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特開2023-181139セパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181139
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】セパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/489 20210101AFI20231214BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20231214BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20231214BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20231214BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20231214BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20231214BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20231214BHJP
【FI】
H01M50/489
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/446
H01M50/414
H01M50/403 D
H01M50/403 A
H01M50/403 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095080
(22)【出願日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2022-0070352
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】クォン テ ウク
(72)【発明者】
【氏名】ベ フン テク
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB01
5H021BB12
5H021BB15
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE17
5H021EE20
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高温での寸法安定性をさらに向上させると同時に、セパレータが薄膜化されても高容量/高出力特性および優れた耐電圧特性を確保できるセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子を提供する。
【解決手段】多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層を含むセパレータであって、下記式(1)の値が0.135以上のセパレータを提供する。
(1)BDV/t
(前記式(1)中、BDVはASTM D 149に従って測定され、セパレータを耐電圧試験機の電極の間に配置した後、印加電圧を5kV/10秒で昇圧させる条件で測定された漏れ電流値が5mAのときの電圧(kV)であり、tはセパレータの全体平均厚さ(μm)である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層を含むセパレータにおいて、
下記式(1)の値が0.135以上の、セパレータ。
(1)BDV/t
(前記式(1)中、
前記BDVはASTM D 149に従って測定され、前記セパレータを耐電圧試験機の電極間に配置した後、印加電圧を5kV/10秒で昇圧させる条件で測定された漏れ電流値が5mAのときの電圧(kV)であり、
前記tは前記セパレータの全体平均厚さ(μm)である)
【請求項2】
前記無機物粒子層は、無機物粒子の粒度分布において、
(D80-D20)/D50値が0.01~2.0の、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記多孔質基材の平均厚さをtとしたとき、t/t値は0.69以上である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記無機物粒子層のパッキング密度は1.3g/(m・μm)以上の、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むものである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向とするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端を金属治具に噛ませてTMAチャンバーに設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張ったとき、MD方向およびTD方向ともに180℃以上の温度で試験片が破断する耐熱性を有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記セパレータを150℃で60分間放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記無機物粒子層は、無機物粒子およびシラン化合物の加水分解縮合物を含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記シラン化合物の加水分解縮合物は、弱酸性の雰囲気で生成された縮合が抑制された加水分解縮合物であることを特徴とする、請求項8に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記シラン化合物は下記化学式1で示される化合物である、請求項8に記載のセパレータ。
[化学式1]
Si(OR)
(前記化学式1中、Aは、独立して水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である)
【請求項11】
前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含む、請求項10に記載のセパレータ。
【請求項12】
(a)下記化学式1で示されるシラン化合物水溶液に無機物粒子および酸の成分を投入し、攪拌またはバブリングしてスラリーを製造するステップと、
(b)前記製造されたスラリーを表面が親水性表面処理された多孔質基材の少なくとも一面上に塗布して無機物粒子層を形成するステップと、を含む、
下記式(1)の値が0.135以上である、セパレータの製造方法。
[化学式1]
Si(OR)
(前記化学式1中、Aは、独立して水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である)
(1)BDV/t
(前記式(1)中、
前記BDVはASTM D 149に従って測定され、前記セパレータを耐電圧試験機の電極間に配置した後、印加電圧を5kV/10秒で昇圧させる条件で測定された漏れ電流値が5mAのときの電圧(kV)であり、
前記tは前記セパレータの全体平均厚さ(μm)である)
【請求項13】
前記無機物粒子において、
(D80-D20)/D50値が0.01~2.0である、請求項12に記載のセパレータの製造方法。
【請求項14】
前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含む、請求項12に記載のセパレータの製造方法。
【請求項15】
前記(a)スラリーを製造するステップは、
pH4超過pH7以下の弱酸性の雰囲気下で行われるものである、請求項12に記載のセパレータの製造方法。
【請求項16】
