(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181187
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20231214BHJP
H10B 12/00 20230101ALI20231214BHJP
H10B 41/70 20230101ALI20231214BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231214BHJP
G01R 19/165 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L29/78 614
H01L29/78 613B
H01L29/78 618B
H10B12/00 671Z
H10B12/00 801
H10B41/70
H02J7/00 N
G01R19/165 M
G01R19/165 L
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171942
(22)【出願日】2023-10-03
(62)【分割の表示】P 2021508347の分割
【原出願日】2020-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2019058624
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019070596
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】青木 健
(72)【発明者】
【氏名】上妻 宗広
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(57)【要約】
【課題】消費電力が低減された半導体装置を提供する。
【解決手段】3つのトランジスタで2つのノードの電位を切り替えて電圧を検知する。第1トランジスタのソースまたはドレインの一方は、第1端子と電気的に接続され、第1トランジスタのソースまたはドレインの他方は、第1ノードを介してコンパレータの非反転入力と電気的に接続され、第2トランジスタのソースまたはドレインの一方は、第2端子と電気的に接続され、第2トランジスタのソースまたはドレインの他方は、第2ノードを介して第3トランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第3トランジスタのソースまたはドレインの他方は、第3端子と電気的に接続され、第1容量素子は、第1ノードと第2ノードの間に設けられ、コンパレータの反転入力は第4端子と電気的に接続され、コンパレータの出力は第5端子と電気的に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置と、二次電池と、を有し、
前記半導体装置は、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第3トランジスタと、第1容量素子と、コンパレータと、を有し、
前記第1トランジスタのソースまたはドレインの一方は、第1端子と電気的に接続され、
前記第1トランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記コンパレータの非反転入力と電気的に接続され、
前記第2トランジスタのソースまたはドレインの一方は、第2端子と電気的に接続され、
前記第2トランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第3トランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第3トランジスタのソースまたはドレインの他方は、第3端子と電気的に接続され、
前記第1容量素子は、前記第1トランジスタのソースまたはドレインの他方と、前記第3トランジスタのソースまたはドレインの一方の間に設けられ、
前記コンパレータの反転入力は、第4端子と電気的に接続され、
前記コンパレータの出力は、第5端子と電気的に接続され、
前記二次電池の負極は前記第1端子と電気的に接続され、
前記二次電池の正極は前記第3端子と電気的に接続され、
前記第1トランジスタ乃至前記第3トランジスタはそれぞれ、酸化物半導体にチャネルが形成される、電池パック。
【請求項2】
請求項1において、前記第1トランジスタと、前記第2トランジスタと、前記第3トランジスタと、前記第1容量素子と、前記コンパレータとは可撓性基板上に設けられた、電池パック。
【請求項3】
半導体装置と、二次電池と、を有し、
前記半導体装置は、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第3トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第1容量素子と、第2容量素子と、コンパレータと、を有し、
前記第1トランジスタのソースまたはドレインの一方は、第1端子と電気的に接続され、
前記第1トランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第6トランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第2トランジスタのソースまたはドレインの一方は、第2端子と電気的に接続され、
前記第2トランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第3トランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第3トランジスタのソースまたはドレインの他方は、第3端子と電気的に接続され、
前記第4トランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第1端子と電気的に接続され、
前記第4トランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記コンパレータの非反転入力と電気的に接続され、
前記第5トランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第2端子と電気的に接続され、
前記第5トランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第6トランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に接続され、
前記第1容量素子は、前記第1トランジスタのソースまたはドレインの他方と、前記第3トランジスタのソースまたはドレインの一方の間に設けられ、
前記第2容量素子は、前記第4トランジスタのソースまたはドレインの他方と、前記第5トランジスタのソースまたはドレインの他方の間に設けられ、
前記コンパレータの反転入力は、第4端子と電気的に接続され、
前記コンパレータの出力は、第5端子と電気的に接続され、
前記二次電池の負極は前記第1端子と電気的に接続され、
前記二次電池の正極は前記第3端子と電気的に接続され、
前記第1トランジスタ乃至前記第6トランジスタはそれぞれ、酸化物半導体にチャネルが形成される、電池パック。
【請求項4】
請求項3において、前記第1トランジスタと、前記第2トランジスタと、前記第3トランジスタと、前記第4トランジスタと、前記第5トランジスタと、前記第6トランジスタと、前記第1容量素子と、前記第2容量素子と、前記コンパレータとは可撓性基板上に設けられた、電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置、電池パック、および電子機器に関する。
【0002】
なお本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。
【0003】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうるもの全般を指す。よって、トランジスタやダイオードなどの半導体素子や、半導体素子を含む回路は半導体装置である。また、表示装置、発光装置、照明装置、電気光学装置、および電子機器などは、半導体素子や半導体回路を含む場合がある。よって、表示装置、発光装置、照明装置、電気光学装置、撮像装置、および電子機器なども、半導体装置と呼ばれる場合がある。
【背景技術】
【0004】
近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、もしくはノート型コンピュータ等の携帯情報端末、ゲーム装置、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、医療機器、または、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、もしくはプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車、電動バイクなど、半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大し、充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。
【0005】
蓄電装置は、過放電、過充電、過電流、または短絡といった充放電時の異常を把握するため、通常電池保護回路を備えている。
【0006】
電池保護回路は、充電時または放電時の異常を検知するため、電圧や電流等のデータを取得する。電池保護回路は、観測されるデータに基づいて充電経路または放電経路に設けられるスイッチの開閉を制御し、電池セルの過充電または過放電を保護する(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016-118821号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様は、消費電力が低減された半導体装置などを提供することを課題の一つとする。または、電圧検出精度の良好な半導体装置などを提供することを課題の一つとする。または、動作の安定した半導体装置などを提供することを課題の一つとする。または、信頼性の良好な半導体装置などを提供することを課題の一つとする。または、生産性が良好な半導体装置などを提供することを課題の一つとする。または、新規な半導体装置などを提供することを課題の一つとする。
【0009】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はない。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、第1乃至第3スイッチと、第1容量素子と、コンパレータと、を有し、第1スイッチの一方の端子は、第1端子と電気的に接続され、第1スイッチの他方の端子は、コンパレータの非反転入力と電気的に接続され、第2スイッチの一方の端子は、第2端子と電気的に接続され、第2スイッチの他方の端子は、第3スイッチの一方の端子と電気的に接続され、第3スイッチの他方の端子は、第3端子と電気的に接続され、第1容量素子は、第1スイッチの他方の端子と、第3スイッチの一方の端子の間に設けられ、コンパレータの反転入力は、第4端子と電気的に接続され、コンパレータの出力は、第5端子と電気的に接続されている半導体装置である。
【0011】
また、本発明の別の一態様は、第1乃至第3トランジスタと、第1容量素子と、コンパレータと、を有し、第1トランジスタのソースまたはドレインの一方は、第1端子と電気的に接続され、第1トランジスタのソースまたはドレインの他方は、コンパレータの非反転入力と電気的に接続され、第2トランジスタのソースまたはドレインの一方は、第2端子と電気的に接続され、第2トランジスタのソースまたはドレインの他方は、第3トランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第3トランジスタのソースまたはドレインの他方は、第3端子と電気的に接続され、第1容量素子は、第1トランジスタのソースまたはドレインの他方と、第3トランジスタのソースまたはドレインの一方の間に設けられ、コンパレータの反転入力は、第4端子と電気的に接続され、コンパレータの出力は、第5端子と電気的に接続されている半導体装置である。
【0012】
また、第1トランジスタは、半導体層に酸化物半導体を含むことが好ましい。また、第2トランジスタおよび第3トランジスタの少なくとも一方は、半導体層に酸化物半導体を含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明の別の一態様は、第1乃至第6スイッチと、第1容量素子と、第2容量素子と、コンパレータと、を有し、第1スイッチの一方の端子は、第1端子と電気的に接続され、第1スイッチの他方の端子は、第6スイッチの一方の端子と電気的に接続され、第2スイッチの一方の端子は、第2端子と電気的に接続され、第2スイッチの他方の端子は、第3スイッチの一方の端子と電気的に接続され、第3スイッチの他方の端子は、第3端子と電気的に接続され、第4スイッチの一方の端子は、第1端子と電気的に接続され、第4スイッチの他方の端子は、コンパレータの非反転入力と電気的に接続され、第5スイッチの一方の端子は、第2端子と電気的に接続され、第5スイッチの他方の端子は、第6スイッチの他方の端子と電気的に接続され、第1容量素子は、第1スイッチの他方の端子と、第3スイッチの一方の端子の間に設けられ、第2容量素子は、第4スイッチの他方の端子と、第5スイッチの他方の端子の間に設けられ、コンパレータの反転入力は、第4端子と電気的に接続され、コンパレータの出力は、第5端子と電気的に接続されている半導体装置である。
【0014】
また、本発明の別の一態様は、可撓性基板に設けられた上記いずれか一の半導体装置と、二次電池と、を有し、二次電池の負極は第1端子と電気的に接続され、二次電池の正極は第3端子と電気的に接続されている電池パックである。
【0015】
また、本発明の別の一態様は、上記電池パックと、受電装置と、を含む電子機器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、消費電力が低減された半導体装置などを提供することができる。または、電圧検知精度の良好な半導体装置などを提供することができる。または、動作の安定した半導体装置などを提供することができる。または、信頼性の良好な半導体装置などを提供することができる。または、生産性が良好な半導体装置などを提供することができる。または、新規な半導体装置などを提供することができる。
【0017】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図2は、半導体装置の動作例を説明するタイミングチャートである。
【
図7】
図7は、半導体装置の構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、半導体装置の構成例を示す図である。
【
図9】
図9は、半導体装置の構成例を示す図である。
【
図10】
図10は半導体装置の動作例を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
また、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、発明の理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理によりレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、理解を容易とするために図に反映しないことがある。
【0021】
また、上面図(「平面図」ともいう)や斜視図などにおいて、図面をわかりやすくするために、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。
【0022】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0023】
また、本明細書等において、電気回路における「端子」とは、電流の入力または出力、電圧の入力または出力、もしくは、信号の受信または送信が行なわれる部位を言う。よって、配線または電極の一部が端子として機能する場合がある。
【0024】
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が直上または直下で、かつ、直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層A上の電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが直接接して形成されている必要はなく、絶縁層Aと電極Bとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0025】
また、ソースおよびドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合など、動作条件などによって互いに入れ替わるため、いずれがソースまたはドレインであるかを限定することが困難である。このため、本明細書においては、ソースおよびドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0026】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、直接接続している場合と、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。よって、「電気的に接続する」と表現される場合であっても、現実の回路においては、物理的な接続部分がなく、配線が延在しているだけの場合もある。
【0027】
また、本明細書などにおいて、「平行」とは、例えば、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」および「直交」とは、例えば、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0028】
なお、本明細書などにおいて、計数値および計量値に関して「同一」、「同じ」、「等しい」または「均一」などと言う場合は、明示されている場合を除き、プラスマイナス20%の誤差を含むものとする。
【0029】
また、電圧は、ある電位と、基準の電位(例えば接地電位またはソース電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧と電位は互いに言い換えることが可能な場合が多い。本明細書などでは、特段の明示が無いかぎり、電圧と電位を言い換えることができるものとする。
【0030】
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」としての特性を有する。よって、「半導体」を「絶縁体」に置き換えて用いることも可能である。この場合、「半導体」と「絶縁体」の境界は曖昧であり、両者の厳密な区別は難しい。したがって、本明細書に記載の「半導体」と「絶縁体」は、互いに読み換えることができる場合がある。
【0031】
また、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分高い場合は「導電体」としての特性を有する。よって、「半導体」を「導電体」に置き換えて用いることも可能である。この場合、「半導体」と「導電体」の境界は曖昧であり、両者の厳密な区別は難しい。したがって、本明細書に記載の「半導体」と「導電体」は、互いに読み換えることができる場合がある。
【0032】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、工程順または積層順など、なんらかの順番や順位を示すものではない。また、本明細書等において序数詞が付されていない用語であっても、構成要素の混同を避けるため、特許請求の範囲において序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲において異なる序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲などにおいて序数詞を省略する場合がある。
【0033】
なお、本明細書等において、トランジスタの「オン状態」とは、トランジスタのソースとドレインが電気的に短絡しているとみなせる状態(「導通状態」ともいう。)をいう。また、トランジスタの「オフ状態」とは、トランジスタのソースとドレインが電気的に遮断しているとみなせる状態(「非導通状態」ともいう。)をいう。
【0034】
また、本明細書等において、「オン電流」とは、トランジスタがオン状態の時にソースとドレイン間に流れる電流をいう場合がある。また、「オフ電流」とは、トランジスタがオフ状態である時にソースとドレイン間に流れる電流をいう場合がある。
【0035】
また、本明細書等において、高電源電位VDD(以下、単に「VDD」、「H電位」、または「H」ともいう)とは、低電源電位VSSよりも高い電位の電源電位を示す。また、低電源電位VSS(以下、単に「VSS」、「L電位」、または「L」ともいう)とは、高電源電位VDDよりも低い電位の電源電位を示す。また、接地電位をVDDまたはVSSとして用いることもできる。例えばVDDが接地電位の場合には、VSSは接地電位より低い電位であり、VSSが接地電位の場合には、VDDは接地電位より高い電位である。
【0036】
また、本明細書等において、ゲートとは、ゲート電極およびゲート配線の一部または全部のことをいう。ゲート配線とは、少なくとも一つのトランジスタのゲート電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0037】
また、本明細書等において、ソースとは、ソース領域、ソース電極、およびソース配線の一部または全部のことをいう。ソース領域とは、半導体層のうち、抵抗率が一定値以下の領域のことをいう。ソース電極とは、ソース領域に接続される部分の導電層のことをいう。ソース配線とは、少なくとも一つのトランジスタのソース電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0038】
また、本明細書等において、ドレインとは、ドレイン領域、ドレイン電極、及びドレイン配線の一部または全部のことをいう。ドレイン領域とは、半導体層のうち、抵抗率が一定値以下の領域のことをいう。ドレイン電極とは、ドレイン領域に接続される部分の導電層のことをいう。ドレイン配線とは、少なくとも一つのトランジスタのドレイン電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0039】
また、図面などにおいて、配線および電極などの電位をわかりやすくするため、配線および電極などに隣接してH電位を示す“H”、またはL電位を示す“L”を付記する場合がある。また、電位変化が生じた配線および電極などには、“H”または“L”を囲み文字で付記する場合がある。また、トランジスタがオフ状態である場合、当該トランジスタに重ねて“×”記号を付記する場合がある。
