置した後、電解液が広がった跡の長径が25mm以上であることができる。
【0064】
また、一実施形態によるセパレータは、無機物粒子層がない多孔質基材に比べて通気度変化量が下記式(2)で表される通気度の変化量ΔGが50sec/100cc以下に改善された通気度を持つことができる。
【0065】
(2)ΔG=G1-G2
前記式(2)中、
前記G1は前記セパレータのガリー透過率であり、
前記G2は前記多孔質基材のガリー透過率であり、
前記ガリー透過度はASTM D726に従って測定され、Toyoseiki社のDensometerを用いて測定される。100ccの空気がセパレータ1平方インチの面積を通過するのにかかる時間を秒単位で記録して導出した。前記一実施形態によるセパレータは、無機物粒子層が多孔質基材の少なくとも一面に設けられているにもかかわらず、無機物粒子層がない多孔質基材に比べて通気度変化量が50秒/100cc以下に改善された通気度を有することができる。
【0066】
前記の物性を達成することを前提として、セパレータの構成を特に限定するものではない。ただし、前記物性を付与する一手段として、一実施形態によれば、多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層を含むセパレータにおいて、前記無機物粒子層は、無機物粒子と、極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーおよび水溶性高分子バインダーを含むセパレータを提供することができる。
【0067】
以下、本発明の実施例によるセパレータの各構成について説明する。
【0068】
一実施形態によれば、前記多孔質基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどを使用することができ、これらからなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の樹脂からなるフィルムまたはシートであることができる。
【0069】
前記ポリオレフィン系多孔質基材は、通常フィルム状に製造され、電気化学素子のセパレータとして一般的に使用されるものであれば限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびこれらの共重合体などを例示できるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0070】
前記多孔質基材の厚さは特に限定しないが、例えば、1μm以上、3μm以上、5μm以上、100μm以下、50μm以下、30μm以下、20μm以下、または前記数値の間の値であることができる。多孔質基材の厚さは、非限定的な例として1~100μm、好ましくは5~50μm、さらに好ましくは5~30μmであることができる。前記多孔質基材は、一例によれば、延伸して製造された多孔質高分子基材であることができる。
【0071】
好ましい一実施形態において、前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むものとすることができる。前記極性官能基の非限定的な例としては、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基などを挙げることができるが、特に限定されるものではない。前記極性官能基は、一例によれば、親水性表面処理で導入されたものであることができ、前記親水性表面処理は、一例によれば、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含んで実施することができる。前記多孔質基材の表面に設けられた極性官能基と後述する極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーまたは水溶性高分子バインダーの間に水素結合、化学結合または極性引力が作用して、多孔質基材と無機物粒子層の接着力をより向上させることができ、高温での熱収縮率をより低減させて熱的安定性をより向上させることができる。
【0072】
一実施形態において、無機物粒子層は、無機物粒子がシラン化合物の加水分解縮合物バインダーおよび極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーによって連結、固定されて気孔を形成した多孔質無機物粒子層であることができる。一実施形態において、前記無機物粒子層は、多孔質基材の少なくとも一面に設けられ、多孔質基材の全体表面を基準として面積分率60%以上、70%以上、80%以上または90%以上を占めることができる。
【0073】
一実施形態において、前記無機物粒子層は、多孔質基材の一面、好ましくは両面にコーティングすることができ、前記多孔質基材の両面に無機物粒子層がコーティングされる場合、一面と他の一面にコーティングされた無機物粒子層の厚さは、互いに同じか、異なることができる。特に限定されるものではないが、一実施形態で一面にコーティングされる無機物粒子層の厚さは、0μm超過、0.3μm以上、0.5μm以上、3μm以下、2.5μm以下、2μm以下、1.5μm以下、1μm以下、または前記数値の間の値であることができる。具体的な一実施形態において、前記無機物粒子層の厚さは、0μm超過2.5μm以下、または0μm超過2μm以下、好ましくは0μm超過1.5μm以下、より好ましくは0μm超過1μm以下であることができる。
【0074】
一実施形態として、前記無機物粒子は、この技術分野に使用する無機物粒子であれば限定されない。非限定的な例として、前記無機物粒子は、金属水酸化物、金属酸化物、金属窒化物および金属炭化物のうち一つまたは二つ以上を含むことができ、またはSiO2、SiC、MgO、Y2O3、Al2O3、CeO2、CaO、ZnO、SrTiO3、ZrO2、TiO2およびAlO(OH)のうち一つまたは二つ以上を含むことができる。電池の安定性などの観点から、無機物粒子は、好ましくはベーマイト(bohemite)のような金属水酸化物粒子であることができる。
