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特開2023-181141セパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181141
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】セパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/451 20210101AFI20231214BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20231214BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20231214BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20231214BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20231214BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20231214BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20231214BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20231214BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/489
H01M50/417
H01M50/403 D
H01M50/403 E
H01M50/446
H01M50/411
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095419
(22)【出願日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2022-0070325
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】クァク ウォン スブ
(72)【発明者】
【氏名】クォン テ ウク
(72)【発明者】
【氏名】ベ フン テク
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021BB15
5H021BB20
5H021CC04
5H021EE01
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE20
5H021EE21
5H021EE22
5H021EE24
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱安定性および電気的特性が共に著しく向上したセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子を提供する。
【解決手段】多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層を含み、前記無機物粒子層は、無機物粒子とシラン化合物の加水分解縮合物を含み、下記関係式(1)を満足する、セパレータを提供する。
(1)T-T≧30%
前記関係式(1)中、
は前記セパレータを25℃で1時間放置した後、定格電圧12V、消費電力50W条件のハロゲンランプと垂直に100mm離隔して測定した光透過率であり、
は前記セパレータを150℃で1時間放置した後、定格電圧12V、消費電力50W条件のハロゲンランプと垂直に100m離隔して測定した光透過率である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層を含むセパレータである、
下記関係式(1)を満たす、セパレータ。
(1)T-T≧30%
(前記関係式(1)中、
は前記セパレータを25℃で1時間放置した後、定格電圧12V、消費電力50Wの条件のハロゲンランプと垂直に100mm離隔して測定した光透過率であり、
は前記セパレータを150℃で1時間放置した後、定格電圧12V、消費電力50Wの条件のハロゲンランプと垂直に100mm離隔して測定した光透過率である)
【請求項2】
前記関係式(1)のT-T値が40%以上のものである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向とするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタル治具に噛ませてTMAチャンバーに設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張ったとき、MD方向およびTD方向ともに180℃以上の温度で試験片が破断する耐熱性を有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記セパレータを150℃で60分放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が8%以下である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記無機物粒子層は、無機物粒子とシラン化合物の加水分解縮合物を含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記シラン化合物の加水分解縮合物は、弱酸性の雰囲気で加水分解され、縮合が抑制された加水分解縮合物であることを特徴とする、請求項5に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記シラン化合物は下記化学式1で表される化合物である、請求項5に記載のセパレータ。
[化学式1]
Si(OR)
(前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である)
【請求項8】
前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含む、請求項7に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記無機物粒子の平均粒径が0.01~1μmである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むものである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項11】
(a)下記化学式1で表されるシラン化合物水溶液に無機物粒子および酸の成分を投入し、撹拌またはバブリングして弱酸性の雰囲気でスラリーを製造するステップと、
(b)前記製造されたスラリーを多孔質基材の少なくとも一面上に塗布し、乾燥させて、前記多孔質基材の少なくとも一面に無機物粒子層を設けるステップと、を含む、セパレータの製造方法。
[化学式1]
Si(OR)
(前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である)
【請求項12】
前記(a)ステップは、pH4超過pH7以下の弱酸性の雰囲気で行われるものである、請求項11に記載のセパレータの製造方法。
【請求項13】
前記(b)ステップで、
前記製造されたスラリーを多孔質基材の少なくとも一面上に塗布した後、5分以上静置することをさらに含む、請求項11に記載のセパレータの製造方法。
【請求項14】
前記シラン化合物の極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基から選ばれるいずれか1つまたは2つ以上を含む、請求項11に記載のセパレータの製造方法。
【請求項15】
前記酸の成分は、二酸化炭素、または酢酸および乳酸から選ばれるいずれか一方または両方を含む有機酸、である、請求項11に記載のセパレータの製造方法。