【0040】
(実施の形態1)
本発明の一態様に係る半導体装置について、図面を用いて説明する。
【0041】
<電圧検知回路9900>
まず、半導体装置の従来例を説明する。半導体装置の従来例として、
図5Aに示す抵抗分圧を利用した電圧検知回路9900の構成例につい説明する。
【0042】
電圧検知回路9900は、抵抗R1、抵抗R2、およびコンパレータ9901(比較回路)を有する。抵抗R1は端子9911とノードND9の間に設けられ、抵抗R2は端子9912とノードND9の間に設けられている。また、ノードND9はコンパレータ9901の非反転入力と電気的に接続される。コンパレータ9901の反転入力は端子9915と電気的に接続され、コンパレータ9901の出力は端子9913と電気的に接続される。
【0043】
端子9912は、端子201および二次電池300の正極と電気的に接続される。端子9911は、端子202および二次電池300の負極と電気的に接続される。電圧検知回路9900は、端子201および端子202を介して二次電池300に供給される電圧が一定値以上になると、端子9913の電圧がLからHに変化する機能を有する。
【0044】
図5Bを用いて電圧検知回路9900の動作について説明する。なお、本明細書などに示すコンパレータは、非反転入力に入力される電圧が反転入力に入力される電圧以下の場合にLが出力され、非反転入力に入力される電圧が反転入力に入力される電圧を超えている場合にHが出力されるものとする。
【0045】
例えば、抵抗R1の抵抗値を1MΩ、抵抗R2の抵抗値を3MΩ、端子9915の電圧を1.0Vとすると、端子9911の電圧を0Vとした時に、端子9912の電圧が4.0Vになると、抵抗分圧によって、ノードND9の電圧は1.0Vになる。すなわち、コンパレータ9901の非反転入力に1.0Vが供給される。また、コンパレータ9901の反転入力には端子9915を介して1.0Vが供給されているので、コンパレータ9901からLが出力される。よって、端子9913の電圧はLになる。
【0046】
端子9912の電圧が4.0Vを超えると、ノードND9の電圧も1.0Vを超えるため、コンパレータ9901からHが出力される。よって、端子9913の電圧はHになる。例えば、端子9912の電圧が4.0Vから0.4V増えて4.4Vになると、ノードND9の電圧は1.0Vから0.1V増えて1.1Vになる。
【0047】
抵抗分圧を利用した従来の電圧検知回路9900では、端子9911と端子9912の間に常に電流Itが流れるため、消費電力の低減が難しい。また、原理的に、端子9912の電圧変化量よりもノードND9の電圧変化量が小さくなるため、検出感度が低いという問題があった。
【0048】
<電圧検知回路100>
本発明の一態様に係る半導体装置の一例として、電圧検知回路100の構成例について
図1Aを用いて説明する。
【0049】
〔構成例〕
電圧検知回路100は、スイッチSW1、スイッチSW2、スイッチSW3、容量C1、およびコンパレータ101(比較回路)を有する。スイッチSW1の一方の端子は端子111と電気的に接続され、他方の端子はノードND1と電気的に接続される。スイッチSW2の一方の端子は端子114と電気的に接続され、他方の端子はノードND2と電気的に接続される。スイッチSW3の一方の端子はノードND2と電気的に接続され、他方の端子は端子112と電気的に接続される。
【0050】
容量C1はノードND1とノードND2の間に設けられる。コンパレータ101の非反転入力はノードND1と電気的に接続され、反転入力は端子115と電気的に接続される。コンパレータ101の出力は端子113と電気的に接続される。
【0051】
端子112は、端子201および二次電池300の正極と電気的に接続される。端子111は、端子202および二次電池300の負極と電気的に接続される。電圧検知回路100は、端子201および端子202を介して二次電池300に供給される電圧が一定値以上になると、端子113の電圧がLからHに変化する機能を有する。
【0052】
本明細書等において、スイッチとは、導通状態(オン状態)、又は、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有するものをいう。または、スイッチとは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有するものをいう。一例としては、電気的なスイッチ、機械的なスイッチなどを用いることができる。つまり、スイッチは、電流を制御できるものであればよく、特定のものに限定されない。
【0053】
電気的なスイッチの一例としては、トランジスタ(例えば、バイポーラトランジスタ、MOSトランジスタなど)、ダイオード(例えば、PNダイオード、PINダイオード、ショットキーダイオード、MIM(Metal Insulator Metal)ダイオード、MIS(Metal Insulator Semiconductor)ダイオード、ダイオード接続のトランジスタなど)、またはこれらを組み合わせた論理回路などがある。なお、トランジスタをスイッチとして動作させる場合には、トランジスタの極性(導電型)は特に限定されない。
【0054】
機械的なスイッチの一例としては、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)のように、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)技術を用いたスイッチがある。そのスイッチは、機械的に動かすことが可能な電極を有し、その電極が動くことによって、導通と非導通とを制御して動作する。
【0055】
〔変形例〕
電圧検知回路100を構成するスイッチSW1、スイッチSW2、およびスイッチSW3をトランジスタで置き換えた電圧検知回路100Tの構成例を
図1Bに示す。
【0056】
電圧検知回路100Tは、トランジスタM1、トランジスタM2、トランジスタM3、容量C1、およびコンパレータ101(比較回路)を有する。トランジスタM1のソースまたはドレインの一方は端子111と電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方はノードND1と電気的に接続される。トランジスタM1のゲートは端子G1と電気的に接続される。トランジスタM2のソースまたはドレインの一方は端子114と電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方はノードND2と電気的に接続される。トランジスタM2のゲートは端子G2と電気的に接続される。トランジスタM3のソースまたはドレインの一方はノードND2と電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方は端子112と電気的に接続される。トランジスタM3のゲートは端子G3と電気的に接続される。
【0057】
容量C1はノードND1とノードND2の間に設けられる。コンパレータ101の非反転入力はノードND1と電気的に接続され、反転入力は端子115と電気的に接続される。コンパレータ101の出力は端子113と電気的に接続される。
【0058】
トランジスタM1、トランジスタM2、およびトランジスタM3は、チャネルが形成される半導体層に金属酸化物の一種である酸化物半導体を含むトランジスタ(「OSトランジスタ」ともいう。)であることが好ましい。酸化物半導体はバンドギャップが2eV以上あるため、オフ電流が著しく少ない。よって、電圧検知回路100Tの消費電力を低減できる。また、電圧検知回路100Tを含む半導体装置の消費電力を低減できる。特に、トランジスタM1にOSトランジスタを用いると、ノードND1に供給された電荷を長期間保持することができるため好ましい。
【0059】
なお、トランジスタをスイッチとして機能させる場合は、トランジスタのソースまたはドレインの一方がスイッチの一端(一方の端子)に相当し、トランジスタのソースまたはドレインの他方がスイッチの他端(他方の端子)に相当する。
【0060】
また、トランジスタM1、トランジスタM2、およびトランジスタM3のそれぞれは、ダブルゲート型のトランジスタであってもよい。
図6Aに、ダブルゲート型のトランジスタ150Aの回路記号例を示す。
【0061】
トランジスタ150Aは、トランジスタTr1とトランジスタTr2を直列に接続した構成を有する。
図6Aでは、トランジスタTr1のソースまたはドレインの一方が端子Sと電気的に接続され、トランジスタTr1のソースまたはドレインの他方がトランジスタTr2のソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、トランジスタTr2のソースまたはドレインの他方が端子Dと電気的に接続されている状態を示している。また、
図6Aでは、トランジスタTr1とトランジスタTr2のゲートが電気的に接続され、かつ、端子Gと電気的に接続されている状態を示している。
【0062】
図6Aに示すトランジスタ150Aは、端子Gの電位を変化させることで端子Sと端子D間を導通状態または非導通状態に切り替える機能を有する。よって、ダブルゲート型のトランジスタであるトランジスタ150Aは、トランジスタTr1とトランジスタTr2を内在するもの、1つのトランジスタとして機能する。すなわち、
図6Aにおいて、トランジスタ150Aのソースまたはドレインの一方は端子Sと電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方は端子Dと電気的に接続され、ゲートは端子Gと電気的に接続されていると言える。
【0063】
また、トランジスタM1、トランジスタM2、およびトランジスタM3のそれぞれは、トリプルゲート型のトランジスタであってもよい。
図6Bに、トリプルゲート型のトランジスタ150Bの回路記号例を示す。
【0064】
トランジスタ150Bは、トランジスタTr1、トランジスタTr2、およびトランジスタTr3を直列に接続した構成を有する。
図6Bでは、トランジスタTr1のソースまたはドレインの一方が端子Sと電気的に接続され、トランジスタTr1のソースまたはドレインの他方がトランジスタTr2のソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、トランジスタTr2のソースまたはドレインの他方がトランジスタTr3のソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、トランジスタTr3のソースまたはドレインの他方が端子Dと電気的に接続されている状態を示している。また、
図6Bでは、トランジスタTr1、トランジスタTr2、およびトランジスタTr3のゲートが電気的に接続され、かつ、端子Gと電気的に接続されている状態を示している。
【0065】
図6Bに示すトランジスタ150Bは、端子Gの電位を変化させることで端子Sと端子D間を導通状態または非導通状態に切り替える機能を有する。よって、トリプルゲート型のトランジスタであるトランジスタ150Bは、トランジスタTr1、トランジスタTr2、およびトランジスタTr3を内在するもの、1つのトランジスタとして機能する。すなわち、
図6Bにおいて、トランジスタ150Bのソースまたはドレインの一方は端子Sと電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方は端子Dと電気的に接続され、ゲートは端子Gと電気的に接続されていると言える。
【0066】
トランジスタ150Aおよびトランジスタ150Bのように、複数のゲートを有し、かつ、複数のゲートが電気的に接続されているトランジスタを「マルチゲート型のトランジスタ」または「マルチゲートトランジスタ」と呼ぶ場合がある。
【0067】
また、トランジスタM1、トランジスタM2、およびトランジスタM3のそれぞれは、バックゲートを有するトランジスタであってもよい。
図6Cに、バックゲートを有するトランジスタ150Cの回路記号例を示す。また、
図6Dに、バックゲートを有するトランジスタ150Dの回路記号例を示す。
【0068】
トランジスタ150Cは、ゲートとバックゲートを電気的に接続する構成を有する。トランジスタ150Dは、バックゲートを端子BGと電気的に接続する構成を有する。バックゲートは、ゲートとバックゲートで半導体層のチャネル形成領域を挟むように配置される。バックゲートはゲートと同様に機能させることができる。
【0069】
ゲートとバックゲートを電気的に接続することで、トランジスタのオン電流を増やすことができる。また、バックゲートの電位を独立して変化させることで、トランジスタのしきい値電圧を変化させることができる。
【0070】
〔動作例〕
図2乃至
図4を用いて電圧検知回路100の動作例について説明する。
図2は電圧検知回路100の動作を説明するタイミングチャートである。
図3および
図4は、電圧検知回路100の動作状態を示す図である。
【0071】
本実施の形態では、二次電池300の充電動作において、充電電圧が4V以下の場合は端子113の電位がL、充電電圧が4Vを超えた場合は端子113の電位がHになる動作を説明する。また、端子114に3V、端子115に1Vが供給されているものとする。また、充電動作に端子201の電圧が3.5Vから4.4Vまで変化するものとする。
【0072】
[期間T1]
期間T1において、スイッチSW1およびスイッチSW2をオン状態にし、スイッチSW3をオフ状態にする(
図3A参照。)。すると、ノードND1の電圧が0Vになり、ノードND2の電圧が3Vになる。コンパレータ101の反転入力には1Vが入力され、非反転入力には0Vが入力される。よって、コンパレータ101の出力はLであり、端子113の電圧もLになる。
【0073】
[期間T2]
期間T2において、スイッチSW1およびスイッチSW2をオフ状態にし、スイッチSW3をオン状態にする(
図3B参照。)。すると、ノードND2の電圧が3.5Vになり、ノードND1の電圧が0.5Vになる。コンパレータ101の反転入力は1Vが入力され、非反転入力に0.5Vが入力される。よって、コンパレータ101の出力はLのままであり、端子113の電圧もLのままである。
【0074】
また、端子201の電圧が上昇すると、端子112およびノードND2の電圧も上昇する。よって、ノードND1の電圧も上昇する。
【0075】
[期間T3]
期間T2に続いて、期間T3でも端子201の電圧が上昇する。よって、端子112、ノードND2およびノードND1の電位が上昇する。期間T3では端子201の電圧が4Vまで上昇するものとする。
【0076】
端子201の電圧が4Vになると、端子112およびノードND2の電圧も4Vになる。また、ノードND1の電圧が1Vになる(
図4A参照。)。コンパレータ101の反転入力に1Vが入力され、非反転入力にも1Vが入力される。よって、コンパレータ101の出力はLのままであり、端子113の電圧もLのままである。
【0077】
[期間T4]
期間T4においても、端子201の電圧が上昇する。期間T4では端子201の電圧が4.4Vまで上昇するものとする。
【0078】
端子201の電圧が4Vを超えると、端子112およびノードND2の電圧も4Vを超える。また、ノードND1の電圧も1Vを超える。コンパレータ101の反転入力に1Vが入力され、非反転入力には1Vを超える電圧が入力される。よって、コンパレータ101の出力がHになり、端子113の電圧もHになる。
【0079】
端子201の電圧が4.4Vになると、ノードND2の電圧も4.4Vになり、ノードND1の電圧が1.4Vになる(
図4B参照。)。
【0080】
本発明の一態様に係る電圧検知回路100では、従来の電圧検知回路9900と異なり、動作中に電流Itが生じない。よって、消費電力を低減できる。また、端子112とノードND2の電圧変化量が等しくなるため、検出感度が良好である。
【0081】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0082】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態に示した半導体装置の変形例について説明する。本実施の形態に説明がない事柄については、上記実施の形態を参酌すればよい。
【0083】
<電圧検知回路100A>
本発明の一態様に係る半導体装置の変形例として、電圧検知回路100Aについて説明する。なお、電圧検知回路100Aは、上記実施の形態に示した電圧検知回路100の変形例である。
【0084】
〔構成例〕
図7に電圧検知回路100Aの構成例を示す。電圧検知回路100Aは、電圧検知回路100の構成に、スイッチSW4、スイッチSW5、スイッチSW6、および容量C2を加えた構成を有する。
【0085】
具体的には、スイッチSW1の一方の端子は端子111と電気的に接続され、他方の端子はノードND1と電気的に接続される。スイッチSW2の一方の端子は端子114と電気的に接続され、他方の端子はノードND2と電気的に接続される。スイッチSW3の一方の端子はノードND2と電気的に接続され、他方の端子は端子112と電気的に接続される。スイッチSW4の一方の端子は端子111と電気的に接続され、他方の端子はノードND3と電気的に接続される。スイッチSW5の一方の端子は端子114と電気的に接続され、他方の端子はノードND4と電気的に接続される。スイッチSW6の一方の端子はノードND1と電気的に接続され、他方の端子はノードND4と電気的に接続される。
【0086】
容量C1はノードND1とノードND2の間に設けられる。容量C2はノードND3とノードND4の間に設けられる。コンパレータ101の非反転入力はノードND3と電気的に接続され、反転入力は端子115と電気的に接続される。コンパレータ101の出力は端子113と電気的に接続される。
【0087】
端子112は、端子201および二次電池300の正極と電気的に接続される。端子111は、端子202および二次電池300の負極と電気的に接続される。電圧検知回路100Aは、端子201および端子202を介して二次電池300に供給される電圧が一定値以上になると、端子113の電圧がLからHに変化する機能を有する。
【0088】
〔変形例1〕
電圧検知回路100Aの変形例である電圧検知回路100Bを
図8に示す。電圧検知回路100Bは、端子111に替えて、端子111Aおよび端子111Bを有し、端子114に替えて、端子114Aおよび端子114Bを有する。
【0089】
電圧検知回路100Bでは、スイッチSW1の一方の端子は端子111Aと電気的に接続され、スイッチSW4の一方の端子は端子111Bと電気的に接続される。また、スイッチSW2の一方の端子は端子114Aと電気的に接続され、スイッチSW5の一方の端子は端子114Bと電気的に接続される。
【0090】
電圧検知回路100Bでは、スイッチSW2の一方の端子と、スイッチSW5の一方の端子に、それぞれ異なる電圧を供給することができる。また、
図8では端子111Aと端子111Bがどちらも端子202と電気的に接続しているが、端子111Aと端子111Bは、それぞれが異なる端子または配線などと電気的に接続されてもよい。
【0091】
〔変形例2〕
電圧検知回路100Aを構成するスイッチSW1乃至スイッチSW6をトランジスタで置き換えた電圧検知回路100TAの構成例を
図9に示す。電圧検知回路100TAは、電圧検知回路100Tの変形例である。電圧検知回路100TAは、電圧検知回路100Tの構成に、トランジスタM4、トランジスタM5、トランジスタM6、および容量C2を加えた構成を有する。
【0092】
具体的には、電圧検知回路100TAは、トランジスタM1、トランジスタM2、トランジスタM3、トランジスタM4、トランジスタM5、トランジスタM6、容量C1、容量C2、およびコンパレータ101を有する。トランジスタM1のソースまたはドレインの一方は端子111と電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方はノードND1と電気的に接続される。トランジスタM1のゲートは端子G1と電気的に接続される。トランジスタM2のソースまたはドレインの一方は端子114と電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方はノードND2と電気的に接続される。トランジスタM2のゲートは端子G2と電気的に接続される。トランジスタM3のソースまたはドレインの一方はノードND2と電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方は端子112と電気的に接続される。トランジスタM3のゲートは端子G3と電気的に接続される。
【0093】
トランジスタM4のソースまたはドレインの一方は端子111と電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方はノードND3と電気的に接続される。トランジスタM4のゲートは端子G4と電気的に接続される。トランジスタM5のソースまたはドレインの一方は端子114と電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方はノードND4と電気的に接続される。トランジスタM5のゲートは端子G5と電気的に接続される。トランジスタM6のソースまたはドレインの一方はノードND1と電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方はノードND4と電気的に接続される。トランジスタM6のゲートは端子G6と電気的に接続される。
【0094】
容量C1はノードND1とノードND2の間に設けられる。容量C2はノードND3とノードND4の間に設けられる。コンパレータ101の非反転入力はノードND3と電気的に接続され、反転入力は端子115と電気的に接続される。コンパレータ101の出力は端子113と電気的に接続される。
【0095】
トランジスタM1乃至M3と同様に、トランジスタM4乃至M6もOSトランジスタであることが好ましい。特に、トランジスタM4にOSトランジスタを用いると、ノードND3に供給された電荷を長期間保持することができるため好ましい。また、トランジスタM5にOSトランジスタを用いると、ノードND4に供給された電荷を長期間保持することができるため好ましい。
【0096】
〔動作例〕
図10乃至
図14を用いて電圧検知回路100Aの動作例について説明する。
図10は電圧検知回路100Aの動作を説明するタイミングチャートである。
図11乃至
図14は、電圧検知回路100Aの動作状態を示す図である。
【0097】
本実施の形態では、二次電池300の充電動作において、充電電圧が4V以下の場合は端子113の電位がL、充電電圧が4Vを超えた場合は端子113の電圧がHになる動作を説明する。また、端子114に1.5V、端子115に1Vが供給されているものとする。また、充電動作に端子201の電圧が3.5Vから4.4Vまで変化するものとする。
【0098】
[期間T1]
期間T1において、スイッチSW1、スイッチSW2、スイッチSW4およびスイッチSW5をオン状態にし、スイッチSW3およびスイッチSW6をオフ状態にする(