【0075】
前記金属水酸化物は特に限定しないが、非限定的な例として、ベーマイト(boehmite)、水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)および水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)のいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。一実施形態として、前記ベーマイトを使用する場合、例えば比表面積(BET)は10m2/g以上または15m2/g以上であることができるが、これに限定されるものではない。
【0076】
より好ましくは、前記無機物粒子はベーマイト(boehmite)であることができ、このとき、ベーマイトの比表面積(BET)は10m2/g以上、具体的には比表面積は15m2/g以上であることができる。
【0077】
前記無機物粒子の平均粒径(D50)は、0.01μm以上、0.05μm以上、0.1μm以上、5μm以下、1μm以下、0.5μm以下、または前記数値の間の値であることができる。前記無機物粒子の平均粒径(D50)は、非限定的な例として0.01~5μm、好ましくは0.01~1μm以下、より好ましくは0.01~0.5μmであることができる。
【0078】
次に、前記無機物粒子を連結して気孔が形成された無機物粒子層を形成するバインダーの実施例を説明する。本発明の一実施形態によれば、前記バインダーとしては、極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーおよび水溶性高分子バインダーを併用する。
【0079】
前記極性シラン化化合物の加水分解縮合物バインダーの一実施形態としては、下記化学式1で表される極性シラン化化合物を縮合し、特定の条件下で加水分解および縮合した分子量が非常に抑制された低分子量の縮合物であることができる。
【0080】
[化学式1]
AaSi(OR)b
【0081】
前記化学式1中、Aは、独立して極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、1~2、bは、2~3であり、a+bは、4である。好ましい一実施形態では、前記化学式1の極性シラン化合物において、bが3であることを利用して縮合した低分子量の縮合物を使用することが、結合力などの点で好ましい場合がある。
【0082】
一実施形態において、前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含む、またはこれらと反応する反応性基であることができる。一実施形態によれば、前記極性官能基は、アミノ基(amino group)であることができる。
【0083】
前記化学式1を満たす極性シラン化合物の非限定的な例としては、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)および(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン((3-Glycidyloxypropyl)trimethoxysilane)などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上の混合物であってもよいが、特に限定されない。
【0084】
一方、上述の実施例のような極性シラン化合物の加水分解縮合物ではなく、非極性シラン化合物の加水分解縮合物をバインダーとして使用する場合、無機物粒子層のデウェッティング(dewetting)により表面にスポット欠陥(spot defect)が多数発生するなど、無機物粒子層が適切に形成されないおそれがあり、目的とする接着力および高温熱収縮率を達成できないおそれがある。また、前記の場合、通気度の変化量が増加したり、濡れ性が悪化してセパレータの電気化学的特性が劣る恐れがある。
【0085】
一実施形態において極性シラン化合物の加水分解縮合物は、極性シラン化合物が加水分解されると同時に縮合が抑制された条件で調製されるため、低分子量を有する。一実施形態において、前記極性シラン化合物の加水分解縮合物は、弱酸性の雰囲気で加水分解され、縮合が抑制された加水分解縮合物であることができ、弱酸性の雰囲気で縮合反応が抑制されて非常に小さな分子量で調製することができる。一実施形態において、前記極性シラン化合物の加水分解縮合物は、例えば、数平均分子量4000g/mol以下、2000g/mol以下または1000 g/mol以下の低分子量を有することができる。
【0086】
一方、通常、前記化学式1の極性シラン化合物を無機酸などの強酸により縮合させる場合、4000g/molを超える数千の数平均分子量を有するポリシロキサン縮合物が生成されるが、本発明の一実施形態の縮合が抑制された極性シラン化合物の加水分解縮合物は、それ自体の加水分解物、モノマー形態の未反応物および二量体加水分解縮合物を主成分として含み、微量の三量体加水分解縮合物または四量体加水分解縮合物を含む加水分解縮合物であることに違いがある。
【0087】
すなわち、一実施形態において、極性シラン化合物の加水分解縮合物は、前記極性シラン化合物の加水分解物、モノマー、加水分解され縮合された二量体、三量体、四量体および五量体などの多量体から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0088】
前記のような低分子量の極性シラン化合物の加水分解縮合物は、posESI FT-ICRMS(メーカー:Bruker、モデル名:Solarix 2XR)を使用してpositive ESI-MS分析時に検出される検出ピークから確認することができる。すなわち、前記positive ESI-MS分析の結果、加水分解物であるシランオールおよび縮合物である二量体ピークが主に観測され、微量の三量体および四量体ピークが観測され、五量体以上のピークは通常のスラリーを製造する期間である1日または2日以内にはほとんど検出されない。しかし、無機酸である塩酸を使用して24時間加水分解・縮合する場合、別途添付はしないが、高分子量のピークが複雑に観測される。これらの結果から、前記一実施形態の弱酸性の雰囲気で調製した極性シラン化合物の加水分解縮合物と、通常の無機酸などで製造した加水分解縮合物とは異なる形態の物質が得られることが確認できる。