【請求項16】
前記無機物粒子はベーマイトである、請求項11に記載のセパレータの製造方法。
【請求項17】
前記(b)ステップ以後、
(c)前記少なくとも一面に無機物粒子層が設けられた多孔質基材をエージングするステップと、をさらに含む、請求項11に記載のセパレータの製造方法。
【請求項18】
前記多孔質基材は、表面を親水性表面処理して設けられたものである、請求項11に記載のセパレータの製造方法。
【請求項19】
前記親水性表面処理は、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含んで行われたものである、請求項18に記載のセパレータの製造方法。
【請求項20】
前記スラリー中の無機物粒子と前記化学式1のシラン化合物は、70~99.9:30~0.1の重量比で含まれることを特徴とする、請求項11に記載のセパレータの製造方法。
【請求項21】
多孔質セパレータの熱安定性評価方法として、下記式(1)の絶対値を予め定められた基準値と比較して、セパレータの熱安定性を評価する、セパレータの熱安定性の評価方法。
(1)T-T
(前記式(1)中、
は前記セパレータをt℃で1時間放置した後、測定した光透過率であり、
は前記セパレータをt℃で1時間放置した後、測定した光透過率であり、
前記tとtはお互い異なる温度である)
【請求項22】
前記多孔質セパレータは、多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一面上に形成された無機物粒子が互いに隣接して気孔が形成される無機物粒子層を含むものである、請求項21に記載のセパレータの熱安定性の評価方法。
【請求項23】
多孔質基材はポリオレフィン系多孔質基材であること、請求項21に記載のセパレータの熱安定性の評価方法。
【請求項24】
前記tは25℃であり、前記tは150℃である、請求項21に記載のセパレータの熱安定性の評価方法。
【請求項25】
前記光透過率は、セパレータを定格電圧12V、消費電力50Wの条件のハロゲンランプと垂直に100mm離隔して測定した光透過率である、請求項24に記載のセパレータの熱安定性の評価方法。
【請求項26】
前記予め定められた基準値は30%である、請求項24に記載のセパレータの熱安定性の評価方法。
【請求項27】
請求項1~10のいずれか一項に記載のセパレータを含む、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、著しく向上した高耐熱性および電気的特性を同時に確保できるセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子に関する発明である。
【0002】
また、一実施形態として、本発明は、セパレータの耐熱性の評価方法に関する発明である。
【背景技術】
【0003】
セパレータ(separator)の熱安定性は、高温でのセパレータの変形を防ぎ、電気化学素子の火災リスクを減少させるため、ユーザーの安全のために必ず確保しなければならない物性である。セパレータの基材として主に利用されるポリオレフィンなどは融点が約140℃付近で、ポリオレフィン基材の多孔性セパレータは材料的特性および製造工程上の特性により高温で収縮して内部短絡が発生する恐れがあり、安全性が不足する問題がある。
【0004】
ポリオレフィン基材の多孔質セパレータの熱安定性を改善するために、最近、無機物粒子とバインダー高分子のスラリー組成物を前記ポリオレフィン多孔質基材にコーティングし、多孔質基材の一面または両面に無機物粒子が互いに連結して形成され、無機物粒子間に気孔が形成される多孔質無機物粒子層を設けた有機-無機複合多孔質セパレータが提案された。
【0005】
しかし、多孔性高分子基材表面に前述の無機物粒子層が形成されても、ユーザーの安全のために、高温でのセパレータ熱収縮率をさらに減少させる必要があり、同時に電気的抵抗特性も一緒に改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明は、熱安定性および電気的特性が共に著しく向上したセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための一手段として、本発明の一実施形態によれば、多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層を含むセパレータであって、下記関係式(1)を満足するセパレータを提供することができる。
【0008】
(1) T-T≧30%
前記関係式(1)で、Tは前記セパレータを25℃で1時間放置した後、定格電圧12V、消費電力50W条件のハロゲンランプと垂直に100mm離隔して測定した光透過率であり、Tは前記セパレータを150℃で1時間放置した後、定格電圧12V、消費電力50W条件のハロゲンランプと垂直に100mm離隔して測定した光透過率である。
【0009】
一実施形態では、前記関係式(1)のT-Tの値が40%以上である場合がある。
【0010】
一実施形態で前記セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグに噛ませてTMAチャンバーに設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張ったとき、MD方向およびTD方向ともに180℃以上の温度で試験片が破断する耐熱性を持つことができる。
【0011】
一実施形態で前記セパレータを150℃で60分放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が8%以下であることができる。
【0012】
一実施形態において、前記無機物粒子層は、無機物粒子とシラン化合物の加水分解縮合物を含むことができる。
【0013】
一実施形態において、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、弱酸性の雰囲気で加水分解され、縮合が抑制された加水分解縮合物であることができる。
【0014】
一実施形態において、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、数平均分子量4000g/mol以下であることができる。
【0015】
一実施形態において、前記シラン化合物は、下記化学式1で表される化合物であることができる。
【0016】
[化学式1]
Si(OR)
【0017】
前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。
【0018】
一実施形態において、前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0019】
一実施形態において、前記無機物粒子の平均粒径は0.01~1μmであることができる。
【0020】
一実施形態では、前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むことができる。
【0021】
また、上述の課題を達成するための他の一手段として、本発明の一実施形態によれば、(a)下記化学式1で表されるシラン化合物水溶液に無機物粒子および酸の成分を投入し、撹拌またはバブリングして弱酸性の雰囲気でスラリーを製造するステップと、(b)前記製造されたスラリーを多孔質基材の少なくとも一面上に塗布し、乾燥して前記多孔質基材の少なくとも一面に無機物粒子層を設けるステップと、を含むセパレータの製造方法を提供することができる。
【0022】
[化学式1]
Si(OR)
【0023】
前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。
【0024】
一実施形態において、前記(a)ステップは、pH4超過pH7以下の弱酸性の雰囲気で行うことができる。
【0025】
一実施形態によれば、前記(b)ステップにおいて、前記製造されたスラリーを多孔質基材の少なくとも一方の面に塗布し、5分以上静置することをさらに含むことができる。