前記酸の成分は、二酸化炭素、または酢酸および乳酸から選ばれるいずれか1つまたは2つを含む有機酸、である、請求項12に記載のセパレータの製造方法。
【請求項17】
前記(b)ステップ以後、
(c)前記無機物粒子層が設けられた多孔質基材をエージングするステップと、をさらに含む、請求項12に記載のセパレータの製造方法。
【請求項18】
前記多孔質基材の親水性表面処理は、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうちいずれか一つ以上によって行うものである、請求項12に記載のセパレータの製造方法。
【請求項19】
請求項1~11のいずれか一項に記載のセパレータを含む、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子に関するものであり、特に一実施形態において絶縁破壊電圧が著しく向上したセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、環境にやさしいエネルギーに対する需要が高まる中、携帯電話、PCなどの電子機器をはじめ、電気自動車など様々な分野で電気化学素子の研究が進んでいる。正極と負極の間に介在する絶縁性のセパレータは、電気化学素子の高容量/高出力特性のために厚さを薄膜化する方向に研究が進められており、このようなセパレータの薄膜化傾向によりセパレータの絶縁破壊電圧が減少し、耐電圧特性が低下することが大きな問題となっている。
【0003】
絶縁破壊電圧(dielectric breakdown voltage、BDV)とは、絶縁物に電圧を印加する場合、絶縁物を貫通して火花放電が起こり、その部分が導電性になって絶縁性を失う電圧を意味し、絶縁破壊電圧が高いほど耐電圧特性が優れていると評価する。絶縁破壊電圧は絶縁物の厚さによる依存性が大きく、セパレータの厚さが薄くなるにつれて電気化学素子の絶縁破壊電圧が減少し、電池の安定性が低下する問題が発生する恐れがある。したがって、薄膜化、高容量/高出力特性と同時に優れた耐電圧特性を確保できるセパレータが必要な状況である。
【0004】
また、セパレータは電気化学素子の駆動温度である高温で収縮して内部短絡を引き起こす可能性があり、前記内部短絡により火災発生の恐れがあるため、ユーザーの安全のために高温での寸法安定性は必ず改善しなければならない問題がある。セパレータの高温での寸法安定性を確保するために、無機物粒子層を多孔性基材表面に積層した形態の有機・無機複合多孔質セパレータが開発された。しかし、前記有機-無機複合多孔質セパレータは、高温での寸法安定性をある程度改善しているが、現在市販されている製品の熱安定性はまだ不足している。また、有機-無機複合多孔質セパレータは、無機物粒子層が多孔性基材上に積層された構造で、この場合、セパレータの全体の厚さが厚くなるため、電気化学素子の高容量/高出力特性に不利な問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の問題点を解決するために、本発明は、高温での寸法安定性をさらに向上させると同時に、セパレータが薄膜化されても高容量/高出力特性および優れた耐電圧特性を確保できるセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するための一手段として、本発明の一実施形態によれば、多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層を含むセパレータであって、下記式(1)の値が0.135以上であるセパレータを提供することができる。
【0007】
(1)BDV/t
前記式(1)中、
前記BDVはASTM D 149に従って測定され、前記セパレータを耐電圧試験機の電極間に配置した後、印加電圧を5kV/10秒で昇圧させる条件で測定された漏れ電流値が5mAのときの電圧(kV)であり、
前記tは前記セパレータの全体平均厚さ(μm)である。
【0008】
また、一実施形態によれば、前記無機物粒子層は、無機物粒子の粒度分布において、(D80-D20)/D50の値が0.01~2.0であることができる。
【0009】
また、一実施形態によれば、前記多孔質基材の平均厚さをtとすると、t/tの値が0.69以上のセパレータを提供することができる。
【0010】
また、一実施形態において、前記無機物粒子層のパッキング密度は1.3g/(m・μm)以上であることができる。
【0011】
また、一実施形態において、前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むことができる。
【0012】
また、一実施形態によれば、前記セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向とするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグに噛ませてTMAチャンバーに設置し、毎分5℃に昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張ったとき、MD方向およびTD方向ともに180℃以上の温度で試験片が破断する耐熱性を有するセパレータを提供することができる。
【0013】
また、一実施形態において、前記セパレータを150℃で60分間放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下である場合がある。
【0014】
また、一実施形態において、前記無機物粒子層は、無機物粒子およびシラン化合物の加水分解縮合物を含むことができる。
【0015】
また、一実施形態において、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、弱酸性の雰囲気で生成された縮合が抑制された加水分解縮合物であることができる。
【0016】
また、一実施形態において、前記シラン化合物は、下記化学式1で示される化合物であることができる。
【0017】
[化学式1]
Si(OR)
【0018】
前記化学式1中、Aは、独立して水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。
【0019】
また、一実施形態において、前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0020】
また、前記の課題を達成するための他の一手段として、本発明の一実施形態によれば、(a)下記化学式1で表されるシラン化合物水溶液に無機物粒子および酸の成分を投入し、攪拌またはバブリングしてスラリーを製造するステップと、(b)前記製造されたスラリーを表面が親水性表面処理された多孔質基材の少なくとも一面上に塗布して無機物粒子層を形成するステップと、を含み、下記式(1)の値が0.135以上のセパレータの製造方法を提供することができる。
【0021】
[化学式1]
Si(OR)
【0022】
前記化学式1中、Aは、独立して水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。
【0023】
(1)BDV/t
前記式(1)中、
前記BDVはASTM D 149に従って測定され、前記セパレータを耐電圧試験機の電極間に配置した後、印加電圧を5kV/10秒で昇圧させる条件で測定された漏れ電流値が5mAのときの電圧(kV)であり、
前記tは前記セパレータの全体平均厚さ(μm)である。
【0024】
また、一実施形態において、前記無機物粒子において、(D80-D20)/D50の値が0.01~2.0であることができる。
【0025】
また、一実施形態において、前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0026】
また、一実施形態において、前記(a)スラリーを製造するステップは、pH4超過pH7以下の弱酸性の雰囲気下で行うことができる。
【0027】
さらに、一実施形態において、前記酸の成分は、二酸化炭素、または、酢酸および乳酸から選択されるいずれか1つまたは2つを含む有機酸、であってもよい。