図11参照。)。すると、ノードND1およびノードND3の電圧が0Vになり、ノードND2およびノードND4の電圧が1.5Vになる。コンパレータ101の反転入力には1Vが入力され、非反転入力には0Vが入力される。よって、コンパレータ101の出力はLであり、端子113の電圧もLになる。
【0099】
[期間T2]
期間T2において、スイッチSW1、スイッチSW2、スイッチSW4およびスイッチSW5をオフ状態にし、スイッチSW3およびスイッチSW6をオン状態にする(
図12参照。)。すると、ノードND2の電圧が1.5Vから2V上昇して3.5Vになり、ノードND1の電圧が0Vから2V上昇して2Vになる。また、スイッチSW6がオン状態であるため、ノードND1とノードND4は電気的に接続される。よって、ノードND4も2Vになる。この時、ノードND4の電圧は1.5Vから0.5V上昇することになる。よって、ノードND3の電圧は0.5Vになり、コンパレータ101の非反転入力に0.5Vが入力される。コンパレータ101の反転入力には1Vが入力されているため、コンパレータ101の出力はLのままであり、端子113の電圧もLのままである。
【0100】
また、端子201の電圧が上昇すると、端子112およびノードND2の電圧も上昇する。よって、ノードND1、ノードND3、およびノードND4の電圧も上昇する。
【0101】
[期間T3]
期間T2に続いて、期間T3においても、端子201の電位上昇に伴い、端子112およびノードND1乃至ノードND4の電位が上昇する。期間T3では端子201の電圧が4Vまで上昇するものとする。
【0102】
端子201の電圧が4Vになると、端子112およびノードND2の電圧も4Vになる。また、ノードND1およびノードND4の電圧が2.5Vになり、ノードND3の電圧が1Vになる。(
図13参照。)。よって、コンパレータ101の反転入力に1Vが入力される。コンパレータ101の非反転入力には1Vが入力される。よって、コンパレータ101の出力はLのままであり、端子113の電圧もLのままである。
【0103】
[期間T4]
期間T4においても、端子201の電圧が上昇する。期間T4では端子201の電圧が4.4Vまで上昇するものとする。
【0104】
端子201の電圧が4Vを超えると、端子112およびノードND2の電圧も4Vを超える。また、ノードND3の電圧も1Vを超える。コンパレータ101の反転入力に1Vが入力され、非反転入力には1Vを超える電圧が入力される。よって、コンパレータ101の出力がHになり、端子113の電圧もHになる。
【0105】
端子201の電圧が4.4Vになると、ノードND2の電圧も4.4Vになる。また、ノードND1およびノードND4の電圧が2.9Vになり、ノードND3の電圧が1.4Vになる。(
図14参照。)。
【0106】
本実施の形態に示す電圧検知回路100Aは、電圧検知回路100よりも端子114に印加する電圧を小さくすることができる。よって、電圧検知回路100よりも消費電力を低減することができる。また、動作に必要な電圧を小さくすることができるため、電圧生成回路の負担が軽減される。よって、電圧検知回路100Aを用いた半導体装置は動作が安定し、信頼性を高めることができる。
【0107】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0108】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置を用いた無線給電システム(「ワイヤレス給電」ともいう。)の構成例について説明する。
【0109】
無線給電を実現する方式として、電波方式、電界結合方式、磁界共鳴方式、電磁誘導方式などが知られている。特に電磁誘導方式は、回路設計が容易で電力の伝送効率も高い方式として知られており、携帯情報端末などのモバイル機器への採用が検討されている。電磁誘導方式を用いた無線給電の国際規格として、Qi規格、PMA規格、AirFuel Inductive規格などがある。
【0110】
また、磁界共鳴方式は、電磁誘導方式よりも回路設計が複雑で電力の伝送効率も劣るが、電磁誘導方式よりも遠距離での送電が可能であり、EV(Electric Vehicle)などへの採用が検討されている。磁界共鳴方式を用いた無線給電の国際規格として、WPT1規格、WPT2規格、WPT3規格、AirFuel Resonant規格などがある。
【0111】
本発明の一態様に係る半導体装置は、様々な方式の無線給電システムに用いることができる。また、本発明の一態様に係る半導体装置は、様々な規格の無線給電システムに用いることができる。
【0112】
本実施の形態に例示する無線給電システムは、送電装置400および受電装置450を含む。送電装置400の構成例を
図15Aに示す。受電装置450の構成例を
図15Bに示す。
【0113】
なお、
図15Aで例示する送電装置400および
図15Bで例示する受電装置450の構成は一例であり、全ての構成要素を含む必要はない。送電装置400および受電装置450は、
図15Aおよび
図15Bに示す構成要素のうち必要な構成要素を有していればよい。また
図15Aおよび
図15Bに示す構成要素以外の構成要素を有していてもよい。
【0114】
<送電装置400>
送電装置400は、送電制御回路411、整合回路412、電力放射回路413を有している。送電装置400には電源401が接続される。電源401は、送電装置400に交流電力を供給する機能を有する。電源401が供給する交流電力の周波数fGは、特定の周波数に限定されず、例えばサブミリ波である300GHz~3THz、ミリ波である30GHz~300GHz、マイクロ波である3GHz~30GHz、極超短波である300MHz~3GHz、超短波である30MHz~300MHz、短波である3MHz~30MHz、中波である300kHz~3MHz、長波である30kHz~300kHz、及び超長波である3kHz~30kHzのいずれかを用いることができる。
【0115】
送電制御回路411は、電源401から供給された電力を、整合回路412を介して電力放射回路413に供給する機能を有する。電力放射回路413は、送電アンテナ402に接続される。電力放射回路413は、電源401から供給された交流電力を、送電アンテナ402を介して外部の空間に放射する機能を有する。
【0116】
電源401のインピーダンスと電力放射回路413のインピーダンスが異なると、電源401から供給された交流電力の一部がインピーダンス差に応じて反射されるため、交流電力を効率よく電力放射回路413に供給することができない。整合回路412は、電源401のインピーダンスと電力放射回路413のインピーダンスをほぼ一致させ、電源401から供給される交流電力を、効率よく電力放射回路413に伝える機能を有する。
【0117】
<受電装置450>
図15Bに示す受電装置450は、受電アンテナ403、受電回路451、充電制御回路452、充放電制御回路453を有する。また、受電装置450は、端子461、端子462、および端子463を有する。
図15Bでは、端子461に二次電池300の正極が電気的に接続され、端子462に二次電池300の負極が電気的に接続されている。
【0118】
受電回路451は、受電アンテナ403のインダクタンスを基に決定される共振周波数fRを有する。送電アンテナ402から放射される交流電力の周波数fGと、受電回路451が有する共振周波数fRを一致させることで受電アンテナ403に誘導起電力を生じさせ、送電装置400から受電装置450への電力供給を実現することができる。
【0119】
また、受電回路451は整流回路を有する。整流回路は、受電アンテナ403に誘起された交流電力を直流に変換する機能を有する。
【0120】
充電制御回路452は、受電回路451から供給される直流電力を適正な電圧に調整する機能を有する。例えば、充電制御回路452にスイッチングレギュレータなどの機能を付加すればよい。
【0121】
また、充電制御回路452に、Noff-CPU(ノーマリーオフCPU)を用いてもよい。なお、ノーマリーオフCPUとは、ゲート電圧が0Vであっても非導通状態(オフ状態ともいう)であるノーマリーオフ型のトランジスタを含む集積回路である。ノーマリーオフ型のトランジスタは、OSトランジスタで実現できる。ノーマリーオフCPUを用いることで、充電制御回路452の待機動作時の消費電力を低減することができる。
【0122】
受電アンテナ403に誘起された交流電力は、受電回路451および充電制御回路452を介して、二次電池300に充電することができる。また、受電装置450は、外部機器の電源として機能できる。具体的には、端子461と端子463を介して外部機器と電気的に接続することで、当該外部機器に二次電池の電力を供給することができる。また、当該外部機器に、送電装置400から受け取った電力を供給することができる。
【0123】
充放電制御回路453は、二次電池300の充放電状況を監視する機能を有する。充放電制御回路453は、過電流検知回路および電圧検知回路などを有する。例えば、二次電池300から外部機器に電力を供給する際に規定値以上の電流(「過電流」ともいう。)が流れた場合、充放電制御回路453はトランジスタ471をオフ状態にして、電力供給を停止することができる。また、二次電池300の充電時に規定値以上の電流が流れた場合、充放電制御回路453はトランジスタ472をオフ状態にして、充電を停止することができる。また、二次電池300の充電時に規定値以上の電圧(「過電圧」ともいう。)が二次電池300に印加された場合、充放電制御回路453はトランジスタ472をオフ状態にして、充電を停止することができる。
【0124】
本実施の形態では、
図15Aに示す送電アンテナ402、および
図15Bに示す受電アンテナ403を、コイルを示す回路記号で図示している。ただし、送電アンテナ402および受電アンテナ403は、コイル状のアンテナに限定されず、送電方式などによって適宜変更すればよい。例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。
【0125】
本発明の一態様に係る電圧検知回路100は、充放電制御回路453に用いることができる。また、無線給電システムに含まれるトランジスタの一部または全部にOSトランジスタを用いることができる。
【0126】
例えば、受電装置450に含まれるトランジスタにOSトランジスタを用いることで、受電装置450を可撓性基板上に設けることができる。よって、受電装置450の体積削減および軽量化が実現できる。また、受電装置450を可撓性基板上に設けることによって、例えば、二次電池300の側面に沿って受電装置450を設けることも可能である。
【0127】
なお、OSトランジスタを用いた充放電制御回路、過電流検出回路、電圧検知回路、異常検知回路、または二次電池制御システムなどを、BTOS(Battery operating system、またはBattery oxide semiconductor)と呼称する場合がある。
【0128】
OSトランジスタは、オフ電流が著しく少ない。よって、無線給電システムの消費電力を低減できる。また、OSトランジスタは高温環境下でもオフ電流がほとんど増加しない。具体的には室温以上200℃以下の環境温度下でもオフ電流がほとんど増加しない。また、OSトランジスタは、ソースとドレイン間の絶縁耐圧が高い。無線給電システムを構成するトランジスタにOSトランジスタを用いることで、高温環境下においても動作が安定し、信頼性の良好な無線給電システムを実現できる。
【0129】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0130】
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置に適用可能なトランジスタの構成ついて説明する。具体的には、異なる電気特性を有するトランジスタを積層して設ける構成について説明する。当該構成とすることで、半導体装置の設計自由度を高めることができる。また、異なる電気特性を有するトランジスタを積層して設けることで、半導体装置の集積度を高めることができる。
【0131】
図16に示す半導体装置は、トランジスタ550と、トランジスタ500と、容量600と、を有している。
図18Aはトランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、
図18Bはトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図であり、
図18Cはトランジスタ550のチャネル幅方向の断面図である。
【0132】
トランジスタ500は、OSトランジスタである。よって、トランジスタ500は、オフ電流が極めて少ないため、これを半導体装置が有するトランジスタに用いることにより、長期にわたり書き込んだデータ電圧あるいは電荷を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作の頻度が少ない、あるいは、リフレッシュ動作を必要としないため、半導体装置の消費電力を低減することができる。
【0133】
本実施の形態で説明する半導体装置は、
図16に示すようにトランジスタ550、トランジスタ500、容量600を有する。トランジスタ500はトランジスタ550の上方に設けられ、容量600はトランジスタ550、およびトランジスタ500の上方に設けられている。
【0134】
トランジスタ550は、基板311上に設けられ、導電体316、絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、ソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bを有する。なお、トランジスタ550は、例えば、上記実施の形態におけるコンパレータ101が有するトランジスタ等に適用することができる。
【0135】
トランジスタ550は、
図18Cに示すように、半導体領域313の上面およびチャネル幅方向の側面が絶縁体315を介して導電体316に覆われている。このように、トランジスタ550をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大することによりトランジスタ550のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ550のオフ特性を向上させることができる。
【0136】
なお、トランジスタ550は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0137】
半導体領域313のチャネルが形成される領域、その近傍の領域、ソース領域、またはドレイン領域となる低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bなどにおいて、シリコン系半導体などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。または、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)などを有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。またはGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ550をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0138】
低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bは、半導体領域313に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、またはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含む。
【0139】
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。
【0140】
なお、導電体の材料によって仕事関数が決まるため、当該導電体の材料を選択することで、トランジスタのしきい値電圧を調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタルなどの材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウムなどの金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0141】
なお、
図16に示すトランジスタ550は一例であり、その構成に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。例えば、半導体装置をOSトランジスタのみの単極性回路(nチャネル型トランジスタのみ、などと同極性のトランジスタを意味する)とする場合、
図17に示すように、トランジスタ550の構成を、酸化物半導体を用いているトランジスタ500と同様の構成にすればよい。なお、トランジスタ500の詳細については後述する。
【0142】
トランジスタ550を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326が順に積層して設けられている。
【0143】
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。
【0144】
なお、本明細書中において、酸化窒化シリコンとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。また、本明細書中において、酸化窒化アルミニウムとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化アルミニウムとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。
【0145】
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ550などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0146】
また、絶縁体324には、基板311、またはトランジスタ550などから、トランジスタ500が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
【0147】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ550との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0148】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析法(TDS)などを用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm2以下、好ましくは5×1015atoms/cm2以下であればよい。
【0149】
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0150】
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326には容量600、またはトランジスタ500と接続する導電体328、および導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、および導電体330は、プラグまたは配線としての機能を有する。また、プラグまたは配線としての機能を有する導電体は、複数の構成をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0151】
各プラグ、および配線(導電体328、導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0152】
絶縁体326、および導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図16において、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、トランジスタ550と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0153】
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ550とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ550からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0154】
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ550からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構成であることが好ましい。
【0155】
絶縁体354、および導電体356上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図16において、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364が順に積層して設けられている。また、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364には、導電体366が形成されている。導電体366は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体366は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0156】
なお、例えば、絶縁体360は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体366は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体360が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ550とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ550からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0157】
絶縁体364、および導電体366上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図16において、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374が順に積層して設けられている。また、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374には、導電体376が形成されている。導電体376は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体376は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0158】