【0026】
一実施形態において、前記シラン化合物の極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0027】
一実施形態において、前記酸の成分は、二酸化炭素、または酢酸および乳酸から選択されるいずれか一方または両方を含む有機酸、であってもよい。
【0028】
一実施形態において、前記鉱物粒子はベーマイト(bohemite)であることができる。
【0029】
一実施形態によるセパレータの製造方法は、前記(b)ステップの後、(c)前記少なくとも一面に無機物粒子層が設けられた多孔質基材をエージングするステップをさらに含むことができる。
【0030】
一実施形態において、前記多孔質基材は、表面を親水性表面処理して設けられたものであってもよい。
【0031】
一実施形態において、前記親水性表面処理は、コロナ放電処理とプラズマ放電処理のうち、少なくとも一つ以上を含んで行われるものであってもよい。
【0032】
一実施形態では、前記スラリー中の無機物粒子と前記式1のシラン化合物は、70~99.9:30~0.1の重量比で含まれることができる。
【0033】
また、上述の課題を達成するための他の一手段として、本発明の一実施形態によれば、多孔質セパレータの熱安定性の評価方法として、下記式(1)の絶対値を予め定められた基準値と比較してセパレータの熱安定性を評価する、セパレータの熱安定性の評価方法を提供することができる。
【0034】
(1)T-T
前記式(1)中、
は前記セパレータをt℃で1時間放置した後、測定した光透過率であり、Tは前記セパレータをt℃で1時間放置した後、測定した光透過率であり、前記tとtはお互い異なる温度である。
【0035】
一実施形態において、前記多孔質セパレータは、多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一面上に形成された無機物粒子が互いに隣接して気孔が形成される無機物粒子層を含むことができる。
【0036】
一実施形態において、前記多孔質基材は、ポリオレフィン系多孔質基材であることができる。
【0037】
一実施形態において、前記tは25℃であり、前記tは150℃であることができる。
【0038】
一実施形態において、前記光透過率は、セパレータを定格電圧12V、消費電力50Wの条件のハロゲンランプと垂直に100mm離隔して測定した光透過率とすることができる。
【0039】
一実施形態では、前記予め決定された基準値は30%であることができる。
【0040】
また、上述の課題を達成するための他の一手段として、一実施形態によれば、前述の実施形態によるセパレータを含む電気化学素子を提供することができる。
【発明の効果】
【0041】
一実施形態として、本発明の耐熱性セパレータは、下記特定の関係式(1)を満足する場合、耐熱性と電気的特性の両方が同時に著しく向上するセパレータを提供できることを初めて認識して考案されたものである。
【0042】
(1)T-T≧30%
前記関係式(1)中、
は前記セパレータを25℃で1時間放置した後、定格電圧12V、消費電力50W条件のハロゲンランプと垂直に100mm離隔して測定した光透過率であり、Tは前記セパレータを150℃で1時間放置した後、定格電圧12V、消費電力50W条件のハロゲンランプと垂直に100mm離隔して測定した光透過率である。
【0043】
具体的には、前記光透過率変化量に対する関係式(1)の値は、無機物粒子層の厚さ、無機物粒子の粒径、多孔質基材の気孔率および厚さ、等によって複合的に影響を受けると理解される。特に、本発明は、150℃で1時間放置した後に測定した光透過率T値と25℃で1時間放置した後に測定した光透過率T値の差が30%以上であれば、優れた熱安定性および電気的特性を同時に向上させるための基本条件の一つであることを初めて認識して到達したものである。
【0044】
好ましい一実施形態として、前記特定の関係式(1)の値を35%以上または40%以上に制御することにより、セパレータの熱安定性と電気的特性をさらに向上させることができる。
【0045】
一実施形態で前記関係式(1)を満足すると同時に、前記セパレータを150℃で60分間放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が全て8%以下、5%以下、3%以下または2.5%以下を満足する場合、特に電気的特性が著しく向上することができる。
【0046】
一実施形態でセパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグ(metal jig)に噛ませてTMAチャンバー(Thermomechanical Analyzer、Model:SDTA840(Mettler Toledo))に設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張る時、MD方向およびTD方向ともに180℃以上、190℃以上、200℃以上、または210℃以上の温度で試験片が破断するセパレータ耐熱性を持つ場合、セパレータの熱安定性および電気的特性がさらに向上することができる。
【0047】
一実施形態として、前記関係式(1)を満たすとしても、前記熱収縮率または前記TMA溶融破断温度条件が満たされない場合、電気的特性が本発明に要求される値を持たない場合がある。このような現象は十分に説明されていないが、前記関係式(1)の値が多孔質基材の気孔構造や気孔の分布などの要因により、前記関係式(1)を満足しながらも、前記熱収縮率またはTMA溶融破断温度条件を満たさないと、十分な電気的特性を持てない場合がある。
【0048】
前記物性を提供する一実施形態は、ポリエチレンフィルムなどの多孔質基材の少なくとも一面上に無機物粒子が互いに接続されて気孔が形成される無機物粒子層が設けられた二次電池セパレータを挙げることができ、前記一実施形態でシラノールまたはアルコキシシラン系化合物を加水分解されると同時に縮合を抑制する特定の条件で製造したシラン化合物の加水分解縮合物を無機物粒子層のバインダーとして使用し、前記関係式(1)および熱収縮率またはTMA溶融破断温度条件のうちいずれか一つ以上の条件を共に満たすセパレータは、熱安定性に加えて電気的特性が優れた電気化学素子を提供することができる。
【0049】
一実施形態で前記関係式(1)を満足する場合であれば、前記で熱安定性および電気的特性を同時に付与する手段を特に限定しない。しかし、前記物性を付与する一手段として、例えば、下記化学式1で表されるシラン化合物を加水分解されるが、縮合が抑制される条件で縮合し、これを無機物粒子と混合したスラリーをポリエチレンなどの多孔質基材の片面または両面に塗布して、無機物粒子が互いに連結して気孔が形成される無機物粒子層を有するセパレータを製造することによって達成することができるが、前記物性を満足する限り、その手段を限定しない。
【0050】
一実施形態としては、前記物性を有するセパレータを提供することができる手段としては、下記化学式1のシラン化合物および無機物粒子を含むスラリーを製造し、前記シラン化合物が加水分解されるが、縮合が抑制される条件で縮合するようにした後、その製造されたスラリーを前記多孔質基材の少なくとも一面上にコーティングして乾燥することにより、前記物性を満足するセパレータを製造することができる。
【0051】
[化学式1]
Si(OR)
【0052】
前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは4である。前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含むか、またはこれらと反応する反応性基であることができる。
【0053】
一実施形態は、加水分解されて縮合が抑制された条件で設けられたシラン化合物の加水分解縮合物が無機物粒子を連結し、また、無機物粒子層と多孔質基材を連結するバインダーとして使用することにより、多孔質基材層と無機物粒子層の接着力も増加させ、無機物粒子間の接着力も増加させ、前記光透過率変化、耐熱性、熱収縮性を満足するようにし、また、そのセパレータを利用して製造した電気化学素子の電気的特性を著しく上昇させる耐熱性セパレータを提供することができる。