【0028】
また、一実施形態によれば、前記(b)ステップの後、(c)前記無機物粒子層が設けられた多孔質基材をエージングするステップと、をさらに含むセパレータの製造方法を提供することができる。
【0029】
また、一実施形態において、前記多孔質基材の親水性表面処理は、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち、一つ以上を含んで行うことができる。
【0030】
また、上述の課題を達成するための他の一手段として、本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のうち一実施形態によるセパレータを含む電気化学素子を提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
一実施形態としては、多孔質基材の少なくとも一面上に無機物粒子が互いに連結して気孔が形成される無機物粒子層が設けられた二次電池セパレータであり、シラノールまたはアルコキシシラン系化合物を加水分解すると同時に縮合を抑制する特定の条件で製造した極性シラン化合物の加水分解縮合物を無機物粒子層のバインダーとして使用することで、セパレータの熱安定性を著しく向上させることができる。
【0032】
また、同時に、前記一実施形態によれば、前記縮合が抑制されたシラン化化合物の加水分解縮合物であるバインダーと特定の粒度分布を有する無機物粒子層を無機物粒子層に一緒に適用することにより、無機物粒子層のパッキング密度(packing density)をさらに高めることができ、同じ厚さのセパレータでも電熱破壊電圧を向上させ、耐電圧特性を向上させることができる、すなわち、薄い厚さのセパレータでも絶縁破壊電圧を著しく向上させることができる。これにより、高温での寸法安定性をさらに向上させながら、同時に高容量/高出力特性および優れた耐電圧特性を確保することができる。
【0033】
一実施形態としては、下記式(1)の値が0.135以上、0.14以上、0.145以上または0.15以上のセパレータを提供することができる。
【0034】
(1)BDV/t
前記式(1)中、前記BDVはASTM D 149規格に従って測定され、前記セパレータを耐電圧試験機の電極の間に配置した後、印加電圧を5kV/10秒で昇圧させる条件で測定された漏れ電流値が5mAのときの電圧(kV)であり、前記tは前記セパレータの全体平均厚さ(μm)である。
【0035】
一実施形態によるセパレータは、薄い無機物粒子層を多孔質基材の少なくとも片面、好ましくは両面に設けても、高温での寸法安定性をさらに向上させながら、同時に高容量/高出力特性および優れた耐電圧特性を確保することができる。一実施形態において、前記多孔性基材の平均厚さをt とするとき、t/tの値は、0.69以上、0.7以上、0.72以上、0.74以上、1.0未満、0.9以下、0.8以下、または前記数値の間の値であることができる。具体的な一実施形態において、前記t/t値は、0.69以上または0.69以上1.0未満、好ましくは0.72以上または0.72以上1.0未満であることができる。
【0036】
一実施形態において、前記無機物粒子層のパッキング密度は、1.3g/(m・μm)以上、1.32g/(m・μm)以上、1.35g/(m・μm)以上、1.38g/(m・μm)以上、2.5g/(m・μm)以下、2.3g/(m・μm)以下、2.0g/(m・μm)以下、または前記数値の間の値であることができる。
【0037】
一実施形態で無機物粒子の粒度分布において、(D80-D20)/D50の値が0.01~2.0である場合、前記縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物と結合してパッキング密度をさらに高め、また絶縁破壊電圧をさらに高めることができ、これにより耐電圧特性がさらに向上するので、より好ましい。
【0038】
一実施形態において、前記セパレータは、厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグ(metal j ig)に噛ませてTMAチャンバー(Thermomechanical Analyzer、Model:SDTA840(Mettler Toledo))に設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張る時、前記MD方向およびTD方向ともに180℃以上、190℃以上、200℃以上または210℃以上の温度で試験片が破断するより優れた熱安定性を持つことができる。
【0039】
一実施形態において、前記セパレータを150℃で60分間放置した後、測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下、2.5%以下、2%以下または1%以下であることができる。
【0040】
一実施形態で前記多孔性基材にコロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含む親水性表面処理する場合、無機物粒子層のパッキング密度(packing density)をさらに高めることができ、これにより、薄い厚さのセパレータで絶縁破壊電圧を大幅に向上させることができ、より好ましい。
【0041】
前記一実施形態において、無機物粒子層のパッキング密度が高く、全断層破壊電圧が向上して耐電圧特性が増加する理由は明らかではないが、前記コロナまたはプラズマ放電処理によって多孔質基材の表面に極性官能基が設けられ、前記設けられた極性官能基は、無機物粒子層を固定する前記シラン化合物の加水分解縮合物であるバインダーと化学的にまたは水素結合などの二次結合力によって密に結合し、無機物粒子層のパッキング密度をさらに高めることができ、これにより、薄い厚さのセパレータで絶縁破壊電圧を著しく向上させる驚くべき効果が発生すると考えられる。
【0042】
また、好ましい一実施形態では、無機物粒子層を形成した後、エージングプロセスを行うことにより、多孔質基材と無機物粒子層との間の接着力を増加させ、高温での寸法安定性を向上させることができる。
【0043】
最も好ましい一実施形態では、前記物性を全て満足する新しいセパレータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付された図面を含む具体的な実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下の具体例は一つの参考であるだけで、本発明がこれに限定されるものではなく、複数の形態で実施することができる。
【0045】
また、特に定義されていない限り、すべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明で使用される用語は、特定の実施形態を効果的に説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0046】
また、明細書および添付された特許請求の範囲に使用される単数形は、文脈から特別な指示がない限り、複数形も含むことを意図することができる。
【0047】
また、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含めることができることを意味する。
【0048】
本明細書で「D50」とは、体積基準の積算分率で50%に相当する無機物粒子の粒径を意味する。「D80」とは、体積基準の積算分率で80%に相当する無機物粒子の粒径を意味する。「D20」とは、体積基準の積算分率で20%に相当する無機物粒子の粒径を意味する。前記D50、D80、D20は、測定対象の無機物粒子に対してKS A ISO 13320-1規格に基づいて試験片を採取し、Beckman coulter社のMultisizer 4e Coulter counterを利用して分析された粒度分布結果から導き出すことができる。
