(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181189
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】記憶装置
(51)【国際特許分類】
H10B 12/00 20230101AFI20231214BHJP
H10B 41/70 20230101ALI20231214BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231214BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20231214BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20231214BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20231214BHJP
G11C 5/02 20060101ALI20231214BHJP
G11C 5/04 20060101ALI20231214BHJP
G11C 11/405 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H10B12/00 801
H10B41/70
H01L29/78 371
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 H
H01L27/088 331E
H01L29/78 613Z
H01L29/78 618B
G11C5/02 100
G11C5/04 220
G11C11/405
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171998
(22)【出願日】2023-10-03
(62)【分割の表示】P 2020568866の分割
【原出願日】2019-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2019012887
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019013607
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019021404
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019091842
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り [刊行物名] international ELECTRON DEVICES meeting 2018 TECHNICAL DIGEST, 312-315 発行年月日 平成30年12月1日 [集会名] 2018 IEEE International Electron Devices Meeting 開催日 平成30年12月1日-5日
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】長塚 修平
(72)【発明者】
【氏名】大貫 達也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 清
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(57)【要約】
【課題】新規な記憶装置を提供する。
【解決手段】駆動回路層上に、マトリクス状に設けられた複数のメモリセルを含む記憶層をN層(Nは2以上の自然数)積層する。メモリセルは2つのトランジスタと1つの容量を有する。トランジスタを構成する半導体に酸化物半導体を用いる。メモリセルは、書き込みワード線、選択線、容量線、書き込みビット線、および読み出しビット線と電気的に接続される。書き込みビット線および読み出しビット線を積層方向に延在させることで、メモリセルと駆動回路層間の信号伝搬距離を短くする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動回路層と、
N層(Nは2以上の自然数)の記憶層と、
M層(Mは2以上の自然数)の機能層と、を有し、
前記N層の記憶層は、前記駆動回路層上に積層され、
t-1個目(tは1以上M以下の自然数)の機能層とt個目の機能層と、の間に複数の前記記憶層を有する記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一形態は、記憶装置、半導体装置またはこれらを用いた電子機器に関する。
【0002】
ただし、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されるものではない。本明細書等で開示する発明の一態様は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本明細書等で開示する発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。
【0003】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。トランジスタ、半導体回路は半導体装置の一態様である。また、表示装置(液晶表示装置、発光表示装置など)、投影装置、照明装置、電気光学装置、蓄電装置、記憶装置、半導体回路、撮像装置および電子機器などは、半導体装置と言える場合がある。もしくは、これらは半導体装置を有すると言える場合がある。
【背景技術】
【0004】
近年、扱われるデータ量の増大に伴って、より大きな記憶容量を有する半導体装置が求められている。単位面積あたりの記憶容量を増加させるためには、メモリセルを積層して形成することが有効である(特許文献1、特許文献2参照)。メモリセルを積層して設けることにより、単位面積当たりの記憶容量をメモリセルの積層数に応じて増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開2011/0065270A1公報
【特許文献2】米国特許第9634097B2公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、および特許文献2においては、記憶素子(メモリセルともいう)が複数積層しており、これらが直列に接続することで、三次元構造のメモリセルアレイ(メモリストリングともいう)を構成している。一方、このような、三次元構造のメモリセルアレイでは、記憶素子の積層数が多くなるほど、メモリセル間の直列抵抗が高くなり、メモリセルアレイの抵抗が高くなる。メモリセルアレイの抵抗が高くなることで、メモリセルアレイを流れる電流のロスや、メモリセルアレイが発熱するといった問題があった。
【0007】
また、特許文献1においては、柱状に設けられた半導体パターンが、電荷蓄積層を有する絶縁体と接している。また、特許文献2においては、柱状に設けられた半導体パターンが、トンネル誘電体として機能する絶縁体と接している。半導体と、絶縁体が接する場合、これらの界面には、トラップセンターが形成される場合がある。半導体と、絶縁体との界面に形成されたトラップセンターは、電子を捕獲し、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向に変動させるため、トランジスタのオン状態における電流駆動力、つまりオン電流、および電界効果移動度や、信頼性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0008】
本発明の一態様は、集積度の高い記憶装置を提供することを課題の一とする。または、信頼性の高い記憶装置を提供することを課題の一とする。または、消費電力の少ない記憶装置を提供することを課題の一とする。または、新規な記憶装置を提供することを課題の一とする。または、新規な半導体装置を提供することを課題の一とする。
【0009】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
駆動回路層上に、マトリクス状に設けられた複数のメモリセルを含む記憶層をN層(Nは2以上の自然数)積層する。メモリセルは2つのトランジスタと1つの容量を有する。トランジスタを構成する半導体に酸化物半導体を用いる。メモリセルは、書き込みワード線、選択線、容量線、書き込みビット線、および読み出しビット線と電気的に接続される。書き込みビット線および読み出しビット線を積層方向に延在させることで、メモリセルと駆動回路層間の信号伝搬距離を短くする。
【0011】
本発明の一態様は、N層(Nは2以上の自然数)の記憶層と、駆動回路層と、複数の第1配線と、複数の第2配線と、を有し、N層の記憶層は駆動回路層上に積層され、駆動回路層は複数の第1回路を有し、複数の第1配線は、N層の記憶層の積層方向に延在し、かつ、P行R列(PおよびRは1以上の自然数)のマトリクス状に設けられ、複数の第2配線は、積層方向に延在し、かつ、P行Q列(PおよびQは2以上の自然数)のマトリクス状に設けられ、N層の記憶層のそれぞれは、P行Q列のマトリクス状に設けられた複数のメモリセルと、Q列の第3配線と、Q列の第4配線と、Q列の第5配線と、を有し、k層目の記憶層において、i行2×s-1列目のメモリセルとi行2×s列目のメモリセルは、i行s列目の第1配線と電気的に接続され、i行2×s-1列目のメモリセルは、i行2×s-1列目の第2配線、2×s-1列目の第3配線、2×s-1列目の第4配線、および2×s-1列目の第5配線と電気的に接続され、第1配線と第2配線は、複数の第1回路のいずれか一と電気的に接続される記憶装置である。
【0012】
また、本発明の別の一態様は、上記記憶装置において、i行2×s-1列目のメモリセルは、第1トランジスタと、第2トランジスタと、容量と、を有し、第1トランジスタのソースまたはドレインの一方は、第2トランジスタのゲートおよび容量の一方の電極と電気的に接続され、第1トランジスタのソースまたはドレインの他方は、第1配線と電気的に接続され、第1トランジスタのゲートは、第3配線と電気的に接続され、第1トランジスタのソースまたはドレインの一方は、第4配線と電気的に接続され、第1トランジスタのソースまたはドレインの他方は、第2配線と電気的に接続され、容量の他方の電極は第5配線と電気的に接続されている記憶装置である。
【0013】
また、上記構成において、駆動回路層と、複数のメモリセルと、の間に、さらに機能層を有すると好ましい。機能層は複数の第2回路を有し、第1配線と第2配線は、複数の第2回路のいずれか一を介して第1回路と電気的に接続してもよい。
【0014】
第1トランジスタおよび第2トランジスタの少なくとも一方は、半導体に酸化物を含むことが好ましい。また、当該酸化物は、InおよびZnのうち、いずれか一方または双方を含むことが好ましい。または、当該酸化物は、In、Ga、およびZnを含むことが好ましい。
【0015】
また、前述の回路は複数のトランジスタを有し、複数のトランジスタは半導体にシリコンを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、集積度の高い記憶装置を提供することができる。または、信頼性の高い記憶装置を提供することができる。または、消費電力の少ない記憶装置を提供することができる。または、新規な記憶装置を提供することができる。または、新規な半導体装置を提供することができる。
【0017】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(A)および
図1(B)は、記憶装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、駆動回路層の構成例を説明する図である。
【
図3】
図3は、記憶層の構成例を説明する図である。
【
図4】
図4は、記憶層の一部と駆動回路層の一部を示す図である。
【
図6】
図6は、ビット線、メモリセル、およびRW回路の接続例を示す図である。
【
図7】
図7(A)および
図7(B)は、メモリセルの構成例を示す図である。
【
図8】
図8(A)および
図8(B)は、メモリセルの構成例を示す図である。
【
図9】
図9(A)および
図9(B)は、マルチゲートトランジスタを示す図である。
【
図10】
図10は、メモリセルの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図13】
図13は、読み書き回路の構成例を説明する図である。
【
図16】
図16は、記憶層の一部と駆動回路層の一部を示す図である。
【
図17】
図17は、ビット線とRW回路の接続例を示す図である。
【
図19】
図19は、記憶層の一部、機能層の一部、および駆動回路層の一部を示す図である。
【
図20】
図20は、ビット線、選択回路、およびRW回路の接続例を示す図である。
【
図22】
図22(A)および
図22(B)は、本発明の一態様に係る記憶装置の上面図および断面図である。
【
図23】
図23(A)および
図23(B)は、本発明の一態様に係る記憶装置の上面図および断面図である。
【
図24】
図24は、本発明の一態様に係る記憶装置の上面図である。
【
図25】
図25は、本発明の一態様に係る記憶装置の断面図である。
【
図26】
図26は、本発明の一態様に係る記憶装置の断面図である。
【
図27】
図27は、本発明の一態様に係る記憶装置の断面図である。
【
図28】
図28(A)は、IGZOの結晶構造の分類を説明する図である。
図28(B)は、石英ガラスのXRDスペクトルを説明する図である。
図28(C)は、結晶性IGZOのXRDスペクトルを説明する図である。
【
図31】
図31は、各種の記憶装置を階層ごとに示す図である。
【
図33】
図33は、IoTネットワークの階層構造と要求仕様の傾向を示す図である。
【
図34】
図34は、ファクトリーオートメーションのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
また、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、発明の理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理によりレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、理解を容易とするために図に反映しないことがある。
【0021】
また、上面図(「平面図」ともいう)や斜視図などにおいて、図面をわかりやすくするために、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。
【0022】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0023】
また、本明細書等において、電気回路における「端子」とは、電流の入力または出力、電圧の入力または出力、および/または、信号の受信または送信が行なわれる部位を言う。よって、配線または電極の一部が端子として機能する場合がある。
【0024】
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が直上または直下で、かつ、直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層A上の電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが直接接して形成されている必要はなく、絶縁層Aと電極Bとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0025】
また、ソースおよびドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合など、動作条件などによって互いに入れ替わるため、いずれがソースまたはドレインであるかを限定することが困難である。このため、本明細書においては、ソースおよびドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0026】
本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。
【0027】
ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0028】
XとYとが直接的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)を介さずに、XとYとが、接続されている場合である。
【0029】
XとYとが電気的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、スイッチは、導通状態(オン状態)、または、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有している。または、スイッチは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有している。なお、XとYとが電気的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合を含むものとする。
【0030】
また、本明細書などにおいて、「平行」とは、例えば、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」および「直交」とは、例えば、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0031】
なお、本明細書などにおいて、計数値および計量値に関して「同一」、「同じ」、「等しい」または「均一」などと言う場合は、明示されている場合を除き、プラスマイナス20%の誤差を含むものとする。
【0032】
また、電圧は、ある電位と、基準の電位(例えば接地電位またはソース電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧と電位は互いに言い換えることが可能な場合が多い。本明細書などでは、特段の明示が無いかぎり、電圧と電位を言い換えることができるものとする。
【0033】
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」としての特性を有する。よって、「半導体」を「絶縁体」に置き換えて用いることも可能である。この場合、「半導体」と「絶縁体」の境界は曖昧であり、両者の厳密な区別は難しい。したがって、本明細書に記載の「半導体」と「絶縁体」は、互いに読み換えることができる場合がある。
【0034】
また、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分高い場合は「導電体」としての特性を有する。よって、「半導体」を「導電体」に置き換えて用いることも可能である。この場合、「半導体」と「導電体」の境界は曖昧であり、両者の厳密な区別は難しい。したがって、本明細書に記載の「半導体」と「導電体」は、互いに読み換えることができる場合がある。
【0035】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、工程順または積層順など、なんらかの順番や順位を示すものではない。また、本明細書等において序数詞が付されていない用語であっても、構成要素の混同を避けるため、特許請求の範囲において序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲において異なる序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲などにおいて序数詞を省略する場合がある。
【0036】
なお、本明細書等において、トランジスタの「オン状態」(「オン」と略す場合もある。)とは、トランジスタのソースとドレインが電気的に短絡しているとみなせる状態(「導通状態」ともいう。)をいう。または、「オン状態」とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧(「ゲート電圧」または「Vg」ともいう。)がしきい値電圧(「Vth」ともいう。)以上の状態、pチャネル型トランジスタでは、VgがVth以下の状態をいう。
【0037】
また、トランジスタの「オフ状態」(「オフ」と略す場合もある。)とは、トランジスタのソースとドレインが電気的に遮断しているとみなせる状態(「非導通状態」ともいう。)をいう。または、「オフ状態」とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、VgがVthよりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、VgがVthよりも高い状態をいう。
【0038】
また、本明細書等において、「オン電流」とは、トランジスタがオン状態の時にソースとドレイン間に流れる電流をいう場合がある。また、「オフ電流」とは、トランジスタがオフ状態である時にソースとドレイン間に流れる電流をいう場合がある。
【0039】
また、本明細書等において、高電源電位VDD(以下、単に「VDD」または「H電位」ともいう)とは、低電源電位VSSよりも高い電位の電源電位を示す。また、低電源電位VSS(以下、単に「VSS」または「L電位」ともいう)とは、高電源電位VDDよりも低い電位の電源電位を示す。また、接地電位をVDDまたはVSSとして用いることもできる。例えばVDDが接地電位の場合には、VSSは接地電位より低い電位であり、VSSが接地電位の場合には、VDDは接地電位より高い電位である。
【0040】
また、本明細書等において、ゲートとは、ゲート電極およびゲート配線の一部または全部のことをいう。ゲート配線とは、少なくとも一つのトランジスタのゲート電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0041】
また、本明細書等において、ソースとは、ソース領域、ソース電極、およびソース配線の一部または全部のことをいう。ソース領域とは、半導体層のうち、抵抗率が一定値以下の領域のことをいう。ソース電極とは、ソース領域に接続される部分の導電層のことをいう。ソース配線とは、少なくとも一つのトランジスタのソース電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0042】