なお、例えば、絶縁体370は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体376は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体370が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ550とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ550からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0159】
絶縁体374、および導電体376上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図16において、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384が順に積層して設けられている。また、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384には、導電体386が形成されている。導電体386は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体386は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0160】
なお、例えば、絶縁体380は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体386は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体380が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ550とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ550からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0161】
上記において、導電体356を含む配線層、導電体366を含む配線層、導電体376を含む配線層、および導電体386を含む配線層、について説明したが、本実施の形態に係る半導体装置はこれに限られるものではない。導電体356を含む配線層と同様の配線層を3層以下にしてもよいし、導電体356を含む配線層と同様の配線層を5層以上にしてもよい。
【0162】
絶縁体384上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
【0163】
例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、例えば、基板311、またはトランジスタ550を設ける領域などから、トランジスタ500を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
【0164】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ550との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0165】
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0166】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0167】
また、例えば、絶縁体512、および絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、および絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0168】
また、絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516には、導電体518、およびトランジスタ500を構成する導電体(例えば、導電体503)等が埋め込まれている。なお、導電体518は、容量600、またはトランジスタ550と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体518は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0169】
特に、絶縁体510、および絶縁体514と接する領域の導電体518は、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ550とトランジスタ500とは、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する層で、分離することができ、トランジスタ550からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0170】
絶縁体516の上方には、トランジスタ500が設けられている。
【0171】
図18Aおよび
図18Bに示すように、トランジスタ500は、絶縁体514および絶縁体516に埋め込まれるように配置された導電体503と、絶縁体516および導電体503の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、酸化物530b上に互いに離れて配置された導電体542aおよび導電体542bと、導電体542aおよび導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の底面および側面に配置された酸化物530cと、酸化物530cの形成面に配置された絶縁体545と、絶縁体545の形成面に配置された導電体560と、を有する。
【0172】
また、
図18Aおよび
図18Bに示すように、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、および導電体542bと、絶縁体580との間に絶縁体544が配置されることが好ましい。また、
図18Aおよび
図18Bに示すように、導電体560は、絶縁体545の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、
図18Aおよび
図18Bに示すように、絶縁体580、導電体560、および絶縁体545の上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
【0173】
なお、本明細書などにおいて、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cをまとめて酸化物530という場合がある。
【0174】
なお、トランジスタ500では、チャネルが形成される領域と、その近傍において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物530bの単層、酸化物530bと酸化物530aの2層構成、酸化物530bと酸化物530cの2層構成、または4層以上の積層構成を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ500では、導電体560を2層の積層構成として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が、単層構成であってもよいし、3層以上の積層構成であってもよい。また、
図16、
図18Aに示すトランジスタ500は一例であり、その構成に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0175】
ここで、導電体560は、トランジスタのゲート電極として機能し、導電体542aおよび導電体542bは、それぞれソース電極またはドレイン電極として機能する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542aおよび導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ500において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ500の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
【0176】
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542aまたは導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と導電体542aおよび導電体542bとの間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ500のスイッチング速度を向上させ、高い周波数特性を有せしめることができる。
【0177】
導電体560は、第1のゲート(トップゲートともいう)電極として機能する場合がある。また、導電体503は、第2のゲート(ボトムゲートともいう)電極として機能する場合がある。その場合、導電体503に印加する電位を、導電体560に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ500のしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体503に負の電位を印加することにより、トランジスタ500のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体503に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0178】
導電体503は、酸化物530、および導電体560と、重なるように配置する。これにより、導電体560、および導電体503に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体503から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。
【0179】
本明細書等において、一対のゲート電極(第1のゲート電極、および第2のゲート電極)の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構成を、surrounded channel(S-channel)構成とよぶ。また、本明細書等において、surrounded channel(S-channel)構成は、ソース電極およびドレイン電極として機能する導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面および周辺が、チャネル形成領域と同じくI型であるといった特徴を有する。また、導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面および周辺は、絶縁体544と接しているため、チャネル形成領域と同様にI型となりうる。なお、本明細書等において、I型とは後述する、高純度真性と同様として扱うことができる。また、本明細書等で開示するS-channel構成は、Fin型構成およびプレーナ型構成とは異なる。S-channel構成を採用することで、短チャネル効果に対する耐性を高める、別言すると短チャネル効果が発生し難いトランジスタとすることができる。
【0180】
また、導電体503は、導電体518と同様の構成であり、絶縁体514および絶縁体516の開口の内壁に接して導電体503aが形成され、さらに内側に導電体503bが形成されている。なお、トランジスタ500では、導電体503aおよび導電体503bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体503は、単層、または3層以上の積層構成として設ける構成にしてもよい。
【0181】
ここで、導電体503aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、または上記酸素のいずれか一または、すべての拡散を抑制する機能とする。
【0182】
例えば、導電体503aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体503bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。
【0183】
また、導電体503が配線の機能を兼ねる場合、導電体503bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする、導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。なお、本実施の形態では導電体503を導電体503aと導電体503bの積層で図示したが、導電体503は単層構成であってもよい。
【0184】
絶縁体520、絶縁体522、および絶縁体524は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0185】
ここで、酸化物530と接する絶縁体524は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物530に接して設けることにより、酸化物530中の酸素欠損(VO:oxygen vacancyともいう)を低減し、トランジスタ500の信頼性を向上させることができる。なお、酸化物530中の酸素欠損に水素が入った場合、当該欠陥(以下、VOHと呼ぶ場合がある。)はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。また、酸化物半導体中の水素は、熱、電界などのストレスによって動きやすいため、酸化物半導体に多くの水素が含まれると、トランジスタの信頼性が悪化する恐れもある。本発明の一態様においては、酸化物530中のVOHをできる限り低減し、高純度真性または実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VOHが十分低減された酸化物半導体を得るには、酸化物半導体中の水分、水素などの不純物を除去すること(脱水、脱水素化処理と記載する場合がある。)と、酸化物半導体に酸素を供給して酸素欠損を補填すること(加酸素化処理と記載する場合がある。)が重要である。VOHなどの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0186】
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、または3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0187】
また、上記過剰酸素領域を有する絶縁体と、酸化物530と、を接して加熱処理、マイクロ波処理、またはRF処理のいずれか一または複数の処理を行っても良い。当該処理を行うことで、酸化物530中の水、または水素を除去することができる。例えば、酸化物530において、VoHの結合が切断される反応が起きる、別言すると「VOH→Vo+H」という反応が起きて、脱水素化することができる。このとき発生した水素の一部は、酸素と結合してH2Oとして、酸化物530、または酸化物530近傍の絶縁体から除去される場合がある。また、水素の一部は、導電体542にゲッタリングされる場合がある。
【0188】
また、上記マイクロ波処理は、例えば、高密度プラズマを発生させる電源を有する装置、または、基板側にRFを印加する電源を有する装置を用いると好適である。例えば、酸素を含むガスを用い、且つ高密度プラズマを用いることより、高密度の酸素ラジカルを生成することができ、基板側にRFを印加することで、高密度プラズマによって生成された酸素ラジカルを、効率よく酸化物530、または酸化物530近傍の絶縁体中に導入することができる。また、上記マイクロ波処理は、圧力を133Pa以上、好ましくは200Pa以上、さらに好ましくは400Pa以上とすればよい。また、マイクロ波処理を行う装置内に導入するガスとしては、例えば、酸素と、アルゴンとを用い、酸素流量比(O2/(O2+Ar))が50%以下、好ましくは10%以上30%以下で行うとよい。
【0189】
また、トランジスタ500の作製工程中において、酸化物530の表面が露出した状態で、加熱処理を行うと好適である。当該加熱処理は、例えば、100℃以上450℃以下、より好ましくは350℃以上400℃以下で行えばよい。なお、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う。例えば、加熱処理は酸素雰囲気で行うことが好ましい。これにより、酸化物530に酸素を供給して、酸素欠損(VO)の低減を図ることができる。また、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で行ってもよい。または、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で加熱処理した後に、連続して窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理を行っても良い。
【0190】
なお、酸化物530に加酸素化処理を行うことで、酸化物530中の酸素欠損を、供給された酸素により修復させる、別言すると「Vo+O→null」という反応を促進させることができる。さらに、酸化物530中に残存した水素に供給された酸素が反応することで、当該水素をH2Oとして除去する(脱水化する)ことができる。これにより、酸化物530中に残存していた水素が酸素欠損に再結合してVOHが形成されるのを抑制することができる。
【0191】
また、絶縁体524が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
【0192】
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物530が有する酸素は、絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。また、導電体503が、絶縁体524や、酸化物530が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0193】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、または(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0194】
特に、不純物、および酸素などの拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウム、ハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウム、ハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ500の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0195】
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0196】
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構成の絶縁体520を得ることができる。
【0197】
なお、
図18Aおよび
図18Bのトランジスタ500では、3層の積層構成からなる第2のゲート絶縁膜として、絶縁体520、絶縁体522、および絶縁体524が図示されているが、第2のゲート絶縁膜は、単層、2層、または4層以上の積層構成を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構成に限定されず、異なる材料からなる積層構成でもよい。
【0198】
トランジスタ500は、チャネル形成領域を含む酸化物530に、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、酸化物530として適用できるIn-M-Zn酸化物は、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)であることが好ましい。または、CAC-OS(Cloud-Aligned Composite oxide semiconductor)であることが好ましい。なお、CAACは結晶構成の一例を表し、CACは機能、または材料の構成の一例を表す。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0199】
CAC-OSは、CAC-metal oxideと呼ばれる場合がある。CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0200】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0201】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0202】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0203】
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0204】
なお、酸化物半導体として機能する金属酸化物は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、および非晶質酸化物半導体などがある。
【0205】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構成となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0206】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0207】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構成(層状構成ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0208】
CAAC-OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない金属酸化物ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0209】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0210】
なお、インジウムと、ガリウムと、亜鉛と、を有する金属酸化物の一種である、In-Ga-Zn酸化物(「IGZO」ともいう。)は、上述のナノ結晶とすることで安定な構成をとる場合がある。特に、IGZOは、大気中では結晶成長がし難い傾向があるため、大きな結晶(ここでは、数mmの結晶、または数cmの結晶)よりも小さな結晶(例えば、上述のナノ結晶)とする方が、構成的に安定となる場合がある。
