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特開2023-181140結合アッセイにおけるビオチン干渉を無効にするための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181140
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】結合アッセイにおけるビオチン干渉を無効にするための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
G01N33/53 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023095241
(22)【出願日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】22178270.9
(32)【優先日】2022-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510259921
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス プロダクツ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト・シュヴァルツ
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・ツァンダー
(72)【発明者】
【氏名】カロリン・バルシェック
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・エーム
(57)【要約】
【課題】結合アッセイにおける起こり得るビオチン干渉を効率的に無効にすることを可能にする代替の方法および手段を提供すること。
【解決手段】本発明は、サンプル中の被検体を検出するための結合アッセイにおける、ビオチン干渉を無効にするための方法であって、サンプルを多孔性構造を有する吸着性物質と接触させる方法、に関する。本発明は、結合アッセイにおけるビオチン干渉を無効にするための吸着性物質の使用およびサンプル中の被検体を検出するための結合アッセイにおけるビオチン干渉を無効にするためのコーティングされた固相系にさらに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の被検体の検出のための結合アッセイにおけるビオチン干渉を無効にするための方法であって、結合アッセイは、サンプルを、少なくともビオチン化された成分およびビオチンが結合する成分と接触させることを含み、サンプルを、ビオチン化された成分およびビオチンが結合する成分と接触させる前か、またはビオチン化された成分およびビオチンが結合する成分と接触させている間に、吸着性物質と接触させ、吸着性物質は、300~6500m-1の合計表面積(SBet)を有する多孔性構造を有し、かつ少なくともマクロ細孔、メソ細孔、およびミクロ細孔を有し、ミクロ細孔の体積(Vmic)は、0.15~0.75cm-1である、方法。
【請求項2】
吸着性物質は、活性炭、金属有機構造体(MOF)、ゼオライト、クレイ、多孔性有機高分子(POP)、ヒドロタルサイト、有機無機ハイブリッド、多孔性金属酸化物、ジルコニウム酸リチウム、またはメソ多孔性シリカ材料(MSM)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サンプルを、粉末、粒状材料、またはマイクロファイバー混合物の形態の吸着性物質と混合して懸濁液を形成することによって、サンプルを、物質と接触させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ビオチン化された成分およびビオチンが結合する成分と続いて接触する前に、サンプルを、吸着性物質の懸濁液から除去する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
サンプルを、吸着性物質でコーティングされた固相と接触させることによって、サンプルを、物質と接触させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
吸着性物質でコーティングされた固相は、フィルター、液体容器の表面、ピペットチップ、およびラテックス、Sepharose、アガロース、プラスチック、ガラス、タンパク質、アルギネート、シリケート、または金属で構成された粒子からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
吸着性物質は、1つまたはそれ以上のブロッキングタンパク質またはブロッキングペプチド、好ましくは、デキストラン、アルブミン、ポリゲリン、および乳タンパク質からなる群からの1つまたはそれ以上のブロッキングタンパク質を用いて前処理されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
吸着性物質は、40kDaを下回る質量の生体分子に対する透過性を有する孔径を有する、高分子-コーティング物質のビーズの形態で提供される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ビオチンが結合する成分は、ビオチン結合アビジン、ストレプトアビジン、タマビジン1もしくは2、シュワンアビジン(shwanavidin)、リザビジン(rhizavidin)、ブラダビジン、ブルクアビジン(burkavidin)、ゼバビジン(zebavidin)、キセンアビジン(xenavidin)、および/またはストロングアビジン(strongavidin)を含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ビオチンが結合する成分および/またはビオチン化された成分は、ペプチド、タンパク質、抗体、抗体断片、アフィマー、またはアプタマーを含有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ビオチン化された成分は、シグナル生成系の第1の成分を含有し、ビオチンが結合する成分は、シグナル生成系の第2の成分を含有し、ここで、シグナル生成系の第1および第2の成分を、互いに物理的に近接させた場合、検出可能なシグナルが生成されるように、シグナル生成系の第1および第2の成分は相互に作用する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
シグナル生成系の第1の成分は、化学発光剤であり、シグナル生成系の第2の成分は、光増感剤であるか、またはその逆である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
サンプルは、ヒトまたは動物由来の体液サンプル、好ましくは、全血、血漿、血清、尿、脳脊髄液、または涙液である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
