(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181144
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】セパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20231214BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/411 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20231214BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/457
H01M50/489
H01M50/42
H01M50/443 B
H01M50/443 E
H01M50/446
H01M50/411
H01M50/403 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095595
(22)【出願日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2022-0070370
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】クァク ウォン スブ
(72)【発明者】
【氏名】クォン テ ウク
(72)【発明者】
【氏名】ベ フン テク
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン ヒ
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021BB20
5H021CC04
5H021EE01
5H021EE02
5H021EE06
5H021EE20
5H021EE21
5H021EE22
5H021EE24
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH06
5H021HH10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐熱性が著しく向上しつつ、電極との密着性に優れたセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気的特性に優れた電気化学素子を提供する。
【解決手段】多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層、および前記無機物粒子層の少なくとも一面上に設けられた熱融着層、を含み、前記熱融着層の表面60°での表面光沢度値が10GU以上である、セパレータを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、
前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層と、
前記無機物粒子層の少なくとも一面上に設けられた熱融着層と、を含む、
前記熱融着層の表面60°での表面光沢度値が10GU以上のセパレータ。
【請求項2】
前記熱融着層の表面60°での表面光沢度値が20GU以上の、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向とするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグに噛ませてTMAチャンバーに設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張ったとき、MD方向およびTD方向ともに180℃以上の温度で試験片が破断する耐熱性を有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記セパレータを150℃で60分放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
200μm厚のカーボンシート上に前記セパレータの熱融着層が対面するように積層し、熱プレス機で80℃、1MPaで30秒間圧着して融着した後、180°で剥離して測定した接着力が5gf以上の、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項6】
下記式(1)で表される通気度の変化量ΔGが60sec/100cc以下である、請求項1に記載のセパレータ。
(1)ΔG=G1-G2
(前記式(1)中、
前記G1は前記セパレータのギャリ透過率であり、
前記G2は前記多孔質基材のガリー透過率であり、
前記ガリー透過率はASTM D 726に従って測定される)
【請求項7】
前記熱融着層は、Tg30~70℃のアクリル系粒子状バインダーを含むものである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記無機物粒子層は、無機物粒子とシラン化合物の加水分解縮合物を含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記シラン化合物の加水分解縮合物は、弱酸性の雰囲気で得られた加水分解縮合物であること、請求項8に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記シラン化合物は下記化学式1で表される化合物である、請求項8に記載のセパレータ。
[化学式1]
AaSi(OR)b
(前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である)
【請求項11】
前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含む、請求項10に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むものである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項13】
(a)下記化学式1で表されるシラン化合物水溶液に無機物粒子および酸の成分を投入し、撹拌またはバブリングしてスラリーを製造するステップと、
(b)前記製造されたスラリーを多孔質基材の少なくとも一面上に無機物粒子層を形成するステップと、
(c)前記形成された無機物粒子層の少なくとも一面上に熱融着層を形成するステップと、を含み、前記熱融着層の表面60°での表面光沢度値が10GU以上である、セパレータの製造方法。
[化学式1]
AaSi(OR)b
(前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。)
【請求項14】
前記(b)ステップは、前記製造されたスラリーを多孔質基材に塗布した後、常温で5分以上静置することを含む、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項15】
前記熱融着層は、Tg30~70℃のアクリル系粒子状バインダーを含むものである、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項16】
前記シラン化合物の極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基から選ばれるいずれか1つまたは2つ以上を含む、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項17】
前記(a)スラリーを製造するステップは、pH4超過pH7以下の弱酸性の雰囲気で行われることを特徴とする、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項18】
前記酸の成分は、二酸化炭素、または酢酸および乳酸から選ばれるいずれか一方または両方を含む有機酸、である、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項19】
(a)スラリー中の無機質粒子と前記化学式1のシラン化合物は、70~99.9:30~0.1の重量比で含まれるものである、請求項13に記載のセパレータの製造方法。