【0211】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構成を有する金属酸化物である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0212】
酸化物半導体(金属酸化物)は、多様な構成をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0213】
また、トランジスタ500には、キャリア濃度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物のキャリア濃度を低くする場合においては、金属酸化物中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、金属酸化物中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0214】
特に、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、金属酸化物中に酸素欠損を形成する場合がある。金属酸化物中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となる場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0215】
酸素欠損に水素が入った欠陥は、金属酸化物のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、金属酸化物においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、金属酸化物のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0216】
よって、金属酸化物を酸化物530に用いる場合、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素などの不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0217】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0218】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と酸化物530とが接することで、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散し、導電体542が酸化する場合がある。導電体542が酸化することで、導電体542の導電率が低下する蓋然性が高い。なお、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散することを、導電体542が酸化物530中の酸素を吸収する、と言い換えることができる。
【0219】
また、酸化物530中の酸素が導電体542(導電体542a、および導電体542b)へ拡散することで、導電体542aと酸化物530bとの間、および、導電体542bと酸化物530bとの間に異層が形成される場合がある。当該異層は、導電体542よりも酸素を多く含むため、当該異層は絶縁性を有すると推定される。このとき、導電体542と、当該異層と、酸化物530bとの3層構成は、金属-絶縁体-半導体からなる3層構成とみなすことができ、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構成と呼ぶ、またはMIS構成を主としたダイオード接合構成と呼ぶ場合がある。
【0220】
なお、上記異層は、導電体542と酸化物530bとの間に形成されることに限られず、例えば、異層が、導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合や、導電体542と酸化物530bとの間、および導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合がある。
【0221】
また、酸化物530においてチャネル形成領域として機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0222】
酸化物530は、酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構成物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構成物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0223】
なお、酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる複数の酸化物層の積層構成を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
【0224】
また、酸化物530aおよび酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530aおよび酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
【0225】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0226】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530aおよび酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0227】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ500は高いオン電流を得られる。
【0228】
酸化物530b上には、ソース電極、およびドレイン電極として機能する導電体542a、および導電体542bが設けられる。導電体542a、および導電体542bとしては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。更に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素または酸素に対するバリア性があるため好ましい。
【0229】
また、
図18では、導電体542a、および導電体542bを単層構成として示したが、2層以上の積層構成としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構成、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構成、チタン膜上に銅膜を積層する二層構成、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構成としてもよい。
【0230】
また、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構成、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構成等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0231】
また、
図18Aに示すように、酸化物530の、導電体542a(導電体542b)との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域543a、および領域543bが形成される場合がある。このとき、領域543aはソース領域またはドレイン領域の一方として機能し、領域543bはソース領域またはドレイン領域の他方として機能する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
【0232】
酸化物530と接するように上記導電体542a(導電体542b)を設けることで、領域543a(領域543b)の酸素濃度が低減する場合がある。また、領域543a(領域543b)に導電体542a(導電体542b)に含まれる金属と、酸化物530の成分とを含む金属化合物層が形成される場合がある。このような場合、領域543a(領域543b)のキャリア密度が増加し、領域543a(領域543b)は、低抵抗領域となる。
【0233】
絶縁体544は、導電体542a、および導電体542bを覆うように設けられ、導電体542a、および導電体542bの酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
【0234】
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、ネオジム、ランタンまたは、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。また、絶縁体544として、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなども用いることができる。
【0235】
特に、絶縁体544として、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム、およびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542a、および導電体542bが耐酸化性を有する材料、または、酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない場合、絶縁体544は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0236】
絶縁体544を有することで、絶縁体580に含まれる水、および水素などの不純物が酸化物530c、絶縁体545を介して、酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化するのを抑制することができる。
【0237】
絶縁体545は、第1のゲート絶縁膜として機能する。絶縁体545は、酸化物530cの内側(上面、および側面)に接して配置することが好ましい。絶縁体545は、上述した絶縁体524と同様に、過剰に酸素を含み、かつ加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。
【0238】
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素、および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0239】
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体545として、酸化物530cの上面に接して設けることにより、絶縁体545から、酸化物530cを通じて、酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体545中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体545の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0240】
また、絶縁体545が有する過剰酸素を、効率的に酸化物530へ供給するために、絶縁体545と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体545から導電体560への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体545から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。当該金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
【0241】
なお、絶縁体545は、第2のゲート絶縁膜と同様に、積層構成としてもよい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合があるため、ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構成とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構成とすることができる。
【0242】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、
図18Aおよび
図18Bでは2層構成として示しているが、単層構成でもよいし、3層以上の積層構成であってもよい。
【0243】
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体545に含まれる酸素により、導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、導電体560aとして、酸化物530に適用できる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体560bをスパッタリング法で成膜することで、導電体560aの電気抵抗値を低下させて導電体にすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0244】
また、導電体560bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560bは、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構成としてもよく、例えば、チタンまたは窒化チタンと上記導電性材料との積層構成としてもよい。
【0245】
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542a、および導電体542b上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素、および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などを有することが好ましい。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で、容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
【0246】
絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体580を、酸化物530cと接して設けることで、絶縁体580中の酸素を、酸化物530cを通じて、酸化物530へと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0247】
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に、埋め込まれるように形成される。
【0248】
半導体装置を微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく、形成することができる。
【0249】
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、および絶縁体545の上面に接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体545、および絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物530中に酸素を供給することができる。
【0250】
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0251】
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、および窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素などの不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
【0252】
また、絶縁体574の上に、層間膜として機能する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0253】
また、絶縁体581、絶縁体574、絶縁体580、および絶縁体544に形成された開口に、導電体540a、および導電体540bを配置する。導電体540aおよび導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。導電体540aおよび導電体540bは、後述する導電体546、および導電体548と同様の構成である。
【0254】
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられている。絶縁体582は、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0255】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0256】
また、絶縁体582上には、絶縁体586が設けられている。絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0257】
また、絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体581、絶縁体582、および絶縁体586には、導電体546、および導電体548等が埋め込まれている。
【0258】
導電体546、および導電体548は、容量600、トランジスタ500、またはトランジスタ550と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体546、および導電体548は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0259】
また、トランジスタ500の形成後、トランジスタ500を囲むように開口を形成し、当該開口を覆うように、水素、または水に対するバリア性が高い絶縁体を形成してもよい。上述のバリア性の高い絶縁体でトランジスタ500を包み込むことで、外部から水分、および水素が侵入するのを防止することができる。または、複数のトランジスタ500をまとめて、水素、または水に対するバリア性が高い絶縁体で包み込んでもよい。なお、トランジスタ500を囲むように開口を形成する場合、例えば、絶縁体522または絶縁体514に達する開口を形成し、絶縁体522または絶縁体514に接するように上述のバリア性の高い絶縁体を形成すると、トランジスタ500の作製工程の一部を兼ねられるため、好適である。なお、水素、または水に対するバリア性が高い絶縁体としては、例えば、絶縁体522または絶縁体514と同様の材料を用いればよい。
【0260】
続いて、トランジスタ500の上方には、容量600が設けられている。容量600は、導電体610と、導電体620と、絶縁体630とを有する。
【0261】
また、導電体546、および導電体548上に、導電体612を設けてもよい。導電体612は、トランジスタ500と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体610は、容量600の電極としての機能を有する。なお、導電体612、および導電体610は、同時に形成することができる。
【0262】
導電体612、および導電体610には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。または、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
【0263】
本実施の形態では、導電体612、および導電体610を単層構成で示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構成でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、および導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0264】
絶縁体630を介して、導電体610と重畳するように、導電体620を設ける。なお、導電体620は、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体などの他の構成と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)やAl(アルミニウム)等を用いればよい。
【0265】
導電体620、および絶縁体630上には、絶縁体640が設けられている。絶縁体640は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体640は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
【0266】
本構成を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化または高集積化を図ることができる。
【0267】
本発明の一態様の半導体装置に用いることができる基板としては、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板、金属基板(例えば、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板など)、半導体基板(例えば、単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、または化合物半導体基板など)SOI(SOI:Silicon on Insulator)基板、などを用いることができる。また、本実施の形態の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板を用いてもよい。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、またはアルミノホウケイ酸ガラス、またはソーダライムガラスなどがある。他にも、結晶化ガラスなどを用いることができる。
【0268】
または、基板として、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、または基材フィルムなどを用いることができる。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、以下のものがあげられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の合成樹脂などがある。または、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、またはポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、または紙類などがある。特に、半導体基板、単結晶基板、またはSOI基板などを用いてトランジスタを製造することによって、特性、サイズ、または形状などのばらつきが少なく、電流能力が高く、サイズの小さいトランジスタを製造することができる。このようなトランジスタによって回路を構成すると、回路の低消費電力化、または回路の高集積化を図ることができる。