また、本明細書等において、ドレインとは、ドレイン領域、ドレイン電極、およびドレイン配線の一部または全部のことをいう。ドレイン領域とは、半導体層のうち、抵抗率が一定値以下の領域のことをいう。ドレイン電極とは、ドレイン領域に接続される部分の導電層のことをいう。ドレイン配線とは、少なくとも一つのトランジスタのドレイン電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0043】
(実施の形態1)
本発明の一態様の記憶装置について、図面を用いて説明する。なお、図面にX方向、Y方向、およびZ方向を示す矢印を付す場合がある。X方向、Y方向、およびZ方向は、それぞれが互いに直交または交差する方向である。
【0044】
図1(A)および(B)に、本発明の一態様の記憶装置100の斜視図を示す。記憶装置100は、駆動回路層110と、N層(Nは2以上の自然数)の記憶層120を有する。駆動回路層110は、RWアレイ127などの回路を複数有する。また、記憶層120は、各層が複数のメモリセル10を有する。なお、
図1(B)では記憶層120を破線で示している。
【0045】
N層の記憶層120は駆動回路層110上に設けられる。N層の記憶層120を駆動回路層110上に設けることで、記憶装置100の占有面積を低減することができる。また、単位面積当たりの記憶容量を高めることができる。
【0046】
図1(A)では、1層目の記憶層120を記憶層120_1と示し、2層目の記憶層120を記憶層120_2と示し、3層目の記憶層120を記憶層120_3と示している。同様に、k層目(kは1以上の自然数)の記憶層120を記憶層120_kと示し、N層目の記憶層120を記憶層120_Nと示している。なお、本明細書などにおいて、N層の記憶層120全体に係る事柄を説明する場合や、N層ある記憶層120の各層に共通の事柄を示す場合に、単に「記憶層120」と表記する場合がある。
【0047】
<駆動回路層110の構成例>
駆動回路層110の構成例について説明する。
図2は駆動回路層110の構成例を説明するブロック図である。駆動回路層110は、PSW141(パワースイッチ)、PSW142、周辺回路115、およびRWアレイ127を有する。周辺回路115は、周辺回路111、コントロール回路112、および電圧生成回路128を有する。
【0048】
駆動回路層110において、各回路、各信号および各電圧は、必要に応じて、適宜取捨することができる。あるいは、他の回路または他の信号を追加してもよい。信号BW、CE、GW、CLK、WAKE、ADDR、WDA、PON1、PON2は外部からの入力信号であり、信号RDAは外部への出力信号である。信号CLKはクロック信号である。
【0049】
また、信号BW、CE、および信号GWは制御信号である。信号CEはチップイネーブル信号であり、信号GWはグローバル書き込みイネーブル信号であり、信号BWはバイト書き込みイネーブル信号である。信号ADDRはアドレス信号である。信号WDAは書き込みデータ信号であり、信号RDAは読み出しデータ信号である。信号PON1、PON2は、パワーゲーティング制御用信号である。なお、信号PON1、PON2は、コントロール回路112で生成してもよい。
【0050】
コントロール回路112は、駆動回路層110の動作全般を制御する機能を有するロジック回路である。例えば、コントロール回路は、信号CE、信号GWおよび信号BWを論理演算して、記憶装置100の動作モード(例えば、書き込み動作、読み出し動作)を決定する。または、コントロール回路112は、この動作モードが実行されるように、周辺回路111の制御信号を生成する。
【0051】
電圧生成回路128は負電圧(VBG)を生成する機能を有する。WAKEは、CLKの電圧生成回路128への入力を制御する機能を有する。例えば、WAKEにHレベルの信号が与えられると、信号CLKが電圧生成回路128へ入力され、電圧生成回路128はVBGを生成する。
【0052】
周辺回路111は、メモリセル10に対するデータの書き込みおよび読み出しをするための回路である。周辺回路111は、行デコーダ121、列デコーダ122、行ドライバ123、列ドライバ124、入力回路125、出力回路126、RWアレイ127を有する。
【0053】
行デコーダ121および列デコーダ122は、信号ADDRをデコードする機能を有する。行デコーダ121は、記憶層120の層ごとにアクセスする行を指定するための回路であり、列デコーダ122は、記憶層120の層ごとにアクセスする列を指定するための回路である。行ドライバ123は、記憶層120の層ごとに行デコーダ121が指定する行のメモリセル10に接続されたワード線を選択する機能を有する。列ドライバ124は、後述するRW回路129を介してデータを記憶層120のメモリセル10に書き込む機能、記憶層120のメモリセル10からRW回路129を介してデータを読み出す機能、読み出したデータを保持する機能等を有する。
【0054】
入力回路125は、信号WDAを保持する機能を有する。入力回路125が保持するデータは、列ドライバ124に出力される。入力回路125の出力データが、記憶層120に書き込むデータ(Din)である。列ドライバ124が記憶層120から読み出したデータ(Dout)は、出力回路126に出力される。出力回路126は、Doutを保持する機能を有する。また、出力回路126は、Doutを記憶装置100の外部に出力する機能を有する。出力回路126から出力されるデータ信号が信号RDAである。
【0055】
PSW141は周辺回路115へのVDDの供給を制御する機能を有する。PSW142は、行ドライバ123へのVHMの供給を制御する機能を有する。ここでは、記憶装置100の高電源電圧がVDDであり、低電源電圧はGND(接地電位)である。また、VHMは、記憶層120で使用される高電源電圧であり、VDDよりも高い場合がある。信号PON1によってPSW141のオン・オフが制御され、信号PON2によってPSW142のオン・オフが制御される。
図2では、周辺回路115において、VDDが供給される電源ドメインの数を1としているが、複数にすることもできる。この場合、各電源ドメインに対してパワースイッチを設ければよい。
【0056】
RWアレイ127は、P行R列(PおよびRは2以上の自然数)のマトリクス状に設けられた複数の読み書き回路(RW回路129)を有する。
図2などでは、1行1列目に設けられたRW回路129をRW回路129[1,1]と示している。また、i行s列目(iは1以上P以下の自然数、sは1以上R以下の自然数)に設けられたRW回路129をRW回路129[i,s]と示している。また、P行R列目に設けられたRW回路129をRW回路129[P,R]と示している。
【0057】
なお、本明細書などにおいて、RW回路129全体に係る事柄を説明する場合や、個々のRW回路129に共通の事柄を示す場合は、単に「RW回路129」と表記する場合がある。
【0058】
RW回路129は、後述するビット線と電気的に接続され、記憶層120のメモリセル10にデータを書き込む機能と、メモリセル10が保持しているデータを読み出す機能を有する。
【0059】
<記憶層120の構成例>
N層ある記憶層120の構成例について説明する。それぞれの記憶層120は、P行Q列(Qは2以上の自然数)のマトリクス状に設けられた複数のメモリセル10を有する。
図3は、k層目の記憶層120(記憶層120_k)をZ方向から見たブロック図である。本明細書などにおいて、X方向は行方向に相当し、Y方向は列方向に相当し、Z方向は記憶層120の積層方向に相当する。
【0060】
図3などでは、k層目の記憶層120の1行1列目に設けられたメモリセル10をメモリセル10[1,1]_kと示している。また、k層目の記憶層120のi行j列目(jは1以上Q以下の自然数)に設けられたメモリセル10をメモリセル10[i,j]_kと示している。また、k層目の記憶層120のP行Q列目に設けられたメモリセル10をメモリセル10[P,Q]_kと示している。
【0061】
なお、本明細書などにおいて、メモリセル10全体に係る事柄を説明する場合や、個々のメモリセル10に共通の事柄を示す場合は、単に「メモリセル10」と表記する場合がある。
【0062】
また、記憶層120の各層は、Q本のワード線WWLと、Q本の容量線CLと、Q本の選択線SLと、を有する。Q本のワード線WWL、Q本の容量線CL、およびQ本の選択線SLは、列方向(Y方向)に延在する領域を有する。
【0063】
図3などでは、k層目の記憶層120に設けられた1列目のワード線WWLをワード線WWL[1]_kと示している。また、k層目の記憶層120に設けられたj列目のワード線WWLをワード線WWL[j]_kと示している。また、k層目の記憶層120に設けられたQ列目のワード線WWLをワード線WWL[Q]_kと示している。容量線CLおよび選択線SLもワード線WWLと同様に示す。
【0064】
なお、本明細書などにおいて、ワード線WWL全体に係る事柄を説明する場合や、個々のワード線WWLに共通の事柄を示す場合は、単に「ワード線WWL」と表記する場合がある。ワード線WWLに限らず、他の配線および電極などについても同様に表記する場合がある。
【0065】
記憶層120_kにおいて、j列目に設けられたワード線WWL、j列目に設けられた容量線CL、およびj列目に設けられた選択線SLは、j列目に設けられたメモリセル10と電気的に接続される。
【0066】
なお、通常、容量線CLは固定電位が供給される。容量線CLに固定電位が供給される場合は、容量線CLは列方向に延在していなくてもよい。例えば、容量線CLが行方向に延在していてもよい。また、任意の複数の容量線CLを互いに電気的に接続してもよい。
【0067】
また、記憶装置100は、Z方向に延在し、かつP行R列のマトリクス状に設けられたビット線WBLと、Z方向に延在し、かつ、P行Q列のマトリクス状に設けられたビット線RBLと、を有する(
図3および
図4参照。)。
【0068】
列の位置を示すRとQの関係は、Qが奇数の場合は、数式1または数式2で表すことができる。
【0069】
R=(Q+1)/2 ・・・ (数式1)
【0070】
Q=2×R-1 ・・・ (数式2)
【0071】
列の位置を示すRとQの関係は、Qが偶数の場合は、数式3または数式4で表すことができる。
【0072】
R=Q/2 ・・・ (数式3)
【0073】
Q=2×R ・・・ (数式4)
【0074】
ビット線WBLは、記憶層120_kと重なる領域を有する。ビット線RBLは、記憶層120_kと重なる領域を有する。
【0075】
図3などでは、i行s列目に設けられたビット線WBLをビット線WBL[i,s]と示している。また、
図3などでは、i行j列目に設けられたビット線WRBLをビット線RBL[i,j]と示している。
【0076】
記憶層120_kにおいて、1つのビット線WBLは2つのメモリセル10と電気的に接続される。具体的には、ビット線WBL[i,s]は、メモリセル10[i,2×s-1]_kおよびメモリセル10[i,2×s]_kと電気的に接続される。
図3などでは、jが2×s-1である場合を示している。
【0077】
また、記憶層120_kにおいて、ビット線RBL[i,j]はメモリセル10[i,j]_kと電気的に接続される。
【0078】
図4は、N層ある記憶層120の一部と、駆動回路層110の一部を示す斜視図である。
図5は、N層ある記憶層120の一部を示す斜視図である。
図5では、記憶層120_kの一部と記憶層120_k-1の一部の構成例を示している。また、
図6は、ビット線WBL、ビット線RBL、メモリセル10、およびRW回路129の接続例を示す図である。
【0079】
ビット線WBL[i,s]、ビット線RBL[i,j]およびビット線RBL[i,j+1]は、RW回路129[i,s]と電気的に接続される(
図4および
図6参照。)。
図4および
図6などでは、jが2×s-1であり、j+1が2×sである場合を示している。
【0080】
列の位置を示すsとjは、jが奇数の場合は、数式5または数式6で表すことができる。
【0081】
s=(j+1)/2 ・・・ (数式5)
【0082】
j=2×s-1 ・・・ (数式6)
【0083】
列の位置を示すsとjは、jが偶数の場合は、数式7または数式8で表すことができる。
【0084】
s=j/2 ・・・ (数式7)
【0085】
j=2×s ・・・ (数式8)
【0086】
<メモリセル10の構成例>
次に、メモリセル10の構成例を説明する。メモリセル10は、トランジスタ11A、トランジスタ11B、および容量12を有する(
図7(A)参照。)。トランジスタ11Aのソースまたはドレインの一方はノードFNと電気的に接続され、他方はビット線WBLと電気的に接続され、ゲートはワード線WWLと電気的に接続される。トランジスタ11Bのソースまたはドレインの一方は選択線SLと電気的に接続され、他方はビット線RBLと電気的に接続され、ゲートはノードFNと電気的に接続される。
【0087】
容量12はノードFNと容量線CLの間に設けられる。具体的には、容量12の一方の電極はノードFNと電気的に接続され、他方の電極は容量線CLと電気的に接続される。
【0088】
トランジスタ11Aおよびトランジスタ11Bは、チャネルが形成される半導体層に金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いたトランジスタ(「OSトランジスタ」ともいう。)を用いることが好ましい。
【0089】
OSトランジスタはオフ電流を極めて少なくすることができる。具体的には、チャネル幅1μm当たりのオフ電流を室温下において1×10-20A未満、好ましくは1×10-22A未満、さらに好ましくは1×10-24A未満とすることができる。
【0090】
また、OSトランジスタは高温環境下でもオフ電流がほとんど増加しない。具体的には室温以上200℃以下の環境温度下でもオフ電流がほとんど増加しない。半導体装置を構成するトランジスタにOSトランジスタを用いることで、高温環境下においても動作が安定し、信頼性の良好な記憶装置を実現できる。
【0091】
トランジスタ11AにOSトランジスタを用いることによって、容量12を小さくすることができる。または、容量12を設けずに、トランジスタなどの寄生容量を容量12に代えて用いることができる。その結果、記憶装置の占有面積を小さくすることができる。なお、メモリセルを構成するトランジスタにOSトランジスタを用いた記憶素子を「OSメモリ」と呼ぶ場合がある。
【0092】
酸化物半導体は、スパッタリング法などを用いて形成できるため、OSトランジスタの作製は、既存の生産設備の一部を改良して行うことが可能である。よって、設備投資を抑えられる。また、OSトランジスタの作製工程では、チャネルが形成される半導体層にシリコンを用いるトランジスタ(Siトランジスタともいう)で行われる不純物導入工程などが不要である。記憶層120を構成するトランジスタにOSトランジスタを用いることで、記憶層120の多層化の実現を容易とすることができる。
【0093】
また、トランジスタ11Aおよびトランジスタ11Bの少なくとも一方に、バックゲートを有するトランジスタを用いてもよい。
図7(B)では、トランジスタ11Aおよびトランジスタ11Bの双方にバックゲートを有するトランジスタを用いる例を示している。また、
図7(B)では、トランジスタ11Aおよびトランジスタ11Bそれぞれにおいて、ゲートとバックゲートを電気的に接続する例を示している。
【0094】
バックゲートは、ゲートとバックゲートで半導体層のチャネル形成領域を挟むように配置される。バックゲートはゲートと同様に機能させることができる。また、バックゲートの電位を変化させることで、トランジスタのしきい値電圧を変化させることができる。
【0095】
ゲートとバックゲートは、導電層または抵抗率が小さい半導体層などで形成されるため、トランジスタの外部で生じる電場が、チャネルが形成される半導体層に作用しないようにする機能(特に静電気に対する静電遮蔽機能)を有する。すなわち、静電気などの外部の電場の影響によりトランジスタの電気的な特性が変動することを防止することができる。また、バックゲートを設けることで、BT試験前後におけるトランジスタのしきい値電圧の変化量を低減することができる。
【0096】
また、
図8(A)に示すように、トランジスタ11Aのバックゲートを配線BGL1と電気的に接続し、トランジスタ11Bのバックゲートを配線BGL2と電気的に接続してもよい。バックゲートの電位は、ゲートと同電位としてもよく、接地電位(GND電位)や、任意の電位としてもよい。
【0097】
また、
図8(B)に示すように、トランジスタ11Aのバックゲートと、トランジスタ11Bのバックゲートを配線BGLと電気的に接続してもよい。
【0098】
また、トランジスタ11Aおよびトランジスタ11Bのそれぞれは、ダブルゲート型のトランジスタであってもよい。
図9(A)に、ダブルゲート型のトランジスタ21の回路記号例を示す。
【0099】
トランジスタ21は、トランジスタTr1とトランジスタTr2を直列に接続した構成を有する。
図9(A)では、トランジスタTr1のソースまたはドレインの一方が端子Sと電気的に接続され、トランジスタTr1のソースまたはドレインの他方がトランジスタTr2のソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、トランジスタTr2のソースまたはドレインの他方が端子Dと電気的に接続されている状態を示している。また、
図9(A)では、トランジスタTr1とトランジスタTr2のゲートが電気的に接続され、かつ、端子Gと電気的に接続されている状態を示している。
【0100】
図9(A)に示すトランジスタ21は、端子Gの電位を変化させることで端子Sと端子D間を導通状態または非導通状態に切り替える機能を有する。よって、ダブルゲート型のトランジスタであるトランジスタ21は、トランジスタTr1とトランジスタTr2を内在するが、実質的に1つのトランジスタとして機能する。すなわち、
図9(A)において、トランジスタ21のソースまたはドレインの一方は端子Sと電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方は端子Dと電気的に接続され、ゲートは端子Gと電気的に接続されていると言える。
【0101】
また、トランジスタ11Aおよびトランジスタ11Bのそれぞれは、トリプルゲート型のトランジスタであってもよい。
図9(B)に、トリプルゲート型のトランジスタ22の回路記号例を示す。
【0102】
トランジスタ22は、トランジスタTr1、トランジスタTr2、およびトランジスタTr3を直列に接続した構成を有する。
図9(B)では、トランジスタTr1のソースまたはドレインの一方が端子Sと電気的に接続され、トランジスタTr1のソースまたはドレインの他方がトランジスタTr2のソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、トランジスタTr2のソースまたはドレインの他方がトランジスタTr3のソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、トランジスタTr3のソースまたはドレインの他方が端子Dと電気的に接続されている状態を示している。また、
図9(B)では、トランジスタTr1、トランジスタTr2、およびトランジスタTr3のゲートが電気的に接続され、かつ、端子Gと電気的に接続されている状態を示している。
【0103】
図9(B)に示すトランジスタ22は、端子Gの電位を変化させることで端子Sと端子D間を導通状態または非導通状態に切り替える機能を有する。よって、トリプルゲート型のトランジスタであるトランジスタ22は、トランジスタTr1、トランジスタTr2、およびトランジスタTr3を内在するが、実質的に1つのトランジスタとして機能する。すなわち、
図9(B)において、トランジスタ22のソースまたはドレインの一方は端子Sと電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方は端子Dと電気的に接続され、ゲートは端子Gと電気的に接続されていると言える。
【0104】
トランジスタ21およびトランジスタ22のように、複数のゲートを有し、かつ、複数のゲートが電気的に接続されているトランジスタを「マルチゲート型のトランジスタ」または「マルチゲートトランジスタ」と呼ぶ場合がある。
【0105】
<メモリセル10の動作例>
次に、メモリセル10のデータ書き込み動作例と読み出し動作例について説明する。本実施の形態では、トランジスタ11Aおよびトランジスタ11Bにnチャネル型のトランジスタを用いるものとする。
図10はメモリセル10の動作例を説明するためのタイミングチャートである。
図11(A)、
図11(B)、
図12(A)、および
図12(B)は、メモリセル10の動作例を説明するための回路図である。
【0106】
また、図面などにおいて、配線および電極の電位を示すため、配線および電極に隣接してH電位を示す“H”、またはL電位を示す“L”を付記する場合がある。また、電位変化が生じた配線および電極には、“H”または“L”を囲み文字で付記する場合がある。また、トランジスタがオフ状態である場合、当該トランジスタに重ねて“×”記号を付記する場合がある。
【0107】
はじめに、期間T0において、ワード線WWL、ビット線WBL、およびノードFNがL電位であり、ビット線RBLおよび選択線SLがH電位であるものとする(
図10参照。)。
【0108】
〔データ書き込み動作〕
期間T1において、ワード線WWLおよびビット線WBLにH電位を供給する(
図10および
図11(A)参照。)。すると、トランジスタ11Aがオン状態になり、ノードFNに“1”を示すデータとして、H電位が書き込まれる。より正確には、ノードFNに、ノードFNの電位がH電位になる量の電荷が供給される。
【0109】
トランジスタ11Bのゲート、ソース、およびドレインは全てH電位であるため、トランジスタ11Bはオフ状態である。
【0110】
〔保持動作〕
期間T2において、ワード線WWLにL電位を供給する。すると、トランジスタ11Aがオフ状態になり、ノードFNに書き込まれたデータが保持される(
図10および
図11(B)参照。)。
【0111】
前述したとおり、OSトランジスタはオフ電流が極めて少ないトランジスタである。トランジスタ11AにOSトランジスタを用いることで、ノードFNに書き込まれたデータを長期間保持することができる。そのため、ノードFNの電位をリフレッシュする必要がなくなり、メモリセル10の消費電力を低減することができる。よって、記憶装置100の消費電力を低減することができる。
【0112】