【0054】
また、本発明の一実施形態によれば、前記実施例から得られたセパレータを含む電気化学素子を提供することができる。
【0055】
また、好ましい一実施形態において、前記多孔質基材は、その表面にコロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含む表面処理で、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシル基などの極性官能基を持つように改質される場合、より優れた効果をもたらし、より好ましい。すなわち、前記表面処理は、無機物粒子層の表面を固定する前記バインダーによって、前記表面処理された多孔質基材の表面の官能基と水素結合または化学結合が可能である。したがって、一実施形態によるセパレータは、前記関係式(1)の条件を満たすことができ、従来の有機高分子系バインダーを使用しなくても、多孔質基材と無機物粒子層の結合力が著しく優れ、高温でも高温収縮率を著しく低減させ、熱的安定性が著しく向上する効果を付与することができる。
【0056】
また、好ましい一実施形態では、無機物粒子無機物粒子層を形成した後、エージングプロセスを行うことにより、多孔質基材と無機物粒子無機物粒子層との間の接着力を増加させ、高温収縮特性を向上させることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、添付された図面を含む具体的な実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下の具体例は一つの参考であるだけで、本発明がこれに限定されるものではなく、複数の形態で実施することができる。
【0058】
また、特に定義されていない限り、すべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明において説明に使用される用語は、特定の実施形態を効果的に説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0059】
また、明細書および添付された特許請求の範囲に使用される単数形は、文脈から特別な指示がない限り、複数形も含むことを意図することができる。
【0060】
また、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含めることができることを意味する。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層を含むセパレータであって、下記関係式(1)の値が30%以上のセパレータを提供することができる。
【0062】
(1)T-T
前記関係式(1)中、
は前記セパレータを25℃で1時間放置した後、定格電圧12V、消費電力50W条件のハロゲンランプと垂直に100mm離隔して測定した光透過率であり、Tは前記セパレータを150℃で1時間放置した後、定格電圧12V、消費電力50W条件のハロゲンランプと垂直に100mm離隔して測定した光透過率である。
【0063】
前記一実施形態としての本発明の耐熱性セパレータは、下記特定の関係式(1)の値範囲を満足する場合、耐熱性および電気的特性が全て同時に著しく向上するセパレータを提供できることを初めて認識して考案されたものである。具体的には、前記光透過率変化量に対する関係式(1)の値は、無機物粒子層の厚さ、無機物粒子の粒径、多孔質基材の気孔率および厚さ、等によって複合的に影響を受けると理解される。特に本発明は、150℃で1時間放置した後に測定した光透過率T値と25℃で1時間放置した後に測定した光透過率T値の差が30%以上の場合、優れた耐熱性、熱収縮性、および電気的特性の向上のための基本条件の一つであることを初めて認識して到達したものである。
【0064】
好ましい一実施形態として、前記特定の関係式(1)の値を35%以上または40%以上に制御することにより、セパレータの熱安定性と電気的特性をさらに向上させることができる。
【0065】
一実施形態のセパレータは、前記関係式(1)を満足すると同時に、150℃で60分間放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が全て8%以下、5%以下、3%以下または2.5%以下を満足する場合、特に電気的特性が著しく向上することができる。
【0066】
一実施形態でセパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグ(metal jig)に噛ませてTMAチャンバー(Thermomechanical Analyzer、Model:SDTA840(Mettler Toledo))に設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張るとき、MD方向およびTD方向ともに180℃以上、190℃以上、200℃以上、または210℃以上の温度で試験片が破断するセパレータ耐熱性を持つ場合、熱安定性および電気的特性をさらに向上させることができる。
【0067】
一実施形態として、前記関係式(1)を満たしたとしても、前記熱収縮率または前記TMA溶融破断温度条件が満たされない場合、電気的特性が本発明に要求される値を持たないことがある。このような現象は十分に説明されていないが、前記関係式(1)の値が多孔質基材の気孔の構造や気孔の分布などの要因により、前記関係式(1)を満足しながらも、熱収縮率またはTMA溶融破断温度条件を満足しなければ、十分な電気的特性を持つことができないと考えられる。
【0068】
前記物性を提供する一実施形態は、ポリエチレンフィルムなどの多孔質基材の少なくとも一面の上に無機物粒子が互いに接続されて気孔が形成される無機物粒子層が設けられた二次電池セパレータを挙げることができ、前記一実施形態でシラノールまたはアルコキシシラン系化合物を加水分解されると同時に縮合を抑制する特定の条件で製造したシラン化合物の加水分解縮合物を無機物粒子層のバインダーとして使用し、前記関係式(1)および熱収縮率またはTMA溶融破断温度条件のうちいずれか一つ以上の条件を共に満たすセパレータは、熱安定性に加えて電気的特性が優れた電気化学素子を提供することができる。
【0069】
一実施形態において前記関係式(1)を満足する場合であれば、前記で熱安定性および電気的特性を同時に付与する手段を特に限定しない。しかし、前記物性を付与する一手段として、例えば、シラン化合物を加水分解されるが、縮合が抑制される条件で縮合し、これを無機物粒子と混合したスラリーをポリエチレンなどの多孔質基材の少なくとも一面に塗布して、無機物粒子が互いに連結して気孔が形成される無機物粒子層を有するセパレータを製造することを挙げることができるが、前記物性を満足する限り、その手段を限定しない。
【0070】
以下、本発明の実施例によるセパレータの各構成について説明する。
【0071】
一実施形態によれば、前記多孔質基材としてポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの共重合体を主成分とするポリオレフィン系多孔質基材を使用することができ、これらからなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の樹脂からなるフィルムまたはシートであることができる。
【0072】
前記多孔質基材の厚さは特に限定されないが、例えば、1μm以上、3μm以上、5μm以上、100μm以下、50μm以下、30μm以下、20μm以下、または前記数値の間の値であることができる。多孔質基材の厚さは、非限定的な例として1~100μm、好ましくは5~50μm、さらに好ましくは5~30μmであることができる。前記多孔質基材は、一例によれば、延伸して製造された多孔質高分子基材であることができる。
【0073】