吸着性物質の使用であって、物質は、300~6500m-1の合計表面積(SBet)を有する多孔性構造を有し、かつ少なくともマクロ細孔、メソ細孔、およびミクロ細孔を有し、サンプル中の被検体を検出するための結合アッセイにおけるビオチン干渉を無効にするために、ミクロ細孔、好ましくは、活性炭、金属有機構造体(MOF)、ゼオライト、クレイ、多孔性有機高分子(POP)、ヒドロタルサイト、有機無機ハイブリッド、多孔性金属酸化物、ジルコニウム酸リチウム、またはメソ多孔性シリカ材料(MSM)の体積(Vmic)は、0.15~0.75cm-1であり、結合アッセイは、サンプルを、少なくともビオチン化された成分およびビオチンが結合する成分と接触させることを含む、使用。
【請求項15】
サンプル中の被検体を検出するための結合アッセイにおけるビオチン干渉を無効にするためのコーティングされた固相系であって、
(i)コーティングは、吸着性物質を含み、ここで、物質は、300~6500m-1の合計表面積(SBet)を有する多孔性構造を有し、かつ少なくともマクロ細孔、メソ細孔、およびミクロ細孔を有し、ミクロ細孔の体積(Vmic)は、0.15~0.75cm-1であり、物質は、好ましくは、活性炭、金属有機構造体(MOF)、ゼオライト、クレイ、多孔性有機高分子(POP)、ヒドロタルサイト、有機無機ハイブリッド、多孔性金属酸化物、ジルコニウム酸リチウム、またはメソ多孔性シリカ材料(MSM)であり;かつ
(ii)固相は、フィルター、液体容器の表面、ピペットチップ、およびラテックス、Sepharose、アガロース、プラスチック、ガラス、タンパク質、アルギネート、シリケート、または金属で構成された粒子からなる群から選択される
コーティングされた固相系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル中の被検体を検出するための結合アッセイにおける、ビオチン干渉を無効にするための方法であって、サンプルを吸着性物質と接触させる、方法に関する。本発明は、サンプル中の被検体を検出するための結合アッセイにおけるビオチン干渉を無効にするためのコーティングされた固相系にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンB7またはビタミンHとも呼ばれるビオチンは、脂肪酸、炭水化物、およびタンパク質の代謝ならびにエピジェネティック遺伝子調節において、重要な役割を果たす水溶性ビタミンである。人体自体は、ビオチンを合成することができず、食物を介した吸収に頼っている。Deutsche Gesellschaft fur Ernahrung(ドイツ栄養学会)によると、小児および妊娠中および授乳中の人たちを含む成人に対するビオチンの適切な摂取量は、1日あたり30~60マイクログラムと推定される。前述の1日のビオチン必要量を満たす多くの栄養補助食品が市販されているが、例えば、1日あたり10ミリグラムといった明らかにより高い投与量範囲のものも存在する。一般に、ビオチン含有栄養補助食品は、代謝および神経機能を補助するため、かつ皮膚、毛髪、および爪の健康を促進するために使用される。
【0003】
しかし、ビオチンの使用は、記述された治療目的および美容目的を遥かに越えて広がっている。ビオチンとアビジンまたはストレプトアビジンの間の高選択的で安定した相互作用は、生物工学技術および臨床検査技術において、広く使用されており、例えば、高感度で精密な結合アッセイを含む種々の生化学的、免疫学的、および分子生物学的技術において、数十年間使用されてきた。
【0004】
それらの生物分析能によって、in vitro診断用結合アッセイが臨床検査室に普及している。それらの完全自動化可能性は、アッセイの迅速な実施ならびに高い感度および精度のような、多くの利点をもたらす。結合アッセイにおいて、判定される被検体と特異的に相互作用する被検体特異的結合パートナーは、検出分子として作用する。典型的な結合アッセイは、免疫測定法であり、これには抗原-抗体結合を介した被検体の認識および検出が含まれる。アッセイの構成によって、抗原または抗体のいずれかが、検出される被検体となり得る。このような免疫測定法において、ストレプトアビジン-ビオチン系は、例えば、濃縮、除去、またはシグナル増強の目的のために使用される。例えば、液相から被検体を濃縮した後、前記被検体を検出するために、固相のストレプトアビジン-コーティング磁性粒子を、検出される被検体が結合しているビオチン化抗体の特異的結合のための手段として使用することができる。
【0005】
ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を含むこのような結合アッセイを実行する場合、サンプル内因性ビオチンが、ストレプトアビジンの結合部位に対して、ビオチン化されたアッセイ成分と競合するため、サンプル中の上昇したビオチン濃度は、著しい撹乱作用(disruptive effects)を招くことがある。サンドイッチアッセイ形式において、測定されるシグナル強度は、被検体濃度に対して通常正比例する。サンプル内因性ビオチンは、ストレプトアビジン連結シグナル成分への結合に対して、ビオチン化結合パートナーと競合し、このため、シグナル強度を弱め、最終的に、誤って低いアッセイ結果をもたらす。競合アッセイ形式において、シグナル強度は、被検体濃度に対して通常反比例する。この場合も、サンプル内因性ビオチンは、シグナル強度に影響を及ぼし、誤って高いアッセイ結果をもたらす。一般に、ビオチン干渉は、被検体濃度に対して誤って低い結果を招く。
【0006】
このように、ビオチンを摂取している患者の臨床検査において、使用される技術がストレプトアビジン-ビオチンアッセイの原理と関わる場合は、アッセイ形式に応じて、誤って高いか、または誤って低い被検体濃度が測定されることがある。このため、臨床検査に影響を及ぼすビオチンによって生じた未解明の問題は、診断の遅れ、誤診、および不必要な治療のリスクが高いという結果を生ずることである。
【0007】
ビオチン干渉を減少させるための方法は、先行技術から知られており、前記方法は、ストレプトアビジン-コーティング磁気ビーズを用いたサンプルの前処理を提供するか(非特許文献1)、またはストレプトアビジンを供給する微粒子の使用に焦点を合わせている(非特許文献2)。これらの手法は、さらなるアッセイ工程が実行可能となる前に、比較的長いインキュベーションおよびそれに続く、例えば、遠心分離を使用した時間を要する捕捉部の除去を通常必要とする。
【0008】
したがって、ビオチン-ストレプトアビジンに基づく結合アッセイにおけるビオチン干渉を無効にするための方法が知られており、この方法においては、サンプルを、ビオチン化された成分およびビオチンが結合する成分と接触させる前に、ビオチン結合物質と接触させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Yangら、2020年、Clinica Chimica Acta、505、130~135頁