加えて、OSトランジスタは、Siトランジスタと比べてドレイン耐圧が高い。よって、トランジスタ11AをOSトランジスタとすることにより、ノードFNに保持する電位の範囲を広げることができる。よって、ノードFNに保持する情報の数を増加させることができる。
【0113】
〔読み出し動作〕
期間T3において、ビット線RBLにH電位をプリチャージする。すなわち、ビット線RBLをH電位のままフローティング状態にする(
図10および
図12(A)参照。)。
【0114】
次に、期間T4において、選択線SLにL電位を供給する(
図10および
図12(B)参照。)。この時、ノードFNにH電位が保持されていると、トランジスタ11Bがオン状態になり、ビット線RBLと選択線SLが導通状態になる。よって、ビット線RBLの電位がH電位からL電位に変化する。
【0115】
一方で、ノードFNに“0”を示すデータとしてL電位が書き込まれている場合は、選択線SLにL電位を供給してもトランジスタ11Bがオン状態にならない。よって、選択線SLにL電位を供給した時のビット線RBLの電位変化を検出することで、メモリセル10に書き込まれたデータを読み出すことができる。
【0116】
OSトランジスタを用いたメモリセル10では、OSトランジスタを介してノードFNに電荷を書き込む方式であるため、従来のフラッシュメモリで必要であった高電圧が不要であり、高速な書き込み動作も実現できる。また、フローティングゲートまたは電荷捕獲層への電荷注入および引き抜きも行われないため、OSトランジスタを用いたメモリセル10は実質的に無制限回のデータの書き込みおよび読み出しが可能である。OSトランジスタを用いたメモリセル10は、フラッシュメモリのように繰り返し書き換え動作でも電子捕獲中心の増加による不安定性が認められない。OSトランジスタを用いたメモリセル10は、従来のフラッシュメモリと比較して劣化が少なく高い信頼性が得られる。
【0117】
OSトランジスタを用いたメモリセル10は、磁気メモリあるいは抵抗変化型メモリなどのように原子レベルでの構造変化を伴わない。よって、OSトランジスタを用いたメモリセル10は、磁気メモリおよび抵抗変化型メモリよりも書き換え耐性に優れている。
【0118】
また、本発明の一態様の記憶装置100では、メモリセル10とRW回路129が、Z方向に延在する領域を有するビット線WBLおよびビット線RBLを介して電気的に接続される。よって、ビット線WBLおよびビット線RBLの引き回し距離が短く、配線抵抗および寄生容量が小さい。
【0119】
<RW回路129の構成例>
列ドライバ124には、列ごとに、
図13に示すRW回路129が設けられている。
図13は、RW回路129の構成例を示す回路図である。
【0120】
RW回路129は、トランジスタM21乃至トランジスタM26、センスアンプ回路31、AND回路32、アナログスイッチ33、およびアナログスイッチ34を有する。RW回路129は、信号SEN、信号SEP、信号PRE、信号RSEL、信号WSEL、信号GRSEL、信号GWSELに従い、動作する。
【0121】
列ドライバ124からRW回路129に供給されたデータDINは、ノードNWと電気的に接続されたビット線WBLを介してメモリセル10に書き込まれる。また、ノードNRと電気的に接続されたビット線RBLを介してメモリセル10から読み出されたデータは、RW回路129からデータDOUTとして列ドライバ124に出力される。
【0122】
なお、データDINおよびデータDOUTは内部信号であり、それぞれ、データ信号WDAおよびデータ信号RDAに対応する。
【0123】
〔プリチャージ回路〕
トランジスタM21は、プリチャージ回路として機能する。トランジスタM21によって、ビット線RBLは、電位VDDにプリチャージされる。信号PREはプリチャージ信号であり、信号PREによって、トランジスタM21の導通状態が制御される。
【0124】
〔センスアンプ回路〕
センスアンプ回路31は、読み出し動作時には、ビット線RBLに入力されたデータのハイレベルまたはローレベルを判定する。また、センスアンプ回路31は、書き込み動作時には、入力されたデータDINを一時的に保持するラッチ回路として機能する。
【0125】
図13に示すセンスアンプ回路31は、ラッチ型センスアンプである。センスアンプ回路31は、2個のインバータ回路を有し、一方のインバータ回路の入力ノードが他方のインバータ回路の出力ノードと接続される。一方のインバータ回路の入力ノードをノードNS、出力ノードをノードNSBとすると、ノードNSおよびノードNSBにおいて相補データが保持される。
【0126】
信号SENおよび信号SEPは、センスアンプ回路31を活性化するためのセンスアンプイネーブル信号であり、レファレンス電位Vrefは、読み出し判定電位である。センスアンプ回路31は、レファレンス電位Vrefを基準に、活性化された時点のノードNSBの電位が、ハイレベルであるか、ローレベルであるかを判定する。
【0127】
AND回路32は、ノードNSと、ビット線WBLとの導通状態を制御する。また、アナログスイッチ33は、ノードNSBと、ビット線RBLとの導通状態を制御し、アナログスイッチ34は、ノードNSと、レファレンス電位Vrefを供給する配線との導通状態を制御する。
【0128】
信号WSELは、書き込み選択信号であり、AND回路32を制御する。信号RSELは、読み出し選択信号であり、アナログスイッチ33およびアナログスイッチ34を制御する。
【0129】
〔出力MUX回路〕
トランジスタM22およびトランジスタM23は、出力MUX(マルチプレクサ)回路を構成する。信号GRSELは、グローバル読み出し選択信号であり、出力MUX回路を制御する。
【0130】
出力MUX回路は、センスアンプ回路31から読み出したデータDOUTを出力する機能を有する。
【0131】
〔書き込みドライバ回路〕
トランジスタM24乃至トランジスタM26は、書き込みドライバ回路を構成する。信号GWSELは、グローバル書き込み選択信号であり、書き込みドライバ回路を制御する。書き込みドライバ回路は、入力されたデータDINをセンスアンプ回路31に書き込む機能を有する。
【0132】
書き込みドライバ回路は、データDINを書き込む列を選択する機能を有する。書き込みドライバ回路は、信号GWSELに従い、バイト単位、ハーフワード単位、または、1ワード単位のデータ書き込みを行う。
【0133】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0134】
(実施の形態2)
本実施の形態では、記憶装置100の変形例について説明する。記憶装置100の変形例として、
図14(A)に、記憶装置100Aを示す。本実施の形態では、記憶装置100Aの記憶装置100とは異なる点について説明する。本実施の形態で説明が無い事柄については、他の実施の形態などを参酌すればよい。
【0135】
<記憶装置100A>
記憶装置100Aは、駆動回路層110上にM個の記憶ブロック130が積層された構成を有する。
図14(A)などでは、1個目の記憶ブロック130を記憶ブロック130_1と示し、M個目(Mは2以上の自然数)の記憶ブロック130を記憶ブロック130_Mと示している。また、t個目(tは1以上M以下の自然数)の記憶ブロック130を記憶ブロック130_tと示している。
【0136】
一つの記憶ブロック130(例えば、記憶ブロック130_t)は、RWアレイ127を含む機能層160と、R層(Rは1以上の自然数)の記憶層120を有する。機能層160は、例えばOSトランジスタで構成することができる。
図14(A)などでは、記憶ブロック130_1に含まれる機能層160を機能層160_1と示し、M個目の記憶ブロック130に含まれる機能層160を機能層160_Mと示している。また、t個目の記憶ブロック130に含まれる機能層160を機能層160_tと示している。
【0137】
図14(B)に、記憶ブロック130_tの構成例を示す。
図14(B)に示す記憶ブロック130_tは、機能層160上にR層の記憶層120が積層している。R層の記憶層120に含まれるメモリセル10は、R層の記憶層120に含まれるビット線WBLおよびビット線RBLを介して、機能層160_tに含まれるRWアレイ127と電気的に接続される。
【0138】
N層の記憶層120を複数のブロックに分け、ブロック毎にRWアレイ127を設けることで、ビット線WBLおよびビット線RBLを短くすることができる。ビット線WBLおよびビット線RBLを短くすることで、メモリセル10からRWアレイ127までの信号伝搬距離が短くなるため、記憶装置の動作速度を高めることができる。また、ビット線WBLおよびビット線RBLに付帯する寄生容量が低減されるため、消費電力が低減できる。また、1つのメモリセルで複数ビットの記憶を行う多値記憶の実現を容易とすることができる。なお、RWアレイ127は、メモリセル10に保持されているデータの読み出し、またはメモリセル10へデータを書き込む機能を有する。なお、機能層160が含む回路はRWアレイ127に限定されず、様々な機能を有する回路などを設けても良い。よって、RWアレイ127を、機能回路と呼称する場合がある。
【0139】
記憶ブロック130_tに含まれる記憶層120の数を示すRは、記憶ブロック130の総数を示すMの約数であることが好ましい。
【0140】
また、
図14(C)に示すように、機能層160の上層および下層に、記憶層120を設けてもよい。
図14(C)では、機能層160の上層および下層にそれぞれ2層の記憶層120を設ける例を示している。複数の記憶層120で機能層160を挟むように配置することで、信号伝搬距離をさらに短くすることができる。なお、機能層160の上層に積層される記憶層120と、機能層160の下層に積層される記憶層120は、それぞれ1層以上であればよい。よって、
図14(C)のような、それぞれ2層に限定されるものではない。
【0141】
機能層160の上層に積層される記憶層120の数と、機能層160の下層に積層される記憶層120の数は等しいことが好ましい。よって、
図14(C)に示す記憶ブロック130_tでは、記憶層120の合計数を示すRが偶数であることが好ましい。
【0142】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0143】
(実施の形態3)
本実施の形態では、記憶装置100の変形例について説明する。記憶装置100の変形例として、
図15(A)に、記憶装置100Bを示す。本実施の形態では、記憶装置100Bの記憶装置100とは異なる点について説明する。本実施の形態で説明が無い事柄については、他の実施の形態などを参酌すればよい。
【0144】
<記憶装置100B>
記憶装置100Bは、記憶装置100の駆動回路層110に替えて駆動回路層110Aを有する。
図15(B)は駆動回路層110Aの構成例を説明するブロック図である。駆動回路層110Aは、駆動回路層110のRWアレイ127に替えてRWアレイ127Aを有する。駆動回路層110AのRWアレイ127A以外の構成は、駆動回路層110と同様であるため、本実施の形態での詳細な説明は省略する。
【0145】
RWアレイ127Aは、1行のメモリセル10に対して1つのRW回路129を有する。
図15(B)などでは、1行目のRW回路129をRW回路129[1]と示し、i行目のRW回路129をRW回路129[i]と示している。また、P行目のRW回路129をRW回路129[P]と示している。
【0146】
図16は、N層ある記憶層120の一部と、駆動回路層110Aの一部を示す斜視図である。また、
図17は、i行目のRW回路129(RW回路129[i])と、i行目のビット線WBL(ビット線WBL[i,1]乃至ビット線WBL[i,R])と、i行目のビット線RBL(ビット線RBL[i,1]乃至ビット線RBL[i,Q])の接続例を示す図である。
【0147】
RW回路129[i]は、ビット線WBL[i,1]乃至ビット線WBL[i,R]およびビット線RBL[i,1]乃至ビット線RBL[i,Q]と電気的に接続される。
【0148】
RWアレイ127Aの構成とすることで、RW回路129をP行Q列のマトリクス状に設ける場合よりも、RW回路129の設計自由度を高めることができる。また、RWアレイ127Aの占有面積が低減できるため、駆動回路層110Aに含まれる全ての回路の設計自由度を高めることができる。
【0149】
<記憶装置100C>
上記の記憶装置100Bでは、1行に含まれる全てのビット線が1つのRW回路129に接続されるため、当該RW回路129に加わる配線容量などの負荷が大きくなりやすい。特に記憶装置の記憶容量が増加して1行に含まれるビット線の本数が増えると、その影響が大きくなり、データの読み書き速度や精度などか低下しやすくなる。
【0150】
そこで、メモリセル10とRW回路129の間に選択回路153を設けることで、読み書き動作時にRW回路129と電気的に接続するビット線WBLおよびビット線RBLの数を減らし、RW回路129に加わる負荷を低減する。
【0151】
図18(A)に、記憶装置100Cを示す。記憶装置100Cは記憶装置100Bの変形例である。よって、説明の繰り返しを低減するため、記憶装置100Cの記憶装置100Bと異なる点について説明する。
【0152】
記憶装置100Cは、記憶層120と駆動回路層110Aの間に機能層150を有する。
図18(B)は、機能層150の構成例を説明するブロック図である。機能層150は、制御回路151および選択回路群152を有する。
【0153】
選択回路群152は、1行のメモリセル10に対して1つの選択回路153を有する。
図18(B)などでは、1行目の選択回路153を選択回路153[1]と示し、i行目の選択回路153を選択回路153[i]と示している。また、P行目の選択回路153を選択回路153[P]と示している。
【0154】
図19は、記憶層120の一部、機能層150の一部、および駆動回路層110Aの一部を示す斜視図である。また、
図20は、i行目のRW回路129(RW回路129[i])、i行目の選択回路153(選択回路153[i])、i行目のビット線WBL(
図20では、ビット線WBL[i,1]乃至ビット線WBL[i,6])、およびi行目のビット線RBL(
図20では、ビット線RBL[i,1]乃至ビット線RBL[i,12])の接続例を示す図である。
【0155】
i行目のビット線WBLおよびi行目のビット線RBLは、選択回路153[i]と電気的に接続される。選択回路153[i]は、配線154W[i]および配線154R[i]を介してRW回路129[i]と電気的に接続される。配線154W[i]はRW回路129[i]のノードNWと電気的に接続される。配線154R[i]はRW回路129[i]のノードNRと電気的に接続される(
図19参照。)。
【0156】
選択回路153は、G個(Gは2以上の自然数)のスイッチ群155を有する。本実施の形態などでは、1つ目のスイッチ群155をスイッチ群155[1]と示す。
図20では、2つ目のスイッチ群155であるスイッチ群155[2]と、3つ目のスイッチ群155であるスイッチ群155[3]を示している。
【0157】
図21を用いて、より詳細に選択回路153[i]の構成例を説明する。前述したとおり、選択回路153[i]は、複数のスイッチ群155を有する。
図21では、2つのスイッチ群155(スイッチ群155[1]およびスイッチ群155[2])を示している。1つのスイッチ群155は、複数のスイッチ156を有する。
図21では、スイッチ群155[1]中にスイッチ156[11]乃至スイッチ156[19]を有する例を示している。同様に、スイッチ群155[2]中にスイッチ156[21]乃至スイッチ156[29]を有する例を示している。
【0158】
スイッチ156[11]はビット線WBL[i,1]と配線154W[i]の間に設けられている。スイッチ156[12]はビット線RBL[i,1]と配線154R[i]の間に設けられている。スイッチ156[13]はビット線RBL[i,2]と配線154R[i]の間に設けられている。スイッチ156[14]はビット線WBL[i,2]と配線154W[i]の間に設けられている。スイッチ156[15]はビット線RBL[i,3]と配線154R[i]の間に設けられている。スイッチ156[16]はビット線RBL[i,4]と配線154R[i]の間に設けられている。スイッチ156[17]はビット線WBL[i,3]と配線154W[i]の間に設けられている。スイッチ156[18]はビット線RBL[i,5]と配線154R[i]の間に設けられている。スイッチ156[19]はビット線RBL[i,6]と配線154R[i]の間に設けられている。
【0159】
制御回路151は、周辺回路115と電気的に接続される。また、制御回路151は、配線157[1]を介してスイッチ群155[1]の動作を制御する機能を有する。言い換えると、スイッチ156[11]乃至スイッチ156[19]は、配線157[1]を介して制御回路151から供給される信号によって、導通状態(オン状態)と非導通状態(オフ状態)が制御される。
【0160】
配線157[1]を介して制御回路151からスイッチ156[11]乃至スイッチ156[19]を導通状態にする信号が供給されると、ビット線WBL[i,1]乃至ビット線WBL[i,3]と、配線154W[i]が導通状態になる。また、ビット線RBL[i,1]乃至ビット線RBL[i,6]と、配線154R[i]が導通状態になる。
【0161】
スイッチ156[21]はビット線WBL[i,4]と配線154W[i]の間に設けられている。スイッチ156[22]はビット線RBL[i,7]と配線154R[i]の間に設けられている。スイッチ156[23]はビット線RBL[i,8]と配線154R[i]の間に設けられている。スイッチ156[24]はビット線WBL[i,5]と配線154W[i]の間に設けられている。スイッチ156[25]はビット線RBL[i,9]と配線154R[i]の間に設けられている。スイッチ156[26]はビット線RBL[i,10]と配線154R[i]の間に設けられている。スイッチ156[27]はビット線WBL[i,6]と配線154W[i]の間に設けられている。スイッチ156[28]はビット線RBL[i,11]と配線154R[i]の間に設けられている。スイッチ156[29]はビット線RBL[i,12]と配線154R[i]の間に設けられている。
【0162】
制御回路151は、配線157[2]を介してスイッチ群155[2]の動作を制御する機能を有する。言い換えると、スイッチ156[21]乃至スイッチ156[29]は、配線157[2]を介して制御回路151から供給される信号によって、導通状態と非導通状態が制御される。
【0163】
配線157[2]を介して制御回路151からスイッチ156[21]乃至スイッチ156[29]を導通状態にする信号が供給されると、ビット線WBL[i,4]乃至ビット線WBL[i,6]と、配線154W[i]が導通状態になる。また、ビット線RBL[i,7]乃至ビット線RBL[i,12]と、配線154R[i]が導通状態になる。
【0164】
また、配線157[3]は、スイッチ群155[3](図示せず。)に含まれる複数のスイッチ156に制御信号を伝える機能を有する。
【0165】
制御回路151は、使用するビット線に応じて、オン状態にするスイッチ群155を選択する。例えば、ビット線RBL[i,7]に接続するメモリセル10に対してデータの読み書き動作を行う場合は、制御回路151はスイッチ群155[2]をオン状態にして、その他のスイッチ群155をオフ状態にする。
【0166】
オン状態にするスイッチ群155を選択することで、読み書き動作時にRW回路129と電気的に接続するビット線WBLおよびビット線RBLの数を減らすことができる。よって、RW回路129に加わる配線容量などの負荷を低減できる。
【0167】
本実施の形態では、1つのスイッチ群155に3つのビット線WBLおよび6つのビット線RBLが接続する構成を示しているが、1つのスイッチ群155に接続するビット線WBLおよびビット線RBLの数はこれに限定されない。また、ビット線WBLまたはビット線RBLの一方をスイッチ群155と電気的に接続し、他方をRW回路129と電気的に接続してもよい。
【0168】
また、スイッチ群155の数Gは、1行中に含まれるビット線WBLの数Rの約数であることが好ましい。または、スイッチ群155の数Gは、1行中に含まれるビット線RBLの数Qの約数であることが好ましい。
【0169】
スイッチ156として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子やトランジスタなどのスイッチング素子を用いることができる。スイッチ156としてトランジスタを用いる場合は、OSトランジスタを用いることが好ましい。
【0170】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0171】
(実施の形態4)
以下では、上記実施の形態に係る記憶装置の一例について、
図22乃至
図27を用いて説明する。まず、当該記憶装置を構成するメモリセルの構成例について説明する。
【0172】
<メモリセルの構成例>
図22(A)および
図22(B)に、本発明の一態様に係る記憶装置を構成するメモリセル860の構造を示す。
図22(A)は、メモリセル860とその周辺の上面図である。また、
図22(B)は、メモリセル860の断面図であり、
図22(B)は、
図22(A)にA1-A2の一点鎖線で示す部位に対応する。
図22(B)において、トランジスタ600のチャネル長方向の断面と、トランジスタ700のチャネル幅方向の断面を示す。なお、
図22(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。なお、
図22(A)に示す、X方向、Y方向、およびZ方向は、それぞれが互いに直交または交差する方向である。ここで、X方向およびY方向は基板面に対して平行または概略平行であり、Z方向は基板面に対して垂直または概略垂直であることが好ましい。
【0173】
本実施の形態に示す、メモリセル860は、トランジスタ600、トランジスタ700、および容量655を有する。メモリセル860は、先の実施の形態に示すメモリセル10と対応しており、トランジスタ600、トランジスタ700、および容量655は、それぞれ、先の実施の形態に示す、トランジスタ11A、トランジスタ11B、容量12と対応する。よって、トランジスタ600のソースおよびドレインの一方と、トランジスタ700のゲートと、容量655の電極の一方は電気的に接続されている。