【請求項20】
請求項1~10のいずれか一項に記載のセパレータを含む、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子に関するもので、著しく向上した高耐熱性を確保可能でありながら、電極との接着性に優れたセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電気化学素子に適用されるセパレータは、高温で収縮したり、電極との接着力が不足して内部の短絡を引き起こす可能性があり、前記内部の短絡による火災発生の恐れがあるため、ユーザーの安全のために前記セパレータの熱安定性と電極との接着力は必ず改善しなければならない問題である。セパレータの熱安定性を確保するために、無機物粒子層を多孔質基材表面に積層した形態の有機・無機複合多孔質セパレータが開発された。しかし、前記有機・無機複合多孔質セパレータは、熱収縮率など熱安定性をある程度改善しているが、現在市販されている製品の熱安定性はまだ不足しており、また、電極接着力も不足しているのが現状である。
【0003】
前記有機・無機複合多孔質セパレータは、電極との接着力が十分でない場合、前記セパレータと電極を積層して組み立てられた電池は、繰り返しの充放電によって電極とセパレータの間に不規則な間隔の空間が形成される浮き現象が発生する恐れがあり、これにより電池駆動時に電極間の短絡が発生し、火災などの安定性の問題が存在する。
【0004】
したがって、セパレータの熱安定性をさらに向上させると同時に、電極とセパレータ間の浮き現象が発生しないように、セパレータと電極間の接着性を十分に維持できるようにする技術が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の問題点を解決するために、本発明は、耐熱性が著しく向上しつつ、電極との密着性に優れたセパレータ、その製造方法および前記セパレータを含む電気的特性に優れた電気化学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するための一手段として、本発明の一実施形態によれば、多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層と、前記無機物粒子層の少なくとも一面上に設けられた熱融着層と、を含み、前記熱融着層の表面60°での表面光沢度値が10GU以上のセパレータを提供することができる。
【0007】
また、一実施形態では、前記熱融着層の表面60°での表面光沢度値が20GU以上であってもよい。
【0008】
また、一実施形態によれば、前記セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向とするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタル治具に噛ませてTMAチャンバーに設置し、毎分5℃に昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張ったとき、MD方向およびTD方向ともに180℃以上の温度で試験片が破断する耐熱性を有するセパレータを提供することができる。
【0009】
また、一実施形態で前記セパレータを150℃で60分放置した後に測定したMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下である場合がある。
【0010】
また、一実施形態によれば、200μmの厚さのカーボンシート上に前記セパレータの熱融着層が対面するように積層した後、熱プレス機で80℃、1MPaで30秒間圧着して融着した後、180°で剥離して測定した接着力が5gfを超えるセパレータを提供することができる。
【0011】
また、一実施形態によれば、下記式(1)で表される通気度の変化量ΔGが60sec/100cc以下であるセパレータを提供することができる。
【0012】
(1)ΔG=G1-G2
前記式(1)中、
前記G1は前記セパレータのギャリ透過率であり、
前記G2は前記多孔質基材のガリー透過率であり、
前記ガリー透過率は、ASTM D 726に従って測定される。
【0013】
また、一実施形態において、前記熱融着層は、Tg30~70℃のアクリル系粒子状バインダーを含むことができる。
【0014】
また、一実施形態において、前記無機物粒子層は、無機物粒子とシラン化合物の加水分解縮合物を含むことができる。
【0015】
また、一実施形態において、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、弱酸性の雰囲気で得られた加水分解縮合物であってもよい。
【0016】
また、一実施形態において、前記シラン化合物は、下記化学式1で表される化合物であることができる。
【0017】
[化学式1]
AaSi(OR)b
【0018】
前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。
【0019】
また、一実施形態において、前記極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基のいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0020】
また、一実施形態において、前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むものであってもよい。
【0021】
また、前記の課題を達成するための他の一手段として、本発明の一実施形態によれば、(a)下記化学式1で表されるシラン化合物水溶液に無機物粒子および酸の成分を投入し、撹拌またはバブリングしてスラリーを製造するステップと、(b)前記製造されたスラリーを多孔質基材の少なくとも一面上に無機物粒子層を形成するステップと、(c) 前記形成された無機物粒子層の少なくとも一面上に熱融着層を形成するステップと、を含むが、前記熱融着層の表面60°での表面光沢度値が10GU以上であるセパレータの製造方法を提供することができる。
【0022】
[化学式1]
AaSi(OR)b
【0023】
前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。
【0024】
また、一実施形態において、前記(b)ステップは、前記製造されたスラリーを多孔質基材に塗布した後、常温で5分以上静置することを含むことができる。
【0025】
また、一実施形態において、前記熱融着層は、Tg(glass-transtition temperature)30~70℃のアクリル系粒子状バインダーを含むことができる。
【0026】
また、一実施形態において、前記シラン化合物の極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0027】
また、一実施形態において、前記(a)スラリーを製造するステップは、pH4超過pH7以下の弱酸性の雰囲気で行うことができる。
【0028】
また、一実施形態において、前記酸の成分は、二酸化炭素、または、酢酸および乳酸から選択されるいずれか1つまたは2つを含む有機酸、であってもよい。
【0029】
また、一実施形態では、前記(a)スラリー中の無機物粒子と前記化学式1のシラン化合物は、70~99.9:30~0.1の重量比で含有することができる。
【0030】
また、上述の課題を達成するための他の一手段として、本発明の一実施形態によれば、前述の実施形態のうち一実施形態によるセパレータを含む電気化学素子を提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
一実施形態によると、多孔質基材の少なくとも一面上に無機物粒子が互いに接続されて気孔が形成される無機物粒子層が設けられた二次電池セパレータで、シラノールまたはアルコキシシラン系化合物を加水分解すると同時に縮合を抑制する特定の条件で製造したシラン化合物の加水分解縮合物を無機物粒子層のバインダーとして使用して、セパレータの熱安定性を著しく向上させることができる。
【0032】