【非特許文献2】Bowenら、2019年、Clinical Biochemistry、74、1~11頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、結合アッセイにおける起こり得るビオチン干渉を効率的に無効にすることを可能にする代替の方法および手段を提供することである。
【0011】
本目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、本発明のさらに有利な態様を反映する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
サンプル中の被検体を検出するための結合アッセイにおける問題は、サンプルを、ビオチン化された成分およびビオチンが結合する成分と接触させる前か、またはビオチン化された成分およびビオチンが結合する成分と接触させている間に、吸着性物質と接触させることによって本質的に解決され、ここで、吸着性物質は、300~6500m-1の合計表面積(SBet)を有する多孔性構造を有し、かつ少なくともマクロ細孔、メソ細孔、およびミクロ細孔を有し、ミクロ細孔の体積(Vmic)は、0.15~0.75cm-1である。
【0013】
これは、サンプル中に存在するあらゆるビオチンを、効率的で極めて時間を節約した方式で結合する効果と、そのため、アッセイ結果におけるその撹乱作用を無効にする効果を有する。その後、ビオチン-アビジン/ストレプトアビジン相互作用に基づくアッセイ工程は、遊離ビオチンによるいかなる影響も受けることなく実行される。結果として、アッセイ形式に応じて、誤って低い結果または誤って高い結果を、事実上除外することができる。これによって、アッセイ手順の信頼性が著しく高まる。さらに、これまで通常実行されてきたビオチンの力価測定によるリスク評価は、もはや不要である。
【0014】
このため、本発明は、サンプル中の被検体を検出するための結合アッセイにおけるビオチン干渉を無効にするための方法であって、結合アッセイが、サンプルを、少なくともビオチン化された成分およびビオチンが結合する成分と接触させることを含み、サンプルを、ビオチン化された成分およびビオチンが結合する成分と接触させる前か、またはビオチン化された成分およびビオチンが結合する成分と接触させている間に、吸着性物質と接触させ、吸着性物質が、300~6500m-1の合計表面積(SBet)を有する多孔性構造を有し、かつ少なくともマクロ細孔、メソ細孔、およびミクロ細孔を有し、ミクロ細孔の体積(Vmic)が、0.15~0.75cm-1である、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によると、吸着性物質は、多孔性構造を有する。多孔性および細孔構造は、300~6500m-1の範囲内であり得る合計表面積(SBet)のパラメータによって、好ましくは特徴付けられる。具体的な実施形態において、合計表面積は、300~600m-1、または400~3500m-1、または400~5000m-1であり得る。さらなる具体的な実施形態において、合計表面積は、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、4000、4500、5000、5500、6000、もしくは6500m-1、または前述の数値の間の任意の数値であり得る。2000~3500m-1の合計表面積が好ましい。
【0016】
さらに、物質は、少なくともマクロ細孔、メソ細孔、およびミクロ細孔を有する。「マクロ細孔」は、50nmを上回る直径を有する細孔である。「メソ細孔」は、2~50nmの直径を有する細孔である。「ミクロ細孔」は、2nmを下回る直径を有する細孔である。ビオチンは通常、ミクロ細孔範囲内で吸着されるため、ミクロ細孔の体積が、物質の吸着能の指標である。
【0017】
さらに、本発明による吸着性物質のミクロ細孔の体積(Vmic)は、0.15~0.75cm-1である。具体的な実施形態において、ミクロ細孔の体積は、0.15~0.25、0.2~0.5、0.3~0.75、0.15~0.2、または0.25~0.65cm-1であり得る。ミクロ細孔の体積は、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、もしくは0.75cm-1の数値、または中間の任意の数値をさらに有し得る。
【0018】
本発明による吸着性物質は、その表面、すなわち、固相と液相の間の界面にビオチンを、濃縮するといった事実によって優れている。その吸着は、使用される物質に応じて物理吸着または化学吸着である場合がある。「物理吸着」は、通常、分子が別の物質の表面に付着して留まっており、前記物質の表面で濃縮される物理過程である。付着をもたらしている力は、ファンデルワールス力である。通常、分子は、それらの指向性のない、熱駆動的な分子運動の結果として界面に到達する。「化学吸着」の場合、分子は、化学結合によって固体の表面に結合され、それと同時に、固体を修飾もする、すなわち、例えば、前記固体と共有結合を形成する。
【0019】
好ましい吸着性物質は、活性炭、金属有機構造体(MOF)、ゼオライト、クレイ、多孔性有機高分子(POP)、ヒドロタルサイト、有機無機ハイブリッド、多孔性金属酸化物、ジルコニウム酸リチウム塩、またはメソ多孔性シリカ材料(MSM)である。
【0020】
活性炭は、主に炭素からなり、高度な多孔性構造を有する。この細孔は、通常、開口孔性(open-pored)であり、互いに連結している。合計表面積は、概ね、300~3000m-1の間であり、例えば、2900または3000m-1である。活性炭の密度は、通常、0.2~0.6g/cmの範囲内である。活性炭は、ミクロ細孔、メソ細孔、およびマクロ細孔のみではなく、サイズが0.4nm未満のサブミクロ細孔も有する。マクロ細孔およびメソ細孔は、通常、気体または液体の活性炭の内部への到達経路であり、物質の内部領域への拡散および物質移動過程をもたらす。吸着は、ミクロ細孔の表面で生じる。
【0021】
活性炭を、当業者に知られている全ての有用な形態および変形で使用することができる。例えば、活性炭を、錠剤形態で使用することができる。特に好ましい実施形態において、DOAC-StopまたはDOAC-Remove活性炭錠剤が使用される。DOAC-Stop錠剤は、Haematexによって販売されており、例えば、特殊な活性炭混合物からなる。DOAC-Remove活性炭錠剤は、Coachromまたは5-Diagnostics AGによって販売されており、同様に特殊な活性炭混合物からなる。本発明との関連において使用可能な活性炭のさらなる形態には、CAS番号7440-44-0を有する製品が含まれる。本発明において同様に想定される活性炭のさらなる形態の詳細を含む、さらなる詳細は、当業者に知られているか、または適当な文献出典、例えば、Barnesら、2009年、Carbon、47、1887~1895頁で見出される。
【0022】