好ましい一実施形態では、前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むものとすることができる。前記極性官能基の非限定的な例としては、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基などを挙げることができる。前記極性官能基は、一実施形態では親水性表面処理で導入されたものであることができ、前記親水性表面処理は、一実施形態ではコロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含んで実施することができる。前記多孔質基材の表面に設けられた極性官能基は、後述するシラン化合物の加水分解縮合物バインダーの極性官能基と水素結合または化学結合して、多孔質基材と無機物粒子層の接着力をより向上させることができ、高温での熱収縮率をより低減させて熱安定性を向上させることができるので好ましい。
【0074】
一実施形態において、無機物粒子層は、無機物粒子とシラン化合物の加水分解縮合物を含むことができ、無機物粒子がシラン化合物の加水分解縮合物によって連結され、固定されて気孔を形成した多孔質無機物粒子層であることができる。一実施形態において、前記無機物粒子層は、多孔質基材の少なくとも一面に設けられ、多孔質基材の全体表面を基準にして面積分率60%以上、70%以上、80%以上または90%以上を占めることができる。
【0075】
一実施形態において、前記無機物粒子層は、多孔質基材の一面、好ましくは両面にコーティングすることができ、前記多孔質基材の両面に無機物粒子層がコーティングされる場合、一面と他の一面にコーティングされた無機物粒子層の厚さは、互いに同じか、異なることができる。特に限定されるものではないが、一実施形態で一面にコーティングされる無機物粒子層の厚さは、0μm超過、0.3μm以上、0.5μm以上、3μm以下、2.5μm以下、2μm以下、1.5μm以下、1μm以下、または前記数値の間の値であることができる。具体的な一実施形態において、前記無機物粒子層の厚さは、0μm超過2.5μm以下、または0μm超過2μm以下、好ましくは0μm超過1.5μm以下、より好ましくは0μm超過1μm以下であることができる。
【0076】
一実施形態として、前記無機物粒子は、この技術分野に使用する無機物粒子であれば限定しない。非限定的な例として、前記無機物粒子は、金属水酸化物、金属酸化物、金属窒化物および金属炭化物のうちの一つまたは二つ以上を含むことができ、より具体的には、SiO、SiC、MgO、Y、Al、CeO、CaO、ZnO、SrTiO、ZrO、TiOおよびAlO(OH)のうちの一つまたは二つ以上を含むことができる。電池の安定性などの観点から、無機物粒子は、好ましくはベーマイト(bohemite)のような金属水酸化物粒子であることができる。
【0077】
前記金属水酸化物は特に限定しないが、非限定的な例として、ベーマイト(boehmite)、水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)および水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)のいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。
【0078】
一実施形態として、前記ベーマイトを使用する場合、例えば比表面積(BET)は10m/g以上または15m/g以上とすることができる。
【0079】
前記無機物粒子の平均粒径(D50)は、0.01μm以上、0.05μm以上、0.1μm以上、5μm以下、1μm以下、0.5μm以下、または前記数値の間の値であることができる。前記無機物粒子の平均粒径(D50)は、非限定的な例として0.01~5μm、好ましくは0.01~1μm、さらに好ましくは0.01~0.5μmであることができる。
【0080】
次の一実施形態として、前記無機物粒子を連結して気孔が形成された無機物粒子層を形成するバインダーを説明する。一実施形態として前記バインダーは、下記化学式1で表されるシラン化合物を縮合するが、分子量が非常に抑制された低分子量の縮合物であることができる。
【0081】
[化学式1]
Si(OR)
【0082】
前記化学式1中、Aは、水素、ヒドロキシ基、極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。好ましい一実施形態では、前記化学式1のシラン化合物において、bが3であることを利用して縮合した低分子量の縮合物を使用することが、結合力などの点で好ましいことができる。
【0083】
前記シラン化合物の極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基の中から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含む、またはこれらと反応する反応性基であることができる。本発明の一実施形態によれば、前記極性官能基は、アミノ基(amino group)であることができる。
【0084】
前記化学式1を満たすシラン化合物の非限定的な例としては、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)および(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン((3-Glycidyloxypropyl)trimethoxysilane)から選択されるいずれか1種または2種以上の混合物であってもよいが、特に限定されない。
【0085】
一実施形態において、シラン化合物の加水分解縮合物は、シラン化合物が加水分解されると同時に縮合が抑制された条件で設けられるため、低分子量を有する。一実施形態において、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、弱酸性の雰囲気で加水分解され、縮合が抑制された加水分解縮合物であることができ、弱酸性の雰囲気で縮合反応が抑制され、非常に小さな分子量で調製することができる。一実施形態において、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、例えば、数平均分子量4000g/mol以下、2000g/mol以下または1000 g/mol以下の低分子量を有することができる。
【0086】
一方、通常、前記化学式1のシラン化合物を無機酸等の強酸により縮合する場合、4000g/molを超える数平均分子量を有するポリシロキサン縮合物が生成するが、本発明の一実施形態の縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解物は、それ自体の加水分解物、モノマー形態の未反応物および二量体加水分解縮合物を主成分として、微量の三量体加水分解縮合物または四量体加水分解縮合物を含む加水分解縮合物であることに違いがある。
【0087】
すなわち、一実施形態において、シラン化合物の加水分解縮合物は、前記シラン化合物の加水分解物、モノマー、加水分解され縮合された二量体、三量体、四量体および五量体などの多量体から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0088】
前記のような低分子量のシラン化合物の加水分解縮合物は、posESI FT-ICRMS(メーカー:Bruker、モデル名:Solarix 2XR)を使用してpositive ESI-MS分析時に検出される検出ピークから確認することができる。すなわち、前記positive ESI-MS分析の結果、加水分解物であるシランオール、縮合物である二量体が主に観測され、微量の三量体および四量体ピークが観測され、五量体以上のピークは通常のスラリーを製造する期間である1日または2日以内にはほとんど検出されません。しかし、無機酸である塩酸を使用して24時間加水分解・縮合する場合、別途添付はしないが、高分子量のピークが複雑に観測される。すなわち、これらの結果から、前記一実施形態の弱酸性の雰囲気で調製したシラン化合物の加水分解縮合物と、通常の無機酸などで製造した加水分解縮合物とは異なる形態の物質が得られることが確認できる。