【0269】
また、基板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ、抵抗、および/または容量などを形成してもよい。または、基板と、トランジスタ、抵抗、および/または容量などの間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板より分離し、他の基板に転載するために用いることができる。その際、トランジスタ、抵抗、および/または容量などは耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構成の構成や、基板上にポリイミド等の有機樹脂膜が形成された構成、水素を含むシリコン膜等を用いることができる。
【0270】
つまり、ある基板上に半導体装置を形成し、その後、別の基板に半導体装置を転置してもよい。半導体装置が転置される基板の一例としては、上述したトランジスタを形成することが可能な基板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイミドフィルム基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、またはゴム基板などがある。これらの基板を用いることにより、可撓性を有する半導体装置の製造、壊れにくい半導体装置の製造、耐熱性の付与、軽量化、または薄型化を図ることができる。
【0271】
可撓性を有する基板上に半導体装置を設けることで、例えば、二次電池300が曲面形状または屈曲形状を有する場合であっても、半導体装置を二次電池の外形に沿って設けることができる。例えば、二次電池300が円筒形状である場合に、当該二次電池の側面に半導体装置を巻きつけるように設けることができる。
【0272】
<トランジスタの変形例1>
図19A、
図19Bに示すトランジスタ500Aは、
図18A、
図18Bに示す構成のトランジスタ500の変形例である。
図19Aはトランジスタ500Aのチャネル長方向の断面図であり、
図19Bはトランジスタ500Aのチャネル幅方向の断面図である。なお、
図19A、
図19Bに示す構成は、トランジスタ550等、本発明の一態様の半導体装置が有する他のトランジスタにも適用することができる。
【0273】
図19A、
図19Bに示す構成のトランジスタ500Aは、絶縁体552、絶縁体513および絶縁体404を有し、酸化物530cが酸化物530c1と酸化物530c2の積層で構成されている点が、
図18A、
図18Bに示す構成のトランジスタ500と異なる。また、導電体540aの側面に接して絶縁体552が設けられ、導電体540bの側面に接して絶縁体552が設けられる点が、
図18A、
図18Bに示す構成のトランジスタ500と異なる。さらに、絶縁体520を有さない点が、
図18A、
図18Bに示す構成のトランジスタ500と異なる。
【0274】
図19A、
図19Bに示す構成のトランジスタ500は、絶縁体512上に絶縁体513が設けられる。また、絶縁体574上、および絶縁体513上に絶縁体404が設けられる。
【0275】
図19A、
図19Bに示す構成のトランジスタ500では、絶縁体514、絶縁体516、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、および絶縁体574がパターニングされており、絶縁体404がこれらを覆う構成になっている。つまり、絶縁体404は、絶縁体574の上面、絶縁体574の側面、絶縁体580の側面、絶縁体544の側面、絶縁体524の側面、絶縁体522の側面、絶縁体516の側面、絶縁体514の側面、絶縁体513の上面とそれぞれ接する。これにより、酸化物530等は、絶縁体404と絶縁体513によって外部から隔離される。
【0276】
絶縁体513および絶縁体404は、水素(例えば、水素原子、水素分子などの少なくとも一)または水分子の拡散を抑制する機能が高いことが好ましい。例えば、絶縁体513および絶縁体404として、水素バリア性が高い材料である、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを用いることが好ましい。これにより、酸化物530に水素等が拡散することを抑制することができるので、トランジスタ500Aの特性低下を抑制できる。よって、本発明の一態様の半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0277】
絶縁体552は、絶縁体581、絶縁体404、絶縁体574、絶縁体580、および絶縁体544に接して設けられる。絶縁体552は、水素または水分子の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。たとえば、絶縁体552として、水素バリア性が高い材料である、窒化シリコン、酸化アルミニウム、または窒化酸化シリコン等の絶縁体を用いることが好ましい。特に、窒化シリコンは水素バリア性が高い材料であるので、絶縁体552として用いると好適である。絶縁体552として水素バリア性が高い材料を用いることにより、水または水素等の不純物が、絶縁体580等から導電体540aおよび導電体540bを通じて酸化物530に拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580に含まれる酸素が導電体540aおよび導電体540bに吸収されることを抑制することができる。以上により、本発明の一態様の半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0278】
酸化物530c1は、絶縁体524の上面、酸化物530aの側面、酸化物530bの上面および側面、導電体542aおよび導電体542bの側面、絶縁体544の側面、および絶縁体580の側面と接する(
図19B参照。)。酸化物530c2は、絶縁体545と接する。
【0279】
酸化物530c1としては、例えばIn-Zn酸化物を用いることができる。また、酸化物530c2としては、酸化物530cが単層構成である場合に酸化物530cに用いる材料と同様の材料を用いることができる。例えば、酸化物530c2として、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いることができる。
【0280】
酸化物530cを酸化物530c1および酸化物530c2の2層構成とすることにより、酸化物530cを1層構成とする場合より、トランジスタのオン電流を高めることができる。よって、トランジスタを、例えばパワーMOSトランジスタとすることもできる。
【0281】
<トランジスタの変形例2>
図20A、
図20Bおよび
図20Cを用いて、トランジスタ500Bの構成例を説明する。
図20Aはトランジスタ500Bの上面図である。
図20Bは、
図20Aに一点鎖線で示すL1-L2部位の断面図である。
図20Cは、
図20Aに一点鎖線で示すW1-W2部位の断面図である。なお、
図20Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素の記載を省略している。
【0282】
トランジスタ500Bはトランジスタ500の変形例であり、トランジスタ500に置き換え可能なトランジスタである。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ500と異なる点について説明する。
【0283】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、および導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0284】
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0285】
また、導電体560の上面および側面、絶縁体545の側面、および酸化物530cの側面を覆うように、絶縁体544を設けることが好ましい。なお、絶縁体544は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0286】
絶縁体544を設けることで、導電体560の酸化を抑制することができる。また、絶縁体544を有することで、絶縁体580が有する水、および水素などの不純物がトランジスタ500Bへ拡散することを抑制することができる。
【0287】
トランジスタ500Bは、導電体542aの一部と導電体542bの一部に導電体560が重なるため、トランジスタ500よりも寄生容量が大きくなりやすい。よって、トランジスタ500に比べて動作周波数が低くなる傾向がある。しかしながら、絶縁体580などに開口を設けて導電体560や絶縁体545などを埋めこむ工程が不要であるため、トランジスタ500と比較して生産性が高い。
【0288】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0289】
(実施の形態5)
本実施の形態では、二次電池300に用いることができる電池の構成例について図面を用いて説明する。本実施の形態では、リチウムイオン二次電池の例を示すが、二次電池300に用いることができる電池はリチウムイオン二次電池に限定されない。
【0290】
〔円筒形状二次電池〕
図21Aは円筒形状の二次電池715の外観図である。
図21Bは、円筒形状の二次電池715の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶702の内側には、帯状の正極704と負極706とがセパレータ705を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶702は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶702には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、またはこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶702の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板708、絶縁板709により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶702の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。二次電池は、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)やリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)などの活物質を含む正極と、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な黒鉛等の炭素材料からなる負極と、エチレンカーボネートやジエチルカーボネートなどの有機溶媒に、LiBF
4やLiPF
6等のリチウム塩からなる電解質を溶解させた非水電解液などにより構成される。
【0291】
円筒形状の二次電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。正極704には正極端子(正極集電リード)703が接続され、負極706には負極端子(負極集電リード)707が接続される。正極端子703および負極端子707は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子703は安全弁機構712に、負極端子707は電池缶702の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構712は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)711を介して正極キャップ701と電気的に接続されている。安全弁機構712は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ701と正極704との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子711は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
【0292】
電解液を用いるリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、外装体とを有する。なお、リチウムイオン二次電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書においては、充電中であっても、放電中であっても、逆バイアスを流す場合であっても、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「-極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
【0293】
本実施の形態では、リチウムイオン二次電池の例を示すが、リチウムイオン二次電池に限定されず、二次電池の正極材料として例えば、元素A、元素X、及び酸素を有する材料を用いることができる。元素Aは第1族の元素および第2族の元素から選ばれる一以上であることが好ましい。第1族の元素として例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を用いることができる。また、第2族の元素として例えば、カルシウム、ベリリウム、マグネシウム等を用いることができる。元素Xとして例えば金属元素、シリコン及びリンから選ばれる一以上を用いることができる。また、元素Xはコバルト、ニッケル、マンガン、鉄、及びバナジウムから選ばれる一以上であることが好ましい。代表的には、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)や、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)が挙げられる。
【0294】
負極は、負極活物質層および負極集電体を有する。また、負極活物質層は、導電助剤およびバインダを有していてもよい。
【0295】
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4700mAh/gと高い。
【0296】
また、二次電池は、セパレータを有することが好ましい。セパレータとしては、例えば、紙をはじめとするセルロースを有する繊維、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。
【0297】
図21Cでは、可撓性基板721上に形成または固定された受電装置724が、二次電池715の側面に沿って設けられている様子を示している。受電装置724として上記実施の形態に示した受電装置450などを用いることができる。受電装置724を可撓性基板721上に設けることで、円筒形状の二次電池715の曲面に沿って受電装置724を設けることができる。よって、受電装置724の占有空間を小さくすることができる。よって、二次電池715および受電装置724を含む電子機器などの小型化が実現できる。
【0298】
〔扁平形状二次電池〕
【0299】
次に、扁平形状の二次電池913の内部構成例について説明する。
【0300】
二次電池913の内部に配置される捲回体950の構成を
図22Aに示す。捲回体950は、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複数重ねてもよい。
【0301】
負極931は、端子951または端子952の一方と電気的に接続され、正極932は、端子951または端子952の他方と電気的に接続される。
【0302】
図22Bにおいて、二次電池913は、筐体930(「外装体」ともいう。)の内部に端子951と端子952が設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液に含浸される。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していない。なお、
図22Bでは、筐体930を分離して図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)または樹脂材料を用いることができる。
【0303】
筐体930としては、金属材料、有機樹脂などの絶縁材料を用いることができる。筐体930をフィルムで構成する場合もあり、その場合、そのフィルムに可撓性基板上に形成された充電制御回路を設ける場合もある。
【0304】
〔電池パック〕
続いて、扁平形状の二次電池913を含む電池パック901について説明する。
図23Aは、二次電池913の外観図である。二次電池913は、端子951および端子952を有する。端子951は二次電池913内部の正極と電気的に接続され、端子952は二次電池913内部の負極と電気的に接続される。
【0305】
図23Bは、受電装置900および層916の外観図である。受電装置900は、回路912およびアンテナ914を有し、可撓性基板に設けられている。アンテナ914は回路912に電気的に接続される。回路912には端子971および端子972が電気的に接続される。回路912は端子911に電気的に接続される。
【0306】
二次電池913は、受電装置900、端子951、および端子952および端子911と併せて、電池パックとして機能する。
【0307】
受電装置900は、例えば上記実施の形態に示した受電装置450に相当する。回路912には、受電回路451、充電制御回路452、充放電制御回路453などが含まれる。また、アンテナ914は、上記実施の形態に示した受電アンテナ403に相当する。
【0308】
アンテナは、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。
【0309】
端子911は例えば、二次電池の電力が供給される機器に接続される。例えば、表示装置、センサ、等に接続される。
【0310】
図23Bに示す層916は、例えば二次電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。
【0311】
図23Cに二次電池913上に受電装置900を配置した電池パックを示す。端子971は端子951と電気的に接続され、端子972は端子952と電気的に接続される。層916は受電装置900と二次電池913との間に配置される。
【0312】
受電装置900は、可撓性基板上に設けることが好ましい。可撓性基板を用いることにより、薄型の受電装置900を実現することができる。また後述する
図24Dに示すように受電装置900を二次電池に巻き付けることができる。
【0313】
続いて、電池パック901の他の構成例として、
図24A乃至
図24Dを用いて電池パック901Aについて説明する。
図24Aは二次電池913の外観図である。
図24Bに示す受電装置900は、
図23Bに示した受電装置900と同様に、回路912およびアンテナ914を有する。また、
図24Bには層916も示している。
【0314】
図24Cに示すように、可撓性基板に設けられた受電装置900を二次電池913の形状に合わせて曲げ、二次電池の周りに配置することにより、
図24Dに示すように、受電装置900を二次電池に巻き付けることができる。
【0315】
続いて、電池パック901の他の構成例として、
図25A乃至
図25Dを用いて電池パック901Bについて説明する。
図25Aに示す二次電池913は、一方から見るとL字型の形状を有する。
【0316】
図25Bは、受電装置900が設けられた可撓性基板が切り欠き部を有する例を示す。切り欠き部をスリットと呼ぶ場合もある。
図25Bに示す層916は、
図25Aに示す二次電池913と同様に、L字型の形状を有する。
【0317】
図25Cおよび
図25Dに示すように、可撓性基板が切り欠き部を有することによって、受電装置900の一部(切り欠き部の右側の領域)をL字型の二次電池913の背面側に巻き付けることができる。なお、
図25Cは受電装置900の一部をL字型の二次電池913に巻き付けている途中の状態を示す図であり、
図25Dは巻き付けた後の状態を示す図である。
【0318】
受電装置900を可撓性基板上に設けることで、二次電池913の形状に沿って受電装置900を設けることができる。よって、受電装置900の占有空間を小さくすることができる。よって、電池パックの小型化が実現できる。また、電池パックの軽量化が実現できる。本発明の一態様に係る電池パックを含む電子機器などの小型化が実現できる。本発明の一態様に係る電池パックを含む電子機器などの軽量化が実現できる。
【0319】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0320】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る正極活物質について説明する。
【0321】
本明細書等において、偏析とは、複数の元素(例えばA,B,C)からなる固体において、ある元素(例えばB)が空間的に不均一に分布する現象をいう。
【0322】
本明細書等において、活物質等の粒子の表層部とは、表面から10nm程度までの領域をいう。ひびやクラックにより生じた面も表面といってよい。また表層部より深い領域を、内部という。
【0323】
本明細書等において、リチウムと遷移金属を含む複合酸化物が有する層状岩塩型の結晶構成とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列する岩塩型のイオン配列を有し、遷移金属とリチウムが規則配列して二次元平面を形成するため、リチウムの二次元的拡散が可能である結晶構成をいう。なお陽イオンまたは陰イオンの欠損等の欠陥があってもよい。また、層状岩塩型結晶構成は、厳密に言えば、岩塩型結晶の格子が歪んだ構成となっている場合がある。
【0324】
また本明細書等において、岩塩型の結晶構成とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列している構成をいう。なお陽イオンまたは陰イオンの欠損があってもよい。
【0325】
また本明細書等において、リチウムと遷移金属を含む複合酸化物が有する擬スピネル型の結晶構成とは、空間群R-3mであり、スピネル型結晶構成ではないものの、コバルト、マグネシウム等のイオンが酸素6配位位置を占め、陽イオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する結晶構成をいう。なお、擬スピネル型の結晶構成は、リチウムなどの軽元素は酸素4配位位置を占める場合があり、この場合もイオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する。