【0049】
本明細書において「セパレータの全体平均厚さ(t)」とは、多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面に設けられた無機物粒子層を含むセパレータの全体平均厚さを意味する。一実施形態において、前記セパレータの全体平均厚さt(μm)は、次の方法で求めることができる。セパレータを10枚に重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社製厚さ測定器で厚さをそれぞれ測定し、5で割って10枚のセパレータの平均厚さを導出し、再び10で割って単一のセパレータ全体の平均厚さを導出する。
【0050】
本明細書において「多孔質基材の平均厚さ(t)」とは、無機物粒子層が少なくとも一面に設けられていない多孔質基材のみの平均厚さを意味する。一実施形態において、前記多孔性基材の平均厚さt(μm)は、次の方法で求めることができる。無機物粒子層が少なくとも一面に設けられていない多孔質基材のみを10層重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社製厚さ測定器で厚さをそれぞれ測定し、5で割って10層の多孔質基材の平均厚さを導出し、再び10で割って多孔質基材の平均厚さtを導出する。もし無機物粒子層が少なくとも一面に設けられた多孔質基材の平均厚さtを求める場合、無機物粒子層を当該技術分野で公知の方法を制限なく全て活用して脱離させ、十分に乾燥させた後、無機物粒子層が脱離された多孔質基材の平均厚さtを求める。
【0051】
本明細書で「無機物粒子層パッキング密度」とは、多孔性基材の単位面積(m)、単位高さ(μm)にロードされる無機物粒子層の密度(g/(m・μm))を意味する。一実施形態で無機物粒子層のパッキング密度を測定する方法は、以下の方法によって行うことができる。前記方法により、多孔性基材の平均厚さtと、無機物粒子層が多孔性基材上に設けられたセパレータの全体平均厚さtをそれぞれ測定した後、前記セパレータの全体平均厚さtから多孔性基材の平均厚さtを差し引いて無機物粒子層の厚さ(T、μm)を計算する。前記無機物粒子層が多孔性基材の少なくとも一面に設けられたセパレータを10mmx10mm(0.01m)面積(S、m)に切って重量を測定した後、多孔性基材の重量を引いて無機物粒子層のみの重量(W、g)を計算する。無機物粒子層のパッキング密度はW/(T*S)で計算する。
【0052】
一実施形態によると、多孔質基材の少なくとも一面上に無機物粒子が互いに接続されて気孔が形成される無機物粒子層が設けられた二次電池セパレータで、シラノールまたはアルコキシシラン系化合物を加水分解すると同時に縮合を抑制する特定の条件で製造した極性シラン化合物の加水分解縮合物を無機物粒子層のバインダーとして使用して、セパレータの熱安定性を著しく向上させることができる。
【0053】
また、同時に、前記一実施形態によれば、前記縮合が抑制されたシラン化化合物の加水分解縮合物であるバインダーと特定の粒度分布を有する無機物粒子層を無機物粒子層に一緒に適用することで、無機物粒子層のパッキング密度をさらに高めることができ、これにより、薄い厚さのセパレータで絶縁破壊電圧を大幅に向上させることができる。これにより、高温での寸法安定性をさらに向上させながら、同時に高容量/高出力特性および優れた耐電圧特性を確保することができる。
【0054】
これは確実ではないが、縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物であるバインダーとして無機物粒子をより緊密かつ強く連結、固定することができ、特定の粒度分布を持つ無機物粒子を利用して不要な空隙を減らすことができ、前記の効果を達成できると推測される。
【0055】
一実施形態としては、下記式(1)の値が0.135以上、0.14以上、0.145以上または0.15以上のセパレータを提供することができる。
【0056】
(1)BDV/t
前記式(1)中、前記BDVはASTM D 149に従って測定され、前記セパレータをドライルーム(露点温度:-60℃)下で耐電圧試験機(Croma社19052モデル)の電極間に配置した後、印加電圧を5kV/10秒で昇圧させる条件で測定された漏れ電流値が5mAであるときの電圧(kV)である。このときの電圧を絶縁破壊電圧として評価する。前記tは前記セパレータの全体平均厚さ(μm)である。
【0057】
一実施形態によるセパレータは、薄い無機物粒子層を多孔質基材の少なくとも片面、好ましくは両面に設けても、高温での寸法安定性をさらに向上させながら、同時に高容量/高出力特性および優れた耐電圧特性を確保することができる。一実施形態において、前記多孔性基材の平均厚さをtとするとき、t/tの値は、0.69以上、0.7以上、0.72以上、0.74以上、1.0未満、0.9以下、0.8以下、または前記数値の間の値であることができる。具体的な一実施形態において、前記t/t値は、0.69以上または0.69以上1.0未満、好ましくは0.72以上または0.72以上1.0未満であることができる。
【0058】
一実施形態において、前記無機物粒子層のパッキング密度は、1.3g/(m・μm)以上、1.32g/(m・μm)以上、1.35g/(m・μm)以上、1.38g/(m・μm)以上、2.5g/(m・μm)以下、2.3g/(m・μm)以下、2.0g/(m・μm)以下、または前記数値の間の値であることができる。
【0059】
一実施形態は、セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタル(metal j ig)に噛ませてTMAチャンバー(Thermomechanical Analyzer、Model: SDTA840(Mettler Toledo))に設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張るとき、前記MD方向およびTD方向ともに180℃以上、190℃以上、200℃以上、または210℃以上の温度で試験片が破断するより優れた熱安定性を持つセパレータを提供することができる。
【0060】
一実施形態において、前記セパレータは、150℃で60分放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下、2.5%以下、2%以下または1%以下であることができる。
【0061】
前記の物性を達成することを前提に、セパレータの構成を特に限定しない。
【0062】
前記物性を付与する一手段として一実施形態として、多孔性基材および前記多孔性基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層を含むセパレータにおいて、前記無機物粒子層は、無機物粒子および前記シラン化合物の加水分解縮合物を含むセパレータを提供することができる。また、前記セパレータは、前記多孔質基材の表面をコロナまたはプラズマ放電処理して極性官能基を導入し、縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物を無機物粒子層のバインダーとして採用することにより得ることができるが、前記物性を有するセパレータを実現する限り、その製造手段を限定するものではない。
【0063】
前記一実施形態で無機物粒子層のパッキング密度が高く、全断層破壊電圧が向上して耐電圧特性が増加する理由は定かではないが、前記コロナまたはプラズマ放電処理により多孔質基材の表面に極性官能基が設けられ、前記設けられた極性官能基は、無機物粒子層を固定する前記シラン化合物の加水分解縮合物であるバインダーと化学的にまたは水素結合などの二次結合力などによって密に結ばれ、無機物粒子層のパッキング密度をさらに高めることができ、これにより薄い厚さのセパレータで絶縁破壊電圧を著しく向上させる驚くべき効果が発生すると考えられる。
【0064】
以下、本発明の実施例によるセパレータの各構成について説明する。
【0065】