【0089】
一実施形態によるシラン化合物の加水分解縮合物は、極性官能基を含むシラン化合物を加水分解反応に比べて縮合反応が相対的に抑制された条件で縮合し、相対的に低分子量で調製され、通常、無機酸などによって高分子量で縮合されて調製されるポリシロキサン縮合物に比べて、同一の重量で多くの極性官能基の割合を確保することができる。これにより、前記シラン化合物の加水分解縮合物は無機物粒子を互いに連結する接着力がさらに向上し、顕著な耐熱性を付与することができる。
【0090】
また、好ましい一実施形態で多孔質基材の表面に極性官能基が導入された場合、前記多孔質基材の表面に設けられた極性官能基がシラン化合物の加水分解縮合物バインダーの極性官能基と水素結合または化学結合して多孔質基材と無機物粒子層の接着力をより向上させることができ、高温で高温収縮率をより低減させて熱安定性を向上させることができるので、差別的に好ましい。
【0091】
次に、前記セパレータの製造方法の実施形態を説明する。
【0092】
一実施形態として、(a)下記化学式1で表されるシラン化合物水溶液に無機物粒子および酸の成分を投入し、撹拌またはバブリングして弱酸性の雰囲気でスラリーを製造するステップと、(b)前記製造されたスラリーを多孔質基材の少なくとも一面上に塗布し、乾燥して前記多孔質基材の少なくとも一面に無機物粒子層が設けられるステップと、を含み、前記関係式(1)を満足する、セパレータの製造方法を提供することができる。前記(a)および(b)ステップは、前記関係式(1)を達成できる限り、制限なく様々な条件または方法で行うことができる。
【0093】
[化学式1]
Si(OR)
【0094】
前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。
【0095】
前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基の中からいずれか一つまたは二つ以上を含むか、これらと反応する反応性基であることができる。
【0096】
以下、前記一実施形態によるセパレータの製造方法の各ステップについて説明する。前記各シラン化合物、無機物粒子、多孔質基材についての説明は前述と同様であるため、便宜上省略する。
【0097】
本発明の一実施形態によれば、(a)ステップでシラン化合物が加水分解反応に対して縮合反応が相対的に抑制される弱酸性の雰囲気でシラン化合物の加水分解縮合物として設けられる。その結果、前記シラン化合物の加水分解縮合物は低分子量を有し、これは通常の無機酸などの強酸によって縮合されて数千の数平均分子量を有するポリシロキサン縮合物とは異なる。
【0098】
一実施形態において、前記(a)ステップは、pH4超過pH7以下の弱酸性の雰囲気で実施することができる。pH4以下である場合や、塩基性の雰囲気(pH7超過)である場合や、硫酸または塩酸などの無機酸を利用する場合、加水分解・縮合反応時には、製造されたスラリーの分散性が低下し、無機物粒子間に凝集が発生して平均粒径が増加する恐れがあり、目的とする低分子量のシラン化合物の加水分解縮合物を確保できない恐れがあり、これはセパレータの耐熱性や接着性が低下する問題を引き起こす可能性があるため好ましくない。前記観点から、前記弱酸性の雰囲気は、好ましくは、pH4超過、pH4.5以上、pH5以上、pH5.5以上、pH6以上、pH6.5以上pH7以下、または前記数値の間の値であることができる。一実施形態において、前記弱酸性の雰囲気は、pH4超過pH7以下またはpH4.5以上pH7以下であることができる。
【0099】
また、前記(a)コーティングスラリーを製造するステップにおいて、コーティングスラリーを構成する成分を投入する方法や、順序については特に限定せず、可能な全ての方法を活用することができる。例えば一実施形態では、前記化学式1で表されるシラン化合物および酸の成分を含む酸の水溶液を別途設けて、無機物粒子、酸の成分および水を撹拌して無機物スラリーを別途設けた後、前記別途設けた酸の水溶液、無機物スラリーを撹拌することにより、コーティングスラリーを製造することができる。
【0100】
一実施形態によれば、(a)プロセスの酸の成分は、二酸化炭素、または酢酸および乳酸から選択される1つまたは2つを含む有機酸であってもよい。二酸化炭素は、シラン化合物水溶液に投入された後、撹拌またはバブリングする場合、炭酸になることができる。前記酸の成分を使用する場合、本発明の効果をよりよく達成することができ、縮合反応を前記pH範囲で容易に抑制することができるため、より好ましいが、本発明の物性を有するセパレータが提供される限り、これに限定されるものではない。
【0101】
一実施形態によれば、前記スラリー中の無機物粒子と前記化学式1のシラン化合物は、70~99.9:30~0.1重量比、または80~99.9:20~0.1重量比、または90~99.9:0.1~10重量比であってもよいが、特に限定されるものではない。
【0102】
スラリーを製造する方法は、当該技術分野で公知の通常の方法を制限なくすべて適用することができ、特に制限はないが、非限定的な例によると、0~60℃で1時間~5日間撹拌して無機物粒子を分散してスラリーを製造することができ、ボールミルを利用して凝集した無機物粒子を分散することもできる。
【0103】
本発明の一実施形態によれば、(b)ステップでセパレータの少なくとも一面に無機物粒子層を設けることができる。前記スラリーを塗布する方法としては、当該技術分野で公知の通常の方法を制限なくすべて適用することができ、前記無機物粒子層を形成するための乾燥は特に制限されないが、100℃以下、または30~60℃で乾燥することができる。
【0104】
通常、多孔質基材上にスラリーを塗布した後、乾燥機に1分以内に直ちに移送して乾燥するステップとは異なり、本発明の一実施形態によれば、前記(b)ステップで、前記関係式(1)をより満足できる手段で前記スラリーを塗布した後、常温で5分以上静置するステップを含むことができる。これは、前記5分以上政治するステップにより、スラリー内の無機物粒子とシラン化合物の加水分解縮合物が再配列される時間を付与することができ、これにより、前記関係式(1)をよりよく満足できるものと推測される。静置する時間は一定時間以上付与することが適切であるが、長すぎる場合、工程の効率を阻害する可能性があるため好ましくない。これを考慮して、前記静置する時間は5分以上、8分以上、10分以上、30分以下、25分以下、20分以下、または前記数値の間の値であることができる。静置する時間の非限定的な一例としては、5~30分、または5~25分であることができる。
【0105】
好ましい一実施形態では、(b)ステップの後、(c)前記少なくとも一面に無機物粒子層が設けられた多孔質基材をエージングするステップをさらに含むことができる。具体的には、前記エージングは、50~150℃、好ましくは65~120℃で行うことができ、エージング時間は2~24時間、好ましくは10~20時間行うことができる。より好ましくは70~120℃の温度範囲で10~15時間行うことができる。前記エージングを通じて、多孔質基材と無機物粒子層間の接着力を増加させ、高温収縮特性を向上させることができる。
【0106】
すなわち、本発明の一実施形態による二次電池セパレータの製造方法は、前記エージングステップをさらに含むことにより、多孔質基材および無機物粒子層間の安定的で強い化学結合を通じて高温収縮特性がさらに改善され、熱安定性が向上したセパレータの製造方法を提供することができる。また、多孔質基材および無機物粒子層間の接着力がより向上することができる。
【0107】