前記一実施形態によると、前記縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物を無機物粒子を連結、固定するバインダーとして使用する場合、無機物粒子層の厚さが薄く、非常に均一であり、前記無機物粒子層の上部に熱融着層を形成したとき、光沢度が増加し、高温での熱収縮率が著しく減少し、熱安定性が著しく増加することができる。すなわち、前記無機物粒子層の厚さが非常に均一であり、無機物粒子が高密度に充填されることにより、熱収縮率が著しく上昇し、前記無機物粒子層の上部に熱融着層を形成したとき、表面光沢度が上昇することが理解される。これにより、セパレータの熱安定性および電極との接着力を同時に改善することができ、前記セパレータを含む電気化学素子の電気的特性も改善することができる。一実施形態として、熱融着層の表面60°での表面光沢度値が10GU以上の特定の表面光沢度を持つことができる。また、好ましい一実施形態において、前記熱融着層の表面60°での表面光沢度値は、20GU以上または25GU以上であることができ、より好ましくは30GU以上、40GU以上または45GU以上であることができる。
【0033】
一実施形態では、セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグ(metal jig)に噛ませてTMAチャンバー(Thermomechanical Analyzer、Model: SDTA840(Mettler Toledo))に設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張る時、前記MD方向およびTD方向ともに180℃以上、190℃以上、200℃以上、210℃以上または220℃以上の温度で試験片が破断する、より優れた熱安定性を持つことができる。
【0034】
一実施形態では、セパレータを150℃で60分間放置した後のMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下、2.5%以下または2%以下であることができる。
【0035】
同時に、前記一実施形態のセパレータは、200μm厚のカーボンシート(TOYO Tanso Korea、PF-20HP)を電極の代わりに使用して、前記カーボンシート上にセパレータの熱融着層が対面するように積層した後、熱プレス機で80℃、1MPaで30秒間圧着して融着した後、Instron社のUTM装置を利用して180°で剥離(peel)し、測定した電極接着力が5gf超過または10gf以上のより優れた電極接着力を持つことができる。
【0036】
また、一実施形態によるセパレータは、無機物粒子層、熱融着層がないセパレータに比べて通気度の変化量が60秒/100cc以下、50秒/100cc以下に改善された通気度を持つことができる。
【0037】
前記物性を提供する一実施形態は、多孔質基材、前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層および前記無機物粒子層の少なくとも一面上に設けられた熱融着層を含み、前記無機物粒子層は、無機物粒子とシラン化合物の加水分解縮合物を含み、前記熱融着層の表面60°での表面光沢度値が10GU以上のセパレータを提供することができる。好ましい一実施形態では、前記熱融着層の表面60°での表面光沢度値は、20GU以上または25GU以上であることができ、より好ましい一実施形態では、30GU以上、40GU以上または45GU以上であることができる。
【0038】
また、好ましい一実施形態としては、前記多孔質基材をコロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含む表面処理でカルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシル基などの極性官能基を持つように改質する場合、無機物粒子層を固定する前記シラン化合物の加水分解縮合物バインダーによって前記多孔質基材の表面の極性官能基と水素結合または化学結合が可能であるため、従来の有機高分子系バインダーを使用しなくても、多孔質基材と無機物粒子層の結合力が著しく優れ、高温でも高温収縮率を著しく低減させ、熱的安定性が著しく向上する効果を付与することができる。
【0039】
また、好ましい一実施形態では、無機物粒子層を形成した後、エージングステップを行うことにより、多孔質基材と無機物粒子層との間の接着力を増加させ、高温収縮特性をさらに向上させることができる。
【0040】
一実施形態としては、前記物性を全て満足する新しいセパレータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付された図面を含む具体的な実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下の具体例は一つの参考であるだけで、本発明がこれに限定されるものではなく、複数の形態で実施することができる。
【0042】
また、特に定義されていない限り、すべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の説明に使用される用語は、特定の実施形態を効果的に説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0043】
また、明細書および添付された特許請求の範囲に使用される単数形は、文脈から特別な指示がない限り、複数形も含むことを意図することができる。
【0044】
また、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含めることができることを意味する。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、多孔質基材、前記多孔質基材の少なくとも一面上に設けられた無機物粒子層および前記無機物粒子層の少なくとも一面上に設けられた熱融着層を含み、前記熱融着層の表面60°での表面光沢度値が10GU以上のセパレータを提供することができる。
【0046】
一実施形態のセパレータは、前記実施形態の条件を満足する場合、セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグ(metal jig)に噛ませてTMAチャンバー(Thermomechanical Analyzer、Model: SDTA840(Mettler Toledo))に設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張る時、前記MD方向およびTD方向ともに180℃以上、190℃以上、200℃以上または210℃以上の温度で試験片が破断するより優れた熱安定性を持つことができる。
【0047】
一実施形態では、セパレータを150℃で60分間放置した後のMD方向およびTD方向の熱収縮率が3%以下または2.5%以下であることができる。
【0048】
同時に、前記一実施形態のセパレータは、200μm厚のカーボンシート(TOYO Tanso Korea、PF-20HP)を電極の代わりに使用して、前記カーボンシート上にセパレータの熱融着層が対面するように積層した後、熱プレス機で80℃、1MPaで30秒間圧着して融着した後、Instron社のUTM装置を利用して180°で剥離(peel)し、測定した電極接着力が5gf超過または10gf以上のより優れた電極接着力を持つことができる。
【0049】
また、一実施形態において、下記式(1)で表される通気度の変化量ΔGが60sec/100cc以下である、セパレータを提供することができる。
【0050】
(1)ΔG=G1-G2
前記式(1)中、前記G1は前記セパレータのガリー透過率であり、前記G2は前記多孔質基材のガリー透過率であり、前記ガリー透過度はASTM D 726に従って測定され、Toyoseiki社のDensometerを利用して100ccの空気がセパレータの1平方インチの面積を通過するのにかかる時間を秒単位で記録して導出した。前記一実施形態によるセパレータは、無機物粒子層、熱融着層を有するにもかかわらず、無機物粒子層、熱融着層がない多孔質基材に比べて通気度の変化量が60秒/100cc以下に改善された通気度を有することができる。
【0051】