一実施形態によれば、前記多孔質基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどを使用することができ、これらからなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の樹脂からなるフィルムまたはシートであることができる。
【0066】
前記ポリオレフィン系多孔質基材は、通常フィルム状に製造され、電気化学素子のセパレータとして一般的に使用されるものであれば限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびこれらの共重合体などを例示できるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0067】
前記多孔質基材の厚さは特に限定しないが、例えば、1μm以上、3μm以上、5μm以上、100μm以下、50μm以下、30μm以下、20μm以下、15μm以下、または前記数値の間の値であってもよい。多孔性基材の厚さは、非限定的な例として1~100μm、好ましくは5~50μm、さらに好ましくは5~30μmであることができる。前記多孔性基材は、一例によれば、延伸して製造された多孔性高分子基材であることができる。
【0068】
一実施形態において、前記多孔性基材は、表面に極性官能基を含むものであってもよい。前記極性官能基の非限定的な例としては、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基などを挙げることができるが、特に限定されるものではない。前記極性官能基は、一例によれば、親水性表面処理で導入されたものであることができ、前記親水性表面処理は、一例によれば、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含んで実施することができる。前記多孔性基材の表面に設けられた極性官能基と後述するシラン化合物の加水分解縮合物であるバインダーが密に化学的にまたは水素結合などの二次結合によって無機物粒子層のパッキング密度をさらに高めることができ、これにより、薄い厚さのセパレータで絶縁破壊電圧を著しく向上させることができるので好ましい。
【0069】
一実施形態において、無機物粒子層は、無機物粒子とシラン化合物の加水分解縮合物を含むことができ、無機物粒子がシラン化合物の加水分解縮合物によって連結、固定されて気孔を形成した多孔質無機物粒子層であることができる。一実施形態において、前記無機物粒子層は、多孔性基材の少なくとも一面に設けられ、多孔性基材の全体表面を基準にして面積分率60%以上、70%以上、80%以上または90%以上を占めることができる。
【0070】
一実施形態において、前記無機物粒子層は、多孔性基材の少なくとも片面、好ましくは両面にコーティングすることができ、前記多孔性基材の両面に無機物粒子層がコーティングされる場合、片面と他の片面にコーティングされた無機物粒子層の厚さは、互いに同じか、異なることができる。特に限定されるものではないが、一実施形態で一面にコーティングされる無機物粒子層の厚さは、0μm超過、0.3μm以上、0.5μm以上、2μm以下、1.5μm以下、1μm以下、または前記数値の間の値であることができる。具体的な一実施形態において、前記無機物粒子層の厚さは、0μm超過2μm以下、好ましくは0μm超過1.5μm以下、より好ましくは0μm超過1μm以下であることができる。
【0071】
一実施形態として、前記無機物粒子は、この技術分野に使用する無機物粒子であれば限定されない。非限定的な例として、前記無機物粒子は、金属水酸化物、金属酸化物、金属窒化物および金属炭化物のうちの一つまたは二つ以上を含むことができ、またはSiO、SiC、MgO、Y、Al、CeO、CaO、ZnO、SrTiO、ZrO、TiOおよびAlO(OH)のうちの一つまたは二つ以上を含むことができる。電池の安定性などの観点から、無機物粒子は、好ましくはベーマイト(bohemite)のような金属水酸化物粒子であることができる。
【0072】
前記金属水酸化物は特に限定しないが、非限定的な例として、ベーマイト(boehmite)、水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)および水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)のいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。一実施形態として、前記ベーマイトを使用する場合、例えば比表面積(BET)は10m/g以上または15m/g以上であることができるが、これに限定されるものではない。
【0073】
より好ましくは、前記無機物粒子はベーマイト(boehmite)であることができ、このとき、ベーマイトの比表面積(BET)は10m/g以上、具体的には比表面積は15m/g以上であることができる。
【0074】
一実施形態としては、特定の粒度分布を有する無機物粒子と後述する縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物であるバインダーを無機物粒子層に一緒に適用することで、無機物粒子層のパッキング密度をさらに高めることができ、これにより、薄い厚さのセパレータで絶縁破壊電圧を著しく向上させることができる。一実施形態として、前記無機物粒子の粒度分布において、(D80-D20)/D50の値は、0.01以上、0.03以上、0.05以上、0.1以上、0.2以上、2.0以下、1.8以下、1.5以下、1.3以下、1.2以下、または前記数値の間の値であることができる。非限定的な例として、前記(D80-D20)/D50の値は0.01~2.0、または好ましくは0.01~1.8、またはさらに好ましくは0.01~1.5であることができる。無機物粒子が前記範囲の粒度分布を満たす場合、前記縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物と結合してパッキング密度をさらに高め、また絶縁破壊電圧をさらに高めることができ、これにより耐接圧特性がさらに向上するので、より好ましい。
【0075】
前記粒度分布を満足する限り特に限定されないが、前記無機物粒子のD50値の非限定的な例としては、0.3μm以下または0.25μm以下であることができる。
【0076】
次に、前記無機物粒子を連結して気孔が形成された無機物粒子層を形成するバインダーの実施形態を説明する。本発明の一実施形態によれば、前記バインダーとしては、シラン化合物の加水分解縮合物をバインダーとして使用することができる。
【0077】
前記シラン化化合物の加水分解縮合物であるバインダーの一実施形態としては、下記化学式1で示される極性シラン化化合物を縮合するが、特定の条件下で加水分解および縮合した分子量が非常に抑制された低分子量の縮合物であることができる。
【0078】
[化学式1]
Si(OR)
【0079】
前記化学式1中、Aは、独立して水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。好ましい一実施形態では、前記化学式1のシラン化合物において、bが3であることを利用して縮合した低分子量の縮合物を使用することが、結合力などの点で好ましい場合がある。
【0080】
一実施形態において、前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれかであるか、これらに反応する反応性基であることができる。一実施形態によれば、前記極性官能基は、アミノ基(amino group)であることができる。
【0081】