また、好ましい一実施形態で多孔質基材の表面に極性官能基が導入された場合、前記多孔質基材の表面に設けられた極性官能基がシラン化合物の加水分解縮合物バインダーの極性官能基と水素結合または化学結合して多孔質基材と無機物粒子層の接着力をより向上させることができ、高温で高温収縮率をより低減させて熱安定性を向上させることができる。前記多孔質基材の表面に極性官能基を導入する方法としては、例えば親水性表面処理を挙げることができ、前記親水性表面処理は、一例によれば、大気、酸素およびオゾンの雰囲気下でコロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含んで実施することができる。前記多孔質基材の表面に導入された極性官能基としては、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0108】
また、本発明の他の一実施形態は、多孔質セパレータの熱安定性の評価方法を提供することである。
【0109】
一実施形態として、多孔質セパレータの熱安定性の評価方法は、下記式(1)の絶対値を予め決定された基準値と比較してセパレータの熱安定性を評価する、セパレータの熱安定性の評価方法を提供することができる。
【0110】
(1)T-T
前記式(1)中、Tは前記セパレータをt℃で1時間放置した後、測定した光透過率であり、Tは前記セパレータをt℃で1時間放置した後、測定した光透過率であり、前記tとtはお互い異なる温度である。
【0111】
光透過率の変化量に関連する前記特定式(1)の値は、具体的に無機物粒子層の厚さ、無機物粒子の粒径、多孔質基材の厚さ、多孔質基材の気孔率、無機物粒子層内に含まれるバインダーの種類、組成は複合的に熱収縮率、光透過率に影響を与えることができる。
【0112】
前記一実施形態のセパレータの熱安定性の評価方法は、前記変化量の値が一定レベル以上になる場合、セパレータが優れた耐熱性、熱収縮性を確保できることを初めて認識して到達した発明である。
【0113】
前記一実施形態において、多孔質セパレータとは、当該技術分野で公知の全ての多孔質セパレータであり、特に限定されない。
【0114】
一実施形態において、前記多孔質セパレータは、多孔質基材および前記多孔質基材の少なくとも一面上に形成された無機物粒子が互いに隣接して気孔が形成される無機物粒子層を含むものとすることができる。前記多孔質基材、無機物粒子は、当該技術分野で公知の全ての多孔質基材、無機物粒子を使用することができ、特に限定されないが、一実施形態で本明細書で前述した多孔質基材、無機物粒子を使用することができる。一実施形態において、前記多孔質基材は、ポリオレフィン系多孔質基材であることができる。
【0115】
一実施形態において、前記tは25℃であり、前記tは150℃であることができるが、特に限定されるものではない。
【0116】
一実施形態において、前記光透過率は、定格電圧12V、消費電力50Wの条件のハロゲンランプ下で測定したものであり、光透過率は、光透過率の測定対象のセパレータをColorimeter(COH 400、Nippon denshoku)の試験片 ホルダーにハロゲンランプ(12V/50W、7027 Philips)と垂直に100mm離隔して固定した後、測定する。光透過率は、透過光の強度を入射光の強度で割った値の割合で求める。
【0117】
前記予め決定された基準値は、セパレータの熱安定性を評価するための基準値として特に限定されず、適切に決定することができる。一実施形態では、前記式(1)の絶対値と予め定められた基準値を比較して、前記式(1)の絶対値が予め定められた基準値以上であれば、セパレータの熱安定性が優れていると評価することができるが、特に限定されるものではない。
【0118】
好ましい一実施形態では、著しく優れた熱安定性を評価するための基準値として、前記予め決定された基準値は30%、35%または40%が好ましいが、特に限定されるものではない。
【0119】
従来の代表的なセパレータの熱安定性の評価方法として、セパレータ上に基準点を表示した後、熱処理後、セパレータ上の基準点の距離変化で熱収縮率を導出し、そこからセパレータの熱安定性を評価する方法は、基準点を表示する前処理過程が必ず必要であるため、非効率的であり、表記方法によっては誤差が発生する恐れがある。一方、本発明の実施例によるセパレータの熱安定性の評価方法は、基準点を表示するなどの前処理過程が不要で効率的であり、光透過率の変化量の絶対値を利用してセパレータの熱安定性を評価するため、評価方法が簡単でありながら誤差範囲が狭く正確な特徴がある。
【0120】
本発明の一実施形態によれば、前記実施形態のうち一実施形態によるセパレータを含む電気化学素子を提供することができ、前記電気化学素子は、公知の全てのエネルギー貯蔵装置であることができ、特に限定されないが、非限定的な一例としてリチウム二次電池を挙げることができる。前記リチウム二次電池は公知であり、その構成も知られているので、本発明では具体的に説明しない。
【0121】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、正極と負極の間に前記セパレータを含むものであることができる。このとき、前記正極および負極は、通常リチウム二次電池に使用されるものであれば、限定されることなく使用することができる。
【0122】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下の実施例および比較例は、本発明をより詳細に説明するための一例であって、本発明が以下の実施例および比較例によって限定されるものではない。
【0123】
まず、セパレータの物性測定、評価方法について説明する。
【0124】
[熱収縮率]
セパレータの熱収縮率はASTM D 1204に基づき測定するが、次の方法で測定する。セパレータに一辺が10cmの正方形に2cm間隔で格子点を表示する。この正方形の一辺は幅方向(TD、Transverse Direction)であり、他の一辺は機械方向(MD、Machine Direction)である。試験片を正中に位置させ、試験片の上下に紙を5枚ずつ置き、紙の四辺をテープで包む。紙で包んだ試験片を150℃、熱風乾燥オーブンに60分間放置する。その後、試験片を取り出し、セパレータをカメラで観察し、下記数学式1の縦方向収縮率および下記数学式2の横方向収縮率を計算する。
【0125】
数学式1
長さ方向収縮率(%)=(加熱前の長さ方向の長さ-加熱後の長さ方向の長さ)×100/加熱前の長さ方向の長さ
【0126】
数学式2
幅方向収縮率(%)=(加熱前の幅方向の長さ-加熱後の幅方向の長さ)×100/加熱前の幅方向の長さ
【0127】
[TMA溶融破断温度]
セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグ(metal jig)に噛ませてTMAチャンバー(Thermomechanical Analyzer、Model:SDTA840(Mettler Toledo)に設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張るとき、それぞれのMD方向およびTD方向で試験片が破断する温度、TMA溶融破断温度を導出する。
【0128】
[光透過率(T、T)および光透過率の変化量(T-T)]]
およびTの測定条件は以下の通りである。
【0129】
は、前記セパレータを25℃で1時間放置した後、定格電圧12V、消費電力50Wのハロゲンランプと垂直に100mm離隔して測定した光透過率である。前記セパレータを放置する条件は、セパレータを切断して一辺が10cmの正方形の試験片を設けて、前記試験片の上、下に前記試験片と同じ大きさの紙をそれぞれ5枚ずつ置き、紙の四辺をテープで包んだ後、紙で包んだセパレータを熱風乾燥オーブンで25℃、1時間放置した後、常温で冷却させる。
【0130】
は、前記セパレータを150℃で1時間放置した後、定格電圧12V、消費電力50Wのハロゲンランプと垂直に100mm離隔して測定した光透過率である。前記セパレータを放置する条件は、セパレータを切断して一辺が10cmの正方形の試験片を設けて、前記試験片の上と下に前記試験片と同じ大きさの紙をそれぞれ5枚ずつ置き、紙の四辺をテープで包んだ後、紙で包まれたセパレータを熱風乾燥オーブンで150℃、1時間放置した後、常温で冷却させる。