「金属有機構造体(MOF)」は、無機構成単位から、および無機構成単位間の要素を連結する有機分子から形成されるミクロ多孔性材料である。金属有機構造体は、通常、結晶性であり、細孔を含有する開骨格を有する配位高分子または配位網状構造として特徴付けられる。本発明との関連において使用可能なMOFの例は、1,4-ベンゼンジカルボキシル(BDC)有機配位子が結合されるZnO四面体からなるMOF-5、MOF-177(BTBを伴う)、MOF-180(BTEを伴う)、MOF-200(BBCを伴う)、MOF-205(BTBおよびNDCを伴う)、MOF-210(BTEおよびBPDCを伴う)、またはリンカーとしてシクロデキストリンおよびコネクターとしてアルカリ金属カチオンを使用するCD-MOFである。さらなる詳細は、当業者に知られているか、または適当な文献出典、例えば、Reddyら、2021年、RSV Adv.、11、12658で見出される。
【0023】
「ゼオライト」という用語は、結晶性アルミノケイ酸塩に関する。ゼオライト群の物質の組成物は、通常、Mn+ x/n[(AlO (SiO]・zHOで示され、式中、nはカチオンMの電荷を指し、1または2であり得る。Mは、通常、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のカチオンである。これらのカチオンは、負に荷電したアルミニウム四面体の電荷を補償するために必要とされ、その結晶の主要な格子に取り込まれないが、格子の空隙に存在し、格子内に移動することができる。zは、結晶によって取り込まれる水分子の数を示す。分子式中のAlOに対するSiOのモル比またはy/xは、係数を指す。このため、ゼオライトは、AlO とSiOの四面体で構成されたミクロ多孔性骨格構造からなり、そのアルミニウムおよびケイ素原子は、酸素原子によって互いに連結されている。構造型に応じて、これは、物質を吸着できる均一の細孔および/またはチャネルの構造をもたらす。本発明との関連において使用可能なゼオライトの例には、MFIゼオライト、CHAゼオライト、LTAゼオライト、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトL、ZSM11、ZSM5、またはゼオライトYが含まれる。ゼオライトは、一般に、およそ2nmのミクロ細孔範囲の孔径を有する。さらなる詳細は、当業者に知られているか、または適当な文献出典、例えば、Reddyら、2021年、RSV Adv.、11、12658で見出される。
【0024】
本発明との関連において「クレイ」という用語は、ケイ素および酸素、さらに水素ならびに通常マグネシウムおよびアルミニウムで構成された層状の結晶構造を有する層状ケイ酸塩を指す。さらなる詳細は、当業者に知られているか、または適当な文献出典、例えば、Reddyら、2021年、RSV Adv.、11、12658で見出される。
【0025】
「多孔性有機高分子(POP)」は、異なるジオメトリーおよびトポロジーを有する種々の有機構成ブロック間の強い共有結合を介して形成される多次元の多孔性網状構造材料の分類である。POPは、一般に、それらの長距離秩序の程度に基づいて、非晶性および結晶性POPの2つのカテゴリーに分けられる。非晶性POPには、主に、超架橋高分子(HCP)、固有ミクロ多孔性高分子(PIM)、共役ミクロ多孔性高分子(CMP)、および多孔性芳香族骨格(PAF)が含まれるのに対して、結晶性POPには、共有結合性有機骨格(COF)が含まれる。これらは、低重量であり、よく発達した本来の多孔性を有し、高い安定性を示し、予め構成可能であり、調整可能な構造および機能を有する。好都合にも、それらの多孔性構造、孔径、具体的な表面領域、および機能を設計すること、および具体的な機能的構成ブロックの挿入によってそれらに影響を与えることが可能である。さらなる詳細は、当業者に知られているか、または適当な文献出典、例えば、Reddyら、2021年、RSV Adv.、11、12658で見出される。
【0026】
「ヒドロタルサイト」は、炭酸塩の分類からの鉱物である。これは、化学組成MgAl[(OH)16|CO]・4HOを有する三方晶系で結晶化し、通常、サイズが約4mmに及び、結晶表面が絹様光沢または蝋光沢を有する透明な板状結晶を生じる。さらなる詳細は、当業者に知られているか、または適当な文献出典、例えば、Reddyら、2021年、RSV Adv.、11、12658で見出される。
【0027】
「有機無機ハイブリッド」は、その構造が、分子レベルで互いに相互作用する有機単位および無機単位の両方を含む材料の分類である。前記材料は、有機成分および無機成分の間の相互作用に基づいて、2つの分類に分けられる。分類Iにおける有機成分および無機成分は、包埋されており、それらの間には、水素結合、ファンデルワールス相互作用、π-π相互作用、または弱い静電相互作用のような、弱い相互作用が存在する。分類IIにおけるこれらの2つの成分は、強い共有結合または配位結合によって互いに連結されている。有機無機ハイブリッド高分子は、例えば、ゾルゲル法、自己集合過程、またはナノ構成ブロックの集合もしくは分散によって得られる。例には、コア-シェルナノ複合体(CSN)、ポリスチレン-コーティングFe粒子、または相互侵入網状構造(IPN)が含まれる。さらなる詳細は、当業者に知られているか、または適当な文献出典、例えば、Reddyら、2021年、RSV Adv.、11、12658で見出される。
【0028】
「多孔性金属酸化物(MO)」は、金属と酸素の間に形成された化合物である。メソ多孔性形態における炭素マトリックスまたはシリカマトリックスに基づく構造-伝導評価によって、現在では、TiO、ZrO、Al、V、MoO、Fe、MgAlPO、MgO、CeO、またはMnOのような、異なる性質の多孔性金属酸化物が存在する。さらなる詳細は、当業者に知られているか、または適当な文献出典、例えば、Reddyら、2021年、RSV Adv.、11、12658で見出される。
【0029】
ジルコニウム酸リチウムは、同様に多孔性構造を形成し得る。さらなる詳細は、当業者に知られているか、または適当な文献出典、例えば、Reddyら、2021年、RSV Adv.、11、12658で見出される。
【0030】
「メソ多孔性シリカ材料(MSM)」は、細孔配列の高い対称性、狭い孔径分布、および1000m/gに及ぶ表面積によって優れている。MSMの孔壁は、通常、純粋な非晶性SiOからなる。MSMの例には、M41S系、例えば、六角形に配置された円筒状細孔を有するMCM41が含まれる。さらなる例は、SBA系であり、その一部は、MCM41に類似する六角形の細孔構造を有し、それらの孔壁が高度に厚いことによる高い水熱安定性によって優れており、さらに高分子テンプレート、例えば、SBA15のPO側鎖によってミクロ多孔性とメソ多孔性を組み合わせている。さらなる分類には、KIT-6およびMCM-48が含まれる。さらなる詳細は、当業者に知られているか、または適当な文献出典、例えば、Reddyら、2021年、RSV Adv.、11、12658で見出される。