【0089】
一実施形態による極性シラン化合物の加水分解縮合物は、極性官能基を含む極性シラン化合物を加水分解反応に対して縮合反応は相対的に抑制された条件で縮合し、相対的に低分子量で調製され、通常、無機酸などによって高分子量で縮合されて調製されるポリシロキサン縮合物に比べて、同一重量で多くの極性基の割合を確保することができる。驚くべきことに、前記極性シラン化合物の加水分解縮合物は、無機物粒子を互いに連結する接着力がさらに向上し、顕著な耐熱性を付与することができる。
【0090】
一実施形態において、前記縮合が抑制された極性シラン化合物の加水分解縮合物は、pH4超過pH6以下の条件の弱酸性の雰囲気下で得ることができ、非限定的な一例によれば、特に二酸化炭素、酢酸および乳酸のいずれか1つまたは2つ以上を水溶液上に投入して、前記pH範囲の弱酸性の雰囲気を設けることができ、投入する方法は、酸溶液を液体として混合したり、酸性ガスをブローまたはバブリングすることができる。
【0091】
また、好ましい一実施形態で多孔質基材の表面に極性官能基が導入された場合、前記多孔質基材の表面に設けられた極性官能基が極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーの極性官能基と水素結合または化学結合して多孔質基材と無機物粒子層の接着力をより向上させることができ、高温での熱収縮率をより低減させて寸法安定性を向上させることができるので好ましい。
【0092】
一実施形態において、前記水溶性高分子バインダーは、極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーと共に、水素結合または他の極性引力で無機物粒子層内で無機物粒子同士の結合力をさらに高めたり、多孔質基材と無機物粒子層間の結合力をさらに高める役割を果たす。これにより、無機物粒子層から無機物粒子が脱離することを防止することができる。また、一実施形態において、水溶性高分子バインダーは、無機物粒子層を形成するためのコーティングスラリーの粘度調整剤として機能し、塗布性を改善することもできる。
【0093】
一方、水溶性高分子バインダーではなく、非水溶性高分子バインダーを使用する場合、スラリーの凝集が発生し、スラリーコーティングが難しく、無機物粒子層を適切に形成できない可能性があり、目的とする結着力および高温での熱収縮率を達成できない恐れがある。また、前記の場合、通気度の変化量が増加したり、濡れ性が悪化してセパレータの電気化学的特性が劣る恐れがある。
【0094】
一実施形態において水溶性高分子バインダーは、前記物性を提供できる限り特に限定されず、この技術分野で公知のすべての水溶性高分子バインダーを使用することができるが、一実施形態において水溶性高分子バインダーは、窒素を含有することが無機物粒子層の結合力をさらに付与する観点から好ましい。非限定的な例として、前記水溶性高分子バインダーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(N-ビニルアセトアミド)(PNVA)、ポリ(メタ)アクリルアミド(PAM)およびポリアミド(PA)のいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。好ましい一実施形態では、接着力をさらに向上させるために、前記水溶性高分子バインダーは、ポリビニルピロリドン(PVP)を含むことができる。
【0095】
一実施形態によれば、高温熱収縮率を低下させて熱安定性を向上させると同時に、無機物粒子層の接着力/凝集力をさらに向上させるための一手段として、前記極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーの重量B1と前記水溶性高分子バインダーの重量B2の重量比B2/B1が高すぎると、高温熱収縮率を十分に低減できない可能性があり、一方、低すぎると、目的とする剥離強度を達成できない可能性が存在する。一実施形態において、前記B2/B1は、0.01以上、0.03以上、0.05以上、0.1以上、1.0以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、または前記数値の間の値であってもよい。一実施形態において、前記B2/B1は、0.01~1.0または好ましくは0.05~0.8であることができる。
【0096】
次に、前記セパレータの製造方法の実施例を説明する。
【0097】
一実施形態として、(a)下記化学式1で表される極性シラン化合物、無機物粒子、酸の成分、水溶性高分子バインダーおよび水を撹拌してコーティングスラリーを製造するステップと、および(b)前記製造されたコーティングスラリーを多孔質基材の少なくとも一面上に塗布し、乾燥して無機物粒子層を設けるステップと、を含む、セパレータの製造方法を提供することができる。
【0098】
[化学式1]
AaSi(OR)b
【0099】
前記化学式1中、Aは、独立して極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、1~2、bは、2~3であり、a+bは、4である。
【0100】
前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含む、またはこれらと反応する反応性基であることができる。
【0101】
以下、前記一実施形態によるセパレータの製造方法の各ステップについて説明する。前記各極性シラン化合物、水溶性高分子バインダー、無機物粒子、多孔質基材についての説明は前述と同様であるため、便宜上省略する。