前記物性を満足するセパレータは、基本的に前記光沢度を満足しながら、同時に耐熱特性を満足するセパレータであることができる。前記光沢度等の物性を満足する手段としては、前記物性を満足する限り、その手段を特に限定するものではない。前記物性を付与する手段の非限定的な例としては、無機物粒子の大きさと粒度分布、バインダーの種類およびバインダーの流動性と極性基の含有程度、多孔質基材の表面特性、熱融着層を形成する有機高分子粒子の種類およびサイズ、無機物粒子層を構成する無機物粒子とバインダーを含むスラリーを多孔質基材に塗布した後、常温で一定時間政治してスラリー内の無機物粒子とバインダーが再配列し、高密度に充填されるように誘導する時間を付与するなどの様々な手段を採用することができるが、これに限定されるものではない。
【0052】
前記の物性を付与する一手段として、バインダーは、一実施形態によれば、シラノールまたはアルコキシシラン系化合物を加水分解されると同時に縮合を抑制する特定の条件で製造した非常に小さい分子量を有するシラン化合物の加水分解縮合物を無機物粒子層のバインダーとして使用して、セパレータの熱安定性を著しく向上させることができる。すなわち、前記一実施形態によれば、高温での収縮率が著しく減少し、熱安定性が著しく増加することができる。同時に、熱融着層の表面60°での表面光沢度の値が特定の表面光沢度を有することと、前記一実施形態と組み合わせる場合、著しく改善された熱安定性と同時に、優れた電極との接着力をセパレータにより良く提供することができる。
【0053】
これは正確ではないが、前記シラン化合物の加水分解縮合物バインダーが非常に小さな分子量を持ち、流動性が従来の高分子量バインダーよりさらに増加し、無機物粒子の高密度充填がよりよく行われたり、または無機物粒子間の欠陥(defects)をなくしたり、最小化したり、また、無機物粒子層の厚さの均一性をよく付与するためであると考えられる。このため、無機物粒子層の厚さが非常に均一であり、無機物粒子が高密度に充填された無機物粒子層上に形成される熱融着層も平滑性が増大して表面光沢度が増加し、同じ厚さの通常の熱融着層に比べて改善された接着力を持つと推測される。これにより、セパレータの熱安定性、機械的物性、および電気的特性が改善されることができる。すなわち、前記熱融着層の表面光沢度の値は、前述の手段、熱融着層の厚さ、表面状態、無機物粒子層の厚さ、無機物粒子の粒径などによって複合的に影響を受けることができる。
【0054】
ただし、無機物粒子層上に熱融着層が特定の表面光沢度値の表面60°での表面光沢度値が10GU以上を満足するように形成される場合、セパレータの耐熱性および熱収縮性が低下することなく、優れた特性を示しながらも、優れた電極接着力を確保できると理解される。好ましい一実施形態において、前記熱融着層の表面60°での表面光沢度値は、20GU以上または25GU以上であることができ、より好ましくは30GU以上または45GU以上であることができる。
【0055】
以下、本発明の実施例によるセパレータの各構成について説明する。
【0056】
一実施形態によれば、前記多孔質基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどを使用することができ、これらからなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の樹脂からなるフィルムまたはシートであることができる。
【0057】
前記ポリオレフィン系多孔質基材は、通常フィルム状に製造され、電気化学素子のセパレータとして一般的に使用されるものであれば限定しないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらの共重合体などを例示できるが、必ずしもこれに限定するものではない。
【0058】
前記多孔質基材の厚さは特に限定しないが、例えば、1μm以上、3μm以上、5μm以上、100μm以下、50μm以下、30μm以下、20μm以下、または前記数値の間の値であることができる。多孔質基材の厚さは、非限定的な例として1~100μm、好ましくは5~50μm、さらに好ましくは5~30μmであることができる。前記多孔質基材は、一例によれば、延伸して製造された多孔質高分子基材であることができる。
【0059】
好ましい一実施形態において、前記多孔質基材は、表面に極性官能基を含むものとすることができる。前記極性官能基の非限定的な例としては、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。前記極性官能基は、一実施形態によれば、親水性表面処理で導入されたものであることができ、前記親水性表面処理は、一実施形態によれば、コロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含んで実施することができる。前記多孔質基材の表面に設けられた極性官能基は、後述するシラン化合物の加水分解縮合物バインダーの極性官能基と水素結合または化学結合して、多孔質基材と無機物粒子層の接着力をより向上させることができ、高温での熱収縮率をより低減させて熱的安定性を向上させることができる。
【0060】
一実施形態において、無機物粒子層は、無機物粒子とシラン化合物の加水分解縮合物を含むことができ、無機物粒子がシラン化合物の加水分解縮合物によって連結され、固定されて気孔を形成した多孔質無機物粒子層であることができる。一実施形態において、前記無機物粒子層は、多孔質基材の少なくとも一面に設けられ、多孔質基材の全体表面を基準にして面積分率60%以上、70%以上、80%以上または90%以上を占めることができる。
【0061】
一実施形態において、前記無機物粒子層は、多孔質基材の一面、好ましくは両面にコーティングすることができ、前記多孔質基材の両面に無機物粒子層がコーティングされる場合、一面と他の一面にコーティングされた無機物粒子層の厚さは、互いに同じか、異なることができる。特に限定されるものではないが、一実施形態で一面にコーティングされる無機物粒子層の厚さは、0μm超過、0.3μm以上、0.5μm以上、3μm以下、2.5μm以下、2μm以下、1.5μm以下、1μm以下、または前記数値の間の値であることができる。具体的な一実施形態において、前記無機物粒子層の厚さは、0μm超過2.5μm以下、または0μm超過2μm以下、好ましくは0μm超過1.5μm以下、より好ましくは0μm超過1μm以下であることができる。
【0062】
一実施形態として、前記無機物粒子は、この技術分野に使用する無機物粒子であれば限定されない。非限定的な例として、前記無機物粒子は、金属水酸化物、金属酸化物、金属窒化物および金属炭化物のうちの一つまたは二つ以上を含むことができ、またはSiO2、SiC、MgO、Y2O3、Al2O3、CeO2、CaO、ZnO、SrTiO3、ZrO2、TiO2およびAlO(OH)のうちの一つまたは二つ以上を含むことができる。電池の安定性などの観点から、無機物粒子は、好ましくはベーマイト(bohemite)のような金属水酸化物粒子であることができる。
【0063】
前記金属水酸化物は特に限定しないが、非限定的な例として、ベーマイト(boehmite)、水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)および水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)のいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。一実施形態として、前記ベーマイトを使用する場合、例えば比表面積(BET)は10m2/g以上または15m2/g以上であることができるが、これに限定されるものではない。
【0064】
より好ましくは、前記無機物粒子はベーマイト(boehmite)であることができ、このとき、ベーマイトの比表面積(BET)は10m2/g以上、具体的には比表面積は15m2/g以上であることができる。
【0065】
前記無機物粒子の平均粒径(D50)は、0.01μm以上、0.05μm以上、0.1μm以上、5μm以下、1μm以下、0.5μm以下、または前記数値の間の値であることができる。前記無機物粒子の平均粒径(D50)は、非限定的な例として0.01~5μm、好ましくは0.01~1μm、より好ましくは0.01~0.5μmであることができる。