【0031】
サンプルを、粉末、粒状材料、またはマイクロファイバー混合物の形態の吸着性物質と混合して懸濁液を形成することによって、サンプルを、物質と接触させることができる。結果として、サンプル由来のビオチンを、吸着性物質に付着させ、これによって、サンプルから量的に除去し、ビオチンによるいかなる干渉もなく、サンプルを結合アッセイで評価することができる。被検体の検出工程が実行される前に、サンプルを、吸着性物質と混合する。
【0032】
次に、ビオチン化された成分およびビオチンが結合する成分と続いて接触させる前に、サンプルを、吸着性物質の懸濁液から除去することができる。この除去は、例えば、遠心分離または濾過を用いて達成される。
【0033】
代替として、サンプルを、吸着性物質でコーティングされた固相と接触させることによって、サンプルを、物質と接触させることができる。
【0034】
具体的な実施形態において、上記の吸着性物質を、固相に塗布しておくことができる。本発明の文脈において「固相」という用語は、多孔性および/または非多孔性の水不溶性材料からなり、例えば、容器、ピペット、小管、マイクロタイトレーションプレート、ビーズ、微粒子、桿状体、細片、フィルター、またはクロマトグラフィー紙など、異なる形態をとることが可能である対象物を指す。概して、固相の表面は、親水性である。固相は、異なる材料、例えば、無機および/または有機材料、合成材料、天然に存在する材料および/または修飾された天然に存在する材料からなることがある。固相材料の例は、高分子、例えば、セルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド、架橋デキストラン分子、アガロース、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、またはナイロン;セラミック;シリケート;ガラス;金属、例えば、鉄のような磁化可能な金属または金および銀のような貴金属;マグネタイト;それらの混合物または組合せ;などである。
【0035】
好ましい実施形態において、固相は、フィルター、液体容器の表面、ピペットチップ、またはラテックス、Sepharose、アガロース、プラスチック、ガラス、タンパク質、アルギネート、シリケート、もしくは金属で構成された粒子であり得る。
【0036】
特定の実施形態において、固相は、磁場をかけることで、混合物または懸濁液から除去することができるか、または特定の位置に固定できる磁化可能な粒子である。
【0037】
固相は、吸着性物質の多孔性が維持されており、そのためビオチンの付着を可能にするように、物質でコーティングされている。物質の分類に応じて、異なるコーティング厚さおよび異なる形態のコーティングを考慮する必要がある。このような詳細は、当業者に知られており、適当な文献出典、例えば、Kimら、2016年、Scientific Reports、6、21182またはRocherら、2008年、Water Res、42(4-5)、1290-8で見出される。ビオチンの量を減少させるために、記載の固相を、サンプルと接触させる。ここで、存在する細孔および関連する相互作用を介して、ビオチンを固相に付着することができる。結果として、ビオチンを、サンプルから量的に除去し、ビオチンによるいかなるさらなる干渉もなく、サンプルを結合アッセイで評価することができる。
【0038】
方法のさらに好ましい実施形態において、吸着性物質は、1つまたはそれ以上のブロッキングタンパク質またはブロッキングペプチド、好ましくは、デキストラン、アルブミン、ポリゲリン、および乳タンパク質からなる群からの1つまたはそれ以上のブロッキングタンパク質を用いて前処理されている。
【0039】
代替としてまたはさらに、吸着性物質を、表面ブロッカーでコーティングしておくことができる。本発明の文脈において「表面ブロッカー」は、吸着性物質の表面における遊離結合部位を満たし、これによって、被検体およびアッセイ成分が、物質の表面構造に捕捉されることを回避するのに役立つ分子を意味すると理解される。これは、アッセイ結果の歪みを防ぐ。本発明との関連において使用可能な表面ブロッカーの例には、アルブミン、例えば、BSAまたはHSA、デキストラン、すなわち、高分子量の分枝状多糖類、例えば、アミノデキストラン、パリレン、ポリキシレン、Sepharose、すなわち、高分子アガロースの加工形態、またはポリゲリン、すなわち、尿素と加水分解ゼラチンで構成された高分子、例えば、Haemaccelが含まれる。さらなる表面ブロッカーは、カゼインまたは乳タンパク質またはカゼイン系試薬、例えば、Candorから市販されているブロッキング溶液であって、化学修飾によって改変されている高純度のカゼインを基にしたブロッキング溶液である。この結果は、異なるサイズのカゼイン断片のスペクトルである。さらなる可能性は、化学的に修飾されており、このため、表面の小さな間隙に入り込むことができるペプチドの組合せ、例えば、SmartBlockという製品である。さらなる実施形態において、表面ブロッカーを用いたコーティングに続けて、糖溶液またはLiquid Plate Sealerのような市販の溶液を用いた追加の安定化を行うことができる。これらの安定化剤は、表面ブロッカーを囲んで、それらの分解および除去を防ぐ。
【0040】
吸着性物質が、40kDaを下回る質量の生体分子に対する透過性を有する孔径を有する、高分子-コーティング物質のビーズの形態で提供されることは、さらに好ましい。
【0041】
代替として、吸着性物質は、高分子-コーティングビーズまたは粒子の形態で提供されることがある。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリル酸、p-ビニル安息香酸、2-メチルブタンジオール酸、1-エチル-4-ビニルベンゼン、スチレン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾール、アクリルアミド、メタクリルアミド、アルギネート、またはシリケートを基にした粒子を製造することが可能である。さらに、粒子を、磁化可能な成分、例えば、酸化鉄を用いて提供することができる。粒子は、40kDaを下回る質量、例えば、35kDa、30kDa、25kDa、20kDa、15kDa、10kDa、5kDa、2kDa、1kDa、0.5kDa、0.25kDa、またはそれを下回る質量の生体分子に対する透過性を有する孔径を有することが好ましい。物質の性質を介して、粒子の多孔性を制御することができる。さらに、特に金属酸化物を使用する場合、細孔の生成にマトリックス構造を使用することが可能である。このような詳細は、当業者に知られており、適当な文献出典、例えば、Kimら、2016年、Scientific Reports、6、21182またはRocherら、2008年、Water Res、42(4-5)、1290-8で見出される。
【0042】