【0102】
加水分解反応に対して縮合反応を抑制するための一手段として、一実施形態によれば、前記(a)ステップは、pH4超過pH6以下の弱酸性の雰囲気で行うことができる。
【0103】
前記(a)コーティングスラリーを製造するステップにおいて、コーティングスラリーを構成する成分を投入する方法や、順序については特に限定されないが、ベーマイトのような無機物粒子は水と撹拌すると塩基性を帯びるので、本発明で目的とする極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーを得るための特定範囲のpH範囲を良好に維持することが好ましい。好ましい一実施形態において、前記(a)コーティングスラリーは、下記(a1)~(a3)ステップを含めて製造されるものであることができる。
【0104】
(a1)前記化学式1で表される極性シラン化合物および酸の成分を含む酸の水溶液を設けるステップと、
(a2)無機物粒子、酸の成分および水を撹拌して無機物スラリーを調製するステップと、
(a3)前記設けられた無機物スラリー、酸の水溶液および水溶性高分子バインダーを撹拌してコーティングスラリーを製造するステップと、
前記一実施形態において、(a1)ステップで酸の成分および前記化学式1で表される極性シラン化合物を含む酸の水溶液を設け、(a2)ステップで酸の成分を含む無機物スラリーをそれぞれ設け、pHを予め調整することにより、以下の効果が期待でき、好ましい。無機物粒子は水と撹拌すると塩基性を帯びるので、極性シラン化合物、無機物粒子および酸の成分を同時に撹拌する場合、前記極性シラン化合物が弱酸性の雰囲気で加水分解・縮合される間にpHが変動する恐れがある。pHの変動により、目的とする縮合が抑制された低分子量の極性シラン化合物の加水分解縮合物を確保できない恐れがあり、無機物粒子間に凝集が発生する恐れがあるので好ましくない。前記一実施形態によれば、無機物スラリーのpHと極性シラン化合物を含む酸の水溶液のpHを予め調整することで、後続する(a3)ステップで前記無機物スラリーと酸の水溶液撹拌時に急激なpHの変動を防止し、極性シラン化合物が加水分解・縮合される間、pHが一定になるように維持することができる。これにより、内部に電解液が存在する電池でも優れた耐熱性を付与することができる。
【0105】
一実施形態として、前記(a2)ステップで調製された無機物スラリーのpHと前記(a1)ステップで調製された酸の水溶液のpHの差の絶対値が1以下であることができる。前記の観点から好ましい一実施形態として、前記pHの差の絶対値は、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下または0.1以下であることができ、より好ましい一実施形態として、前記pHの差の絶対値は0であることができる。
【0106】
一実施形態として前記(a1)酸の水溶液を設けるステップは、pH4超過pH6以下の弱酸性の雰囲気で行うことができる。pH4以下の場合や、pH6超過の場合や、硫酸または塩酸などの無機酸を用いる場合、加水分解・縮合反応時には、目的とする低分子量の極性シラン化合物の加水分解縮合物を確保できない恐れがあり、これはセパレータの熱安定性や無機物粒子層の結合力が低下する問題を引き起こす可能性があるため好ましくない。前記の観点から、前記(a1)ステップにおける弱酸性の雰囲気は、好ましくはpH4以上pH5以下であることができる。
【0107】
一実施形態として前記(a1)ステップで前記極性シラン化合物は、前記酸の水溶液全体の重量に対して10重量%以下で含まれることができる。酸の水溶液中の極性シラン化合物の含有量が過度に高いと自己縮合(self condensation)が起こる可能性があるので、適切に調節されることが低分子量の極性シラン化合物の加水分解縮合物を確保するために好ましい。前記観点から、前記酸の水溶液内に含有された極性シラン化合物の含有量は、好ましくは7重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、0重量%を超える、または前記数値の間の値であることができる。一実施形態において、前記極性シラン化合物の含有量は、0重量%超過10重量%以下、または0重量%超過7重量%以下、または0重量%超過5重量%以下であることができる。
【0108】
一実施形態として前記(a2)無機物スラリーを調製するステップは、前記(a1)ステップで調製した酸の水溶液のpHの差の絶対値が1以下であれば十分であるが、その後の(a3)コーティングスラリーを製造するステップでのpHを目的とする加水分解されつつも縮合が抑制された条件を満たすために、以下のpH条件が好ましい場合がある。好ましい一実施形態として、前記(a2)無機物スラリーを調製するステップは、pH4超過pH6以下、好ましくはpH4超過pH5以下の弱酸性の雰囲気で行うことができる。前記一実施形態によれば、前記pH範囲に無機スラリーを調製することにより、その後の(a3)コーティングスラリーを製造するステップにおいて、目的とする極性シラン化合物が加水分解されつつも縮合が抑制された条件をより良く提供することができる。
【0109】
前記設けられた(a2)無機スラリーは、後日(a3)コーティングスラリーを製造するステップで、(a2)ステップで設けられた酸の水溶液と撹拌する際に、pHの急激な変動を防止するために、好ましい一実施形態では、前記設けられた(a2)無機スラリーは、均一な酸性度を有することができる。
【0110】
一実施形態で前記(a3)コーティングスラリーを製造するステップは、pH4超過pH6以下の弱酸性の雰囲気で行うことができる。pH4以下である場合や、pH6を超える場合や、硫酸または塩酸などの無機酸を利用する場合、加水分解・縮合反応時には、製造されたコーティングスラリーの分散性が低下し、無機物粒子間に凝集が発生して平均粒径が増加する恐れがあり、目的とする低分子量の極性シラン化合物の加水分解縮合物を確保できない恐れがあり、これはセパレータの耐熱性や無機物粒子層の結合力が低下する問題を引き起こす可能性があるため好ましくない。前記の観点から好ましい一実施形態において、前記弱酸性の雰囲気はpH4超過pH5以下であることができる。