【0066】
次に、前記無機物粒子を連結して気孔が形成された無機物粒子層を形成するバインダーの実施形態を説明する。
【0067】
一実施形態として前記バインダーは、下記化学式1で表される極性基を有するシラン化化合物を加水分解・縮合するが、特定の条件で縮合を抑制して分子量が非常に小さい低分子量の縮合物であることができる。
【0068】
[化学式1]
AaSi(OR)b
【0069】
前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。好ましい一実施形態では、前記化学式1のシラン化合物において、bが3であることを利用して縮合した低分子量の縮合物を使用することが、結合力などの点で好ましい場合がある。
【0070】
一実施形態において、前記シラン化合物の極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基の中から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含む、またはこれらと反応する反応性基であることができる。一実施形態によれば、前記極性官能基は、アミノ基(amino group)であることができる。
【0071】
前記化学式1を満たすシラン化合物の非限定的な例としては、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)および(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン((3-Glycidyloxypropyl)trimethoxysilane)などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上の混合物であってもよいが、特に限定しない。
【0072】
一実施形態において、シラン化合物の加水分解縮合物は、シラン化合物が加水分解されると同時に縮合が抑制された条件で縮合するため、低分子量を有する。一実施形態で前記シラン化合物の加水分解縮合物は、弱酸性の雰囲気で加水分解され、縮合が抑制された加水分解縮合物であることができ、弱酸性の雰囲気で縮合反応が抑制されて非常に小さな分子量で設けられることができる。一実施形態において、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、例えば、数平均分子量4000g/mol 以下、2000g/mol 以下または1000g/mol 以下の低分子量を有することができる。
【0073】
一方、通常、前記化学式1のシラン化合物を無機酸等の強酸により縮合させる場合、4000 g/mol 超過の数千の数平均分子量を有するポリシロキサン縮合物が生成されるが、本発明の一実施形態の縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解物は、それ自体の加水分解物、モノマー形態の未反応物および二量体加水分解縮合物を主成分として含み、微量の三量体加水分解縮合物または四量体加水分解縮合物を含む加水分解縮合物であることに違いがある。
【0074】
すなわち、一実施形態において、シラン化合物の加水分解縮合物は、前記シラン化合物の加水分解物、モノマー、加水分解され縮合された二量体、三量体、四量体および五量体などの多量体から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0075】
前記のような低分子量のシラン化合物の加水分解縮合物は、posESI FT-ICRMS(メーカー:Bruker、モデル名:Solarix 2XR)を使用してpositive ESI-MS分析時に検出される検出ピークから確認することができる。すなわち、前記positive ESI-MS分析の結果、加水分解物であるシランオールおよび縮合物である二量体ピークが主に観測され、微量の三量体および四量体ピークが観測され、五量体以上のピークは通常のスラリーを製造する期間である1日または2日以内にはほとんど検出されない。しかし、無機酸である塩酸を使用して24時間加水分解する場合、別途添付はしないが、高分子量のピークが複雑に観測される。これらの結果から、前記一実施形態の弱酸性の雰囲気で調製したシラン化合物の加水分解縮合物と、通常の無機酸などで製造した加水分解縮合物とは異なる形態の物質が得られることが確認できる。
【0076】
一実施形態によるシラン化合物の加水分解縮合物は、極性官能基を含むシラン化合物を加水分解反応に比べて縮合反応が相対的に抑制された条件で縮合し、相対的に低分子量で設けられ、通常、無機酸などによって高分子量で縮合されて設けられるポリシロキサン縮合物に比べて、同一重量で多くの極性基の割合を確保することができる。驚くべきことに、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、無機物粒子を互いにつなぐ接着力がさらに向上し、顕著な耐熱性を付与することができる。
【0077】
一実施形態において、前記縮合が抑制されたシラン化合物の加水分解縮合物は、pH4超過pH7以下の条件の弱酸性の雰囲気下で撹拌することによって得ることができ、非限定的な一例によれば、特に、二酸化炭素、酢酸および乳酸のいずれか1つまたは2つ以上を水溶液上に投入して前記範囲の酸の水溶液を用意して製造することができ、投入する方法は、酸の水溶液を液状に混合したり、酸性ガスをブローまたはバブリングすることができる。
【0078】
また、好ましい一実施形態で多孔質基材の表面に極性官能基が導入された場合、前記多孔質基材の表面に設けられた極性官能基がシラン化合物の加水分解縮合物バインダーの極性官能基と水素結合または化学結合して多孔質基材と無機物粒子層の接着力をより向上させることができ、高温での熱収縮率をより低減させて熱安定性を向上させることができるので好ましい。
【0079】
次に、前記熱融着層について説明する。
【0080】
前記熱融着層は、前述の表面光沢度を満足できる限り特に限定されないが、一実施形態において、熱融着層は、セパレータの製造ステップおよび電気化学素子の製造ステップを考慮して、Tg(glass-transtition temperature)30℃以上、35℃以上、40℃以上、70℃以下または前記数値の間の値を有するアクリル系粒子型バインダーを含むことが好ましい。一実施形態では、Tg(glass-transtition temperature)は30~70℃または40~70℃であることができる。
【0081】
一実施形態において、前記アクリル系粒子状バインダーのTmは現れない場合がある。他の一実施形態で前記アクリル系粒子型バインダーのTmが現れる場合、前記Tmは非限定的な例として、融着時の温度を考慮して80℃以上、85℃以上、90℃以上、100℃以下、または前記数値の間の値が好ましいが、特に限定されるものではない。一実施形態では、Tmは80~100℃または90~100℃であることができる。
【0082】
一実施形態において、前記アクリル系粒子型バインダーの平均粒径は、0μm超過、0.01μm以上、0.05μm以上、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上、1μm以下、0.8μm以下、0.6μm以下、または前記数値の間の値であることができる。一実施形態として、前記アクリル系粒子型バインダーの平均粒径は、1μm以下または0.01~1μmであることができる。好ましい一実施形態において、前記アクリル系粒子型バインダーの平均粒径は、無機物粒子層内の無機物粒子の平均粒径より大きくすることができ、この場合、熱融着層内のアクリル系粒子型バインダーの粒径が無機物粒子より粒径が大きく、無機物粒子層の気孔を比較的遮断せず、通気性を改善することができるので好ましい。
【0083】
一実施形態において、前記熱融着層の厚さは、1μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0μm超過、0.01μm以上、0.05μm以上、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上、または前記数値の間の値であることができる。一実施形態として、前記熱融着層の厚さは、1μm以下、0.1~1μm、好ましくは0.2~0.8μm、より好ましくは0.3~0.7μmであることができる。