本明細書で使用する場合、「ビオチン干渉」という用語は、サンプル中の被検体の検出のための結合アッセイにおけるビオチンであって、結合アッセイの機能成分として存在するのではなく、試験されるサンプル由来のビオチンの存在を指す。結果として、この遊離ビオチンは、結合アッセイの基礎を形成する相互作用であって、ビオチン化されたアッセイ成分とビオチン特異的結合パートナー、例えば、ストレプトアビジンまたは構造的もしくは機能的に同等の成分との相互作用に干渉し、ビオチン特異的結合パートナーに結合することで、検出反応のためのビオチンを阻害するため、結合アッセイの結果に影響を及ぼすか、またはその結果をゆがめる。
【0043】
「結合アッセイ」という用語は、被検体を検出するための方法であって、被検体含有サンプルを、1つまたはそれ以上の被検体特異的結合パートナーと接触させ、被検体と被検体特異的結合パートナーで構成された結果として得られる複合体が定量される、方法を基本的に含む。古典的な結合アッセイ形式は、例えば、いわゆるサンドイッチアッセイであり、このアッセイにおいて、被検体は、捕捉結合パートナーおよび検出結合パートナーによって結合される。加えて、当業者に公知のさらなる多くの結合アッセイ形式が存在する(競合結合アッセイ、不均質結合アッセイ、均質結合アッセイなど)。結合アッセイにおいて好んで使用される被検体特異的結合パートナーは、抗体、抗体断片、アフィマー、またはアプタマーである。
【0044】
本発明によって改善される結合アッセイでは、サンプルを、少なくともビオチン化された成分およびビオチンが結合する成分と接触させる。アッセイ形式に応じて、ビオチン化された成分およびビオチンが結合する成分は、ビオチンとビオチン結合パートナーの間の相互作用が、被検体の濃縮もしくは除去、またはシグナル増強、またはアッセイ形式にとって適切な他の何らかの機能を果たすように互いに調整される。この目的のために、ビオチンが結合する成分および/またはビオチン化された成分は、ペプチド、タンパク質、抗体、抗体断片、またはアフィマーもしくはアプタマーを含有することができる。
【0045】
このため、「ビオチン化された成分」は、機能単位、例えば、(i)ペプチド、タンパク質、抗体、抗体断片、アフィマー、およびアプタマーからなる群からの結合パートナー、(ii)シグナル生成系の成分、および/または(iii)1つまたはそれ以上のビオチン分子が直接的または間接的に連結されている固相(例えば、粒子)を含むアッセイ成分を意味すると理解されるべきである。
【0046】
「ビオチンが結合する成分」は、ビオチンの特異的結合のための結合部位を有するアッセイ成分を意味すると同様に理解されるべきである。好ましくは、「ビオチンが結合する成分」は、機能単位、例えば、(i)ペプチド、タンパク質、抗体、抗体断片、アフィマー、およびアプタマーからなる群からの結合パートナー、(ii)シグナル生成系の成分、および/または(iii)1つまたはそれ以上のビオチン結合分子が直接的または間接的に連結されている固相(例えば、粒子)である。好ましいビオチン結合分子は、アビジン、ストレプトアビジン、タマビジン1もしくは2、シュワンアビジン(shwanavidin)、および/またはリザビジン(rhizavidin)、ブラダビジン、ブルクアビジン(burkavidin)、ゼバビジン(zebavidin)、キセンアビジン(xenavidin)、および/またはストロングアビジン(strongavidin)である。
【0047】
ビオチンが結合する成分および/またはビオチン化された成分が、ペプチド、タンパク質、抗体、抗体断片、アフィマー、またはアプタマーを含有することは、さらに好ましい。
【0048】
記載の成分の適用は、上記で詳細に考察されている標準的シナリオに限定されることはないが、その必要条件、被検体、および望ましい測定結果に応じて、その適用を変更し、適合させることができる。
【0049】
追加の好ましい実施形態において、ビオチン化された成分は、シグナル生成系の第1の成分を含有し、ビオチンが結合する成分は、シグナル生成系の第2の成分を含有し、ここで、シグナル生成系の第1および第2の成分を、互いに物理的に近接させた場合、検出可能なシグナルが生成されるように、シグナル生成系の第1および第2の成分は相互に作用する。
【0050】
さらに好ましい実施形態において、シグナル生成系の第1の成分は、化学発光剤であってよく、シグナル生成系の第2の成分は、光増感剤であってよいか、またはその逆であってよい。
【0051】
「光増感剤」は、その吸収範囲が、照射光の波長範囲内であり、光化学変換器として働く、すなわち、光エネルギーを、異なる吸収特性を有する第2の分子に移行するが、その光エネルギーの移行後に反応することができる物質である。例は、フタロシアニンなどである。さらに、検出のために発光酸素チャネリング化学を使用するAlphaLISAのようなシステムを使用することができる。さらなる詳細は、例えば、Pulido-Olmoら、2017年、Frontiers in Immunology、8、Article 853で見出される。
【0052】
「化学発光剤」は、化学反応後に、紫外線範囲内または可視光線範囲内の電磁放射線を放出する薬剤である。化学発光化合物の例は、ルミノールまたはイミダゾールである。より広い意味で、生物発光タンパク質には、例えば、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、mCherry、mOrange、TagBFP、Cerulean、Citrine、mTurquoise、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、およびそれらの誘導体も含まれる。本発明との関連において使用可能なさらなる化学発光化合物には、6-FAM、HEX、TET、ROX、Cy2、Cy3、Cy5、Cy7、Texas Redもしくはローダミン、PerCP、Pacific Blue、APC、Alexa405、430、488、546、559、594、633、660、674、680、700、Cascade Blue、TAMRA、Dabcyl、Black Hole Quencher、BHQ-1、またはBHQ-2が含まれる。前述の要素に基づくアッセイ形式の詳細を含むさらなる詳細は、当業者に知られているか、またはPulido-Olmoら、2017年、Frontiers in Immunology、8、Article 853で見出される。
【0053】
分析するためのサンプルは、好ましくは、生物学的サンプルである。「生物学的サンプル」という用語は、概して、動物の体液、例えば、脊椎動物の体液、好ましくは、哺乳動物の体液、特に好ましくは、ヒトの体液を指す。被検体が発見される可能性があり、かつ/または試験される可能性がある、全ての種類の体液が含まれる。特に、全血、血漿、血清、唾液、脳脊髄液、または涙液が好まれる。
【0054】