【0111】
前記(a1)で調製される酸の水溶液、前記(a2)で調製される無機物スラリーおよび(a3)で製造されるコーティングスラリーは、当該技術分野で通用する他の成分または添加剤をさらに含むことができ、組成において特に限定されない。
【0112】
特に、本発明の一実施形態によれば、酸の水溶液および無機スラリーを撹拌する前に予めpHを調整し、pHが予め調整された酸の水溶液および無機スラリーを撹拌してコーティングスラリーを製造することにより、pHが急激に変動することを防止しながら、加水分解反応に対して縮合反応が相対的に抑制される弱酸性の雰囲気に安定的に維持制御することができる。これにより、優れた熱安定性の確保に有利な極性シラン化合物の加水分解縮合物の含有量を高めることができ、好ましい。
【0113】
一実施形態において、前記(a)ステップにおいて、前記極性シラン化合物は、前記コーティングスラリーの全重量に対して5重量%以下で含有することができる。極性シラン化合物は、セパレータの高温熱収縮率を下げ、無機物粒子層の接着力/凝集力を改善するために、一定量以上含まれることが好ましい。しかし、コーティングスラリー内の極性シラン化合物の含有量が過度に高い場合、スラリーの粒度軽視変化が発生する恐れがあり、スラリーの粒度軽視が変化すると、無機物粒子層の局所的な物性変動を引き起こし、全体セパレータ物性の不均一性を引き起こす恐れがあるので好ましくない。前記の観点から一実施形態において、前記極性シラン化合物の含有量は、コーティングスラリー全体の重量に対して5重量%以下、4.5重量%以下、4重量%以下、0重量%超過、1重量%以上、2重量%以上、または前記数値の間の値であることができる。一実施形態において、前記極性シラン化合物の含有量は、0重量%超過5重量%以下または0重量%超過4重量%以下であることができる。
【0114】
一実施形態では、前記酸の成分は、二酸化炭素;または酢酸および乳酸から選択される1つまたは2つを含む有機酸であってもよい。二酸化炭素は、コーティングスラリー、無機スラリー、または酸の水溶液に投入され、撹拌またはバブリングされた場合、炭酸になることができる。前記酸の成分を使用する場合、本発明の効果をよりよく達成することができ、凝縮反応を前記pH範囲で容易に抑制することができるので、より好ましいが、本発明の物性を有するセパレータが提供される限り、これに限定されるものではない。
【0115】
前記(a)コーティングスラリーを製造するステップは、当該技術分野で公知の通常の方法を制限なく全て適用できるので、ここでは特に限定しない。一実施態様としては、0~60℃で1時間~5日間撹拌して製造することができ、ボールミルを用いて凝集した無機物粒子を分散させることもできる。
【0116】
本発明の一実施形態によれば、(b)ステップにより、多孔質基材の少なくとも一面上に無機物粒子層を設けることができる。一実施形態において前記コーティングスラリーを塗布する方法としては、当該技術分野で公知の通常の方法を制限なく全て適用することができ、前記無機物粒子層を形成するための乾燥は特に制限されないが、100℃以下、または30~60℃で乾燥することができる。
【0117】
好ましい一実施形態で多孔質基材の表面に極性官能基が導入された場合、前記多孔質基材の表面に設けられた極性官能基と極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーまたは水溶性高分子バインダーの間に水素結合、化学結合または極性引力が作用して、多孔質基材と無機物粒子層の接着力をより向上させることができ、高温で高温収縮率をより低減させて熱安定性を向上させることができる。前記多孔質基材の表面に極性官能基を導入する方法としては、例えば親水性表面処理を挙げることができ、前記親水性表面処理は、一例によれば、大気、酸素およびオゾンの雰囲気下でコロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含んで実施することができる。前記多孔質基材の表面に導入された極性官能基としては、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0118】
好ましい一実施形態では、前記(b)ステップの後、(c)前記無機物粒子層が設けられた多孔質基材をエージング(aging)するステップをさらに含むことができる。具体的には、前記エージングは50~150℃、好ましくは65℃~120℃で行うことができ、エージング時間は2時間~24時間行うことができ、好ましくは10~20時間行うことができる。より好ましくは70~120℃の温度範囲で10~15時間行うことができる。前記エージングを通じて、多孔質基材と無機物粒子層間の結合力をさらに増加させ、高温熱収縮率をさらに低減することができるので好ましい。すなわち、本発明の好ましい一実施形態によるセパレータの製造方法は、前記(c)エージングステップをさらに含むことにより、多孔質基材と無機物粒子層間の安定的で強い化学結合を通じて、熱的安定性および接着力がさらに向上したセパレータを提供することができる。
【0119】
本発明の一実施形態によれば、前記実施例のうち一実施形態によるセパレータを含む電気化学素子を提供することができ、前記電気化学素子は、公知の全てのエネルギー貯蔵装置であることができ、特に限定されないが、非限定的な一例としてリチウム二次電池を挙げることができる。前記リチウム二次電池は公知であり、その構成も知られているので、本発明では具体的に説明しない。
【0120】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、正極と負極の間に前記セパレータを含むものであることができる。このとき、前記正極および負極は、通常リチウム二次電池に使用されるものであれば、限定されることなく使用することができる。