前記化学式1を満たすシラン化合物の非限定的な例としては、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)および(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン((3-Glycidyloxypropyl)trimethoxysilane)などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上の混合物であってもよいが、特に限定しない。
【0082】
一実施形態において、シラン化合物の加水分解縮合物は、シラン化合物が加水分解されると同時に縮合が抑制された条件で調製されるため、低分子量を有する。一実施形態において、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、弱酸性の雰囲気で生成された縮合が抑制された加水分解縮合物であることができ、弱酸性の雰囲気で縮合反応が抑制され、非常に小さな分子量で設けることができる。一実施形態において、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、例えば、数平均分子量4000以下、2000以下または1000以下の低分子量加水分解縮合物であることができる。
【0083】
一方、通常、前記化学式1のシラン化合物を無機酸等の強酸により縮合させる場合、4000超過の数千の数平均分子量を有するポリシロキサン縮合物が生成されるが、本発明の一実施形態の縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物は、それ自体の加水分解物、モノマー形態の未反応物および二量体加水分解縮合物が主成分で、微量の三量体加水分解縮合物または四量体加水分解縮合物を含む加水分解縮合物であることに違いがある。
【0084】
すなわち、一実施形態において、シラン化合物の加水分解縮合物は、前記シラン化合物の加水分解物、モノマー、加水分解され縮合された二量体、三量体、四量体および五量体などの多量体から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0085】
前記のような低分子量のシラン化合物の加水分解縮合物は、posESI FT-ICRMS(メーカー:Bruker、モデル名:Solarix 2XR)を使用してpositive ESI-MS分析時に検出される検出ピークから確認することができる。すなわち、前記positive ESI-MS分析の結果、加水分解物であるシランオールおよび縮合物である二量体ピークが主成分として観測され、微量の三量体および四量体ピークが観測され、五量体以上のピークは通常のスラリーを製造する期間である1日または2日以内にはほとんど検出されない。しかし、無機酸である塩酸を使用して24時間加水分解・縮合する場合、別途添付はしないが、高分子量のピークが複雑に観測される。これらの結果から、前記一実施形態の弱酸性の雰囲気で調製したシラン化合物の加水分解縮合物と、通常の無機酸などで製造した加水分解縮合物とは異なる形態の物質が得られることが確認できる。
【0086】
一実施形態によるシラン化合物の加水分解縮合物は、極性官能基を含むシラン化合物を加水分解反応に比べて縮合反応が比較的抑制された条件で縮合し、比較的低分子量で調製され、通常、無機酸などによって高分子量で縮合されて調製されるポリシロキサン縮合物に比べて、同一重量で多くの極性基の割合を確保することができる。驚くべきことに、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、無機物粒子同士をつなぐ結合力がさらに向上し、高温での寸法安定性をさらに向上させることができる。さらに、多孔性基材の表面を親水性表面処理する場合、前記表面処理で導入された極性官能基と前記バインダーが相互作用して、多孔性基材上の無機物粒子層をしっかりと密着させてパッキング密度を増加させることができ、絶縁電圧を高めることができ、耐電圧特性を高めることができるので好ましい。
【0087】
一実施形態において、前記縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物は、pH4超過pH7条件の弱酸性の雰囲気下で得ることができ、非限定的な一例によれば、特に二酸化炭素、酢酸および乳酸のいずれか1つまたは2つ以上を水溶液相に投入して前記pH範囲の弱酸性の雰囲気を設けることができ、投入する方法は、酸溶液を液体として混合したり、酸性ガスをブローまたはバブリングすることができる。
【0088】
次に、前記セパレータの製造方法の実施形態を説明する。
【0089】
一実施形態として、(a)下記化学式1で示されるシラン化合物水溶液に無機物粒子および酸の成分を投入し、攪拌またはバブリングしてスラリーを製造するステップと、(b)前記製造されたスラリーを表面が親水性表面処理された多孔質基材の少なくとも一面上に無機物粒子層を形成するステップと、を含むセパレータの製造方法を提供することができる。
【0090】
[化学式1]
Si(OR)
【0091】
前記化学式1中、Aは、独立して水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。
【0092】
前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含むものであってもよい。
【0093】
以下、前記一実施形態によるセパレータの製造方法の各ステップについて説明する。前記各シラン化合物、無機物粒子、多孔性基材についての説明は前述と同様であるため、便宜上省略する。
【0094】
本発明の一実施形態によれば、(a)ステップでシラン化合物を加水分解反応に対して縮合反応を相対的に抑制して、シラン化合物の加水分解縮合物を調製する。その結果、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、それ自体の加水分解物、モノマー形態の未反応物および二量体加水分解縮合物を主成分として、微量の三量体加水分解縮合物または四量体加水分解縮合物を含み、非常に低分子量の分子量、例えば数平均分子量4000以下、2000以下または1000以下の分子量を有することができる。そして、本発明の一実施形態によるシラン化合物の加水分解縮合物は、通常の無機酸などの強酸によって縮合されて4000超過の数千の数平均分子量を有するポリシロキサン縮合物とは異なる。
【0095】
一実施形態において、加水分解反応に対して縮合反応を相対的に抑制するための手段として、前記(a)スラリーを製造するステップは、弱酸性の雰囲気で行うことができる。一実施形態において、前記弱酸性の雰囲気は、pH4超過、pH4.5以上、pH5以上、pH5.5以上、pH6以上、pH6.5以上pH7以下、または前記数値の間の値であることができる。一実施形態において、前記弱酸性の雰囲気は、pH4超過pH7以下またはpH4.5以上pH7以下であることができる。
【0096】
一方、pH4以下の場合や、塩基性の雰囲気(pH7超過)である場合や、硫酸または塩酸などの無機酸を用いる場合、加水分解反応・縮合反応時には、目的とする縮合反応が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物が得られず、高温での寸法安定性を十分に改善できない恐れがあり、製造されたスラリーの分散性が悪くなり、前記バインダーの凝集により無機物粒子の充填時に問題が発生する可能性がある。また、無機物粒子層の厚さが非常に不均一に形成され、本発明で目的とする高容量/高出力特性や耐電圧特性の確保が困難になる可能性がある。
【0097】
また、前記(a)スラリーを製造するステップにおいて、スラリーを構成する成分を投入する方法や、順序については特に限定せず、可能な全ての方法を活用することができる。例えば、一実施形態では、前記化学式1で示されるシラン化合物および酸の成分を含む酸の水溶液を別途設け、無機物粒子、酸の成分および水を攪拌して無機物スラリーを別途設けた後、前記別途設けた酸の水溶液、無機物スラリーを攪拌することにより、コーティングスラリーを製造することができる。
【0098】