【0174】
図22(A)、(B)に示すように、メモリセル860では、絶縁体614上にトランジスタ600およびトランジスタ700が配置され、また、トランジスタ600およびトランジスタ700の一部の上に絶縁体680が配置され、トランジスタ600、トランジスタ700および絶縁体680の上に絶縁体682が配置され、絶縁体682の上に絶縁体685が配置され、絶縁体685の上に容量655が配置され、容量655の上に絶縁体688が配置される。絶縁体614、絶縁体680、絶縁体682、絶縁体685、および絶縁体688は、層間膜として機能する。
【0175】
ここで、トランジスタ600は、絶縁体614上の絶縁体616と、絶縁体616に埋め込まれるように配置された導電体605(導電体605a、および導電体605b)と、絶縁体616上、および導電体605上の絶縁体622と、絶縁体622上の絶縁体624と、絶縁体624上の酸化物630aと、酸化物630a上の酸化物630bと、酸化物630b上の酸化物643aおよび酸化物643bと、酸化物643a上の導電体642aと、酸化物643b上の導電体642bと、絶縁体624の一部、酸化物630aの側面、酸化物630bの側面、酸化物643aの側面、導電体642aの側面、導電体642aの上面、酸化物643bの側面、導電体642bの側面、および導電体642bの上面とそれぞれ接する絶縁体672と、絶縁体672上の絶縁体673と、酸化物630b上の酸化物630cと、酸化物630c上の絶縁体650と、絶縁体650上に位置し、酸化物630cと重なる導電体660(導電体660a、および導電体660b)と、を有する。また、酸化物630cは、酸化物643aの側面、酸化物643bの側面、導電体642aの側面および導電体642bの側面とそれぞれ接する。ここで、
図22(B)に示すように、導電体660の上面は、絶縁体650の上面、酸化物630cの上面、および絶縁体680の上面と略一致して配置される。また、絶縁体682は、導電体660、絶縁体650、酸化物630c、および絶縁体680のそれぞれの上面と接する。
【0176】
なお、以下において、酸化物630a、酸化物630b、および酸化物630cをまとめて酸化物630と呼ぶ場合がある。また、酸化物643aと酸化物643bをまとめて酸化物643と呼ぶ場合がある。また、導電体642aと導電体642bをまとめて導電体642と呼ぶ場合がある。
【0177】
トランジスタ600において、導電体660は、ゲートとして機能し、導電体642aおよび導電体642bは、それぞれソースまたはドレインとして機能する。また、導電体605は、バックゲートとして機能する。トランジスタ600は、ゲートとして機能する導電体660が、絶縁体680などに形成される開口を埋めるように自己整合的に形成される。このように、本実施の形態に係る記憶装置では、位置合わせをせずに、導電体660を導電体642aと導電体642bの間の領域に確実に配置することができる。
【0178】
また、トランジスタ700は、絶縁体614上の絶縁体616と、絶縁体616に埋め込まれるように配置された導電体705(導電体705a、および導電体705b)と、絶縁体616上、および導電体705上の絶縁体622と、絶縁体622上の絶縁体624と、絶縁体624上の酸化物730aと、酸化物730a上の酸化物730bと、酸化物730b上の酸化物743aおよび酸化物743bと、酸化物743a上の導電体742aと、酸化物743b上の導電体742bと、絶縁体624の一部、酸化物730aの側面、酸化物730bの側面、酸化物743aの側面、導電体742aの側面、導電体742aの上面、酸化物743bの側面、導電体742bの側面、および導電体742bの上面とそれぞれ接する絶縁体672と、絶縁体672上の絶縁体673と、酸化物730b上の酸化物730cと、酸化物730c上の絶縁体750と、絶縁体750上に位置し、酸化物730cと重なる導電体760(導電体760a、および導電体760b)と、を有する。また、酸化物730cは、酸化物743aの側面、酸化物743bの側面、導電体742aの側面および導電体742bの側面とそれぞれ接する。ここで、
図22(B)に示すように、導電体760の上面は、絶縁体750の上面、酸化物730cの上面、および絶縁体680の上面と略一致して配置される。また、絶縁体682は、導電体760、絶縁体750、酸化物730c、および絶縁体680のそれぞれの上面と接する。
【0179】
また、以下において、酸化物730a、酸化物730b、および酸化物730cをまとめて酸化物730と呼ぶ場合がある。また、酸化物743aと酸化物743bをまとめて酸化物743と呼ぶ場合がある。また、導電体742aと導電体742bをまとめて導電体742と呼ぶ場合がある。
【0180】
トランジスタ700において、導電体760は、ゲートとして機能し、導電体742aおよび導電体742bは、それぞれソースまたはドレインとして機能する。また、導電体705は、バックゲートとして機能する。トランジスタ700は、ゲートとして機能する導電体760が、絶縁体680などに形成される開口を埋めるように自己整合的に形成される。このように、本実施の形態に係る記憶装置では、位置合わせをせずに、導電体760を導電体742aと導電体742bの間の領域に確実に配置することができる。
【0181】
ここで、トランジスタ700は、トランジスタ600と同じ層に形成され、同様の構成を有する。よって、トランジスタ700のチャネル長方向の断面は図示されていないが、
図22(B)に示すトランジスタ600のチャネル長方向の断面と同様の構造を有する。つまり、断面図において図示されていない、酸化物743と導電体742も、
図22(B)に示す、酸化物643と導電体642と同様の構造を有する。なお、トランジスタ600のチャネル幅方向の断面は図示されていないが、
図22(B)に示すトランジスタ700のチャネル幅方向の断面と同様の構造を有する。
【0182】
よって、酸化物730は、酸化物630と同様の構成を有し、酸化物630の記載を参酌することができる。導電体705は、導電体605と同様の構成を有し、導電体605の記載を参酌することができる。酸化物743は、酸化物643と同様の構成を有し、酸化物643の記載を参酌することができる。導電体742は、導電体642と同様の構成を有し、導電体642の記載を参酌することができる。絶縁体750は、絶縁体650と同様の構成を有し、絶縁体650の記載を参酌することができる。導電体760は、導電体660と同様の構成を有し、導電体660の記載を参酌することができる。以下において、特段の記載がない限り、上記のようにトランジスタ700の構成は、トランジスタ600の構成の記載を参酌することができる。
【0183】
ここで、トランジスタ600およびトランジスタ700は、チャネルが形成される領域(以下、チャネル形成領域ともいう。)を含む酸化物630および酸化物730に、酸化物半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう。)を用いることが好ましい。
【0184】
例えば、酸化物半導体として機能する金属酸化物は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。エネルギーギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタ600の非導通状態におけるリーク電流(オフ電流)を極めて小さくすることができる。
【0185】
酸化物半導体として、例えば、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、錫、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫を用いるとよい。また、酸化物半導体として、In-M酸化物、In-Zn酸化物、またはM-Zn酸化物を用いてもよい。
【0186】
チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたトランジスタ600およびトランジスタ700は、オフ電流が極めて小さいため、消費電力の少ない半導体装置を提供できる。また、トランジスタ600およびトランジスタ700は、高温環境下でもオフ電流がほとんど増加しない。具体的には室温以上200℃以下の環境温度下でもオフ電流がほとんど増加しない。よって、高温環境下においても動作が安定し、信頼性の良好な記憶装置を実現できる。
【0187】
トランジスタ600のオフ電流が極めて小さいので、容量655の容量値を小さく設定することができる。これにより、メモリセル860の占有面積を小さくし、記憶装置の集積化を図ることができる。
【0188】
図22(A)に示すように、導電体742a、導電体660、導電体605、および導電体705は、Y方向に延在していることが好ましい。このような構造にすることで、導電体742aは、先の実施の形態に示す選択線SLとして機能する。また、導電体660は、先の実施の形態に示すワード線WWLとして機能する。また、導電体605は、先の実施の形態に示す配線BGL1として機能する。また、導電体705は、先の実施の形態に示す配線BGL2として機能する。
【0189】
容量655は、絶縁体685上の導電体646aと、導電体646aを覆う絶縁体686と、導電体656の少なくとも一部と重畳して絶縁体686上に配置される導電体656と、を有する。ここで、導電体646aは、容量655の一方の電極として機能し、導電体646bは、容量655の他方の電極として機能する。また、絶縁体686は容量655の誘電体として機能する。
【0190】
また、導電体656は、Y方向に延在させて、先の実施の形態に示す容量線CLとして機能させることが好ましい。
【0191】
また、絶縁体622、絶縁体624、絶縁体672、絶縁体673、絶縁体680、絶縁体682、および絶縁体685に開口が形成されており、プラグとして機能する導電体640(導電体640a、導電体640b、導電体640c、および導電体640d)が当該開口に埋め込まれるように設けられる。また、絶縁体685と導電体640の上面が揃うように設けられる。
【0192】
導電体640aは、下面が導電体642aに接し、上面が導電体646aに接する。導電体640cは、下面が導電体760に接し、上面が導電体646aに接する。このようにして、トランジスタ600のソースおよびドレインの一方と、トランジスタ700のゲートと、容量655の電極の一方は電気的に接続される。
【0193】
導電体640bは、導電体642bの側面に接して設けられる。導電体640bの下方に導電体615および導電体607が設けられ、導電体640bの上方に導電体646bおよび導電体657が設けられる。導電体607は絶縁体614に形成された開口に設けられる。ここで、導電体615は導電体605と同じ層に形成され、同様の構成を有する。また、導電体646bは導電体646aと同じ層に形成され、同様の構成を有する。また、導電体657は絶縁体686および絶縁体688に形成された開口に設けられる。
【0194】
導電体640bは、導電体607および導電体615によって、下層のメモリセル860の導電体640bと電気的に接続される。また、導電体640bは、導電体646bおよび導電体657によって、上層のメモリセル860の導電体640bと電気的に接続される。このように、導電体607、導電体615、導電体640b、導電体646b、および導電体657はZ方向に延在しており、先の実施の形態に示すビット線WBLとして機能する。
【0195】
また、断面図に図示していないが、導電体640dは、導電体742bの側面に接して設けられる。また、導電体640dの下方に導電体715が設けられている。導電体640dは、上層および下層の導電体640dと電気的に接続される。このように、導電体715および導電体640d等はZ方向に延在しており、先の実施の形態に示すビット線RBLとして機能する。
【0196】
図22(B)に示すように、トランジスタ600とトランジスタ700を同じ層に形成することで、トランジスタ600とトランジスタ700と同じ工程で形成することができる。よって、記憶装置製造の工程を短縮し、生産性を向上させることができる。
【0197】
なお、メモリセル860において、トランジスタ600のチャネル長方向とトランジスタ700のチャネル長方向が平行になるように、トランジスタ600、トランジスタ700および容量655を設けているが、本実施の形態に示す記憶装置はこれに限られるものではない。
図22等に示すメモリセル860は、記憶装置の構成の一例であり、回路構成や駆動方法に応じて、適切な構造のトランジスタまたは容量素子などを、適宜配置すればよい。
【0198】
[メモリセルの詳細な構成]
以下では、本発明の一態様に係るメモリセル860の詳細な構成について説明する。以下において、トランジスタ700の構成要素は、トランジスタ600の構成要素の記載を参酌できるものとする。
【0199】
図22に示すように、酸化物630は、絶縁体624上の酸化物630aと、酸化物630a上の酸化物630bと、酸化物630b上に配置され、少なくとも一部が酸化物630bの上面に接する酸化物630cと、を有することが好ましい。ここで、酸化物630cの側面は、酸化物643a、酸化物643b、導電体642a、導電体642b、絶縁体672、絶縁体673、および絶縁体680に接して設けられていることが好ましい。
【0200】
つまり、酸化物630は、酸化物630aと、酸化物630a上の酸化物630bと、酸化物630b上の酸化物630cと、を有する。酸化物630b下に酸化物630aを有することで、酸化物630aよりも下方に形成された構造物から、酸化物630bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物630b上に酸化物630cを有することで、酸化物630cよりも上方に形成された構造物から、酸化物630bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0201】
なお、トランジスタ600では、チャネル形成領域と、その近傍において、酸化物630a、酸化物630b、および酸化物630cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物630bの単層、酸化物630bと酸化物630aの2層構造、酸化物630bと酸化物630cの2層構造、または4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。例えば、酸化物630cを2層構造にして、4層の積層構造を設ける構成にしてもよい。
【0202】
また、酸化物630は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物630aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物630bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物630aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物630bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物630bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物630aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物630cは、酸化物630aまたは酸化物630bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。なお、酸化物630cに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物630bに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きくなってもよい。
【0203】
具体的には、酸化物630aとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]もしくはその近傍の組成、または1:1:0.5[原子数比]もしくはその近傍の組成の金属酸化物を用いればよい。
【0204】
また、酸化物630bとして、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]もしくはその近傍の組成、または1:1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物630bとして、In:Ga:Zn=5:1:3[原子数比]もしくはその近傍の組成、またはIn:Ga:Zn=10:1:3[原子数比]もしくはその近傍の組成の金属酸化物を用いてもよい。また、酸化物630bとして、In-Zn酸化物(例えば、In:Zn=2:1[原子数比]もしくはその近傍の組成、In:Zn=5:1[原子数比]もしくはその近傍の組成、またはIn:Zn=10:1[原子数比]もしくはその近傍の組成)を用いてもよい。また、酸化物630bとして、In酸化物を用いても良い。
【0205】
また、酸化物630cとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比もしくはその近傍の組成]、Ga:Zn=2:1[原子数比]もしくはその近傍の組成、またはGa:Zn=2:5[原子数比]もしくはその近傍の組成の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物630cに、酸化物630bに用いることのできる材料を適用し、単層または積層で設けてもよい。例えば、酸化物630cを積層構造とする場合の具体例としては、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]もしくはその近傍の組成と、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]もしくはその近傍の組成との積層構造、Ga:Zn=2:1[原子数比]もしくはその近傍の組成と、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]もしくはその近傍の組成との積層構造、Ga:Zn=2:5[原子数比]もしくはその近傍の組成と、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]もしくはその近傍の組成との積層構造、酸化ガリウムと、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]もしくはその近傍の組成との積層構造などが挙げられる。
【0206】
また、酸化物630b、630cとして、膜中のインジウムの比率を高めることで、トランジスタのオン電流、または電界効果移動度などを高めることが出来るため、好適である。また、上述した近傍の組成とは、所望の原子数比の±30%の範囲を含む。
【0207】
また、トランジスタに求められる動作周波数などに応じて、金属酸化物に含まれる元素の組成を変えてもよい。例えば、メモリセルに含まれるトランジスタでは、金属酸化物をIn:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]もしくはその近傍の組成とし、駆動回路層110に含まれるトランジスタでは、金属酸化物をIn:Ga:Zn=5:1:3[原子数比]もしくはその近傍の組成としてもよい。なお、駆動回路層110に含まれるトランジスタでは、金属酸化物をIn:Ga:Zn=10:1:3[原子数比]もしくはこれらの近傍の組成、またはIn:Zn=2:1[原子数比]もしくはこれらの近傍の組成としてもよい。
【0208】
また、酸化物630bは、結晶性を有していてもよい。例えば、後述するCAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)を用いることが好ましい。CAAC-OSなどの結晶性を有する酸化物は、不純物や欠陥(酸素欠損など)が少なく、結晶性の高い、緻密な構造を有している。よって、ソース電極またはドレイン電極による、酸化物630bからの酸素の引き抜きを抑制することができる。また、加熱処理を行っても、酸化物630bから酸素が、引き抜かれることを低減できるので、トランジスタ600は、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対して安定である。
【0209】
また、酸化物630cは、絶縁体680を含む層間膜に設けた開口内に設けられることが好ましい。従って、絶縁体650、および導電体660は、酸化物630cを介して、酸化物630b、および酸化物630aの積層構造と重畳する領域を有する。当該構造とすることで、酸化物630cと絶縁体650とを連続成膜により、形成することが可能となるため、酸化物630と絶縁体650との界面を清浄に保つことができる。従って、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ600は高いオン電流、および高い周波数特性を得ることができる。
【0210】
酸化物630(例えば、酸化物630b)には、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、酸化物半導体中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0211】
特に、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸化物半導体中に酸素欠損(VO:oxygen vacancyともいう)を形成する場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥(以下、VOHと呼ぶ場合がある。)はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。また、酸化物半導体中の水素は、熱、電界などのストレスによって動きやすいため、酸化物半導体に多くの水素が含まれると、トランジスタの信頼性が悪化する恐れもある。
【0212】
VOHは、酸化物半導体のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、酸化物半導体においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、酸化物半導体のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0213】