【0121】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下の実施例および比較例は、本発明をより詳細に説明するための一例であって、本発明が以下の実施例および比較例によって限定されるものではない。
【0122】
まず、セパレータの物性測定方法について説明する。
【0123】
[剥離強度変化量]
剥離強度変化量(ΔP)は以下のように計算する。
【0124】
P=P1/P2
【0125】
多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層を含むセパレータにおいて、
前記P1は、本発明の実施例によるセパレータの剥離強度であり、無機物粒子層が無機物粒子と、極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーおよび水溶性高分子バインダーを含む場合におけるセパレータの剥離強度(gf/15mm)である。
【0126】
前記P2は、水溶性高分子バインダーなしで無機物粒子層が無機物粒子と、極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーで構成される場合におけるセパレータの剥離強度であり、多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられ、ベーマイト粒子と(3-アミノプロピル)トリエトキシシランの加水分解縮合物で構成される無機物粒子層を含むセパレータの剥離強度(gf/15mm)である。一実施形態によれば、前記P2は後述する参考例セパレータの剥離強度とすることができる。
【0127】
前記剥離強度(P1、P2)はASTM D 3330を基に測定するが、次の方法で測定する。厚さ200μm、幅15mm、長さ100mm銅板に長さ方向の一端から3M社の両面テープ(Model:665)を幅15mm、長さ60mmで接着した後、前記セパレータの無機物粒子層が対面するように積層および圧着して接着させた後、Instron社のUTM装置を利用して180°ピール(peel)テストで速度300mm/min、変位100mm条件で測定する。
【0128】
[熱収縮率]
セパレータの熱収縮率はASTM D 1204に基づき測定するが、次の方法により測定する。セパレータに一辺が10cmの正方形に2cm間隔で格子点を表示する。この正方形の一辺は幅方向(TD、Transverse Direction)であり、他の一辺は機械方向(MD、Machine Direction)である。試験片を正中間に位置させ、試験片の上下に紙を5枚ずつ置き、紙の四辺をテープで包む。
【0129】
紙で包まれた試験片を130℃の熱風乾燥オーブンに60分間放置する。その後、試験片を取り出し、セパレータをカメラで観察し、下記数学式1の縦方向収縮率および下記数学式2の横方向収縮率を計算する。
【0130】
数学式1
長さ方向の収縮率(%)=(加熱前の長さ方向の長さ-加熱後の長さ方向の長さ)Х100/加熱前の長さ方向の長さ
【0131】
数学式2
幅方向収縮率(%)=(加熱前の幅方向の長さ-加熱後の幅方向の長さ)Х100/加熱前の幅方向の長さ
【0132】
[TMA溶融破断温度]
セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグ(metal jig)に噛ませてTMAチャンバー(Thermomechanical Analyzer、Model: SDTA840(Mettler Toledo)に設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張ったとき、それぞれのMD方向およびTD方向で試験片が破断する温度を導出する。
【0133】
[電解液含浸性]
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)が体積比30:50:20で含まれる溶液に1Mのヘキサフロロリン酸リチウム(LiPF6)が溶解した電解液10μlをマイクロピペットで50mmの高さから各実施例、比較例セパレータ上に1滴滴下(drop)した後、1分間放置した後、電解液が広がった跡の長径を測定して評価した。前記長径は、電解液の跡を横切る長さの中で最も長い長さを意味する。
【0134】
[通気度変化量]
通気度変化量(ΔG)は以下のように計算する。
【0135】
G=G1-G2
【0136】
前記G1は前記のように製造された無機物粒子層を含むセパレータによるガリー透過率であり、
前記G2は前記多孔質基材自体のガリー透過率であり、
ASTM D726に従って測定され、ガリー透過度の単位はsec/100ccである。
【0137】
ガリー透過度は、Toyoseiki社のDensometerを用い、ASTM D 726規格に従って測定する。100ccの空気がセパレータ1平方インチの面積を通過するのにかかる時間を秒単位で記録する。
【0138】
[電池抵抗]
以下の条件で電池を製造し、電池抵抗を測定する。
【0139】
電池の製造
正極活物質の総重量を基準にLiCoO2を94重量%、融着剤としてポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene fluoride)を2.5重量%、導電剤としてカーボンブラック(Carbon-black)を3.5重量%、溶媒であるNMP(N-methyl-2-pyrrolidone)に添加し、撹拌して均一な正極スラリーを製造する。前記製造されたスラリーを30μm厚のアルミニウム箔の上にコーティング、乾燥および圧着して合計150μm厚の正極を製造する。負極活物質の総重量を基準に人工黒鉛を95重量%、融着剤としてTgが-52℃のアクリル系ラテックス(Acrylic latex)を3重量%、増粘剤としてCMC(Carboxymethyl cellulose)を2重量%、溶媒である水に添加して撹拌して均一な負極スラリーを製造する。前記製造されたスラリーを20μm厚の銅箔の上にコーティング、乾燥および圧着して合計150μm厚の負極を製造する。前記製造された正極、負極および実施例、比較例のセパレータを前記正極および負極の間に積層(stacking)する方式でポーチ型電池を組み立てた後、正極、負極およびセパレータを互いに融着させるために組み立てられた電池を熱プレス機で80℃、1MPaで熱融着する。その後、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)が体積比30:50:20で含まれる溶液に1Mのヘキサフロロリン酸リチウム(LiPF6)が溶解した電解液を注入した後、密封して容量2Ahの二次電池を製造した後、J-pulse法で放電抵抗を測定する。