【0131】
光透過率は、セパレータをColorimeter(COH 400、Nippon denshoku)の試験片ホルダーにハロゲンランプ(12V/50W、7027 Philips)と垂直に100mm離隔して固定した後、透過光の強度を入射光の強度で割った値の割合で求める。
【0132】
「T-T」の値は、前記のように導出したTからTを引いた値で導出する。
【0133】
[電池抵抗]
以下の条件で電池を製造し、J-pulse法により放電抵抗を測定する。
【0134】
電池の製造
アノード活物質としてLiCoO を94重量%、融着剤としてポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene fluoride)を2.5重量%、導電剤としてカーボンブラック(Carbon-black)を3.5重量%、溶媒であるNMP(N-methyl-2 -pyrrolidone)に添加し、撹拌して均一な正極スラリーを製造する。前記製造された正極スラリーを30μm厚のアルミニウム箔の上にコーティング、乾燥および圧着して合計150μm厚の正極を製造する。負極活物質として人工黒鉛を95重量%、融着剤としてTgが-52℃のアクリル系ラテックス(Acrylic latex)を3重量%、増粘剤としてCMC(Carboxymethyl cellulose)を2重量%、溶媒である水に添加して撹拌して均一な負極スラリーを製造する。前記製造された負極スラリーを20μm厚の銅箔の上にコーティング、乾燥および圧着して合計150μm厚の負極を製造する。前記製造された正極、負極およびセパレータを前記正極および負極の間に積層(stacking)する方式でポーチ型電池を組み立てた後、正極、負極およびセパレータを互いに融着させるために組み立てられた電池を熱プレス機で80℃、1MPaで熱融着する。その後、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)が体積比30:50:20で含まれる溶液に1Mのヘキサフロロリン酸リチウム(LiPF)が溶解した電解液を注入し、密封して容量2Ahの二次電池を製造する。
【0135】
{実施例}
[実施例1]
スラリーの製造
蒸留水100重量部に3-アミノプロピルシラントリオール(3-Aminopropylsilanetriol)3.41重量部を添加し、ドライアイスを使用してCO バブリングを行うと同時に、無機物粒子として平均粒径(D50) 0.32μmのベーマイト(boehmite)30重量部を添加した。COバブリングを進めながら、内部のpHを4~5に維持し、全体として48時間バブリングしてスラリーを製造した。
【0136】
多孔質基材
多孔質基材として9μm厚のポリエチレン多孔質フィルム(気孔率:48%、ガリー透過率:82sec./100cc、引張強度MD:2020kgf/cm/TD:1950kgf/cm)の両面をコロナ放電処理(電力密度2W/mm)し、表面極性基を導入し、この時、コロナ表面処理は速度3~20mpm(meter per minute)とした。
【0137】
セパレータの製造
前記多孔質基材の両面に前記スラリーを塗布した後、5分間静置した。その後、50℃の乾燥機で十分に乾燥し、それぞれ2μmの厚さで無機物粒子層を形成した。無機物粒子層が形成された多孔質基材を100℃で12時間エージング(aging)するステップを経てセパレータを製造した。
【0138】
[実施例2]
スラリー製造時に無機物粒子として平均粒径(D50)0.6μmのベーマイト(boehmite)を使用した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0139】
[実施例3]
セパレータの多孔質基材として11μm厚のポリエチレン多孔質フィルム(気孔率:42%、ガリー透過率:146sec./100cc、引張強度MD:2314kgf/cm/TD:2033kgf/cm)を採用した以外は実施例1と同じ条件で製造した。
【0140】
[実施例4]
実施例1でCOバブリングする代わりに乳酸(lactic acid)を添加してpH4.5に維持しながら撹拌して多孔質基材の両面にそれぞれ1.5μm厚の無機物粒子層を形成した以外は、実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0141】
[実施例5]
実施例1でCOバブリングする代わりに酢酸(acetic acid)を添加してpH4.5に維持しながら撹拌して多孔質基材の両面にそれぞれ1.5μm厚の無機物粒子層を形成した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0142】
[実施例6]
スラリー製造時にスラリー濃度を調整し、多孔質基材の両面にそれぞれ1μmの厚さの無機物粒子層を形成した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0143】
[比較例1]
実施例1でバインダーとして溶融温度が220℃で、鹸化度が99%のポリビニルアルコール(PVA、固形分含量6重量%)0.5gとTが-52℃のアクリルラテックス(ZEON、BM900B、固形分含量20重量%)2.5gを混合したスラリーを製造した以外は、実施例1と同じ条件で無機物粒子コーティング層のそれぞれの厚さが2μmのセパレータを製造した。
【0144】
[比較例2]
スラリー製造時に酸の成分として硫酸を使用し、pH3.5で加水分解・縮合した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0145】
[比較例3]
スラリー製造時に酸の成分として塩酸を使用し、pH3.5で加水分解・縮合した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0146】
[比較例4]
実施例1でCOバブリングを行わず、pH8.2で加水分解・縮合した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。
【0147】
[評価例1]セパレータの物性および電気化学的特性評価
【0148】
前記各実施例と比較例のセパレータ物性値を下記表1に表した。表1に記載された物性値は、以下の方法で測定した。
【0149】
【表1】
【0150】
前記表1から、本発明の実施例は、光透過率変化量T-T値が30%以上の結果、TMA溶融破壊温度および電池抵抗で著しく改善された耐熱性および電気的特性を同時に示すが、本発明に属さないセパレータはこれらの物性を満足しないことが分かる。
【0151】
一方、光透過率変化量T-T値が31%である実施例3の場合、比較例セパレータに比べて耐熱性および電気的特性が優れていたが、光透過率変化量T-T値が40%以上の他の実施例に比べて耐熱性および電気的特性が少し劣った。
【0152】
また、光透過率変化量T-T値が30%以上であるが、熱収縮率や、TMA溶融破断温度が低い実施例6の場合、比較例に比べて耐熱性および電気的特性が優れていたが、本発明で限定する熱収縮率や、TMA溶融破断温度を満足する他の実施例に比べて電気的特性が少し劣っていた。
【0153】
以上のように本発明では、特定の事項と限定された実施例および図面によって説明したが、これは本発明のより全体的な理解を助けるために提供されたものであり、本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば、これらの記載から様々な修正および変形が可能である。
【0154】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して定められるものではなく、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価な変形があるすべてのものは、本発明の思想の範疇に属するといえる。