以上より、酸化物半導体を酸化物630に用いる場合、酸化物630中のVOHをできる限り低減し、高純度真性または実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VOHが十分低減された酸化物半導体を得るには、酸化物半導体中の水分、水素などの不純物を除去すること(脱水、脱水素化処理と記載する場合がある。)と、酸化物半導体に酸素を供給して酸素欠損を補填すること(加酸素化処理と記載する場合がある。)が重要である。VOHなどの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0214】
例えば、酸化物630bの二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とすることができる。水素などの不純物が十分に低減された酸化物630をトランジスタ600のチャネル形成領域に用いることで、ノーマリーオフ特性にすることができ、安定した電気特性を有するとともに、信頼性を向上させることができる。
【0215】
また、酸化物630に酸化物半導体を用いる場合、チャネル形成領域として機能する領域の酸化物半導体のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域として機能する領域の酸化物半導体のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0216】
そこで、絶縁体614、絶縁体622、絶縁体672、絶縁体673、および絶縁体682として、不純物の拡散を抑制する材料(以下、不純物に対するバリア性材料ともいう)を用いて、水素などの不純物が酸化物630に拡散するのを低減することが好ましい。なお、本明細書等において、バリア性とは、対応する物質の拡散を抑制する機能(透過性が低いともいう)とする。または、対応する物質を、捕獲、および固着する(ゲッタリングともいう)機能とする。また、本明細書等において、バリア性を有する絶縁膜をバリア絶縁膜と呼ぶ場合がある。
【0217】
例えば、水素、および酸素に対する拡散を抑制する機能を有する材料として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、インジウムガリウム亜鉛酸化物、窒化シリコン、または窒化酸化シリコンなどがある。特に、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンは、水素に対するバリア性が高いため、封止する材質として用いることが好ましい。
【0218】
また、例えば、水素を捕獲、および固着する機能を有する材料として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、インジウムガリウム亜鉛酸化物、などの金属酸化物がある。
【0219】
例えば、絶縁体614として、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。これにより、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ600側に拡散するのを抑制することができる。または、絶縁体624などに含まれる酸素が、基板側に拡散するのを抑制することができる。
【0220】
導電体605は、酸化物630、および導電体660と、重なるように配置する。また、導電体605は、絶縁体616に埋め込まれて設けることが好ましい。
【0221】
導電体605がバックゲートとして機能する場合、導電体605に印加する電位を、導電体660に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ600のしきい値電圧(Vth)を制御することができる。特に、導電体605に負の電位を印加することにより、トランジスタ600のVthをより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体605に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体660に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0222】
なお、導電体605は、
図22(A)に示すように、酸化物630の導電体642aおよび導電体642bと重ならない領域の大きさよりも、大きく設けるとよい。特に、導電体605は、酸化物630のチャネル幅方向と交わる端部よりも外側の領域においても、延伸していることが好ましい。つまり、酸化物630のチャネル幅方向における側面の外側において、導電体605と、導電体660とは、絶縁体を介して重畳していることが好ましい。または、導電体605を大きく設けることによって、導電体605形成以降の作製工程のプラズマを用いた処理において、局所的なチャージング(チャージアップと言う)の緩和ができる場合がある。ただし、本発明の一態様はこれに限定されない。導電体605は、少なくとも導電体642aと、導電体642bとの間に位置する酸化物630と重畳すればよい。
【0223】
また、絶縁体624の底面を基準として、酸化物630aおよび酸化物630bと、導電体660とが、重ならない領域における導電体660の底面の高さは、酸化物630bの底面の高さより低い位置に配置されていることが好ましい。
【0224】
図に示すように、ゲートとして機能する導電体660は、チャネル形成領域の酸化物630bの側面および上面を酸化物630cおよび絶縁体650を介して覆う構造とすることにより、導電体660から生じる電界を、酸化物630bに生じるチャネル形成領域全体に作用させやすくなる。従って、トランジスタ600のオン電流を増大させ、周波数特性を向上させることができる。本明細書において、第1のゲート、および第2のゲートの電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。
【0225】
また、導電体605aは、水または水素などの不純物および酸素の透過を抑制する導電体が好ましい。例えば、チタン、窒化チタン、タンタル、または窒化タンタルを用いることができる。また、導電体605bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。なお、導電体605を2層で図示したが、3層以上の多層構造としてもよい。
【0226】
また、絶縁体616、絶縁体680、絶縁体685、および絶縁体688は、絶縁体614よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体616、絶縁体680、絶縁体685、および絶縁体688として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、または空孔を有する酸化シリコンなどを適宜用いればよい。
【0227】
また、絶縁体616、絶縁体680、絶縁体685、および絶縁体688は、水素原子を含まない、または水素原子の含有量が少ない、化合物ガスを用いてCVD法またはALD法により成膜してもよい。
【0228】
上記絶縁膜の成膜では、成膜ガスとして、シリコン原子を含む分子を有するガスが主に用いられる。上記絶縁膜に含まれる水素を低減するには、当該シリコン原子を含む分子に含まれる水素原子が少ないことが好ましく、当該シリコン原子を含む分子が水素原子を含まないことがより好ましい。もちろん、シリコン原子を含む分子を有するガス以外の成膜ガスも、含有される水素原子が少ないことが好ましく、水素原子を含まないことがより好ましい。
【0229】
上記のようなシリコン原子を含む分子をSix-Ryで表すと、例えば、官能基Rとして、イソシアネート基(-N=C=O)、シアネート基(-O-C≡N)、シアノ基(-C≡N)、ジアゾ基(=N2)、アジド基(-N3)、ニトロソ基(-NO)、およびニトロ基(-NO2)の少なくとも一つを用いることができる。例えば、1≦x≦3、1≦y≦8、とればよい。このようなシリコン原子を含む分子としては、例えば、テトライソシアネートシラン、テトラシアネートシラン、テトラシアノシラン、ヘキサイソシアネートシラン、オクタイソシアネートシラン等を用いることができる。ここでは、シリコン原子に同じ種類の官能基が結合する分子を例示したが、本実施の形態はこれに限られるものではない。シリコン原子に異なる種類の官能基が結合する構成にしてもよい。
【0230】
また、例えば、官能基Rとしてハロゲン(Cl、Br、I、またはF)を用いる構成にしてもよい。例えば、1≦x≦2、1≦y≦6、とすればよい。このようなシリコン原子を含む分子としては、例えば、テトラクロロシラン(SiCl4)、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)等を用いることができる。塩素を官能基とする例を示したが、塩素以外の、臭素、ヨウ素、フッ素等のハロゲンを官能基として用いてもよい。また、シリコン原子に異なる種類のハロゲンが結合する構成にしてもよい。
【0231】
絶縁体622、および絶縁体624は、ゲート絶縁体としての機能を有する。
【0232】
ここで、酸化物630と接する絶縁体624は、加熱により酸素を脱離することが好ましい。本明細書では、加熱により離脱する酸素を過剰酸素と呼ぶことがある。例えば、絶縁体624は、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンなどを適宜用いればよい。酸素を含む絶縁体を酸化物630に接して設けることにより、酸化物630中の酸素欠損を低減し、トランジスタ600の信頼性を向上させることができる。
【0233】
絶縁体624として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、昇温脱離ガス分析(TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析)にて、酸素分子の脱離量が1.0×1018molecules/cm3以上、好ましくは1.0×1019molecules/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019molecules/cm3以上、または3.0×1020molecules/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0234】
絶縁体622は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ600に混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。例えば、絶縁体622は、絶縁体624より水素透過性が低いことが好ましい。絶縁体622、および絶縁体683によって、絶縁体624および酸化物630などを囲むことにより、外方から水または水素などの不純物がトランジスタ600に侵入することを抑制することができる。
【0235】
さらに、絶縁体622は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。例えば、絶縁体622は、絶縁体624より酸素透過性が低いことが好ましい。絶縁体622が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物630が有する酸素が、絶縁体622より下側へ拡散することを低減できるので、好ましい。また、導電体605が、絶縁体624や、酸化物630が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0236】
絶縁体622は、絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体622を形成した場合、絶縁体622は、酸化物630からの酸素の放出や、トランジスタ600の周辺部から酸化物630への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0237】
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0238】
また、絶縁体622は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いてもよい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0239】
なお、絶縁体622、および絶縁体624が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0240】
また、酸化物630bと、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電体642(導電体642aよび導電体642b)と、の間に酸化物643(酸化物643aおよび酸化物643b)を配置してもよい。導電体642と、酸化物630とが接しない構成となるので、導電体642が、酸化物630の酸素を吸収することを抑制できる。つまり、導電体642の酸化を防止することで、導電体642の導電率の低下を抑制することができる。従って、酸化物643は、導電体642の酸化を抑制する機能を有することが好ましい。
【0241】
従って、酸化物643は、酸素の透過を抑制する機能を有することが好ましい。ソース電極やドレイン電極として機能する導電体642と酸化物630bとの間に酸素の透過を抑制する機能を有する酸化物643を配置することで、導電体642と、酸化物630bとの間の電気抵抗が低減されるので好ましい。このような構成とすることで、トランジスタ600の電気特性およびトランジスタ600の信頼性を向上させることができる。
【0242】
酸化物643として、元素Mを有する金属酸化物を用いてもよい。特に、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫を用いるとよい。酸化物643は、酸化物630bよりも元素Mの濃度が高いことが好ましい。また、酸化物643として、酸化ガリウムを用いてもよい。また、酸化物643として、In-M-Zn酸化物等の金属酸化物を用いてもよい。具体的には、酸化物643に用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物630bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物643の膜厚は、0.5nm以上5nm以下が好ましく、より好ましくは、1nm以上3nm以下である。また、酸化物643は、結晶性を有すると好ましい。酸化物643が結晶性を有する場合、酸化物630中の酸素の放出を好適に抑制することが出来る。例えば、酸化物643としては、六方晶などの結晶構造であれば、酸化物630中の酸素の放出を抑制できる場合がある。
【0243】
なお、酸化物643は必ずしも設けなくてもよい。その場合、導電体642(導電体642a、および導電体642b)と酸化物630とが接することで、酸化物630中の酸素が導電体642へ拡散し、導電体642が酸化する場合がある。導電体642が酸化することで、導電体642の導電率が低下する蓋然性が高い。なお、酸化物630中の酸素が導電体642へ拡散することを、導電体642が酸化物630中の酸素を吸収する、と言い換えることができる。
【0244】
また、酸化物630中の酸素が導電体642(導電体642a、および導電体642b)へ拡散することで、導電体642aと酸化物630bとの間、および、導電体642bと酸化物630bとの間に異層が形成される場合がある。当該異層は、導電体642よりも酸素を多く含むため、当該異層は絶縁性を有すると推定される。このとき、導電体642と、当該異層と、酸化物630bとの3層構造は、金属-絶縁体-半導体からなる3層構造とみなすことができ、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造と呼ぶ、またはMIS構造を主としたダイオード接合構造と呼ぶ場合がある。
【0245】
なお、上記異層は、導電体642と酸化物630bとの間に形成されることに限られず、例えば、異層が、導電体642と酸化物630cとの間に形成される場合や、導電体642と酸化物630bとの間、および導電体642と酸化物630cとの間に形成される場合がある。
【0246】
酸化物643上には、ソース電極、およびドレイン電極として機能する導電体642(導電体642a、および導電体642b)が設けられる。導電体642の膜厚は、例えば、1nm以上50nm以下、好ましくは2nm以上25nm以下、とすればよい。
【0247】
導電体642としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、窒化タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。
【0248】
絶縁体672は、導電体642上面に接して設けられており、バリア絶縁膜として機能することが好ましい。また、絶縁体672上に、バリア絶縁膜として機能する絶縁体673を設けることが好ましい。このような構成にすることで、導電体642による、絶縁体680が有する過剰酸素の吸収を抑制することができる。また、導電体642の酸化を抑制することで、トランジスタ600と配線とのコンタクト抵抗の増加を抑制することができる。よって、トランジスタ600に良好な電気特性および信頼性を与えることができる。
【0249】
従って、絶縁体672および絶縁体673は、酸素の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁体672は、絶縁体680より酸素の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁体672としては、例えば、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を成膜するとよい。絶縁体673としては、例えば、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンなどを用いればよい。
【0250】
また、水または水素などの不純物が、絶縁体672および絶縁体673を介して配置されている絶縁体680などからトランジスタ600側に拡散するのを抑制することができる。このように、トランジスタ600を、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁体672、および絶縁体673で取り囲む構造とすることが好ましい。
【0251】
絶縁体650は、ゲート絶縁体として機能する。絶縁体650は、酸化物630cの上面に接して配置することが好ましい。絶縁体650は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0252】
絶縁体624と同様に、絶縁体650は、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体650として、酸化物630cの上面に接して設けることにより、酸化物630bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体624と同様に、絶縁体650中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体650の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0253】
また、絶縁体650と導電体660との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体650から導電体660への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体650から導電体660への酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物630へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、絶縁体650の酸素による導電体660の酸化を抑制することができる。
【0254】
また、当該金属酸化物は、ゲート絶縁体の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁体650に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、当該金属酸化物は、比誘電率が高いhigh-k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。ゲート絶縁体を、絶縁体650と当該金属酸化物との積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、ゲート絶縁体の物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁体として機能する絶縁体の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0255】
具体的には、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。特に、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。
【0256】
または、当該金属酸化物は、ゲートの一部としての機能を有する場合がある。この場合は、酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けるとよい。酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けることで、当該導電性材料から離脱した酸素がチャネル形成領域に供給されやすくなる。
【0257】