【0140】
{実施例}
[参考例]
コーティングスラリーの製造
蒸留水100重量部に乳酸(lactic acid)1.65重量部および極性シラン化合物として(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane、APTES)1.23重量部を投入してpH4.5の酸の水溶液を設けた。
【0141】
蒸留水100重量部に乳酸(lactic acid)0.5重量部および無機物粒子として平均粒径(D50)0.3μmのベーマイト(boehmite)67重量部を投入した後、6時間激しく撹拌してpH4.5の無機物スラリーを設けた。
【0142】
前記調製した酸の水溶液と無機質スラリーを2:1重量比で撹拌し、pH4超過pH5以下のコーティングスラリーを製造した。
【0143】
多孔質基材の前処理
多孔質基材フィルムとして、9μm厚のポリエチレン多孔質フィルム(気孔率:48%、ガリー透過率:72sec./100cc、引張強度MD 2105kgf/cm2、TD 1885kgf/cm2)の両面をコロナ放電処理(電力密度2W/mm)して表面極性基を導入し、この時、コロナ表面処理は速度3~20mpm(meter per minute)とした。
【0144】
セパレータの製造前記前処理された多孔質基材の両面に前記コーティングスラリーを塗布し、乾燥して両面にそれぞれ1.5μmの厚さで無機物粒子層を形成した。無機物粒子層が設けられた多孔質基材を100℃で12時間エージングするステップを経てセパレータを製造した。
【0145】
[実施例1]
製造されたコーティングスラリー100重量部に水溶性高分子バインダーとしてポリビニルピロリドン(PVP)0.15重量部を追加した以外は参考例と同じ条件で製造した。この時、セパレータの無機物粒子層内の極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダー重量B1対水溶性高分子バインダー重量B2の重量比B2/B1は0.12であった。
【0146】
[実施例2]
製造されたコーティングスラリー100重量部に水溶性高分子バインダーとしてポリビニルピロリドン(PVP)0.3重量部を追加した以外は参考例と同じ条件で製造した。この時、セパレータの無機物粒子層内の極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダー重量B1対水溶性高分子バインダー重量B2の重量比B2/B1は0.24であった。
【0147】
[実施例3]
製造されたコーティングスラリー100重量部に水溶性高分子バインダーとしてポリビニルピロリドン(PVP)0.3重量部を追加した以外は参考例と同じ条件で製造した。この時、セパレータの無機物粒子層内の極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダー重量B1対水溶性高分子バインダー重量B2の重量比B2/B1は0.48であった。
【0148】
[比較例1]
コーティングスラリーを製造する際、蒸留水100重量部に溶融温度が220℃で、鹸化度99%のポリビニルアルコール(PVA)0.25重量部とTgが-52℃のアクリルラテックス(ZEON、BM900B、固形分含量20重量%)2.75重量部を混合し、無機物粒子として平均粒径(D50)0.35μmのベーマイト(boehmite)25重量部を添加したスラリーを製造した以外は実施例3と同じ条件で多孔質基材の両面にそれぞれ1.5μmの厚さの無機物粒子層を形成してセパレータを製造した。
【0149】
[比較例2]
多孔質基材の両面にそれぞれ5μmの厚さの無機物粒子層を形成した以外は、比較例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0150】
[比較例3]
製造されたコーティングスラリー100重量部に水溶性高分子バインダーであるポリビニルピロリドン(PVP)の代わりに非水溶性高分子バインダーであるスチレン-ブタジエンゴム(SBR)0.3重量部を追加添加した以外は実施例2と同じ条件でセパレータを製造しようとしたが、非水溶性高分子バインダーであるSBRの添加によりスラリーの凝集が発生し、スラリーコーティングが進みにくく、無機物粒子層を多孔質基材上に形成することができなかった。このため、比較例3のセパレータを不良と判定し、物性の評価は別途行わなかった。
【0151】
[比較例4]
製造したコーティングスラリーに100重量部に水溶性高分子バインダーポリビニルピロリドン(PVP)の代わりに非水溶性高分子バインダーN-ビニルピロリドンモノマー0.3重量部を追加添加した以外は実施例2と同じ条件でセパレータを製造した。
【0152】
[比較例5]
コーティングスラリーの製造時に極性シラン化合物APTESの代わりに非極性シリン化合物であるビニルトリエトキシシラン(Vinyltriethoxysilane、VTES)を同一含有量1.23重量部を投入して酸の水溶液を製造した以外は実施例2と同じ条件でセパレータを製造したが、無機物粒子層の脱湿(dewetting)により表面にスポット欠陥が多数発生した。これにより、比較例5のセパレータを不良と判定し、物性評価は別途行わなかった。