さらなる態様において、本出願は、吸着性物質の使用であって、物質が、300~6500m-1の合計表面積(SBet)を有する多孔性構造を有し、かつ少なくともマクロ細孔、メソ細孔、およびミクロ細孔を有し、サンプル中の被検体を検出するための結合アッセイにおけるビオチン干渉を無効にするために、ミクロ細孔の体積(Vmic)が、0.15~0.75cm-1であり、結合アッセイが、サンプルを、少なくともビオチン化された成分およびビオチンが結合する成分と接触させることを含む、使用に関する。物質は、好ましくは、活性炭、金属有機構造体(MOF)、ゼオライト、クレイ、多孔性有機高分子(POP)、ヒドロタルサイト、有機無機ハイブリッド、多孔性金属酸化物、ジルコニウム酸リチウム、またはメソ多孔性シリカ材料(MSM)である。結合アッセイの成分および要素は、上記の成分および要素に相当する。
【0055】
ビオチン干渉を無効にするための吸着性物質の使用は、理想的には、サンプルとアッセイ成分の接触前に、例えば、吸着性物質を用いたサンプルのプレインキュベーション/前処理によって実行される。本発明による使用は、同時に、特定のアッセイ形式または特定の結合アッセイに限定されず、サンプル中の上昇したビオチンレベルが(潜在的に)存在するか、または疑われる、ビオチンに基づく相互作用スキームを全て含む。
【0056】
本発明のさらなる対象は、サンプル中の被検体を検出するための結合アッセイにおけるビオチン干渉を無効にするのに適するコーティングされた固相系である。
【0057】
本発明によるコーティングされた固相系は、
(i)コーティングが、吸着性物質を含み、ここで、物質は、300~6500m-1の合計表面積(SBet)を有する多孔性構造を有し、かつ少なくともマクロ細孔、メソ細孔、およびミクロ細孔を有し、ミクロ細孔の体積(Vmic)は、0.15~0.75cm-1であり、物質は、好ましくは、活性炭、金属有機構造体(MOF)、ゼオライト、クレイ、多孔性有機高分子(POP)、ヒドロタルサイト、有機無機ハイブリッド、多孔性金属酸化物、ジルコニウム酸リチウム、またはメソ多孔性シリカ材料(MSM)であり;かつ
(ii)固相が、フィルター、液体容器の表面、ピペットチップ、およびラテックス、Sepharose、アガロース、プラスチック、ガラス、タンパク質、アルギネート、シリケート、または金属で構成された粒子からなる群から選択される
といった事実によって優れている。
【0058】
さらに上記の通り、コーティングを適用することができる。通常、コーティングは、吸着性物質の多孔性構造が損なわれないように、かつビオチンの付着に関わる機能的特性が維持されるように、適用される。
【0059】
同時に、固相を、全ての適当な材料から選択することができる。結合アッセイまたはアッセイを実行する前か、または場合によっては実行中に、分析されるサンプルと接触させるために、いずれの場合においても曝露される材料および製品を使用することが好ましい。例えば、これは、フィルター、液体容器の表面、またはピペットチップであり得る。さらなる材料には、ラテックス、Sepharose、アガロース、プラスチック、ガラス、タンパク質、アルギネート、シリケート、または金属で構成された粒子が含まれる。さらなる詳細は、当業者に知られており、適当な文献出典、例えば、Kimら、2016年、Scientific Reports、6、21182またはRocherら、2008年、Water Res、42(4-5)、1290-8で見出される。
【0060】
本発明は、特定の実施形態に関して記載されるが、この記載は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0061】
本記載および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」および「an」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、それぞれの複数形も含む。
【0062】
本発明に関連して、「およそ」および「約」という用語は、当業者が、問題の特徴の技術的効果が依然として保証されると理解する精度の区間を指す。この用語は、通常、±20%、好ましくは、±15%、より好ましくは、±10%、さらにより好ましくは、±5%の示唆される数値からの偏差を示唆する。
【0063】
「含んでいる」という用語は、限定的ではないと理解されるべきである。
【0064】
以降、ある群が、少なくとも一定数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくは、これらの実施形態のみからなる群も包含することを意味する。
【0065】
さらに、本記載または特許請求の範囲において、「(i)」、「(ii)」、「(iii)」または「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」または「第1の」、「第2の」、「第3の」などという用語は、類似する要素を区別するために使用され、必ずしも連続的または時系列的な順序を記載するために使用されてはいない。
【0066】
そのように使用される用語は、適切な状況下で互換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態を、本明細書に記載されるものとは異なる順序で使用することができることは理解されるべきである。用語が、技術、方法、または使用の工程を指す場合、その工程間に時間または時間間隔の干渉性(coherence)は存在しない、すなわち、別段の指示がない限り、工程は、同時に実行されることがあるか、またはそのような工程間には数秒間、数分間、数時間、数日間、数週間などの時間間隔が存在することがある。
【0067】
本発明は、本明細書に記載される特定の方法、プロトコールなどが変更する場合があるため、それらに限定されることはないと理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるであろう本発明の範囲を限定することを意図していないことも理解されるべきである。
【0068】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語および科学用語は、当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0069】
以下の実施例および図面は、例示的な目的のために提供される。このため、実施例および図面は、限定すると解釈されるべきではないと理解されるべきである。当業者が、本明細書で説明された原理のさらなる修正を想定することは、明らかに可能であろう。
【実施例0070】
活性炭錠剤を使用するサンプル前処理によるF1+2免疫測定法における本発明に従ったビオチン干渉の無効化
標準のクエン酸血漿のプール由来のサンプルを、F1+2ペプチド(プロトロンビン断片F1+2)60、150、1700、または2600pmol/Lおよびそれぞれの場合において、ビオチン(Sigma)0、500、1000、または2000ng/mLでスパイクし、添付文書に記載される通り、INNOVANCE LOCI F1+2アッセイ(Siemens Healthineers)を使用したSiemens Healthineers Atellica COAG360凝固分析装置で分析した。