特に、ゲートとして機能する導電体として、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる金属元素および酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。また、前述した金属元素および窒素を含む導電性材料を用いてもよい。また、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、シリコンを添加したインジウム錫酸化物を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。このような材料を用いることで、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる水素を捕獲することができる場合がある。または、外方の絶縁体などから混入する水素を捕獲することができる場合がある。
【0258】
導電体660は、底面および側面が絶縁体650に接して配置される。導電体660は、
図22では2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0259】
導電体660aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0260】
また、導電体660aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体650に含まれる酸素により、導電体660bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。
【0261】
また、導電体660bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体660は、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体660bは積層構造としてもよく、例えば、チタンまたは窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0262】
絶縁体680は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、または空孔を有する酸化シリコンなどを用いることが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどの材料は、加熱により脱離する酸素を含む領域を容易に形成することができるため好ましい。また、絶縁体680は、上記の材料が積層された構造でもよく、例えば、スパッタリング法で成膜した酸化シリコンと、その上に積層されたCVD法で成膜された酸化窒化シリコンの積層構造とすればよい。また、さらに上に窒化シリコンを積層してもよい。
【0263】
ここで、絶縁体680は、過剰酸素を有することが好ましい。例えば、絶縁体680は、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンなどを適宜用いればよい。過剰酸素を含む絶縁体680を酸化物630に接して設けることにより、酸化物630中の酸素欠損を低減し、トランジスタ600の信頼性を向上させることができる。絶縁体680に過剰酸素を含ませるには、例えば、絶縁体682の成膜を、酸素を含む雰囲気でスパッタリング法を用いて行えばよい。スパッタリング法を用いて、酸素を含む雰囲気で絶縁体682の成膜を行うことで、成膜しながら、絶縁体680に酸素を添加することができる。
【0264】
絶縁体680中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。また、絶縁体680の上面は、平坦化されていてもよい。
【0265】
絶縁体682は、水または水素などの不純物が、上方から絶縁体680に混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。また、絶縁体682は、酸素の透過を抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。絶縁体682としては、例えば、酸化アルミニウム、窒化シリコン、または窒化酸化シリコンなどの絶縁体を用いればよい。例えば、絶縁体682として、酸素に対してバリア性が高い酸化アルミニウムを用いればよい。
【0266】
図22(B)に示すように、絶縁体682は、酸化物630cに直接接する構造となっている。当該構造とすることで、絶縁体680に含まれる酸素の導電体660への拡散を抑制することができる。従って、絶縁体680に含まれる酸素は、酸化物630cを介して、酸化物630aおよび酸化物630bへ効率よく供給することができるので、酸化物630a中および酸化物630b中の酸素欠損を低減し、トランジスタ600の電気特性および信頼性を向上させることができる。
【0267】
また、絶縁体682の上に、層間膜として機能する絶縁体685を設けることが好ましい。絶縁体685は、絶縁体624などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0268】
導電体640は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体640は積層構造としてもよい。なお、
図22(A)で導電体640は、上面視において円形状にしているが、これに限られるものではない。例えば、導電体640が、上面視において、楕円などの略円形状、四角形などの多角形状、四角形等の多角形の角部を丸めた形状になっていてもよい。
【0269】
また、導電体640を積層構造とする場合、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。例えば、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する導電性材料は、単層または積層で用いてもよい。当該導電性材料を用いることで、絶縁体680などから拡散する水または水素などの不純物が、導電体640を通じて酸化物630に混入するのをさらに低減することができる。また、絶縁体680に添加された酸素が導電体640に吸収されるのを防ぐことができる。
【0270】
また、導電体640aの上面、および導電体640cの上面に接して導電体646aが配置され、導電体640bの上面に接して導電体646bが配置される。導電体646aおよび導電体646bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体646aおよび導電体646bは、積層構造としてもよく、例えば、チタンまたは窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。なお、当該導電体は、絶縁体に設けられた開口に埋め込むように形成してもよい。
【0271】
絶縁体685、導電体646a、および導電体646bを覆って、絶縁体686が設けられる。絶縁体686は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化酸化ハフニウム、窒化ハフニウム、酸化ジルコニウムなどを用いればよく、積層または単層で設けることができる。
【0272】
例えば、絶縁体686には、酸化窒化シリコンなどの絶縁耐力が大きい材料と、高誘電率(high-k)材料との積層構造を用いてもよい。当該構成により、容量655は、高誘電率(high-k)の絶縁体を有することで、十分な容量を確保でき、絶縁耐力が大きい絶縁体を有することで、絶縁耐力が向上し、容量655の静電破壊を抑制することができる。
【0273】
なお、高誘電率(high-k)材料(高い比誘電率の材料)の絶縁体としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物またはシリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。
【0274】
または、絶縁体686は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba、Sr)TiO3(BST)などのhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いてもよい。例えば、絶縁体686を積層とする場合、酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムと、酸化ジルコニウムと、が順に形成された3層積層や、酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムと、酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムと、が順に形成されて4層積層などを用いれば良い。また、絶縁体686としては、ハフニウムと、ジルコニウムとが含まれる化合物などを用いても良い。半導体装置の微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体、および容量素子に用いる誘電体の薄膜化により、トランジスタや容量素子のリーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体、および容量素子に用いる誘電体として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減、および容量素子の容量の確保が可能となる。
【0275】
一方、絶縁耐力が大きい材料(低い比誘電率の材料)としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンまたは樹脂などがある。
【0276】
絶縁体686を介して導電体646aの少なくとも一部と重畳するように導電体656が配置される。導電体656は、導電体646に用いることができる導電体を用いればよい。
【0277】
また、絶縁体686および導電体646bの上に、層間膜として機能する絶縁体688を設けることが好ましい。絶縁体688は、絶縁体624などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0278】
<<メモリセルの変形例>>
以下では、
図23を用いてメモリセルの変形例について説明する。
図23(A)は、メモリセル860とその周辺の上面図である。また、
図23(B)は、メモリセル860の断面図であり、
図23(B)は、
図23(A)にA1-A2の一点鎖線で示す部位に対応する。
図23(B)において、トランジスタ600のチャネル長方向の断面と、トランジスタ700のチャネル幅方向の断面を示す。なお、
図23(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。なお、
図23(A)に示す、X方向、Y方向、およびZ方向は、それぞれが互いに直交または交差する方向である。ここで、X方向およびY方向は基板面に対して平行または概略平行であり、Z方向は基板面に対して垂直または概略垂直であることが好ましい。
【0279】
図23(A)、(B)に示すメモリセル860は、トランジスタ600およびトランジスタ700の代わりに、トランジスタ690およびトランジスタ790が用いられている点において、
図22(A)、(B)に示すメモリセル860と異なる。ここで、トランジスタ790は、トランジスタ690と同じ層に形成され、同様の構成を有する。以下において、トランジスタ790の構成要素は、トランジスタ690の構成要素の記載を参酌できるものとする。
【0280】
トランジスタ690は、酸化物630cが、絶縁体680、絶縁体672、絶縁体673、導電体642(導電体642a、導電体642b)、および酸化物630bに形成された開口部を沿うようにU字状(U-Shape)に形成される点において、トランジスタ600と異なる。
【0281】
例えば、トランジスタのチャネル長を微細化(代表的には5nm以上60nm未満、好ましくは10nm以上30nm以下)した場合に、トランジスタ600が上記の構造を有することで、実効L長を長くすることができる。一例としては、導電体642aと、導電体642bとの間の距離が20nmである場合、実効L長を40nm以上60nm以下と、導電体642aと導電体642bとの間の距離、すなわち最小加工寸法よりも2倍以上3倍以下程度長くすることができる。したがって、
図23(A)、(B)に示すメモリセル860は、微細化に優れたトランジスタ690、トランジスタ790、および容量655を有する構造となる。
【0282】
<<金属酸化物>>
酸化物630として、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。以下では、本発明に係る酸化物630に適用可能な金属酸化物について説明する。
【0283】
金属酸化物は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特に、インジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、ガリウム、イットリウム、錫などが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0284】
ここでは、金属酸化物が、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有するIn-M-Zn酸化物である場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫とする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
【0285】
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
【0286】
[金属酸化物の構成]
ここで、金属酸化物の構成例として、CAC-OS(Cloud-Aligned Composite Oxide Semiconductor)またはCAC-metal oxideについて説明する。
【0287】
CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0288】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、および絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0289】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0290】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、および高い電界効果移動度を得ることができる。
【0291】
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0292】
[金属酸化物の構造]
酸化物半導体(金属酸化物)は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、および非晶質酸化物半導体などがある。
【0293】
また、酸化物半導体は、結晶構造に着目した場合、上記とは異なる分類となる場合がある。ここで、酸化物半導体における、結晶構造の分類について、
図28(A)を用いて説明を行う。
図28(A)は、酸化物半導体、代表的にはIGZO(Inと、Gaと、Znと、を含む金属酸化物)の結晶構造の分類を説明する図である。
【0294】
図28(A)に示すように、IGZOは、大きく分けてAmorphousと、Crystallineと、Crystalと、に分類される。また、Amorphousの中には、completely amorphousが含まれる。また、Crystallineの中には、CAAC、nc、およびCACが含まれる。また、Crystalの中には、single crystal、およびpoly crystalが含まれる。
【0295】
なお、
図28(A)に示す太枠内の構造は、New crystalline phaseに属する構造である。当該構造は、Amorphousと、Crystalとの間の境界領域にある。すなわち、エネルギー的に不安定なAmorphousと、Crystallineとは全く異なる構造と言い換えることができる。
【0296】
なお、膜または基板の結晶構造は、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)像を用いて評価することができる。ここで、石英ガラス、およびcrystallineに分類される結晶構造を有するIGZO(結晶性IGZOともいう。)のXRDスペクトルを
図28(B)、(C)に示す。
図28(B)、および
図28(C)において、横軸は2θ[deg.]であり、縦軸は強度(Intensity)[a.u.]である。また、
図28(B)が石英ガラス、
図28(C)が結晶性IGZOのXRDスペクトルである。なお、
図28(C)に示す結晶性IGZOとしては、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の組成である。また、
図28(C)に示す結晶性IGZOとしては、厚さ500nmである。
【0297】
図28(B)の矢印に示すように、石英ガラスは、XRDスペクトルのピークがほぼ対称である。一方で、
図28(C)の矢印に示すように、結晶性IGZOは、XRDスペクトルのピークが非対称である。XRDスペクトルのピークが非対称であることは、結晶の存在を明示している。別言すると、XRDスペクトルのピークで左右対称でないと、Amorphousであるとは言えない。
【0298】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0299】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0300】
なお、明確な結晶粒界(グレインバウンダリ-)が確認される結晶構造は、いわゆる多結晶(polycrystal)と呼ばれる。結晶粒界は、再結合中心となり、キャリアが捕獲されトランジスタのオン電流の低下、または電界効果移動度の低下を引き起こす可能性が高い。よって、明確な結晶粒界が確認されないCAAC-OSは、トランジスタの半導体層に好適な結晶構造を有する結晶性の酸化物の一つである。なお、CAAC-OSを構成するには、Znを有する構成が好ましい。例えば、In-Zn酸化物、及びIn-Ga-Zn酸化物は、In酸化物よりも結晶粒界の発生を抑制できるため好適である。
【0301】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0302】
CAAC-OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない金属酸化物ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0303】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0304】
なお、インジウムと、ガリウムと、亜鉛と、を有する金属酸化物の一種である、In-Ga-Zn酸化物(以下、IGZO)は、上述のナノ結晶とすることで安定な構造をとる場合がある。特に、IGZOは、大気中では結晶成長がし難い傾向があるため、大きな結晶(ここでは、数mmの結晶、または数cmの結晶)よりも小さな結晶(例えば、上述のナノ結晶)とする方が、構造的に安定となる場合がある。
【0305】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する金属酸化物である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0306】
酸化物半導体(金属酸化物)は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0307】
[不純物]
ここで、金属酸化物中における各不純物の影響について説明する。
【0308】
酸化物半導体に不純物が混入すると、欠陥準位または酸素欠損が形成される場合がある。よって、酸化物半導体のチャネル形成領域に不純物が混入することで、酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性が変動しやすく、信頼性が悪くなる場合がある。また、チャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。
【0309】
また、上記欠陥準位には、トラップ準位が含まれる場合がある。金属酸化物のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い金属酸化物をチャネル形成領域に有するトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0310】
また、酸化物半導体のチャネル形成領域に不純物が存在すると、チャネル形成領域の結晶性が低くなる場合がある、また、チャネル形成領域に接して設けられる酸化物の結晶性が低くなる場合がある。チャネル形成領域の結晶性が低いと、トランジスタの安定性または信頼性が悪化する傾向がある。また、チャネル形成領域に接して設けられる酸化物の結晶性が低いと、界面準位が形成され、トランジスタの安定性または信頼性が悪化する場合がある。
【0311】
したがって、トランジスタの安定性または信頼性を向上させるには、酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍の不純物濃度を低減することが有効である。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0312】
具体的には、当該酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍において、SIMSにより得られる上記不純物の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。または、当該酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍において、EDXを用いた元素分析により得られる上記不純物の濃度を、1.0atomic%以下にする。なお、当該酸化物半導体として元素Mを含む酸化物を用いる場合、当該酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍において、元素Mに対する上記不純物の濃度比を、0.10未満、好ましくは0.05未満にする。ここで、上記濃度比を算出する際に用いる元素Mの濃度は、上記不純物の濃度を算出した領域と同じ領域の濃度でもよいし、当該酸化物半導体中の濃度でもよい。
【0313】
また、不純物濃度を低減した金属酸化物は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0314】