【0326】
また擬スピネル型の結晶構成は、層間にランダムにLiを有するもののCdCl2型の結晶構成に類似する結晶構成であるということもできる。このCdCl2型に類似した結晶構成は、ニッケル酸リチウムを充電深度0.94まで充電したとき(Li0.06NiO2)の結晶構成と近いが、純粋なコバルト酸リチウム、またはコバルトを多く含む層状岩塩型の正極活物質では通常この結晶構成を取らないことが知られている。
【0327】
層状岩塩型結晶、および岩塩型結晶の陰イオンは立方最密充填構成(面心立方格子構成)をとる。擬スピネル型結晶も、陰イオンは立方最密充填構成をとると推定される。これらが接するとき、陰イオンにより構成される立方最密充填構成の向きが揃う結晶面が存在する。ただし、層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶の空間群はR-3mであり、岩塩型結晶の空間群Fm-3m(一般的な岩塩型結晶の空間群)およびFd-3m(最も単純な対称性を有する岩塩型結晶の空間群)とは異なるため、上記の条件を満たす結晶面のミラー指数は層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶と、岩塩型結晶では異なる。本明細書では、層状岩塩型結晶、擬スピネル型結晶、および岩塩型結晶において、陰イオンにより構成される立方最密充填構成の向きが揃うとき、結晶の配向が概略一致する、と言う場合がある。
【0328】
二次電池は例えば正極および負極を有する。正極を構成する材料として、正極活物質がある。正極活物質は例えば、充放電の容量に寄与する反応を行う物質である。なお、正極活物質は、その一部に、充放電の容量に寄与しない物質を含んでもよい。
【0329】
本明細書等において、本発明の一態様に係る正極活物質は、正極材料、あるいは二次電池用正極材、等と表現される場合がある。また本明細書等において、本発明の一態様に係る正極活物質は、化合物を有することが好ましい。また本明細書等において、本発明の一態様に係る正極活物質は、組成物を有することが好ましい。また本明細書等において、本発明の一態様に係る正極活物質は、複合体を有することが好ましい。
【0330】
<正極活物質>
本発明の一態様に係る正極活物質を用いることにより、二次電池の容量を高め、かつ、充放電サイクルに伴う放電容量の低下を抑制することができる。
【0331】
[正極活物質の構成]
正極活物質は、キャリアイオンとなる金属(以降、元素A)を有することが好ましい。元素Aとして例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、およびカルシウム、ベリリウム、マグネシウム等の第2族の元素を用いることができる。
【0332】
正極活物質において、充電に伴いキャリアイオンが正極活物質から脱離する。元素Aの脱離が多ければ、二次電池の容量に寄与するイオンが多く、容量が増大する。一方、元素Aの脱離が多いと、正極活物質が有する化合物の結晶構成が崩れやすくなる。正極活物質の結晶構成の崩れは、充放電サイクルに伴う放電容量の低下を招く場合がある。本発明の一態様に係る正極活物質が元素Xを有することにより、二次電池の充電時にキャリアイオンが脱離する際の結晶構成の崩れが抑制される場合がある。元素Xは例えば、その一部が元素Aの位置に置換される。元素Xとしてマグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、ランタン、バリウム等の元素を用いることができる。また例えば元素Xとして銅、カリウム、ナトリウム、亜鉛等の元素を用いることができる。また元素Xとして上記に示す元素のうち二以上を組み合わせて用いてもよい。
【0333】
また、本発明の一態様に係る正極活物質は、元素Xに加えてハロゲンを有することが好ましい。フッ素、塩素等のハロゲンを有することが好ましい。本発明の一態様に係る正極活物質が該ハロゲンを有することにより、元素Xの元素Aの位置への置換が促進される場合がある。
【0334】
また、本発明の一態様に係る正極活物質は、二次電池の充電および放電により価数が変化する金属(以降、元素M)を有する。元素Mは例えば、遷移金属である。本発明の一態様に係る正極活物質は例えば元素Mとしてコバルト、ニッケル、マンガンのうち一以上を有し、特にコバルトを有する。また、元素Mの位置に、アルミニウムなど、価数変化がなく、かつ元素Mと同じ価数をとり得る元素、より具体的には例えば三価の典型元素を有してもよい。前述の元素Xは例えば、元素Mの位置に置換されてもよい。また本発明の一態様に係る正極活物質が酸化物である場合には、元素Xは酸素の位置に置換されてもよい。
【0335】
本発明の一態様に係る正極活物質として例えば、層状岩塩型結晶構成を有するリチウム複合酸化物を用いることが好ましい。より具体的には例えば層状岩塩型結晶構成を有するリチウム複合酸化物として、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトを有するリチウム複合酸化物、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムを有するリチウム複合酸化物、等を用いることができる。また、これらの正極活物質は空間群R-3mで表されることが好ましい。
【0336】
層状岩塩型結晶構成を有する正極活物質において、充電深度を高めると結晶構成の崩れが生じる場合がある。ここで結晶構成の崩れとは例えば層のズレである。結晶構成の崩れが不可逆な場合には、充電と放電の繰り返しに伴い二次電池の容量の低下が生じる場合がある。
【0337】
本発明の一態様に係る正極活物質が元素Xを有することにより例えば、充電深度が深くなっても、上記の層のズレが抑制される。ズレを抑制することにより、充放電における体積の変化を小さくすることができる。よって、本発明の一態様に係る正極活物質は、優れたサイクル特性を実現することができる。また、本発明の一態様に係る正極活物質は、高電圧の充電状態において安定な結晶構成を取り得る。よって、本発明の一態様に係る正極活物質は、高電圧の充電状態を保持した場合において、ショートが生じづらい場合がある。そのような場合には安全性がより向上するため、好ましい。
【0338】
本発明の一態様に係る正極活物質では、十分に放電された状態と、高電圧で充電された状態における、結晶構成の変化および同数の遷移金属原子あたりで比較した場合の体積の差が小さい。
【0339】
本発明の一態様に係る正極活物質は化学式AMyOZ(y>0、z>0)で表わされる場合がある。例えばコバルト酸リチウムはLiCoO2で表される場合がある。また例えばニッケル酸リチウムはLiNiO2で表される場合がある。
【0340】
元素Xを有する、本発明の一態様に係る正極活物質では、充電深度が0.8以上の場合において、空間群R-3mで表され、スピネル型結晶構成ではないものの、元素M(例えばコバルト)、元素X(例えばマグネシウム)、等のイオンが酸素6配位位置を占め、陽イオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する場合がある。本構成を本明細書等では擬スピネル型の結晶構成と呼ぶ。なお、擬スピネル型の結晶構成は、リチウムなどの軽元素は酸素4配位位置を占める場合があり、この場合もイオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する。
【0341】
充電に伴うキャリアイオンの脱離により、正極活物質の構成は不安定となる。擬スピネル型結晶構成は、キャリアイオンが脱離したにもかかわらず、高い安定性を保つことができる構成である、といえる。
【0342】
本発明の充電深度が高い場合において、擬スピネル型構成を有する正極活物質を二次電池に用いることにより、例えばリチウム金属の電位を基準として4.6V程度の電圧において、より好ましくは4.65V乃至4.7V程度の電圧において、正極活物質の構成が安定であり、充放電による容量低下を抑制することができる。なお、二次電池において例えば負極活物質として黒鉛を用いる場合には、例えば二次電池の電圧が4.3V以上4.5V以下において、より好ましくは4.35V以上4.55V以下において、正極活物質の構成が安定であり、充放電による容量低下を抑制することができる。
【0343】
また擬スピネル型の結晶構成は、層間にランダムにLiを有するもののCdCl2型の結晶構成に類似する結晶構成であるということもできる。このCdCl2型に類似した結晶構成は、ニッケル酸リチウムを充電深度0.94まで充電したとき(Li0.06NiO2)の結晶構成と近いが、純粋なコバルト酸リチウム、またはコバルトを多く含む層状岩塩型の正極活物質では通常この結晶構成を取らないことが知られている。
【0344】
層状岩塩型結晶、および岩塩型結晶の陰イオンは立方最密充填構成(面心立方格子構成)をとる。擬スピネル型結晶も、陰イオンは立方最密充填構成をとると推定される。これらが接するとき、陰イオンにより構成される立方最密充填構成の向きが揃う結晶面が存在する。ただし、層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶の空間群はR-3mであり、岩塩型結晶の空間群Fm-3m(一般的な岩塩型結晶の空間群)およびFd-3m(最も単純な対称性を有する岩塩型結晶の空間群)とは異なるため、上記の条件を満たす結晶面のミラー指数は層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶と、岩塩型結晶では異なる。本明細書では、層状岩塩型結晶、擬スピネル型結晶、および岩塩型結晶において、陰イオンにより構成される立方最密充填構成の向きが揃うとき、結晶の配向が概略一致する、と言う場合がある。
【0345】
擬スピネル型の結晶構成は、ユニットセルにおけるコバルトと酸素の座標を、Co(0,0,0.5)、O(0,0,x)、0.20≦x≦0.25の範囲内で示すことができる。
【0346】
本発明の一態様に係る正極活物質において、充電深度0の体積におけるユニットセルの体積と、充電深度0.82の擬スピネル型結晶構成のユニットセルあたりの体積の差は2.5%以下が好ましく、2.2%以下がさらに好ましい。
【0347】
擬スピネル型の結晶構成では、2θ=19.30±0.20°(19.10°以上19.50°以下)、および2θ=45.55±0.10°(45.45°以上45.65°以下)に回折ピークが出現する。より詳しく述べれば、2θ=19.30±0.10°(19.20°以上19.40°以下)、および2θ=45.55±0.05°(45.50°以上45.60以下)に鋭い回折ピークが出現する。
【0348】
なお、本発明の一態様に係る正極活物質は高電圧で充電したとき擬スピネル型の結晶構成を有するが、粒子のすべてが擬スピネル型の結晶構成でなくてもよい。他の結晶構成を含んでいてもよいし、一部が非晶質であってもよい。ただし、XRDパターンについてリートベルト解析を行ったとき、擬スピネル型の結晶構成が50wt%以上であることが好ましく、60wt%以上であることがより好ましく、66wt%以上であることがさらに好ましい。擬スピネル型の結晶構成が50wt%以上、より好ましくは60wt%以上、さらに好ましくは66wt%以上あれば、十分にサイクル特性に優れた正極活物質とすることができる。
【0349】
元素Xの原子数は、元素Mの原子数の0.001倍以上0.1倍以下が好ましく、0.01より大きく0.04未満がより好ましく、0.02程度がさらに好ましい。ここで示す元素Xの濃度は例えば、ICP-MS等を用いて正極活物質の粒子全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質の作製の過程における原料の配合の値に基づいてもよい。
【0350】
元素Mとしてコバルトおよびニッケルを有する場合には、コバルトとニッケルの原子数の和(Co+Ni)に占める、ニッケルの原子数(Ni)の割合Ni/(Co+Ni)が、0.1未満であることが好ましく、0.075以下であることがより好ましい。
【0351】
本発明の一態様に係る正極活物質は、上記に挙げた材料に限られない。
【0352】
正極活物質として例えば、スピネル型結晶構成を有する複合酸化物等を用いることができる。また、正極活物質として例えば、ポリアニオン系の材料を用いることができる。ポリアニオン系の材料として例えば、オリビン型の結晶構成を有する材料、ナシコン型の材料、等が挙げられる。また、正極活物質として例えば、硫黄を有する材料を用いることができる。
【0353】
スピネル型の結晶構成を有する材料として例えば、LiM2O4で表される複合酸化物を用いることができる。元素MとしてMnを有することが好ましい。例えば、LiMn2O4を用いることができる。また元素Mとして、Mnに加えてNiを有することにより、二次電池の放電電圧が向上し、エネルギー密度が向上する場合があり、好ましい。また、LiMn2O4等のマンガンを含むスピネル型の結晶構成を有するリチウム含有材料に、少量のニッケル酸リチウム(LiNiO2やLiNi1-xMxO2(M=Co、Al等))を混合することにより、二次電池の特性を向上させることができ好ましい。
【0354】
ポリアニオン系の材料として例えば、酸素と、元素Xと、金属Aと、金属Mと、を有する複合酸化物を用いることができる。金属MはFe、Mn、Co、Ni、Ti、V、Nbの一以上であり、金属AはLi、Na、Mgの一以上であり、元素XはS、P、Mo、W、As、Siの一以上である。
【0355】
オリビン型の結晶構成を有する材料として例えば、複合材料(一般式LiMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上))を用いることができる。一般式LiMPO4の代表例としては、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等のリチウム化合物を用いることができる。
【0356】
また、一般式Li(2-j)MSiO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等の複合材料を用いることができる。一般式Li(2-j)MSiO4の代表例としては、Li(2-j)FeSiO4、Li(2-j)NiSiO4、Li(2-j)CoSiO4、Li(2-j)MnSiO4、Li(2-j)FekNilSiO4、Li(2-j)FekColSiO4、Li(2-j)FekMnlSiO4、Li(2-j)NikColSiO4、Li(2-j)NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(2-j)FemNinCoqSiO4、Li(2-j)FemNinMnqSiO4、Li(2-j)NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、Li(2-j)FerNisCotMnuSiO4(r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等のリチウム化合物を材料として用いることができる。
【0357】
また、AxM2(XO4)3(A=Li、Na、Mg、M=Fe、Mn、Ti、V、Nb、X=S、P、Mo、W、As、Si)の一般式で表されるナシコン型化合物を用いることができる。ナシコン型化合物としては、Fe2(MnO4)3、Fe2(SO4)3、Li3Fe2(PO4)3等がある。また、正極活物質として、Li2MPO4F、Li2MP2O7、Li5MO4(M=Fe、Mn)の一般式で表される化合物を用いることができる。
【0358】
また、正極活物質として、NaFeF3、FeF3等のペロブスカイト型フッ化物、TiS2、MoS2等の金属カルコゲナイド(硫化物、セレン化物、テルル化物)、LiMVO4等の逆スピネル型の結晶構成を有する酸化物、バナジウム酸化物系(V2O5、V6O13、LiV3O8等)、マンガン酸化物、有機硫黄化合物等の材料を用いることができる。
【0359】
また、正極活物質として、一般式LiMBO3(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II))で表されるホウ酸塩系材料を用いることができる。
【0360】
ナトリウムを有する材料として例えば、NaFeO2や、Na2/3[Fe1/2Mn1/2]O2、Na2/3[Ni1/3Mn2/3]O2、Na2Fe2(SO4)3、Na3V2(PO4)3、Na2FePO4F、NaVPO4F、NaMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II))、Na2FePO4F、Na4Co3(PO4)2P2O7、などのナトリウム含有酸化物を正極活物質として用いることができる。
【0361】
また、正極活物質として、リチウム含有金属硫化物を用いることができる。例えば、Li2TiS3、Li3NbS4などが挙げられる。
【0362】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0363】
(実施の形態7)
本実施の形態では、二次電池に用いることのできる材料および構成の一例について説明する。
【0364】
本発明の一態様に係る二次電池は、正極、負極および電解質を有する。本発明の一態様に係る二次電池は例えば、電解質を有する電解液と、正極と負極に挟まれるセパレータと、を有する。あるいは、本発明の一態様に係る二次電池は例えば、正極と負極に挟まれる固体電解質を有する。正極、負極および電解質は、外装体より包まれることが好ましい。
【0365】
[正極]
正極は、正極活物質層を有する。正極活物質層は少なくとも正極活物質を有し、正極活物質に加えて、活物質表面の被膜、導電助剤またはバインダなどの他の物質を含んでもよい。正極が集電体を有し、正極活物質層が該集電体上に形成されてもよい。
【0366】
導電助剤としては、炭素材料、金属材料、又は導電性セラミックス材料等を用いることができる。また、導電助剤として繊維状の材料を用いてもよい。活物質層の総量に対する導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
【0367】
導電助剤としては、例えば天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素繊維などを用いることができる。炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。また、導電助剤として、例えばカーボンブラック(アセチレンブラック(AB)など)、グラファイト(黒鉛)粒子、グラフェン、フラーレンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
【0368】
また、導電助剤としてグラフェン化合物を用いてもよい。グラフェン化合物として例えば、グラフェン、マルチグラフェン、又はRGOを用いることが特に好ましい。ここで、RGOは例えば、酸化グラフェン(graphene oxide:GO)を還元して得られる化合物を指す。
【0369】
バインダとしてポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート、PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いることが好ましい。
【0370】
またバインダとして、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-スチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。またバインダとしてフッ素ゴムを用いることができる。またバインダとして水溶性の高分子を用いることが好ましい。水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉などを用いることができる。これらの水溶性の高分子を、前述のゴム材料と併用して用いると、さらに好ましい。
【0371】
バインダは上記のうち複数を組み合わせて使用してもよい。
【0372】
集電体としては、ステンレス、金、白金、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性が高い材料を用いることができる。またシリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。またシリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。集電体は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
【0373】
[負極]
負極は、負極活物質層を有する。負極活物質層は導電助剤およびバインダを有していてもよい。負極が集電体を有し、負極活物質層が該集電体上に形成されてもよい。
【0374】
負極活物質層が有することのできる導電助剤およびバインダとして、正極活物質層が有することのできる導電助剤およびバインダと同様の材料を用いることができる。
【0375】
負極集電体として、銅、チタン、等の金属、およびこれらの合金などの材料を用いることができる。なお負極集電体は、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることが好ましい。
【0376】
<負極活物質>
負極活物質としては、例えば合金系材料や炭素系材料等を用いることができる。
【0377】
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。これらの元素を有する化合物を用いてもよい。例えば、SiO、Mg2Si、Mg2Ge、SnO、SnO2、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等がある。
【0378】
本明細書等において、SiOは例えば一酸化シリコンを指す。あるいはSiOは、SiOxと表すこともできる。ここでxは1近傍の値を有することが好ましい。例えばxは、0.2以上1.5以下が好ましく、0.3以上1.2以下がより好ましい。
【0379】
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等を用いればよい。
【0380】
黒鉛としては、人造黒鉛や、天然黒鉛等が挙げられる。人造黒鉛としては例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等が挙げられる。天然黒鉛としては例えば、鱗片状黒鉛、球状化天然黒鉛等が挙げられる。
【0381】
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)、リチウム-黒鉛層間化合物(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いることができる。
【0382】