【0071】
INNOVANCE LOCI F1+2アッセイは、とりわけ、ビオチン化された第1の抗体であって、F1+2ペプチド(ビオチン化されたアッセイ成分)に対する特異性を有する第1の抗体を含有する第1の試薬、F1+2ペプチドと第1の抗体で構成された免疫複合体に対する特異性を有する第2の抗体であって、ケミビーズに連結されている第2の抗体を含有する第2の試薬、およびストレプトアビジン-コーティングセンシビーズ(ビオチンが結合するアッセイ成分)を含有する第3の試薬を含む。試薬を、サンプルと混合した。この反応において、ストレプトアビジン-コーティングセンシビーズは、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介して、F1+2ペプチドに対する特異性を有するビオチン化抗体に結合する。F1+2ペプチドがサンプル中に存在する場合、ビオチン化された第1の抗体はそれに結合し、次に、第2の抗体は、結果として得られた免疫複合体であって、F1+2ペプチドと第1の抗体で構成された免疫複合体に結合する。この方法において、ケミビーズおよびセンシビーズを、互いに物理的に近接した状態にすることで、化学発光シグナルが形成され、これを測定することができる。
【0072】
ビオチン干渉を無効にするために、上記の各サンプル1.0mLを、活性炭を用いて前処理した。この目的のために、1錠のDOAC-Stop(Haematex Research)を、サンプル1.0mLに加え、続いて慎重に混合した。錠剤を加えてから10分後に、サンプルを、2500gで2~5分間遠心分離した。この血漿の上清を、慎重にピペットで除去した。
【0073】
次に、この方法で前処理されたサンプルを、INNOVANCE LOCI F1+2アッセイを使用したSiemens Healthineers Atellica COAG360凝固分析装置で自動的に分析した。
【0074】
各サンプルを3回分析し、測定されたF1+2ペプチド濃度の平均を算出した。この標準偏差(STD)および変動係数(CV)を求めた。
【0075】
表1は、ビオチン0~2000ng/mLを含有するサンプルに対するINNOVANCE LOCI F1+2アッセイにおけるビオチン干渉および活性炭を用いたサンプルの前処理によるビオチン干渉の除去を示す。記載された技術は、最大2000ng/mLのビオチンを含有するサンプルに対するINNOVANCE LOCI F1+2アッセイにおける処理されたサンプルの101%~90%の回復率を示す。前処理がない場合、ビオチンを添加していないサンプルの開始値からの偏差の増大が、ビオチンの含有率が増加しているサンプルにおいて明らかになっている。ちょうど500ng/mLのビオチンは、ビオチンを含まないサンプルの開始値に関して最大25.29%の偏差をもたらす。サンプル中の含有量が1000ng/mLおよび2000ng/mLのビオチンは、極めて高い干渉を示し、ビオチンを含まないサンプルの開始値から最大62.25%および98.76%の偏差をもたらす。
【0076】
【表1-1】
【表1-2】
【実施例0077】
ピペットチップ中の活性炭粒子を使用したサンプル前処理によるD-ダイマー免疫測定法における本発明に従ったビオチン干渉の無効化
ビオチン干渉を判定するため、クエン酸血漿の3つのプール由来のサンプルを、D-ダイマー80、400、および7200μg/l FEU(フィブリノゲン換算単位)と、それぞれの場合において、ビオチン(Sigma)0、500、1000、または2000ng/mLと共に用いてスパイクし、添付文書に記載される通り、INNOVANCE LOCI D-ダイマーアッセイ(Siemens Healthineers)を使用したSiemens Healthineers Atellica COAG360凝固分析装置で分析した。INNOVANCE LOCI D-ダイマーアッセイは、とりわけ、D-ダイマー(ビオチン化されたアッセイ成分)に対する特異性を有するビオチン化された第1の抗体を含有する第1の試薬、さらなるD-ダイマー抗原決定基に対する特異性を有する第2の抗体であって、ケミビーズに連結されている第2の抗体を含有する第2の試薬、およびストレプトアビジン-コーティングセンシビーズ(ビオチンが結合するアッセイ成分)を含有する第3の試薬を含む。試薬を、サンプルと混合した。この反応において、ストレプトアビジン-コーティングセンシビーズは、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介して、D-ダイマーに対する特異性を有するビオチン化抗体に結合する。D-ダイマーがサンプル中に存在する場合、ビオチン化された第1の抗体の結合およびケミビーズに結合された第2の抗体の結合も存在する。この方法において、ケミビーズおよびセンシビーズを、互いに物理的に近接した状態にすることで、化学発光シグナルが形成され、これを測定することができる。定量のために、D-ダイマー検量線が使用される。
【0078】
ビオチン干渉を無効にするために、それぞれの場合におけるサンプル250μLを、Dダイマーの検出のための試薬をサンプルと混合する前に、活性炭および分離フィルターを含有するピペットチップを使用して、3回上下にピペッティングすることによって前処理した。この目的のために、高度に多孔性の分離フィルター(KIK Kunststofftechnikからの多孔性PE)を、ピペットチップに挿入し、ピペットチップのピペット開口部に繋がる第1のコンパートメント、および分離フィルターによってピペット開口部から分離されている第2のコンパートメントを作り出し、第2のコンパートメントを、およそ1mmの平均粒子径を有する球状活性炭25mgで充填した(「NorBd」球状活性炭、Norm Technologies)。分離フィルターは、血漿材料に対しては透過性であるが、活性炭に対しては非透過性であった。
【0079】
各サンプルを2回分析し、測定されたD-ダイマー濃度の平均を算出した。
【0080】
表2は、ビオチン0~2000ng/mLを含有するサンプルに対するINNOVANCE LOCI D-ダイマーアッセイにおけるビオチン干渉および活性炭を用いたサンプルの前処理によるビオチン干渉の除去を示す。記載された技術は、最大2000ng/mLのビオチンを含有するサンプルに対するINNOVANCE LOCI D-ダイマーアッセイにおける処理されたサンプルの100%~91.1%の回復率を示す。前処理がない場合、開始値からの偏差の増大が、ビオチンの含有率が増加しているサンプルにおいて明らかになっている。ちょうど500ng/mLのビオチンは、ビオチンを含まないサンプルの開始値に関して最大12%の偏差をもたらす。サンプル中の含有量が1000ng/mLおよび2000ng/mLのビオチンは、ビオチンを含まないサンプルの開始値から最大45.71%および94.32%の偏差をもたらす。
【0081】
【表2】
【外国語明細書】