【0084】
前記一実施形態によると、前記アクリル系粒子型バインダーで形成される熱融着層は、厚さが非常に均一であり、無機物粒子が高密度に充填された無機物粒子層の表面にコーティングされ、無機物粒子層との接触面積を著しく増加させて十分な接着力を確保しながら熱安定性を低下させないので好ましい。
【0085】
次に、前記セパレータの製造方法の実施形態を説明する。
【0086】
本発明の一実施形態によれば、(a)下記化学式1で表されるシラン化合物水溶液に無機物粒子および酸の成分を投入し、撹拌またはバブリングしてスラリーを製造するステップと、(b)前記製造されたスラリーを多孔質基材の少なくとも一面上に無機物粒子層を形成するステップと、(c)前記形成された無機物粒子層の少なくとも一面上に熱融着層を形成するステップと、を含む、セパレータの製造方法を提供することができる。
【0087】
[化学式1]
AaSi(OR)b
【0088】
前記化学式1中、Aは、水素、極性官能基または極性官能基を有するC1-C10アルキル基であり、Rは、独立して水素またはC1-C5アルキル基であり、aは、0~2、bは、2~4であり、a+bは、4である。
【0089】
前記シラン化合物の極性官能基は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオール基、ケトン基、エステル基およびアルデヒド基の中から選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。
【0090】
前記各シラン化合物、無機物粒子、多孔質基材の説明は前述と同様であるため、便宜上省略する。
【0091】
本発明の一実施形態によれば、(a)ステップでシラン化合物を加水分解反応に対して縮合反応を相対的に抑制して、シラン化合物の加水分解縮合物を設ける。その結果、前記シラン化合物の加水分解縮合物は、モノマー、加水分解物および二量体を主成分として含み、微量の三量体または四量体を含む、抑制された縮合物である非常に低分子量の分子量を持つことができ、これは、通常の無機酸などの強酸によって縮合されて4000超過の数平均分子量を持つポリシロキサン縮合物とは異なる。
【0092】
一実施形態において、加水分解反応に対して縮合反応を相対的に抑制するための手段として、前記(a)スラリーを製造するステップは、弱酸性の雰囲気で行うことができ、一実施形態において、前記弱酸性の雰囲気は、pH4超過pH7以下であることができる。pH4以下である場合や、塩基性の雰囲気(pH7超過)である場合や、硫酸または塩酸などの無機酸を用いる場合において、加水縮合反応時には、製造されたスラリーの分散性が低下し、前記バインダーの凝集により無機物粒子の充填時に問題が発生する可能性がある。また、無機物粒子層の厚さが非常に不均一に形成され、本発明で目的とする熱融着層の表面光沢度を達成することが難しい場合がある。前記の場合、セパレータの耐熱性や接着力が低下する問題を引き起こす可能性があるため、好ましくない。これを考慮して、前記弱酸性の雰囲気は、好ましくは、pH4超過、pH4.5以上、pH5以上、pH5.5以上、pH6以上、pH6.5以上、pH7以下または前記数値の間の値であることができる。一実施形態において、前記弱酸性の雰囲気は、pH4超過pH7以下またはpH4.5以上pH7以下であることができる。
【0093】
また、前記(a)スラリーを製造するステップにおいて、スラリーを構成する成分を投入する方法や、順序については特に限定せず、可能な全ての方法を活用することができる。例えば、一実施形態では、前記化学式1で表されるシラン化合物および酸の成分を含む酸の水溶液を別途設け、無機物粒子、酸の成分および水を撹拌して無機物スラリーを別途設けた後、前記別途設けた酸の水溶液、無機物スラリーを撹拌することにより、コーティングスラリーを製造することができる。
【0094】
一実施形態によれば、(a)プロセスの酸の成分は、二酸化炭素、または酢酸および乳酸から選択される1つまたは2つを含む有機酸であってもよい。二酸化炭素は、シラン化合物水溶液に投入された後、撹拌またはバブリングする場合、炭酸になることができる。前記酸の成分を使用する場合、本発明の効果をよりよく達成することができ、縮合反応を前記pH範囲で容易に抑制することができるため、より好ましいが、本発明の物性を有するセパレータが提供される限り、これに限定されるものではない。
【0095】
一実施形態によれば、前記(a)スラリー中の無機物粒子と前記化学式1のシラン化合物は、70~99.9:30~0.1重量比、または80~99.9:20~0.1重量比、または90~99.9:0.1~10重量比であってもよいが、特に限定されるものではない。
【0096】
スラリーを製造する方法は、当該技術分野で公知の通常の方法を制限なくすべて適用することができ、特に制限はないが、非限定的な例によれば、0~60℃で1時間~5日間撹拌して無機物粒子を分散してスラリーを製造することができ、ボールミルを利用して凝集した無機物粒子を分散することもできる。
【0097】
本発明の一実施形態によれば、(b)ステップで多孔質基材の少なくとも一面に無機物粒子層を設けることができる。前記スラリーを塗布する方法としては、当該技術分野で公知の通常の方法を制限なくすべて適用することができ、前記無機物粒子層を形成するための乾燥は特に制限されないが、100℃以下、または30~60℃で乾燥することができる。
【0098】
一実施形態によると、前記(b)ステップは、前記(a)ステップで製造されたスラリーを多孔質基材上に塗布した後、常温で5分以上政治(stand)することを含むことができる。5分以上の政治時間でスラリー内の無機物粒子とシラン化合物の加水分解縮合物バインダーが再配列し、高密度に充填されるように誘導する時間を付与することができ、好ましい。前記観点から好ましい一実施形態では、前記政治時間は10分以上、または15分以上であることができる。前記多孔質基材上にスラリーを塗布した後、常温で5分以上政治するステップは、通常、多孔質基材上にスラリーを塗布した後、乾燥機に1分以内に直ちに移送して乾燥するステップとは対照的なものであり、表面光沢度、熱安定性、電極との接着力および電気的特性などの物性でセパレータにより優れた効果を付与するので好ましい。
【0099】
好ましい一実施形態で多孔質基材の表面に極性官能基が導入された場合、前記多孔質基材の表面に設けられた極性官能基がシラン化合物の加水分解縮合物バインダーの極性官能基と水素結合または化学結合して多孔質基材と無機物粒子層の接着力をより向上させることができ、高温での熱収縮率をより低減させて熱安定性を向上させることができる。前記多孔質基材の表面に極性官能基を導入する方法としては、例えば親水性表面処理を挙げることができ、前記親水性表面処理は、一例によれば、大気、酸素およびオゾンの雰囲気下でコロナ放電処理およびプラズマ放電処理のうち一つ以上を含んで実施することができる。前記多孔質基材の表面に導入された極性官能基としては、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0100】
好ましい一実施形態では、前記乾燥後、前記無機物粒子層が形成された多孔質基材をエージングするステップをさらに含むことができる。具体的には、前記エージングは50~150℃、好ましくは65℃~120℃で行うことができ、エージング時間は2~24時間行うことができ、好ましくは10~20時間行うことができる。より好ましくは70~120℃の温度範囲で10~15時間行うことができる。前記エージングを通じて、多孔質基材と無機物粒子層間の接着力を増加させ、高温収縮特性を向上させることができる。
【0101】
すなわち、本発明の一実施形態による二次電池セパレータの製造方法は、前記エージングステップを含むことにより、多孔質基材および無機物粒子層間の安定的で強い化学結合を通じて高温収縮特性がより改善され、熱安定性が向上したセパレータの製造方法を提供することができ、多孔質基材および無機物粒子層間の接着力がより向上することができるので好ましい。
【0102】