また、金属酸化物中の酸素欠損に水素が入った場合、酸素欠損と水素とが結合しVOHを形成する場合がある。VOHはドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。
【0315】
従って、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。また、酸化物半導体中の水素は、熱、電界などのストレスによって動きやすいため、酸化物半導体に多くの水素が含まれると、トランジスタの信頼性が悪化する恐れもある。
【0316】
つまり、金属酸化物中のVOHをできる限り低減し、高純度真性または実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VOHが十分低減された酸化物半導体を得るには、酸化物半導体中の水分、水素などの不純物を除去すること(脱水、脱水素化処理と記載する場合がある。)と、酸化物半導体に酸素を供給して酸素欠損を補填すること(加酸素化処理と記載する場合がある。)が重要である。VOHなどの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0317】
また、トランジスタには、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、酸化物半導体中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0318】
特に、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸化物半導体中に酸素欠損を形成する場合がある。酸化物半導体中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となる場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0319】
酸素欠損に水素が入った欠陥(VOH)は、酸化物半導体のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、酸化物半導体においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、酸化物半導体のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0320】
よって、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素などの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0321】
また、チャネル形成領域の酸化物半導体のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の酸化物半導体のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0322】
本発明の一態様により、信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、オン電流の大きい半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様は、低消費電力の半導体装置を提供することを課題の一つとする。
【0323】
<<その他の半導体材料>>
酸化物630に用いることができる半導体材料は、上述の金属酸化物に限られない。酸化物630として、バンドギャップを有する半導体材料(ゼロギャップ半導体ではない半導体材料)を用いてもよい。例えば、シリコンなどの単体元素の半導体、ヒ化ガリウムなどの化合物半導体、半導体として機能する層状物質(原子層物質、2次元材料などともいう。)などを半導体材料に用いることが好ましい。特に、半導体として機能する層状物質を半導体材料に用いると好適である。
【0324】
ここで、本明細書等において、層状物質とは、層状の結晶構造を有する材料群の総称である。層状の結晶構造は、共有結合やイオン結合によって形成される層が、ファンデルワールス力のような、共有結合やイオン結合よりも弱い結合を介して積層している構造である。層状物質は、単位層内における電気伝導性が高く、つまり、2次元電気伝導性が高い。半導体として機能し、かつ、2次元電気伝導性の高い材料をチャネル形成領域に用いることで、オン電流の大きいトランジスタを提供することができる。
【0325】
層状物質として、グラフェン、シリセン、カルコゲン化物などがある。カルコゲン化物は、カルコゲンを含む化合物である。また、カルコゲンは、第16族に属する元素の総称であり、酸素、硫黄、セレン、テルル、ポロニウム、リバモリウムが含まれる。また、カルコゲン化物として、遷移金属カルコゲナイド、13族カルコゲナイドなどが挙げられる。
【0326】
酸化物630として、例えば、半導体として機能する遷移金属カルコゲナイドを用いることが好ましい。酸化物630として適用可能な遷移金属カルコゲナイドとして、具体的には、硫化モリブデン(代表的にはMoS2)、セレン化モリブデン(代表的にはMoSe2)、モリブデンテルル(代表的にはMoTe2)、硫化タングステン(代表的にはWS2)、セレン化タングステン(代表的にはWSe2)、タングステンテルル(代表的にはWTe2)、硫化ハフニウム(代表的にはHfS2)、セレン化ハフニウム(代表的にはHfSe2)、硫化ジルコニウム(代表的にはZrS2)、セレン化ジルコニウム(代表的にはZrSe2)などが挙げられる。
【0327】
<メモリセル配置の構成例>
次に上述のメモリセル860の配置の一例について、
図24および
図25を用いて説明する。
図24および
図25に、上記メモリセル860を2×2×2個配置した、メモリセルブロックを示す。
図24は、メモリセルブロックの上面図である。また、
図25は、メモリセルブロックの断面図であり、
図25は、
図24にB1-B2の一点鎖線で示す部位に対応する。
図25において、トランジスタ600のチャネル長方向の断面と、トランジスタ700のチャネル幅方向の断面を示す。なお、
図24の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。なお、
図24に示す、X方向、Y方向、およびZ方向は、それぞれが互いに直交または交差する方向である。ここで、X方向およびY方向は基板面に対して平行または概略平行であり、Z方向は基板面に対して垂直または概略垂直であることが好ましい。
【0328】
図24および
図25に示すメモリセルブロックにおいて、メモリセル860_1のX方向に隣接してメモリセル860_2が配置される。また、メモリセル860_1、およびメモリセル860_2のY方向に隣接してメモリセル860_3、およびメモリセル860_4が配置される。また、メモリセル860_1、およびメモリセル860_2のZ方向に隣接してメモリセル860_5、およびメモリセル860_6が配置される。
【0329】
図24および
図25に示すように、メモリセル860_1とメモリセル860_2は、それぞれの構成要素を線対称に配置することができる。このとき、導電体640bの側面が、メモリセル860_1の導電体642b、およびメモリセル860_2の導電体642bと、接することが好ましい。つまり、ビット線WBLとして機能する、導電体607、導電体615、導電体640b、導電体646b、および導電体657が、メモリセル860_1のトランジスタ600のソースおよびドレインの一方と、メモリセル860_2のトランジスタ600のソースおよびドレインの一方と、電気的に接続されることが好ましい。このように、メモリセル860_1とメモリセル860_2に接続する配線を共通化することで、メモリセルの占有面積をさらに縮小することができる。
【0330】
また、
図25に示すように、ビット線WBLとして機能する、導電体607、導電体615、導電体640b、導電体646b、および導電体657は、上層に配置される、メモリセル860_5およびメモリセル860_6のトランジスタ600とも電気的に接続される。なお、
図25に示すように、メモリセル860_1およびメモリセル860_2の導電体657は、メモリセル860_5およびメモリセル860_6の導電体607に相当する。このようにして、Z方向にビット線WBLを延在させることができる。また、断面図で図示してはいないが、導電体640dなどを含むビット線RBLも同様にZ方向に延在させることができる。
【0331】
また、
図24に示すように、メモリセル860_1の導電体660は、メモリセル860_3に延在して設けられている。このようにしてワード線WWLをY方向に延在させることができる。また、
図24に示すように、メモリセル860_1の導電体742aは、メモリセル860_3に延在して設けられている。このようにして選択線SLをY方向に延在させることができる。なお、選択線SLは、X方向に隣接するメモリセル860と共通化してもよい。また、
図24に示すように、メモリセル860_1の導電体605は、メモリセル860_3に延在して設けられている。このようにして配線BGL1をY方向に延在させることができる。また、
図24に示すように、メモリセル860_1の導電体705は、メモリセル860_3に延在して設けられている。このようにして配線BGL1をY方向に延在させることができる。
【0332】
なお、
図24では、導電体660に重ねて酸化物630cを延在させる構成にしているが、本実施の形態に示す記憶装置はこれに限られるものではない。例えば、酸化物630cをメモリセル860ごとにパターン形成して、酸化物630cをトランジスタ600ごとに離隔して設ける構成にしてもよい。また、例えば、酸化物630cを2層の積層構造にする場合、酸化物630cの上層および下層のいずれか一方を、トランジスタ600ごとに離隔して設ける構成にしてもよい。
【0333】
<記憶装置の構成例>
次に、上述のメモリセル860を積層させた記憶装置の一例について、
図26を用いて説明する。
図26は、シリコン層871の上に、メモリセル860を含むメモリセル層870が複数積層された、記憶装置の断面図である。
図26に示す記憶装置は、
図1等に示す記憶装置100に対応しており、シリコン層871は駆動回路層110に対応し、メモリセル層870は記憶層120に対応する。
【0334】
まず、シリコン層871について説明する。シリコン層871には複数のトランジスタ800が設けられており、
図2に示す周辺回路115、RW回路129などを構成している。
【0335】
トランジスタ800は、基板811上に設けられ、ゲートとして機能する導電体816、ゲート絶縁体として機能する絶縁体815、基板811の一部からなる半導体領域813、およびソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域814a、および低抵抗領域814bを有する。トランジスタ800は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0336】
ここで、
図26に示すトランジスタ800はチャネルが形成される半導体領域813(基板811の一部)が凸形状を有する。また、半導体領域813の側面および上面を、絶縁体815を介して、導電体816が覆うように設けられている。なお、導電体816は仕事関数を調整する材料を用いてもよい。このようなトランジスタ800は半導体基板の凸部を利用していることからFIN型トランジスタとも呼ばれる。なお、凸部の上部に接して、凸部を形成するためのマスクとして機能する絶縁体を有していてもよい。また、ここでは半導体基板の一部を加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体膜を形成してもよい。
【0337】
なお、
図26に示すトランジスタ800は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0338】
また、各構造体の間には、層間膜、配線、およびプラグ等が設けられた配線層が設けられていてもよい。また、配線層は、設計に応じて複数層設けることができる。ここで、プラグまたは配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と電気的に接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0339】
例えば、トランジスタ800上には、層間膜として、絶縁体820、絶縁体822、絶縁体824、および絶縁体826が順に積層して設けられている。また、絶縁体820、絶縁体822、絶縁体824、および絶縁体826には、プラグまたは配線として機能する導電体828、および導電体830等が埋め込まれている。
【0340】
また、層間膜として機能する絶縁体は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。例えば、絶縁体822の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0341】
絶縁体826、および導電体830上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図26において、絶縁体850、絶縁体852、および絶縁体854が順に積層して設けられている。また、絶縁体850、絶縁体852、および絶縁体854には、導電体856が形成されている。導電体856は、プラグ、または配線として機能する。
【0342】
層間膜として用いることができる絶縁体としては、絶縁性を有する酸化物、窒化物、酸化窒化物、窒化酸化物、金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化酸化物などがある。
【0343】
例えば、層間膜として機能する絶縁体には、比誘電率が低い材料を用いることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。したがって、絶縁体の機能に応じて、材料を選択するとよい。
【0344】
例えば、絶縁体820、絶縁体822、絶縁体826、絶縁体852、および絶縁体854等には、比誘電率の低い絶縁体を有することが好ましい。例えば、当該絶縁体は、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンまたは樹脂などを有することが好ましい。または、当該絶縁体は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコンまたは空孔を有する酸化シリコンと、樹脂との積層構造を有することが好ましい。酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、樹脂と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の低い積層構造とすることができる。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリルなどがある。
【0345】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体で囲うことによって、トランジスタの電気特性を安定にすることができる。従って、絶縁体824および絶縁体850等には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体を用いればよい。
【0346】
水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。具体的には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0347】
配線、プラグに用いることができる導電体としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウムなどから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0348】
例えば、導電体828、導電体830、および導電体856等としては、上記の材料で形成される金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0349】
シリコン層871の上に、絶縁体611および絶縁体612が配置され、絶縁体611および絶縁体612の上に、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_n(nは2以上の自然数)が積層される。なお、上記nの値については、特に限定は無いが2以上200以下、好ましくは2以上100以下、さらに好ましくは、2以上10以下である。例えば、1≦n≦10、好ましくは1≦n≦50、より好ましくは1≦n≦100とすればよい。
【0350】
各メモリセル層870においては、
図24と同様に、メモリセル860および各種配線がマトリクス状に配置されている。また、積層方向に隣接する各メモリセル層870は、
図25で示したように、ビット線WBL、ビット線RBLなどの配線で電気的に接続されている。
【0351】
また、
図26に示すように、最下層のメモリセル層870_1において、絶縁体611および絶縁体612に埋め込まれるように、導電体607が配置されている。導電体607は、導電体856と同じ層に設けられた導電体857と接している。このようにして、メモリセル860に接続されたビット線WBLは、導電体857を介して、RW回路129に接続される。
【0352】
また、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nは、絶縁体611、絶縁体612、絶縁体687、絶縁体683、および絶縁体684によって、封止された構造であることが好ましい。ここで、シリコン層871の上に絶縁体611が配置され、絶縁体611の上に絶縁体612が配置される。絶縁体612の上にメモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nが配置されており、絶縁体612も、上面視において、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nと同じパターンに形成されている。絶縁体611の上面、絶縁体612の側面、およびメモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nの側面に接して絶縁体687が配置される。つまり、絶縁体687は、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nに対してサイドウォール状に形成される。絶縁体611、絶縁体687、およびメモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nを覆って絶縁体683が配置される。さらに、絶縁体683を覆って絶縁体684が配置される。
【0353】
絶縁体611、絶縁体612、絶縁体687、絶縁体683、および絶縁体684は、絶縁体682などと同様に、バリア性材料を用いることが好ましい。
【0354】
ここで、各メモリセル層870は、絶縁体614、絶縁体687、および絶縁体682によって封止されている。絶縁体614、絶縁体687、および絶縁体682には、同じ材料を用いることが好ましい。また、絶縁体614、絶縁体687、および絶縁体682の成膜方法は、同じ条件を用いて成膜することが好ましい。膜質が等しい絶縁体614、絶縁体687、および絶縁体682が接することで、密閉性が高い封止構造とすることができる。
【0355】
また、絶縁体614、絶縁体687、および絶縁体682には、水素を捕獲、および固着する機能を有する材料を用いることが好ましい。具体的には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、インジウムガリウム亜鉛酸化物などの金属酸化物を用いることができる。
【0356】
封止構造を形成する絶縁体614、絶縁体687、および絶縁体682は、絶縁体680に接して設けられる。従って、絶縁体680中に混入した水素を捕獲、および固着することで、メモリセル860が有する酸化物半導体の水素濃度を低減することができる。
【0357】
また、メモリセル層870を封止する構造である絶縁体614、絶縁体687、および絶縁体682は、絶縁体611、絶縁体612、絶縁体683によってさらに覆われている。例えば、
図26に示すように、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nの外側で、絶縁体611と絶縁体683とが接することで、2重目の封止構造を形成する。
【0358】
ここで、絶縁体611、絶縁体612と絶縁体683には、水素、および酸素に対する拡散を抑制する機能を有する材料を用いることが好ましい。特に、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンは、水素に対するバリア性が高いため、封止する材質として用いることが好ましい。
【0359】
また、トランジスタ600の上方を被覆する絶縁体683の上方に、被覆性が高い絶縁体684を設けることが好ましい。なお、絶縁体684は、絶縁体612および絶縁体683と同じ材料を用いることが好ましい。
【0360】
例えば、絶縁体612、絶縁体683は、スパッタリング法を用いて成膜することで、膜中の水素濃度が比較的低い膜により封止構造を設けることができる。
【0361】
一方、スパッタリング法を用いて成膜した膜は、比較的被覆性が低い。そこで、絶縁体611、および絶縁体684を、被覆性が高いCVD法などを用いて成膜することで、より密閉性を高めることができる。
【0362】
従って、絶縁体612および絶縁体683は、絶縁体611と絶縁体684よりも水素濃度が低いことが好ましい。
【0363】
以上のようにして、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nを、バリア絶縁膜を用いて封止することで、各メモリセル860に含まれる酸化物半導体に拡散する水素を低減することができるので、信頼性の高い記憶装置を提供することができる。
【0364】
なお、絶縁体611、絶縁体612、絶縁体614、絶縁体682、絶縁体687、絶縁体683、および絶縁体684は、酸素に対するバリア性を有する材料を用いてもよい。上記封止構造が、酸素に対するバリア性を有することで、絶縁体680が有する過剰酸素の外方拡散を抑制し、効率的にトランジスタ600へと供給することができる。