【0153】
[比較例6]
酸の水溶液を調製する際、蒸留水100重量部に乳酸(lactic acid)6.84重量部および非極性シラン化合物としてビニルトリエトキシシラン(VTES)1.84重量部を投入した後、2時間撹拌してVTESの相分離が起こらないように酸の水溶液を調製した以外は実施例2と同じ条件でセパレータを製造した。
【0154】
[比較例7]
酸の水溶液、無機スラリー調製時に酸の成分として塩酸を使用してpH3.5に維持されるコーティングスラリーを製造した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0155】
[比較例8]
酸の水溶液、無機物スラリー調製時に酸の成分を投入せず、pH8.2に維持されるコーティングスラリーを製造した以外は実施例2と同じ条件でセパレータを製造したが、無機物粒子間に凝集が発生し、無機物粒子層が適切に形成されなかった。これにより、比較例8のセパレータを不良と判定し、物性評価は別途行わなかった。
【0156】
[評価例]セパレータの評価
本発明の前記参考例、実施例および比較例のセパレータの物性評価結果を下記表1にまとめて示した。
【0157】
【0158】
前記表1で、本発明の実施例は参考例に比べて剥離強度変化量が高く、無機物粒子層の接着力/凝集力がさらに向上し、同時に130℃、高温での熱収縮率が低く、TMA溶融破断温度が高く、熱安定性が著しく向上した。また、電解液含浸性が優れており、通気度変化量が全体的に低かった。
【0159】
また、実施例セパレータを用いて製造した二次電池は、比較例セパレータを用いた電池に比べて電池抵抗が低かった。
【0160】
また、実施例1~3の結果を参照すると、B2/B1値が大きくなるほど剥離強度が増加する傾向が確認できた。
【0161】
参考例セパレータと実施例セパレータを比較すると、水溶性高分子バインダーを極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーと一緒に無機物粒子層のバインダーとして使用することで、著しく優れた熱安定性を確保できるとともに、剥離強度を有意に改善できることが分かった。
【0162】
実施例1~3セパレータの通気度変化量ΔGは50sec/100cc以下で、通気度の変化量が比較的低く、電解液含浸性が高かった。つまり、このように本発明の実施例による極性シラン化合物の加水分解縮合物バインダーおよび水溶性高分子バインダーを一緒に使用したセパレータは、今後の電気化学素子に適用する際、高い出力特性および寿命特性を確保するため、より有利であると期待される。
【0163】
また、特に実施例1~3セパレータは、TMAで測定したTMA溶融破断温度で昇温しながらセパレータを引っ張る場合、180℃以上の温度で熱によって溶けて破断し、これはセパレータ多孔質基材として活用されたポリエチレンの融解温度が140℃付近であることを考慮すると、熱収縮率が著しく優れていることが分かる。一方、比較例のセパレータは180℃未満の温度で熱によって溶けて破断し、実施例のセパレータに比べて相対的に熱安定性が劣ることが分かった。
【0164】
一般的な有機高分子系バインダーを使用した比較例1は、実施例セパレータと同様の厚さの無機物粒子層を形成したが、実施例セパレータに比べて熱収縮率が非常に高く、TMA溶融破断温度が低く、熱安定性が著しく劣った。また、特に無機物粒子層の厚さを3倍以上に厚く形成した比較例2も実施例セパレータに比べて熱安定性が劣ることを確認することができ、比較例2の場合、無機物粒子層を厚く形成した結果、電池抵抗特性が非常に劣った。前記の結果から、本発明の実施例によれば、薄い無機物粒子層を多孔質基材上に設けてセパレータを製造しても、従来の有機高分子系バインダーを使用して無機物粒子層を多孔質基材上に設けたセパレータに比べて熱安定性が著しく改善できることを確認した。
【0165】
本発明の実施例とは異なり、水溶性高分子バインダーではなく、非水溶性高分子バインダー(SBR)を使用した比較例3の場合、スラリーの固まりが発生し、スラリーコーティングを行うことが難しく、無機物粒子層を多孔質基材上に形成することができなかった。比較例3とは異なる種類の非水溶性高分子バインダー(N-vinylpyrrolidoneモノマー)を使用した比較例4は、無機物粒子層が形成されたが、無機物粒子層の接着力/凝集力および熱安定性の改善が微々たるものであった。また、実施例に比べて電解液含浸性が相対的に劣っていた。
【0166】
本発明の実施例とは異なり、極性シラン化合物ではなく非極性シラン化合物(VTES)を使用した比較例5は、無機物粒子層のデウェッティングにより表面にスポット欠陥が多数発生した。前記VTESが相分離を起こさないように2時間撹拌した比較例6の場合、比較例5に比べてデウェッティングは多く改善されたが、依然としてスポット欠陥が残っており、電池抵抗の測定は難しく、電池評価は不可能であった。
【0167】
比較例7、8は、pHが低すぎたり、高すぎたりして、目的とする低分子量の極性シラン化合物の加水分解縮合物を得ることができず、このため、目的とする無機物粒子層の接着力/凝集力と、同時に熱安定性を達成することができなかったり、不良品として製造された。
【0168】
以上のように、本発明では特定の事項と限定された実施例および図面によって説明したが、これは本発明のより全体的な理解を助けるために提供されたものであり、本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば、これらの記載から様々な修正および変形が可能である。
【0169】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して定められるものではなく、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価な変形があるすべてのものは、本発明の思想の範疇に属するといえる。