本発明の一実施形態によれば、(c)ステップで無機物粒子層の少なくとも一面上に熱融着層を設けることができる。一実施形態において、前記熱融着層は、前記アクリル系粒子型バインダーを主成分として溶媒である水に添加した後、撹拌して均一なスラリーを製造した後、前記無機物粒子層の少なくとも一面上に塗布し、乾燥して設けることができる。
【0103】
前記スラリーを塗布する方法としては、当該技術分野で公知の通常の方法を制限なくすべて適用することができ、前記熱融着層を形成するための乾燥は特に制限されないが、80℃未満または30~70℃で乾燥することができる。
【0104】
前記アクリル系粒子状バインダーは、前述の説明と同様の説明が適用されるので、便宜上、その説明は省略する。
【0105】
本発明の一実施形態によれば、前記実施形態のうち一実施形態によるセパレータを含む電気化学素子を提供することができ、前記電気化学素子は、公知の全てのエネルギー貯蔵装置であることができ、特に限定されないが、非限定的な一例としてリチウム二次電池を挙げることができる。前記リチウム二次電池は公知であり、その構成も知られているので、本発明では具体的に説明しない。
【0106】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、正極と負極の間に前記セパレータを含むものとすることができる。このとき、前記正極および負極は、通常リチウム二次電池に使用されるものであれば、限定されることなく使用することができる。
【0107】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下の実施例および比較例は、本発明をより詳細に説明するための一例であって、本発明が以下の実施例および比較例によって限定されるものではない。
【0108】
まず、セパレータの物性測定方法について説明する。
【0109】
[無機物粒子層、熱融着層の平均厚さ]
無機物粒子層の平均厚さ:無機物粒子層のみを多孔質基材の両面上に形成した無機物粒子層-多孔質基材のセパレータを10枚重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社製厚さ測定器で厚さをそれぞれ測定し、5で割って10枚のセパレータ平均厚さを導き出し、再び10で割って単一セパレータ平均厚さを得られる。無機物粒子層の平均厚さは、前記単一セパレータの平均厚さから使用した多孔質基材の平均厚さを引いた後、2で割って得られる。もし、前記多孔質基材の少なくとも一面に無機物粒子層が設けられた場合、無機物粒子層を当該技術分野で公知の方法を制限なく全て活用して脱離させ、十分に乾燥させた後、無機物粒子層が脱離された多孔質基材の平均厚さを得られる。
【0110】
熱融着層平均厚さ:無機物粒子層と熱融着層を多孔質基材の両面上に順番に形成した熱融着層-無機物粒子層-多孔質基材のセパレータを10枚重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社の厚さ測定器で厚さをそれぞれ測定し、5で割って10層のセパレータ平均厚さを導き出し、再び10で割って単一セパレータの平均厚さを得られる。熱融着層の平均厚さは、前記単一セパレータの平均厚さから使用した多孔質基材の厚さと前記多孔質基材の両面に形成された2つの無機物粒子層の平均厚さの合計を引いた後、2で割って得られる。
【0111】
[表面光沢度]
セパレータの熱融着層表面60°での表面光沢度を測定する。表面光沢度は、表面光沢度Gloss測定装備(Konica Minolta社、Spectrophotometer CM-36dG)でセパレータの熱融着層表面の任意の7ポイント(points)でそれぞれ測定した後、平均値で導出する。
【0112】
[通気度の変化量]
通気度の変化量(ΔG)は以下のように計算する。
【0113】
ΔG=G1-G2
前記式1で、G1は無機物粒子層、熱融着層を含むセパレータによるガリー透過率であり、G2は無機物粒子層、熱融着層がない多孔質基材自体のガリー透過率であり、ASTM D 726に従って測定され、ガリー透過度の単位はsec/100ccである。
【0114】
ガリー透過度は、Toyoseiki社のDensometerを用い、ASTM D 726規格に従って測定する。100ccの空気がセパレータ1平方インチの面積を通過するのにかかる時間を秒単位で記録する。
【0115】
[電極への接着力]
電極への接着力を評価するために、電極の代わりにカーボンシート上にセパレータを熱融着し、以下の方法で剥離強度を測定し、評価する。
【0116】
200μm厚のカーボンシート(TOYO Tanso Korea、PF-20HP)上にセパレータの熱融着層が対面するように積層した後、熱プレス機で80℃、1MPaで30秒間圧着して融着した後、Instron社のUTM装置を利用して180°で剥離(peel)して測定する。
【0117】
[電解液含浸性]
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)が体積比30:50:20で含まれる溶液に1Mのリチウムヘキサフロロホスフェート(LiPF6)が溶解した電解液10μLをマイクロピペットで50mmの高さからセパレータ上に1滴の滴下(drop)後、1分間放置した後、電解液が広がった跡の長径が25mm以上であれば非常に優秀(◎)、15~25mmであれば優秀(○)、15mm未満であれば劣勢(Δ)と評価する。前記長径は、電解液跡を横切る長さの中で最も長い長さを意味する。
【0118】
[熱収縮率]
セパレータの熱収縮率はASTM D 1204に基づき測定するが、次の方法で測定する。セパレータに一辺が10cmの正方形に2cm間隔で格子点を表示する。この正方形の一辺は幅方向(TD、Transverse Direction)であり、他の一辺は機械方向(MD、Machine Direction)である。試験片を正中に位置させ、試験片の上下に紙を5枚ずつ置き、紙の四辺をテープで包む。紙で包んだ試験片を150℃、熱風乾燥オーブンに60分間放置する。その後、試験片を取り出し、セパレータをカメラで観察し、下記数学式1の縦方向収縮率および下記数学式2の横方向収縮率を計算する。
【0119】
数学式1
長さ方向収縮率(%)=(加熱前の長さ方向長さ-加熱後の長さ方向長さ)×100/加熱前の長さ方向長さ
【0120】
数学式2
幅方向収縮率(%)=(加熱前の幅方向の長さ-加熱後の幅方向の長さ)×100/加熱前の幅方向の長さ
【0121】
[TMA溶融破断温度]
セパレータを厚さ5~50μm、幅5mm、長さ10mmのMD方向およびTD方向を長さ方向にするそれぞれの試験片を製作し、前記試験片の両端をメタルジグ(metal jig)に噛ませてTMAチャンバー(Thermomechanical Analyzer、Model: SDTA840(Mettler Toledo)に設置し、毎分5℃で昇温しながら下方向に0.008Nの力で引っ張ったとき、それぞれのMD方向およびTD方向で試験片が破断する温度を導出する。
【0122】
[電池抵抗]
以下の条件で電池を製造し、J-pulse法により放電抵抗を測定する。
【0123】
電池の製造
正極活物質の総重量を基準としてLiCoO2を94重量%、融着剤としてポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene fluoride)を2.5重量%、導電剤としてカーボンブラック(Carbon-black)を3.5重量%、溶媒であるNMP(N-methyl-2-pyrrolidone)に添加して撹拌して均一な正極スラリーを製造する。前記製造されたスラリーを30μm厚のアルミニウム箔の上にコーティング、乾燥および圧着して合計150μm厚の正極を製造する。負極活物質の総重量を基準に人工黒鉛を95重量%、融着剤としてTg(glass-transtition temperature)が-52℃のアクリル系ラテックス(Acrylic latex)を3重量%、増粘剤としてCMC(Carboxymethyl cellulose)を2重量%、溶媒である水に添加して撹拌して均一な負極スラリーを製造する。前記製造されたスラリーを20μm厚の銅箔の上にコーティング、乾燥および圧着して合計150μm厚の負極を製造する。前記製造された正極、負極および実施例、比較例のセパレータを前記正極および負極の間に積層(stacking)する方式でポーチ型電池を組み立てた後、正極、負極およびセパレータを互いに融着させるために組み立てられた電池を熱プレス機で80℃、1MPaで熱融着する。その後、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)が体積比30:50:20で含まれる溶液に1Mのリチウムヘキサフロロホスフェート(LiPF6)が溶解された電解液を注入した後、密封して容量2Ahの二次電池を製造する。