一実施形態によれば、(a)プロセスの酸の成分は、二酸化炭素、または酢酸および乳酸から選択される1つまたは2つを含む有機酸であってもよい。二酸化炭素は、シラン化合物水溶液に投入された後、攪拌またはバブリングする場合、炭酸になることができる。前記酸の成分を使用する場合、本発明の効果をよりよく達成することができ、縮合反応を前記pH範囲で容易に抑制することができるため、より好ましいが、本発明の物性を有するセパレータが提供される限り、これに限定されるものではない。
【0099】
スラリーを製造する方法は、当該技術分野で公知の通常の方法を制限なくすべて適用することができ、特に制限はないが、非限定的な例によれば、0~60℃で1時間~5日間攪拌して無機物粒子を分散してスラリーを製造することができ、ボールミルを利用して凝集した無機物粒子を分散することもできる。
【0100】
本発明の一実施形態によれば、(b)ステップで親水性表面処理された多孔質基材の少なくとも一面に無機物粒子層を設けることができる。前記スラリーを塗布する方法としては、当該技術分野で公知の通常の方法を制限なくすべて適用することができ、前記無機物粒子層を形成するための乾燥は特に制限されないが、100℃以下、または30~60℃で乾燥することができる。
【0101】
一実施形態で多孔性基材の親水性表面処理は、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上によって得ることができ、前記親水性表面処理でカルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基などの極性官能基を導入することができる。多孔性基材の表面に極性官能基を含む場合、無機物粒子層を固定する前記シラン化合物の加水分解縮合物であるバインダーと前記多孔性基材上の極性官能基が化学的にまたは水素結合などで相互作用して無機物粒子層のパッキング密度をさらに高めることができ、これにより、薄い厚さのセパレータで絶縁破壊電圧を大幅に向上させることができ、好ましい。
【0102】
好ましい一実施形態では、前記乾燥後、前記無機物粒子層が形成された多孔質基材をエージングするステップをさらに含むことができる。具体的には、前記エージングは50~150℃、好ましくは65~120℃で行うことができ、エージング時間は2~24時間行うことができ、好ましくは10~20時間行うことができる。より好ましくは70~120℃の温度範囲で10~15時間行うことができる。前記エージングを通じて、多孔性基材と無機物粒子層間の接着力を増加させ、高温での寸法安定性をさらに向上させることができるので好ましい。
【0103】
本発明の一実施形態によれば、前記実施形態のうち一実施形態によるセパレータを含む電気化学素子を提供することができ、前記電気化学素子は、公知の全てのエネルギー貯蔵装置であることができ、特に限定されないが、非限定的な一例としてリチウム二次電池を挙げることができる。前記リチウム二次電池は公知であり、その構成も知られているので、本発明では具体的に説明しない。
【0104】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、正極と負極の間に前記セパレータを含むものとすることができる。このとき、前記正極および負極は、通常リチウム二次電池に使用されるものであれば、限定されることなく使用することができる。
【0105】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下の実施例および比較例は、本発明をより詳細に説明するための一例であって、本発明が以下の実施例および比較例によって限定されるものではない。
【0106】
まず、セパレータの物性測定、評価方法について説明する。
【0107】
[セパレータの平均厚さ(t、t)]]
セパレータの全体平均厚さt(μm)は以下の方法で求める。セパレータを10枚重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社の厚さ測定器で厚さをそれぞれ測定し、5で割って10枚のセパレータの平均厚さを導出し、再び10で割って単一セパレータ全体の平均厚さを導出する。
【0108】
多孔質基材の平均厚さt(μm)は、以下の方法で求める。無機物粒子層が少なくとも片面に設けられていない多孔質基材のみを10枚重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社製厚さ測定器で厚さをそれぞれ測定し、5で割って10枚の多孔質基材の平均厚さを導出し、再び10で割って多孔質基材の平均厚さtを導出する。もし無機物粒子層が少なくとも一面に設けられた多孔質基材の平均厚さtを求める場合、無機物粒子層を当該技術分野で公知の方法を制限なく全て活用して脱離させ、十分に乾燥させた後、無機物粒子層が脱離された多孔質基材の平均厚さtを求める。
【0109】
[無機物粒子層のパッキング密度]
無機物粒子層のパッキング密度は以下の方法により測定される。
【0110】
前記方法により、多孔質基材の平均厚さtと、無機物粒子層が多孔質基材上に設けられたセパレータの全体平均厚さtをそれぞれ測定し、前記セパレータの全体平均厚さtから多孔質基材の平均厚さtを引いて無機物粒子層の厚さ(T、μm)を計算する。無機物粒子層が多孔性基材上に設けられたセパレータを10mmx10mm(0.01m)面積(S、m)に切って重量を測定した後、多孔性基材のみの重量を引いて無機物粒子層のみの重量(W、g)を計算する。無機物粒子層のパッキング密度はW/(T*S)(g/(m・μm))で計算する。
【0111】
[耐電圧特性(BDV/t)]
絶縁破壊電圧(BDV)はASTM D 149に従って測定され、セパレータをドライルーム(露点温度:-60℃)下で耐電圧試験機(Croma社19052モデル)の電極間に配置し、印加電圧を5kV/10秒で昇圧させる条件で測定された漏れ電流値が5mAのときの電圧(kV)で評価する。
【0112】
セパレータの全体平均厚さt(μm)は、前記のようにセパレータを10枚に重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社の厚さ測定器で厚さをそれぞれ測定し、5で割って10枚のセパレータの平均厚さを導出し、再び10で割って単一のセパレータ全体の平均厚さを導出する。
【0113】
その後、厚さに対して確保された絶縁破壊電圧を比較するために、セパレータの全体平均厚さtに対する前記測定された絶縁破壊電圧BDVの比であるBDV/tの値を求める。
【0114】
[熱収縮率]
セパレータの熱収縮率はASTM D 1204に基づき測定するが、次の方法で測定する。セパレータに一辺が10cmの正方形に2cm間隔で格子点を表示する。この正方形の一辺は幅方向(TD、Transverse Direction)、もう一辺は機械方向(MD、Machine Direction)である。試験片を正中間に位置させ、試験片の上下に紙を5枚ずつ置き、紙の四辺をテープで包む。紙で包まれた試験片を 150℃の熱風乾燥オーブンに60分間放置する。その後、試験片を取り出し、セパレータをカメラで観察し、下記数学式1の縦方向収縮率および下記数学式2の横方向収縮率を計算する。
【0115】
数学式1
長さ方向の収縮率(%)=(加熱前の長さ方向の長さ-加熱後の長さ方向の長さ)Х100/加熱前の長さ方向の長さ
【0116】
数学式2
幅方向収縮率(%)=(加熱前の幅方向の長さ-加熱後の幅方向の長さ)Х100/加熱前の幅方向の長さ
【0117】
[TMA溶融破断温度]
セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグ(metal jig)に噛ませてTMAチャンバー(Thermomechanical Analyzer、Model: SDTA840(Mettler Toledo)に設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張ったとき、それぞれのMD方向およびTD方向で試験片が破断する温度を導出する。