【0365】
また、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_n、および絶縁体684などを埋め込むように絶縁体674が設けられることが好ましい。絶縁体674は、絶縁体680に用いることができる絶縁体を用いればよい。
図26に示すように、絶縁体674と絶縁体684は、上面の高さが概略一致することが好ましい。
【0366】
また、
図26に示すように、絶縁体674、絶縁体684、絶縁体683、および絶縁体611に開口を設け、当該開口に導電体876を配置してもよい。導電体876は、下面が導電体856に接する。導電体876の上面に接して配線として機能する導電体878を設ければよい。また、メモリセル層870_n、絶縁体674、および導電体878を覆って、層間膜として機能する絶縁体689を設けることが好ましい。このような構造にすることで、メモリセル層870を介さず、上層の配線(導電体878)とシリコン層871の回路を電気的に接続することができる。
【0367】
なお、
図26では、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nを絶縁体611、絶縁体612、絶縁体687、絶縁体683、および絶縁体684で一括して封止する構成を示したが、本実施の形態に係る記憶装置はこれに限られるものではない。たとえば、
図27に示すように、各メモリセル層870が絶縁体611、絶縁体612、絶縁体687、絶縁体683、および絶縁体684で封止される構成にしてもよい。ここで、絶縁体614の下に絶縁体612および絶縁体611が配置される。
【0368】
絶縁体680、絶縁体673、絶縁体672、絶縁体624、絶縁体622、絶縁体616、および絶縁体614の側面に接して絶縁体687が配置される。絶縁体680および絶縁体687を覆って、絶縁体683が設けられ、絶縁体683の上に絶縁体684が配置される。この場合、絶縁体682より上に設けられる、容量655および絶縁体688は、絶縁体684の上に配置すればよい。
【0369】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0370】
(実施の形態5)
本実施の形態は、上記実施の形態に示す記憶装置などが組み込まれた電子部品および電子機器の一例を示す。
【0371】
<電子部品>
まず、記憶装置100が組み込まれた電子部品の例を、
図29(A)および(B)を用いて説明を行う。
【0372】
図29(A)に電子部品710および電子部品710が実装された基板(実装基板704)の斜視図を示す。
図29(A)に示す電子部品710は、モールド711内に記憶装置100を有している。
図29(A)では、電子部品710の内部を示すために一部を省略している。電子部品710は、モールド711の外側にランド712を有する。ランド712は電極パッド713と電気的に接続され、電極パッド713は記憶装置100とワイヤ714によって電気的に接続されている。電子部品710は、例えばプリント基板702に実装される。このような電子部品が複数組み合わされて、それぞれがプリント基板702上で電気的に接続されることで実装基板704が完成する。
【0373】
図29(B)に電子部品720の斜視図を示す。電子部品720は、SiP(System in package)またはMCM(Multi Chip Module)の一例である。電子部品720は、パッケージ基板722(プリント基板)上にインターポーザ721が設けられ、インターポーザ721上に半導体装置725、および複数の記憶装置100が設けられている。
【0374】
電子部品720では、記憶装置100を広帯域メモリ(HBM:High Bandwidth Memory)として用いる例を示している。また、半導体装置725は、CPU、GPU、FPGAなどの集積回路(半導体装置)を用いることができる。
【0375】
パッケージ基板722は、セラミック基板、プラスチック基板、またはガラスエポキシ基板などを用いることができる。インターポーザ721は、シリコンインターポーザ、樹脂インターポーザなどを用いることができる。
【0376】
インターポーザ721は、複数の配線を有し、端子ピッチの異なる複数の集積回路を電気的に接続する機能を有する。複数の配線は、単層または多層で設けられる。また、インターポーザ721は、インターポーザ721上に設けられた集積回路をパッケージ基板722に設けられた電極と電気的に接続する機能を有する。これらのことから、インターポーザを「再配線基板」または「中間基板」と呼ぶ場合がある。また、インターポーザ721に貫通電極を設けて、当該貫通電極を用いて集積回路とパッケージ基板722を電気的に接続する場合もある。また、シリコンインターポーザでは、貫通電極として、TSV(Through Silicon Via)を用いることも出来る。
【0377】
インターポーザ721としてシリコンインターポーザを用いることが好ましい。シリコンインターポーザでは能動素子を設ける必要が無いため、集積回路よりも低コストで作製することができる。一方で、シリコンインターポーザの配線形成は半導体プロセスで行なうことができるため、樹脂インターポーザでは難しい微細配線の形成が容易である。
【0378】
HBMでは、広いメモリバンド幅を実現するために多くの配線を接続する必要がある。このため、HBMを実装するインターポーザには、微細かつ高密度の配線形成が求められる。よって、HBMを実装するインターポーザには、シリコンインターポーザを用いることが好ましい。
【0379】
また、シリコンインターポーザを用いたSiPやMCMなどでは、集積回路とインターポーザ間の膨張係数の違いによる信頼性の低下が生じにくい。また、シリコンインターポーザは表面の平坦性が高いため、シリコンインターポーザ上に設ける集積回路とシリコンインターポーザ間の接続不良が生じにくい。特に、インターポーザ上に複数の集積回路を横に並べて配置する2.5Dパッケージ(2.5次元実装)では、シリコンインターポーザを用いることが好ましい。
【0380】
また、電子部品720と重ねてヒートシンク(放熱板)を設けてもよい。ヒートシンクを設ける場合は、インターポーザ721上に設ける集積回路の高さを揃えることが好ましい。例えば、本実施の形態に示す電子部品720では、記憶装置100と半導体装置725の高さを揃えることが好ましい。
【0381】
電子部品720を他の基板に実装するため、パッケージ基板722の底部に電極723を設けてもよい。
図29(B)では、電極723を半田ボールで形成する例を示している。パッケージ基板722の底部に半田ボールをマトリクス状に設けることで、BGA(Ball Grid Array)実装を実現できる。また、電極723を導電性のピンで形成してもよい。パッケージ基板722の底部に導電性のピンをマトリクス状に設けることで、PGA(Pin Grid Array)実装を実現できる。
【0382】
電子部品720は、BGAおよびPGAに限らず様々な実装方法を用いて他の基板に実装することができる。例えば、SPGA(Staggered Pin Grid Array)、LGA(Land Grid Array)、QFP(Quad Flat Package)、QFJ(Quad Flat J-leaded package)、またはQFN(Quad Flat Non-leaded package)などの実装方法を用いることができる。
【0383】
<電子機器>
次に、上記電子部品を備えた電子機器の例について
図30を用いて説明を行う。
【0384】
ロボット7100は、照度センサ、マイクロフォン、カメラ、スピーカ、ディスプレイ、各種センサ(赤外線センサ、超音波センサ、加速度センサ、ピエゾセンサ、光センサ、ジャイロセンサなど)、および移動機構などを備える。電子部品720はプロセッサなどを有し、これら周辺機器を制御する機能を有する。例えば、電子部品710はセンサで取得されたデータを記憶する機能を有する。
【0385】
マイクロフォンは、使用者の音声および環境音などの音響信号を検知する機能を有する。また、スピーカは、音声および警告音などのオーディオ信号を発する機能を有する。ロボット7100は、マイクロフォンを介して入力されたオーディオ信号を解析し、必要なオーディオ信号をスピーカから発することができる。ロボット7100は、マイクロフォン、およびスピーカを用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
【0386】
カメラは、ロボット7100の周囲を撮像する機能を有する。また、ロボット7100は、移動機構を用いて移動する機能を有する。ロボット7100は、カメラを用いて周囲の画像を撮像し、画像を解析して移動する際の障害物の有無などを察知することができる。
【0387】
飛行体7120は、プロペラ、カメラ、およびバッテリなどを有し、自律して飛行する機能を有する。電子部品720はこれら周辺機器を制御する機能を有する。
【0388】
例えば、カメラで撮影した画像データは、電子部品710に記憶される。電子部品720は、画像データを解析し、移動する際の障害物の有無などを察知することができる。また、電子部品720によってバッテリの蓄電容量の変化から、バッテリ残量を推定することができる。
【0389】
掃除ロボット7140は、上面に配置されたディスプレイ、側面に配置された複数のカメラ、ブラシ、操作ボタン、各種センサなどを有する。図示されていないが、掃除ロボット7140には、タイヤ、吸い込み口等が備えられている。掃除ロボット7140は自走し、ゴミを検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。
【0390】
例えば、電子部品720は、カメラが撮影した画像を解析し、壁、家具または段差などの障害物の有無を判断することができる。また、画像解析により、配線などブラシに絡まりそうな物体を検知した場合は、ブラシの回転を止めることができる。
【0391】
自動車7160は、エンジン、タイヤ、ブレーキ、操舵装置、カメラなどを有する。例えば、電子部品720は、ナビゲーション情報、速度、エンジンの状態、ギアの選択状態、ブレーキの使用頻度などのデータに基づいて、自動車7160の走行状態を最適化するための制御を行う。例えば、カメラで撮影した画像データは電子部品710に記憶される。
【0392】
電子部品710および/または電子部品720は、TV装置7200(テレビジョン受像装置)、スマートフォン7210、PC7220(パーソナルコンピュータ)、PC7230、ゲーム機7240、ゲーム機7260等に組み込むことができる。
【0393】
例えば、TV装置7200に内蔵された電子部品720は画像エンジンとして機能させることができる。例えば、電子部品720は、ノイズ除去、解像度アップコンバージョンなどの画像処理を行う。
【0394】
スマートフォン7210は、携帯情報端末の一例である。スマートフォン7210は、マイクロフォン、カメラ、スピーカ、各種センサ、および表示部を有する。電子部品720によってこれら周辺機器が制御される。
【0395】
PC7220、PC7230はそれぞれノート型PC、据え置き型PCの例である。PC7230には、キーボード7232、およびモニタ装置7233が無線または有線により接続可能である。ゲーム機7240は携帯型ゲーム機の例である。ゲーム機7260は据え置き型ゲーム機の例である。ゲーム機7260には、無線または有線でコントローラ7262が接続されている。コントローラ7262に、電子部品710および/または電子部品720を組み込むこともできる。
【0396】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0397】
(実施の形態6)
本実施の形態では、先の実施の形態に示す記憶装置を用いた記憶装置の応用例について説明する。
【0398】
一般に、コンピュータなどの半導体装置では、用途に応じて様々な記憶装置が用いられる。
図31に、各種の記憶装置を階層ごとに示す。上層に位置する記憶装置ほど速いアクセス速度が求められ、下層に位置する記憶装置ほど大きな記憶容量と高い記録密度が求められる。
図31では、最上層から順に、CPUなどの演算処理装置にレジスタとして混載されるメモリ、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、3D NANDメモリを示している。
【0399】
CPUなどの演算処理装置にレジスタとして混載されるメモリは、演算結果の一時保存などに用いられるため、演算処理装置からのアクセス頻度が高い。よって、記憶容量よりも速い動作速度が求められる。また、レジスタは演算処理装置の設定情報などを保持する機能も有する。
【0400】
SRAMは、例えばキャッシュに用いられる。キャッシュは、メインメモリに保持されている情報の一部を複製して保持する機能を有する。使用頻繁が高いデータをキャッシュに複製しておくことで、データへのアクセス速度を高めることができる。
【0401】
DRAMは、例えばメインメモリに用いられる。メインメモリは、ストレージから読み出されたプログラムやデータを保持する機能を有する。DRAMの記録密度は、おおよそ0.1乃至0.3Gbit/mm2である。
【0402】
3D NANDメモリは、例えばストレージに用いられる。ストレージは、長期保存が必要なデータや、演算処理装置で使用する各種のプログラムなどを保持する機能を有する。よって、ストレージには動作速度よりも大きな記憶容量と高い記録密度が求められる。ストレージに用いられる記憶装置の記録密度は、おおよそ0.6乃至6.0Gbit/mm2である。
【0403】
本発明の一態様の記憶装置は、動作速度が速く、長期間のデータ保持が可能である。本発明の一態様の記憶装置は、キャッシュが位置する階層とメインメモリが位置する階層の双方を含む境界領域901に位置する記憶装置として好適に用いることができる。また、本発明の一態様の記憶装置は、メインメモリが位置する階層とストレージが位置する階層の双方を含む境界領域902に位置する記憶装置として好適に用いることができる。
【0404】
先の実施の形態に示す記憶装置は、例えば、各種電子機器(例えば、情報端末、コンピュータ、スマートフォン、電子書籍端末、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、録画再生装置、ナビゲーションシステム、ゲーム機など)の記憶装置に適用できる。また、イメージセンサ、IoT(Internet of Things)、ヘルスケアなどに用いることもできる。なお、ここで、コンピュータとは、タブレット型のコンピュータや、ノート型のコンピュータや、デスクトップ型のコンピュータの他、サーバシステムのような大型のコンピュータを含むものである。
【0405】
また、先の実施の形態に示す記憶装置は、メモリカード(例えば、SDカード)、USBメモリ、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)等の各種のリムーバブル記憶装置に適用される。
図32(A)乃至(E)にリムーバブル記憶装置の幾つかの構成例を模式的に示す。例えば、先の実施の形態に示す記憶装置は、パッケージングされたメモリチップに加工され、様々なストレージ装置、リムーバブルメモリに用いられる。
【0406】
図32(A)はUSBメモリの模式図である。USBメモリ1100は、筐体1101、キャップ1102、USBコネクタ1103および基板1104を有する。基板1104は、筐体1101に収納されている。例えば、基板1104には、メモリチップ1105、コントローラチップ1106が取り付けられている。基板1104のメモリチップ1105などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0407】
図32(B)はSDカードの外観の模式図であり、
図32(C)は、SDカードの内部構造の模式図である。SDカード1110は、筐体1111、コネクタ1112および基板1113を有する。基板1113は筐体1111に収納されている。例えば、基板1113には、メモリチップ1114、コントローラチップ1115が取り付けられている。基板1113の裏面側にもメモリチップ1114を設けることで、SDカード1110の容量を増やすことができる。また、無線通信機能を備えた無線チップを基板1113に設けてもよい。これによって、ホスト装置とSDカード1110間の無線通信によって、メモリチップ1114のデータの読み出し、書き込みが可能となる。基板1113のメモリチップ1114などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0408】
図32(D)はSSDの外観の模式図であり、
図32(E)は、SSDの内部構造の模式図である。SSD1150は、筐体1151、コネクタ1152および基板1153を有する。基板1153は筐体1151に収納されている。例えば、基板1153には、メモリチップ1154、メモリチップ1155、コントローラチップ1156が取り付けられている。メモリチップ1155はコントローラチップ1156のワークメモリであり、例えばDOSRAMチップを用いればよい。基板1153の裏面側にもメモリチップ1154を設けることで、SSD1150の容量を増やすことができる。基板1153のメモリチップ1154などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0409】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例0410】
本明細書などに示したメモリセルもしくは記憶装置などを用いて、ノーマリーオフCPU(「Noff-CPU」ともいう。)を実現することができる。なお、Noff-CPUとは、ゲート電圧が0Vであっても非導通状態(オフ状態ともいう)であるノーマリーオフ型のトランジスタを含む集積回路である。ノーマリーオフ型のトランジスタは、OSトランジスタで実現できる。
【0411】
Noff-CPUは、Noff-CPU内の動作不要な回路への電力供給を停止し、当該回路を待機状態にすることができる。電力供給が停止され、待機状態になった回路では電力が消費されない。よって、Noff-CPUは、電力使用量を最小限にすることができる。また、Noff-CPUは、電力供給が停止されても設定条件などの動作に必要な情報を長期間保持することができる。待機状態からの復帰は当該回路への電力供給を再開するだけでよく、設定条件などの再書き込みが不要である。すなわち、待機状態からの高速復帰が可能である。このように、Noff-CPUは、動作速度を大きく落とすことなく消費電力を低減できる。
【0412】
Noff-CPUは、例えば、IoT分野のIoT末端機器(「エンドポイントマイコン」ともいう。)803などの小規模システムに好適に用いることができる。
図33にIoTネットワークの階層構造と要求仕様の傾向を示す。
図33では、要求仕様として消費電力804と処理性能805を示している。IoTネットワークの階層構造は、上層部であるクラウド分野801と下層部である組み込み分野802に大別される。クラウド分野801には例えばサーバーが含まれる。組み込み分野802には例えば機械、産業用ロボット、車載機器、家電などが含まれる。
【0413】
上層ほど、消費電力の少なさよりも高い処理性能が求められる。よって、クラウド分野801では高性能CPU、高性能GPU、大規模SoC(System on a Chip)などが用いられる。また、下層ほど処理性能よりも消費電力の少なさが求められ、デバイス個数も爆発的に多くなる。
【0414】
なお、「エンドポイント」とは、組み込み分野802の末端領域を示す。エンドポイントに用いられるデバイスとしては、例えば、工場、家電、インフラ、農業などで使用されるマイコンが該当する。
【0415】
図34にエンドポイントマイコンの応用例として、ファクトリーオートメーションのイメージ図を示す。工場884はインターネット回線(Internet)を介してクラウド883と接続される。また、クラウド883は、インターネット回線を介してホーム881およびオフィス882と接続される。インターネット回線は有線通信方式であってもよいし、無線通信方式であってもよい。例えば、無線通信方式の場合は、第4世代移動通信システム(4G)や第5世代移動通信システム(5G)を用いてもよい。また、工場884は、インターネット回線を介して工場885および工場886と接続してもよい。
【0416】
工場884はマスタデバイス(制御機器)831を有する。マスタデバイス831は、クラウド883と接続し、情報の授受を行う機能を有する。また、マスタデバイス831は、IoT末端機器841に含まれる複数の産業用ロボット842と、M2M(Machine to Machine)インターフェイス832を介して接続される。M2Mインターフェイス832としては、例えば、有線通信方式の一種である産業イーサネットや、無線通信方式の一種であるローカル5Gなどを用いてもよい。
【0417】
工場の管理者は、ホーム881またはオフィス882から、クラウド883を介して工場884に接続し、稼働状況などを知ることができる。また、誤品・欠品チェック、置き場所指示、タクトタイムの計測などを行うことができる。
【0418】
近年「スマート工場」と銘打って、世界的にIoTの工場への導入が進められている。スマート工場の事例では、エンドポイントマイコンによる単なる検査、監査だけでなく、故障検知や異常予測なども行う事例が報告されている。
【0419】
エンドポイントマイコンなどの小規模システムは、稼働時のシステム全体の消費電力が小さい場合が多いため、Noff-CPUによる待機状態時の電力削減効果が大きくなる。一方で、IoTの組み込み分野では即応性が求められる場合があるが、Noff-CPUを用いることで待機状態時からの高速復帰が実現できる。
10:メモリセル、11A:トランジスタ、11B:トランジスタ、12:容量、21:トランジスタ、22:トランジスタ、31:センスアンプ回路、32:AND回路、33:アナログスイッチ、34:アナログスイッチ、100:記憶装置、110:駆動回路層、111:周辺回路、112:コントロール回路、115:周辺回路、120:記憶層、121:行デコーダ、122:列デコーダ、123:行ドライバ、124:列ドライバ、125:入力回路、126:出力回路、127:RWアレイ、128:電圧生成回路、129:RW回路、141:PSW、142:PSW