【0124】
[実施例1]
スラリー
【0125】
蒸留水100重量部にシラン化合物として3-アミノプロピルシラントリオール(3-Aminopropylsilanetriol)3.1重量部を添加し、ドライアイスを使用してCO2バブリングを行うと同時に、無機物粒子として平均粒径(D50) 0.24μmのベーマイト(boehmite)29重量部を添加した。CO2バブリングを進めながら内部のpHを4~5に維持してボールミル撹拌およびバブリングを48時間行い、スラリーを製造した。
【0126】
多孔質基材
多孔質基材として10μm厚のポリエチレン多孔質フィルム(気孔率:41%、ガリー透過率:121sec/100cc、引張強度MD:2807kgf/cm2/TD:2515kgf/cm2)の両面をコロナ放電処理(電力密度2W/mm)して表面極性基を導入し、このときコロナ放電処理は速度3~20mpm(meter per minute)とした。
【0127】
無機物粒子層
前記多孔質基材の両面に前記製造されたスラリーを塗布した後、常温で5分間静置した。その後、50℃の乾燥機で十分に乾燥し、それぞれ1.5μmの平均厚さで無機物粒子層を形成した。前記無機物粒子層が形成された多孔質基材を80℃で12時間エージング(aging)した。
【0128】
熱融着層
Tg(glass-transtition temperature)60℃および平均粒径(D50)が0.45μmであるアクリル系粒子型バインダー(メチルメタクリレートとブチルアクリレートを重合した粒子型バインダー)を主成分として溶媒である水に添加した後、撹拌して均一なスラリーを製造した後、前記エージングされた各無機物粒子層上に塗布して乾燥して0.5μmの平均厚さで熱融着層を形成してセパレータを製造した。前記製造されたセパレータの熱融着層の表面60°での表面光沢度値が42GUであった。
【0129】
[実施例2]
スラリー製造時に無機物粒子として平均粒径0.31μmのベーマイトを使用し、熱融着層形成時にTg(glass-transtition temperature)60℃、平均粒径(D50)が0.7μmであるアクリル系粒子型バインダー粒子を無機物粒子層上に塗布し、乾燥して0.8μmの平均厚さで熱融着層を形成した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。前記製造されたセパレータの熱融着層の表面60°での表面光沢度値が31GUであった。
【0130】
[実施例3]
無機物粒子層形成時に製造されたスラリーを多孔質基材上に塗布した後、別途政治する時間なしに15秒以内に直ちに乾燥機に移送して乾燥した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。前記製造されたセパレータの熱融着層の表面60°での表面光沢度値が11GUであった。
【0131】
[比較例1]
スラリー製造時、蒸留水100重量部に溶融温度が220℃で、鹸化度99%のポリビニルアルコール(PVA)0.5重量部とTg(glass-transtition temperature)が-52℃のアクリルラテックス(ZEON、BM900B、固形分含量20重量%)2.5重量部を混合し、無機物粒子として平均粒径(D50)0.3μmのベーマイト(boehmite)30重量部を添加したスラリーを製造した以外は実施例1と同じ条件で無機物粒子層のそれぞれの厚さが1.8μmのセパレータを製造した。前記製造されたセパレータの熱融着層の表面60°での表面光沢度値が4GUであった。
【0132】
[比較例2]
スラリー製造時に酸の成分として塩酸を使用し、pH3.5で加水縮合した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。前記製造されたセパレータの熱融着層の表面60°での表面光沢度値が1GUであった。
【0133】
[比較例3]
スラリー製造時に酸の成分を投入せず、pH8.2でスラリーを製造した以外は実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。前記製造されたセパレータの熱融着層の表面60°での表面光沢度値が1GUであった。
【0134】
[評価例] セパレータの評価
本発明の前記実施例および比較例の物性結果を下記表1に示した。
【0135】
【0136】
前記表1で、本発明の実施例は比較例に比べて通気度の変化量が低く、電極に対する接着力が優れており、電解液含浸性が優れており、同時に特に熱収縮率、TMA溶融破断温度などの熱安定性が優れていた。また、実施例のセパレータを用いて製造した二次電池は、比較例1の有機系高分子バインダーを用いた電池に比べて電池抵抗が低く、電池の充放電効率に優れ、高出力の実現に利点があった。一方、本発明に属さない比較例のセパレータは、このような物性を満足できず、特に比較例2、3はpHが過度に低かったり、高すぎてバインダー凝集が発生し、スラリーゲル化で適切なセパレータを得ることができず、このため、通気度、電極への接着力、電解液含浸性、熱収縮率、電池抵抗などが実施例に比べて劣っていた。
【0137】
実施例1~3の通気度の変化量は60sec/100cc以下であり、通気度の変化量が比較的低く、本発明によるシラン化合物の加水分解縮合物をバインダーとして使用する場合、有機系高分子を使用した比較例1に比べて通気度が優れた多孔質構造の無機物粒子層を形成できることが分かる。本発明の実施例によるセパレータは、通気度の変化量が比較的低く、比較的優れたイオン伝導度を示し、前記セパレータを含む電気化学素子は、出力および寿命特性においてより有利であることが期待される。
【0138】
また、電極に対する接着力測定の結果、実施例1~3セパレータの接着力が有機系ポリマーを用いた比較例1セパレータに比べて向上している。
【0139】
また、実施例1~3セパレータは、TMAで測定したTMA溶融破断温度で昇温しながらセパレータを引っ張る場合、180℃以上の温度で熱によって溶けて破断し、これはセパレータ多孔質基材として活用されたポリエチレンの融解温度が140℃付近であることを考慮すると、熱収縮率が著しく優れていることが分かる。一方、比較例1のセパレータは180℃未満の温度で熱によって溶けて破断され、実施例に比べて相対的に熱安定性が劣ることが分かった。
【0140】
一方、実施例2のセパレータは表面光沢度が実施例1に比べて低く、通気度、電極への接着力、電解液含浸性、熱収縮率、電池抵抗などが相対的に劣ったが、十分な物性を確保することができた。
【0141】
実施例3セパレータは、スラリー塗布した後、別途の政治時間を置かなかった結果、無機物粒子とシラン化合物の加水分解縮合物バインダーが再配列し、高密度に充填されるように誘導する時間が短く、実施例1、2のセパレータに比べて通気度、電極への接着力、電解液含浸性、熱収縮率、電池抵抗などが相対的に劣ったが、十分な物性を確保することができた。
【0142】
以上のように本発明では、特定の事項と限定された実施例および図面によって説明したが、これは本発明のより全体的な理解を助けるために提供されたものであり、本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば、これらの記載から様々な修正および変形が可能である。
【0143】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して定められるものではなく、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価な変形があるすべてのものは、本発明の思想の範疇に属するといえる。