【0118】
[電池抵抗]
以下の条件で電池を製造し、J-pulse法により放電抵抗を測定する。
【0119】
電池の製造
正極活物質としてLiCoOを94重量%、融着剤としてポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene fluoride)を2.5重量%、導電剤としてカーボンブラック(Carbon-black)を3.5重量%、溶媒であるNMP(N-methyl-2-pyrrolidone)に添加し、攪拌して均一な正極スラリーを製造する。前記製造されたスラリーを30μm厚のアルミニウム箔の上にコーティング、乾燥および圧着して合計150μm厚の正極を製造する。負極活物質として人工黒鉛を95重量%、融着剤としてTgが-52℃のアクリル系ラテックス(Acrylic latex)を3重量%、増粘剤としてCMC(Carboxymethyl cellulose)を2重量%、溶媒である水に添加して攪拌して均一な負極スラリーを製造する。前記製造されたスラリーを20μm厚の銅箔の上にコーティング、乾燥および圧着して合計150μm厚の負極を製造する。前記製造された正極、負極および実施例、比較例のセパレータを、セパレータが前記正極および負極の間に介在するように積層(stacking)する方式でポーチ型電池を組み立てた後、正極、負極およびセパレータを互いに融着させるために組み立てられた電池を熱プレス機で80℃、1MPaで熱融着する。その後、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)が体積比30:50:20で含まれる溶液に1Mのヘキサフロロリン酸リチウム(LiPF)が溶解した電解液を注入し、密封して容量2Ahの二次電池を製造する。
【0120】
{実施例}
[実施例1]
スラリーの製造
蒸留水100重量部にシラン化合物として(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane、APS)3.5重量部を添加し、ドライアイスを用いてCOバブリングを行うと同時に、無機物粒子としてベーマイト(γ-AlO(OH)、boehmite)(D20:0.13μm、D50:0.15μm、D80:0.22μm、(D80-D20)/D50:0.6)31重量部を添加した。COバブリングを進めながら内部のpHを4~5に維持してボールミル攪拌およびバブリングを48時間行い、スラリーを製造した。
【0121】
多孔質基材の前処理
多孔質基材フィルムとして、9μm平均厚さ(t)のポリエチレン多孔質フィルム(気孔率:52%、ガリ透過率:82sec./100cc、引張強度 MD 2120kgf/cm、TD 1915kgf/cm)の両面をコロナ放電処理(電力密度2W/mm)して表面極性期を導入し、この時、コロナ表面処理は速度3~20mpm(meter per minute)とした。
【0122】
セパレータの製造
前記前処理された多孔質基材の両面に前記スラリーを塗布し、乾燥して両面にそれぞれ1.5μmの平均厚さで無機物粒子層を形成した(t=12μm)。無機物粒子層が設けられた多孔性基材を100℃で12時間エージングする段階を経てセパレータを製造した。t/tは0.75であった。
【0123】
[実施例2]
スラリー製造時にCOバブルリングの代わりに酢酸を使用した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0124】
[実施例3]
スラリー製造時に以下の粒度分布を有する無機物粒子を用いた以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0125】
- ベーマイト: D20:0.15μm、D50:0.24μm、D80:0.4μm、(D80-D20)/D50:1.04。
【0126】
[比較例1]
スラリー製造時、蒸留水100重量部に溶融温度が220℃で、鹸化度99%のポリビニルアルコール(PVA)0.25重量部とTgが-52℃のアクリルラテックス(ZEON、BM900B、固形分含量20重量%)2.75重量部を混合し、無機物粒子としてベーマイト(D20:0.13μm、D50:0.5μm、D80:0.72μm、(D80-D20)/D50:1.18)25重量部を添加したスラリーを製造した以外は実施例1と同じ条件で多孔性基材の両面にそれぞれ1.5μmの平均厚さの無機物粒子層を形成してセパレータを製造した。
【0127】
[比較例2]
スラリー製造時に酸の成分としてCOバブルリングの代わりに硫酸を使用してpH3.5に維持されるスラリーを製造した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0128】
[比較例3]
スラリー製造時に別途酸の成分を投入せず、pH8.2でスラリーを製造した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0129】
[比較例4]
スラリー製造時に実施例1のベーマイトの代わりに無機物粒子としてベーマイト(D20:0.21μm、D50:0.5μm、D80:1.22μm、(D80-D20)/D50:2.02)を同一含有量で添加してスラリーを製造した以外は、実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0130】
[評価例]セパレータ評価
本発明の前記実施例および比較例のセパレータの物性評価結果を下記表1にまとめて示した。
【0131】
【表1】
【0132】
前記表1から、本発明に属する実施例セパレータは、無機物粒子層のパッキング密度が高く、耐電圧特性が著しく優れており、同時に150℃、高温での熱収縮率が低く、TMA溶融破断温度が高く、高温での寸法安定性が著しく向上したが、本発明に属さない比較例セパレータは、これらの物性を全て満たさないことが分かる。また、実施例セパレータを用いて製造した二次電池は、比較例セパレータを用いた電池に比べて全体的に電池抵抗が低かった。
【0133】
また、実施例1~3セパレータは、TMAで測定したTMA溶融破断温度がMD方向およびTD方向ともに180℃以上の温度で熱によって溶融して破断し、これはセパレータ多孔性基材として活用されたポリエチレンの溶融温度が140℃付近であることを考慮すると、熱収縮率が著しく優れていることが分かる。一方、比較例のセパレータは180℃未満の温度で熱によって溶けて壊れ、実施例のセパレータに比べて相対的に熱安定性が劣ることが分かった。
【0134】
一般的な有機高分子系バインダーを使用した比較例1は、実施例セパレータと同様の厚さの無機物粒子層を形成したが、目的とする耐電圧特性を確保することができず、実施例セパレータに比べて熱収縮率が非常に高く、TMA溶融破断温度が低く、熱安定性が著しく劣っていた。
【0135】
比較例2、3は、pHが低すぎたり、高すぎたりして、目的とする低分子量のシラン化合物の加水分解縮合物を得ることができず、このため目的とする耐電圧特性と、同時に熱安定性を達成することができなかった。
【0136】
比較例4は、無機物粒子のD50の大きさが過大で、本発明で限定する粒度分布を満足できず、目的とする耐電圧特性を確保できなかった。
【0137】
以上のように本発明では、特定の事項と限定された実施例および図面によって説明したが、これは本発明のより全体的な理解を助けるために提供されたものであり、本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば、これらの記載から様々な修正および変形が可能である。
【0138】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して定められるものではなく、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価な変形があるすべてのものは、本発明の思想の範疇に属するといえる。