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムとの合金を作らない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物でも起こる。
【0383】
[電解液]
電解液は、溶媒と電解質を有する。電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
【0384】
また、電解液の溶媒として、難燃性および難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つ又は複数用いることで、二次電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、二次電池の破裂や発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。電解液に用いる有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、および四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオンおよびピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、電解液に用いるアニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、またはパーフルオロアルキルホスフェートアニオン等が挙げられる。
【0385】
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、例えばLiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiAlCl4、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C4F9SO2)(CF3SO2)、LiN(C2F5SO2)2等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
【0386】
また、電解液にビニレンカーボネート、プロパンスルトン(PS)、tert-ブチルベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、またスクシノニトリル、アジポニトリル等のジニトリル化合物などの添加剤を添加してもよい。添加する材料の濃度は、例えば溶媒全体に対して0.1wt%以上5wt%以下とすればよい。
【0387】
また、ポリマーを電解液で膨潤させたポリマーゲル電解質を用いてもよい。ポリマーゲル電解質を用いることで、漏液性等に対する安全性が高まる。また、二次電池の薄型化および軽量化が可能である。ゲル化されるポリマーとして、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド系ゲル、ポリプロピレンオキサイド系ゲル、フッ素系ポリマーのゲル等を用いることができる。またポリマーとして例えばポリエチレンオキシド(PEO)などのポリアルキレンオキシド構造を有するポリマーや、PVDF、およびポリアクリロニトリル等、およびそれらを含む共重合体等を用いることができる。例えばPVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるPVDF-HFPを用いることができる。また、形成されるポリマーは、多孔質形状を有してもよい。
【0388】
また、電解液の代わりに硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質等を用いることができる。またはPEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることができる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
【0389】
硫化物系固体電解質には、チオシリコン系(Li10GeP2S12、Li3.25Ge0.25P0.75S4等)、硫化物ガラス(70Li2S・30P2S5、30Li2S・26B2S3・44LiI、63Li2S・38SiS2・1Li3PO4、57Li2S・38SiS2・5Li4SiO4、50Li2S・50GeS2等)、硫化物結晶化ガラス(Li7P3S11、Li3.25P0.95S4等)が含まれる。硫化物系固体電解質は、高い伝導度を有する材料がある、低い温度で合成可能、また比較的やわらかいため充放電を経ても導電経路が保たれやすい等の利点がある。
【0390】
酸化物系固体電解質には、ペロブスカイト型結晶構造を有する材料(La2/3-xLi3xTiO3等)、NASICON型結晶構造を有する材料(Li1-XAlXTi2-X(PO4)3等)、ガーネット型結晶構造を有する材料(Li7La3Zr2O12等)、LISICON型結晶構造を有する材料(Li14ZnGe4O16等)、LLZO(Li7La3Zr2O12)、酸化物ガラス(Li3PO4-Li4SiO4、50Li4SiO4・50Li3BO3等)、酸化物結晶化ガラス(Li1.07Al0.69Ti1.46(PO4)3、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3等)が含まれる。酸化物系固体電解質は、大気中で安定であるといった利点がある。
【0391】
ハロゲン化物系固体電解質には、LiAlCl4、Li3InBr6、LiF、LiCl、LiBr、LiI等が含まれる。また、これらハロゲン化物系固体電解質を、ポーラスアルミナやポーラスシリカの細孔に充填したコンポジット材料も固体電解質として用いることができる。
【0392】
また、異なる固体電解質を混合して用いてもよい。
【0393】
中でも、NASICON型結晶構造を有するLi1+xAlxTi2-x(PO4)3(0<x<1)(以下、LATP)は、アルミニウムとチタンという、本発明の一態様に係る二次電池300に用いる正極活物質が有してもよい元素を含むため、サイクル特性の向上について相乗効果が期待でき好ましい。また、工程の削減による生産性の向上も期待できる。なお本明細書等において、NASICON型結晶構造とは、M2(XO4)3(M:遷移金属、X:S、P、As、Mo、W等)で表される化合物であり、MO6八面体とXO4四面体が頂点を共有して3次元的に配列した構造を有するものをいう。
【0394】
[セパレータ]
また二次電池は、セパレータを有することが好ましい。セパレータとしては、例えば、紙、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。セパレータはエンベロープ状に加工し、正極または負極のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。
【0395】
セパレータは多層構造であってもよい。例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の有機材料フィルムに、セラミック系材料、フッ素系材料、ポリアミド系材料、またはこれらを混合したもの等をコートすることができる。セラミック系材料としては、例えば酸化アルミニウム粒子、酸化シリコン粒子等を用いることができる。フッ素系材料としては、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。ポリアミド系材料としては、例えばナイロン、アラミド(メタ系アラミド、パラ系アラミド)等を用いることができる。
【0396】
[外装体]
二次電池が有する外装体としては、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。また、フィルム状の外装体を用いることもできる。フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。
【0397】
[二次電池の構成例]
以下に、二次電池の構成の一例として、固体電解質層を用いた二次電池の構成について説明する。
【0398】
図26Aに示す二次電池700において、正極710、固体電解質層720および負極730の組み合わせが積層される。複数の正極710、固体電解質層720および負極730を積層することで、二次電池の電圧を高くすることができる。
図26Aは、正極710、固体電解質層720および負極730の組み合わせを4層積層した場合の概略図である。
【0399】
また本発明の一態様に係る二次電池700は、薄膜型全固体電池であってもよい。薄膜型全固体電池は気相法(真空蒸着法、パルスレーザー堆積法、エアロゾルデポジション法、スパッタ法)を用いて正極、固体電解質、負極、配線電極等を成膜して作製することができる。たとえば
図26Bのように、基板740上に配線電極741および配線電極742を形成した後、配線電極741上に正極710を形成し、正極710上に固体電解質層720を形成し、固体電解質層720および配線電極742上に負極730を形成して二次電池700を作製することができる。基板740としては、セラミックス基板、ガラス基板、プラスチック基板、金属基板などを用いることができる。
【0400】
固体電解質層720が有する固体電解質としては、上述の固体電解質を用いることができる。
【0401】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0402】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置を適用できる電子機器について説明する。
【0403】
本発明の一態様に係る半導体装置は、様々な電子機器に搭載することができる。電子機器の例としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、パチンコ機などの大型ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。また、自動車、二輪車、船舶、および航空機などの移動体も電子機器と言える。本発明の一態様に係る半導体装置は、これらの電子機器に内蔵されるバッテリの充放電制御装置などに用いることができる。
【0404】
電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器がアンテナおよび二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
【0405】
電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)などを有していてもよい。
【0406】
電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。
【0407】
本発明の一態様に係る半導体装置を備えた電子機器の例について、図面を用いて説明を行う。
【0408】
図27Aに、腕時計型の携帯情報端末の一例と、送電装置の一例を示す。携帯情報端末6100は、筐体6101、表示部6102、バンド6103、操作ボタン6105などを備える。送電装置6200は、筐体6201、電源ケーブル6202、送電アンテナ6203、駆動回路6204などを備える。駆動回路6204は、送電制御回路、整合回路、電力放射回路などを有してもよい。また、携帯情報端末6100は、その内部に二次電池および受電装置を備える。受電装置は、送電装置6200から放射された電力を受け取り、二次電池に充電する機能を有する。受電装置は、例えば上記実施の形態に例示した受電装置でもよい。
【0409】
また、
図27Bに示すように、携帯情報端末6100と送電装置6200を重ねておくことで、電力を効率よく携帯情報端末6100に供給することができる。携帯情報端末6100は内蔵されている二次電池が満充電になると、電力放射を停止する信号を送電装置6200に送信する機能を有する。
【0410】
携帯情報端末6100は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの近距離通信手段の他に、LTEなどの第3世代移動通信システムに準拠した通信手段、第4世代移動通信システム(4G)に準拠した通信手段、または第5世代移動通信システム(5G)に準拠した通信手段などの様々な通信手段を備えることができる。
【0411】
図28Aは、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機6300は、筐体6301に組み込まれた表示部6302の他、操作ボタン6303、スピーカ6304、マイク6305などを備えている。
【0412】
また、携帯電話機6300は、表示部6302と重なる領域に指紋センサ6310を備える。指紋センサ6310は有機光センサであってもよい。
図28Aに、指紋FPの一例を示す。指紋は個人によって異なるため、指紋センサ6310で指紋パターンを取得して、個人認証を行うことができる。指紋センサ6310で指紋パターンを取得するための光源として、表示部6302から発せられた光を用いることができる。
【0413】
また、携帯電話機6300は、その内部に二次電池および上記実施の形態に示した受電装置を備える。受電装置は、送電装置6200から放射された電力を受け取り、二次電池に充電する機能を有する。
【0414】
また、
図28Bに示すように、携帯電話機6300と送電装置6200を重ねておくことで、電力を効率よく携帯電話機6300に供給することができる。携帯電話機6300は内蔵されている二次電池が満充電になると、電力放射を停止する信号を送電装置6200に送信する機能を有する。
【0415】
携帯電話機6300は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの近距離通信手段の他に、LTEなどの第3世代移動通信システムに準拠した通信手段、第4世代移動通信システム(4G)に準拠した通信手段、または第5世代移動通信システム(5G)に準拠した通信手段などの様々な通信手段を備えることができる。
【0416】
なお、
図27Aに示す表示部6102、及び
図28Aに示す表示部6302には、発光素子などを用いることができる。発光素子としては、LED(Light Emitting Diode)、OLED(Organic LED)、QLED(Quantum-dot LED)、半導体レーザなどの、自発光性の発光素子が挙げられる。また、表示部6102、及び表示部6302に用いる表示素子としては、透過型の液晶素子、反射型の液晶素子、半透過型の液晶素子などの液晶素子を用いることもできる。また、シャッター方式または光干渉方式のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子や、マイクロカプセル方式、電気泳動方式、エレクトロウェッティング方式、または電子粉流体(登録商標)方式等を適用した表示素子などを用いることもできる。
【0417】
なお、本発明の一態様においては、特に有機EL素子を表示部6102、及び表示部6302に用いると好適である。有機EL素子を用いることで、可撓性基板上に表示部6102、及び表示部6302を設けることが可能となる。携帯情報端末6100、及び携帯電話機6300に可撓性を有する表示部を適用することで、重量を軽く、且つ表示部の破損が軽減された携帯情報端末、及び携帯電話機を提供することができる。
【0418】
図29に示すロボット7100は、照度センサ、マイクロフォン、カメラ、スピーカ、ディスプレイ、各種センサ(赤外線センサ、超音波センサ、加速度センサ、ピエゾセンサ、光センサ、ジャイロセンサなど)、および移動機構などを備える。
【0419】
マイクロフォンは、使用者の音声および環境音などの音響信号を検知する機能を有する。また、スピーカは、音声および警告音などのオーディオ信号を発する機能を有する。ロボット7100は、マイクロフォンを介して入力されたオーディオ信号を解析し、必要なオーディオ信号をスピーカから発することができる。ロボット7100は、マイクロフォン、およびスピーカを用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
【0420】
カメラは、ロボット7100の周囲を撮像する機能を有する。また、ロボット7100は、移動機構を用いて移動する機能を有する。ロボット7100は、カメラを用いて周囲の画像を撮像し、画像を解析して移動する際の障害物の有無などを察知することができる。ロボット7100の二次電池(バッテリ)に本発明の一態様に係る半導体装置を用いることで、充電動作時の過電圧を検知することができる。また、ロボット7100の信頼性および安全性を向上することができる。
【0421】
飛行体7120は、プロペラ、カメラ、およびバッテリなどを有し、自律して飛行する機能を有する。
【0422】
例えば、カメラで撮影した画像データは、電子部品7121に記憶される。電子部品7122は、画像データを解析し、移動する際の障害物の有無などを察知することができる。また、電子部品7122によってバッテリの蓄電容量の変化から、バッテリ残量を推定することができる。飛行体7120のバッテリに本発明の一態様に係る半導体装置を用いることで、充電動作時の過電圧を検知することができる。よって、飛行体7120の信頼性および安全性を向上することができる。
【0423】
掃除ロボット7140は、上面に配置されたディスプレイ、側面に配置された複数のカメラ、ブラシ、操作ボタン、各種センサなどを有する。図示されていないが、掃除ロボット7140には、タイヤ、吸い込み口等が備えられている。掃除ロボット7140は自走し、ゴミを検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。
【0424】
例えば、掃除ロボット7140は、カメラが撮影した画像を解析し、壁、家具または段差などの障害物の有無を判断することができる。また、画像解析により、配線などブラシに絡まりそうな物体を検知した場合は、ブラシの回転を止めることができる。掃除ロボット7140のバッテリに本発明の一態様に係る半導体装置を用いることで、充電動作時の過電圧を検知することができる。よって、掃除ロボット7140の信頼性および安全性を向上することができる。
【0425】
移動体の一例として電気自動車7160を示す。電気自動車7160は、エンジン、タイヤ、ブレーキ、操舵装置、カメラなどを有する。電気自動車7160のバッテリに本発明の一態様に係る半導体装置を用いることで、充電動作時の過電圧を検知することができる。よって、電気自動車7160の信頼性および安全性を向上することができる。
【0426】
なお、上述では、移動体の一例として電気自動車について説明しているが、移動体は電気自動車に限定されない。例えば、移動体としては、電車、モノレール、船、飛行体(ヘリコプター、無人航空機(ドローン)、飛行機、ロケット)なども挙げることができ、これらの移動体のバッテリに本発明の一態様に係る半導体装置を用いることで、充電動作時の過電圧を検知することができる。よって、これらの移動体の信頼性および安全性を向上することができる。
【0427】
本発明の一態様の半導体装置を備えたバッテリは、TV装置7200(テレビジョン受像装置)、スマートフォン7210、PC7220(パーソナルコンピュータ)、PC7230、ゲーム機7240、ゲーム機7260等に組み込むことができる。
【0428】
スマートフォン7210は、携帯情報端末の一例である。スマートフォン7210は、マイクロフォン、カメラ、スピーカ、各種センサ、および表示部を有する。
【0429】
PC7220、PC7230はそれぞれノート型PC、据え置き型PCの例である。PC7230には、キーボード7232、およびモニタ装置7233が無線または有線により接続可能である。ゲーム機7240は携帯型ゲーム機の例である。ゲーム機7260は据え置き型ゲーム機の例である。ゲーム機7260には、無線または有線でコントローラ7262が接続されている。
【0430】
本発明の一態様に係る半導体装置を電子機器に備えることで、消費電力を低減することができる。
【0431】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例0432】
図9に記載の電圧検知回路100TAの回路動作を、回路シミュレータで検証した。回路シミュレータは、SILVACO社のSmartSpiceを用いた。
【0433】
検証条件として、トランジスタM1乃至M6のチャネル長を0.36μm、チャネル幅を0.36μm、しきい値電圧を0.83Vとした。また、容量C1および容量C2の容量値をそれぞれ1pFとした。また、ノードND1乃至ノードND4に生じる寄生容量の容量値を1fFとした。また、端子111に0V、端子114に1.5V、端子115に1Vの電圧が供給されているものとした。
【0434】
また、コンパレータ101は、非反転入力の電圧が反転入力の電圧以下である場合に0Vを出力し、非反転入力の電圧が反転入力の電圧を超えている場合に1Vを出力するものとした。
【0435】
端子112の電圧が3.5Vから4.5Vまで変化した時の、端子G1乃至端子G6、ノードND1乃至ノードND4、端子112、および端子113の電圧変化を回路シミュレータで計算した。計算結果を
図30A乃至
図30D、および
図31A乃至
図31Cに示す。また、計算に用いた端子112の電位変化を
図31Dに示す。
図30A乃至
図30D、および
図31A乃至
図31Dの縦軸は電圧(Voltage)を示し、横軸は時刻(Time)を示している。
【0436】
図30Aは、端子G1、端子G2、端子G4、および端子G5の計算結果である。
図30Bは、端子G3および端子G6の計算結果である。
図30Cは、ノードND1の計算結果である。
図30Dは、ノードND2の計算結果である。
図31Aは、ノードND3の計算結果である。
図31Bは、ノードND4の計算結果である。
図31Cは、端子113の計算結果である。
【0437】
本実施例では、時刻が0秒から20μ秒経過するまで、端子G1、端子G2、端子G4、および端子G5、に10Vを供給し、端子G3および端子G6に0Vを供給した。この期間は、トランジスタM1、トランジスタM2、トランジスタM4、およびトランジスタM5がオン状態になり、トランジスタM3およびトランジスタM6がオフ状態になる。よって、ノードND1は0V、ノードND2は1.5V、ノードND3は0V、ノードND4が1.5Vになる。
【0438】
20μ秒経過後は、端子G1、端子G2、端子G4、および端子G5、に0Vを供給し、端子G3および端子G6に10Vを供給した。よって、20μ秒経過後は、トランジスタM1、トランジスタM2、トランジスタM4、およびトランジスタM5がオフ状態になり、トランジスタM3およびトランジスタM6がオン状態になる。また、20μ秒経過後のノードND1乃至ノードND4の電圧は、端子112の電位変化に応じて変化する。
【0439】
図31Cおよび
図31Dより、端子113の電圧は、端子112の電圧が4V以下の時は0Vであり、端子112の電圧が4Vを超えると1Vに変化することがわかる。回路シミュレータを用いることにより、電圧検知回路100TAが正しく動作することが確認できた。
100:電圧検知回路、101:コンパレータ、111:端子、112:端子、113:端子、114:端子、115:端子、201:端子、202:端子、300:二次電池